2021-700959
シリンジサポートおよび自動注射器
- 審判番号
- 2021-700959
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-562766外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6856549
- 請求日
- 2021年10月06日
- 審決日
- 2023年10月31日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【権利者代理人】結田 純次
- 【権利者代理人】竹林 則幸
- 【権利者代理人】守安 智
- 【異議申立人】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
- 【異議申立人代理人】黒田 晋平
- 【異議申立人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P1651.113-YAA(A61M) / P1651.121-YAA(A61M) / P1651.537-YAA(A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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特許第6856549号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、2016年(平成28年) 6月 2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年 6月 3日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和 3年 3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 4月 7日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年10月 6日 :特許異議申立人エスエイチエル・メディカル ・アーゲー(以下「申立人」という。)によ る請求項1~14に係る特許に対する特許異 議の申立て
同 年12月 1日付け:取消理由通知
同 年 5月18日 :申立人による意見書の提出
同 年 9月28日付け:訂正拒絶理由通知
同 年11月18日 :特許権者による意見書の提出
同 年 5月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年 5月17日付けで申立人に、令和 5年 5月 2日提出の特許権者の意見書及び訂正請求書の副本を送付し、意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 5年 5月 2日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「自動注射器(1)であって、請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンジサポート(15、15’)と、ハウジング(2)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含む、前記自動注射器。」と記載されているのを、
「自動注射器(1)であって、ハウジング(2)と;自動注射器(1)のハウジング(2)に対して、シリンジ(3)の軸方向位置を支持するためのシリンジサポート(15、15’)とを含み、該シリンジサポート(15、15’)は:該シリンジサポート(15、15’)から遠位方向(D)へ突出する突出部(15.3)、ここで、該突出部(15.3)は、シリンジサポート(15、15’)の近位端(2.4、15.6)から遠位に延びる、と、該突出部(15.3)に軸方向に接合し、シリンジ(3)をハウジング(2)内で遠位方向(D)へ軸方向に付勢するように適用される可撓部(15.1)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含み、ここで、該シリンジサポート(15、15’)は,少なくとも2つの突出部(15.3)を含み、該突出部(15.3)の各々は1つの可撓部(15.1)を含む、前記自動注射器。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10、13~17も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に
「可撓部(15.1)およびシリンジ(3)」と記載されているのを、
「前記可撓部(15.1)および前記シリンジ(3)」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に
「ハウジング(2)は、前方部材(2.1)および後方部材(2.2)を含み、可撓部(15.1)は後方部材(2.2)の遠位に配置される、請求項9~12のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。」と記載されているのを、
「前記ハウジング(2)は、前方部材(2.1)および後方部材(2.2)を含み、前記可撓部(15.1)は該後方部材(2.2)の遠位に配置される、請求項9または10に記載の自動注射器(1)。」に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項14に
「シリンジサポート(15、15’)は、ハウジング(2)の近位アパーチャ(2.6)よりも大きい近位端(2.4、15.6)を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。」と記載されているのを、
「前記シリンジサポート(15、15’)は、前記ハウジング(2)の近位アパーチャ(2.6)よりも大きい近位端(2.4、15.6)を含む、請求項9、10、13のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。」に訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項9に
「自動注射器(1)であって、請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンジサポート(15、15’)と、ハウジング(2)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含む、前記自動注射器。」と記載されているのを、
「前記可撓部(15.1)は、フレクシャビーム(15.7)の形態またはばねアームの形態で設計される、請求項9に記載の自動注射器(1)。」と記載し、新たに請求項15とする。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項9に
「自動注射器(1)であって、請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンジサポート(15、15’)と、ハウジング(2)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含む、前記自動注射器。」と記載されているのを、
「前記可撓部(15.1)は、蛇行形、アコーディオン形、迷路形、U形、V形、W形、またはS形の設計である、請求項9に記載の自動注射器(1)。」と記載し、新たに請求項16とする。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項9に
「自動注射器(1)であって、請求項1~8のいずれか1項に記載のシリンジサポート(15、15’)と、ハウジング(2)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含む、前記自動注射器。」と記載されているのを、
「少なくとも1つのハウジングロック(17)は、前記ハウジング(2)の後方部材(2.2)を前記ハウジング(2)の前方部材(2.1)に取り付けるために、前記シリンジサポート(15)の近位に位置し、前記ハウジング(2)の該後方部材は前記シリンジサポートを含む、請求項9に記載の自動注射器(1)。」と記載し、新たに請求項17とする。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は、本件訂正により訂正される請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~14について請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1~8、11~12について
ア 訂正の目的
訂正事項1~8、11~12は、それぞれ請求項1~8、11~12を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1~8、11~12は、それぞれ請求項1~8、11~12を削除するものであるから、願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1~8、11~12は、それぞれ請求項1~8、11~12を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正前の請求項9が請求項1~8のいずれか1項を引用するものであるところ、請求項1を直接引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式へ改め、また、訂正前の「シリンジサポート(15、15’)」について「少なくとも2つの突出部(15.3)を含み、該突出部(15.3)の各々は1つの可撓部(15.1)を含む」ものに限定し、さらに、訂正前の請求項1の「突出部(15.3)」についての「該シリンジサポート(15、15’)に近位に取り付けられ、シリンジサポート(15、15’)の近位端(2.4、15.6)から遠位に延びる」との記載が明瞭でなかったのを、「該シリンジサポート(15、15’)に近位に取り付けられ」との記載を削除することで、シリンジサポート(15、15’)がその近位端から遠位に延びる突出部(15.3)で形成されていることを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、訂正前の請求項1、9、12の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10は、訂正前の請求項10における「可撓部(15.1)およびシリンジ(3)」を「前記可撓部(15.1)および前記シリンジ(3)」として、引用する請求項9の「可撓部(15.1)」及び「シリンジ(3)」との対応を明確にする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項13
ア 訂正の目的
訂正事項13は、訂正前の請求項13において、請求項9~12のいずれか1項を引用するものであるところ、請求項9または10を引用するものに限定し、また、訂正前の「ハウジング(2)」、「可撓部(15.1)」及び「後方部材(2.2)」を、「前記ハウジング(2)」、「前記可撓部(15.1)」及び「該後方部材(2.2)」とすることで、引用する請求項の「ハウジング(2)」、「可撓部(15.1)」及び「後方部材(2.2)」との対応を明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項14
ア 訂正の目的
訂正事項14は、訂正前の請求項14において、請求項9~13のいずれか1項を引用するものであるところ、請求項9、10または13を引用するものに限定し、また、訂正前の請求項14の「ハウジング(2)」及び「シリンジサポート(15、15’)」を、「前記ハウジング(2)」及び「前記シリンジサポート(15、15’)」とすることで、引用する請求項の「ハウジング(2)」及び「シリンジサポート(15、15’)」との対応を明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(6)訂正事項15
ア 訂正の目的
訂正事項15は、訂正前の請求項9が請求項1~8のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正前の請求項2を引用する請求項9において、訂正後の請求項9を引用する形式とすることで新たな請求項15とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、訂正前の請求項1、2、9、12の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項16
ア 訂正の目的
訂正事項16は、訂正前の請求項9が請求項1~8のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項9において、訂正後の請求項9を引用する形式とすることで新たな請求項16とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、訂正前の請求項1、3、9、12の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(8)訂正事項17
ア 訂正の目的
訂正事項17は、訂正前の請求項9が請求項1~8のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項9において、訂正後の請求項9を引用する形式とすることで新たな請求項17とする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項は、訂正前の請求項1、6、9、12の記載並びに本願明細書【0023】の「ハウジングは前方部材及び後方部材を含み」及び同【0042】の「図2および図3は、ハウジング2の後方部材2.2の概略図である。後方部材2.2はシリンジサポート15を含む。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~17に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明17」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)【請求項2】(削除)【請求項3】(削除)【請求項4】(削除)続きを表示(全30行)【請求項5】(削除)【請求項6】(削除)【請求項7】(削除)【請求項8】(削除)【請求項9】自動注射器(1)であって、ハウジング(2)と;自動注射器(1)のハウジング(2)に対して、シリンジ(3)の軸方向位置を支持するためのシリンジサポート(15、15’)とを含み、該シリンジサポート(15、15’)は:該シリンジサポート(15、15’)から遠位方向(D)へ突出する突出部(15.3)、ここで、該突出部(15.3)は、シリンジサポート(15、15’)の近位端(2.4、15.6)から遠位に延びる、と、該突出部(15.3)に軸方向に接合し、シリンジ(3)をハウジング(2)内で遠位方向(D)へ軸方向に付勢するように適用される可撓部(15.1)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含み、ここで、該シリンジサポート(15、15’)は、少なくとも2つの突出部(15.3)を含み、該突出部(15.3)の各々は1つの可撓部(15.1)を含む、前記自動注射器。【請求項10】前記可撓部(15.1)および前記シリンジ(3)のフランジ(3.1)は互いに接触し、組み立てられた状態で互いに押圧される、請求項9に記載の自動注射器(1)。【請求項11】(削除)【請求項12】(削除)【請求項13】前記ハウジング(2)は、前方部材(2.1)および後方部材(2.2)を含み、前記可撓部(15.1)は該後方部材(2.2)の遠位に配置される、請求項9または10に記載の自動注射器(1)。【請求項14】前記シリンジサポート(15、15’)は、前記ハウジング(2)の近位アパーチャ(2.6)よりも大きい近位端(2.4、15.6)を含む、請求項9、10、13のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。【請求項15】前記可撓部(15.1)は、フレクシャビーム(15.7)の形態またはばねアームの形態で設計される、請求項9に記載の自動注射器(1)。【請求項16】前記可撓部(15.1)は、蛇行形、アコーディオン形、迷路形、U形、V形、W形、またはS形の設計である、請求項9に記載の自動注射器(1)。【請求項17】少なくとも1つのハウジングロック(17)は、前記ハウジング(2)の後方部材(2.2)を前記ハウジング(2)の前方部材(2.1)に取り付けるために、前記シリンジサポート(15)の近位に位置し、前記ハウジングの該後方部材は前記シリンジサポートを含む、請求項9に記載の自動注射器(1)。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由通知の概要
当審が令和 3年12月 1日付けで特許権者に通知した請求項1~14に対する取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
請求項1~11、13、14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、当該請求項1~11、13、14に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
請求項1~11、13、14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、当該請求項1~11、13、14に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
請求項1~14に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)取消理由4(明確性)
請求項1~14に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由通知(決定の予告)の概要
当審が令和 5年 1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由5(進歩性)
請求項11、18、19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、当該請求項11、18、19に係る特許は、取り消されるべきものである。
[証拠方法]
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
取消理由通知(決定の予告)は、令和 4年 3月 7日付けの訂正請求に係る訂正後の請求項11、18、19がその対象であったところ、本件訂正は、請求項1~10、12~17について、上記訂正と同じ訂正がされるとともに、請求項11を削除する訂正がされ、また、請求項18、19は、新たに設けられなかった。
よって、本件訂正により、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由は解消した。
2 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった異議申立理由について
本件訂正により、本件特許の特許請求の範囲は、請求項1~14から請求項1~17へと訂正され、このうち請求項1~8、11、12についての訂正は、請求項を削除する訂正である。
よって、以下、本件訂正後の請求項9、10、13~17についてのみ検討する。
(1)異議申立理由1(新規性)及び異議申立理由2(進歩性)
ア 異議申立理由1の概要
請求項9、10、13~17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものであり、当該請求項9、10、13~17に係る特許は、取り消されるべきものである。
イ 異議申立理由2の概要
請求項9、10、13~17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証及び甲第3号証の記載事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、当該請求項9、10、13~17に係る特許は、取り消されるべきものである。
ウ 上記異議申立理由1及び2に対する当審の判断
(ア)請求項9について
a 本件訂正後の請求項9に係る発明は、前記第3に記載したとおりである。
b 甲各号証及び甲1発明
(a)甲第1号証(国際公開第2013/016832号)
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。(原文において、ウムラウトのある文字はウムラウトを付さない文字で、また、本来エスツェットで表記すべきものは甲1の記載にしたがって「ss」と、それぞれ表記した。付記した訳文は、本件特許異議申立人が特許異議申立書に添付した翻訳文の記載に基づく。)
「Die Erfindung betrifft eine Injektionsvorrichtung, die einen Mechanismus zum automatischen Ausschutten eines flussigen Produkts oder Medikaments aufweist.」(第1頁第2-3行)(訳文「本発明は、液状の製品あるいは薬剤を自動的に注出するための機構を備える注射デバイスに関する。」)
「In den Figuren 26 bis 36 wird eine weitere vierte Ausfuhrungsform einer Injektionsvorrichtung gezeigt.In der Figur 26 werden die Einzelteile der Injektionsvorrichtung beschrieben. Die Injektionsvorrichtung umfasst eine Nadelschutzeinrichtung 410, ein hulsenformiges Gehause 470, wobei die Nadelschutzeinrichtung 410 in dem Gehause 470 um die Langsachse L langsverschiebbar aufgenommen ist und gleichzeitig als Ausloseelement dient, ein Spritzenhalter 430 welcher axial fest mit dem Gehause 470 verbunden wird und worin ein Wirkstoffbehalter 110 eingesetzt werden kann, ein Haltering 435, welcher im Gehause 470 integriert sein kann um insbesondere den Wirkstoffbehalter 110 im Spritzenhalter 230 zu sichern, eine Antriebseinrichtung 450 welche auf den Wirkstoffbehalter 110 wirken kann, in der Gestalt einer Hulse welche an ihrem Umfang mindestens eine Halterungsflache 452 aufweist und ein Antriebsmittel 460 in der Gestalt einer als Druckfeder wirkenden Wendelfeder, die die Energie fur eine Ausschuttsequenz liefert, eine Drehhulse 440, die die Antriebseinrichtung 450 und das Antriebsmittel 460 bis zur Auslosung der Injektionsvorrichtung in einem gespannten Zustand halt und die rotatorisch und axial in dem Gehause 470 bewegbar ist, wobei die Drehhulse 440 an ihrem inneren Umfang Fuhrungsbahnen aufweist welche zumindest aus einem ersten Profil 441a, aus einem vierten Profil 441b, aus einer ersten Fuhrung 442, einer zweiten Fuhrung 443 und einer Verriegelungsbahn 444 zusammengesetzt werden, eine Nadelschutzfeder 420, die die Energie fur die Verschiebung der Nadelschutzeinrichtung 410 und der Drehhulse 440 in die Nadelschutzposition oder eine zweite Position liefert, eine Steuerhulse 480, welche axial fest in dem Gehause 470 angebracht ist und wobei die Steuerhulse 480 an ihrer Aussenwand mindestens ein zweites Profil 480a und ein drittes Profil 480b und an ihrer Innenwand mindestens einen inneren Ausloseschnapper 480c aufweist, eine Ausgleichsfeder 31 , welche sich an dem proximalen Ende des Wirkstoffbehalters 110 abstutzt und uber die der Wirkstoffbehalter 110 in und gegen die Ausschuttrichtung elastisch am Gehause 470 abgestutzt wird, und einen Endklicker 490 der am Ende der Ausschuttsequenz ein akustisches und/ oder taktiles Signal erzeugt.」(第13頁第11-32行)(訳文「図26から図36において、注射デバイスのさらなる第4の実施形態が示される。図26において、注射デバイスの個々の部材が記述される。注射デバイスは、針保護装置410とスリーブ状のハウジング470とであって、針保護装置410はハウジング470内に、長手軸Lの回りに、長手方向に変位可能に受容されており、同時に起動要素として使われる針保護装置410とハウジング470と、軸方向にハウジング470と固定接続されかつ中に作用物質容器110が挿入できる先端ホルダ430と、特に作用物質容器110を先端ホルダ430内で固定するためにハウジング470内に組み入れられていてよいホルダリング435と、作用物質容器110に作用できかつ周部に少なくとも1つのホルダ面452を備えるスリーブの形をした駆動装置450と、注出シークエンスのためのエネルギーをもたらす圧力バネとして作用するコイルバネの形をした駆動手段460と、注射デバイスが起動するまで駆動装置450と駆動手段460とを応力がかかった状態で保持し、ハウジング470内で回転方向と軸方向とに移動可能な回転スリーブ440であって、回転スリーブ440はその内周部に、少なくとも第1のプロファイル441aと第4のプロファイル441bと第1のガイド442と第2のガイド443とロック軌道444とから構成されるガイド軌道を備える回転スリーブ440と、針保護装置410と回転スリーブ440とが針保護ポジションあるいは第2のポジションへ変位するためのエネルギーをもたらす針保護バネ420と、軸方向に固定されてハウジング470内に取り付けられている制御スリーブ480であって、制御スリーブ480はその外壁部に、少なくとも1つの第2のプロファイル480aと第3のプロファイル480bとを備え、内壁部には少なくとも1つの内側解放キャッチ480cを備える制御スリーブ480と、作用物質容器110の近位端部に支持され、作用物質容器110を注出方向におよび注出方向の逆方向にハウジング470に沿って柔軟に支持する補償バネ31と、注出シークエンスの終了時に音のおよび/あるいは触覚の信号を生成する最終クリッカ490とを含む。」)
「Eine axiale Bewegung der Steuerhulse 480 gegenuber dem Gehause 470 wird verhindert, indem mindestens ein Nocken 481 an der Steuerhulse 480 in mindestens einen Halterungsschlitz 471 im Gehause 470 eingreift, insbesondere verschnappt.」(第14頁第16-18行)(訳文「ハウジング470に対する制御スリーブ480の軸方向の移動は、制御スリーブ480の少なくとも1つのカム481が、ハウジング470の少なくとも1つのホルダスリット471に係合、特にスナップ嵌合することによって防がれる。」)
図26、27より、制御スリーブ480が、近位端と、該近位端に取り付けられて近位端から遠位に延びる突出部(図26において矢印で示す部位を参照。)とを備える点、補償バネ31がハウジング470内に取り付けられ、制御スリーブ480の遠位端から遠位方向に延びている点、補償バネ31が制御スリーブ480と一体である点が看取される。
「[図:0001406659000001.jpg][図:0001406659000002.jpg]」
図27より、制御スリーブ480はハウジング470の近位端の開口の内径よりも大きい外径の近位端を有する点、補償バネ31は作用物質容器110のフランジを支持する点が看取される。
図28より、カム481が、制御スリーブ480の近位に位置する点、制御スリーブ480が、カム481により軸方向に固定されてハウジング470内に取り付けられている点が看取される。
「[図:0001406659000003.jpg]」
上記各事項を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「液状の製品あるいは薬剤を自動的に注出するための機構を備える注射デバイスであって、スリーブ状のハウジング470と、カム481により軸方向に固定されてハウジング470内に取り付けられている制御スリーブ480と、ハウジング470内に取り付けられ、作用物質容器110の近位端部に支持されて、作用物質容器110のフランジを注出方向にハウジング470に沿って柔軟に支持する補償バネ31と、を含み、制御スリーブ480は、ハウジング470の近位端の開口の内径よりも大きい外径の近位端と、該近位端に取り付けられて該近位端から遠位に延びる突出部とを備え、補償バネ31が制御スリーブ480の遠位端から遠位方向に延びており、補償バネ31は、制御スリーブ480と一体であり、ハウジング470に対する制御スリーブ480の軸方向の移動は、制御スリーブ480の少なくとも1つのカム481が、ハウジング470の少なくとも1つのホルダスリット471にスナップ嵌合することによって防がれており、カム481は、制御スリーブ480の近位に位置する、注射デバイス。」
(b)甲第2号証(特表2013-526904号公報)
甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、薬剤送達装置に関し、特に、注射が完了したときに、聞くことができる、触知できる、または見ることができる確認をユーザに与える、改善されたより使い易い自動薬剤送達装置に関する。」
「【0030】図1aは、代表的な薬剤送達装置1の筒状ハウジング20の斜視図を示す。・・・薬剤注射装置1はさらに、筒状伸長部22を含み、・・・」
図5から、筒状伸長部22の端部に1つのU字状の部位があることが看取できる。
「[図:0001406659000004.jpg]」
上記各事項を総合すると、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「注射が完了したときに、聞くことができる、触知できる、または見ることができる確認をユーザに与える自動薬剤送達装置であって、筒状ハウジング20を有し、筒状伸長部22を含み、筒状伸長部22がその端部に1つのU字状の部位を有する、自動薬剤送達装置。」
(c)甲第3号証(特表2009-538664号公報)
甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】〔発明の分野〕本発明は、注射器を受容し、出口孔を通して注射器を延ばし、注射器の中身を放出し、その後、注射器を自動的に後退させるタイプの注入装置に関する。」
「【0022】〔発明の詳細な説明〕図1aおよび図1bは、注入装置ハウジング112を有する、注入装置110を示す。」
「【0023】図2aおよび図2bに示されるように、ハウジング112は、従来型の皮下注射器114を収容しており、この注射器は、注射器本体116であって、貯蔵部を定め、かつ一端部においては(不図示の)皮下注射針で、他端部においてはフランジ120で、終端している、注射器本体116を含む。」
「【0039】解放機構260は、2つの制動要素270を含み、この2つの制動要素270はそれぞれ、弧の各端部がピボット点Pで解放機構250に接続された材料の弧の形(form of an arc of material)をとっている。制動要素270は、解放機構250の対向する側面にある。制動要素270はそれぞれ、材料の弾性、および点Pで形成されたレバーアームの結果として、点Pの周りを弾力的に旋回することができる。制動要素270は、解放機構250の本体に向かう方向Rに、弾力的に旋回することができ、反対側の方向に付勢をもたらす。このようにして、解放機構250が突出部260によりアーム172に強固に接続されている場合、製造中に注射器114を挿入した後、各弧の凸部Cが、フランジ120の上面176と並置する。したがって、注射器114が注射器キャリヤー150内で方向Rに動くことが阻まれる。」
図4aから、解放機構250の制動要素270が注射器114のフランジ120に当接していることが看取できる。
「[図:0001406659000005.jpg]」
図4bから、制動要素270がU字状を呈していることが看取できる。
「[図:0001406659000006.jpg]」
上記各事項を総合すると、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「注射器114を受容し、出口孔を通して注射器114を延ばし、注射器114の中身を放出し、その後、注射器114を自動的に後退させるタイプの注入装置において、注入装置ハウジング112を有し、ハウジング112は、従来型の皮下注射器114を収容しており、解放機構250は、その対向する側面にあり、U字状の弧の各端部がピボット点Pで解放機構250に接続された材料のU字状の弧の形(form of an arc of material)をとっている2つの制動要素270を有し、制動要素270はそれぞれ、材料の弾性、および点Pで形成されたレバーアームの結果として、点Pの周りを、解放機構250の本体に向かう方向Rに弾力的に旋回して、反対側の方向に付勢をもたらすことができ、解放機構250が突出部260により注射器キャリヤー150のアーム172に強固に接続されている場合、製造中に注射器114を挿入した後、解放機構250の制動要素270が注射器114のフランジ120に当接し、各弧の凸部Cが、フランジ120の上面176と並置して、フランジ120に方向Rと反対側の方向の付勢をもたらすことで、注射器114が注射器キャリヤー150内で方向Rに動くことが阻まれる、注入装置110。」
c 対比
本件発明9と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「液状の製品あるいは薬剤を自動的に注出するための機構を備える注射デバイス」は、その機能及び構造からみて、本件発明9の「自動注射器(1)」に相当する。そして、甲1の図26~27の記載を踏まえると、甲1発明の、「ハウジング470」と、「補償バネ31」を備えた「制御スリーブ480」とからなる構成は、実態として注射デバイスの外郭を構成する部位を有するものといえるから、本件発明9の「ハウジング(2)」又は「自動注射器(1)のハウジング(2)」に相当するといえる。
以下同様に、「作用物質容器110」は「シリンジ(3)」に、「制御スリーブ480」の「近位端」は「近位端(2.4、15.6)」に、「制御スリーブ480」の「突出部」は「突出部(15.3)」に、「補償バネ31」は「可撓部(15.1)」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「制御スリーブ480」と「補償バネ31」とを組み合わせたものは、本件発明9の「シリンジサポート(15、15’)」に相当する。
そうすると、甲1発明の「制御スリーブ480」及び「作用物質容器110のフランジを注出方向にハウジング470に沿って柔軟に支持する補償バネ31」からなる部材は、本件発明9の「自動注射器(1)のハウジング(2)に対して、シリンジ(3)の軸方向位置を支持するためのシリンジサポート(15、15’)」に相当する。
そして、甲1発明の「ハウジング470内に取り付けられている制御スリーブ480」及び「補償バネ31」からなる部材は、本件発明9の「ハウジング(2)」が「含」む「シリンジサポート(15、15’)」に相当する。
また、甲1発明の「制御スリーブ480」の「近位端に取り付けられて近位端から遠位に延びる突出部」は、本件発明9の「該シリンジサポート(15、15’)から遠位方向(D)へ突出する突出部(15.3)」であって、かつ、「シリンジサポート(15、15’)の近位端(2.4、15.6)から遠位に延びる」「突出部(15.3)」に相当する。
さらに、甲1発明の「制御スリーブ480の遠位端から遠位方向に延び」、「作用物質容器110のフランジを注出方向にハウジング470に沿って柔軟に支持する補償バネ31」は、甲1の図26において矢印で示す突出部の構成を踏まえれば、本件発明9の「該突出部(15.3)に軸方向に接合し、シリンジ(3)をハウジング(2)内で遠位方向(D)へ軸方向に付勢するように適用される可撓部(15.1)」に相当する。
そして、ここまでの相当関係を踏まえると、甲1発明は、シリンジサポートとハウジングとを含み、該ハウジングはシリンジサポートを含む注射デバイスであるといえる。
そうすると、両者は、
「自動注射器(1)であって、ハウジング(2)と;自動注射器(1)のハウジング(2)に対して、シリンジ(3)の軸方向位置を支持するためのシリンジサポート(15、15’)とを含み、該シリンジサポート(15、15’)は:該シリンジサポート(15、15’)から遠位方向(D)へ突出する突出部(15.3)、ここで、該突出部(15.3)は、シリンジサポート(15、15’)の近位端(2.4、15.6)から遠位に延びる、と、該突出部(15.3)に軸方向に接合し、シリンジ(3)をハウジング(2)内で遠位方向(D)へ軸方向に付勢するように適用される可撓部(15.1)とを含み、ここで、該ハウジング(2)はシリンジサポート(15、15’)を含む、前記自動注射器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明9では、「該シリンジサポート(15、15’)は、少なくとも2つの突出部(15.3)を含み、該突出部(15.3)の各々は1つの可撓部(15.1)を含む」のに対し、甲1発明では、「制御スリーブ480は、」「該近位端に取り付けられて該近位端から遠位に延びる突出部」「を備え、補償バネ31が制御スリーブ480の遠位端から遠位方向に延びており、補償バネ31は、制御スリーブ480と一体であ」る点。
d 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点は、実質的な相違点である。
上記b(b)を含め、甲2の全ての記載を参照しても、甲2には可撓部について何ら開示がないから、仮に甲1発明に甲2記載事項を組み合わせたとしても、上記相違点に係る事項とすることはできない。
また、上記b(c)のとおり、甲3には、その機能及び構造から本件発明9の「2つの可撓部(15.1)」に相当する「2つの制動要素270」(「甲3記載事項」参照)が開示されているものの、本件発明9の「突出部(15.3)」に相当する解放機構250の具体的な形状は、図4bをみても明らかでない。
そして、甲1発明は、制御スリーブ480が、その近位端に取り付けられて近位端から遠位に延びる突出部を備えているところ、制御スリーブ480において形成される当該突出部は、上記b(a)の図26の記載からみて、その形態が制御スリーブ480の近位端から遠位に延びる複数個のものではなく、全体的に円筒状の1個のものとして構成されている。
そうすると、甲2、甲3には「少なくとも2つの突出部」の開示がないから、これらを甲1発明に適用しても上記相違点に係る本件発明9の事項に至るものではないし、また、甲1発明の制御スリーブ480における突出部を少なくとも2つのものに分割する動機も見当たらない。
よって、甲3の解放機構250の突出部260及び制動要素270の構造を甲1発明の制御スリーブ480に適用して上記相違点に係る本件発明9の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
また、シリンジサポートは、少なくとも2つの突出部を含み、該突出部の各々は1つの可撓部を含むことが周知・慣用技術であるとする他の証拠はない。
e 小活
以上のとおり、本件発明9は、甲1発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものであるとはいえない。
また、本件発明9は、甲1発明、甲第2、3号証の記載事項及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(イ)請求項10、13~17について
請求項10、13~17は、請求項9を引用するものであるから、上記(ア)と同様の理由により、本件発明10、13~17は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものであるとはいえない。
また、本件発明10、13~17は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(ウ)異議申立理由1及び2についてのまとめ
よって、本件訂正後の請求項9、10、13~17に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消されるべきものであるとはいえない。
(2)異議申立理由3(サポート要件)
ア 異議申立理由3の概要
本件訂正後の請求項9、10、13~17に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
すなわち、本件訂正前の請求項1では、「突出部(15.3)は、該シリンジサポート(15、15’)に近位に取り付けられ」と特定されているところ、「取り付ける」とは、一の部材を他の部材に装置することを意味するから、上記の特定は、突出部とシリンジサポートとが別個の部材であることを特定していることになる。
しかし、本件特許の発明の詳細な説明には、シリンジサポートが突出部を含むことは記載されているものの、突出部とシリンジサポートとを別部材として、突出部をシリンジサポートに取り付けることは記載されていない。
したがって、当該請求項9、10、13~17に係る発明は本件特許の発明の詳細な説明に記載したものでなく、請求項9、10、13~17に係る特許は取り消されるべきものである。
イ 上記異議申立理由3に対する当審の判断
本件訂正により、訂正前の請求項1を減縮した請求項9は、「該シリンジサポート(15、15’)に近位に取り付けられ、」との記載が削除され、シリンジサポート(15、15’)が、その近位端から遠位に延びる突出部(15.3)で形成されていることが明確となったことにより、当該取消理由は解消した。
したがって、本件訂正後の請求項9に係る発明並びに請求項9の記載を引用する請求項10、13~17に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、それらの請求項に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消されるべきものであるとはいえない。
(3)異議申立理由4(明確性)
ア 異議申立理由4の概要
本件訂正後の請求項9、10、13~17に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
具体的には、次のとおりである。
(ア)本件訂正前の請求項1について
本件訂正前の請求項1では、「該シリンジサポート(15、15’)から遠位方向(D)へ突出する突出部(15.3)」、「突出部(15.3)は、該シリンジサポート(15、15’)に近位に取り付けられ」と特定される一方、本件特許の発明の詳細な説明には、シリンジサポートが突出部を含むことが記載されており、突出部はシリンジサポートから突出している、すなわち、突出部とシリンジサポートは別個の構成部材であるとした上記の特定は、本件特許の発明の詳細な説明の記載と整合しないから、当該請求項1に係る発明は明確でない。
(イ)本件訂正前の請求項6について
本件訂正前の請求項6では、「後方部材(2.2)」及び「前方部材(2.3)」が特定されているところ、上記「後方部材(2.2)」、「前方部材(2.3)」が何であるのか明らかでないから、当該請求項6に係る発明は明確でない。
(ウ)本件訂正前の請求項7について
本件訂正前の請求項7には「ハウジングロック(17)」との記載があるが、当該「ハウジングロック(17)」には、「前記」と付されておらず、当該請求項7が引用する上記訂正前の請求項6における「ハウジングロック(17)」と同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項7に係る発明は明確でない。
(エ)本件訂正前の請求項8について
本件訂正前の請求項8では、「近位端(2.4、15.6)」が特定されているところ、上記「近位端(2.4、15.6)」が何の近位端であるのか明らかでなく、当該請求項8に係る発明は明確でない。
(オ)本件訂正前の請求項10について
本件訂正前の請求項10には「可撓部(15.1)」、「シリンジ(3)」との記載があるところ、当該「可撓部(15.1)」、「シリンジ(3)」が、当該請求項10が引用する上記訂正前の請求項1~9のいずれかにおける「可撓部(15.1)」、「シリンジ(3)」とそれぞれ同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項10に係る発明は明確でない。
また、当該請求項10に係る発明は、「シリンジ(3)」を含んでいるのか否か明らかでない。
(カ)本件訂正前の請求項11について
本件訂正前の請求項11には、「可撓部(15.1)」との記載があるところ、当該「可撓部(15.1)」が、当該請求項11が引用する本件訂正前の請求項1~10のいずれかにおける「可撓部(15.1)」と同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項11に係る発明は明確でない。
また、本件訂正前の請求項11には「可撓部(15.1)は遠位方向(D)に付勢される」との記載があるところ、本件訂正前の請求項1、及び本件特許の発明の詳細な説明の記載によれば、可撓部(15.1)は、シリンジ3を遠位方向Dへ付勢する機能を備えたものと解するのが相当であるから、上記「可撓部(15.1)は遠位方向(D)に付勢される」と特定される当該請求項11に係る発明は明確でない。
(キ)本件訂正前の請求項12について
本件訂正前の請求項12には「シリンジサポート(15、15’)」との記載があるところ、当該「シリンジサポート(15、15’)」が、当該請求項12が引用する本件訂正前の請求項9~11のいずれかにおける「シリンジサポート(15、15’)」と同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項12に係る発明は明確でない。
また、本件訂正前の請求項12には、「剛性突出部(15.3)」との記載があるところ、当該「剛性突出部(15.3)」と、当該請求項12が引用する本件訂正前の請求項9~11のいずれかにおける「突出部(15.3)」との関係が明らかでなく、当該請求項12に係る発明は明確でない。
(ク)本件訂正前の請求項13について
本件訂正前の請求項13には「ハウジング(2)」との記載があるところ、当該「ハウジング(2)」が、当該請求項13が引用する本件訂正前の請求項9~12のいずれかにおける「ハウジング(2)」と同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項13に係る発明は明確でない。
(ケ)本件訂正前の請求項14について
本件訂正前の請求項14には「ハウジング(2)」との記載があるところ、当該「ハウジング(2)」が、当該請求項14が引用する本件訂正前の請求項9~13のいずれかにおける「ハウジング(2)」と同じものを指しているのか否か明らかでなく、当該請求項14に係る発明は明確でない。
(コ)本件訂正前の請求項2~5、9について
本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項2~5、9に係る発明も同様に、明確でない。
イ 上記異議申立理由4に対する当審の判断
(ア)本件訂正前の請求項1を減縮した本件訂正後の請求項9では、シリンジサポート(15、15’)がその近位端から遠位に延びる突出部(15.3)で形成されていることが明確になったことにより、当該取消理由は解消した。
(イ)本件訂正前の請求項6を減縮した本件訂正後の請求項17では、後方部材(2.2)と前方部材(2.1)とがハウジング(2)の部材であることが特定されたことにより、当該取消理由は解消した。
(ウ)本件訂正前の請求項7が本件訂正により削除されたことにより、当該取消理由は解消した。
(エ)本件訂正前の請求項8が本件訂正により削除されたことにより、当該取消理由は解消した。
(オ)本件訂正前の請求項10は、「可撓部(15.1)」、「シリンジ(3)」との各発明特定事項に関し、これら各発明特定事項の記載に先行する同記載との関係において、同じものを指しているのか否か明らかでない、という取消理由が示されたところ、本件訂正により、当該取消理由は解消した。
(カ)本件訂正前の請求項11は、「可撓部(15.1)」との発明特定事項に関し、当該発明特定事項の記載に先行する同記載との関係において、同じものを指しているのか否か明らかでない、という取消理由が示されたところ、本件訂正により、当該取消理由は解消した。
(キ)本件訂正前の請求項12は、「シリンジサポート(15、15’)」との発明特定事項に関し、当該発明特定事項の記載に先行する同記載との関係において、同じものを指しているのか否か明らかでない、という取消理由が示されたところ、本件訂正により、当該取消理由は解消した。
(ク)本件訂正前の請求項13は、「ハウジング(2)」との発明特定事項に関し、当該発明特定事項の記載に先行する同記載との関係において、同じものを指しているのか否か明らかでない、という取消理由が示されたところ、本件訂正により、当該取消理由は解消した。
(ケ)本件訂正前の請求項14は、「ハウジング(2)」との発明特定事項に関し、当該発明特定事項の記載に先行する同記載との関係において、同じものを指しているのか否か明らかでない、という取消理由が示されたところ、本件訂正により、当該取消理由は解消した。
なお、上記(オ)~(ケ)に関して、上記した4つの発明特定事項に加え、「突出部(15.3)」及び「近位端(2.4、15.6)」との発明特定事項についても、一部、「該」や「前記」などの語が依然として付されていないものが存在するが、これらの発明特定事項はすべて、名称記載の直後に括弧書きで、図面の図番に対応する同じ数字が付されていることから、先行する同記載との関係において、同じものを指していることが明確となっている。
以上のとおり、本件訂正後の請求項9、10、13~17に係る発明は明確であるから、それらの請求項に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消されるべきものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明9、10、13~17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明9、10、13~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正前の請求項1~8、11、12は本件訂正により削除されたため、請求項1~8、11、12についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700959