特許異議申立
2021-700871
射出成形方法
- 審判番号
- 2021-700871
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-142680
- 登録番号
- 6841369
- 請求日
- 2021年09月09日
- 審決日
- 2022年06月24日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】とこしえ特許業務法人
- 【異議申立人】白澤 榮樹
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 奥田 雄介
- 分類
- P1651.121-YAA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6841369号発明「射出成形方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6841369号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。
特許第6841369号の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を維持する。
特許第6841369号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6841369号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和2年8月26日(優先権主張 令和1年8月26日)の出願であって、令和3年2月22日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年3月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月9日に特許異議申立人 白澤 榮樹(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、同年12月2日付けで特許異議申立人に対し審尋がされ、同年同月23日に特許異議申立人から回答書が提出され、令和4年1月28日付けで取消理由が通知され、同年4月1日に特許権者 ダイキン工業株式会社から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和4年4月1日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)後の請求項1ないし6及び8ないし10は、それぞれ、本件訂正前の請求項1ないし6を順に引用する請求項7及び該請求項7を引用する請求項8ないし10に相当し、本件訂正は、実質的に本件訂正前の請求項1ないし7及び本件訂正前の請求項1ないし6を引用する請求項8ないし10の削除のみの訂正であるといえ、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときといえるから、当審は特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記共重合体が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体であって、前記共重合体の主鎖炭素数106個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分以上である」と記載されているのを、「前記共重合体が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体であって、前記共重合体の主鎖炭素数106個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分以上であり、前記共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0~10.0質量%である」と訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1~7のいずれかに記載の射出成形方法。」と記載されているのを、「請求項1~6のいずれかに記載の射出成形方法。」に訂正する。
併せて、請求項8を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9(当審注:令和4年4月1日に提出された訂正請求書第3ページ第12行目の「特許請求の範囲の請求項8」は「特許請求の範囲の請求項9」の誤記と認める。)に、「請求項1~8のいずれかに記載の射出成形方法。」と記載されているのを、「請求項1~6、8のいずれかに記載の射出成形方法。」に訂正する。
併せて、請求項9を引用する請求項10についても、請求項9を訂正したことに伴う訂正をする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1~9のいずれかに記載の射出成形方法。」と記載されているのを、「請求項1~6、8、9のいずれかに記載の射出成形方法。」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「共重合体」における「フルオロアルキルビニルエーテル単位」の含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項7に記載された事項を追加するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし6についての訂正について
訂正事項1による請求項2ないし6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2ないし6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項7についての訂正について
訂正事項2による請求項7についての訂正は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項8についての訂正について
訂正事項1による請求項8についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項8についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び3による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項9についての訂正について
訂正事項1及び3による請求項9についての訂正は、請求項8についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項9についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、3及び4による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項10についての訂正について
訂正事項1、3及び4による請求項10についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項10についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、3、4及び5による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし5による請求項1ないし10についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし10は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし5による請求項1ないし10についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
射出成形機を用いて、溶融した共重合体を、前記射出成形機のノズルから金型の金型キャビティに充填することにより、射出成形品を得る射出成形方法であって、
前記金型キャビティの最小厚みが0.8mm以下であり、前記金型の投影面積の合計が、1cm2以上であり、
前記共重合体が、テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体であって、前記共重合体の主鎖炭素数106個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分以上であり、前記共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0~10.0質量%である
射出成形方法。
【請求項2】
前記金型の投影面積の合計が、400cm2以下である請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記射出成形機の前記ノズルでの前記共重合体の温度が、370℃以上である請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記射出成形機のシリンダ温度が350℃以上である請求項1~3のいずれかに記載の射出成形方法。
【請求項5】
前記共重合体の融点が、295~320℃である請求項1~4のいずれかに記載の射出成形方法。
【請求項6】
前記共重合体のメルトフローレートが、20~80g/10分である請求項1~5のいずれかに記載の射出成形方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記フルオロアルキルビニルエーテル単位が、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位である請求項1~6のいずれかに記載の射出成形方法。
【請求項9】
前記射出成形品の製品最小厚みが0.8mm以下であり、前記射出成形品の製品投影面積が1~36cm2である請求項1~6、8のいずれかに記載の射出成形方法。
【請求項10】
前記射出成形品が、封止部材または絶縁部材である請求項1~6、8、9のいずれかに記載の射出成形方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年9月9日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
本件特許発明1ないし10は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開昭61-237612号公報
甲第2号証:三井・デュポンフロロケミカル株式会社 DuPontTMTeflon○R(当審注:○Rは、Rを○で囲った記号である。以下同様。)PFAカタログ
甲第3号証:国際公開第2003/48214号
甲第4号証:特公平4-83号公報
甲第5号証:特開2013-43413号公報
甲第6号証:ふっ素樹脂ハンドブック 改訂13版、JFIA 日本弗素樹脂工業会、2014年(平成26年)12月、p64-65、p134-135
甲第7号証:特開2002-53620号公報
甲第8号証:三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社ホームページの沿革(https://www.mc-fluoro.co.jp/corporate/history/history-2000/)
甲第9号証:2018年6月5日付化学工業日報
参考資料1:甲第2号証の図に示す金型の投影面積の算出方法
参考資料2:特開2001-150435号公報
参考資料3:特開2017-119750号公報
なお、甲第8及び9号証並びに参考資料3は令和3年12月23日に提出された回答書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記回答書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 令和4年1月28日付けで通知した取消理由の概要
令和4年1月28日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。なお、該取消理由は申立理由のうち本件特許の請求項1ないし6及び9に係る特許に対する理由とおおむね同旨である。
・(甲1を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし6及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由について
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「射出成形による薄肉成形体加工用金型」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は他の証拠を含め当審で付したものである。
・「2 特許請求の範囲
(1)射出成形により熱可塑性樹脂製の薄肉成形体を加工するコアとスライドコアとからなる金型において、当該コアおよびスライドコアの製品キャビティ部分の左右両側に、当該製品キャビティ部分と連続して延出するよう薄肉状のゲート用キャビティ部分を形成するとともに、当該ゲート用キャビティ部分の基部がスプルー又はランナーの下端とコールドスラブウェルを介することなく連通するようにしたことを特徴とする射出成形による薄肉成形体加工用金型。
(2)前記ゲート用キャビティ部分に当接するよう製品離型用突き出しピンを配設したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の射出成形による薄肉成形体加工用金型。
(3)薄肉成形体が、その厚さ0.1mm~0.6mm、その面積が40mm×25mm以上80mm×60mm迄の寸法形状をした薄板状射出成形加工製品となるように、製品キャビティ部分を形成したことを含む特許請求の範囲第1項記載の射出成形による薄肉成形体加工用金型。
(4)薄肉成形体が、その厚さ0.1mm~0.6mm、その面積が40mm×25mm以上80mm×60mm迄の寸法形状にした薄板を1mm~20mm隔てて平行に対向させ、これを背板部にて連結してコ字状の射出成形加工製品となるように、製品キャビティ部分を形成したことを含む特許請求の範囲第1項記載の射出成形による薄肉成形体加工用金型。」(第1ページ左下欄第4行ないし右下欄第12行)
・「薄肉成形体1aとして第6図(ロ)(ハ)のようにその厚さ0.1mm~0.6mm、その面積40mm×25mm以上80mm×60mm迄の寸法の薄板2,3を1mm~20mm隔てて平行に対向させ、両者を背板部4にて連結し、コ字状の射出成形による薄肉成形体1aを造るための薄肉成形体加工用金型を実施例として説明する。」(第2ページ左下欄第19行ないし右下欄第5行)
・「
[図:0001388383000001.jpg]
」
・「
[図:0001388383000002.jpg]
」
イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、特に特許請求の範囲(1)及び(4)に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「射出成形により熱可塑性樹脂製の薄肉成形体を加工する方法であって、薄肉成形体が、その厚さ0.1mm~0.6mm、その面積が40mm×25mm以上80mm×60mm迄の寸法形状にした薄板を1mm~20mm隔てて平行に対向させ、これを背板部にて連結してコ字状の射出成形加工製品となるように、製品キャビティ部分を形成した金型を用いて薄肉成形体を加工する方法。」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次の事項が記載されている。
・第6及び7ページの用途別PFA製品ソリューションの欄に、代表的用途として、「射出成形品」、具体的な使用例として、「薄肉成形」、製品として、「PFA420HP-J」、成形方法として、「射出成形」、特徴として、流動性が良いことが記載されている。
・第8ページの第1ないし6行に、「不安定末端基をゼロにして優れた純粋性を実現
Teflon○R PFA HPシリーズ
Teflon○R PFA420HP-J/440HP-J/450HP-J
完全ふっ素化により末端基を安定化
不純物を低減し耐化学薬品性を大幅に改善
完全ふっ素化により、従来のPFAに存在していた薬品や熱に対して不安定な末端基を安定化。」と記載されている。
・第16ページの物性一覧に、「PFA420HP-J」の「MFR(g/10min)」が「35~45」であり、「融点(℃)」が「300」であることが記載されている。
(3)甲3に記載された事項
甲3には、「耐オゾン性物品用成形材料及び耐オゾン性射出成形品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「本発明の耐オゾン性成形材料(I)を用いて成形することにより得られる半導体製造装置用の耐オゾン性物品、及び、本発明の耐オゾン性成形材料(II)を用いて成形することにより得られる半導体製造装置用の耐オゾン性物品もまた、本発明の一つである。
本明細書において「物品」とは、完成品に限らず成形品であれば特に限定されず、製品の全部又は一部に本発明の耐オゾン性成形材料(I)又は耐オゾン性成形材料(II)を適用したもの、例えば、配管材や容器等のライニング材等をも含むものである。
上記物品の形状としては特に限定されず、例えば、シート、フィルム、丸棒、角棒、パイプ、チューブ、丸槽、角槽等の各種の形状が挙げられ、これらをそのまま、又は、更に加工して、各種の部品や製品を製造することができる。
上記物品としては特に限定されず、例えば、オゾンに接触する各種の物品、なかでも半導体製造装置の配管材、継ぎ手、パッキン、バルブ、コック、コネクタ、ナット、容器、ウェハーキャリア、ウェハーボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプ等が挙げられ、これらのライニング材及びライニングされたもの等であってもよい。なかでも、半導体製造装置用配管材又は半導体製造装置用継ぎ手として用いることが好ましい。そのほか、ダイヤフラム、ベローズ、スリーブ等の成形材料としても期待することができる。これらの本発明の耐オゾン性物品は何れも、耐オゾン性に優れた物品であり、半導体装置に好適に用いられる。
本発明の耐オゾン性成形材料(I)及び本発明の耐オゾン性成形材料(II)を上記物品に成形する方法としては特に限定されず、例えば、射出成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、ブロー成形法等が挙げられる。」(第13ページ第16行ないし第14ページ第9行)
・「請求の範囲
1. 共重合体(A)からなり、メルトフローレートが0.1~50g/10分である耐オゾン性物品用成形材料であって、
前記共重合体(A)は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとからなる共重合体であり、パーフルオロビニルエーテル単位を3.5質量% 以上含み、融点が295℃以上であり、不安定末端基が前記共重合体(A)中の炭素数1×106個あたり 50個以下であるものである
ことを特徴とする耐オゾン性物品用成形材料。
・・・(略)・・・
6. 共重合体(B)からなり、メルトフローレートが0.1~50g/10分である耐オゾン性物品用成形材料であって、
前記共重合体(B)は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)とからなる共重合体であり、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を3.5~6質量%含み、不安定末端基が前記共重合体(B)中の炭素数1×106個あたり50個以下であるものである
ことを特徴とする耐オゾン性物品用成形材料。」(第34ページ第1行ないし第35ページ第4行)
(4)甲4に記載された事項
甲4には、「安定なテトラフルオロエチレン共重合体の粒子」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「特許請求の範囲
1 90~99重量%の式-CF2CF2-で表わされる反復単位及び1~10重量%の式
-CF(ORf)-CF2-
[式中、Rfば炭素数1~8のパーフルオルアルキル基である]
で表わされる少なくとも1種の反復単位から本質的に成る溶融加工可能な非弾性テトラフルオルエチレン共重合体の粒子であって、
(a) 372℃における溶融粘度が107ポイズ以下であること、
(b) 該共重合体中の末端基-CF2CH2OH、-CONH2及び-COFが炭素数106当り6つより少ないこと、及び
(c) 抽出しうる弗化物イオンを重量で3ppm又はそれ以下しか含んでいないこと、
を特徴とする粒子。」(第1ページ第1欄第1ないし17行)
・「本発明は改良されたパー弗素化樹脂、特に安定な重合体末端基を有する溶融加工可能なテトラフルオルエチレン(TFE)/パーフルオル(アルキルビニル)エーテル(PAVE)共重合体の粒子に関する。この改良された樹脂はSi、SiO2及び金属表面に対する腐食性の減少を示す。
テトラフルオルエチレン/パーフルオル(アルキルビニル)エーテル(TFE/PAVE)の溶融加工可能な共重合体は、工業的な射出成形製品及び電線絶縁用に広く使用されている。そして化学安定性と高温特性の独特な組合せのために、それは広範囲の射出成形部品、押出しパイプ及びチューブ、そして容器の上塗り材(liner)に対する好適な材料となる。このような品質は、それを珪素材料の貯蔵、輸送又は処理のための容器又は保持器として望ましいものにする。」(第1ページ第2欄第9行ないし第2ページ第3欄第4行)
(5)甲9に記載された事項
甲9には、おおむね次の事項が記載されている。
・「7月に社名変更
三井・デュポン フロロケミカル
三井・デュポン フロロケミカルは4日、7月1日付で社名を「三井・ケマーズ フロロプロダクツ(英文表記=Chemours-Mitsui Fluoroproducts)に変更すると発表した。同社は三井化学と米ケマーズ日本法人の折半出資。ケマーズは酸化チタン、フッ素化学品などが軸で、2015年7月にデュポンの機能化学品事業が移管され設立した。三井・デュポン フロロケミカルも変更準備が整ったことから新社名に切り替える。」(第9から10段目)
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明は、本件特許発明1と同様に、「射出成形機」を用いて、「溶融」した「熱可塑性樹脂」を、「射出成形機のノズル」から「金型」の「製品キャビティ部分」に充填する構成を有することは明らかである。
「熱可塑性樹脂」は重合体であるから、甲1発明における「熱可塑性樹脂」は本件特許発明1における「共重合体」と、「重合体」であるという限りにおいて一致する。
甲1発明における「熱可塑性樹脂製の薄肉成形体」は本件特許発明1における「射出成形品」に相当する。
甲1発明における「製品キャビティ部分」は本件特許発明1における「金型キャビテイ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「射出成形機を用いて、溶融した重合体を、前記射出成形機のノズルから金型の金型キャビティに充填することにより、射出成形品を得る射出成形方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「前記金型キャビティの最小厚みが0.8mm以下であり、前記金型の投影面積の合計が、1cm2以上であり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2>
「重合体」に関して、本件特許発明1においては、「テトラフルオロエチレン単位およびフルオロアルキルビニルエーテル単位を含有する共重合体であって、前記共重合体の主鎖炭素数106個当たりの官能基数が、100個以下であり、前記共重合体のメルトフローレートが、20g/10分以上であり、前記共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0~10.0質量%である」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「熱可塑性樹脂」である点。
(2)判断
そこで、事案に鑑み、相違点2から検討する。
まず、甲1には、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
次に、甲2(当審注:甲9から、本件特許の優先日前に、頒布された刊行物であると認められる。)には、射出成形により薄肉成形体を製造する材料として、「PFA420HP-J」が記載され、その「MFR(g/10min)」が「35~45」であることが記載されている。また、甲2には、「PFA420HP-J」は、完全ふっ素化により、従来のPFAに存在していた薬品や熱に対して不安定な末端基を安定化し、不安定末端基をゼロにしたものであること、すなわち末端の官能基数が0であることが記載されている。なお、「PFA」とは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体のことである。
しかし、甲2には、「PFA420HP-J」が共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0~10.0質量%であることは記載されていない。
したがって、射出成形により熱可塑性樹脂製の薄肉成形体を加工する方法の発明である甲1発明の熱可塑性樹脂として、甲2に記載される、不安定末端基をゼロで「MFR(g/10min)」が「35~45」である「PFA420HP-J」を採用することができたとしても、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項のうち「共重合体におけるフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量が、全単量体単位に対して、1.0~10.0質量%である」という発明特定事項には至らない。
また、甲3及び4には、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項の条件と重なる条件を有する樹脂が記載されているといえるものの、甲3及び4に記載された樹脂は射出成形により薄肉成形体を加工するためのものではないから、射出成形により熱可塑性樹脂製の薄肉成形体を加工する方法の発明である甲1発明の熱可塑性樹脂として、甲3及び4に記載された樹脂を採用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、他の証拠にも、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
よって、甲1発明において、甲1ないし4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を容易に想到することができたものとはいえない。
そして、本件特許発明1は「金型の腐食を抑制できる射出成形方法を提供することができる。」(本件特許明細書の【0007】)という効果に加え、「耐圧縮永久歪み性に優れた射出成形品を得ることができる。」(同【0035】)という効果を奏するものであり、これらの効果は、甲1発明並びに甲1ないし4及び他の証拠に記載された事項からみて、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、特許異議申立人は、令和3年12月23日に提出された回答書において、「一般に企業の製品カタログでは、製品の具体的な組成は営業秘密に当たるため、開示されておらず、甲第2号証においても「PFA 420HP-J」における「フルオロアルキルビニルエーテル単位」の含有量についての記載はありません。しかしながら、・・・融点が300℃である甲第2号証の「PFA 420HP-J」のパーフルオロアルキルビニルエーテル単位の含有量は少なくとも、本件特許明細書段落【0035】に記載された0.1~10.0質量%の範囲であることは明らかであると思考致します。」(上記回答書第2ページ第1ないし30行)とあるように、本件特許発明1は甲1と甲2を組み合わせることで容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかし、本件特許発明1に相当する本件訂正前の請求項7に係る発明に対して、特許異議申立書においては、「本件特許発明7は、甲第1号証と甲第3~4号証を組み合わせることにより容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項に該当する。」(特許異議申立書第21ページ第7及び8行)と主張していたにすぎず、回答書における主張は、甲1と甲3及び4を組み合わせることに加え、甲1と甲2を組み合わせることで容易という主張を追加するものであり、特許異議申立書の要旨を変更するものといえる。
したがって、特許異議申立人の回答書における主張は、採用できない。
(3)まとめ
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1ないし4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明2ないし6及び9について
本件特許発明2ないし6及び9は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2ないし6及び9は甲1発明並びに甲1ないし4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 取消理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6及び9は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし6及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由(甲1を主引用例とする進歩性)のうち本件特許の請求項7、8及び10に対する理由である。
そこで、検討する。
1 本件特許の請求項7について
訂正により請求項7は削除されたので、申立理由のうち本件特許の請求項7に対する理由はその対象が存在しないものとなった。
2 本件特許の請求項8及び10について
本件特許発明8及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1ないし4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件特許発明8及び10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項8及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由のうち本件特許の請求項8及び10に対する理由によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項7に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項7に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700871