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特許異議申立

2021-700938

熱可塑性樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法

審判番号
2021-700938
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-041913外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6860149
請求日
2021年09月30日
審決日
2021年12月16日
公報発行日
2022年05月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6860149号発明「熱可塑性樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6860149号の請求項に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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1.本件特許の設定登録までの経緯

本件特許第6860149号に係る出願(特願2018-41913号、以下、「本願」ということがある。)は、平成30年3月8日に出願人東レ株式会社及び株式会社第一精工舎(以下、「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和3年3月30日に特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、特許掲載公報が令和3年4月14日に発行されたものである。

2.本件特許異議申立ての趣旨

本件特許につき令和3年9月30日に特許異議申立人:高橋 朗(以下「申立人」という。)より、「特許第6860149号の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された各発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。

よって、本件特許異議申立てに係る審理対象は、全ての請求項に係る特許についてであり、審理対象外の請求項は存しない。

第2 本件発明

本件特許第6860149号の請求項1~2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項1に係る発明、請求項2に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」、「本件発明2」といい、それらを総称して、「本件発明」という。また、本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
熱可塑性樹脂、ならびに銅および/または銅合金を溶融混練する工程を含む熱可塑性樹脂組成物成形品の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が10~800μmであり、
銅および銅合金の平均粒子径D50が1~300μmであり、
銅および銅合金のBET比表面積が3,000(cm2/g)以上35,000(cm2/g)以下であり、
前記熱可塑性樹脂組成物成形品が、熱可塑性樹脂、銅、および銅合金の合計100重量部に対して、25~50重量部の熱可塑性樹脂と、50~75重量部の銅および銅合金を含有する熱可塑性樹脂組成物成形品の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物成形品の製造方法。 」

第3 申立人が申し立てた特許異議申立理由

申立人が申し立てた特許異議申立の理由(以下、「申立理由」という。)の概要及び証拠方法は以下のとおりである。

1.申立理由の概要

(1)申立理由1(進歩性の欠如)

本件発明1~2は、甲第1号証~甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由2(実施可能要件違反)

本件明細書には、樹脂粉末の粒子径、銅粉の粒子径及び比表面積について、「参考例」として特定の数値は開示されているが、これらは「実施例」ではないし、「参考例」ですら、本件発明の数値範囲のうち特定の数値を開示するに過ぎず、本件発明1の数値範囲をカバーするものではないから、当業者が本件発明1~2を実施するために過度の試行錯誤を要することは明らかである。

そうすると、本件発明1~2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件違反)

本件明細書の実施例には、ポリアミドの含有量が30重量部及び40重量部、PBTの含有量が40重量部、銅粉の含有量が60重量部及び70重量部の記載があるにすぎず、本件発明1に記載の熱可塑性樹脂及び銅粉の含有量の数値範囲は本件明細書においてサポートされていない。

また、本件明細書には、熱可塑性樹脂の粒子径、銅粉の粒子径及び比表面積について、「参考例」として、特定の数値は開示されているが、これらは「実施例」ではないし、「参考例」ですら、特定の数値を開示するに過ぎず、本件発明1の数値範囲をカバーするものではない。

そうすると、本件発明1~2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2.証拠方法

甲第1号証:特開2004-35779号公報
甲第2号証:特開昭56-25944号公報
甲第3号証:特開昭62-68833号公報
甲第4号証:特開昭63-21144号公報
甲第5号証:特開平6-320535号公報
甲第6号証:特開昭54-146855号公報
甲第7号証:特開2006-45529号公報
甲第8号証:三井金属機能性粉体事業部(主要製品/電子材料用金属粉)

のウェブサイト、https://www.mitsui-kinzoku.co.jp/

project/kinoufun/products/electronic/

検索日:2020年9月22日
甲第9号証:古河ケミカルズ株式会社(製品案内/金属銅粉)のウェブ

サイト https://www.furukawachemicals.co.jp/fkd.html

検索日:2020年9月22日

(以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を、「甲1」~「甲9」という。)

第4 当審の判断

当審は、申立人が主張する上記の申立理由は、いずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件発明1~2に係る特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものと判断する。

1.申立理由1の検討

(1)甲各号証の記載事項及び甲1に記載された発明

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ア.甲1(特開2004-35779号公報)の記載事項及び

甲1に記載された発明

(ア)甲1の記載事項

甲1a

「【請求項1】
抗菌性を有する金属粉を成分として樹脂に含有させたことを特徴とする、抗菌、防カビおよび生物防除作用を有するプラスチック製品。
【請求項2】
抗菌性金属粉として銅粉、銅合金粉、または亜鉛粉のいずれかが使用されることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック製品。
【請求項3】
樹脂として、ABS、PE、PS、PA、PMMA、PP、POM、PVC、AS、PBTからなる群から選ばれたものが使用されることを特徴とする、請求項1のプラスチック製品。
【請求項4】
樹脂と、抗菌性金属粉と、分散剤とを充分に混合した後、この混合物を押出機で押出して糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を生成する工程と、該糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を所定の大きさにカットして抗菌性金属粉含有樹脂ペレットを生成するする工程と、を含む抗菌、防カビおよび生物防除作用を有するプラスチック製品を製造する方法。」

甲1b

「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によるプラスチック製品は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、一般にナイロンと称されるPA(ポリアミド)、一般にアクリル樹脂と称されるPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリオキシメチレン)、一般に塩ビと称されるPVC(ポリビニルクロリド)、AS(アクリルスチロール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を含む群から選ばれた樹脂に、銅粉を約0.1~約80重量%、好ましくは約5~約10重量%含有させて形成されたペレットからなる。本発明のプラスチック製品には、また、この銅粉含有ペレットから通常のプラスチック製品の成型法を用いて成型された、各種の形状、寸法の容器類、抗菌盆、冷蔵庫、電子レンジ、食器乾燥機、給湯ポット、浄水器等の各種台所用品の部品をはじめ、エアコン、洗濯機、加湿器の部品、トイレや洗面所の各種器具や備品類、不特定多数の人が触れる各種公共施設の器具や備品類、その他の滅菌、殺菌、防カビ等の抗菌作用を有することが望まれる文具類、建材等の各種の製品、水耕栽培用水路、雨樋、植木鉢、防貝作用を備えたブイ類、船舶用品等、有害な生物に対する生物防除作用を発揮することが望まれる各種の製品が含まれる。
【0009】
銅粉の含有量は、抗菌作用、防カビ作用、生物に対する防除作用と、成型の容易性、製品の許容脆性、加工性等を考慮して、通常は約1~約80重量%の範囲に設定されるが、プラスチック製品の使用目的、使用状況によっては約0.1重量%の含有量でも充分の抗菌作用、防カビ作用、生物防除作用が得られることが確かめられている。なお、上記の範囲の銅分を混入したプラスチックについて、引っ張り強度、曲げ強度について試験したところ、銅粉を含まない通常のプラスチックのそれと比べて何ら遜色のないことが確かめられた。
【0010】
樹脂に混入される銅粉としては、いわゆる粉末状、粒状、針状、短繊維状、鱗片状、薄片状等の種々の形状のものが使用可能である。本明細書では、これらを“銅粉”の用語で総称する。銅粉の大きさは、約20~約100μm、好ましくは約30~45μmの範囲にある。混入された銅粉の一部は、成型されたプラスチック製品の表面にも安定した状態(容易に剥離または脱落しない状態で(例えば、銅粉の形状を体積に比べて表面積がより大きくなるような形状にすることなどによる))で露出していることが抗菌性、防カビ製、生物に対する防除作用を持続的に発揮する上で望ましい。」

甲1c

「【0011】
図1には本発明の実施形態による銅粉を成分として含有するプラスチック・ペレットの製造方法が概略的に示されている。同図で、ホッパー1より前述のABS、PE、PS、PA、PMMA、PP、POM、PVC、AS、PBTを含む群から選ばれた樹脂と、銅粉と、適量の分散剤とを投入し、例えばタンブラーあるいはヘンシェルミキサーで充分に三種混合した後、例えば一軸混練押出機2で糸状または紐状の銅粉含有樹脂3を生成する。この糸状または紐状の銅粉含有樹脂3を冷却用水槽4で冷却し、次いで例えばエアーワイパー5で付着した水分を除去すると共に乾燥させ、ペレタイザー6に供給する。ペレタイザー6は糸状または紐状の銅粉含有樹脂3を所定の大きさにカットしてペレット状にする。生成されたペレットは給送パス7を経て例えば振動篩8に送られ、大きさが選別されて、所定寸法の銅粉含有ペレットが生成される。上記の樹脂の他に例えばPC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)についても実施したが、PCおよびPETは分子量が著しく小さく、銅粉と馴染み難く、銅粉を均一に混入し難いことから、本発明のプラスチック製品を製造するための樹脂として使用不能ではないが、あまり適さない。
【0012】
上記の樹脂に混入される銅粉としては、いわゆる粉末状のものの他に前述の粒状、針状、短繊状、鱗片状、薄片状等の種々の形状のものも含まれる。また、銅粉の大きさは、約20~約100μmの範囲でよいが、約30~約45μmの範囲にあることが好ましい。銅粉の含有量は、通常は約1~80重量%、好ましくは約5~約10重量%の範囲にあるが、約0.1重量%の銅粉含有量でも所望の抗菌作用、防カビ作用、さらに生物に対する防除作用のあることが確かめられており、銅粉の含有量は上記の範囲に限定されるべきではない。
【0013】
顕微鏡的に見れば、生成された各ペレット毎の銅粉含有量には若干のバラツキがあるが、生成された全てのペレットを充分にブレンドして、前述の各種のプラスチック製品を成型すると、所定量の銅粉を実質的に均等に含有するプラスチック製品が形成される。」

(イ)甲1に記載された発明(甲1発明)

甲1の請求項4には、「樹脂と、抗菌性金属粉と、分散剤とを充分に混合した後、この混合物を押出機で押出して糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を生成する工程と、該糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を所定の大きさにカットして抗菌性金属粉含有樹脂ペレットを生成するする工程と、を含む抗菌、防カビおよび生物防除作用を有するプラスチック製品を製造する方法。」が記載され、甲1の【0008】、請求項3及び【0011】には、樹脂として「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、一般にナイロンと称されるPA(ポリアミド)、一般にアクリル樹脂と称されるPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリオキシメチレン)、一般に塩ビと称されるPVC(ポリビニルクロリド)、AS(アクリルスチロール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を含む群から選ばれた樹脂」を用いること、甲1の【0012】及び【0009】~【0010】には、樹脂に混入される銅粉として、大きさが「約20~約100μmの範囲」であるものを製品の「約1~80重量%」の範囲で用いることが記載されている。

以上の記載事項からすると、甲1には、以下の発明(甲1発明)が記載されていると認められる。

「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PVC(ポリビニルクロリド)、AS(アクリルスチロール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を含む群から選ばれる樹脂と、製品の約1~約80重量%である、大きさが約20~約100μmの範囲にある銅粉である抗菌性金属粉と、分散剤とを充分に混合した後、この混合物を押出機で押出して糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を生成する工程と、該糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を所定の大きさにカットして抗菌性金属粉含有樹脂ペレットを生成する工程と、を含む抗菌、防カビおよび生物防除作用を有するプラスチック製品を製造する方法。」

イ.甲2~甲9の記載事項

甲2(特開昭56-25944号公報)

甲2a

「2.特許請求の範囲 銅合金、ポリアミド及び強化用無機フイラーから成る組成物であつて、各々の量的関係は、銅合金が、40乃至90重量%で、残りの60乃至10重量%がポリアミドと強化用無機フイラーから成り、両者の量的関係が、ポリアミド100重量部に対し、強化用無機フイラーが10乃至100重量部である銅合金組成物。」(1頁左下欄4~11行)

甲2b

「本発明でいう銅合金とは、アルミニウム青銅、マンガン青銅、リン青銅、鉛青銅等で呼ばれるCu,Zn,Al,P,Pb,Ni,Mn,Si,Cr、等の合金であり、本発明では粉末状で使用される。」(2頁左上欄1行~5行)

甲2c

「本発明組成物の製法は、銅合金粉末、ポリアミド樹脂、強化用無機フイラーをタンブラー型ブレンダーで予備混合し、これを溶融押出機で加熱混合し、ペレットとし、これを射出成形法により成形する。…
実施例1~3、比較例1~4
マンガン青銅粉末とナイロン66樹脂(硫酸相対粘度2.5)及びガラス繊維(長さ6mmのチヨツプドストランド)を第1表に示す配合比で50lタンブラー型ブレンダーで3分間ブレンドし、これを70mm一軸押出機で270~300℃で加熱溶融混合し、これをカツターで切断し、ペレツトにした。」(2頁右上欄11行~左下欄9行)

甲2d

「
[図:0001384213000001.jpg]
[図:0001384213000002.jpg]
」

甲3(特開昭62-68833号公報)

甲3a

「2.特許請求の範囲
1.(i)平均粒径が1μm超20μm以下で、250メッシュ篩上の残存量が8重量%以下である金属銅および銅を少なくとも60重量%含有する合金粉末の中から選ばれた、酸化処理されていてもよい少なくとも一種の金属粉末15~40重量%、(ii)ポリエチレン60~85重量%並びに、必要に応じて、(iii)重合体の炭素原子1000個に対して少なくとも1個のカルボキシル基を含有するエチレン系重合体1~10重量%を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物。」

(1頁左下欄4行~14行)

甲3b

「即ち得られた樹脂組成物を溶融成形してしかるべき機械的性能を得るためには、平均粒径が1μm超20μm以下の金属粉末を用いなげればならない。」(2頁右下欄6行~9行)

甲3c

「金属粉末の平均粒径は小さい程樹脂への分散性に優れ、樹脂組成物の機械的性能も優れ、平均粒径が1μm以下になると前記分散性や機械的性能の改善効果の上昇は余り認められないばかりでなく、金属粉末の価格が著しく高くなり、本発明の目的のためには経済性の点で1μm以下の平均粒径を有する金属粉末の使用は好ましいものと言えない。
本発明において金属粉末として使用することができる、銅を少なくとも60重量%含有する合金粉体としては、例えば黄銅、青銅、ニッケル-銅合金などをあげることができる。」(3頁左上欄2行~13行)

甲3d

「具体例としては、金属粉末とポリエチレン粉末(及びカルボキシル含有エチレン系重合体)を所定量ヘンシェルミキサーにて必要に応じて適宜配合される添加剤とともに混合したのち、押出機を用いて溶融混合してペレットとすることができる。このペレットは成形機を用いてフィラメント、シートもしくはフィルムなど任意の形状とすることができる。」(4頁右下欄3行~10行)

甲4(特開昭63-21144号公報)

甲4a

「2.特許請求の範囲
(1)高分子系シートもしくはテープの片面に接着層を設け、他面に水中防汚層を設けてなり、
この水中防汚層が、
(i)平均粒径が20μm以下で、250メッシュ篩上の残存量が8重量%以下である金属銅および銅を少なくとも60重量%含有する合金粉末の中から選ばれた少なくとも一種の金属粉末10~50重量%、(ii)ポリエチレン50~90重量%並びに、必要に応じて、(iii)重合体の炭素原子1000個に対して少なくとも1個のカルボキシル基を含有するエチレン系重合体1~10重量%を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする水中防汚性多層物。」(1頁左下欄4行~17行)

甲4b

「即ち得られる樹脂組成物を溶融成形してしかるべき機械的性能を得るためには、平均粒径が20μm以下の金属粉末を用いなければならない。」(2頁右下欄15行~17行)

甲4c

「金属粉末の平均粒径は小さい程樹脂への分散性に優れ、樹脂組成物の機械的性能も優れ、平均粒径が1μm以下になると前記分散性や機械的性能の改善効果の上昇は余り認められないばかりでなく、金属粉末の価格が著しく高くなり、本発明の目的のためには経済性の点で1μm超の平均粒径を有する金属粉末の使用が好ましい。
本発明において金属粉末として使用することができる銅を少なくとも60重量%含有する合金粉体としては、例えば黄銅、青銅、ニッケル-銅合金などをあげることができる。」(3頁左上欄11行~右上欄1行)

甲4d

「具体例としては、金属粉末とポリエチレン粉末(及びカルボキシ含有エチレン系重合体)を所定量ヘンシェルミキサーにて必要に応じて適宜配合される添加剤とともに混合したのち、押出機を用いて溶融混合としてペレットとすることができる。このペレットを成形機によりシートもしくはフィルムとし、これを高分子系シートもしくはテープにラミネートする。」(4頁右下欄1行~8行)

甲5(特開平6-320535号公報)

甲5a

「【請求項1】 合成樹脂粉末と粉末状無機質フィラーとを、合成樹脂粉末を軟化又は溶融させないで混合して造粒して得られた造粒物であって、該造粒物の粒径が0.1~5mmであることを特徴とする合成樹脂粉末とフィラーとの混合造粒物。
【請求項2】 合成樹脂粉末と粉末状無機質フィラーとを予め混合した後、水又は有機質溶媒又は両者の混合液を分散媒として加え、攪拌型造粒機により造粒後、乾燥することを特徴とする請求項1記載の合成樹脂粉末とフィラーとの混合造粒物の製造方法。」

甲5b

「【0002】
【従来の技術】合成樹脂に無機質フィラーを混入して樹脂の特性を改質する際、樹脂粉末又はペレットとフィラー粉末とをそれぞれ原料のまま単独で、もしくは両者を予め混合後、直接、成形機に供給する方法が知られている。この場合、フィラーは粉末であるため、成形機のホッパー内でブリッジ現象(いわゆる棚吊り)あるいはスクリューへの食い込み不良等が発生し、生産性の低下及び品質のバラツキ等の問題が生じる。
【0003】そこで、樹脂ペレットとフィラーの造粒品とをそれぞれ単独で、もしくは両者を予め混合後、成形機に供給する方法(特開昭51-90336号)、樹脂粉末とフィラー粉末とを攪拌機内で高速攪拌し、樹脂を軟化又は溶融させることにより、樹脂とフィラーとの混合物を得る方法等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前者の方法においては、成形後フィラーが粉末で使用したときのようには樹脂中に良好に分散せず、品質低下の原因となり易く、また樹脂とフィラーとの配合率のバラツキを生じ易い。後者の場合は、樹脂やフィラーの種類によっては、受ける熱履歴及び機械的な剪断のため、変質やひいては品質の低下を起こす等の問題点がある。
【0005】本発明は、上記従来の問題点を解決したものであって、その目的は取扱性、作業性が優れた粒状物とし、樹脂に対し粉末同様の高分散性を与え、かつ配合率のバラツキを無くし、品質の安定した樹脂成形品を得ることができる、合成樹脂粉末とフィラーとの混合造粒物及びその製造方法を提供することにある。」

甲5c

「【0009】本発明に用いられる合成樹脂粉末としては、熱可塑性樹脂の粉末であれば特に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の粉末が挙げられる。粉末の粒子径は100μm以下である。」

甲6(特開昭54-146855号公報)

甲6a

「1.発明の名称
合成樹脂粉末の製造方法
2.特許請求の範囲
(1)合成樹脂(A)、水(B)、炭化水素(C)及び界面活性剤(D)の混合物を、80℃以上の温度で攪拌して該樹脂を液中に分散させ、その後分散液を冷却することを特徴とする合成樹脂粉末の製造方法。」(1頁左下欄2行~8行)

甲6b

「実施例1~6 内容量250mlのオートクレーブ中に表1に示した合成樹脂のペレット50g、水135ml、トルエン15ml、界面活性剤としてラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを加え、2000RPMの攪拌速度(攪拌羽根先端にて300m/分の速度)にて攪拌下、約15分で常温から100℃まで加熱(80℃以上の温度保持時間:約5分間)、次いで約10分間で50℃まで冷却した。オートクレーブを開いたところ樹脂は細い粒子となつて液中に分散していた。分散液を…固液分離し粉末を気流乾燥により乾燥したところ、いずれも平均粒径300μ以下の真球状粒子形状の粉末が得られた。」(4頁右下欄下から5行~5頁左上欄9行)

甲7(特開2006-45529号公報)

甲7a

「【請求項1】
ポリアミド樹脂が溶媒に溶解されたポリアミド樹脂溶液を用いてポリアミド樹脂の粉末を製造する方法において、該ポリアミド樹脂溶液を、貧溶媒表面に霧状に噴霧することを特徴とするポリアミド樹脂粉末の製造方法。」

甲7b

「【0023】
2流体ノズルにおいて、空気または不活性ガスに加える圧力は、ノズルの性能および、ポリアミド樹脂溶液の粘度と送液量に依存し、例えば溶液粘度がおよそ1000mPa・sのポリアミド樹脂溶液を約500ml/hrで送液するとき、コンプレッサーで0.2~0.8MPaの圧力をかけることにより、得られるポリアミド樹脂の平均粒径は通常10~500μm、好ましい態様では20~200μmの範囲で制御できる。平均粒径の測定は光学顕微鏡による測定等によって行われる。また、ポリアミド樹脂の平均粒径が小さいほど溶媒への溶解速度が速く、上記粒径範囲においては良好な溶解性が得られる。」

甲8(三井金属機能性粉体事業部(主要製品/電子材料用金属粉)のウェブサイト)

「
[図:0001384213000003.jpg]
」(7頁)

甲9(古河ケミカルズ株式会社(製品案内/金属銅粉)のウェブサイト)

「
[図:0001384213000004.jpg]
」(2頁)

(2)本件発明1と甲1発明の対比、判断

ア.本件発明1と甲1発明の対比

本件発明1と甲1発明((1)ア(イ))を対比する。

甲1発明の「PA(ポリアミド)」、「PBT(ポリブチレンテレフタレート)」、「PE(ポリエチレン)」と「PP(ポリプロピレン)」、「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)」と「PS(ポリスチレン)」と「AS(アクリルスチロール)」は、本件明細書の【0017】~【0020】で挙げられている樹脂の具体的な例を勘案すると、本件発明1の「ポリアミド樹脂」、「ポリエステル樹脂」、「ポリオレフィン樹脂」、「ポリスチレン樹脂」にそれぞれ相当する。

甲1発明の「銅粉」は、本件発明1の「銅」に相当する。

甲1発明の「樹脂」と「銅粉である抗菌性金属粉」を「充分に混合した後、この混合物を押出機で押出して糸状または紐状の抗菌性金属粉含有樹脂を生成する工程」は、本件明細書の【0051】における「(A)熱可塑性樹脂、(B)銅および/または銅合金を溶融混練する方法は特に制限はない。例えば、単軸または2軸の押出機やニーダーや射出成形機等の混練機を用いて、(A)熱可塑性樹脂が溶融混練できる温度以上、(A)熱可塑性樹脂が融点を持つ場合は融点以上に上げた温度で溶融混練する方法等が挙げられる。」との記載に照らすと、本件発明1の「熱可塑性樹脂、ならびに銅および/または銅合金を溶融混練する工程」に相当する。

甲1発明の「プラスチック製品」は、「銅」と「PA(ポリアミド)」等の「樹脂」との2種以上の成分を含有する「抗菌性金属粉含有樹脂ペレット」であるから、本件発明1の「銅」を「含有する熱可塑性樹脂組成物成形品」に相当する。

以上からすると、本件発明1と甲1発明は、

「熱可塑性樹脂、ならびに銅を溶融混練する工程を含む熱可塑性樹脂組成物成形品の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリスチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類の熱可塑性樹脂であり、
銅および銅合金の平均粒子径D50が約20~約100μmである熱可塑性樹脂組成物成形品の製造方法。」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>

本件発明1では、熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が10~800μmに規定しているのに対して、

甲1発明では、樹脂を粒子形状で用いることや平均粒子径について特定されていない点

<相違点2>

本件発明1では、「銅および銅合金の平均粒子径D50が1~300μm」であるのに対して、

甲1発明では、銅粉の大きさが「約20~約100μm」である点

<相違点3>

本件発明1では、「銅および銅合金のBET比表面積が3,000(cm2/g)以上35,000(cm2/g)以下」と規定しているのに対して、

甲1発明では、「銅」の「BET比表面積」が特定されていない点

<相違点4>

本件発明1では、「熱可塑性樹脂」、「銅および銅合金」の含有量を、「熱可塑性樹脂、銅、および銅合金の合計100重量部」に対して、それぞれ「25~50重量部」、「50~75重量部」と規定しているのに対して、

甲1発明では、「銅」の含有量を、「プラスチック製品」の「約0.1~約80重量%」と規定し、「樹脂」と「銅」との合計100重量部に対する量として示していない他、「樹脂」の含有量についても特定されていない点

イ.相違点の検討

相違点1について検討する。

甲2には、40乃至90重量%の銅合金の粉末、60乃至10重量%のポリアミド(第1表によるとナイロン66チップが使用されている。)、強化用無機フイラーを、溶融押出機で加熱混合し、ペレットとし、これを射出成形法により成形して得られる銅合金組成物が記載されているが(甲2a、甲2b、甲2c)、粒状のポリアミドを用いることやポリアミドの平均粒子径及び銅合金の粉末の平均粒子径を一定の範囲に設定することについては甲2に記載も示唆もされていない。

甲3及び甲4には、平均粒径が1μm超20μm以下で、250メッシュ篩上の残存量が8重量%以下である金属銅等の金属粉末とポリエチレン粉末(及びカルボキシル含有エチレン系重合体)を所定量ヘンシェルミキサーにて混合したのち、押出機を用いて熔融混合し、ペレットとすることが記載されているが(甲3a、甲3d、甲4a、甲4d)、ポリエチレン粉末の平均粒子径を一定の範囲に設定することについては甲3及び甲4に記載も示唆もされていない。

甲5には、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂粉末と粉末状無機質フィラーを混合し、造粒して得られる、粒径が0.1~5mmの造粒物が記載されているが(甲5a、甲5c)、合成樹脂そのものの粒径を明示する記載はなく、かかる造粒物を、甲1発明のように、金属粉と混合し、押出機で押出して金属粉含有樹脂を生成することについても甲5に記載も示唆もされていない。

甲6には、合成樹脂、水、炭化水素及び界面活性剤の混合物を、80℃以上の温度で攪拌して、合成樹脂を液中に分散させ、その後分散液を冷却する、平均粒径300μ以下の真球状粒子形状の粉末が記載されているが(甲6a、甲6b)、得られた合成樹脂の粉末を、甲1発明のように、金属粉と混合し、押出機で押出して金属粉含有樹脂を生成することについては甲6に記載も示唆もされていない。

甲7には、ポリアミド樹脂溶液を、貧溶媒表面に霧状に噴霧して得られる、平均粒径10~500μmのポリアミド樹脂粉末が記載されているが(甲7a、甲7b)、得られたポリアミド樹脂粉末を、甲1発明のように、金属粉と混合し、押出機で押出し、金属粉含有樹脂を生成することについては甲7に記載も示唆もされていない。

甲8、甲9には、銅粉末の平均粒径と比表面積が記載されているが、当該銅粉末を、甲1発明のように、樹脂と混合し、押出機で押出して金属粉含有樹脂を生成することについては甲8、甲9に記載も示唆もされていない。

したがって、甲2~9の記載を参照しても、甲1発明において、「抗菌性金属粉」との混合に供される「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PVC(ポリビニルクロリド)、AS(アクリルスチロール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を含む群から選ばれる樹脂」として、粒子状のものを用い、その「平均粒子径D50」を「10~800μm」の範囲に設定することを当業者に動機付けるような記載や示唆は何ら見当たらない。

そして、本件明細書の【0029】には、「(A)熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が10μm未満であると、(B)銅および/または銅合金と混合させるために、押出機やニーダーや射出成形機等の混練機に供給するときに、供給口でブリッジが発生しやすく安定供給ができない。また、(A)熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が800μmを越える場合は、(B)銅および/または銅合金との溶融混練が十分でなく、得られる成形品の殺菌(抗菌)性能も成形外観も十分でない。」と記載されるところ(下記2(1)の本b)、実施例11(参考例)と実施例4の実験結果(同本cの【0076】【表1】)を説明している【0084】(同本c)には、「実施例11(参考例)はポリアミド6ペレットを用いたが、特定の粒子径を有するポリアミド6粉体を用いた実施例4の方が、成形品における銅および/または銅合金の分散が良好となるため、殺菌性能に優れることがわかる。」と記載されており、本件発明1は、熱可塑性樹脂の平均粒子径D50を「10~800μm」の範囲に設定することで、成形品の殺菌(抗菌)性能が向上するという、甲2~9に記載のない効果を奏するものと認められる。

そうすると、相違点1として挙げた、本件発明1の発明特定事項は、甲1~9の記載事項を参酌しても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

ウ.申立人の主張について

申立人は、「甲第3号証乃至第5号証から、熱可塑性樹脂の粉末と金属の粉末を溶融混合することは周知である。また、そのような溶融混同に使用する熱可塑性樹脂の粒子径は、当業者が適宜選択する設計事項に過ぎず、また、甲5号証には100μm以下であると記載がある。さらに、熱可塑性樹脂の粉末として、甲第6号証に300μm以下の合成樹脂粉末が開示されており、甲第7号証には、10~500μmのポリアミド樹脂粉末が開示されている。すなわち、熱可塑性樹脂の粉末と金属の粉末を溶融混合することは周知技術にすぎず、しかも、「C 熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が10~800μmであり」との数値範囲は甲第5号証乃至甲第7号証に開示されている。」と主張する。

しかし、甲3、甲4に記載された「ポリエチレン粉末」の粒子径を適宜選択した場合、平均粒子径D50が「10~800μm」の範囲に至るとは必ずしもいえないし、そもそも、甲1には樹脂を粉末状(粒子状)で用いる旨の記載もないので、甲1発明における「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PVC(ポリビニルクロリド)、AS(アクリルスチロール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を含む群から選ばれる樹脂」について、甲3、4に何らの明示が無い「平均粒子径D50が10~800μm」である「粉末」状にすることを、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

また、甲5~甲7には、上記のとおりの粒径に関する記載があるとしても、甲5~甲7には、甲1発明のように、樹脂を金属粉と溶融混練して押出成形することを想定した記載はないから、甲1発明における、粒子状で用いる旨の記載もない甲1発明の「樹脂」について、甲5~甲7に記載された粒径範囲に設定することを、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

したがって、申立人の上記主張は理由がない。

エ.小括

以上のとおり、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易になし得たものとはいえないので、相違点2~4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明および甲1~9の記載事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2

本件発明2は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明および甲1~9の記載事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)申立理由1の検討のまとめ

以上からすると、本件発明1~2に係る特許は、申立人による申立理由1により取り消すことはできない。

2.申立理由2の検討

(1)本件明細書の記載事項

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本a

「【0003】
一般に、熱可塑性樹脂に殺菌性(抗菌性)を付与させる方法として、殺菌(抗菌)作用のある、銀、銅、亜鉛、金などの無機金属を熱可塑性樹脂に配合する方法が知られている。
…
【発明が解決しようとする課題】
…【0009】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、殺菌(抗菌)性能に優れ、外観耐久性に優れ、成形加工性、軽量性のバランスに優れた銅を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
…
【発明の効果】
【0012】
発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、優れた殺菌(抗菌)性能、外観耐久性に優れ、成形加工性、軽量性のバランスに優れた成形品を得ることが出来る。」

本b

「【0028】
本発明に用いられる(A)熱可塑性樹脂は、平均粒子径D50が10~800μmである。
【0029】
(A)熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が10μm未満であると、(B)銅および/または銅合金と混合させるために、押出機やニーダーや射出成形機等の混練機に供給するときに、供給口でブリッジが発生しやすく安定供給ができない。また、(A)熱可塑性樹脂の平均粒子径D50が800μmを越える場合は、(B)銅および/または銅合金との溶融混練が十分でなく、得られる成形品の殺菌(抗菌)性能も成形外観も十分でない。50~500μmであると好ましい。
続きを表示(全28行)
…
【0032】
(A)熱可塑性樹脂の平均粒子径D50を前述した所望の範囲にする方法としては、例えば、熱可塑性樹脂ペレットや、熱可塑性樹脂フィルムを、冷凍粉砕機にかけて粉砕した熱可塑性樹脂を得る方法が挙げられる。あるいは、前述した範囲の粒子径を有するように、溶液重合や懸濁重合などの重合方法を選択して粒子状態の熱可塑性樹脂を得ることもできる。さらに規定されたサイズになるようにメッシュを通して、平均粒子径を調整することもできる。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂としては東レ製CM1001P、ポリエステル樹脂としては東レ製1100Pなどの市販粒子品を用いることができる。またポリオレフィン樹脂としてはプライムポリマー製J?105P、ポリスチレン樹脂としてはポリスチレンジャパン製HF77の市販品を用いることができる。いずれの樹脂も、粉砕することにより、平均粒子径D50が前記範囲を満たすように調整することができる。
…。
【0036】
本発明で用いられる(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50は1~300μmである。これは、銅および銅合金の平均粒子径D50は1~300μmであることを意味する。平均粒子径D50が1μm未満であると、粒子径を調整するコストや時間がかかる。また、(A)熱可塑性樹脂と混合させる目的で、押出機やニーダーや射出成形機等の混練機に供給するときに、供給口でブリッジが発生しやすく安定供給ができない。さらに導電性が要求される用途では、十分に導電性が発揮できない場合もある。また(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50が300μmを越える場合は、(A)熱可塑性樹脂との溶融混練が十分でなく、得られる成形品の殺菌(抗菌)性能も成形外観も十分でない。
【0038】
(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50が上記範囲のものであれば、その形態は特に制限はないが、粉末状かフレーク状であることで熱可塑性樹脂組成物中での(B)銅および/または銅合金の分散性を向上させることができるため、得られる成形品において、高い殺菌(抗菌)性能と自由度の高い成形加工性や光沢感を表出させることができる。(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50を前述した所望の範囲にする方法としては特に制限はないが、例えば後述する銅や銅合金の製造方法や処理方法を実施する中で、粒子の径を調整して得ることができる。その際、メッシュサイズを適切に選択した振動スクリーンを通して所望の範囲の粒子径に分離することもできる。
【0039】
(B)銅および/または銅合金のBET比表面積は3,000(cm2/g)以上35,000(cm2/g)以下であることが好ましい。これは、銅および銅合金のBET比表面積が上記範囲にあることが好ましいことを意味する。この範囲であると、熱可塑性樹脂組成物中における(B)銅および/または銅合金の分散性が向上して、高い殺菌(抗菌)性能、優れた成形加工性、良好な光沢外観が得られるために好ましい。
…
【0041】
本発明で用いられる(B)銅および/または銅合金の製造方法や処理方法で、粉末形態の(B)銅および/または銅合金を得る方法としては例えば、熱処理した後に粉砕する熱処理法やヒドラジン還元法に代表される湿式法やアトマイズ法に代表される乾式法等の手法で略球形の銅を得てから、凝集状態を破壊して、高エネルギーボールミル、高水圧式粉砕装置、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル等を用いて、一粒一粒まで解粒処理を行い銅粉を得る方法を用いることができる。また、フレーク形態を得る方法としては、例えば、熱処理した後に粉砕する熱処理法やヒドラジン還元法に代表される湿式法やアトマイズ法に代表される乾式法等の手法で略球形の銅を得てから、凝集状態を破壊して、高エネルギーボールミル、高水圧式粉砕装置、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル等を用いて、一粒一粒まで解粒処理を行い、その後圧縮変形、伸縮変形などで機械的に変形させる方法を用いることができる。(B)銅および/または銅合金を溶解温度以上で溶解し、タンディッシュ下部から落下させながら高圧ガスまたは高圧水を衝突させて急冷凝固させることにより微粉末とする、所謂アトマイズ法(ガスアトマイズ法、水アトマイズ法など)により製造するのが好ましい。特に、高圧水を吹き付ける、所謂水アトマイズ法により製造すると、粒子径が小さい粉末形態やフレーク形態を得ることができる。このように、前記方法を用いることにより、平均粒子径D50やBET比表面積を調整することができる。前記平均粒子径D50やBET比表面積を有する(B)銅および/または銅合金は、例えば、福田金属箔粉工業社製E3、3L3、4L3、Cu-At-100、Bra-At-100、三井金属鉱業社製MA-C05KPなどが挙げられる。
【0042】
本発明においては(A)熱可塑性樹脂、ならびに(B)銅および銅合金の合計100重量部に対して、(A)熱可塑性樹脂を25~70重量部、(B)銅および銅合金の合計を30~75重量部含有する。(A)熱可塑性樹脂に(B)銅および/または銅合金を含有することで、高い殺菌(抗菌)性能、および外観耐久性を有する成形品が得られる。(B)銅および銅合金の合計の含有量が30重量部未満の場合、成形品の殺菌(抗菌)性能が不十分であり、金属光沢感が得られない。40重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましい。一方、(B)銅および銅合金の合計の含有量が75重量部を越えると、成形加工性が低下して自由な形状設計ができなくなり、軽量感も失われる。また、得られた成形品の外観耐久性も失われる。70重量部以下が好ましく、65重量部以下がより好ましい。そして、(A)熱可塑性樹脂の含有量は、30重量部以上が好ましく、35重量部以上がより好ましい。60重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の電子顕微鏡で観察される相構造は(B)銅および/または銅合金が分散相を、(A)熱可塑性樹脂が連続相を形成する構造である。つまり、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、海(熱可塑性樹脂)島(銅および/または銅合金)構造であるモルホロジーを有する。(B)銅および/または銅合金が分散相を形成しない場合は、成形加工性が低下して自由な形状設計ができなくなり、得られた成形品の外観耐久性も失われる。
…
【0050】
(A)熱可塑性樹脂と(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50の差は、熱可塑性樹脂組成物成形品の製造時の安定性や、(B)銅および/または銅合金の分散状態を良好にする観点から、200μm以下が好ましい。さらには100μm以下がより好ましい。また、(A)熱可塑性樹脂と(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50の差が200μm以下であれば、(A)熱可塑性樹脂と(B)銅および/または銅合金の平均粒子径D50はどちらが大きくても問題はない。
【0051】
(A)熱可塑性樹脂、(B)銅および/または銅合金を溶融混練する方法は特に制限はない。例えば、単軸または2軸の押出機やニーダーや射出成形機等の混練機を用いて、(A)熱可塑性樹脂が溶融混練できる温度以上、(A)熱可塑性樹脂が融点を持つ場合は融点以上に上げた温度で溶融混練する方法等が挙げられる。」

本c

「【実施例】
…
【0054】
(1)殺菌(抗菌)性能
続きを表示(全82行)
実施例および比較例で得られた試験片でフィルム(形状30mm×30mm)を作成し、黄色ぶどう球菌を供試菌として使用し、初期の生菌体と接触反応後60分経過した時点で残った生菌体の比率を算出した。
【0055】
(2)外観耐久性
実施例および比較例で得られた試験片を20mm×20mm×2mmtサイズの角板に切削し、23℃の純水に48h浸漬させたときの外観変化を以下の5段階で評価、判定した。
【0056】
5 光沢観が維持されており、全く外観変化が確認されなかった
4 光沢観は維持されているが、外観変化は部分的に確認された。
3 光沢観が失われている部分もあり、外観変化も部分的に確認された。
2 光沢観は50%以内の光沢部分を残して失われ、外観変化も50%以上確認された。
1 光沢観は全く失われ、外観変化も全く失われていた。
【0057】
(3)成形加工性
実施例および比較例で実施した射出成形時、30ショットを連続成形する中での成形加工性を以下のとおり3段階で評価、判定した。
【0058】
○ 30ショット連続して良品の試験片を得ることができた。
△ 30ショット連続して良品の試験片は得られたが、計量やピーク圧力の変動が確認された。
× 30ショット連続して良品の試験片を得ることができなかった。
…
【0062】
(7)平均粒子径D50の測定方法
参考例に記載された(A)熱可塑性樹脂と(B)銅および/または銅合金について、JIS K 5600-9-3(2006年)に準じて累積度数粒子径分布曲線を作成し、50%累積度数時の粒子径を測定した。
【0063】
(8)(B)BET比表面積の測定方法
参考例に記載された(B)銅粉約1gに窒素ガスを吸着させて、その圧力変化と吸着量から多分子吸着理論に基づく吸着等温線を作成した後、BETプロットに変換して単分子層でのガス吸着量を求め、比表面積を算出した。
【0064】
(9)相構造の確認
実施例および比較例で得られた試験片を20mm×20mm×2mmtサイズの角板に切削し、試験片の中心部から0.1μm以下の薄片を断面積方向に切削し、表層から300μmの深さまでを観察範囲に入れて、示差走査型電子顕微鏡-X線マイクロ分析(以後、SEM-XMA)で観察する。解析装置BSEを使用することで、熱可塑性樹脂が黒、銅が白色で反映させて分布状態を確認する。(B)銅および/または銅合金が分散相を、(A)熱可塑性樹脂が連続相であること明確に確認できれば○、(B)銅および/または銅合金と(A)熱可塑性樹脂の相が共連続相になっており明確に相状態が確認できない場合は△、(B)銅および/または銅合金が連続相、(A)熱可塑性樹脂が分散相になっている場合は×と判定した。
【0065】
参考例1(A1)ポリアミド6樹脂粉体
アミランCM1001P(東レ製ナイロン6)を冷凍粉砕により粉末状に粉砕し、225(μm)の平均粒子径D50に調整した。この粉末について、粘度数は110(ml/g)であり、融点は221℃であった。
【0066】
参考例2(A2)ポリプロピレン樹脂粉体
株式会社プライムポリマー社製J105Pを冷凍粉砕により粒子径を調整した。 平均粒子径D50230(μm)、融点159(℃)
【0067】
参考例3(A3)PBT樹脂粉体
トレコン1100P(東レ製PBT) 平均粒子径D50280(μm)、融点224(℃)
【0068】
参考例4(A4)ポリアミド6樹脂
アミランCM1001(東レ製ナイロン6)のペレット 長径2.9(mm)、短径1.7(mm)、長さ3.2(mm) 粘度数は110(ml/g) 融点221(℃)
【0069】
参考例4 (B1)銅 フレーク形状
福田金属箔粉工業社製E3(銅と亜鉛の銅合金、平均粒子径D5037.5(μm)、BET比表面積4,000(cm2/g))99.9%と、BASF社製イルガノックス1010 0.1%を設定温度60℃で高速回転させてブレンドさせ、表面処理をした。
【0070】
参考例5 (B2)銅 フレーク形状
福田金属箔粉工業社製3L3 (銅と亜鉛の銅合金、平均粒子径D505.7(μm)、BET比表面積25,200(cm2/g))99.9%と、BASF社製イルガノックス1010 0.1%を設定温度60℃で高速回転させてブレンドさせ、表面処理をした。
【0071】
参考例6 (B3)銅 フレーク形状
福田金属箔粉工業社製E3(銅と亜鉛の銅合金、平均粒子径D5037.5(μm)、BET比表面積4,000(cm2/g))
…
【0074】
[実施例1~実施例4、実施例6~実施例7、実施例10、実施例12][実施例5および実施例11(参考例)][比較例1~比較例3]
(A)熱可塑性樹脂、(B)銅および/または銅合金、(C)滑剤を表に示す配合量で日精80t成形機を用いて、トップフィード(元込めフィード)し、シリンダ設定温度はホッパー供給部分を260℃とし、ノズル部分まで270℃と変化させた設定を行い、金型温度80℃の条件で成形し角板成形品を得た。得られた角板成形品を用いて、前記の評価方法によって諸特性を調べた。その結果を表に示す。
【0075】
[実施例8~9][比較例4]
(A)熱可塑性樹脂、(B)銅および/または銅合金、(C)滑剤を表に示す配合量で日精80t成形機を用いて、トップフィード(元込めフィード)し、シリンダ設定温度はホッパー供給部分を160℃とし、ノズル部分まで170℃と変化させた設定を行い、金型温度30℃の条件で成形し角板成形品を得た。得られた角板成形品を用いて、前記の評価方法によって諸特性を調べた。その結果を表に示す。
【0076】
【表1】
[図:0001384213000005.jpg]
【0077】
【表2】
[図:0001384213000006.jpg]
【0078】
以下に各実施例の結果について記載する。比較例1~4と比較して、優れた殺菌性能、外観耐久性を保持し、成形加工性、軽量性のバランスに優れた熱可塑性組成物を得ることができた。詳細を記載する。
【0079】
[実施例1~12]
実施例1~12で得られる成形品は、特定量の熱可塑性樹脂および特定量の銅および/または銅合金を有し、特定の相構造を有するため、殺菌性能、外観耐久性、成形加工性、軽量性のバランスに優れることが分かる。
【0080】
特に実施例4と、実施例5(参考例)および実施例6を対比すると、熱可塑性樹脂および銅の量が好ましい範囲である実施例4の方が効果に優れることが分かる。
【0081】
実施例4と実施例7を対比すると、実施例4の方が、熱可塑性樹脂と、銅および/または銅合金の粒子径差が小さいため、殺菌性能に優れる樹脂組成物を得ることができた。
【0082】
実施例1と、実施例8および10を対比すると、好ましい樹脂であるポリアミド樹脂を用いた実施例1の方が殺菌性能に優れることが分かる。
【0083】
実施例8と実施例9を対比すると、熱可塑性樹脂の融点よりも10℃以上低い融点をもつ滑剤を用いた実施例8の方が、殺菌性能および成形加工性に優れることがわかる。
【0084】
実施例11(参考例)はポリアミド6ペレットを用いたが、特定の粒子径を有するポリアミド6粉体を用いた実施例4の方が、成形品における銅および/または銅合金の分散が良好となるため、殺菌性能に優れることがわかる。
【0085】
実施例12は表面処理をしていない銅および/または銅合金を用いたが、表面処理をした銅および/または銅合金を用いた実施例4と対比しても同等の効果が得られることがわかる。」

(2)実施可能要件の考え方

発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。

(3)本件発明1~2の実施可能要件について

本件明細書の【0032】~【0033】(本b)には、「平均粒子径D50が10~800μm」である「熱可塑性樹脂」の調製方法が記載され、【0038】~【0041】(本b)には、「平均粒子径D50が1~300μm」であり「BET比表面積が3,000(cm2/g)以上35,000(cm2/g)以下」である「銅および銅合金」の調製方法が記載されている。

そして、【0065】~【0067】(本c)には、参考例1~3として、本件発明1の平均粒子径を満たす「熱可塑性樹脂」(ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂)の具体例、【0069】~【0071】(本c)には、参考例4~6として、本件発明1の平均粒子径及びBET比表面積を満たす「銅および銅合金」の具体例が、それぞれ記載され、【0074】~【0076】(本c)には、参考例1~3の「熱可塑性樹脂」と参考例4~6の「銅および銅合金」を【表1】(本cの【0076】)に示す配合量で成形する方法及び条件が、具体的に記載されている。

そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、本件発明1~2について、過度の試行錯誤を要することなく実施できる程度の記載があるものと認められる。

(4)申立人の主張について

申立人は、本件明細書には、樹脂粉末の粒子径、銅粉の粒子径及び比表面積について、「参考例」として特定の数値は開示されているが、これらは「実施例」ではないと主張する。

しかし、(3)で示したように、「参考例」で示された「熱可塑性樹脂」及び「銅および銅合金」は、「実施例」の成形する方法で用いられているものであるから、「参考例」が、「実施例」と無関係なものであると解すべき理由はない。

また、申立人は、「参考例」ですら、「特定の数値を開示するに過ぎず、本件発明1の数値範囲をカバーするものではない」と主張する。

しかし、「参考例」には、「平均粒子径D50」が異なる「熱可塑性樹脂」、並びに「平均粒子径D50」及び「BET比表面積」が異なる「銅および銅合金」が記載され、これらを実施例に適用することで、「平均粒子径D50」や「BET比表面積」が異なる条件であっても熱可塑性樹脂組成物成形品を製造し、使用できることを当業者は理解できるから、上記の「参考例」が、単なる「特定の数値を開示する」だけのものとは認められない。

加えて、本件明細書の【0032】~【0033】及び【0038】~【0041】(いずれも本b)の記載を踏まえると、「参考例」とは異なる「平均粒子径D50」を有する「熱可塑性樹脂」、並びに「参考例」とは異なる「平均粒子径D50」及び「BET比表面積」を有する「銅および銅合金」を製造、入手することが、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものとは認められない。

したがって、申立人の上記主張は、いずれも理由がない。

(5)申立理由2の検討のまとめ

以上からすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件発明1~2について、実施可能要件に違反しているとはいえないから、本件発明1~2に係る特許は、申立人による申立理由2により取り消すことはできない。

3.申立理由3の検討

(1)サポート要件の考え方

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)本件発明が解決しようとする課題

本件発明1、2の記載及び本件明細書の【0009】(本a)の記載によると、本件発明が解決しようとする課題は、「殺菌(抗菌)性能に優れ、外観耐久性に優れ、成形加工性、軽量性のバランスに優れた銅を含有する熱可塑性樹脂組成物」の製造方法を提供することにあると認められる。

(3)本件発明1~2のサポート要件について

本件発明1~2により製造される熱可塑性樹脂組成物成形品を技術的に具体化したものは実施例1~4、6~10、12に該当し、本件明細書の【表1】(本cの【0076】)の評価結果によると、殺菌性能、外観耐久性、成形加工性及び比重のいずれの項目でも優れた効果が得られていることが理解できる。

一方、本件明細書の【表2】(本cの【0077】)によると、比較例1、4は、銅粉を含まない成形品であるが、殺菌性能が大きく劣り、比較例2は、樹脂を含まない成形品であるが、殺菌性能以外の全ての項目が劣っていることが理解できる。

また、銅粉を30重量部、樹脂を70重量部の成形品である実施例5(参考例)は、【表1】によると殺菌性能に劣り、逆に、銅粉を80重量部、樹脂を20重量部の成形品である比較例3は、【表2】によると殺菌性能以外の全ての項目に劣り、上記1(2)イでも述べたとおり、平均粒子径D50が「10~800μm」の範囲を外れる樹脂を用いた実施例11(参考例)は、配合条件が共通する実施例4と比べて殺菌性能が劣っている。

そして、上記のとおりの結果が得られることは、本件明細書の【0029】(熱可塑性樹脂の平均粒子径D50)及び【0042】(熱可塑性樹脂と銅の含有量)にて説明されており、銅および銅合金の平均粒子径D50及びBET比表面積を一定の範囲に設定する技術的意義も【0036】(銅および銅合金の平均粒子径D50)及び【0039】(銅および銅合金のBET比表面積)にて説明されている(いずれも本b)。

そうすると、本件発明1~2は、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載より、上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。

(4)申立人の主張について

申立人は、本件発明1に記載の熱可塑性樹脂及び銅粉の含有量の数値範囲は本件明細書においてサポートされておらず、本件発明1に記載の熱可塑性樹脂の粒子径、銅粉の粒子径及び比表面積についても、特定の数値を開示するに過ぎず、本件発明1の数値範囲をカバーするものではないと主張する。

しかし、上記(2)の課題にある、殺菌性能、外観耐久性、成形加工性、軽量性が、実施例1~4、6~10、12で示された配合条件以外では期待できないことを根拠付ける客観性のある証拠は、申立人より何ら提示されていないし、本件発明1、2について、その範囲を全てカバーするような実験例を、本件明細書で掲載すべき特段の理由があるとも解されない。

一方、上記(3)で示したとおり、本件発明1~2は、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載より、上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものと認められる。

そうすると、上記の申立人の主張を採用することはできない。

(5)申立理由3の検討のまとめ

以上からすると、本件発明1~2に係る特許請求の範囲の記載が、サポート要件に違反しているとはいえないから、本件発明1~2に係る特許は、申立人による申立理由3により取り消すことはできない。

第5 むすび

以上のとおり、本件特許に係る特許異議申立てにおいて申立人が主張する申立理由は、いずれも理由がないから、本件発明1~2に係る特許は、取り消すことができない。

ほかに、本件発明1~2に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-700938

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