2021-700773
銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法、銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板
- 審判番号
- 2021-700773
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-543647外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6828856
- 請求日
- 2021年08月05日
- 審決日
- 2022年11月21日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.536-YAA(C22F) / P1651.537-YAA(C22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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特許第6828856号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2020年(令和 2年) 2月 4日(優先権主張 平成31年 2月 4日)を国際出願日とする出願であって、令和 3年 1月25日にその特許権の設定登録がなされ、同年 2月10日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、同年 8月 5日に、特許異議申立 松永 健太郎(以下、「申立人」という。)により本件特許の請求項1~7(全請求項)に係る特許に対して、特許異議の申立てがなされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
出
7月 8日 :特許権者による意見書の提出
なお、令和 4年 8月26日付け通知書に対して、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和 4年 1月19日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第6828856号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4~7について訂正することを求める、というものである。
2 訂正事項
本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。下線は訂正箇所示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
と記載されているのを
「前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0018】に
「前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
と記載されているのを
「前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記銅板は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
と記載されているのを
「前記銅板は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0022】に
「前記銅板は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
と記載されているのを
「前記銅板は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、」
に訂正する。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1に係る訂正について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正後の請求項4に係る銅部材の化学組成には、銅以外の残部である不可避不純物にSが含まれているため、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)において、Sが不可避不純物であるか否かについて検討する。
a 本件特許明細書には、従来技術である、「Sを0.0006~0.0015wt%含有することにより、再結晶温度以上で熱処理しても、一定の大きさの結晶粒に調整可能である」技術に沿って、「単にSの含有量を規定しても、十分な結晶粒粗大化抑制効果を得ることができない」ことがあり、また、「結晶粒の粗大化を抑制するために、Sの含有量を増加させた場合には、接合後に局所的に結晶粒が粗大化し、結晶組織が不均一となって粒径のばらつきが大きくなることがあった」ことが記載されている(段落【0007】、【0009】)。
b また、「本発明者らが鋭意検討した結果、純銅材に微量に含有された不純物元素には、結晶粒界に存在することで結晶粒の粗大化を抑制する結晶粒成長抑制効果を有するものが存在する。そこで、この結晶粒成長抑制効果を有する元素(以下、結晶粒成長抑制元素、と称する)を活用することで、加熱後においても結晶粒の粗大化や不均一化を抑制可能であるとの知見を得た。」とも記載されている(段落【0011】)。
c ここで、「純銅材に微量に含有された不純物元素」、すなわち、銅以外の元素について本件特許明細書の記載をみると、以下の記載がある。
(a)(Pの含有量:2massppm以下)
不可避不純物として含まれるPは、銅中の酸素を無害化する元素として広く用いられている(段落【0040】)。
(b)(Pb、Se及びTeの合計含有量:10massppm以下)
Pb、Se及びTeは、Cu中の固溶限が低く、粒界に偏析することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するが、局所的な粒成長を促進してしまう元素である。
このため、本実施形態においては、熱間加工性を確保するために、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるPb、Se及びTeの合計含有量を10massppm以下に制限している(段落【0041】)。
(c)(Sの含有量:2massppm以上20massppm以下)
Sは、結晶粒界移動を抑制することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するとともに、熱間加工性を低下させる元素である。
このため、本実施形態において、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるSの含有量を2massppm以上とした場合には、Sによる結晶粒粗大化抑制効果を十分に奏功せしめることができ、加熱後においても結晶粒の粗大化を確実に抑制することが可能となる。一方、Sの含有量を20massppm以下に制限することにより、局所的な結晶粒成長を制御することが可能となる(段落【0042】)。
(d)(Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量:10massppm以下)
不可避不純物として含まれるMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yは、結晶粒界に偏析して結晶粒の粗大化を抑制する結晶粒粗大化抑制元素(S、Se、Te等)と化合物を生成し、結晶粒粗大化抑制元素の作用を阻害するおそれがある(段落【0043】)。
d 上記(a)、(d)から、P並びにMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf及びYは、本件特許明細書において不可避不純物である。また、上記(b)には、Pb、Se及びTeが不可避不純物であると明記されていないが、局所的な粒成長を防止するために合計含有量を10massppm以下に制限していることからみて、Pb、Se及びTeも不可避不純物である。
e これらに対して、Sが不可避不純物である旨の記載は、上記(c)を含め、本件特許明細書にないことから、本件特許明細書において、Sは純銅材に微量に含有された不純物元素ではあるものの不可避不純物であるとは直ちにはいえない。また、「Sの含有量を2massppm以上とした場合には、Sによる結晶粒粗大化抑制効果を十分に奏功せしめることができ、加熱後においても結晶粒の粗大化を確実に抑制することが可能となる」(段落【0042】)との記載や、実施例において、Sが最大19.9massppm含まれている点からみても、Sが不可避不純物であるとは直ちにはいえない。
f 一方、特許権者が令和 4年 7月 8日に提出した意見書に添付された乙第1号証~乙第3号証には、以下の事項が記載されている。
(a)乙第1号証(青山正義、外3名、「銅線の軟化特性に及ぼす熱間圧延銅線製造方法と不純物の影響」、日本金属学会誌、1987年、第51巻、第9号、社団法人日本金属学会、p.858-863)
「I.緒言一般に金属材料の諸性能が,最終の熱処理工程だけでなく中間の加工および熱処理によって変化することはよく知られている.電線の素材である銅線についても製何時の鋳造条件および熱間圧延銅線の熱間加工条件によってその性能が異なる(1).そこで,熱間圧延銅線製造条件と伸線後の銅線の軟化挙動との関連性についていくつかの検討が行われている(2)(3).また,銅線の軟化特性に及ぼす微量元素の影響について古くから多くの研究がある(4)-(10).しかし,鋳造および熱間圧延等の製造履歴に基づく不純物と軟化挙動の関係については不明な点が多い.また,銅線の軟化特性は,連続焼なまし工程の高速化並びに銅線のコイル巻き性能の向上の観点から工業上重要な特性である.そこで本研究では,ベルト-ホイル式連続鋳造圧延材であるSCR材(Southwire Continuous Rod Process),OFC材(Oxigen Free Copper)および棹銅圧延によるTPC材(Tough Pitch Copper)の諸性質を比較し,製造履歴の異なる熱間圧延銅線の特性と冷間伸線後の軟化特性との関係を明らかにすることを目的とした.II.試料および実験方法1.試料供試材として不純物含有量および製造履歴の異なる5種類の熱間圧延銅線(以下WRと記す.)を用いた.Table 1にWRの不純物分析結果を示す.Pb,Sn,Sbのやや多い[図:0001395179000001.jpg]TPC3以外は,純度が高い.SCRは連続鋳造した約600mm2のキャストバーを約φ8mmに873-1073Kで連続的に熱間圧延,水冷したWRである.OFCはCOガス中で電気銅を溶解鋳造後圧延したいわゆる無酸素銅である.TPCは断面積約17000mm2の棹銅を約φ8mmに973-1173Kで熱間圧延したWRである.TPC1とTPC3は熱間圧延後水冷して得たWRであり,TPC2は熱間圧延後空冷して得たWRである.これ等のWRの直径は8.2±0.2mmとし,WRを冷間伸線したφ2.6mm銅線の加工度は90±0.4%にした.」(第858ページ左欄~第859ページ左欄)
(b)乙第2号証(西山進一、「最近の無酸素銅をべースとした希薄合金」、日本金属学会会報、1989年、第28巻、第2号、社団法人日本金属学会、p.137-145)
「2.無酸素銅の特長と改良(1)無酸素銅の特長無酸素銅の金属材料としての特長は,高純度の均一相であると言える(1).表1は,代表的な純銅種の組成と純度を示したものである.すなわち,工業的に使用されている銅種は,99.9%以上であり,アルミニウムや鉄鋼にくらべると極めて純度は高いと言える.とりわけ無酸素銅は,酸素と不純物がさらに少なく,99.995%以上が保たれている.従って,個々の不純物のもつ意味は極めて大きいと言える.図1は,PawlekおよびReichel(2)によるもので,電気抵抗におよぼす添加元素の影響について示している.図2は,堀ら(3)の研究結果の引用で,銅の再結晶温度に及ぼす溶質原子の影響について示したものである.これらのベース材は溶製方法は異なるがいずれも無酸素銅と考えてよい.これでわかるように,微量の不純物の物性に与える影響が極めて敏感であることがわかる.[図:0001395179000002.jpg]」(第137ページ右欄)
(c)乙第3号証(E-Metals(イーメタルズ)、『高純度銅-Cu≧99.9999%板材』、金属材料通販【E-Metals.net】、[online]、[検索日2022年7月6日]、インターネット、<URL:https://www.e-metals.net/product/201347>)
「提供可能な純度と密度Cu ≧ 99.9999% 密度:8.9g/cm⊃3;Molding process:Melting-RollingGrain Size: <50um※ 面取り、表面粗度などについては、見積依頼される際に備考欄にご要望事項を書いて送信ボタンを教えてください。ご要望内容に合わせて見積回答をさせて頂きます。Cu ≧ 99.9999%単位:ppmLi<0.001、Be<0.001、B<0.001、F<0.001、Na<0.005、Mg<0.001、Al<0.005、Si 0.02、P<0.001、S 1.9、Cl 0.02、K<0.01、Ca<0.005、Sc<0.001、Ti 0.002、V<0.001、Cr 0.02、Mn<0.001、Fe 0.08、Co 0.002、Ni 0.08、Zn 0.02、Ga <0.01、Ge<0.005、As 0.05、Se 0.04、Br <0.05、Rb<0.001、Sr<0.001、Y<0.001、Zr<0.001、Nb<0.005、Mo<0.005、Ru<0.005 Rh<0.1、Pd<0.005、Ag 8.9、Cd<0.01、In<0.005、Sn<0.005、Sb 0.1、Te<0.05、I<0.005、Cs<0.005、Ba 0.003、La<0.001、Ce<0.001、Pr<0.001、Nd<0.001、Sm<0.001、Eu<0.001、Gd<0.001、Tb<0.001、Dy<0.001、Ho<0.001、Er<0.001、Tm<0.001、Yb<0.001、Lu<0.001、Hf<0.001、Ta<0.1、W 0.003m、Re<0.001、Os<0.001、Ir<0.001、It<0.01、Au<0.01、Hg<0.01 Tl<0.001、Pb 0.02、Bi 0.02、Th<0.0001、U<0.0001」
g 上記のように、乙第1号証には、P、Pb、Se、Teといった元素が十分に低減された純銅材(SCR、OFC、TPC1、TPC2)においても、Sが9massppm以上含有されていることが記載されている(Table1)。また、乙第2号証には、P,Pbといった元素が十分に低減された純銅材(無酸素銅、タフピッチ銅(1))においても、Sが5質量ppm以上含有されていることが記載されている(表1)。さらに、乙第3号証には、市販の純度99.9999%以上の高純度銅の板材において、P、Pb、Se、Te、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yといった元素が十分に低減された純銅材においても、Sが2ppm程度含有されていることが記載されている。
これら、乙第1号証~乙第3号証に示すように、純銅材において、S以外の元素を低減して純度を向上させた場合でも、Sが一定量含まれることは技術常識であり、Sの含有量を上記純銅材に含まれる程度とするために、超高純度銅に対してSを添加元素として添加することは、工業上実施されることはないといえる。
h 上記gの技術常識を踏まえると、本件特許明細書において、Sは不可避不純物であると解される。
(イ)そうすると、訂正事項1に係る訂正は、不可避不純物に含まれるSの含有量及びMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量を限定して特定する訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
訂正事項1に係る訂正は、段落【0042】、【0043】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
上記ア(イ)のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(2)訂正事項2に係る訂正について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正が認められることを前提として、訂正後の請求項4の記載と段落【0018】の記載とを整合させようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 明細書の訂正と関係する請求項について
上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、訂正後の請求項4の記載と段落【0018】の記載とを整合させようとするものであるところ、後記(6)アのとおり、訂正前の請求項4、5は一群の請求項であるから、訂正事項2に係る訂正は、一群の請求項である請求項4、5について行うものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
訂正事項2に係る訂正は、段落【0042】、【0043】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
エ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
訂正事項2に係る訂正は、請求項に記載された事項により特定される事項の解釈に影響を与えるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(3)訂正事項3に係る訂正について
ア 訂正の目的について
上記(1)アと同様の理由により、訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
上記(1)イと同様の理由により、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
上記(1)ウと同様の理由により、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(4)訂正事項4に係る訂正について
ア 訂正の目的について
上記(2)アと同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項4に係る訂正は、訂正後の請求項6の記載と段落【0022】の記載とを整合させようとするものであるところ、後記(6)イのとおり、訂正前の請求項6、7は一群の請求項であるから、訂正事項4に係る訂正は、一群の請求項である請求項6、7について行うものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
上記(2)ウと同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
エ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
上記(2)エと同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(5)独立特許要件について
本件特許についてはすべての請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)一群の請求項について
ア 訂正前の請求項4、5について、請求項5は請求項4を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項4、5は一群の請求項である。
イ 訂正前の請求項6、7について、請求項7は請求項6を引用しているものであって、訂正事項3によって訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項6、7は一群の請求項である。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4、5〕、〔6、7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】銅部材とセラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体の製造方法であって、前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とし、積層した前記銅部材と前記セラミックス部材とを積層方向に加圧して加熱することにより、積層した前記銅部材と前記セラミックス部材とを接合する接合工程と、を有し、続きを表示(全28行)接合前の前記銅部材の平均結晶粒径を10μm以上、圧延面における結晶粒の長径/短径の比を意味するアスペクト比を2以下とし、前記接合工程では、積層方向への加圧荷重を0.05MPa以上1.5MPa以下の範囲内、加熱温度を800℃以上850℃以下の範囲内、加熱温度での保持時間を10分以上90分以下の範囲内とすることを特徴とする銅/セラミックス接合体の製造方法。【請求項2】接合前の前記銅部材の圧延面における結晶粒のアスペクト比R0と、接合後の前記銅部材の圧延面における結晶粒のアスペクト比R1と、接合後の前記銅部材の圧延面における平均結晶粒径D1とが、以下の関係式RDを満足することを特徴とする請求項1に記載の銅/セラミックス接合体の製造方法。関係式RD=D1×(R1/R0)≦500【請求項3】セラミックス基板の表面に銅板が接合されてなる絶縁回路基板の製造方法であって、請求項1または請求項2に記載の銅/セラミックス接合体の製造方法により、前記セラミックス部材としてのセラミックス基板と、前記銅部材としての銅板とを接合することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。【請求項4】銅部材とセラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、前記銅部材は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、前記銅部材の断面において、EBSDによる銅の結晶方位マップを(001)面、(111)の面、(101)面に3等分したときの最大の面積率が45%以下とされており、前記銅部材の断面において1mm2の視野内における粒界長が10mm以上30mm未満とされ、前記銅部材の断面を電子後方散乱回折法で観察した結果、全粒界長に対する3Σに該当する粒界長の割合が50%以下であることを特徴とする銅/セラミックス接合体。【請求項5】-45℃×30分保持及び250℃×30分保持の温度サイクル試験を1000回実施後の前記銅部材の表面の算術平均粗さをRa1とし、温度サイクル試験を実施前の前記銅部材の表面の算術平均粗さをRa0としたとき、Ra1/Ra0が1.0以上1.8以下の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の銅/セラミックス接合体。【請求項6】セラミックス基板の表面に銅板が接合されてなる絶縁回路基板であって、前記銅板は、Cuの純度が99.96mass%以上で残部が不可避不純物とされるとともに、Pの含有量が2massppm以下、かつ、Pb、Se及びTeの合計含有量が10massppm以下、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下とされた組成とされ、前記銅板の断面において、EBSDによる銅の結晶方位マップを(001)面、(111)の面、(101)面に3等分したときの最大の面積率が45%以下とされており、前記銅板の断面において1mm2の視野内における粒界長が10mm以上30mm未満とされ、前記銅板の断面を電子後方散乱回折法で観察した結果、全粒界長に対する3Σに該当する粒界長の割合が50%以下であることを特徴とする絶縁回路基板。【請求項7】-45℃×30分保持及び250℃×30分保持の温度サイクル試験を1000回実施後の前記銅板の表面の算術平均粗さをRa1とし、温度サイクル試験を実施前の前記銅板の表面の算術平均粗さをRa0としたとき、Ra1/Ra0が1.0以上1.8以下の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の絶縁回路基板。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
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1 特許異議の申立ての理由の概要
(1)申立理由1(サポート要件)
本件訂正前の請求項4、5に係る発明が解決しようとする課題は、接合後においても、銅部材の結晶粒の粗大化及び不均一化を抑制することができるとともに、温度サイクルを負荷した場合でも銅部材の表面のうねりを抑制することが可能な銅/セラミックス接合体を提供することであり、本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明には、Sが結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素として、2massppm以上20massppm以下含まれること、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yが結晶粒粗大化抑制元素と化合物を生成し、結晶粒粗大化抑制元素の作用を阻害するおそれがある元素であるため、その合計含有量を10massppm以下とすることが記載されているものの、本件訂正前の請求項4、5に係る発明は、銅部材の組成に関して、Sの含有量及びMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量を発明特定事項としていないため、課題を解決するための手段が反映されていない。また、本件訂正前の請求項6、7に係る発明の銅板についても同様である。
したがって、本件訂正前の請求項4~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(実施可能要件)
ア 申立理由2-1
本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明には、所定の組成、平均結晶粒径及びアスペクト比を有する銅部材をどのように入手するかが記載されていないため、本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が本件発明1~3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
したがって、本件発明1~3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由2-2
本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明には、所定の組成を有する銅部材をどのように入手するかが記載されていないため、本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正前の請求項4、5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。また、本件訂正前の請求項6、7に係る発明の銅板についても同様である。
したがって、本件訂正前の請求項4~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由2-3
本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明には、Sの含有量が2massppm以上20massppm以下、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下である銅部材を用いて銅/セラミックス接合体を製造することは記載されているが、S等の含有量が上記のとおりでない銅部材を用いた製造方法は記載されていないため、本件訂正前の本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正前の請求項4、5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。また、本件訂正前の請求項6、7に係る発明の銅板についても同様である。
したがって、本件訂正前の請求項4~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和 3年11月24日付けで通知した取消理由の概要
(1)取消理由1A(実施可能要件)
上記1(2)ウの申立理由2-3と同旨
3 令和 4年 4月28日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
(1)取消理由1B(実施可能要件)
上記1(2)ウの申立理由2-3と同旨
第5 本件訂正によって訂正された明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の記載事項
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1 本件訂正明細書には、以下の事項が記載されている(なお、「・・・」は記載の省略を表す。)。
(1)「【技術分野】【0001】この発明は、銅部材とセラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法、銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板に関するものである。・・・続きを表示(全12行)【0007】そこで、例えば特許文献3には、結晶粒の成長を抑制した純銅材料が提案されている。この特許文献3においては、Sを0.0006~0.0015wt%含有することにより、再結晶温度以上で熱処理しても、一定の大きさの結晶粒に調整可能であると記載されている。・・・【0009】ところで、特許文献3においては、Sの含有量を規定することで結晶粒の粗大化を抑制しているが、単にSの含有量を規定しても、十分な結晶粒粗大化抑制効果を得ることができないことがあった。さらに、結晶粒の粗大化を抑制するために、Sの含有量を増加させた場合には、接合後に局所的に結晶粒が粗大化し、結晶組織が不均一となって粒径のばらつきが大きくなることがあった。この場合、銅板とセラミックス基板との接合状態を超音波検査する際に、ノイズが大きくなり、超音波検査を精度良く行うことができないといった問題があった。また、高温での温度サイクルを負荷した際に、回路層の表面にうねりが形成され、素子実装部が破壊され熱抵抗が上昇したり、回路層に接合された素子が剥離したりしてしまうおそれがあった。」
(2)「【0010】この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、接合後においても、銅部材の結晶粒の粗大化及び不均一化を抑制することができるとともに、温度サイクルを負荷した場合でも銅部材の表面のうねりを抑制することが可能な銅/セラミックス接合体の製造方法、絶縁回路基板の製造方法、銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0011】このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、純銅材に微量に含有された不純物元素には、結晶粒界に存在することで結晶粒の粗大化を抑制する結晶粒成長抑制効果を有するものが存在する。そこで、この結晶粒成長抑制効果を有する元素(以下、結晶粒成長抑制元素、と称する)を活用することで、加熱後においても結晶粒の粗大化や不均一化を抑制可能であるとの知見を得た。また、この結晶粒成長抑制元素を十分に作用させるためには、特定の元素の含有量を規制することが効果的であるとの知見を得た。また、銅部材とセラミックス部材とを接合する際の加圧荷重によって、銅部材の結晶粒が粗大化しやすくなるとの知見を得た。」
(3)「【0038】ここで、回路層12及び金属層13を構成する純銅材において、上述のように成分組成、組織、特性を規定した理由について以下に説明する。【0039】(Cuの純度:99.96mass%以上)続きを表示(全30行)大電流用途の電気・電子部品においては、通電時の発熱を抑制するために、導電性及び放熱性に優れていることが要求されており、導電性及び放熱性に特に優れた純銅を用いることが好ましい。そこで、回路層12及び金属層13を構成する純銅材においては、Cuの純度を99.96mass%以上に規定している。なお、Cuの純度は99.965mass%以上であることが好ましく、99.97mass%以上であることがさらに好ましい。また、Cuの純度の上限に特に制限はないが、99.999mass%を超える場合には、特別な精錬工程が必要となり、製造コストが大幅に増加するため、99.999mass%以下とすることが好ましい。【0040】(Pの含有量:2massppm以下)不可避不純物として含まれるPは、銅中の酸素を無害化する元素として広く用いられている。しかしながら、Pを一定以上含有する場合には、酸素だけではなく、結晶粒界に存在する結晶粒成長抑制元素の作用を阻害する。このため、高温に加熱した際に、結晶粒成長抑制元素が十分に作用せず、結晶粒の粗大化及び不均一化が発生するおそれがある。そこで、本実施形態においては、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるPの含有量を2massppm以下に制限している。なお、Pの含有量は、1.5massppm以下とすることが好ましく、1massppm以下とすることがさらに好ましい。【0041】(Pb、Se及びTeの合計含有量:10massppm以下)Pb、Se及びTeは、Cu中の固溶限が低く、粒界に偏析することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するが、局所的な粒成長を促進してしまう元素である。このため、本実施形態においては、熱間加工性を確保するために、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるPb、Se及びTeの合計含有量を10massppm以下に制限している。結晶粒を良好に制御するためには、Pb、Se及びTeの合計含有量を9massppm以下とすることが好ましく、8massppm以下とすることがさらに好ましい。【0042】(Sの含有量:2massppm以上20massppm以下)Sは、結晶粒界移動を抑制することによって、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有するとともに、熱間加工性を低下させる元素である。このため、本実施形態において、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるSの含有量を2massppm以上とした場合には、Sによる結晶粒粗大化抑制効果を十分に奏功せしめることができ、加熱後においても結晶粒の粗大化を確実に抑制することが可能となる。一方、Sの含有量を20massppm以下に制限することにより、局所的な結晶粒成長を制御することが可能となる。なお、Sの含有量の下限は、2.5massppm以上であることが好ましく、3massppm以上であることがさらに好ましい。また、Sの含有量の上限は、17.5massppm以下であることが好ましく、15massppm以下であることがさらに好ましい。【0043】(Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量:10massppm以下)不可避不純物として含まれるMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yは、結晶粒界に偏析して結晶粒の粗大化を抑制する結晶粒粗大化抑制元素(S、Se、Te等)と化合物を生成し、結晶粒粗大化抑制元素の作用を阻害するおそれがある。このため、本実施形態において、加熱後の結晶粒の粗大化を確実に抑制するためには、回路層12及び金属層13を構成する純銅材におけるMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量を10massppm以下とすることが好ましい。なお、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量は、7.5massppm以下であることが好ましく、5massppm以下であることがさらに好ましい。【0044】(その他の不可避不純物)上述した元素以外のその他の不可避的不純物としては、Ag、B、Bi、Ca、Sc、希土類元素、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、As、Sb、Tl、Be、N、C、Si、Li、H、O等が挙げられる。これらの不可避不純物は、導電率を低下させるおそれがあることから、総量で0.1mass%以下とすることが好ましい。」
(4)「【0050】次に、上述した本実施形態である絶縁回路基板10の製造方法について、図2を参照して説明する。【0051】<銅板準備工程S01>続きを表示(全26行)まず、回路層12及び金属層13となる銅板を準備する。この銅板は、上述の組成を有する純銅材で構成されたものであり、接合前の銅板においては、銅板を作成する際の熱処理条件と圧延率を変量し、平均結晶粒径が10μm以上とされるとともに、圧延面における結晶粒のアスペクト比(長径/短径)が2以下とされている。【0052】<積層工程S02>次に、図2に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、上述のようにして得られた回路層12となる銅板を活性ろう材を介して積層し、セラミックス基板11の他方の面に、上述のようにして得られた金属層13となる銅板を活性ろう材を介して積層する。なお、本実施形態では、活性ろう材として、Ag-28mass%Cu-5mass%Ti合金のペーストを用いた。【0053】<接合工程S03>積層した銅板、セラミックス基板11、銅板を、積層方向に加圧した状態で、真空加熱炉内に装入して加熱し、銅板とセラミックス基板11とを接合して回路層12を形成するとともに、銅板とセラミックス基板11とを接合して金属層13を形成する。ここで、積層方向への加圧荷重は、0.05MPa以上1.5MPa以下の範囲内とし、加熱温度は800℃以上850℃以下の範囲内、加熱温度での保持時間は10分以上90分以下の範囲内とする。また、加熱温度時の真空加熱炉内の圧力は、1.0×10-4Pa以上1.0×10-1Pa以下の範囲内とすることが好ましい。【0054】そして、本実施形態においては、接合前の銅板の圧延面における結晶粒のアスペクト比(長径/短径)R0と、接合後の銅板(回路層12及び金属層13)の圧延面における結晶粒のアスペクト比(長径/短径)R1と、接合後の銅板(回路層12及び金属層13)の圧延面における平均結晶粒径D1が、以下の関係式RDを満足するように、加圧荷重、加熱温度、保持時間を調整することが好ましい。関係式RD=D1×(R1/R0)≦500【0055】以上のように、銅板準備工程S01と、積層工程S02と、接合工程S03とによって、本実施形態である絶縁回路基板10が製造される。【0056】(ヒートシンク接合工程S04)次に、絶縁回路基板10の金属層13の他方の面側にヒートシンク51を接合する。本実施形態では、絶縁回路基板10とヒートシンク51とを、はんだ材を介して積層して加熱炉に装入し、第2はんだ層8を介して絶縁回路基板10とヒートシンク51とをはんだ接合する。【0057】(半導体素子接合工程S05)次に、絶縁回路基板10の回路層12の一方の面に、半導体素子3をはんだ付けにより接合する。以上の工程により、図1に示すパワーモジュール1が製出される。」
(5)「【0058】以上のような構成とされた本実施形態の絶縁回路基板10(銅/セラミックス接合体)の製造方法によれば、回路層12及び金属層13を構成する銅板において、Pの含有量が2massppm以下とされているので、粒界に微量に存在する結晶粒成長抑制元素の効果がPによって阻害されることを抑制でき、接合後の銅板(回路層12及び金属層13)における結晶粒の粗大化や不均一化を抑制することが可能となる。【0059】また、Pb、Se及びTeといった元素は、Cu中の固溶限が低く、粒界に偏析することによって結晶粒の粗大化を抑制する結晶粒成長抑制元素に該当するため、微量に含まれていてもよいが、これらの元素は、熱間加工性を大きく低下させる効果も有する。このため、これらPb、Se及びTeの合計含有量を10massppm以下に制限することにより、熱間加工性を確保することができる。よって、回路層12及び金属層13となる銅板を安定して製造することが可能となる。」
(6)「【0062】さらに、本実施形態において、回路層12及び金属層13を構成する銅板におけるSの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内とされている場合には、結晶粒成長抑制元素であるPにより、接合後の銅板(回路層12及び金属層13)における結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。【0063】さらに、本実施形態において、回路層12及び金属層13を構成する銅板におけるMg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下である場合には、結晶粒成長抑制元素であるS、Se、Te等がこれらの元素との化合物を生成することによって消費されることを抑制でき、結晶粒成長抑制元素による結晶粒成長抑制効果を十分に発揮させることができ、接合後においても、結晶粒の粗大化や不均一化を確実に抑制することが可能となる。」
(7)「【実施例】【0071】本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。【0072】続きを表示(全55行)(実施例1)組成及び初期粒径、アスペクト比の異なるCu材を入手し、絶縁基板用の回路層及び金属層用銅条材とした。【0073】次に、上述の銅条材を切断して回路層及び金属層となる銅板(37mm角、厚さ0.8mm)を準備し、これを40mm角の窒化珪素からなるセラミックス基板(厚さ0.32mm)の両面に、Ag-28mass%Cu-5mass%Ti合金の活性ろう材を用いて表3、4に示す条件で接合し、銅/セラミックス接合体を形成した。なお、接合時の真空炉の真空度は5×10-3Paとした。【0074】このようにして得られた銅条材(銅板)、及び、銅/セラミックス接合体について、以下の項目について評価した。【0075】(接合前の銅板の結晶粒径)得られた銅条材から20mm×20mmのサンプルを切り出し、SEM-EBSD(Electron Backscatter Diffraction Patterns)測定装置によって、平均結晶粒径を測定した。圧延面を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。その後、走査型電子顕微鏡を用いて、試料表面の測定範囲内の個々の測定点(ピクセル)に電子線を照射し、後方散乱電子線回折による方位解析により、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を大角粒界とし、15°未満を小角粒界とした。大角粒界を用いて、結晶粒界マップを作成し、JIS H 0501の切断法に準拠し、結晶粒界マップに対して、縦、横の所定長さの線分を5本ずつ引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を接合前の結晶粒径として記載した。評価結果を表3、4に示す。【0076】(接合前の銅板の結晶粒のアスペクト比R0)圧延面における結晶粒のアスペクト比(長径/短径)は、得られた銅条材の圧延面を、上記と同様にSEM-EBSD(Electron Backscatter Diffraction Patterns)測定装置を用いて、結晶粒界マップを作製した。そのマップに対して、板厚方向に5本、圧延方向に5本の線分を引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その長径と短径の長さの比をアスペクト比(長径/短径)とし、平均値を算出した。評価結果を表3、4に示す。【0077】(接合後の銅板の結晶粒径D1)セラミックス基板に接合した銅板から、30mm×30mmのサンプルを切り出し、圧延面を鏡面研磨、エッチングを行い光学顕微鏡にて、圧延方向が写真の横になるように撮影した。観察部位の中で、約1000×1000μm2の視野内が均一な粒度で形成される部位を10視野選び、約1000×1000μm2で観察および測定を行った。そして、結晶粒径をJIS H 0501の切断法に従い、写真縦、横の所定長さの線分を5本ずつ引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を熱処理後の結晶粒径として記載した。接合後の平均結晶粒径として、400μm以下のものを「〇」、400μmを超えたものを「×」とした。評価結果を表3、4に示す。【0078】(接合後の銅板の結晶粒のアスペクト比R1)上述のように、セラミックス基板に接合した銅板から採取したサンプルの圧延面を、上記と同様にSEM-EBSD(Electron Backscatter Diffraction Patterns)測定装置を用いて、結晶粒界マップを作製した。そのマップに対して、板厚方向に5本、圧延方向に5本の線分を引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その長径と短径の長さの比をアスペクト比(長径/短径)とし、平均値を算出した。評価結果を表3、4に示す。【0079】(接合後の銅板の粒径のばらつき)上述のように、セラミックス基板に接合した銅板から採取したサンプルについて、30mm×30mmの範囲内において双晶を除き、最も結晶粒が粗大な結晶粒の長径とそれに垂直に線を引いた時に粒界によって切断される短径の平均値を最大結晶粒径dmaxとし、この最大結晶粒径と上述の平均結晶粒径daveとの比dmax/daveが10以下を「〇」と評価し、dmax/daveが10を超えた場合を「×」と評価した。評価結果を表3、4に示す。【0080】(EBSDによる結晶方位マップにおける結晶方位の割合)銅の結晶配向率:セラミックス基板と銅板を接合した後に任意の位置でセラミックス回路基板の銅板部分の断面を作製し、加速電圧15kVの条件で電子線後方散乱分析(EBSD:TSLソリューションズ社 Hikari検出器/SEM:カールツァイス社 Ultra55)を行い、視野内の銅板部分にて結晶方位マップを作成した後、銅の結晶方位を(001)面、(111面)、(101)面に3値化し、各方位の面積比から最も高い値を示した面の割合を結晶配向率として評価した。【0081】(粒界長/双晶粒界の割合)上記断面分析結果から、OIM-data-collectionソフトウェアを用いて、銅板部分1mmの全粒界長を測定した。また、全粒界に対する3Σに該当する粒界の割合を双晶粒界割合とした。【0082】(温度サイクル試験前後の表面粗さ)250℃での保持時間30分、-45℃での保持時間30分の条件にて冷熱サイクル試験を1000回実施した後の銅板メッキ後のメッキ表面粗さRaを接触式の表面粗さ計(ミツトヨ社製201P)を用いて評価した。【0083】【表1】[図:0001395179000003.jpg]【0084】【表2】[図:0001395179000004.jpg]【0085】【表3】[図:0001395179000005.jpg]【0086】【表4】[図:0001395179000006.jpg]【0087】【表5】[図:0001395179000007.jpg]【0088】【表6】[図:0001395179000008.jpg]」
第6 当審の判断
以下に述べるように、本件特許異議の申立ての理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由2-3、取消理由1A、取消理由1B(実施可能要件)
これらの理由は、本件訂正前の請求項4~7に係る発明が、「Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下」との発明特定事項を有しないことを前提とした理由であるが、本件訂正により、本件発明4~7は、「Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下」との発明特定事項を有するものとなったため、これらの理由は前提を欠くものとなった。
したがって、申立理由2-3、取消理由1A、取消理由1B(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項4~7に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1(サポート要件)
申立理由1は、本件訂正前の請求項4~7に係る発明が、「Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下」との発明特定事項を有しないことを前提とした理由であるが、本件訂正により、本件発明4~7は、「Sの含有量が2massppm以上20massppm以下の範囲内、Mg、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Yの合計含有量が10massppm以下」との発明特定事項を有するものとなったため、この理由は前提を欠くものとなった。
したがって、申立理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項4~7に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2-1(実施可能要件)
上記第2の3(1)ア(ア)fに摘記したとおり、高純度銅は周知であるから、例えば市販される乙第3号証の高純度銅を入手し、必要に応じて成分調整を行い本件発明1に記載の化学組成を有する銅部材と得ることは当業者であれば困難なことではない。
また、当審が職権により発見した文献であり、本件特許の優先日前に公開された参考文献1(小藤甫、外2名、「無酸素銅に関する研究(第3報)無酸素銅の再結晶図と粒成長について」、日本金属学会誌、1958年、第22巻、第10号、社団法人日本金属学会、p.493-497)には、以下の事項が記載されている。
「(2)結晶粒度と加熱温度,加工率結晶粒は加熱温度が高くなる程大きく,恒温であれば加工度の大きいほど微細であるということは衆知のことである.無酸素銅のこれらの関係はFig.6,Fig.7に示した.350°における5%,10%,加工の場合が300°の場合より細粒であるのは再結晶温度の影響によるものである.これらは加熱時間が一定であるため,温度と時間の関係が判然としないがこれについては後節で詳述する.Fig.7において50~80%の加工を施した試料は630°近傍から著しい成長を示し,かつ加工度の大きいほど粗大化の開始が低温側にずれるようである.また400°程度までの加熱温度範囲では寧ろ焼鈍温度の高いほど結晶粒は細かくなる結果を示している.[図:0001395179000009.jpg]」
参考文献1の上記記載から、加工度と再結晶温度を調整すれば所望の結晶粒度を有する無酸素銅を得ることができるし、再結晶粒が等軸な結晶粒であることも周知であるから、銅部材の平均結晶粒径が10μm以上とされるとともに、圧延面における結晶粒のアスペクト比(長径/短径)が2以下とすることは、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施することができるといえる。
したがって、申立理由2-1(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由2-2(実施可能要件)
上記3と同様の理由により、申立理由2-2(実施可能要件)によっては、本件特許の請求項4~7に係る特許を取り消すことはできない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700773