特許異議申立
2022-700775
燃焼装置及びボイラ
- 審判番号
- 2022-700775
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-213209
- 登録番号
- 7027817
- 請求日
- 2022年08月08日
- 審決日
- 2023年12月07日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社IHI
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】寺本 光生
- 【権利者代理人】清水 雄一郎
- 【権利者代理人】高橋 久典
- 【異議申立人】新妻 久
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 槙原 進
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P1651.537-YAA(F23C) / P1651.121-YAA(F23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7027817号発明「燃焼装置及びボイラ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7027817号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7027817号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7027817号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成29年11月2日に出願され、令和4年2月21日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月2日に特許掲載公報が発行された。
これに対して令和4年8月8日に特許異議申立人 新妻 久(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~3に係る特許について特許異議の申立てがされたものであり、その主な経緯は、次のとおりである。
令和4年10月26日付け:取消理由通知
令和4年12月23日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求書の提出
令和5年 2月13日 :申立人による意見書の提出
令和5年 3月13日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和5年 5月 8日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求書の提出
令和5年 7月26日 :申立人による意見書の提出
なお、令和4年12月23日に提出された訂正請求書による訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年5月8日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであって、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下の訂正事項1のとおりである。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1を、
「火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、
アンモニア噴射ノズルと、
前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており、
前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射し、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、
前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、
各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する
ことを特徴とする燃焼装置。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~3も同様に訂正する。)
2 訂正の目的、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「アンモニア噴射ノズル」が「燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射する」ことに関し、
「前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており、
前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」るという事項(以下、「特定事項A」という。)であって、「火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域」を生じるための前提構成を特定する事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1で付加された特定事項Aに関し、特許明細書等の明細書には、以下の記載がある。
・「図2は、バーナ4の概略構成を模式的に示す断面図である。バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41と、微粉炭噴射ノズル42とを備えており、全体としてアンモニア噴射ノズル41の軸芯Lを中心とした略円筒状に形成されている。アンモニア噴射ノズル41は、後端部がアンモニア供給部6と接続されており、先端部から火炉2の内部にアンモニアを噴射する。微粉炭噴射ノズル42は、アンモニア噴射ノズル41を囲むように、アンモニア噴射ノズル41と同心円状に設けられた二重筒形状であり、内筒と外筒との間から火炉2の内部に微粉炭を噴射する。また、アンモニア噴射ノズル41と微粉炭噴射ノズル42との間には隙間が設けられており、この隙間から燃焼用の空気が火炉2の内部に供給される。」(段落【0024】)
・「このようなバーナ4では、アンモニア噴射ノズル41からアンモニアが噴射され、微粉炭噴射ノズル42から微粉炭が噴射され、さらに燃焼用の空気が供給されることによって、図3に示すように、バーナ4の前方に対して火炎Fが形成される。このように火炎Fが形成されると、火炎Fの外縁領域R1(アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lの径方向外側の領域)と、火炎Fの先端領域R2は、火炎Fが形成された他の領域に対して酸素濃度が低い酸素濃度低下領域となる。」(段落【0026】)
・「例えば、上記実施形態においては、微粉炭とアンモニアとを燃料として混焼させるボイラについて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、天然ガスとアンモニアを燃料として混焼させる構成、重油や軽油とアンモニアを燃料として混焼させる構成、あるいは、アンモニアのみを燃料として燃焼させる構成等を採用することが可能である。」(段落【0046】)
そして、特定事項Aは、これら記載の事項並びに特許明細書等の図2及び図3に示された事項に基づくものであるから、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して、特定事項Aを直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~3〕についてされたものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、
アンモニア噴射ノズルと、
前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており、
前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射し、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、
前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、
各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
アンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置と、前記燃焼装置が取り付けられた火炉とを備えるボイラであって、
前記燃焼装置として、請求項1記載の燃焼装置を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記火炉の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されていることを特徴とする請求項2記載のボイラ。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和4年12月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求により訂正された、本件訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和5年3月13日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)理由1(サポート要件)
ア 請求項1について
(ア)本件特許の発明が解決しようとする課題(以下「本件発明の課題」という。)は、「アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制すること」(明細書の段落【0005】)である。
(イ)請求項1における「燃料」には、請求項1の冒頭に「アンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって」とされている関係上、アンモニアが含まれ、「燃料を噴射する噴射ノズル」からアンモニアが噴射されると、火炎の酸素濃度低下領域以外の相対的に高濃度の酸素を含む領域において、多量の窒素酸化物(NOx)が発生してしまうことになるから、本件発明の課題を解決することができない。
本件発明の課題を解決するためには、「燃料」が「炭素燃料」であり、「燃料を噴射する噴射ノズル」が「炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズル」であることを特定する必要がある。
(ウ)請求項1における「燃料用の空気(当審注:当該記載は誤記であり、正しくは「燃焼用の空気」であると認定した。)が供給されること」には、発明の詳細な説明における、燃焼用の空気がアンモニア噴射ノズル41と炭素燃料噴射ノズル42との間に設けられた隙間から供給される態様以外の態様が含まれ、アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lの付近に、相対的に高濃度の酸素を含む領域が形成されるのに充分な空気が供給されず、図3に示される火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2が形成されないような態様も想定され、そのような態様では分散型噴射ノズルであるアンモニア噴射ノズルから噴射したアンモニアが前記火炎Fの前記外縁領域R1及び前記先端領域R2に噴射できないことになるから、本件発明の課題を解決することができない。
本件発明の課題を解決するためには、「燃焼用の空気がアンモニア噴射ノズルと炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されること」を特定する必要がある。
(エ)したがって、本件特許の請求項1において、発明の詳細な説明に記載された、本件発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、本件特許の請求項1に係る発明では、本件発明の課題を解決することができるとは認められない。
イ 請求項2及び3について
本件特許の請求項1を引用する請求項2及び3についても、上記アと同様である。
ウ まとめ
そうすると、本件特許の請求項1~3の記載は、本件特許の請求項1~3に係る発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとなっている。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)理由2(明確性)
ア 請求項1について
請求項1には、「燃料用の空気」(6行)と記載されている。
しかし、「燃料用の空気」は、その技術的意味が不明であり、本件特許の明細書には、「二段燃焼空気供給部」(段落【0017】、【0028】、【0034】、【0047】)、「燃焼空気供給部」(段落【0021】)、「燃焼空気」(段落【0021】)、「燃焼用の空気」(段落【0024】~【0026】)及び「二段燃焼用の空気」(段落【0028】、【0034】)との記載があることから、「燃焼用の空気」の誤記と認められる。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、不明確である。
イ 請求項2及び3について
本件特許の請求項1を引用する請求項2及び3についても、上記アと同様である。
ウ まとめ
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)理由1(サポート要件)について
ア 本件発明の課題
本件特許の発明が解決しようとする課題(以下「本件発明の課題」という。)は、「アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制すること」(明細書の段落【0005】)である。
イ 請求項1について
(ア)本件特許の訂正後の請求項1には、「前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射」することが記載されているところ、「酸素濃度低下領域」に「アンモニアを噴射する」ことにより窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することについて、本件特許の明細書及び図面には以下の記載がある。
「【0021】
バーナ4は、火炉2の下部の壁部に配置されている。このバーナ4は、火炉2の周方向に複数設置されている。また、図1では省略しているが、バーナ4は、火炉2の高さ方向にも複数設置されている。これらのバーナ4は、火炉2の下部に二次元状かつ対向配置されており、燃料を噴射して燃焼させる。これらのバーナ4は、何れもアンモニア及び微粉炭を燃料として火炉2内に噴射可能な複合バーナである。なお、図1では省略しているが、火炉2にはバーナ4から噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)を着火させる着火装置が設けられている。また、図1では省略しているが、ボイラ1は、バーナ4に対して燃焼空気を供給する燃焼空気供給部を有している。各バーナ4から火炉2内に燃焼空気と共に噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)は、上述の着火装置の働きによって着火して燃焼する。」
「【0023】
ここで、アンモニアは、分子式(NH3)によって示されるように水素(H)と窒素(N)との化合物であり、構成原子として炭素(C)を含まない。また、このアンモニア(低炭素燃料)は、難燃性の物質として知られるものの、メタン(CH3)と同様に3つの水素原子を有する水素キャリア物質である。一方、微粉炭は、化石燃料である石炭を数マイクロメートル程度の大きさまで粉砕処理したものであり、ボイラ用の燃料として一般的に使用されている。すなわち、アンモニアは、微粉炭(炭素燃料)よりも炭素濃度が低い低炭素燃料である。」
「【0024】
図2は、バーナ4の概略構成を模式的に示す断面図である。バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41と、微粉炭噴射ノズル42とを備えており、全体としてアンモニア噴射ノズル41の軸芯Lを中心とした略円筒状に形成されている。アンモニア噴射ノズル41は、後端部がアンモニア供給部6と接続されており、先端部から火炉2の内部にアンモニアを噴射する。微粉炭噴射ノズル42は、アンモニア噴射ノズル41を囲むように、アンモニア噴射ノズル41と同心円状に設けられた二重筒形状であり、内筒と外筒との間から火炉2の内部に微粉炭を噴射する。また、アンモニア噴射ノズル41と微粉炭噴射ノズル42との間には隙間が設けられており、この隙間から燃焼用の空気が火炉2の内部に供給される。
【0025】
また、バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41及び微粉炭噴射ノズル42を囲うように配設される2次空気供給部43と、2次空気供給部43を囲うように配設される3次空気供給部44とを備えている。これらの2次空気供給部43及び3次空気供給部44は、火炎に対して径方向外側から燃焼用の空気を供給する。
【0026】
このようなバーナ4では、アンモニア噴射ノズル41からアンモニアが噴射され、微粉炭噴射ノズル42から微粉炭が噴射され、さらに燃焼用の空気が供給されることによって、図3に示すように、バーナ4の前方に対して火炎Fが形成される。このように火炎Fが形成されると、火炎Fの外縁領域R1(アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lの径方向外側の領域)と、火炎Fの先端領域R2は、火炎Fが形成された他の領域に対して酸素濃度が低い酸素濃度低下領域となる。」
「【0027】
図4(a)は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lを含む面での断面図であり、図4(b)は図4(a)のA-A断面図である。これらの図に示すように、アンモニア噴射ノズル41は、軸芯Lを中心とする円筒形状の直管型のノズルであり、アンモニアを噴射する噴射開口20を先端に1つのみ有している。噴射開口20は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lと中心が重なるように形成されている。つまり、図2(b)に示すように、噴射開口20は、アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lに沿った方向から見て、アンモニア噴射ノズル41の中央に形成されている。また、噴射開口20の直径D1は、アンモニア噴射ノズル41の内部流路の直径D2よりも小さく設定されている。このようなアンモニア噴射ノズル41は、アンモニア供給部6から内部流路に供給されたアンモニアを噴射開口20から外部に噴射する。このとき、アンモニア噴射ノズル41が、内部流路の直径D2よりも小さな直径D1を有する噴射開口20を1つのみ有しているため、内部流路に供給されたアンモニアは、噴射開口20を通過する際に加速される。このようにアンモニア噴射ノズル41は、内部流路に供給されたアンモニアを、流速を増大させて軸芯Lに沿って噴射する加速型噴射ノズルとされている。加速されて噴射されたアンモニアは、貫通力が増すことによって、火炎Fの先端領域R2(すなわち酸素濃度低下領域)に到達する。つまり、バーナ4は、燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い火炎Fの先端領域R2(酸素低下領域)にアンモニアを噴射するアンモニア噴射ノズル41を備えている。」
「【0033】
このような本実施形態のボイラ1では、火炉2の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定される。その後、アンモニア供給部6からバーナ4にアンモニアが供給され、微粉炭供給部7からバーナ4に微粉炭が供給され、アンモニア及び微粉炭を燃料としてバーナ4で火炎が形成される。このとき、バーナ4のアンモニア噴射ノズル41によってアンモニアの流速が増大されるため、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアは、火炎Fの先端領域R2に到達して燃焼される。この結果、アンモニアが熱分解されることによって生成された窒素原子が酸素原子と結びつくことを抑制し、窒素原子同士を結び付かせることができる。このため、アンモニアが燃焼された場合であっても、窒素酸化物(NOx)の発生が抑制される。さらに、本実施形態のボイラ1では、火炉2の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されているため、より窒素分子が酸素分子と結びつくことを抑制し、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。」
「【0040】
図5は、本実施形態のボイラが備えるバーナのアンモニア噴射ノズル45の概略構成を示す図である。図5(a)は、アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lを含む面での断面図であり、図5(b)はアンモニア噴射ノズル45の正面図である。これらの図に示すように、アンモニア噴射ノズル45の先端部には、アンモニアを噴射する複数の噴射開口21が設けられている。これらの噴射開口21は、図5(b)に示すように、アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lを囲むように環状に配列されている。また、各々の噴射開口21は、火炎Fの外縁領域R1に向けてアンモニアを噴射するように、軸芯Lを中心とする径方向外側に向けて開口されている。」
「【0042】
アンモニア噴射ノズル45から噴射されたアンモニアは、軸芯Lを中心とする径方向外側に広がりながら前方に移動し、火炎Fの外縁領域R1に到達する。つまり、アンモニア噴射ノズル45は、燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域(外縁領域R1)にアンモニアを噴射する。この結果、アンモニアが熱分解されることによって生成された窒素原子が酸素原子と結びつくことを抑制し、窒素原子同士を結び付かせることができ、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、アンモニア噴射ノズル45が軸芯Lを囲んで配列される複数の噴射開口21を有する簡易な構造にて、アンモニアを酸素濃度低下領域(外縁領域R1)に供給することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態のアンモニア噴射ノズル45に対して、上記第1実施形態の噴射開口20を加える構成を採用することも可能である。このような場合には、火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2にアンモニアを供給することができる。」
「
[図:0001407796000001.jpg]
[図:0001407796000002.jpg]
[図:0001407796000003.jpg]
[図:0001407796000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)の記載によると、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものとして、次の技術的な手段(以下、「本件発明の課題を解決するための手段」という。)が記載されていると認められる。
「アンモニア噴射ノズル41と、前記アンモニア噴射ノズル41を囲むように、火炉2の内部に炭素燃料である微粉炭を噴射する微粉炭噴射ノズル42とを備えており、アンモニア及び微粉炭を燃料として火炉2内に噴射可能な複合バーナであるバーナ4を用いて、
前記アンモニア噴射ノズル41からアンモニアが噴射され、前記微粉炭噴射ノズル42から微粉炭が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズル41と前記微粉炭噴射ノズル42との間に設けられた隙間から供給されることによって、相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域である外縁領域R1及び先端領域R2を有する火炎Fが前記バーナ4の前方に対して形成されたものにおいて、
前記アンモニア噴射ノズル41が、図4に示すような前記アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lと中心が重なるように形成された噴射開口20から酸素濃度が低い酸素濃度低下領域である前記火炎Fの先端領域R2にアンモニアを噴射すると共に、図5に示すような前記アンモニア噴射ノズル45の軸芯Lを囲むように環状に配列され、軸芯Lを中心とする径方向外側に向けて開口された複数の噴射開口21から前記火炎Fの前記外縁領域R1(アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lの径方向外側の領域)にアンモニアを噴射することにより、窒素酸化物(NOx)の発生(増加)を抑制しようとすること。」
上記の本件発明の課題を解決するための手段は、火炉に設置されるバーナ4である燃焼装置として、係る燃焼装置で「形成」される炭素燃料である微粉炭の燃焼による「火炎」に対して、窒素酸化物の増加を抑制するべく、火炎の相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域である外縁領域R1及び先端領域R2に向けて、アンモニアの噴射方向を定めたものと理解できる。
そして、係る前記外縁領域R1及び前記先端領域R2を有する「火炎」の「形成」を特定するには、「アンモニア噴射ノズル41と、前記アンモニア噴射ノズル41を囲むように、火炉2の内部に炭素燃料である微粉炭を噴射する微粉炭噴射ノズル42とを備えており、アンモニア及び微粉炭を燃料として火炉2内に噴射可能な複合バーナであるバーナ4を用いて」、「前記微粉炭噴射ノズル42から微粉炭が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズル41と前記微粉炭噴射ノズル42との間に設けられた隙間から供給されること」が前提構成として必要と認められる。
ここで、明細書の段落【0004】の「天然ガスのような炭素燃料とアンモニアのような窒素含有燃料とを一緒に燃焼させる場合には、実用性の観点から窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが必要不可欠である。」との記載、段落【0023】の「すなわち、アンモニアは、微粉炭(炭素燃料)よりも炭素濃度が低い低炭素燃料である。」との記載を考慮すると、炭素燃料は微粉炭に限るものではないから、「炭素燃料である微粉炭を噴射する微粉炭噴射ノズル42」を「炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズル」としてもよいことが認められる。
(ウ)一方、本件訂正後の請求項1には、
「アンモニア噴射ノズルと、
前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており、
前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射し」と記載されている。
(エ) そうすると、本件訂正後の請求項1において、上記(ウ)の特定事項は、上記(イ)で前提構成として示した、「アンモニア噴射ノズル41と、前記アンモニア噴射ノズル41を囲むように、火炉2の内部に炭素燃料(微粉炭)を噴射する炭素燃料噴射ノズル(微粉炭噴射ノズル42)とを備えており、アンモニア及び炭素燃料として火炉2内に噴射可能な複合バーナであるバーナ4を用いて」、「前記炭素燃料噴射ノズル(微粉炭噴射ノズル42)から炭素燃料(微粉炭)が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズル41と前記炭素燃料噴射ノズル(微粉炭噴射ノズル42)との間に設けられた隙間から供給されること」との事項に対応するものになったと認められる。
(オ)そして、令和4年12月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求により訂正された請求項1において、「前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる燃料を噴射する噴射ノズル」について、噴射される「燃料」がアンモニアを含んでいたものを、本件訂正後の請求項1において、上記(ウ)のとおり、「炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズル」となり、アンモニアを含まない「炭素燃料」とされて、火炎の酸素濃度低下領域以外の相対的に高濃度の酸素を含む領域において、多量の窒素酸化物(NOx)が発生しないことが可能なものとなった。
また、令和4年12月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求により訂正された請求項1において、「燃料用の空気が供給されること」と記載されていたのを、本件訂正後の請求項1において、上記(ウ)のとおり、「燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されること」とされたことで、アンモニア噴射ノズルの軸芯の付近に、相対的に高濃度の酸素を含む領域が形成されるのに充分な空気が供給されず、上記(ア)の図3に示される火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2が形成されないような態様となり、アンモニア噴射ノズルから噴射したアンモニアが火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2に噴射できない事態は、想定されないものとなった。
(カ)したがって、本件訂正後の請求項1において、発明の詳細な説明に記載された、本件発明の課題を解決するための手段が反映されていないとすることはできず、本件特許の請求項1に係る発明が、上記アの本件発明の課題を解決することができないとは認められない。
ウ 請求項2及び3について
本件特許の請求項1を引用する請求項2及び3についても、上記イと同様である。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和5年7月26日に提出された意見書において、
「a.「炭素燃料」が微粉炭であることが特定されていない。微粉炭以外の任意の「炭素燃料」が「炭素燃料噴射ノズル」から噴射される態様を包含している。微粉炭以外の「炭素燃料」として、例えば、天然ガス、重油、バイオマス燃料等が考えられるところ、これらは微粉炭と性状及び燃焼性が全く異なる。本件明細書には、微粉炭以外の任意の「炭素燃料」を「炭素燃料噴射ノズル」から噴射した場合にも、微粉炭の場合と同様に、酸素濃度低下領域として外縁領域R1及び先端領域R2を有する火炎Fが形成されることが当業者に理解できるように記載した箇所は存在しない。」(4頁14行~同頁21行)と主張する。
しかしながら、微粉炭以外の炭素燃料であっても、酸素の消費がされるから、微粉炭燃料と同様に、酸素濃度低下領域が形成されるものと認められ、請求人の当該主張は採用できない。
(イ)また、申立人は、上記(ア)の意見書において、
「b.「炭素燃料噴射ノズル」(微粉炭噴射ノズル42)が、アンモニア噴射ノズル41と同心円状に設けられた二重筒形状であり、内筒と外筒との間から火炉2の内部に微粉炭を噴射する構成が特定されていない。「前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口」からのアンモニア噴射方向に「酸素濃度低下領域」としての外縁領域R1が存在するためには、当該アンモニア噴射方向に位置する外縁領域R1の上流側で「炭素燃料噴射ノズル」(微粉炭噴射ノズル42)からの「炭素燃料」が燃焼して酸素を消費する必要がある(そうでなければ、「第2の噴射開口」から噴射されたアンモニアが“高酸素濃度領域”を指向することになってしまう)。そのためには、「複数の第2の噴射開口」の周方向位置と「炭素燃料噴射ノズル」(微粉炭噴射ノズル42)の噴射口の周方向位置とが一致しているか、「炭素燃料噴射ノズル」(微粉炭噴射ノズル42)から環状に「炭素燃料」が噴射される結果、「低炭素濃度領域」としての外縁領域R1が周方向に連続して存在しているか、何れかの条件が満たされなければならない。前者は本件明細書で何ら言及されていない。本件明細書には、「炭素燃料噴射ノズル」(微粉炭噴射ノズル42)が、図2に示されるようにアンモニア噴射ノズル41と同心円状に設けられた二重筒形状であり、内筒と外筒との問から火炉2の内部に微粉炭を噴射する構成以外の場合であっても、「前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口」からのアンモニア噴射方向に酸素濃度低下領域として外縁領域R1を形成可能であることが当業者に理解できるように記載した箇所は存在しない。」(4頁下から3行~5頁17行)と主張する。
しかしながら、酸素濃度低下領域が生成されるのは、上流側で酸素が消費されるためであり、炭素燃料のノズルが二重筒形状でなく、アンモニア噴射ノズルを囲むように周囲に配置された複数のノズルの場合であっても、各炭素燃料ノズルから吹き出した炭素燃料が隙間から吹き出した酸素を消費して、各炭素燃料ノズルに対応した周方向の範囲で、隙間から吹き出した酸素が消費され、酸素濃度低下領域が形成されるから、炭素燃料のノズルが二重筒形状であることは、酸素濃度低下領域が形成されるのに必須ではないものと認められ、請求人の当該主張は採用できない。
(ウ)さらに、申立人は、上記(ア)の意見書において、
「c.「・・・火炎に対して径方向外側から燃焼用の空気を供給する・・・」(【0025】)2次空気供給部43及び3次空気供給部44の構成が特定されていない。上記「2)」で述べたとおり、2次空気供給部43及び3次空気供給部44は、外縁領域R1及び先端領域R2以外の領域(“高酸素濃度領域”)を形成し、結果的に、火炎Fの外縁領域R1及び先端領域R2を結果的に「酸素濃度低下領域」とするために必須の構成である。」(5頁18行~同頁23行)と主張する。
しかしながら、隙間から吹き出した酸素と、炭素燃料との混合した燃焼ガスは、噴射方向に拡散しながら移動し、その間に酸素が消費されるから、外縁と先端に酸素濃度低下領域を有する火炎が形成されるものと認められ、外縁と先端に酸素濃度低下領域を有する火炎が形成に補助的な二次空気、三次空気が必須のものではないと認められ、請求人の当該主張は採用できない。
オ まとめ
そうすると、本件特許の請求項1~3の記載は、本件特許の請求項1~3に係る発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、上記1(1)の理由1(サポート要件)によって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとして、取り消すことはできない。
(2)理由2(明確性)について
ア 請求項1について
令和4年12月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求により訂正された請求項1においては、「燃料用の空気」(6行)と記載されていたものが、本件訂正後の請求項1においては、「燃焼用の空気」(6行)とされた。
したがって、本件訂正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
イ 請求項2及び3について
本件訂正後の請求項1を引用する請求項2及び3についても、上記アと同様である。
ウ まとめ
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、上記1(2)の理由2(明確性)によって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとして、取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
本件特許の請求項1~3に係る特許に対して、申立人が特許異議申立書において主張した特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1」~「甲8」という。)を提出し、進歩性について次の主張をする。
ア 甲1に記載された発明を主とした場合
(ア)本件特許の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術事項及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件特許の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術事項及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件特許の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術事項、甲3に記載された技術事項及び甲8に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲4に記載された発明を主とした場合
(ア)本件特許の請求項1に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲5~7に例示された周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件特許の請求項2に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲5~7に例示された周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件特許の請求項3に係る発明は、甲4に記載された発明、甲8に記載された技術事項及び甲5~7に例示された周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 上記ア及びイのとおりであるから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開昭60-218505号公報
甲第2号証:武石裕行,外2名,“アンモニアを燃料とした層流予混合火炎の基礎燃焼特性”,日本燃焼学会誌,日本燃焼学会,2016年,第58巻185号,p.160-166
甲第3号証:小林秀昭,早川晃弘,“カーボンフリーアンモニア燃焼”,日本燃焼学会誌,日本燃焼学会,2016年,第58巻183号,p.41-48
甲第4号証:実願昭52-151682号(実開昭53-79782号)のマイクロフイルム
甲第5号証:米国特許第6,951,454号明細書
甲第6号証:特開平6-147437号公報
甲第7号証:特開2005-283029号公報
甲第8号証:徳田君代,外5名,“火力発電所での窒素酸化物(NOx)低減技術開発の歴史(4)”,火力原子力発電,火力原子力発電技術協会,2013年3月,第64巻第3号,p.210-223
(2)申立理由3(明確性)
申立人は、特許異議申立書の43頁7行~45頁末行及び46頁21行~末行において、明確性について、概ね次の主張をする。
本件特許の請求項1~3は、「酸素濃度低下領域」がどの領域を指すのか不明確であるから、「ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されている」とは言えないから、特許法36条6項2号の規定を満たさない。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)申立理由1(進歩性)について
ア 甲1~甲8について
(ア)甲1について
a 甲1の記載事項及び図示事項
甲1には、以下の記載事項及び図示事項がある。
・「〔発明の利用分野〕
本発明は重油、微粉炭と重油を混合した混炭燃料(Coal Oil Mixture 略してCOMという)、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料(Coal Water Mixture略してCWMという)などの液体燃料を専焼、混焼させる燃焼装置に係り、特に排ガス中の窒素酸化物(以下NOxという)を低減する燃焼装置に関するものである。
〔発明の背景〕
液体燃料の燃焼時に発生するNOxは、サーマル(Thermal)NOxとフューエル(Fuel)NOxとに大別されるが、サーマルNOxは燃焼用空気中の窒素が酸化されて発生するものであり、火炎温度の依存性が大きく、高温になる程サーマルNOxの発生量は増加する。一方フューエルNOxは燃料中の窒素分が酸化されて発生するものであり、火炎内の酸素濃度の依存性が大きく、酸素が過剰に存在する程燃料中のN分はフューエルNOxになりやすい。
これらのNOx発生を抑制するための燃焼方法としては、燃焼用空気を多段に分割して注入する多段燃焼法、低酸素濃度の燃焼排ガスを燃焼領域に混入する排ガス再循環法等があるが、これらの低NOx燃焼法はいずれも低酸素燃焼によって燃焼火炎の温度を下げることによりサーマルNOxの発生を抑制することにある。」(1頁左下欄16行~同頁右下欄14行)
・「第1図および第2図は従来の液体燃料を専焼、混焼する燃焼装置を示すもので、第1図は従来の燃焼装置の縦断面図、第2図は第1図のA部を拡大したバーナノズルの詳細図である。
第1図および第2図において、1は炉壁、2は火炉、3は炉壁1に穿設されたバーナスロート、4はバーナスロート3内に配置されたバーナ、5はウィンドボックスである。
そして、このウィンドボックス5内とバーナスロート3内は仕切板6、内側スリーブ7によって一次空気通路8と二次空気通路9に区画され、仕切板10と外側スリーブ11によって二次空気通路9と三次空気通路12に区画されている。
この様な構造において、一次空気Bは内側スリーブ7に設けられた一次空気取入口13より一次空気通路8へ供給され、一次ダンパ14によって一次空気量が調整されて内側スリーブ7の先端の一次空気口15より火炉2内へ供給される。
二次空気Cは二次レジスタ16より二次空気通路9へ供給され、二次ベーン17によって旋回力が与えられた後、二次空気口18から火炉2内へ供給される。
三次空気Dは三次レジスタ19により三次空気通路12へ供給され、三次ベーン20によって旋回流となり、三次空気口21より火炉2内へ供給される。
一方、バーナ4は第2図に示す如く、燃料通路22および蒸気通路23が設けられており、その先端にはノズルチップ24がキャップ25によって固定されている。このノズルチップ24はキャップ25に設けたネジ部26により固定され、その内側には燃料溝27から噴射孔28へ燃料通路22の燃料が供給されるようになっている。
ところが、この様な従来の燃焼装置においては蒸気通路23の蒸気によって燃料通路22の燃料を噴霧する二流体噴霧にはYジェット型ノズルチップ24が用いられており、このYジェット型のノズルチップ24の燃料の噴射方向29は角θ方向に均一であり、低NOx化の効果は高々5~10%程度で大幅な低NOx化はできない。
それは燃料噴射孔28からの噴射方向29がある範囲内に限定されているために燃焼ゾーンへ燃焼用の一次空気B、二次次空気C、三次空気Dが過剰に供給されるために、燃料中の窒素分の酸化(フューエルNOx)、高温による空気中のN2酸化(サーマルNOx)が充分に進行することに起因しているからである。
そして、このフューエルNOxに対しては理論空気量以下の燃焼用空気で第一次燃焼域を形成させ、この領域の後流に不足分の燃焼用空気を供給して第二次燃焼域を形成させる、いわゆる二段燃焼法によりて低減が計られていた。
一方、サーマルNOxに対しては燃焼により生じた排ガスを循環させ、再びバーナ部へ供給する、いわゆる排ガス再循環法によって低減が計られていた。
ところが、フューエルNOxを防止するために二段燃焼法を採用すると、ボイラなどの火炉が大きくなり、また不足分の燃焼用空気を供給するアフターエアポートを設けるために燃焼ゾーンの構造が複雑になる欠点がある。
また、サーマルNOxを防止するために排ガス再循環法を採用すると、燃焼ガス温度が低下し、それだけボイラなどの火炉が大きくなる欠点がある。
〔発明の目的〕
本発明はかかる従来の欠点を解消しようとするもので、その目的とするところは自己脱硝燃焼によってフューエルNOx、サーマルNOxともに低減でき、しかも火炉全体が小型化できる燃焼装置を得ようとするものである。」(2頁左上欄11行~同頁右下欄19行)
・「第3図から第6図は本発明の実施例に係る燃焼装置を示したもので、第3図は燃焼装置の縦断面図、第4図は第3図のE部を拡大したノズルの側面図、第5図は第4図のV-V線断面図、第6図は燃焼用空気の流動状態を示した説明図である。
なお、第3図から第6図において、符号1から27は従来のものと同一である。
30、31、32はノズルチップ24に設けた噴射角度の異なる外側噴射孔、中間噴射孔および内側噴射孔、33、34、35は外側、中間および内側噴射孔30、31、32からの噴射方向、36は内側スリーブ7の先端に設けた末拡りのフレームホルダ、37は外側スリーブ11の先端に設けた偏向リング、38は還元域、39は酸化域、40は保炎渦、41は火炎外縁、42は完全燃焼域、43は再循環流である。
この様な構造において、第1図および第2図に示す従来の燃焼装置と、第3図から第6図に示す本発明の燃焼装置の異なる点は、従来の燃焼装置においてはバーナ4のノズルチップ24に第2図に示す如く噴射孔28が噴射角θでほぼ一定で、しかもバーナ4の外周には内側スリーブ7と外側スリーブ11が配置されていたのに対し、本発明の燃焼装置においては、第5図に示す如くバーナ4のノズルチップ24には外側噴射孔30、中間噴射孔31および内側噴射孔32が穿設され、バーナ4の外周には第3図および第6図に示すように、内側スリーブ7の先端にはフレームホルダ36、外側スリーブ11の先端には偏向リング37が配置されている点である。
つまり、ノズルチップ24には第4図に示す如く外側噴射孔30が4個、中間噴射孔31が4個、内側噴射孔32が1個の場合を示したが、噴射孔の数は関係なく、第5図に示すように外側噴射孔30は噴射方向33へ、中間噴射孔31は噴射方向34へ、内側噴射孔32は噴射方向35へそれぞれその噴射角度が異るものである。
そして、これらの外側、中間、内側噴射孔30、31、32へは第5図に示す如く、燃料通路22、蒸気通路23が接続され、燃料溝27から各噴射孔30、31、32へ分配され第3図に示すように外側噴射孔30、中間噴射孔31、内側噴射孔32から火炉2内へ燃料と蒸気が噴霧される。
一方、バーナ4の外周には第3図および第6図に示す如く内側スリーブ7と外側スリーブ11の先端にはフレームホルダ36、偏向リング37が設けられている。
従って、バーナ4から噴霧される燃料は、外側噴射孔30、中間噴射孔31および内側噴射孔32からその噴射角度は噴射方向33、34、35の様に異なり、外側噴射孔30からの微細な粒子はフレームホルダ36の内側に生ずる保炎渦40(第6図)に巻き込まれ、フレームホルダ36上に火炎が形成され、火炎外縁41のように発達する。
この様に外側噴射孔30からの燃料は、二次空気口18より供給される二次空気Cにより燃焼が行なわれ、いわゆる酸化域39となる。
一方、中間噴射孔31および内側噴射孔32からの燃料はこの酸化域39により加熱されて蒸発するが、この領域は一次空気Bのみの供給となるために燃料過剰域となり中間生成物が生成される還元域38となる。
従って、この還元域38にはN分の酸化によるNOx、それを分解する中間生成物が存在し、酸化域39により高温に維持されるので、還元反応が速やかに進行し、その結果NOxを低減することになる。
他方、三次空気Dは偏向リング37と、三次レジスタ19、三次ベーン20による強旋回によって矢印Dで示す軌跡となり、NOxが消滅した後に供給されて完全燃焼域42で燃焼する。
すなわち、第6図に一次、二次、三次空気(B、C、D)の流れを示す如くフレームキャップ36、偏向リング37によって二次空気C、三次空気Dは外向きに供給されるので、バーナ4の外周噴射孔30からの燃料の一部はフレームキャップ36の内側において形成される保炎渦40によって外側に拡散することが抑制され、ここで着火すると同時にバーナ4の近傍(先端)に高温還元域38(第3図)を形成する。この高温還元域38のNH2、CN等のラジカルおよびCO等の還元性中間生成物によってNOxがN2に気相還元される。つまり、フレームキャップ36によって燃料の拡散を防止することによって、高温還元域38を従来の燃焼装置よりもバーナ4の先端に近づけることができ、従来の内側スリーブ7、外側スリーブ11のみによって二次空気C、三次空気Dを噴射してもこれら空気の混合点よりもバーナ4寄りに高温還元域38が形成されるので、良好な気相還元を行なうことが可能になるのである。」(3頁左上欄9行~4頁左上欄16行)
・「この様に本発明の実施例における燃焼装置においては、フレームホルダ36の近傍に保炎渦40により安定した火炎を形成すると共に、還元域38を形成することができるので、NOxの分解効率が高くなりNOxを低減することができる。
また、単一のバーナ4で自己脱硝燃焼ができるので、火炉を小型にすることができ、特にバーナ4の着火後に直ちに低NOx燃焼となるので、ボイラなどの起動時、あるいは負荷変化時のNOxを大幅に減少させることができる。
〔発明の効果〕
本発明はバーナの先端に噴射角度の異なる噴射孔を設けるとともに、内側スリーブと外側スリーブの先端に末拡りのフレームホルダと偏向リングを設け、バーナの先端に燃料過剰の還元域と空気過剰の酸化域を形成したので、自己脱硝燃焼によってフューエルNOx、サーマルNOxを低減することができ、しかも火炉を小型化することができる。」(4頁右上欄19行~同頁左下欄16行)
・「
[図:0001407796000005.jpg]
[図:0001407796000006.jpg]
[図:0001407796000007.jpg]
[図:0001407796000008.jpg]
」
b 甲1-1発明
上記aから、甲1には次の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「火炉2の炉壁1のバーナスロート3に設置されると共に微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料を燃焼可能な燃焼装置であって、
火炉2の内部に前記液体燃料を噴射するバーナ4を備えており、
前記ノズル4から前記液体燃料が噴射され、さらに一次空気B、二次空気C及び三次空気Dが、前記バーナスロート3とバーナ4との間に設けられた内側スリーブ7及び外側スリーブ11で区画された一次空気通路8、二次空気通路9及び三次空気通路12から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され、
前記バーナ4のノズルチップ24には、外側噴射孔30、中間噴射孔31及び内側噴射孔32が穿設され、前記外側噴射孔30は噴射方向33へ、前記中間噴射孔31は噴射方向34へ、前記内側噴射孔32は噴射方向35へそれぞれその噴射角度が異るものであり、
前記バーナ4の外周には、内側スリーブ7の先端にフレームホルダ36、外側スリーブ11の先端に偏向リング37を設け、
前記バーナ4は、前記液体燃料の流れ方向下流側から見て前記燃焼装置の中心部に配置されるとともに、酸化域39の径方向内側に形成される還元域38に向けて前記噴射方向34及び前記噴射方向35へ前記液体燃料を噴射し、
前記バーナ4は、前記バーナ4の軸芯を中心とする径方向の外側に向かって広がるように前記液体燃料を前記噴射方向33及び前記噴射方向34へと噴射し、
前記バーナ4の先端を構成する前記ノズルチップ24は、前記バーナ4の前記軸芯上に位置する1個の前記内側噴射孔32と、
前記バーナ4の前記軸芯を囲んで配置される4個の前記中間噴射孔31及び4個の前記外側噴射孔30とを有し、
各々の前記中間噴射孔31は、前記バーナ4の前記軸芯に対して傾斜した前記噴射方向34に前記液体燃料を噴射する燃焼装置。」
c 甲1-2発明
上記aから、甲1には次の発明(以下「甲1-2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料を燃焼可能な燃焼装置と、前記燃焼装置がバーナスロート3に設置された火炉2と、を備えるボイラであって、
前記燃焼装置として、甲1-1発明に係る燃焼装置を備えるボイラ。」
(イ)甲2について
a 甲2の記載事項
甲2には、以下の記載事項がある。
・「1.緒言
代替燃料の1つとして,また水素キャリアとしてアンモニアが着目されている[1,2].アンモニアは,ハーバー・ボッシュ法が開発されたことこよって工業生産が可能となった炭素 含有しない水素化合物であり燃焼行程において二酸化炭素の排出を伴わない.COP21にて提示されたパリ協定[3]からも明らかなように,よリ一層の二酸化炭素排出低減が求められる現状において,アンモニアは有用な燃料となり得ると考えられている[4,5].
2010年の時点で,全世界で1年間に約1億6300万tのアンモニアがハーバー・ボッシュ法を用いて生産されており,製造コストは,水素1Nm3当たり,36円から40円と安価である.さらにアンモニアは,水素含有量が17.8mass%と高く,常温で8.5気圧程度の圧力で容易に液化することが可能であるため,水素キャリアとしての有効性が高い.また,既に輸送手段や大量に貯蔵する手段が確立されている[1]ことから,欧米をはじめとする諸外国を中心に,アンモニアを代替燃料とするための研究が行われてきた[6‐11],近年では,我が国においても,アンモニアをエネルギーキャリアとして利用するための研究が実施されている[12].このため,アンモニアの燃料利用に対する関心が高まっており,アンモニアの燃料利用に関する研究が報告されている[4,5,13-18].
アンモニアを燃焼用の燃料として使用する際には,(1)低い層流燃焼速度や,(2)高いFuel NOxの生成量など多くの課題を克服する必要があり,それぞれの課題に対する基礎的な燃焼特性に基づいた実用燃焼器での運用が望まれている。」(160頁左欄1行~同頁右欄9行)
・「アンモニアを燃料として使用する際には,層流燃焼速度が低いことに加えて,燃料由来のNOx(Fuel-NOx)が多量に生成される可能があるとが懸念される。Fuel- NOxに関する既往研究から,予混合気の温度や予混合気中の酸素濃度がFuel-NOxの濃度に影響を及ぼすことが知られている[23].」(162頁右欄12~17行)
b 甲2の技術事項
上記aから、甲2には、次の技術事項(以下「甲2の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「二酸化炭素の排出量を低減するために、炭素を含有しないアンモニアが代替燃料として着目されている一方、アンモニアを燃料として使用する場合、アンモニア燃料由来のフューエルNOxの課題を解決する必要があること。」
(ウ)甲3について
a 甲3の記載事項
甲3には、以下の記載事項がある。
・「3.エネルギーキャリアとしてのアンモニア直接利用
水素キャリア3候補のなかで,アンモニアは水素を分離する事なく直接燃焼可能カーボンフリー燃料でもあるため,SIPエネルギーキャリアプロジェクトにおいては,燃料電池(SOFC)チーム,直接燃焼チームが燃料として直接利用する技術開発を行っている[1].
アンモニア製造プロセスは,20世紀初頭に天然ガスと空気を原料とするハーバー・ボッシュ法が開発され,現在でもアンモニア製造の主流である.アンモニアは化学原料,肥料として広く利用され化学工業や食料生産性向上に大きく貢献してきた。燃料としての利用は,第二次世界大戦中の1940年代に乗合バスエンジンの混合燃料としてわずかに利用されたほか,1960年代に米国の極超音速有人試験機X15のロケット燃料として利用された.2000年代に入って低炭素社会築への関心の高まりから,水素キャリア,SOFCや直接燃焼の燃料としてその有用性が再認識されている.最近ではイタリアや韓国でアンモニアを混合したガソリンエンジン乗用車が試験的に走行しているが,エネルギー機器への本格的利用は未だなされていない.」(42頁左欄28行~同欄末行)
・「4.1.アンモニアの特性と技術課題
表1にアンモニアおよび代表的燃料の熱物性と燃焼特性を示す[1].アンモニアは常温において8.5気圧で液化する.プロパンとほとんど同等で貯蔵,輸送が容易であり,この点において既に100年の歴史がある.我が国でも化学原料として広く利用されており,さらに火力発電所では脱硝装置にアンモニアが使用されるため貯蔵,流通インフラが既に整っていることは,エネルギーキャリアとしての強みといえる。アンモニアの低発熱量は炭化水素燃料の概ね40%である.表には示していないが体積あたリエネルギー密度は液体水素よりも大きく,温度管理を含め貯蔵面でのメリットは大きい。一方,層流燃焼速度はメタンの概ね20%,断熱火炎温度はやや低く,着火温度は高い.可燃当量比範囲も狭いなど燃焼しにくい燃料であるといえ,燃焼技術開発における課題である.さらにアンモニア燃焼がフューエルNOxを生成することは容易に想像される.生成物質に輻射性ガスである二酸化炭素が含まれないため,ガス輻射伝熱量は炭化水素燃焼より弱く,工業炉における輻射伝熱強化策も課題として挙げられる.すなわち,アンモニア直接燃焼は, 低燃焼性および低輻射伝熱の克服,NOx排出低減が基盤技術開発の主要項目である.アンモニアを大規模に直接燃料として利用するのはチャレンジであるが,現代の燃焼学は,課題克服のための原理追求と技術開発の方法論を既に有している.」(42頁右欄2行~同欄25行)
b 甲3の技術事項
上記aから、甲3には、次の技術事項(以下「甲3の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「低炭素社会の実現のために、直接燃焼可能なカーボンフリー燃料としてのアンモニアがの有用性が再認識される一方、アンモニアを燃料として使用する場合、フューエルNOxの課題を解決する必要があること。」
(エ)甲4について
a 甲4の記載事項及び図示事項
甲4には、以下の記載事項及び図示事項がある。
・「この点を考慮して、煙道ガスと共に大気中へ放出される窒素酸化物をできるだけ少なくするように、アンモニヤを燃焼させることも提案されている。放出されるアンモニヤガスを炉において燃焼させることも公知である(米国特許第3000693号明細書)。これらの炉は始めに特定の温度に予熱されて、必要な燃焼用空気によるアンモニヤの燃焼を維持するようにせねばならない。しかしながらこれらの条件においても、アンモニヤガス中の水蒸気およびその他の不活性ガス成分の割合が多いと、油またはガスの形の燃料を付加的に加えねばならない。最後に、燃焼炉の構造および設計に関係する良好な結果を得ようとすれば、種々の条件において維持すべき特定の温度と熱量が規定される。そのとき最も有利な場合において、廃ガス中に含まれている窒素酸化物が50ないし100ppmであるようにする。アンモニヤの燃焼熱を完全に利用することは考えられていない。」(明細書2頁15行~ 4頁3行)
・「しかしながらアンモニヤガスを燃焼する際に生ずる熱を経済的に利用することは知られており、コークス工場およびガス工場のガスを処理する際に生ずるアンモニヤを燃焼する別の提案もある(ドイツ特許第1202772号明細書)。この方法によれば、反応装置において、アンモニヤガスは燃料の燃焼により加熱され、続いて高温ガス混合気が、耐熱性充填材あるいはニッケル触媒を満たされた任意の形の分解領域を通して導かれ、最後に第3の領域においてさらに空気を付加して完全に燃焼される。この提案された方法を実施するために必要な費用は非常に高価である。したがって3つの異なつた領域とガス、空気およびアンモニヤ用の別々の入口をもつ特別な反応装置が設けられる。最後に、燃焼熱を完全に利用するために、煙道ガスは、後に接続された廃熱ボイラに導かねばならない。」(明細書4頁4行~5頁5行)
・「本考案の目的は、上述の欠点のない燃焼装置を提供することにある。
この目的を達するため、本考案によれば、バーナが、アンモニヤガス、コークス炉ガスおよび燃焼用空気を同時に供給する3つの別々な通路をもち、これら通路のうちコークス炉ガスを導く通路が、環状流出口をもつノズルに終わつており、このノズルの中心に、アンモニヤガスを導く分配ランスの形の通路が開口しており、燃焼用空気を導く通路が分配ランスおよびノズルを包囲しており、バーナが、熱伝達媒体の通るコイル管を設けられた炉内空間内へ入り込んでいる。」(明細書5頁6行~6頁2行)
・「こうしてバーナは通常の圧力すなわち大気圧のガス圧でしかも低温の自立炎で動作し、コークス炉ガスおよび空気はアンモニヤガスと混合されず、別々に火炎へ供給され、換言すれば、アンモニヤは中空な錐状炎の空所へ給され、空気はその外周の範囲へ供給されるようにすることができる。その大きい利点は、空所をもつ錐状炎が形成され、この火炎を包囲する外側範囲から直接熱が取り出されることである。すなわち一方の反応領域は、錐状炎を包囲する外側範囲にあり、この範囲では酸素が直接燃焼ガス流に当つて、必要な温度を生じる。第2の反応領域は、錐状炎の内部にあり、ここでは酸素が少なく、したがつてここには還元性雰囲気が生じる。これら両領域の温度はアンモニヤの燃焼に合わされて、窒素原子がこの反応領域の後で充分冷却された寡囲気に当り、この雰囲気ではもはや酸素原子とあまり化合することはできないようにする。
それにより燃焼炉が著しく簡単になり、窒素酸化物の生成が著しく低減され、後燃えおよび爆発のおそれがなくなる。」(明細書6頁3行~ 7頁9行)
・「管状炉1の中では、バーナ2により導管3を通して導かれるアンモニヤガス4が燃焼される。この目的で、アンモニヤガスは、通路としての分配ランス5を通つて、環状の中空な錐状炎7の領域6へ流れ込む。導管10を通りかつ通路11を経てノズル9の環状流出口8から出るコークス炉ガス12と、導管14からノズル9の少なくとも流出口8を含む通路15を経て外方から錐状炎7へ導かれる焼用空気13とによりこの錐状炎7が形成される。高温の燃焼ガス16は、コイル管17の所で冷去され、その際このコイル管17中を流れる油18を加熱する。
炎7の縁の範囲における酸素過剰の領域が錐状炎7の中心軸線へ向かつて酸素不足の領域へ移行するように燃焼用空気13を供給される錐状炎7の形成により、この酸素不足の領域へ導入されたアンモニヤガス4は、還元性雰囲気中で比較的低温で燃焼するので、燃焼の際生ずる窒素酸化物の量は僅少に維持される。」(7頁11行~8頁14行)
・「
[図:0001407796000009.jpg]
」
ここで、図面によると、分配ランス5は、ノズル9の環状流出口8の径方向内側の中心に設けられているから、コークス炉ガス12の噴射方向から見て中心部に配置されていると認められる。
b 甲4-1発明
上記aから、甲4には次の発明(以下「甲4-1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「管状炉1に設置されると共にアンモニヤガス4を燃料として燃焼可能なバーナ2であって、
分配ランス5と、
前記分配ランス5を囲むように、管状炉1の内部にアンモニアガス4と共に燃焼させるコークス炉ガス12を噴射するノズル9とを備えており、
前記分配ランス5からアンモニアガス4が噴射され、前記ノズル9から前記コークス炉ガス12が噴射され、さらに燃焼用空気13が前記分配ランス5及び前記ノズル9を包囲する前記燃焼用空気13を導く通路15から供給されることによって、前方に対して錐状炎7が形成され、
前記分配ランス5は、前記コークス炉ガス12の噴射方向から見て中心部に配置されると共に中空な錐状炎7の空所へ前記アンモニアガス4を給し、前記錐状炎7の酸素不足の領域に前記アンモニアガス4が導入される、バーナ2。」
c 甲4-2発明
上記aから、甲4には次の発明(以下「甲4-2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「アンモニアガス4を燃料として燃焼可能なバーナ2と、
前記バーナ2が取り付けられた管状炉1とを備える燃焼装置であって、
前記バーナ2として、甲4-1発明に係るバーナ2を備える燃焼装置。」
(オ)甲5について
a 甲5の記載事項
甲1には、以下の記載事項がある。(尚、翻訳文は、申立人が提出した翻訳文を採用した。)
・「Referring now to the drawings, in which like reference numerals are used to refer to the same or similar elements, FIG. 2 shows part of a boundary wall 12 of a furnace and a burner 10 having a gaseous fuel supply pipe 50 formed with an inlet end 14 and an outlet end 16, and a gas injector element 100 attached to the outlet end 16 and extending into the furnace wall burner opening or port 40 as defined by the burner throat 30. A first sleeve member 62 is concentrically spaced about the supply pipe 50 and the injector 100 to form an inner annular passageway 57 for conveying a mixture of air and pulverized coal to the combustion zone 20. A second sleeve member 63 is concentrically spaced about the first sleeve member 62 to form an outer annular passageway 67 for conveying secondary air 59 to the combustion zone 20. The secondary air stream 59 for combustion flows into the outer annular passageway 67 which is provided with swirl vanes 72 for distribution and mixing of air with combustion gases in the flame as it exits the burner opening 40. A gaseous fuel 55, such as natural gas, is provided through the supply pipe 50. In a variation of the invention, primary air and pulverized coal may also be injected via inner annular passageway 57 into the burner 10, either separately, or with a gaseous fuel supplied simultaneously via pipe 50 and injected into the combustion zone 20 by the injector element 100.」(第4欄11行~35行)
(翻訳文)
「ここで、同一又は類似の要素を指すために同様の符号が用いられている図面を参照し、図2は、炉の境界壁12の一部と、入口端14と出口端16とが形成された気体状の燃料供給管50と、出口端16に取り付けられ、バーナスロート30によって画定される炉壁バーナ開口部又はポート40中に延びるガス噴射要素100とを有するバーナ10とを示している。第1スリーブ部材62は、供給管50とインジェクタ100とを中心として同心円状に離問して、空気と微粉炭の混合物を燃焼ゾーン20に搬送するための内部環状通路57を形成している。第2スリーブ部材63は、第1スリーブ部材62を中心として同心円状に離間して、二次空気59を燃焼ゾーン20に搬送するための外側環状通路67を形成する。燃焼用の二次空気流59は、バーナ開口部40を出る際に火炎中の空気と燃焼ガスとを分配・混合するための旋回羽根72が設けられた外環状流路67に流入する。天然ガスなどの気体料55が、供給管50を介して供給される。本発明の変形例において、一次空気および微粉炭は、内側環状通路57を介して気体燃料とは別々にバーナ10内に噴射することもでき、あるいは、配管50を介して同時に供給される気体燃料とともにインジェクタ要素100によって燃焼ゾーン20に噴射される。」(甲5翻訳文の4頁24行~5頁1行)
・「The gas injector element 100, as shown in section in FIG. 3, can be secured to the end of the supply pipe 50 via a threaded or welded connector 150. Inner walls 160 define a chamber 165 having several injector openings 110, 120 in the end wall 170. The center opening 110 may increase in diameter from the inner wall 160 to the exterior of the gas injector element 100. As shown in FIG. 3, peripheral injector openings 120 are most preferably oriented with their longitudinal opening axes 122 at a distinct first acute angle α in comparison to the longitudinal chamber axis 112. Ideally, α is between 10°to 45°relative to the longitudinal chamber axis 112, and most preferably set at about 40°, although greater and smaller angles are possible. This radial orientation of the peripheral openings 120 provides a diverging flow of gaseous fuel 55 as it leaves the gas injector element 100. Notably, the arrangement depicted in FIG. 3 can illustrate features common to both the prior art and the present invention. When the gas injector element 100 is secured to the supply pipe 50, gaseous fuel 55 passes into chamber 165 and exits through the peripheral openings 120 and center opening 110 into the furnace for combustion.」(第4欄47行~同欄67行)
(翻訳文)
「ガスインジェクタ要素100は、図3の断面に示すように、ねじ付き又は溶接コネクタ150を介して供給管50の端部に固定することができる。内壁160は、端壁170内にいくつかの噴射口110、120を有するチャンバ165を画定する。中心開口110は、内壁160からガスインジェクタ要素100の外側に向かって拡径してもよい。図3に示すように、周辺インジェクタ開口120は、最も好ましくは、それらの長手方向の開口軸122とともに、長手方向のチャンバ軸112と比較して別個の第1鋭角αで配向される。理想的には、αは、より大きな角度およびより小さい角度を採り得るが、長手方向のチャンバ軸 112に対して10°~45°の間であり、最も好ましくは約40°に設定される。この周辺開口120の半径方向の向きは、ガスインジェクタ要素100を出るときに気体燃料5の分岐流を提供する。注目すべきことに、図3に粘かれた配置は 、従来技術および本発明 の両方に共通する特徴を例示することができる。ガスインジェクタ要素100が供給管50に固定されると、気体燃料55はチャンバ165に入り、周辺開口120及び中心開口110を通って燃焼炉へと出る。」(甲5翻訳文の5頁9行~同頁21行)
・「What sets apart the present invention from the prior art is the pitched angle or tilt of the peripheral openings 120 that results in a swirling gaseous fuel flow pattern with superior performance characteristics. FIGS. 4A and 5A show the prior art arrangement wherein the orientation of the axes 122 of the peripheral openings 120 clearly creates a diverging pattern, but without imparting swirl to the gas exiting openings 110, 120.」(第5欄1行~同欄8行)
(翻訳文)
「本発明を従来技術と区別するのは、優れた性能特性を有する旋回気体燃料流パターンをもたらす周辺開口120のピッチ角または傾斜である。図4A及び図5Aは、周辺開口120の軸122の向きが、明らかに分岐パターンを作成するが開口110、120を出るガスに旋回を付与しない従来技術の配置を示している。」(甲5翻訳文の5頁22~同頁25行)
・「
[図:0001407796000010.jpg]
[図:0001407796000011.jpg]
」
b 甲5の技術事項
上記aから、甲5には、次の技術事項(以下「甲5の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「燃料供給管50とガスインジェクタ要素100とを有するバーナ10であって、
前記ガスインジェクタ要素100が、チャンバ165に開口する中心開口110及び周辺開口120を有し、
チャンバ軸112上に位置する前記中心開口110は前記チャンバ軸112に沿って穿孔され、
前記周辺開口120は前記チャンバ軸112に対して第1鋭角αで斜めに穿孔され、
前記ガスインジェクタ要素100が供給管50に固定されると、天然ガスなどの気体燃料55が前記チャンバ165に入り、前記周辺開口120及び前記中心開口110を通って燃焼炉へと出るようにされた、ガスインジェクタ要素100。」
(カ)甲6について
a 甲6の記載事項及び図示事項
・「【0004】次に、図5のバーナ40は、燃料ノズル41を二重構造として内側に第1燃料ノズル部42、外側に第2燃料ノズル部43を形成し、第2燃料ノズル部43の噴射孔44を斜め外方に方向づけ、これらのノズル42,43に供給する燃料供給量が配分弁45によって調整できるようにしてある。また、空気ノズル46は燃料ノズル41を囲っており、内側の第1空気ノズル部47と該第1空気ノズル部47の外側に位置する第2空気ノズル部48が形成されている。
【0005】このバーナ40では、燃料供給路49に供給された燃料ガス50は、配分弁45の開度に応じて第1燃料ノズル部42と第2燃料ノズル部43に分配され、第1燃料ノズル部42より噴射された燃料ガス501は軸方向に真っすぐ噴射され、第2燃料ノズル部43より噴射された燃料ガス502は斜め外方に向かって噴射される。一方、空気ノズル46に供給された空気51は、第1空気ノズル部47と第2空気ノズル部48より噴射される。そして、第2燃料ノズル部43より噴射された燃料ガス502は第1,2空気ノズル部47,48より噴射された空気51とバーナ40の近くで混合拡散燃焼され、第1燃料ノズル部42より噴射された燃料ガス501は火炎の先端側で燃焼される。したがって、第1燃料ノズル部42より噴射される燃料ガス501を多くすれば小口径の長炎となり、第2燃料ノズル部43のより噴射される燃料ガス502を多くすれば大口径の短炎となる。」
・「
[図:0001407796000012.jpg]
」
・甲6の図5から、二重構造のバーナ40は、内側の第1燃料ノズル部42がバーナ40の中心軸上に位置することが看取される。
b 甲6の技術事項
上記aから、甲6には、次の技術事項(以下「甲6の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「内側の第1燃料ノズル部42、及び、外側の第2燃料ノズル部43が形成された二重構造のバーナ40であって、
前記第1燃料ノズル部42は、前記バーナ40の中心軸上に位置し、燃料ガス501を軸方向に真っすぐ噴射するとともに、
前記第2燃料ノズル部43は、燃料ガス502を斜め外方に向かって噴射するバーナ40。」
(キ)甲7について
a 甲7の記載事項及び図示事項
・「【0028】
図1及び図2に示すように、輝炎バーナBは、炉壁の一部を構成すると共に円形の前記バーナ設置用開口部1を形成するバーナタイル2、そのバーナタイル2に装着するバーナ本体M、バーナ本体Mに燃焼用空気Aを供給する送風機3、及び、その送風機3にてバーナ本体Mに供給される燃焼用空気Aを前記排気路37を通流する燃焼排ガスと熱交換して燃焼用空気Aを予熱する排熱回収熱交換器4等を備えて構成してある。
バーナ本体Mは、先端側にガス噴出部Nを備えた円筒状のガス供給筒5、一次燃焼用空気Aを通流させる円筒状の内側燃焼筒6、及び、二次燃焼用空気Aを通流させる円筒状の外側燃焼筒7を、内側からガス供給筒5、内側燃焼筒6、外側燃焼筒7の順に並べて同心状に配設した状態で一体的に組み付けて構成してある。」
・「【0037】
前記ガス噴出部Nは、前記一次空気吐出口9から吐出される一次燃焼用空気Aの流動方向に沿わせてガス燃料Gを噴出する直進状ガス噴出部としての1個の直進用ガス噴出孔15と、その直進用ガス噴出孔15よりも外周側に位置して、ガス燃料Gを放射状に噴出する放射状ガス噴出部としての複数個(この実施形態では8個)の放射用ガス噴出孔16とを備えて構成してある。
【0038】
前記直進用ガス噴出孔15は、前記ガス供給筒5の先端を閉塞する先端壁の中心に、孔軸心をガス供給筒軸心方向に沿わせた状態で穿設して設け、前記8個の放射用ガス噴出孔16は、孔軸心がガス供給筒5の径方向に対してガス供給筒先端側に傾斜する前方傾斜状にて、前記ガス供給筒5の先細り部5tの周壁に周方向に等間隔で分散させて穿設して設けてある。
【0039】
つまり、前記直進用ガス噴出孔15により、ガス燃料Gが、環状の一次空気吐出口9から吐出される一次燃焼用空気Aの流動方向に沿わせて直進状に噴出され、8個の放射用ガス噴出孔16により、ガス燃料Gが、直進用ガス噴出孔15の外側から一次燃焼用空気Aの流動方向向きに先拡がり状の放射状に噴出されることになる。」
b 甲7の技術事項
上記aから、甲7には、次の技術事項(以下「甲7の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「先端側にガス噴出部Nを備えた円筒状のガス供給筒5が組み付けて構成してある輝炎バーナBのバーナ本体Mであって、
前記円筒状のガス供給筒5のガス噴出部Nは、
孔軸心がガス供給筒軸心方向に沿うように穿設され、ガス燃料Gを直進状に噴出する1個の直進用ガス噴出孔15と、
前記直進用ガス噴出孔15よりも外周側に位置するように、孔軸心がガス供給筒5の径方向に対してガス供給筒先端側に傾斜する前方傾斜状に穿設され、燃料ガスGを先拡がり状の放射状に噴出する8個の放射用ガス噴出孔16と、を有する
輝炎バーナBのバーナ本体M。」
(ク)甲8について
a 甲8の記載事項
甲8には、以下の記載事項がある。
・「5.3 運転条件によるNOx低減
燃焼場でのNOx低減技術には,二段燃焼法,排ガス混合法,低NOxバーナ,炉内脱硝法などがある。ここではまず,NOx低減対策の初期に採用された二段燃焼法,排ガス混合法の適用例を説明する。
5.3.1 二段燃焼法
図77(53)に示すように,第一段目の燃焼はバーナ部から火炉に投入する空気量を通常より少なめ(空気比が1以下)にして,バーナ部での燃焼をやや不完全とする。第二段目の燃焼では,バーナ上部あるいは周辺に設けられた補助空気孔から不足分の空気を吹き込んで,完全燃焼させる。第一段目の燃焼ではバーナ部の空気量が少ないため火炎が長くなり,また第二段目の燃焼では残った未燃分の緩慢燃焼となる。この二段燃焼法により火炎の最高温度が低くなることと第一段目の燃焼場が空気不足の還元性雰囲気となることで,thermal NOxと fuel NOx共に低減される。
二段燃焼法で上部から投入される燃焼用空気をオーバファイアエア(OFA:Over Fire Air)と呼び,二段燃焼法と同義の名称で使用される(53)。
5.3.2 排ガス混合法
図78(53)に示すように燃焼用空気に再循環排ガスを混合して酸素濃度を下げることで,燃焼場の酸素濃度が低下すると共に火炎の最高温度も低下し,窒素酸化物の発生を抑制するものである。この方法は,従来の蒸気温度制御のための再循環排ガスを燃焼用空気に混合するところに特長がある。燃焼速度は,燃焼用空気中の酸素濃度が低下して遅くなる効果と,バーナからの噴出流速の増大によって早くなる効果の,相殺によって決まる。排ガス混合法はfuel NOxの低減よりもthermal NOxの低減に効果的である。
排ガス混合法では燃焼用空気に混合される排ガスは再循環排ガス(GR:Flue Gas Recirculation)と呼ばれ,これが燃焼用空気に混合されると再循環排ガス混合(GM:Flue Gas Mixing)と呼ばれる(53)。
5.3.3 二段燃焼法および排ガス混合法の実施例
三菱重工業においては,NOx低減対策は図79に示すような次の順序で強化されてきた。
ステップ1:コーナファイアリングの採用
ステップ2:コーナファイアリング+オーバファイアエア(OFA)の採用
ステップ3:コーナファイアリング+OFA+再循環排ガス混合(GM)の採用
ステップ4:コーナファイアリング+OFA+GMの採用
このうちステップ2は二段燃焼法,ステップ3,4は二段燃焼法+排ガス混合法の技術である。なお,ステップ3と4の違いは後述する。」(212頁右欄下から5行~214頁左欄2行)
・「(2)オーバファイアエア(OFA)
NOx対策以前は,燃料ノズル(ガス,油,石炭など)から投入される燃料を燃焼させるのに必要な燃焼用空気が,その燃料ノズルの近傍の空気ノズルから投入されることが普通であった。これに対して,二段燃焼法では前述したように,燃料ノズル近くの燃焼用空気を減少させ,その分を燃焼ゾ―ン後流にオーバファイアエアとして投入することでNOx発生を抑制している。
コーナファイアリングの場合,最上段バーナ上部にオーバファイアエアノズルを設ける。
(3)再循環排ガス混合(GM)
前述の排ガス混合法で,燃焼排ガスの一部を再循環して燃焼用空気に混合し,燃焼ゾーンに再循環させる。これにより燃焼場の酸素濃度や最高火炎温度を低下させ,NOxの発生を抑制する一般によく知られている手法である。三菱重工業では蒸気温度制御用の再循環排ガス(GR)の一部を全燃焼用空気に混入する方法(ステップ3)と,再循環排ガス(GR)の全量を補助空気に混合する方法(ステップ4)を採用してきた。
図81にステップ3,図82にステップ4の概略系統を示す。
5.4 バーナによるNOx低減(低NOxバーナ)
低NOxバーナは,前述の二段燃焼法や排ガス再循環法を組み合わせて相乗効果を発揮できるように工夫されたものである。
5.4.1 ガス焚きバーナ
三菱重工業ではNOx低減という社会的要請に対して前述の低NOxバーナシステムのステップ1~4で対応する一方で,さらに一層のNOx低減を追求した。従来型バーナの拡散炎方式とは発想を異にした予混合炎方式に基づく低NOx PMバーナを開発し,従来にない低NOxレベルを実現した。」(214頁右欄5行~215頁左欄7行)
b 甲8の技術事項
上記aから、甲8には、次の技術事項(以下「甲8の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「第一段目の燃焼場を空気不足の還元性雰囲気とし、第二段目の燃焼場で不足分の空気を投入して完全燃焼させる二段燃焼法は、fuel NOxの低減に有効であり、低NOxバーナと二段燃焼法とを併用することでさらなるNOx低減が可能であること。」
イ 本件発明1について
(ア)甲1-1発明を主とした場合
a 対比
本件発明1と甲1-1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(a)後者の「火炉2」は、前者の「火炉」に相当し、同様に、後者の「火炉2の炉壁1のバーナスロート3に設置される」態様は、前者の「火炉に設置される」に態様に、後者の「燃焼装置」は前者の「燃焼装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料」と、前者の「アンモニア」とは、「所定の燃料」という限りにおいて一致する。
そして、後者の「火炉2の炉壁1のバーナスロート3に設置されると共に微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料を燃焼可能な燃焼装置」と、前者の「火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置」とは、「火炉に設置されると共に所定の燃料を燃料として燃焼可能な燃焼装置」という限りにおいて一致する。
(b)後者の「前記液体燃料」である「微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料」は、前者の「炭素燃料」に相当し、後者の「バーナ4」は、炭素燃料である液体燃料を噴射するものといえるから、前者の「炭素燃料噴射ノズル」に相当する。
そして、後者の「前記液体燃料を噴射するバーナ4を備えており」との態様と、前者の「前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており」との態様とは、「火炉の内部に炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルを備えており」という限りにおいて一致する。
(c)後者の「一次空気B、二次空気C及び三次空気D」は、前者の「燃焼用の空気」に相当し、同様に、「火炎」は「火炎」に相当する。
また、後者の「前記バーナスロート3とバーナ4との間に設けられた内側スリーブ7及び外側スリーブ11で区画された一次空気通路8、二次空気通路9及び三次空気通路12」と、前者の「前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間」とは、「所定の箇所」という限りにおいて一致する。
そして、後者の「前記ノズル4から前記液体燃料が噴射され、さらに一次空気B、二次空気C及び三次空気Dが、前記バーナスロート3とバーナ4との間に設けられた内側スリーブ7及び外側スリーブ11で区画された一次空気通路8、二次空気通路9及び三次空気通路12から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」る態様と、前者の「前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」る態様とは、「前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が所定の箇所から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」るという限りにおいて一致する。
以上のことから、本件発明1と甲1-1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「火炉に設置されると共に所定の燃料を燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、
火炉の内部に炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルを備えており、
前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が所定の箇所から供給されることによって、前方に対して火炎が形成される、
燃焼装置。」
[相違点1]
「所定の燃料を燃料として燃焼可能」であることに関し、
本件発明1では、
「アンモニアを燃料として燃焼可能」であり、「アンモニア噴射ノズル」を備えているのに対して、
甲1-1発明では、
「微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料を燃焼可能」であり、アンモニア噴射ノズルを備えていない点。
[相違点2]
「火炉の内部に炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズル」に関し、
本件発明1では、
「前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズル」であるのに対して、
甲1-1発明では、
「火炉2の内部に前記液体燃料を噴射するバーナ4」であり、アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射するものではない点。
[相違点3]
「燃焼用の空気が所定の箇所から供給されることによって、前方に対して火炎が形成される」ことに関し、
本件発明1では、
「前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」るのに対して、
甲1-1発明では、
「前記ノズル4から前記液体燃料が噴射され、さらに一次空気B、二次空気C及び三次空気Dが、前記バーナスロート3とバーナ4との間に設けられた内側スリーブ7及び外側スリーブ11で区画された一次空気通路8、二次空気通路9及び三次空気通路12から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」る点。
[相違点4]
本件発明1では、
「前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、
前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、
各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する」のに対して、
甲1-1発明では、
「前記バーナ4のノズルチップ24には、外側噴射孔30、中間噴射孔31及び内側噴射孔32が穿設され、前記外側噴射孔30は噴射方向33へ、前記中間噴射孔31は噴射方向34へ、前記内側噴射孔32は噴射方向35へそれぞれその噴射角度が異るものであり、
前記バーナ4の外周には、内側スリーブ7の先端にフレームホルダ36、外側スリーブ11の先端に偏向リング37を設け、
前記バーナ4は、前記液体燃料の流れ方向下流側から見て前記燃焼装置の中心部に配置されるとともに、酸化域39の径方向内側に形成される還元域38に向けて前記噴射方向34及び前記噴射方向35へ前記液体燃料を噴射し、
前記バーナ4は、前記バーナ4の軸芯を中心とする径方向の外側に向かって広がるように前記液体燃料を前記噴射方向33及び前記噴射方向34へと噴射し、
前記バーナ4の先端を構成する前記ノズルチップ24は、前記バーナ4の前記軸芯上に位置する1個の前記内側噴射孔32と、
前記バーナ4の前記軸芯を囲んで配置される4個の前記中間噴射孔31及び4個の前記外側噴射孔30とを有し、
各々の前記中間噴射孔31は、前記バーナ4の前記軸芯に対して傾斜した前記噴射方向34に前記液体燃料を噴射する」ものであり、アンモニア噴射ノズルは備えておらず、そのようなアンモニア噴射ノズルの構成を有していない点。
b 判断
相違点1~相違点4について検討する。
上記ア(イ)bの甲2の技術事項及び上記ア(ウ)bの甲3の技術事項によれば、二酸化炭素の排出量を低減するために、炭素を含有しないアンモニアを代替燃料として使用すればよいことが認識されている一方、アンモニアを使用する場合に、フューエルNOxの課題を解決する必要があることが、本件特許の出願前に当業者が認識していたものと認められる。
そして、甲1-1発明は、上記相違点1~相違点4に係る甲1-1発明の発明特定事項を備えることにより、「微粉炭と重油を混合した混炭燃料、粗粉炭、微粉炭と水を混合した混炭燃料などの液体燃料を燃焼可能な燃焼装置」を前提として、「本発明はバーナの先端に噴射角度の異なる噴射孔を設けるとともに、内側スリーブと外側スリーブの先端に末拡りのフレームホルダと偏向リングを設け、バーナの先端に燃料過剰の還元域と空気過剰の酸化域を形成したので、自己脱硝燃焼によってフューエルNOx、サーマルNOxを低減することができ、しかも火炉を小型化することができる。」(4頁左下欄10行~同欄16行)との効果を奏するものであるから、甲1-1発明において、フューエルNOxの課題を有するアンモニアを燃料として使用する動機付けがあるとは認めることができない。
そうすると、甲1-1発明において、アンモニアを噴射する「アンモニア噴射ノズル」を発明特定事項として含む、上記相違点1~相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、甲2の技術事項及び甲3の技術事項には、炭素燃料と共にアンモニアを燃料として用いる際の具体的な構成までは示されておらず、甲1-1発明において、甲2の技術事項及び甲3の技術事項に基づき、燃料としてアンモニアを使用することを試みたとしても、「燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」、「前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、 前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、 各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する」ような構成(以下「構成A」という。)は得られず、上記相違点3及び相違点4に係る本件発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
なお、甲4~甲8を参酌しても、構成Aは示されておらず、上記相違点3及び相違点4に係る本件発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点1~相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、「本発明によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能となる。」という所期の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1-1発明、甲2の技術事項及び甲3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)甲4-1発明を主とした場合
a 対比
本件発明1と甲4-1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(a)後者の「管状炉1」は、前者の「火炉」に相当し、同様に、「アンモニヤガス4」は「アンモニア」に、「バーナ2」は「燃焼装置」に、「分配ランス5」は「アンモニア噴射ノズル」に、「コークス炉ガス12」は「炭素燃料」に、「ノズル9」は「炭素燃料噴射ノズル」に、「燃焼用空気13」は「燃焼用の空気」に、「錐状炎7」は「火炎」に、それぞれ相当する。
(b)後者の「管状炉1に設置されると共にアンモニヤガス4を燃料として燃焼可能なバーナ2」は、前者の「火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置」に相当する。
(c)後者の「分配ランス5と、前記分配ランス5を囲むように、管状炉1の内部にアンモニアガス4と共に燃焼させるコークス炉ガス12を噴射するノズル9とを備えて」いる態様は、前者の「アンモニア噴射ノズルと、前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えて」いる態様に相当する。
(d)後者の「燃焼用空気13が前記分配ランス5及び前記ノズル9を包囲する前記燃焼用空気13を導く通路15から供給されること」と、前者の「燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されること」とは、「燃焼用の空気が所定の箇所から供給されること」という限りにおいて一致する。
そして、後者の「前記分配ランス5からアンモニアガス4が噴射され、前記ノズル9から前記コークス炉ガス12が噴射され、さらに燃焼用空気13が前記分配ランス5及び前記ノズル9を包囲する前記燃焼用空気13を導く通路15から供給されることによって、前方に対して錐状炎7が形成され」る態様と、前者の「前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」る態様とは、「前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が所定の箇所から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され」るという限りにおいて一致する。
(e)後者の「中空な錐状炎7の空所へ前記アンモニアガス4を給し、前記錐状炎7の酸素不足の領域に前記アンモニアガス4が導入される」態様は、前者の「火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射」する態様に相当する。
そして、後者の「前記分配ランス5は、前記コークス炉ガス12の噴射方向から見て中心部に配置されると共に中空な錐状炎7の空所へ前記アンモニアガス4を給し、前記錐状炎7の酸素不足の領域に前記アンモニアガス4が導入される」態様は、前者の「前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射」する態様に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲4-1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「火炉に設置されると共にアンモニアを燃料として燃焼可能な燃焼装置であって、
アンモニア噴射ノズルと、
前記アンモニア噴射ノズルを囲むように、火炉の内部にアンモニアと共に燃焼させる炭素燃料を噴射する炭素燃料噴射ノズルとを備えており、
前記アンモニア噴射ノズルからアンモニアが噴射され、前記炭素燃料噴射ノズルから前記炭素燃料が噴射され、さらに燃焼用の空気が所定の箇所から供給されることによって、前方に対して火炎が形成され、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射する、
燃焼装置。」
[相違点5]
「燃焼用の空気が所定の箇所から供給されること」に関し、
本件発明1では、
「燃焼用の空気が前記アンモニア噴射ノズルと前記炭素燃料噴射ノズルとの間に設けられた隙間から供給される」のに対して、
甲4-1発明では、
「燃焼用空気13が前記分配ランス5及び前記ノズル9を包囲する前記燃焼用空気13を導く通路15から供給される」点。
[相違点6]
「アンモニア噴射ノズル」に関し、
本件発明1では、
「前記アンモニア噴射ノズルは、前記燃料の噴射方向から見て中心部に配置されると共に火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射し、
前記アンモニア噴射ノズルは、前記アンモニア噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記アンモニアを分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、
前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有し、
各々の第2の前記噴射開口は、前記軸芯に対して傾斜しかつ前記火炎形成空間に向かう方向に前記アンモニアを噴射する」のに対して、
甲4-1発明では、そのような構成を有しているか不明である点。
b 判断
相違点5及び相違点6について検討する。
上記ア(オ)bの甲5の技術事項、上記ア(カ)bの甲6の技術事項及びア(キ)bの甲7の技術事項は、燃料噴射ノズルが、前記燃料噴射ノズルの軸芯を中心とする径方向外側に前記燃料を分散して噴射する分散型噴射ノズルであり、前記分散型噴射ノズルは、先端部に形成されると共に前記軸芯に中心を重ねて配置された第1の噴射開口と、前記軸芯を囲んで配列される複数の第2の噴射開口を有することまでは周知の事項として示されているといえるとしても、燃料としてアンモニアを噴射することは示されておらず、上記相違点5及び相違点6に係る本件発明1の発明特定事項は示されていない。
そうすると、甲4-1発明において、甲5の技術事項、甲6の技術事項及び甲7の技術事項に例示された周知の事項を考慮したとしても、上記相違点5及び相違点6に係る本件発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点5及び相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、「本発明によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能となる。」という所期の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲4-1発明、並びに、甲5の技術事項、甲6の技術事項及び甲7の技術事項に例示された周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を置き換えることなく、全て含むのであるから、上記アの本件発明1についての検討を踏まえると、同様の理由により、甲1-1発明、甲2の技術事項及び甲3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲4-1発明、並びに、甲5の技術事項、甲6の技術事項及び甲7の技術事項に例示された周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明3について
上記ア(ク)bの甲8の技術事項は、本件発明3の「記火炉の内部が理論空気量よりも低い空気雰囲気に設定されていること」という発明特定事項に対応するものであり、上記構成Aを示すものではない。
そして、本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を置き換えることなく、全て含むのであるから、上記アの本件発明1についての検討を踏まえると、甲1-1発明、甲2の技術事項、甲3の技術事項及び甲8の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲4-1発明、甲8の技術事項、並びに、甲5の技術事項、甲6の技術事項及び甲7の技術事項に例示された周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ まとめ
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、上記1(1)の申立理由1(進歩性)によって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとして、取り消すことはできない。
(2)申立理由3(明確性)について
申立人は、特許異議申立書の43頁7行~45頁末行において、次の主張をする。
「本件発明1は、「・・・火炎形成空間において相対的に酸素濃度が低い酸素濃度低下領域に前記アンモニアを噴射する・・・」(構成要件B)ことを特定する。
ここで、本件明細書には、「このように火炎Fが形成されると、火炎Fの外縁領域R1(アンモニア噴射ノズル41の軸芯Lの径方向外側の領域)と、火炎Fの先端領域R2は、火炎Fが形成された他の領域に対して酸素濃度が低い酸素濃度低下領域となる。」(【0026】)の記載に従えば、「酸素濃度低下領域」は、『火炎Fが形成された領域(「火炎形成空間」)のうち、火炎Fが形成された他の領域(「火炎形成空間」の一部)と比べて相対的に酸素濃度が低い領域』を意味すると解される。
しかし、酸素濃度低下領域の定義の基準である「火炎Fが形成された他の領域」が、火炎Fのうち酸素濃度低下領域を除く領域全体を指すのか(解釈○1(当審注:○で囲まれた数字を別の表記で代替したものである。以下、同様。))、あるいは、火炎Fのうち酸素濃度低下領域を除く領域の任意の部分を指すのか(解釈○2)が不明である。
「火炎Fが形成された他の領域」が上記解釈○1又は解釈○2の何れであるかによって、下図Bのように、火炎Fが形成された領域の中で最も酸素濃度が低レベルである領域を「酸素濃度低下領域」と解すべきか、下図Cのように、火炎Fが形成された領域のうち酸素濃度が最高レベルである領域以外の任意の領域を「酸素濃度低下領域」と解すべきかが不明である。
なお、解釈○2の場合、火炎Fが形成された領域のうち、「酸素濃度低下領域」よりも酸素濃度が少しでも高い「火炎Fが形成された他の領域」が存在しさえすれば、「酸素濃度低下領域」の定義を満たすことになるが、下図Cのように、火炎Fにおける平均酸素濃度よりも高い「酸素濃度低下領域」も許容されることになり、本件発明の課題解決原理が破綻しかねない。
[図:0001407796000013.jpg]
[図:0001407796000014.jpg]
」
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0014】には、「本発明によれば、中心に配置されたアンモニア噴射ノズルによって、酸素濃度が低い酸素濃度低下領域にアンモニアが噴射される。酸素が豊富な領域でアンモニアが燃焼すると、アンモニアに含まれる窒素が酸素と結びついて窒素酸化物(NOx)が生成されやすい。一方で、酸素濃度低下領域にてアンモニアが燃焼されると、アンモニアに含まれる窒素同士が結びついて窒素ガス(N2 )となる。このため、本発明によれば、アンモニアを燃料として燃焼可能なボイラにおいて、窒素酸化物(NOx)の増加を抑制することが可能となる。」と記載されており、この記載によれば、酸素濃度低下領域は、アンモニアが燃焼されると、アンモニアに含まれる窒素同士が結びついて窒素ガス(N2 )となる領域であることが明確である。
そうすると、申立人の上記主張は、採用することができず、本件訂正後の請求項1~3の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。
したがって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、上記1(2)の申立理由3(明確性)によって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとして、取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700775