特許異議申立
2021-700737
搬送ベルトおよびその製造方法
- 審判番号
- 2021-700737
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-140928
- 登録番号
- 6823223
- 請求日
- 2021年07月27日
- 審決日
- 2022年08月03日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三ツ星ベルト株式会社
- 【権利者代理人】鍬田 充生
- 【権利者代理人】阪中 浩
- 【異議申立人】大重 瞳
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.121-YAA(B65G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6823223号発明「搬送ベルトおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6823223号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕及び〔10、11〕について訂正することを認める。
特許第6823223号の請求項1、2、4~6、8、10及び11に係る特許を維持する。
特許第6823223号の請求項3、7及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6823223号の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和2年8月24日(優先権主張 令和1年9月5日)に出願され、令和3年1月12日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月27日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年7月27日 :特許異議申立人大重瞳(以下、「特許異議申立
人」という。)による請求項1~11に係る特
許に対する特許異議の申立て
令和3年10月29日付け:取消理由通知書
令和3年12月3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年1月17日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和4年3月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年5月2日 :特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年3月10日に提出された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)による訂正請求の内容(以下、「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は訂正箇所であり当審で付した。なお、令和3年12月3日に提出された訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトであって、前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成されている搬送ベルト」と記載されているのを、「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトであって、
前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、
前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、
前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり、
前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成され、かつ
前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である搬送ベルト」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~6及び8も同様に訂正する。)。
(訂正請求書の「7 請求の理由」の(1)の2)のアの訂正事項1の欄には、
「特許請求の範囲の請求項1に『オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトであって、前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成されている搬送ベルト』と記載されているのを『3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトであって、
前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、
前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、
前記凸部の平面形状の平均径が0.2~5mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.3~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり、
前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成され、かつ
前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である搬送ベルト』に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4~6及び8も同様に訂正する。)。」
とあるが、訂正請求書の「6 請求の趣旨」及び「7 請求の理由」の(1)の3)の請求の理由の欄の記載からみて、上記訂正事項1の「前記凸部の平面形状の平均径が0.2~5mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.3~5mmであり」は、「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり」の誤記と認められるので、訂正事項1の内容を上記のとおりとした。下記(8)の訂正事項8についても同様である。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送ベルト」と記載されているのを、「請求項1または2記載の搬送ベルト」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6及び8も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~5のいずれか一項に記載の搬送ベルト」と記載されているのを、「請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の搬送ベルト」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1~7のいずれか一項に記載の搬送ベルト」と記載されているのを、「請求項1、2および4~6のいずれか一項に記載の搬送ベルト」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に、「オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトの製造方法」と記載されているのを、「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含み、
前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、
前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、
前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり、かつ
前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である搬送ベルトの製造方法」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。
訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が請求項1の記載を引用する関係にあり、また、訂正前の請求項10及び11は、請求項11が請求項10の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕及び〔10、11〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1のうち、「3~15質量%」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層に含まれるシリコーン変性樹脂中のオルガノシロキサン単位の割合を特定する目的でなされるものである。また、「前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層における樹脂成分中の他の樹脂成分の割合を限定する目的でなされるものである。さらに、「前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層の平均厚みを特定する目的でなされるものである。さらに、「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層表面の縦横方向に形成された凸部のサイズ及び間隔を限定することを目的としてなされるものである。さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である」との記載を追加する訂正は、保護層の樹脂成分の種類を限定することを目的としてなされるものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
訂正事項1のうち、「3~15質量%」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0026】の記載に基づいてなされるものであり、また、「前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0038】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0041】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0043】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0055】の記載に基づいてなされるものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
そして、訂正事項1によって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するとは認められないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
さらに、訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1~3の記載を引用する記載であったところ、訂正事項2によって請求項3が削除されたため請求項3を引用することができなくなることとの整合を図るためになされるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、訂正事項3は、請求項4における引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
さらに、訂正事項3は、請求項4における引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
加えて、訂正事項3は、請求項4における引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項6が請求項1~5の記載を引用する記載であったところ、訂正事項2によって請求項3が削除されたため請求項3を引用することができなくなることとの整合を図るためになされるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、訂正事項4は、請求項6における引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
さらに、訂正事項4は、請求項6における引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
加えて、訂正事項4は、請求項6における引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項7の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項5は、訂正前の請求項7の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項7の記載を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項8が請求項1~7の記載を引用する記載であったところ、訂正事項2及び5によって請求項3及び7が削除されたため請求項3及び7を引用することができなくなることとの整合を図るためになされるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、訂正事項6は、請求項8における引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
さらに、訂正事項6は、請求項8における引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
加えて、訂正事項6は、請求項8における引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(7)訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項9の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項7は、訂正前の請求項9の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
さらに、訂正事項7は、訂正前の請求項9の記載を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
(8)訂正事項8
訂正事項8のうち、「3~15質量%」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層に含まれるシリコーン変性樹脂中のオルガノシロキサン単位の割合を特定する目的でなされるものである。また、「前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層における樹脂成分中の他の樹脂成分の割合を限定する目的でなされるものである。さらに、「前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層の平均厚みを特定する目的でなされるものである。さらに、「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり」との記載を追加する訂正は、透明非粘着層表面の縦横方向に形成された凸部のサイズ及び間隔を限定することを目的としてなされるものである。さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である」との記載を追加する訂正は、保護層の樹脂成分の種類を限定することを目的としてなされるものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
訂正事項8のうち、「3~15質量%」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0026】の記載に基づいてなされるものであり、また、「前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0038】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0041】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0043】の記載に基づいてなされるものであり、さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である」との記載を追加する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0055】の記載に基づいてなされるものである。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しているといえる。
そして、訂正事項8によって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するとは認められないから、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しているといえる。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕及び〔10、11〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8、10及び11に係る特許に対して、当審が令和4年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
請求項1~8、10及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~8、10及び11に係る特許は、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開平7-309414号公報
甲第2号証:特開2016-183049号公報
甲第1号証及び甲第2号証は、それぞれ、特許異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証である。
第4 訂正後の請求項に係る発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明11」という。なお、請求項3、7及び9は、本件訂正請求により削除された。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
芯体と、この芯体の搬送面に積層され、かつ樹脂成分を含む保護層と、この保護層表面の少なくとも一部の領域に積層された情報を伝達するためのマーク層と、このマーク層が積層された前記保護層の上に積層され、表面の縦横方向に複数の凸部が形成され、かつ3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含む搬送ベルトであって、
前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、
前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、
前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり、
前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成され、かつ
前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である搬送ベルト。
【請求項2】
シリコーン変性樹脂が、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーである請求項1記載の搬送ベルト。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
シリコーン変性樹脂が、シリコーン変性ポリウレタンである請求項1または2記載の搬送ベルト。
【請求項5】
シリコーン変性ポリウレタンが、ポリエーテル型ポリウレタンまたはポリカーボネート型ポリウレタンのシリコーン変性樹脂である請求項4記載の搬送ベルト。
【請求項6】
シリコーン変性樹脂が、3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むポリカーボネート型ポリウレタンである請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
芯体が、布帛および樹脂成分を含み、かつこの樹脂成分がシリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である請求項1、2および4~6のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
芯体と、この芯体の搬送面に積層され、かつ樹脂成分を含む保護層と、この保護層表面の少なくとも一部の領域に積層された情報を伝達するためのマーク層と、このマーク層が積層された前記保護層の上に積層され、表面の縦横方向に複数の凸部が形成され、かつ3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層とを含み、
前記透明非粘着層において、他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、
前記透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、
前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmであり、かつ
前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂である搬送ベルトの製造方法であって、
芯体前駆体の搬送面に保護層前駆体を積層する保護層形成工程、この保護層前駆体表面の少なくとも一部の領域にマーク層前駆体を積層するマーク層形成工程、前記マーク層前駆体が積層された保護層前駆体の上に透明非粘着層前駆体を積層して搬送ベルト前駆体を得る透明非粘着層形成工程、搬送ベルト前駆体を熱プレスして一体化する熱プレス工程を含む製造方法。
【請求項11】
熱プレス工程において、熱プレス後または熱プレスとともに型を用いて透明非粘着層の表面に凸部を形成する請求項10記載の製造方法。」
第5 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は一部を除き当審で付したものである。)。
「【請求項1】 抗張体とエラストマシートとを積層し、そのエラストマシートの表面にドットで構成したマークを印刷し、更にその上に透明シートを積層したことを特徴とする搬送用ベルト。」
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば弱電機器組立工程、食品加工工程等に使用される、いわゆる軽搬送用の搬送用ベルトに関する。この種の搬送用ベルトは運搬物を搬送する機能とともに搬送中に組立、成形、選別等の処理、加工を施す機能を要求されることがある。そこで運搬物の位置、処理の内容等を分かりやすくするため、搬送用ベルトの表面部にポジショニングマーク、PR用マーク、商標等(以下、単にマークという)を表示している。」
「【0004】まず、熱可塑性エラストマシートの上にインキ等で印刷したのみの搬送用ベルトでは、マークは搬送物と直接接触して摩耗、剥脱し、長期に安定して明瞭な表示を維持することができない。また食品加工工程に使用されるときは、搬送物とマークが直接接触するために食品衛生法の制約を受け、インキの組成(着色材、溶剤、メジューム等)によりベルトの用途が制約される。
【0005】マークの上に透明プラスチックを積層したコンベヤベルトにおいては、上記インキ組成に係わる食品衛生法上の制約は解消できるが、インキと透明プラスチックスとの接着力の問題を生ずる。すなわち、熱可塑性エラストマとの接着力を重視したインキ組成は、透明プラスチックとの接着力において必ずしも十分とはいえず、搬送用ベルトとして使用することにより屈曲、伸張等を受けて、マーク(インキ)と透明プラスチックとの間が剥離しやすく、使用開始後、短期間で透明プラスチックが剥離することがある。
【0006】この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、従来のべた刷りのマークを有する搬送用ベルトに比べ、マーク上に積層される透明シートの接着力が大幅に向上され、長期間使用しても透明シートが剥離しにくい搬送用ベルトを提供することを目的としている。」
「【0009】
【作用】上記の構成を有する本発明の搬送用ベルトによれば、抗張体が搬送用ベルトの心体として、プーリ間に懸架されたときに運搬物を支持し搬送する作用を有し、エラストマシートは、運搬物と抗張体の間に位置し、運搬物による抗張体の摩耗や汚染を防止し、さらに、運搬物が、搬送用ベルト上に安定して載置され運搬できるに適した摩擦係数、弾力性を付与する作用を有する。マークは、運搬物を載置する位置を表示(ポジショニングマーク)したり、商標、PR文字等を表示したりして品質保証、出所表示、宣伝等の機能を果たす。透明シートは、マークを被覆してその耐久性を向上し、運搬物の汚染を防止する機能を果たす。」
「【0014】まず、本発明の搬送用ベルト全体の構成を図1により簡単に説明する。抗張体として、第1抗張体4および第2抗張体6の2層を備えており、それぞれは本例ではポリエステル平織物を使用している。用途によりアラミド繊維、ナイロン繊維、綿糸又はそれらの混紡等も使用される。第1抗張体4の上に積層する第1エラストマシート3は、第1抗張体4の保護及び運搬物を保持する機能を有する。第2エラストマシート5は、第1抗張体4と第2抗張体6との間に介入し、両者を相互に接着するとともにベルト幅方向に対する一定の剛性を付与する働きをする。使用するエラストマの種類は、第1・第2抗張体4・6および運搬物の性質により選択されるが、本例においては、ポリウレタンを使用している。他に、抗張体4・6に接着剤を塗布するなどの接着処理を施すことにより、軟質塩化ビニル、ポリエステル等も使用することができる。
【0015】マーク2を挟んで第1エラストマシート3の上に積層する透明シート1は、挟み込んだマーク2が鮮明に読み取れる程度に透明であり、その第1エラストマシート3と接着しやすい材料であり、かつ、運搬物を汚染しない材料であることが必要である。このため、通常、第1エラストマシート3の材料に類似する材料を使用し、本例においては厚さ0.3ミリメートルの優れた透明性を有するポリウレタンシートを使用している。これらの積層方法は、通常の積層方法、例えばロータリプレス法を使用するか、連続して送り出される第1抗張体4にTダイ法で成形された第1エラストマシート3を加圧接着した後に冷却する方法が採用される。」
「【0017】実施例(当審注:下線は当初より付されていたもの。)
マーク2を第1エラストマシート3(ポリウレタン)に印刷した後、その上に透明シート1(透明ポリウレタン)を積層する。その印刷は、スクリーン印刷を使用して、ドット7の一個当たりの大きさを0.5ミリメートルとし、ドット密度を1平方センチメートル当たり144個(1センチ当たり12個)となるように設定した。使用したインキは、印刷インキ工業連絡会NL規格に基づく食品包装材料用印刷インキSK-9100緑である。」
「【図1】
[図:0001390554000001.jpg]
」
(2)甲第2号証
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第2号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付したもの。)。
「【0001】
本発明は、食品などの各種の搬送物を搬送するための搬送ベルト及びその製造方法に関する。」
「【0002】
従来から、パン生地や菓子生地などに代表される各種食品の搬送には、帆布を含む搬送ベルト(コンベアベルト)が利用されている。帆布を含む搬送ベルトは、帆布の糸ホツレや織り目ズレを防止するため、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを主成分として接着剤(液状組成物)の含浸や固着により目止めがされている。しかし、この搬送ベルトでは、食品などの搬送物の一部が帆布内部に擦り込まれてベルトの収縮などに不具合が発生する場合がある。そこで、芯体としての帆布の上にさらにカバー層(保護層)を積層し、カバー層表面を搬送面とするベルトも利用されている。」
「【0004】
しかし、この樹脂製カバー層が積層された搬送ベルトでは、搬送面の粘着性が高く、パン生地のような粘着性の高い食品を搬送すると、搬送物が搬送面に粘着して離れ難くなる。なお、一般的に、非粘着性を向上させるためには、シリコーン離型剤などの離型剤を塗布する方法が知られているが、離型剤が付着して搬送物が汚染されるため、特に、食品分野などでは使用が限定される。また、搬送物からこぼれた落ちた異物がベルトの内周面(プーリとの接触面)側に回り込み、ベルトの内周面に異物が付着した場合には、搬送ベルトの耐久性が低下した。すなわち、異物がベルト内周面に付着した状態で搬送ベルトの走行を続けると、異物がベルトとプーリとの間に挟み込まれ、局所的な応力が加わってベルトが破損し易くなる。
【0005】
特開平11-29212号公報(特許文献2)には、樹脂層、芯体層及び両層の間に配置される接着剤層とからなり、前記樹脂層が、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン及びシリコーンより成る群から選ばれた1つの樹脂にビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛を主成分とする抗菌剤を練り込み成形して形成され、抗菌剤の配合量が、前記樹脂100重量部に対し抗菌剤0.1~5重量部である食品搬送用の抗菌・防カビ性ベルトが開示されている。この文献には、ベルトの樹脂層をシリコーンで形成することにより、粘着性食品の搬送に適したベルトを作製できることが記載されている。
【0006】
しかし、この搬送ベルトでは、搬送面の非粘着性は高くなるものの、樹脂層がシリコーンであると、芯体層との接着性が低下するとともに、樹脂層が剥離し易い。さらに、この搬送ベルトでも、耐久性は低かった。」
「【0008】
従って、本発明の目的は、粘着性の高い搬送物(パン生地などの食品など)の搬送性や、前記搬送物を搬送したときの耐久性に優れ、かつ層間の剥離も抑制された搬送ベルト及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、搬送物を汚染することなく搬送できる搬送ベルト及びその製造方法を提供することにある。」
「【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため、搬送面又は内周面(プーリとの接触面)のカバー層としてシリコーン樹脂とバインダー樹脂とを混合して積層することを検討したが、両樹脂を均一に混合するのが困難であり、非粘着性と芯体に対するカバー層の密着性とを両立させるのは困難であった。そこで、さらに鋭意検討した結果、芯体の搬送面及び/又は内周面側にオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層を非粘着膜やカバー層として形成することにより、粘着性の高い搬送物の搬送性(及びベルトの耐久性)を向上でき、かつ層間の剥離も抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の搬送ベルトは、芯体と、この芯体の搬送面及び/又は内周面側に形成され、かつオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とを含む。前記シリコーン変性樹脂が熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーであってもよい。前記オルガノシロキサン単位の割合は、シリコーン変性樹脂全体に対して5~20質量%程度である。前記シリコーン変性樹脂は、シリコーン変性ポリウレタン(特にポリエーテル型ポリウレタン又はポリカーボネート型ポリウレタンのシリコーン変性樹脂)であってもよい。前記芯体は、布帛及び樹脂成分を含み、かつ前記樹脂成分がシリコーン変性樹脂と同種の樹脂(例えば、ポリウレタン)であってもよい。」
「【0013】
前記非粘着層は、平均厚み0.1~2mm程度の非粘着カバー層であってもよい。この非粘着カバー層を有する搬送ベルトは、非粘着カバー層の表面に、縦横方向に複数の凸部が形成されていてもよい。」
「【0016】
本発明には、芯体の搬送面及び/又は内周面側に非粘着層を形成する非粘着層形成工程を含む前記搬送ベルトの製造方法も含まれる。前記非粘着層形成工程において、シリコーン変性樹脂を含む液状組成物を芯体の搬送面及び/又は内周面に塗布して非粘着膜を形成してもよい。また、前記非粘着層形成工程において、シート状前駆体を芯体の搬送面及び/又は内周面に積層して非粘着カバー層を形成してもよい。」
「【0017】
本発明では、芯体の搬送面及び/又は内周面側にオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層が形成されているため、粘着性の高い搬送物(パン生地などの食品など)の搬送性や、前記搬送物を搬送したときの耐久性を向上でき、かつベルトを構成する層間の剥離も抑制できる。特に、シリコーン変性樹脂と芯体に含まれる樹脂成分とを同種の樹脂とすることにより、層間の密着性をさらに向上できる。さらに、芯体の搬送面側に非粘着層を形成すると、離型剤などの添加剤を含まずに非粘着性を向上できるため、搬送物を汚染することなく搬送できる。特に、シリコーン単位により、非粘着性を発現しているため、仮に搬送物に転移しても、安全性も高く、食品などの搬送に適している。」
「【0019】
[搬送ベルト]
本発明の搬送ベルトは、芯体と、この芯体の搬送面及び/又は内周面側に形成され、かつオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とを含む。さらに、非粘着層は、平均厚み10~100μm程度の非粘着膜と、平均厚み0.1~2mm程度の非粘着カバー層とに大別できる。」
「【0021】
一方、図2は、本発明の非粘着カバー層を搬送面側に備えた搬送ベルトの一例を示す概略図であり、芯体4と、この芯体4の搬送面側に積層された非粘着カバー層3とで形成されている。非粘着カバー(保護)層を有する搬送ベルトは、比較的に厚肉の非粘着カバー層を有するため、食品などの搬送物の一部が芯体の布帛内部に擦り込まれるのを抑制するのに有利である。」
「【0023】
(非粘着層)
非粘着層に含まれるシリコーン変性樹脂は、ベース樹脂がシリコーン成分で変性されており、詳しくは、ベース樹脂の分子中にオルガノシロキサン単位(シリコーン単位)が共重合体として組み込まれているため、ベース樹脂(ベース樹脂単位)により芯体との密着性を向上できるとともに、シリコーン成分が搬送物に転移(付着)するのを抑制できる。
【0024】
オルガノシロキサン単位は、式:-Si(-R)2-O-(基Rは置換基である)で表され、基Rで表される置換基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどのC1-12アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどのC6-20アリール基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC5-14シクロアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの置換基のうち、メチル基などのC1-3アルキル基、フェニル基などのC6-12アリール基が汎用される。
【0025】
オルガノシロキサン単位の導入形態は、ベース樹脂中に結合(共重合)されていれば特に限定されず、主鎖に導入されていてもよく、側鎖に導入されていてもよい。導入方法としては、ベース樹脂の種類に応じて選択でき、エチレン性不飽和結合(ビニル基など)や反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基など)を有する(ポリ)オルガノシロキサンモノマーをベース樹脂やそのモノマーと反応(重合)させることにより導入してもよい。共重合の形態としても、特に限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれの形態であってもよい。
【0026】
オルガノシロキサン単位の割合は、シリコーン変性樹脂全体に対して1~50質量%程度の範囲から選択でき、例えば2~30質量%、好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%(特に6~18質量%)程度である。オルガノシロキサン単位の割合が少なすぎると、搬送物に対する非粘着性が低下する虞があり、逆に多すぎると芯体との密着性が低下する虞がある。
【0027】
シリコーン変性樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーであってもよい。熱可塑性樹脂の場合、ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミドなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーの場合、ベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。これらのベース樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。」
「【0039】
非粘着層の平均厚みは10μm~1mm程度の範囲から、ベルトの種類や製造方法の種類に応じて選択できる。」
「【0041】
シート状の前駆体を積層して形成された非粘着カバー層は、比較的厚肉であってもよく、平均厚みは、例えば0.05~3mm、好ましくは0.1~2mm、さらに好ましくは0.15~1.5mm(特に0.2~1mm)程度である。非粘着カバー層の厚みが薄すぎると、非粘着性が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの機械的特性が低下する虞がある。」
「【0043】
さらに、非粘着カバー層は、非粘着性を向上させるため、縦横方向に複数の凸部が形成されていてもよい。複数の凸部は、互いに間隔をおいて、ランダム又は規則的に形成されていてもよく、均一性が高い点から、規則的に形成されているのが好ましい。凸部の平面形状は、特に限定されず、例えば、多角形、円形、楕円形などであってもよい。凸部の平面形状の平均径は、例えば0.1~10mm、好ましくは0.2~5mm、さらに好ましくは0.3~1mm程度である。隣接する凸部の平均間隔(中央部同士の間隔)は、例えば0.2~15mm、好ましくは0.3~10mm、さらに好ましくは0.5~5mm程度である。凸部の平均高さは、例えば0.01~0.5mm、好ましくは0.03~0.3mm、さらに好ましくは0.05~0.2mm程度である。」
「【0044】
(芯体)
芯体は、布帛及び樹脂成分を含んでおり、通常、布帛内部の繊維間に樹脂成分が含浸されている。布帛(又は帆布)としては、搬送ベルトの芯体に慣用的に利用される布帛を利用でき、例えば、織布、編布などが挙げられる。これらの布帛のうち、強度や生産性などにも優れる点から、織布が好ましい。」
「【0051】
樹脂成分としては、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示された樹脂を単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記樹脂のうち、非粘着層との密着性を向上できる点から、シリコーン変性樹脂と同種(すなわち、シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同一又は同種)の樹脂が好ましい。そのため、シリコーン変性樹脂がシリコーン変性ポリウレタンである場合、芯体の樹脂成分はポリウレタンが好ましい。ポリウレタンとしても、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示されたポリウレタンを単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記ポリウレタンのうち、非粘着層と同様の理由から、ポリエーテル型ポリウレタン又はポリカーボネート型ポリウレタンが好ましい。芯体のポリウレタンも、非粘着層の項で例示された硬化剤と組み合わせてもよい。好ましい硬化剤及びポリウレタンに対する割合も非粘着層と同様である。」
「【0054】
複数の芯体で積層体を形成する場合、芯体間には中間層を介在させてもよい。中間層としては、芯体同士を接着できれば、特に限定されず、慣用の接着剤や粘着剤を利用できるが、芯体間の密着性を向上できる点から、芯体に含浸させる樹脂成分と同一又は同種の樹脂(特に同一の樹脂)を用いるのが好ましい。中間層は、通常、カバー層と同様のシート状前駆体を用いて形成される。」
「【0056】
(カバー層)
本発明の搬送ベルトは、芯体の搬送面に非粘着層が形成されている場合、芯体の内周面側に、樹脂成分を含むカバー(保護)層が形成されていてもよい。カバー層の樹脂成分としても、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂として例示された樹脂を単独で又は二種以上組み合わせて利用できる。前記樹脂のうち、芯体との密着性を向上できる点から、芯体の布帛に含浸させる樹脂成分と同一又は同種の樹脂(特に同一の樹脂)を用いるのが好ましい。カバー層は、通常、シート状前駆体を用いて形成される。」
「【0059】
前記非粘着層形成工程において、非粘着層を形成する方法としては、非粘着層の種類に応じて選択でき、例えば、非粘着膜を形成する場合、シリコーン変性樹脂を含む液状組成物を芯体の搬送面及び/又は内周面に塗布するコーティング方法であってもよく、非粘着カバー層を形成する場合、シート状前駆体を芯体の搬送面及び/又は内周面に積層するラミネート方法などが挙げられる。」
「【0064】
ラミネート法で得られた非粘着カバー層は、搬送物との非粘着性を向上させるために、表面に凸部(凹凸構造)を形成する場合、凹凸構造の形成方法としては、慣用の方法を利用できるが、簡便性などの点から、溶融状態の非粘着カバー層に対して、目的の凹凸構造と反転した型を有する離型シートを積層して固化させた後、離型シートを剥離する方法が好ましい。非粘着カバー層を溶融させる条件としては、加熱温度は、シリコーン変性樹脂の種類に応じて選択できるが、シリコーン変性ポリウレタンの場合、例えば100℃以上であってもよく、好ましくは100~170℃、さらに好ましくは120~160℃程度である。加熱の際には、加圧してもよく、圧力は、例えば0.1MPa以上、好ましくは0.1~0.6MPa、さらに好ましくは0.2~0.5MPa程度である。加熱時間は、例えば1分以上であってもよく、例えば1~5分、好ましくは1.5~4分程度であってもよい。」
「【0086】
比較例2
比較例1で得られた芯体の表面に、カバー層を形成するためのシート状前駆体1を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、シート状前駆体を溶融させた後、冷却して固化し、芯体の上に厚肉のカバー層が積層された搬送ベルトを得た。カバー層の平均厚みは0.2mmであった。
【0087】
実施例2
カバー層を形成するためのシート状前駆体1の代わりに、非粘着カバー層を形成するためのシート状前駆体1を用いる以外は比較例2と同様にして搬送ベルトを得た。非粘着カバー層の平均厚みは0.2mmであった。」
「【0095】
得られた搬送ベルトの非粘着カバー層の上に、離型紙を積層し、プレス機を用いて、150℃、0.3MPaで5分間加熱プレスし、非粘着カバー層を溶融させた後、冷却して固化した。さらに、離型紙を非粘着カバー層から剥離し、非粘着カバー層の表面に凹凸構造を形成した。」
「【図2】
[図:0001390554000002.jpg]
」
第6 当審の判断
1 甲第1号証に記載の発明
甲第1号証の記載から、甲第1号証には次の2つの発明(以下、それぞれ「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明1]
「ポリエステル平織物の第1抗張体4の上にポリウレタンの第1エラストマシート3を積層し、
その第1エラストマシート3の表面にドットで構成したマーク2をインキを使用して印刷し、
マーク2を挟んで第1エラストマシート3の上に厚さ0.3ミリメートルのポリウレタンの透明シート1を積層した搬送用ベルト。」
[甲1発明2]
「ポリエステル平織物の第1抗張体4の上にポリウレタンの第1エラストマシート3を積層し、その第1エラストマシート3の表面にドットで構成したマーク2をインキを使用して印刷し、マーク2を挟んで第1エラストマシート3の上に厚さ0.3ミリメートルのポリウレタンの透明シート1を積層した搬送用ベルトの製造方法であって、
これらの積層方法は、ロータリプレス法である、搬送用ベルトの製造方法。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「ポリエステル平織物の第1抗張体」は、本件発明1の「芯体」に相当する。
甲1発明1の「第1エラストマシート3」は、搬送用ベルトの層間密着性を向上させるといえるから本件発明1の「保護層」に相当し(本件明細書段落【0054】参照。)、樹脂成分である「ポリウレタン」を含むものといえるから、甲1発明1の「ポリウレタンの第1エラストマシート3」は、本件発明1の「樹脂成分を含む保護層」に相当する。
したがって、甲1発明1の「ポリエステル平織物の第1抗張体4の上にポリウレタンの第1エラストマシート3を積層」することは、本件発明1の「芯体と、この芯体の搬送面に」「樹脂成分を含む保護層」を「積層」することに相当する。
甲1発明1の「マーク2」及び「ドットで構成したマーク2」は、「インキを使用して印刷」されているから、本件発明1の「マーク層」に相当し、かつ、インキ組成物で形成されているといえる。そして、甲1発明1の「マーク2」は、搬送用ベルトの表面部に表示されたポジショニングマーク、PR用マーク、商標等であり(甲第1号証の段落【0001】を参照。)、情報を伝達するためのものであるということができる。また、甲1発明1の「マーク2」は、第1エラストマシート3の表面の一部の領域に積層されている(甲第1号証の【図1】を参照。)といえる。
したがって、甲1発明1の「その第1エラストマシート3の表面にドットで構成したマーク2をインキを使用して印刷」することは、本件発明1の「この保護層表面の少なくとも一部の領域に」「情報を伝達するためのマーク層」を「積層」し「前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成されている」ことに相当する。
甲1発明1の「透明シート1」は、本件発明1の「透明非粘着層」との対比において、「透明層」との限度で一致する。また、甲1発明1の「透明シート1」は、「ポリウレタン」製であるから、樹脂を含むものといえる。さらに、甲1発明1の「ポリウレタンの透明シート1」は、「マーク2を挟んで第1エラストマシート3の上に」「積層」されているから、マーク2が積層された第1エラストマシート3の上に積層されているといえる。
したがって、甲1発明1の「マーク2を挟んで第1エラストマシート3の上に厚さ0.3ミリメートルのポリウレタンの透明シート1を積層」することは、本件発明1の「このマーク層が積層された前記保護層の上に」「透明非粘着層の平均厚みが0.1~0.3mmであり、かつ」「表面の縦横方向に複数の凸部が形成され、かつオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む透明非粘着層」を「積層」することとの対比において、「このマーク層が積層された前記保護層の上に」「樹脂を含む透明層」を「積層」することの限度で一致する。
甲1発明1の「搬送用ベルト」は、本件発明1の「搬送ベルト」に相当する。
以上から、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点A]
「芯体と、この芯体の搬送面に積層され、かつ樹脂成分を含む保護層と、この保護層表面の少なくとも一部の領域に積層された情報を伝達するためのマーク層と、このマーク層が積層された前記保護層の上に積層された樹脂を含む透明層とを含む搬送ベルトであって、
前記マーク層が、前記保護層の一部の領域にインキ組成物で形成されている搬送ベルト。」
[相違点1]
樹脂を含む透明層に関し、本件発明1は、「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む」ものとし、かつ「他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100重量部に対して30質量部以下」であり、さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂」である「透明非粘着層」であり、かつ「平均厚みが0.1~0.3mm」であり、「表面の縦横方向に複数の凸部が形成され」、かつ「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mm」であるのに対し、甲1発明1は、「厚さ0.3ミリメートル」の「ポリウレタンの透明シート1」と特定されるに留まり、非粘着性及び表面の性状について本件発明1のような特定はされていない点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 甲第2号証には、搬送ベルトの搬送面を構成する層について、オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とし、オルガノシロキサン単位のシリコーン変性樹脂全体に対する割合を、搬送物に対する非粘着性と芯体との密着性の観点から、「1~50質量%程度の範囲から選択でき、例えば2~30質量%、好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%(特に6~18質量%)程度」とすることが記載されている(甲第2号証の段落【0026】を参照。)。
ここで、本件発明1は、搬送ベルトの搬送面を構成する層(樹脂を含む透明層)について、「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む」ものとすることにより非粘着性を付与しているものであるところ、甲第1号証には、透明シート1を、オルガノシロキサン単位を含むものとすることによって非粘着性を付与することについては記載も示唆もされていないし、かかる課題(搬送ベルトの搬送面に非粘着性を付与するという課題)が当業者にとって周知の課題であるとの証拠もない。
そうすると、甲1発明1において、甲第2号証の搬送ベルトの搬送面を構成する層について、オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とするという技術的事項を適用する動機付けはないといえる。
さらに、本件発明1において、オルガノシロキサン単位の割合を3~15質量%としたのは、搬送物に対する非粘着性と芯体との密着性の観点からのみならず、マーク層を有する保護層との接合強度を向上させる観点を加味した上で、その上限を15質量%に設定したものと認められる(本件特許明細書の段落【0046】、段落【0124】の【表3】の実施例6と実施例8と他の例(比較例5、実施例2、比較例2)との比較から、実施例6と実施例8のシリコーン含有量が16%ではマーク層に対する接着力が、それぞれ1.9N/mm、1.5N/mmであり、他の例に比べ劣っていることが看取できる。)。
これに対し、甲第2号証に記載の搬送ベルトは、マーク層を有するものではないから、搬送面である非粘着層について、マーク層との接合強度(接着力)を考慮したオルガノシロキサン単位の割合を設定したものではない。
そうしてみると、仮に、甲1発明1において、甲第2号証の搬送ベルトの搬送面を構成する層について、オルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む非粘着層とするという技術的事項を適用したとしても、オルガノシロキサン単位の割合を3~15質量%とする本件発明1の構成に到達することができない。
イ 甲1発明1において、「透明シート1」を「厚さ0.3ミリメートル」としたのは、「マーク2」を鮮明に読み取れる程度に透明であることが必要であることから設定されたものであるといえる(甲第1号証の段落【0015】を参照。)。一方、本件発明1の「透明非粘着層」の「平均厚み」について、本件発明1がマークの視認性の高い搬送ベルトの提供を目的の一つとして、この点を考慮して設定しているものといえる。
このように、透明シートの厚みを決定する要素の一つとしてマークの視認性を考慮しているという点では、甲1発明1の透明シート1の厚さの設定も、本件発明1の透明非粘着層の平均厚みの設定も共通の技術思想に基づくものといえる。
しかしながら、本件発明1においては、透明非粘着層の非粘着性を向上させるために、「表面の縦横方向に複数の凸部が形成され」ているところ、このような表面パターン(凹凸構造)を設けると、干渉模様(モアレ)が発生し、マークの視認性が低下するという課題を見いだし、マークの視認性を高めつつ搬送物の非粘着性を高めるために、「透明非粘着層」を、「平均厚みが0.1~0.3mm」であり、「表面の縦横方向に複数の凸部が形成され」、かつ「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mm」としたものと理解できるが(本件特許明細書の段落【0012】、【0043】及び【0131】を参照。)、甲第1号証には、透明シート1について、搬送物の非粘着性を高めるために表面に凹凸構造を設けるという記載も示唆もなく、このため、表面の凹凸構造によるマークの視認性の低下という課題を甲第1号証に接した当業者が容易に認識し得たということはできない。
一方、甲第2号証には、搬送ベルトの非粘着カバー層の非粘着性を向上させるために、縦横方向に複数の凸部を形成してもよく、しかもかかる凸部について、「平均径は、例えば0.1~10mm、好ましくは0.2~5mm、さらに好ましくは0.3~1mm程度である。隣接する凸部の平均間隔(中央部同士の間隔)は、例えば0.2~15mm、好ましくは0.3~10mm、さらに好ましくは0.5~5mm程度である。凸部の平均高さは、例えば0.01~0.5mm、好ましくは0.03~0.3mm、さらに好ましくは0.05~0.2mm程度」と、本件発明1の「凸部」を包含するものが記載されている。
しかしながら、甲第2号証に記載の搬送ベルトにおいて、非粘着カバー層を、「平均厚みは、例えば0.05~3mm、好ましくは0.1~2mm、さらに好ましくは0.15~1.5mm(特に0.2~1mm)程度」と、比較的厚肉であるものを選択することも可能としつつ、凸部について、「平均径は、例えば0.1~10mm、好ましくは0.2~5mm、さらに好ましくは0.3~1mm程度である。隣接する凸部の平均間隔(中央部同士の間隔)は、例えば0.2~15mm、好ましくは0.3~10mm、さらに好ましくは0.5~5mm程度である。凸部の平均高さは、例えば0.01~0.5mm、好ましくは0.03~0.3mm、さらに好ましくは0.05~0.2mm程度」としたのは、非粘着カバー層の非粘着性とベルトの機械的特性の観点から設定したものであって(甲第2号証の段落【0041】及び【0043】を参照。)、甲第2号証に記載の搬送ベルトはマークを含むものでは無いことからして、マークの視認性を高めつつ搬送物の非粘着性を高めるために設定したものではないといえる。
以上の説示からすれば、甲1発明1の「厚さ0.3ミリメートル」である「透明シート1」について、甲第2号証の非粘着カバー層を応用し、その平均厚みを0.1~0.3mmとし、表面の縦横方向に複数の凸部が形成され、かつ前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mmとすることは、当業者であっても容易になし得ることではない。
ウ そして、本件発明1は、相違点1に係る構成を備えることにより、マークの視認性が高く、かつトレードオフの関係にある、非粘着性と層間密着性(接着性)とを両立できる搬送ベルトを提供することができるという格別の作用効果を奏するものといえる(本件特許の明細書段落【0017】を参照。)。
エ したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件発明2、4~6及び8について
本件発明2、4~6及び8は本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものである。
そうしてみると、本件発明2、4~6及び8と甲1発明1との間には、少なくとも上記2(1)の相違点1が存在することとなる。
したがって、本件発明2、4~6及び8は、上記2(2)と同様の理由により、甲1発明1及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 本件発明10について
(1)対比
本件発明10と甲1発明2とを対比する。
上記2(1)を踏まえると、本件発明10と甲1発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点B]
「芯体と、この芯体の搬送面に積層され、かつ樹脂成分を含む保護層と、この保護層表面の少なくとも一部の領域に積層された情報を伝達するためのマーク層と、このマーク層が積層された前記保護増の上に積層された樹脂を含む透明層とを含む搬送ベルトの製造方法。」
[相違点2]
搬送ベルトの製造方法によって製造される搬送ベルトの樹脂を含む透明層に関し、本件発明10は、「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含むシリコーン変性樹脂を含む」ものとし、かつ「他の樹脂成分の割合が、前記シリコーン変性樹脂100重量部に対して30質量部以下」であり、さらに、「前記保護層の樹脂成分が、前記シリコーン変性樹脂のベース樹脂と同種の樹脂」である「透明非粘着層」であり、かつ「平均厚みが0.1~0.3mm」であり、「表面の縦横方向に複数の凸部が形成され」、かつ「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mm」であるのに対し、甲1発明2は、「厚さ0.3ミリメートル」の「ポリウレタンの透明シート1」と特定されるに留まり、非粘着性及び表面の性状について本件発明10のような特定はされていない点。
[相違点3]
本件発明10は、「芯体前駆体の搬送面に保護層前駆体を積層する保護層形成工程、この保護層前駆体表面の少なくとも一部の領域にマーク層前駆体を積層するマーク層形成工程、前記マーク層前駆体が積層された保護層前駆体の上に透明非粘着層前駆体を積層して搬送ベルト前駆体を得る透明非粘着層形成工程、搬送ベルト前駆体を熱プレスして一体化する熱プレス工程を含む」ものであるのに対し、甲1発明2は、「積層方法は、ロータリプレス法である」点。
(2)判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
相違点2は、相違点1と実質的に同じである。
そうしてみると、上記2(2)と同様の理由により、甲1発明2において、甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて相違点2に係る本件発明10の構成となすことは、当業者であっても容易になし得ることではない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1発明2及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
5 本件発明11について
本件発明11は本件発明10の発明特定事項を全て含みさらに限定するものである。
そうしてみると、本件発明11と甲1発明2との間には、少なくとも上記4(1)の相違点2が存在することとなる。
したがって、本件発明11は、上記4(2)及び2(2)と同様の理由により、甲1発明2及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
6 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和4年5月2日提出の意見書の中で概略次のように主張する。
(1)本件訂正によって追加された「シリコーン変性樹脂」が「3~15質量%のオルガノシロキサン単位を含む」構成について
本構成は、甲第2号証の段落【0026】に記載されており、本構成によって進歩性が得られるものではない(第2頁第15行~第19行)。
しかしながら、本件発明1において、オルガノシロキサン単位の割合を3~15質量%としたのは、搬送物に対する非粘着性と芯体との密着性の観点からのみならず、マーク層を有する保護層との接合強度を向上させる観点を加味した上で、その上限を15質量%に設定したものと認められ、この点は、甲第2号証に記載の事項に基づいても当業者が容易には想到し得ないことは、上記2(2)アで説示のとおりである。
したがって、特許異議申立人の上記意見は採用できない。
(2)本件訂正によって新たに追加された「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mm」である構成について
訂正後の請求項1において、凸部の平面形状は規定されておらず、凸部の平面形状が長方形である場合が含まれるところ、長方形の「平均径」とは何を意味するのか不明であり、訂正後の請求項1は特許を受けようとする発明が不明確である。
また、仮に、凸部の平面形状を円形と解釈しても、甲第2号証の段落【0043】には、凸部の平均径が0.3~1mm程度であること、隣接する凸部の平均間隔が0.5~5mm程度であること、凸部の平均高さが0.05~0.2mm程度であることが記載されているから、請求項1の「前記凸部の平面形状の平均径が0.1~1mmであり、隣接する前記凸部の平均間隔が0.2~5mmであり、前記凸部の平均高さが0.05~0.2mm」である構成は、当業者であればかかる数値を最適化して導き出せる範囲のものにすぎない(第3頁第14行~第27行)。
しかしながら、請求項1の記載において、凸部の平面形状が規定されていなくても、「径」、ないし「径」と認められる程度の差し渡し寸法が判る平面形状を有する凸部であると当業者は認識することが可能であるといえるから、訂正後の請求項1の記載が特許を受けようとする発明が不明確な記載であるということはできない。
また、本件発明1において、凸部の物理的性状については、マークの視認性を高めつつ搬送物の非粘着性を高めるために、本件発明1において規定した透明非粘着層の特定の厚みと相俟って、本件発明1において規定した特定の寸法関係を採用したものであり、かかる点について、甲第2号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到しうる構成ではないことは、上記2(2)イで説示のとおりである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由と同旨)によっては、本件請求項1、2、4~6、8、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1、2、4~6、8、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3、7及び9に係る特許は、上記第2のとおり訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項3、7及び9に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700737