審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2021-700789

燃焼器及びボイラ

審判番号
2021-700789
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-034023
登録番号
6880823
請求日
2021年08月10日
審決日
2023年05月01日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社IHI
  • 【権利者代理人】西澤 和純
  • 【権利者代理人】寺本 光生
  • 【権利者代理人】清水 雄一郎
  • 【権利者代理人】高橋 久典
  • 【異議申立人】田口 和之
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 充
  • 審判官 間中 耕治
  • 審判官 槙原 進
分類
P1651.121-ZAA(F23C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6880823号発明「燃焼器及びボイラ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6880823号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2-3]、4について訂正することを認める。 特許第6880823号の請求項1、3、4に係る特許を取り消す。 特許第6880823号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6880823号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年2月24日の出願であって、令和3年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年8月10日 :特許異議申立人田口和之(以下、「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年2月24日付け :取消理由通知 令和4年4月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求 令和4年6月9日 :申立人による意見書の提出 令和4年7月22日付け :訂正拒絶理由通知 令和4年9月1日 :特許権者による意見書の提出及び手続補正 令和4年9月21日付け :取消理由通知(決定の予告) 令和4年11月25日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。) 令和4年12月15日付け:訂正拒絶理由通知 令和5年1月17日 :特許権者による意見書の提出及び手続補正 令和5年2月28日 :申立人による意見書の提出 なお、上記令和4年4月28日に特許権者がした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1.本件訂正の内容 令和5年1月17日にした手続補正で補正された本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。 なお、令和5年1月17日にした手続補正は、訂正事項4を削除するのみの補正であるから、本件訂正請求の要旨を変更する補正ではない。 (1)特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (2)特許請求の範囲の請求項3について、「前記第2燃料は微粉炭であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼器。」とあるのを、「前記第2燃料は微粉炭であり、噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器。」に訂正する。 (3)特許請求の範囲の請求項4について、「請求項1~3のいずれか一項に記載の燃焼器を備えることを特徴とするボイラ。」とあるのを、 「複数のバーナが二次元状に配置され、前記バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器を備えるボイラであって、 複数の前記バーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ、 前記炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、 個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射し、 噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されていることを特徴とするボイラ。」に訂正する。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項2~4について、請求項3~4は、それぞれ請求項2を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2~4に対応する訂正後の請求項〔2~4〕は、一群の請求項である。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであること及び実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことが明らかである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項2が削除されたことに伴い、訂正前の請求項3が請求項1または2を択一的に引用していたものを、請求項1のみを引用するよう訂正するとともに、「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成される」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書に「本第1実施形態に係る燃焼器A及びボイラでは・・・火炉1内に噴射されたアンモニア(第1燃料)の周囲には、微粉炭(第2燃料)の燃焼によって発生する高温度領域Skが形成される。」(段落【0029】)、「この高温度領域Skは、アンモニア(第1燃料)の熱分解を促進し、アンモニア(第1燃料)の酸化(NOx化)を抑制する。すなわち、上記高温度領域Skはアンモニア(第1燃料)に対して還元領域として機能するものであり、アンモニア(第1燃料)は、高温度領域Skに曝されることにより、水素ガス(H2)と窒素ガス(N2)とに熱分解し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制される。・・・」(段落【0030】)と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1または2を択一的に引用していたものを請求項1のみに限定するとともに、「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成される」ことを直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項4の記載を、当該請求項1の記載を引用しない独立形式の請求項にするとともに、「燃焼器を備えるボイラ」であること、及び、「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されている」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、訂正前の請求項1および4に記載された事項に加えて、願書に添付した明細書に「本第1実施形態に係る燃焼器A及びボイラでは・・・火炉1内に噴射されたアンモニア(第1燃料)の周囲には、微粉炭(第2燃料)の燃焼によって発生する高温度領域Skが形成される。」(段落【0029】)、「この高温度領域Skは、アンモニア(第1燃料)の熱分解を促進し、アンモニア(第1燃料)の酸化(NOx化)を抑制する。すなわち、上記高温度領域Skはアンモニア(第1燃料)に対して還元領域として機能するものであり、アンモニア(第1燃料)は、高温度領域Skに曝されることにより、水素ガス(H2)と窒素ガス(N2)とに熱分解し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制される。・・・」(段落【0030】)と記載されているから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項4の記載を、当該請求項1の記載を引用しない独立形式の請求項にするとともに、「燃焼器を備えるボイラ」に限定し、「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されている」ことを直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は第4号に掲げられた事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、本件訂正は、訂正後の請求項4についての訂正が認められる場合には、別の訂正単位として訂正することを求めるものである。 したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-3〕、4について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~請求項4に係る発明(以下、各々「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~請求項4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 複数のバーナが二次元状に配置され、前記バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器であって、 複数の前記バーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ、 前記炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、 個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射することを特徴とする燃焼器。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記第2燃料は微粉炭であり、 噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器。 【請求項4】 複数のバーナが二次元状に配置され、前記バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器を備えるボイラであって、 複数の前記バーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ、 前記炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、 個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射し、 噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されていることを特徴とするボイラ。 第4 取消理由の概要 当審が令和4年9月21日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 <甲各号証> 甲第1号証:実願昭52-151682号(実開昭53-79782号)のマイクロフィルム(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2013-2658号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:電力中央研究所プレスリリース、2017年1月10日、「石炭火力発電所でのアンモニア利用の実現に向けて-窒素酸化物の排出を抑制した微粉炭との混焼技術を開発-」(以下「甲3」という。) 第5 当審の判断 1.甲号証に記載された事項及び甲2発明について 1-1.甲1について (1)甲1の記載 甲1には、次の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 ア「コークス炉ガスを生成する際に生ずるアンモニヤは、空中窒素固定工業の分野における技術の開発以来、競争性がないため実用的には無用なものとして考えられていた。この理由で、既に長年来アンモニヤをできるだけ費用を節約して除去するように非常な努力が払われて来ており、環境特に空気汚染に関して法律の不断にきびしくなる要求を考慮するようにしている。」(明細書第2ページ第7~14行) イ「この目的を達するため、本考案によれば、バーナが、アンモニヤガス、コークス炉ガスおよび燃焼用空気を同時に供給する3つの別々な通路をもち、これら通路のうちコークス炉ガスを導く通路が、環状流出口をもつノズルに終つており、このノズルの中心に、アンモニヤガスを導く分配ランスの形の通路が開口しており、燃焼用空気を導く通路が分配ランスおよびノズルを包囲しており、バーナが、熱伝達媒体の通るコイル管を設けられた炉空間内へ入り込んでいる。 こうしてバーナは通常の圧力すなわち大気圧のガス圧でしかも低温の自立炎で動作し、コークス炉ガスおよび空気はアンモニヤガスと混合されず、別々に火炎へ供給され、換言すれば、アンモニヤは中空な錐状炎の空所へ供給され、空気はその外周の範囲へ供給されるようにすることができる。その大きい利点は、空所をもつ錐状炎が形成され、この火炎を包囲する外側範囲から直接熱が取り出されることである。すなわち一方の反応領域は、錐状炎を包囲する外側範囲にあり、この範囲では酸素が直接燃焼ガス流に当つて、必要な温度を生じる。第2の反応領域は、錐状炎の内部にあり、ここでは酸素が少なく、したがつてここには還元性雰囲気が生じる。これら両領域の温度はアンモニヤの燃焼に合わされて、窒素原子がこの反応領域の後で充分冷却された雰囲気に当り、この雰囲気中ではもはや酸素原子とあまり化合することはできないようにする。 それにより燃焼炉が著しく簡単になり、窒素酸化物の生成が著しく低減され、後燃えおよび爆発のおそれがなくなる。 以下図面により本考案の実施例を説明する。 管状炉1の中では、バーナ2により、導管3を通して導かれるアンモニヤガス4が燃焼される。この目的で、アンモニヤガスは、通路としての分配ランス5を通つて、環状の中空な錐状炎7の領域6へ流れ込む。導管10を通りかつ通路11を経てノズル9の環状流出口8から出るコークス炉ガス12と、導管14からノズル9の少なくとも流出口8を囲む通路15を経て外方から錐状炎7へ導かれる燃焼用空気13とにより、この錐状炎7が形成される。高温の燃焼ガス16は、コイル管17の所で冷却され、その際このコイル管17中を流れる油18を加熱する。 炎7の縁の範囲における酸素過剰の領域が錐状炎7の中心軸線へ向かつて酸素不足の領域へ移行するように燃焼用空気13を供給される錐状炎7の形成により、この酸素不足の領域へ導入されたアンモニヤガス4は、還元性雰囲気中で比較的低温で燃焼するので、燃焼の際生ずる窒素酸化物の量は僅少に維持される。」(明細書第5ページ第8行~第8ページ下から2行目) ウ「 [図:0001415245000001.jpg] 」 (2)甲1に記載された技術 上記(1)から、甲1には、以下の技術(以下「甲1技術」という。)が記載されていると認められる。 <甲1技術> 「バーナ2は、アンモニヤガス4を中空な錐状炎7の空所へ供給し、コークス炉ガス12を錐状炎7へ供給し、 バーナ2は、3つの別々な通路を持ち、これら通路のうちコークス炉ガス12を導く通路が、環状流出口8を持つノズル9に終わっており、このノズル9の中心に、アンモニヤガス4を導く分配ランスの形の通路が開口しており、燃焼用空気13を導く通路が分配ランス及びノズル9を包囲する、という技術。」 1-2.甲2について (1)甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 ア「【0016】 図1に示すように、この石炭焚きタワーボイラ装置1は、互いに対向する缶前壁11及び缶後壁12を有していると共に上部に過熱器及び再熱器を配置した全体で箱型を成す石炭焚きボイラ10を備えている(過熱器及び再熱器は図示省略)。 【0017】 また、この石炭焚きタワーボイラ装置1は、燃料の石炭を粉砕して微粉炭を製造する複数のミル2(2A~2D)と、複数のミル2からの微粉炭を石炭焚きボイラ10側に送る給炭管4(4A~4D)と、この給炭管4により運ばれるミル2からの微粉炭を一次空気とともに石炭焚きボイラ10内部に供給する複数のバーナ3から成るバーナ群30を備えている。 【0018】 このバーナ群30は、バーナ3を水平方向に複数並べて成るバーナ列31を垂直方向に複数段並べて成っており、この実施例では、図2に示すように、バーナ3を水平方向に6個並べてバーナ列31を形成し、このバーナ列31を4段並べてバーナ群30を形成している。 このバーナ群30は、4段のバーナ列31の各バーナ3同士が互いに対向するようにして石炭焚きボイラ10の缶前壁11及び缶後壁12にそれぞれ配置されている。」 イ「【0020】 缶前壁11及び缶後壁12の各バーナ群30の上方で且つ壁幅方向(水平方向)には、二次空気を通す二段燃焼用ポート13がそれぞれ複数並べて配置されており、これらの二段燃焼用ポート13の両端には、サイドポート14が配置されている。二次空気は、これらの二段燃焼用ポート13及びサイドポート14により分配されて石炭焚きボイラ10内に供給され、ポート13,14個々の空気通過量は、手動ダンパ5により運転前の段階でそれぞれ設定されるようになっている。」 ウ「【図1】 [図:0001415245000002.jpg] 」 エ「【図2】 [図:0001415245000003.jpg] 」 (2)上記(1)の記載からわかること 段落【0018】における「バーナ群30は、バーナ3を水平方向に複数並べて成るバーナ列31を垂直方向に複数段並べて成っており」という記載と、段落【0020】における「缶前壁11及び缶後壁12の各バーナ群30の上方で且つ壁幅方向(水平方向)には、二次空気を通す二段燃焼用ポート13がそれぞれ複数並べて配置されており」という記載と、図1及び2における缶前壁11と缶後壁12とバーナ群30と二段燃焼用ポート13との配置関係と、を照らし合わせると、「缶前壁11及び缶後壁12は垂直に設けられている」ことがわかる。 (3)甲2に記載された発明 上記(1)、(2)から、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明> 「互いに対向する缶前壁11及び缶後壁12を有しており、全体で箱型を成す石炭焚きボイラ10であって、 垂直に設けられた缶前壁11及び缶後壁12のそれぞれに、バーナ群30が配置されており、 バーナ群30は、バーナ3を水平方向に複数並べて成るバーナ列31を垂直方向に複数段並べて成っており、 缶前壁11及び缶後壁12に設けられた複数のバーナ3は、微粉炭を供給し、 複数のバーナ3は、微粉炭を一次空気とともに供給する、 石炭焚きボイラ10。」 1-3.甲3について (1)甲3の記載 甲3には、次の記載がある。 「一般財団法人電力中央研究所・・・は、石炭火力発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を低減するため、燃焼してもCO2を排出しないアンモニア(NH3)を燃料として利用する技術開発を進めています。このたび、微粉炭燃焼場へのアンモニア投入方法を適正化することで、アンモニア投入率を20%とした場合でも窒素酸化物(NOx)の排出を石炭の専焼時と同等のレベルに抑制できる可能性を見出しました。」(第1ページ第1段落第1~5行) (2)甲3に記載された事項 上記(1)から、甲3には、以下の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。 「石炭火力発電所からの二酸化炭素排出量を低減するため、微粉炭燃焼場にアンモニアを燃料として投入しても窒素酸化物(NOx)の排出を石炭の専燃時と同等レベルに抑制すること。」 2.対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 (ア)甲2発明における「缶前壁11及び缶後壁12」は、本件発明1における「炉壁」に相当し、以下同様に、「バーナ3」は「バーナ」に、「微粉炭」は「アンモニアとは異なる第2燃料」に、「一次空気」は「燃焼用空気」に、それぞれ相当する。 (イ)甲2発明における「石炭焚きボイラ10」において、「複数のバーナ3は、微粉炭を供給」するものであるところ、この供給態様が噴射であること、及び、燃料である微粉炭が燃焼することが自明であるから、甲2発明における「石炭焚きボイラ10」のうち燃焼が起こる構造部分は、本件発明1における「バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器」に相当する。 (ウ)甲2発明における、「互いに対向する缶前壁11及び缶後壁12を有しており、全体で箱型を成す石炭焚きボイラ10」において、「垂直に設けられた缶前壁11及び缶後壁12のそれぞれに、バーナ群30が配置されており、」「バーナ群30は、バーナ3を水平方向に複数並べて成るバーナ列31を垂直方向に複数段並べて成って」いる態様は、本件発明1における、「複数のバーナが二次元状に配置され」た「燃焼器」において、「複数の前記バーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ」る態様に相当する。 (エ)甲2発明における「缶前壁11及び缶後壁12に設けられた複数のバーナ3は、微粉炭を供給」するという事項により、微粉炭の噴射領域が形成されることが自明であるから、当該事項と、本件発明1における「炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成」するという事項とは、「炉壁に設けられた複数のバーナは、アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成する」という限りにおいて一致する。 (オ)甲2発明における「複数のバーナ3は、微粉炭を一次空気とともに供給する」ことと、本件発明1における「個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射する」こととは、「個々のバーナは、第2燃料及び燃焼用空気を噴射する」という限りにおいて一致する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「複数のバーナが二次元状に配置され、バーナから燃料を噴射して燃焼させる燃焼器であって、 複数のバーナは、垂直に設けられた炉壁に二次元状に設けられ、 炉壁に設けられた複数のバーナは、アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、 個々のバーナは、第2燃料及び燃焼用空気を噴射する、燃焼器。」 <相違点1> 「バーナ」に関して、本件発明1では、「炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、」「個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射する」のに対し、甲2発明では、「缶前壁11及び缶後壁12に設けられた複数のバーナ3は、微粉炭を供給し、」「複数のバーナ3は、微粉炭を一次空気とともに供給する」点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 (ア)甲1技術における、「バーナ2は、アンモニヤガス4を中空な錐状炎7の空所へ供給し、コークス炉ガス12を錐状炎7へ供給」する態様は、甲1技術における「バーナ2は、3つの別々な通路を持ち、これら通路のうちコークス炉ガス12を導く通路が、環状流出口8を持つノズル9に終わっており、このノズル9の中心に、アンモニヤガス4を導く分配ランスの形の通路が開口しており」という事項と、甲1の図面から、中空な錐状炎7の中央の空所の周囲に錐状炎7があることが看取できることと、を併せみると、アンモニヤガスの噴射領域の周囲に前記アンモニヤガスとは異なる燃料(コークス炉ガス)の噴射領域を形成する態様であるといえる。 (イ)また、甲1技術における、「バーナ2は、3つの別々な通路を持ち、これら通路のうちコークス炉ガス12を導く通路が、環状流出口8を持つノズル9に終わっており、このノズル9の中心に、アンモニヤガス4を導く分配ランスの形の通路が開口しており、燃焼用空気13を導く通路が分配ランス及びノズル9を包囲する」態様は、甲1の図面及び本件特許異議申立書の第13ページに示された図1における「3つの別々な通路」の構造なども参酌すると、バーナ2のうちアンモニヤガス4及びコークス炉ガス12を供給する環状流出口8付近の先端部は三重管状であり、バーナ2の先端部より上流側には二重管状の部分があり、バーナ2は全体としては二重管状の部分と三重管状の部分とを有しており、ノズル9の中心の分配ランスからアンモニヤガス4を供給し、ノズル9のうち分配ランスの周囲の環状流出口8からコークス炉ガス12を供給し、分配ランス及びノズル9を包囲する通路から燃焼用空気13を供給する態様であるといえる。 してみると、甲1技術におけるバーナ2の上記態様は、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射する態様であるといえる。 (ウ)そして、例えば甲3事項に示されるように、二酸化炭素排出量を低減することは社会的要請であって、石炭燃焼の技術分野において、二酸化炭素排出量を低減することは、周知な課題であるといえる。そして、当該周知の課題に対して、二酸化炭素排出量を低減するために微粉炭燃焼場にアンモニアを燃料として投入することも周知であるといえるから、微粉炭を燃焼させる甲2発明において、アンモニアを燃料として投入して二酸化炭素排出量を低減するべく、バーナの中心からアンモニアを噴射する技術である甲1技術を採用することには、動機があるといえる。 そうすると、甲2発明における各「バーナ3」の具体的構造に甲1技術を採用し、炉壁に設けられた複数のバーナを、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し、個々の前記バーナは、二重管状あるいは三重管状に形成されており、中心から前記アンモニアを噴射し、周囲から前記第2燃料及び燃焼用空気を噴射するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (エ)また、相違点1に係る本件発明1の構成による効果は、甲1の「この酸素不足の領域へ導入されたアンモニヤガス4は、還元性雰囲気中で比較的低温で燃焼するので、燃焼の際生ずる窒素酸化物の量は僅少に維持される」という記載などから、当業者が予測し得る程度のものである。 ウ 特許権者の主張について 特許権者は、令和5年1月17日提出の意見書及び令和4年11月25日提出の意見書において、以下のように主張する。 (ア)甲1技術について 「すなわち、訂正後本件発明1の「アンモニアの噴射領域の周囲」とは、「アンモニアの噴射領域」の外周を指すもので、「第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成し」とは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の外周の周りに前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成することである(明細書の段落【0029】)。 一方、甲1において、「アンモニヤガス4を中空な錘状炎7の空所へ供給し」と記載されるように、「錘状炎7」は、「アンモニヤガス4」の噴射領域の先端には形成されていないので、「アンモニヤガス4」の噴射領域の外周の周りに「錘状炎7」は形成されておらず、訂正後本件発明1の「第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成」することは示唆されていない。 甲1のコークス炉ガス中のアンモニアの燃焼器では、ボイラに比べてアンモニアの量が極めて少ないため、「錘状炎7」の中空な空所が存在し、図面でも錘状炎7として描写されている2つの楕円形状の炎で囲まれた領域の中心部分は、端部側において穴状に開かれた空所を有しており、酸素の侵入が許容されている。 一方、訂正後本件発明1では、アンモニアの量が多く、NOxが多く発生するおそれがある故に、酸素の侵入を抑えやすくするため、前記空所を設けず、「アンモニアの噴射領域」の外周の周りに「第2燃料の噴射領域」が形成されている。 そして、訂正後本件発明1は、「第2燃料の噴射領域」が、「アンモニアの噴射領域」の周りにすなわち周囲に形成されることにより、「噴射されたアンモニア(第1燃料)の周囲には、微粉炭(第2燃料)の燃焼によって発生する高温度領域Skが形成され、アンモニア(第1燃料)は、高温度領域Skに曝されることにより、水素ガス(H2)と窒素ガス(N2)とに熱分解し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制され、燃焼温度を高くする程に窒素酸化物(NOx)の生成率が低下する」(段落【0029】~【0030】)という格別な作用効果を奏するものである。 一方、甲1においては、「中空な錘状炎7」の空所へ「アンモニヤガス4」を供給するから、「アンモニヤガス4」は比較的低温で燃焼すると記載されており(甲1のp8第2段落)、窒素原子が酸素原子と化合しないようにすると記載されている(甲1のp7の第1~6行)。 したがって、甲1においては、「アンモニヤガス4」は比較的低温で燃焼させ、窒素原子が酸素原子と化合しないようにして、窒素酸化物を僅少に維持する(甲1のp8下から第3~4行)ものであり、甲1の「アンモニヤガス4」の燃焼場は、訂正後本件発明1のアンモニアの燃焼場とは異なる。甲1のコークス炉ガス中のアンモニアの燃焼場において求められるNOx低減のレベルは、訂正後本件発明1におけるNOx低減のレベルとは異なる。」 そこで、本件発明1の「噴射領域」について検討すると、本件特許明細書の段落【0026】には、以下の事項が記載されている。 「【0026】 例えば、個々のバーナM11~M33、N11~N33は三重管状に形成されており、内側管にアンモニア(第1燃料)が供給され、中央管に微粉炭(第2燃料)が供給され、外側管に燃焼用空気が供給される。したがって、火炉1内には、図示するように各々のバーナM11~M33、N11~N33について、アンモニア(第1燃料)の噴射領域(アンモニア噴射領域Sa)の周囲に微粉炭(第2燃料)の噴射領域(微粉炭噴射領域Sb)が形成される。」 当該記載から、本件発明1の「前記炉壁に設けられた複数の前記バーナは、第1燃料であるアンモニアの噴射領域の周囲に前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成」することとは、二重管状又は三重管状に形成されたバーナについて、内側管から第1燃料であるアンモニアが噴射されてアンモニア噴射領域Saが形成され、中央管から第2燃料である微粉炭が噴射されてアンモニア噴射領域Saの周りに微粉炭噴射領域Sbが形成されることであると理解できるが、「第1燃料であるアンモニアの噴射領域の外周の周りに前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成する」ことを意味するとまで解することは、できないものである。 さらに本件特許明細書の段落【0029】~【0030】には、以下の事項が記載されている。 「【0029】 ここで、本第1実施形態に係る燃焼器A及びボイラでは、各々のバーナM11~M33、N11~N33は、アンモニア噴射領域Saの周りに微粉炭噴射領域Sbが形成されるようにアンモニア(第1燃料)及び微粉炭(第2燃料)を火炉1内に噴射する。周知のようにアンモニア(第1燃料)は、微粉炭(第2燃料)よりも燃焼性が低く、一般に燃え難いが、燃焼性に優れた微粉炭(第2燃料)がアンモニア(第1燃料)より先行して燃焼することにより、火炉1内に噴射されたアンモニア(第1燃料)の周囲には、微粉炭(第2燃料)の燃焼によって発生する高温度領域Skが形成される。 【0030】 この高温度領域Skは、アンモニア(第1燃料)の熱分解を促進し、アンモニア(第1燃料)の酸化(NOx化)を抑制する。すなわち、上記高温度領域Skはアンモニア(第1燃料)に対して還元領域として機能するものであり、アンモニア(第1燃料)は、高温度領域Skに曝されることにより、水素ガス(H2)と窒素ガス(N2)とに熱分解し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制される。このような高温度領域Skのアンモニア(第1燃料)に対する還元作用は、アンモニア(第1燃料)と微粉炭(第2燃料)との混合燃焼実験によっても確認されており、燃焼温度を高くする程に窒素酸化物(NOx)の生成率が低下することが確認されている。」 当該記載から、アンモニア噴射領域Saの周りに形成された微粉炭噴射領域Sbでは、アンモニア噴射領域Saよりも先に微粉炭の燃焼が進行し、アンモニア噴射領域Sbにおいてアンモニアの熱分解が行われた後、H2が酸素と反応して燃焼し、N2と酸素との反応は抑制されるものと解されるから、アンモニア噴射領域Saの先端側には、H2と反応するための酸素が供給されていると解することが合理的であって、「第1燃料であるアンモニアの噴射領域の外周の周りに前記アンモニアとは異なる第2燃料の噴射領域を形成する」との特許権者の主張は、本件特許明細書、特許請求の範囲の記載に基づかないものといわざるを得ない。 また、本件発明1の「第1燃料であるアンモニア」と「第2燃料」との分量について検討すると、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれにおいても、第1燃料であるアンモニア燃料と第2燃料とについてそれぞれの燃料の分量や相互の比率は、なんら記載されておらず、「訂正後本件発明1では、アンモニアの量が多く、NOxが多く発生するおそれがある」との特許権者の主張も、本件特許明細書、特許請求の範囲の記載に基づかないものといわざるを得ない。 そして、上記イ(ア)、(イ)で論じたとおり、本件発明1の相違点1に係る構成は、甲1技術における「バーナ2は、アンモニヤガス4を中空な錘状炎7の空所へ供給し、コークス炉ガス12を錘状炎7に供給」する態様となんら相違しないのであるから、特許権者の主張を採用することはできない。 (イ)甲2発明と甲1技術との組み合わせについて 「さらに、甲2発明は、・・・アンモニアを燃料とした場合のNOx低減は全く想定されていないので、甲1技術のNOx低減の技術を適用する動機付けはないし、甲1技術の「中空な錘状炎7」は、ボイラ内の缶前壁側と缶後壁側との間の熱負荷を均一にすることの阻害要因になる。」 上記イ(ウ)で論じたとおり、本件特許の出願時において二酸化炭素排出量を低減することは、甲3号証に例示されるように社会的要請であって、石炭燃焼の技術分野において二酸化炭素排出量を低減することは、周知な課題であるといえるから、甲2発明のバーナに甲1技術を適用する動機付けがあったということができる。 そして、甲1技術の「中空な錘状炎7」が「ボイラ内の缶前壁側と缶後壁側との間の熱負荷を均一にすることの阻害要因になる」との主張については、その根拠の説明がなんらされておらず、缶前壁側と缶後壁側の双方において二次元上に設けられたバーナを甲1技術のバーナとすることにより、缶前壁側と缶後壁側との間の熱負荷が不均一になるとは認められないから、特許権者の主張は、採用することができない。 (ウ)甲3について 「また、甲3では、以下の記載より、バーナ部からアンモニアを投入するよりも、バーナ部から後段側に1.0m離れたところからアンモニアを投入する方がNOxを低減できることを示している。つまり、甲3は、バーナからアンモニアを投入することを示唆していない。」 上記(イ)で論じたとおり、甲3は、本件特許の出願時において二酸化炭素排出量を低減することが社会的要請であることを例示するために引用したものであって、特許権者の主張は、的を射ないものであるといわざるを得ないから、採用することができない。 また、甲3においても、「バーナ部のみからアンモニアを投入した場合(図1の○1(原文においては「○」の中に「1」))は、」(第1ページ第3段落第4行)と記載されているように、バーナからアンモニアを投入することが示されている。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲1技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明3ついて ア 対比 上記(1)でも論じたとおり、甲2発明は、「微粉炭」を燃料として用いている。 本件発明3と甲2発明とを対比すると、上記相違点1に加えて、以下の相違点2で相違する。 <相違点2> 本件発明3は、「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成される」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えない点。 イ 判断 (ア)上記相違点2について検討すると、甲1技術は、コークス炉ガス4による空所をもつ錐状炎7を包囲する外側範囲では、酸素が直接燃焼ガス流であるコークス炉ガス4にあたることで燃焼により必要な温度を生じさせ、錐状炎7の内部には、酸素の少ない還元性雰囲気が生じ、当該還元性雰囲気中でアンモニヤガス4を比較的低温で燃焼させるものである(明細書第6ページ第9行~第7ページ第6行、第8ページ第8行~第14行)から、錘状炎7の周囲にコークス炉ガス4の燃焼によって発生する還元性雰囲気の領域が形成されることが記載されている。 (イ)また、「高温度領域」について検討すると、そもそも、本件発明3の「高温度領域」が、いずれの領域の温度と比較して「高温度」とするのか不明であるが、甲1技術の還元性雰囲気の領域は、「比較的低温」でアンモニヤガスが燃焼する領域であるが、甲1における「比較的低温」とは、錘状炎7を包囲する外側の範囲で酸素が直接燃焼ガス流であるコークス炉ガスにあたる領域の温度と比較して「低温」であることを意味すると解され、錘状炎7を包囲する外側の範囲に「還元性雰囲気」の領域が形成されているのであるから、錘状炎7よりは低温であるが、炉内の錘状炎7から遠い領域と比較したら、むしろ「高温度領域」であると認められる。 (ウ)また、甲1の還元性雰囲気では、「・・・窒素原子がこの反応領域の後で充分冷却された雰囲気に当り、この雰囲気中ではもはや酸素原子とあまり化合することはできない・・・」ようにしてアンモニヤガスが「比較的低温で燃焼する」のであるから、アンモニヤガスを熱分解することで、窒素原子と酸素原子との化学反応に起因したNOxの生成を抑制しようとする本件発明3の「高温度領域」と同様の作用機序をもたらすものと解するのが合理的である。 (エ)そして、コークス炉ガス12の燃焼ではなく、微粉炭の燃焼によっても還元性雰囲気を形成することができることが技術常識であるから、甲2発明に甲1技術を適用する際に、微粉炭をアンモニアの周囲から供給して空所をもつ錘状炎7を形成し、錘状炎7の内部に酸素の少ない還元性雰囲気の領域を形成することは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 特許権者の主張について 特許権者は、令和5年1月17日提出の意見書及び令和4年11月25日提出の意見書において、 「ここで、「第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域」は、アンモニアが晒されることにより、水素ガスと窒素ガスとに熱分解し、窒素酸化物の生成が抑制される領域であるから(明細書の段落【0029】)、訂正後本件発明3、4において、「還元領域として機能する高温度領域」が、「前記アンモニア」の周囲に形成されるということは、「還元領域として機能する高温度領域」が、「前記アンモニア」の噴射領域にも形成されることを意味している。 一方、甲1においては、「アンモニヤガス」は「錘状炎7」の外側の酸素が供給される中空の第1の反応領域と「錘状炎7」の内部の酸素が少ない還元性雰囲気の第2の反応領域で燃焼しており、また、「アンモニヤガス」が比較的低温の還元性雰囲気で燃焼するとも記載されており(甲1のp8第2段落)、「アンモニヤガス」の噴射領域である「中空な錘状炎の空所」には、還元性雰囲気は形成されておらず、訂正後本件発明3、4の「噴射された前記アンモニアの周囲には、前記第2燃料の燃焼によって発生する還元領域として機能する高温度領域が形成されている」ことは記載されていない。」 と主張する。 そこで、本件発明3の「還元領域として機能する高温度領域」について検討すると、本件特許明細書の段落【0030】には、上記(1)ウ(ア)に示したとおり、「すなわち、上記高温度領域Skはアンモニア(第1燃料)に対して還元領域として機能するものであり、アンモニア(第1燃料)は、高温度領域Skに曝されることにより、水素ガス(H2)と窒素ガス(N2)とに熱分解し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制される。」と記載されている。 当該記載は、「前記アンモニアの周囲」に発生する「高温度領域」に「アンモニア」が接することで「アンモニア」の分解が起こることを述べたにすぎず、アンモニア噴射領域の内側まで「高温度領域」が形成されていること意味するとは、解されない。 してみると、特許権者の主張は、本件特許明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。 次に甲1技術の「還元性雰囲気」における「比較的低温」の燃焼について検討すると、上記イ(ア)で論じたとおり、甲1の錘状炎7の内部は、「酸素が少なく、したがってここには還元性雰囲気が生じる。」と明記されている。 そして、上記イ(イ)、(ウ)で論じたとおり、甲1技術の「還元性雰囲気」における「比較的低温」の燃焼は、「還元性雰囲気」の領域が錘状炎7より低温であるが、炉内の錘状炎7から遠い領域と比較すると「高温度領域」であって、その作用機序も本件発明3と同じであると解することが合理的であるから、特許権者の主張を採用することはできない。 エ 小括 よって、本件発明3は、甲2発明及び甲1技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明4について 甲2発明における「石炭焚きボイラ10」は、本件発明4における「燃焼器を備える」「ボイラ」に相当する。 してみると、本件発明4と甲2発明とは、上記一致点で一致し、相違点1、相違点2で相違する。 しかしながら、相違点1、相違点2については、(1)、(2)で論じたとおりであるから、本件発明4も、甲2発明及び甲1技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1、3、4は、甲2発明及び甲1技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1、3、4の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより申立人による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700789

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決102件(株式会社IHI、田口 和之)
  • 2026-700438異議申立 / 2026-09-11
    同じ当事者: 株式会社IHI
  • 2024-700559異議申立 / 2025-10-08 / 訂正認容燃焼炉及びボイラ
    同じ当事者: 株式会社IHI
  • 2025-700574異議申立 / 2025-09-09 / 維持接合部カバー
    同じ当事者: 株式会社IHI
  • 2023-701010異議申立 / 2024-09-30 / 訂正認容金属元素含有物質から金属を回収する方法
    同じ当事者: 株式会社IHI
  • 2023-700488異議申立 / 2024-03-19 / 訂正認容発電システム
    同じ当事者: 株式会社IHI
同じ論点・分野の審決(審決分類)26件(121・F23C)
  • 2024-700559異議申立 / 2025-10-08 / 訂正認容燃焼炉及びボイラ
    共通の審決分類: 121・F23C
  • 2022-700775異議申立 / 2023-12-07 / 訂正認容燃焼装置及びボイラ
    共通の審決分類: 121・F23C
  • 2023-700299異議申立 / 2023-06-22 / 維持排ガス処理装置および焼却設備
    共通の審決分類: 121・F23C
  • 2022-700920異議申立 / 2023-06-05 / 訂正認容複合燃焼炉及び複合燃焼ボイラ
    共通の審決分類: 121・F23C
  • 2022-700564異議申立 / 2023-03-30 / 請求成立(取消)バイオ燃料に点火するシステムおよび方法
    共通の審決分類: 121・F23C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存