審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2021-700608

インクジェット組成物、収容体、及びインクジェット方法

審判番号
2021-700608
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-168296
登録番号
6808917
請求日
2021年06月30日
審決日
2023年03月29日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】セイコーエプソン株式会社
  • 【権利者代理人】稲葉 良幸
  • 【権利者代理人】赤堀 龍吾
  • 【権利者代理人】遠田 利明
  • 【異議申立人】藤江 桂子
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1651.55 -YAA(C09D) / P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6808917号発明「インクジェット組成物、収容体、及びインクジェット方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6808917号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第6808917号の請求項1、3~5及び7~10に係る特許を維持する。 特許第6808917号の請求項2及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6808917号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成27年8月27日に出願され、令和2年12月14日に特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~10に係る発明の特許に対し、令和3年6月30日に藤江桂子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和3年 9月 8日付け 取消理由通知 同年11月12日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年11月17日付け 訂正請求があった旨の通知 同年12月20日 意見書(特許異議申立人) 令和4年 1月11日付け 訂正拒絶理由通知 同年 2月14日 意見書(特許権者) 同年 2月22日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 4月27日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 5月24日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 6月28日 意見書(特許異議申立人) 同年 8月 9日付け 訂正拒絶理由通知 同年 9月12日 意見書・手続補正書(特許権者) 同年11月 8日付け 取消理由通知(決定の予告) 令和5年 1月 5日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 1月17日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、令和3年11月12日付けの訂正請求による訂正、及び令和4年4月27日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、令和5年1月17日付の訂正請求があった旨の通知に対して、特許異議申立人は指定した期間内に応答しなかった。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年1月5日付けの訂正請求による訂正(以下「第3訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第6808917号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~10からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の「表面処理された金属粉末を含み、 溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物であって、 前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステル、シラノール変性シリコーン、含フッ素シラン化合物、及びアルキルリン酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の表面処理剤で表面処理されており、 前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を0.5質量%以上10質量%以下含み、 前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であり、 前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。」との記載を、 訂正後の請求項1の「表面処理された金属粉末を含み、 溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物であって、 前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理されており、 前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ、 前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含み、 前記母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、 前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であり、 前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。」との記載に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3の「請求項1又は2に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項3の「請求項1に記載の」との記載に改める。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項4の「請求項1又は3に記載の」との記載に改める。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5の「請求項1~4のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項5の「請求項1、3、及び4のいずれか一項に記載の」との記載に改める。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項7の「請求項1~6のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項7の「請求項1、及び3~5のいずれか一項に記載の」との記載に改める。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項8の「請求項1~7のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項8の「請求項1、3~5、及び7のいずれか一項に記載の」との記載に改める。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項9の「請求項1~8のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項9の「請求項1、3~5、7、及び8のいずれか一項に記載の」との記載に改める。 (10)訂正事項10 訂正前の請求項10の「請求項1~8のいずれか一項に記載の」との記載部分を、訂正後の請求項10の「請求項1、3~5、7、及び8のいずれか一項に記載の」との記載に改める。 3.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「含フッ素リン酸エステル、シラノール変性シリコーン、含フッ素シラン化合物、及びアルキルリン酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の表面処理剤」の択一的な選択肢のうち「含フッ素リン酸エステル」以外の選択肢を削除して減縮し、 訂正前の請求項1の「表面処理された金属粉末」について、本件特許明細書の段落0105の「各材料を下記の表1に示す組成で混合し、50℃の温度下で24時間環流させることで十分に攪拌し、表面処理された金属粉末を含む各分散液を得た。」との記載、及び同段落0106の表1の「分散液6」及び「分散液9」が「アルミニウム片」の100質量部に対して「フッ素リン酸エステル」を2.0質量部又は10.0質量部の量で用いていることの記載を根拠に、訂正後の請求項1に「前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ、」という発明特定事項を追加して限定し、 訂正前の請求項1の「表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を0.5質量%以上10質量%以下含み」という数値範囲の下限を、訂正前の請求項2の「前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む」との記載を根拠に、訂正前の「0.5質量%」から訂正後の「2.0質量%」に改めて減縮し、 訂正前の請求項1に記載の「金属粉末の母粒子」について、本件特許明細書の段落0023の「母粒子は…アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されたもの」との記載などを根拠に、訂正後の請求項1に「前記母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、」という発明特定事項を追加して限定するものであるから、 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2~10について 訂正事項2及び6は、訂正前の請求項2及び6を削除して減縮する訂正であり、 訂正事項3~5は、訂正前の請求項3~5の引用記載のうち、請求項2を引用するものを削除して減縮する訂正であり、 訂正事項7~10は、訂正前の請求項7~10の引用記載のうち、請求項2及び6を引用するものを削除して減縮する訂正であるから、 いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項2~10は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~10について、その請求項2~10は直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~10による第3訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正を認める。 第3 本件発明 第3訂正により訂正された請求項1~10に係る発明(以下「本1発明」~「本10発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 表面処理された金属粉末を含み、 溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物であって、 前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理されており、 前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ、 前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含み、 前記母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、 前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であり、 前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記重合性化合物は、ラジカル重合性化合物を含み、 前記放射線硬化型のインクジェット組成物は、ラジカル重合型のインクジェット組成物 である、請求項1に記載の非水系インクジェット組成物。 【請求項4】 前記放射線硬化型のインクジェット組成物は、光照射のエネルギー付与により硬化するインクジェット組成物である、請求項1又は3に記載の非水系インクジェット組成物。 【請求項5】 前記重合性化合物の含有量が、前記放射線硬化型のインクジェット組成物の全量に対し、45質量%以上である、請求項1、3、及び4のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 前記表面処理された金属粉末の平均厚さが、1.0nm以上100.0nm以下であり、かつ、前記表面処理された金属粉末の平均粒子径が、0.1μm以上3.0μm以下である、請求項1、及び3~5のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。 【請求項8】 前記表面処理された金属粉末は、前記インクジェット組成物の総量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下である、請求項1、3~5、及び7のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。 【請求項9】 請求項1、3~5、7、及び8のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物と、前記インクジェット組成物を収容する容器と、を備える、収容体。 【請求項10】 インクジェットヘッドから、請求項1、3~5、7、及び8のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物を吐出する吐出工程を有する、インクジェット方法。」 第4 取消理由通知の概要 令和4年11月8日付けの取消理由通知(以下「第3通知」ともいう。)で通知された取消理由は、次の〔理由1〕並びに〔理由4〕及び〔理由5〕からなるものである。 〔理由1〕令和2年6月3日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 「請求項1に『前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を0.5質量%以上10質量%以下含み』という事項を導入し、請求項2に『前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む』という事項を導入することを含む第3補正による補正が『当業者によって,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとき』に該当するとはいえない。」 よって、本件特許の請求項1~10に係る発明の特許は、同法第113条第1号の規定により取り消されるべきものである。 〔理由4〕本件特許は、その明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 3(2)溶存酸素減少速度の点 3(3)表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量の点 よって、本件特許の請求項1~10に係る発明に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 〔理由5〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 2(3)表面処理剤の量の点 2(4)表面処理剤の種類及び金属粉末の種類の点 2(5)請求項6の「一部が露出」の点 よって、本件特許の請求項1~10に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.理由1(新規事項)について 令和2年6月3日付けの手続補正(以下「第3補正」ともいう。)は、令和2年3月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載を改める補正からなるものであって、その補正前の請求項1に「前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を0.5質量%以上10質量%以下含み」という事項を導入するとともに、同請求項2に「前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む」という事項を導入する補正を含むものである。 しかしながら、上記第2 3(1)に示したように、第3訂正による訂正によって、本件特許の設定登録時の請求項2は削除され、 第3訂正による訂正後の請求項1の「表面処理された金属粉末」を基準にした表面処理剤の量の数値範囲は、訂正前の「0.5質量%以上10質量%以下」から、訂正後の「2.0質量%以上10質量%以下」に減縮されるとともに、 訂正後の請求項1に「前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ、」という発明特定事項が追加された。 すなわち、第3訂正による訂正後の請求項1に係る発明は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」ともいう。)の段落0105~0106に記載された分散液6~9の具体例の調製で採用された特定の条件(50℃で、24時間加熱)で金属粉末を表面処理する場合のもののみに限定されるところとなった。 してみると、第3補正による補正によって請求項1の記載に導入された「表面処理された金属粉末」を基準にした「表面処理剤の量」の数値範囲については、当初明細書等に直接的ないし明示的な記載はないものの、第3訂正による訂正後の請求項1に記載された発明が、当初明細書等の表1の分散液6~9のものを使用した、表3の実施例8~11の具体例の「分散液」を基準にした「表面処理剤の量」の値を満たすもののみに限定されたことにより、当初明細書等の具体例の記載から「一義的に定まる値のもののみ」に限定されているといえるので、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であって、新たな技術的事項を導入しないものであるといえる。 したがって、本件特許の請求項1、3~5及び7~10に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしたものに該当せず、上記〔理由1〕に理由はない。 2.理由5(サポート要件)について (1)「2(3)表面処理剤の量の点」について 上記〔理由5〕で2(3)の記載不備として指摘した点は、具体的には、請求項1において「前記表面処理された金属粉末は、該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%~10質量%含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ、」としたもの(本件特許明細書の表1の分散液6、7、8及び9のものを使用した、表3の実施例8~11に対応するもの)以外は、サポート要件を満たさないというものである。 しかして、第3訂正による訂正後の請求項1の記載は、本件特許明細書の具体例の調製で採用された特定の条件(50℃で、24時間加熱)で金属粉末を表面処理する場合の「分散液」を基準にした「表面処理剤の量」の値を満たすもののみに限定されたので、当該2(3)の点に理由はない。 (2)「2(4)表面処理剤の種類及び金属粉末の種類の点」について 上記〔理由5〕で2(4)の記載不備として指摘した点は、具体的には、請求項1の「表面処理剤」及び「金属粉末」の広範な範囲について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「試験結果」と「作用機序」の記載によっては、出願時の技術常識を参酌しても、表面処理剤の種類が「含フッ素リン酸エステル」以外の場合や、金属の種類が「アルミニウム又はアルミニウム合金」以外の場合は、サポート要件を満たさないというものである。 しかして、第3訂正による訂正後の請求項1の記載は、表面処理剤の種類が「含フッ素リン酸エステル」に限定され、金属粉末の金属の種類が「アルミニウム又はアルミニウム合金」に限定されたので、当該2(4)の点に理由はない。 (3)「2(5)請求項6の点」について 上記〔理由5〕の2(5)の記載不備として指摘した点は、具体的には、請求項6に記載の「金属粉末の表面の一部が露出している」という発明について、本件特許明細書の具体例で確認がなされておらず、サポート要件を満たさないというものであるところ、第3訂正により訂正前の請求項6が削除されたので、当該2(5)の点に理由はない。 (4)〔理由5〕のまとめ 以上のとおりであるから、第3訂正による訂正後の請求項1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~5及び7~10に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないものに該当せず、上記〔理由5〕に理由はない。 3.理由4(実施可能要件)について (1)「3(2)溶存酸素減少速度の点」について 上記〔理由4〕の3(2)の記載不備として指摘した点は、具体的には、請求項1の「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である」という「機能・特性等」を発明特定事項とする発明について、本件特許明細書の具体的に製造方法が記載された物以外については、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、どのように作るか理解できないので、実施可能要件を満たさないというものである。 しかして、第3訂正による訂正後の請求項1に係る発明は、実施例8~11の具体例で用いられた「特定の金属粉末」と「特定の表面処理剤」を用いて「特定の条件」にて得られるものに限定されたので、当該3(2)の点に理由はない。 (2)「3(3)表面処理剤の量の点」について 上記〔理由4〕の3(3)の記載不備として指摘した点は、具体的には、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、表面処理された金属粉末を基準とした表面処理剤の量を「定量的に決定するための試験方法又は測定方法」を示す記載がないので、実施可能要件と満たさないというものである。 しかして、第3訂正による訂正後の請求項1に係る発明は、実施例8~11の具体例の調製で採用された特定の条件(50℃で、24時間加熱)で金属粉末を表面処理する場合の「分散液」を基準にした「表面処理剤の量」の値を満たすもののみに限定され、表面処理された金属粉末を基準とした表面処理剤の量の値が一義的に定まるといえるので、当該3(3)の点に理由はない。 (3)〔理由4〕のまとめ 以上のとおりであるから、第3訂正による訂正後の請求項1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~5及び7~10に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないものに該当せず、上記〔理由4〕に理由はない。 4.第3通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立人が提示した甲第1~7号証の一覧 甲第1号証:特開2011-137083号公報 甲第2号証:特開2014-141587号公報 甲第3-1号証:URL:https://www.toyal.co.jp/products/pw_pt/product/non_leafing.html 甲第3-2号証:URL:https://www.toyal.co.jp/products/pw_pt/index.html 甲第4号証:特開2012-77221号公報 甲第5号証:特開2012-184300号公報 甲第6号証:特開2014-114406号公報 甲第7号証:特開2012-172090号公報 (2)申立理由1及び申立理由2について ア 申立理由の概要 特許異議申立人が主張する申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、本件特許発明1~10は、甲1から新規性又は進歩性がないか、少なくとも甲1及び甲7から進歩性がないというものである(申立書の第46頁)。 イ 甲1発明 甲第1号証の請求項1及び4並びに段落0106~0108の「実施例1」の記載からみて、甲第1号証には『金属粒子(市販のアルミニウム粒子)40g(アルミニウム分として30g)を加えたスラリーにTEOS(テトラエトキシシラン)40gをIPA(イソプロピルアルコール)40gに溶解したものを徐々に滴下し、75℃で2時間攪拌混合することにより得られた、下地層を有する金属粒子の表面を非晶質シリカで被覆した粉末状の金属顔料(アルミニウム顔料)であって、金属粒子(アルミニウム粒子)100質量部に対して、珪素の含有量が15.7質量部である金属顔料を用いて調製したUVメタリック塗料組成物。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 対比 本1発明と甲1発明とを対比すると、両者は『表面処理された金属粉末を含み、前記金属粉末の母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される、組成物。』という点において一致し、次の(1α)~(1ζ)の6つの点において相違する。 (1α)本1発明は「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物」に関するものであるのに対して、甲1発明は「溶存酸素減少速度」が不明の「UVメタリック塗料組成物」に関するものである点 (1β)表面処理された金属粉末が、本1発明は「含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理」されているのに対して、甲1発明は「非晶質シリカで被覆」したものである点 (1γ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ」ているのに対して、甲1発明は、アルミニウム分30gに対して、テトラエトキシシラン40gを含む溶液を滴下したものであって、溶液の中に含まれる表面処理剤の量が「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の40÷30×100=133.3重量%であり、その際の「温度」及び「加熱時間」の条件が「50℃で、24時間」と異なる「75℃で2時間」である点 (1δ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含」むのに対して、甲1発明は「金属粒子(アルミニウム粒子)100質量部に対して、珪素の含有量が15.7質量部」の量で含むものであって、母粒子の質量基準での配合量が「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の15.7質量%である点 (1ε)表面処理された金属粉末の形状が、本1発明は「鱗片状」であるのに対して、甲1発明は「粉末状」である点 (1ζ)組成物が、本1発明は「重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物」であるのに対して、甲1発明は「UVメタリック塗料組成物」である点 エ 判断 事案に鑑み、先ず、上記(1γ)の相違点について検討する。 甲第1~7号証には、本1発明の「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱する」という表面処理の特定の条件に合致する条件(温度、加熱時間、及び分散液中の表面処理剤の濃度)について、示唆を含めて記載がない。 そして、本1発明は、本件特許明細書の段落0105~0106及び0110に記載された分散液6~9を用いた実施例8~11の具体例の試験結果にあるように、金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下の組成で混合し、50℃の温度下で24時間環流させることで得られた分散液を用いることにより、その表3に記載されるとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(1γ)の相違点は、技術的に意味のある実質的な相違点を構成するものであって、この相違点は、甲第1~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても導き出し得るものではない。 さらに、第3訂正による訂正によって本1発明の発明特定事項として盛り込まれた「50℃で、24時間加熱」という特定の条件の発明特定事項に対して、特許異議申立人は何ら主張ないし立証をしていない。 したがって、上記(1α)~(1β)及び(1δ)~(1ζ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明並びにこれを直接又は間接的に引用する本3~本5及び本7~本10発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第1~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立理由1及び2に理由はない。 (3)申立理由3及び申立理由4について ア 申立理由の概要 特許異議申立人が主張する申立理由3(新規性)及び申立理由4(進歩性)は、本件特許発明1~10は、甲2から新規性又は進歩性がないか、少なくとも甲2及び甲7から進歩性がないというものである(申立書の第46~47頁)。 イ 甲2発明 甲第2号証の請求項1及び段落0083~0085の「実施例1」の記載からみて、甲第2号証には『鱗片状のAl製の粒子(母粒子となるべき粒子)の分散液に、フッ素系リン酸エステルを1.0重量%となるように投入し、45℃で120分攪拌することにより表面処理を行ったアルミニウム顔料に、重合性化合物(γ-ブチロラクトンアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート)を加えてなる、アルミニウム顔料の含有量が3.7質量%、リン酸化合物の含有量が0.02質量%以下の、紫外線硬化型インクジェット用組成物。』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 対比 本1発明と甲2発明とを対比すると、両者は『表面処理された金属粉末を含み、前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理されており、前記母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であり、前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。』という点において一致し、次の(2α)~(2γ)の3つの点において相違する。 (2α)本1発明は「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物」に関するものであるのに対して、甲2発明は「溶存酸素減少速度」が不明の「紫外線硬化型インクジェット用組成物」に関するものである点 (2β)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ」ているのに対して、甲2発明は「鱗片状のAl製の粒子(母粒子となるべき粒子)の分散液に、フッ素系リン酸エステルを1.0重量%となるように投入して表面処理を行った」ものであって、分散液の中に含まれる表面処理剤の量が「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の「1.0重量%」であり、その際の「温度」及び「加熱時間」の条件が「50℃で、24時間」と異なる「45℃で120分」である点 (2γ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含」むのに対して、甲1発明は「アルミニウム顔料の含有量が3.7質量%、リン酸化合物の含有量が0.02質量%以下」であって、母粒子の質量基準での配合量が「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の0.02÷3.7×100=0.54質量%以下である点 エ 判断 事案に鑑み、先ず、上記(2β)の相違点について検討する。 (2)ウに示したように、甲第1~7号証には、本1発明の表面処理の特定の条件(温度、加熱時間、及び分散液中の表面処理剤の濃度)について示唆を含めて記載がなく、本件特許明細書の実施例8~11の具体例の試験結果にあるように、この特定の条件を具備することで、その表3に記載されるとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(2β)の相違点は、技術的に意味のある実質的な相違点を構成するものであって、この相違点は、甲第1~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても導き出し得るものではない。 さらに、第3訂正による訂正によって本1発明の発明特定事項として盛り込まれた「50℃で、24時間加熱」という特定の条件の発明特定事項に対して、特許異議申立人は何ら主張ないし立証をしていない。 したがって、上記(2α)及び(2γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明並びにこれを直接又は間接的に引用する本3~本5及び本7~本10発明は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲2発明及び甲第1~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立理由3及び4に理由はない。 (4)申立理由5及び申立理由6について ア 申立理由の概要 特許異議申立人が主張する申立理由5(新規性)及び申立理由6(進歩性)は、本件特許発明1~10は、甲4から新規性又は進歩性がないか、少なくとも甲4及び甲7から進歩性がないというものである(申立書の第47頁)。 イ 甲4発明 甲第4号証の請求項1及び段落0143~0157の「実施例1」の記載からみて、甲第4号証には『5質量%のアルミニウム粒子分散液100gに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.25当量と、トリメトキシメチルシラン1.25当量との混合物に対して、水1当量を添加してなる添加剤の全量を添加して、3日間室温で攪拌することにより、アルミニウム粒子の表面に被覆が形成された平均粒子径1.9μm、厚みが20nmのアルミニウム顔料(A)の分散液を得て、さらに洗浄工程を経て得られたアルミニウム顔料分散液1(固形分10質量%)15.0質量、アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル44.6質量%、フェノキシエチルアクリレート30.0質量%、光重合開始剤10.0質量%、レベリング剤0.2質量%、及び重合禁止剤0.2質量%からなる紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。』についての発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 対比 本1発明と甲4発明とを対比すると、両者は『表面処理された金属粉末を含む水系インクジェット組成物であって、前記金属粉末の母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。』という点において一致し、次の(4a)~(4ε)の5つの点で相違する。 (4α)本1発明は「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物」に関するものであるのに対して、甲4発明は「溶存酸素減少速度」が不明の「紫外線硬化型インクジェット用インク組成物」に関するものである点 (4β)表面処理された金属粉末が、本1発明は「含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理」されているのに対して、甲4発明は「3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」と「トリメトキシメチルシラン」とを含む処理液で表面を「被覆」したものである点 (4γ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ」ているのに対して、甲4発明は「5質量%のアルミニウム粒子分散液100gに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.25当量と、トリメトキシメチルシラン1.25当量との混合物に対して、水1当量を添加してなる添加剤の全量を添加して、3日間室温で攪拌することにより、アルミニウム粒子の表面に被覆」を形成しているものであって、アルミニウム粒子の質量(100質量%)に対する「添加剤の全量」の値(質量)が不明であり、その際の「温度」及び「加熱時間」の条件が「50℃で、24時間」と異なる「室温3日間」である点 (4δ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含」むのに対して、甲4発明は「アルミニウム粒子の表面に被覆」された「3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」と「トリメトキシメチルシラン」の量が不明な点 (4ε)表面処理された金属粉末の形状が、本1発明は「鱗片状」であるのに対して、甲4発明は「平均粒子径1.9μm、厚みが20nm」の平板状粒子である点 エ 判断 事案に鑑み、先ず、上記(4γ)の相違点について検討する。 (2)ウに示したように、甲第1~7号証には、本1発明の表面処理の特定の条件(温度、加熱時間、及び分散液中の表面処理剤の濃度)について示唆を含めて記載がなく、本件特許明細書の実施例8~11の具体例の試験結果にあるように、この特定の条件を具備することで、その表3に記載されるとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(4γ)の相違点は、技術的に意味のある実質的な相違点を構成するものであって、この相違点は、甲第1~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても導き出し得るものではない。 さらに、第3訂正による訂正によって本1発明の発明特定事項として盛り込まれた「50℃で、24時間加熱」という特定の条件の発明特定事項に対して、特許異議申立人は何ら主張ないし立証をしていない。 したがって、上記(4α)~(4β)及び(4δ)~(4ε)の相違点について検討するまでもなく、本1発明並びにこれを直接又は間接的に引用する本3~本5及び本7~本10発明は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲4発明及び甲第1~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立理由5及び6に理由はない。 (5)申立理由7及び申立理由8について ア 申立理由の概要 特許異議申立人が主張する申立理由7(新規性)及び申立理由8(進歩性)は、本件特許発明1~10は、甲6から新規性又は進歩性がないか、少なくとも甲6及び甲7から進歩性がないというものである(申立書の第47頁)。 イ 甲6発明 甲第6号証の請求項1及び段落0103~0138の「実施例1」の記載からみて、甲第6号証には『鱗片状のAl製の粒子(母粒子となるべき粒子)分散液に、フッ素系リン酸エステルとしてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2〕が1質量%となるように投入し、45℃で120分間攪拌することにより表面処理を行い、濾別・乾燥することにより得た金属粉末を、エタノール、重合性化合物、光重合開始剤、および、下記式(6)で表される化学構造を有する物質Aと混合することにより得られた紫外線硬化型インクジェット用組成物。 [図:0001398212000001.jpg] 』についての発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 対比 本1発明と甲6発明とを対比すると、両者は『表面処理された金属粉末を含み、前記表面処理された金属粉末は、含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理されており、前記母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、前記表面処理された金属粉末の形状が、鱗片状であり、前記非水系インクジェット組成物は、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。』という点において一致し、次の(6α)~(6γ)の3つの点において相違する。 (6α)本1発明は「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物」に関するものであるのに対して、甲6発明は「溶存酸素減少速度」が不明の「紫外線硬化型インクジェット用組成物」に関するものである点 (6β)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ」ているのに対して、甲6発明は「鱗片状のAl製の粒子(母粒子となるべき粒子)分散液に、フッ素系リン酸エステルとしてのCF3(CF2)5(CH2)2O(P)(OH)2〕が1質量%となるように投入し、45℃で120分間攪拌することにより表面処理」を行ったものであって、分散液の中に含まれる表面処理剤の量が「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の「1質量%」であり、その際の「温度」及び「加熱時間」の条件が「50℃で、24時間」と異なる「45℃で120分間」である点 (6γ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含」むのに対して、甲6発明は「母粒子となるべき粒子」に対する「フッ素系リン酸エステル」の被覆量が不明であるものの、少なくとも「2.0質量%以上10質量%以下」の範囲外の最大でも「1質量%」までの量である点 エ 判断 事案に鑑み、先ず、上記(6β)の相違点について検討する。 (2)ウに示したように、甲第1~7号証には、本1発明の表面処理の特定の条件(温度、加熱時間、及び分散液中の表面処理剤の濃度)について示唆を含めて記載がなく、本件特許明細書の実施例8~11の具体例の試験結果にあるように、この特定の条件を具備することで、その表3に記載されるとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(6β)の相違点は、技術的に意味のある実質的な相違点を構成するものであって、この相違点は、甲第1~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても導き出し得るものではない。 さらに、第3訂正による訂正によって本1発明の発明特定事項として盛り込まれた「50℃で、24時間加熱」という特定の条件の発明特定事項に対して、特許異議申立人は何ら主張ないし立証をしていない。 したがって、上記(6α)及び(6γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明並びにこれを直接又は間接的に引用する本3~本5及び本7~本10発明は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲6発明及び甲第1~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立理由7及び8に理由はない。 (6)申立理由9及び申立理由10について ア 申立理由の概要 特許異議申立人が主張する申立理由9(新規性)及び申立理由10(進歩性)は、本件特許発明1~10は、甲7から新規性又は進歩性がないか、少なくとも進歩性がないというものである(申立書の第47頁)。 イ 甲7発明 甲第7号証の請求項1及び段落0053~0060の「実施例1」の記載からみて、甲第7号証には『インクジェット方式の液滴吐出に供される光硬化型インクであって、鱗片状に加工した平板状アルミニウム粒子(平均粒径D50:0.8μm)と、重合性化合物と、を含み、25℃、1気圧において、飽和溶存酸素濃度(280ppm)を1としたとき、溶存酸素濃度が0.20である光硬化型インク。』についての発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 対比 本1発明と甲7発明とを対比すると、両者は『金属粉末の母粒子が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、金属粉末の形状が、鱗片状であり、重合性化合物を含む放射線硬化型のインクジェット組成物である、非水系インクジェット組成物。』という点において一致し、次の(7α)~(7ε)の5つの点において相違する。 (7α)本1発明は「溶存酸素減少速度が、25℃及び1.0atmの環境下において、2.0kPa/h以上20.0kPa/h以下である、非水系インクジェット組成物」に関するものであるのに対して、甲7発明は、時間当たりの「kPa/h」という単位系で表される「溶存酸素減少速度」が不明の「インクジェット方式の液滴吐出に供される光硬化型インク」に関するものである点 (7β)本1発明は「表面処理された金属粉末」を含むのに対して、甲7発明は「平板状アルミニウム粒子」が表面処理されていない点 (7γ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「含フッ素リン酸エステルである表面処理剤で表面処理」されているのに対して、甲7発明は「平板状アルミニウム粒子」が表面処理されていない点 (7δ)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量(100質量%)に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含む分散液を、50℃で、24時間加熱することで得られ」ているのに対して、甲7発明は「平板状アルミニウム粒子」が表面処理されていない点 (7ε)表面処理された金属粉末が、本1発明は「該金属粉末の母粒子の質量に対して、前記表面処理剤を2.0質量%以上10質量%以下含」むのに対して、甲7発明は「平板状アルミニウム粒子」が表面処理されていない点 エ 判断 事案に鑑み、先ず、上記(7δ)の相違点について検討する。 (2)ウに示したように、甲第1~7号証には、本1発明の表面処理の特定の条件(温度、加熱時間、及び分散液中の表面処理剤の濃度)について示唆を含めて記載がなく、本件特許明細書の実施例8~11の具体例の試験結果にあるように、この特定の条件を具備することで、その表3に記載されるとおりの効果を奏するに至ったものといえるから、上記(7δ)の相違点は、技術的に意味のある実質的な相違点を構成するものであって、この相違点は、甲第1~7号証に記載の技術事項をどのように組み合わせても導き出し得るものではない。 さらに、第3訂正による訂正によって本1発明の発明特定事項として盛り込まれた「50℃で、24時間加熱」という特定の条件の発明特定事項に対して、特許異議申立人は何ら主張ないし立証をしていない。 したがって、上記(7α)~(7γ)及び(7ε)の相違点について検討するまでもなく、本1発明並びにこれを直接又は間接的に引用する本3~本5及び本7~本10発明は、甲第7号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲7発明及び甲第1~7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないので、申立理由9及び10に理由はない。 (7)申立理由11について 特許異議申立人が主張する申立理由11(実施可能要件)は、発明の詳細な説明には、溶存酸素減少速度を所定範囲にする条件が明確に記載されておらず、実施例には、表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量が記載されていないので、本件特許発明1~10は、特許法第36条第4項第1号の要件を具備しないというものである(申立書の第45頁)。 そして、上記第4の〔理由4〕の「3(2)溶存酸素減少速度の点」及び「3(3)表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量の点」において、申立理由11は採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 (8)申立理由12について 特許異議申立人が主張する申立理由12(サポート要件)は、発明の詳細な説明には、金属粉末の表面処理の条件をどのようにすれば、溶存酸素減少速度が本1発明の構成要件の範囲になるのか記載されていないので、本件特許発明1~10は、特許法第36条第6項第1号の要件を具備しないというものである(申立書の第45頁)。 しかしながら、そもそも特許異議申立人が主張する記載不備の根拠(金属粉末の表面処理の条件をどのようにすれば溶存酸素減少速度が本1発明の構成要件の範囲になるのか)は、サポート要件の適否(特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か)に関係がない。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その段落0006から把握される『金属粉末を含むインク組成物を用いた場合においても、吐出安定性及び保存安定性に優れる、インク組成物、そのインク組成物を収容する収容体、及びそのインク組成物を用いるインクジェット方法の提供』という本1~本10発明の課題について、同段落0105~0106及び0110には、本1発明の発明特定事項の全てを満たす分散液6~9を用いた実施例8~11(溶存酸素減少速度が2.0kPa/h以上20kPa/h以下の範囲のもの)が、当該課題を解決できると認識できる範囲にあることが、具体的な試験結果によって裏付けられているので、本件特許の請求項1の記載が、サポート要件を満たさないとはいえない。 したがって、特許異議申立人が主張する記載不備の点によっては、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえないので、申立理由12(サポート要件)に理由があるとはいえない。 (9)申立理由13(明確性要件)について 特許異議申立人が主張する申立理由13(明確性要件)は、発明の詳細な説明には、金属粉末の表面処理の条件をどのようにすれば、溶存酸素減少速度が本1発明の構成要件の範囲になるのか記載されておらず、また、明細書等には、表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量を測定する方法が記載されていないので、本件特許発明1~10は、特許法第36条第6項第2号の要件を具備しないというものである(申立書の第45頁)。 しかしながら、そもそも特許異議申立人が主張する記載不備の根拠(溶存酸素減少速度を本1発明の範囲にするための金属粉末の表面処理の条件の点や、表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量の測定方法の点)は、明確性要件の適否(特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否か)に関係がない。 そして、上記3.(1)に示したように、本1発明は、実施例8~11の具体例で用いられた「特定の金属粉末」と「特定の表面処理剤」を用いて「特定の条件」にて得られるものに限定されているので、その「金属粉末の表面処理の条件」が不明確であるとはいえない。 また、上記3.(2)に示したように、本1発明は、実施例8~11の具体例の調製で採用された特定の条件(50℃で、24時間加熱)で金属粉末を表面処理する場合のもののみに限定され、表面処理された金属粉末を基準とした表面処理剤の量の値が一義的に定まるといえるので、その「表面処理剤の量の測定方法」を発明特定事項として請求項1の記載に盛り込まずとも、特許請求の範囲の記載は明確である。 したがって、特許異議申立人が主張する記載不備の点によっては、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえないので、申立理由13(明確性要件)に理由があるとはいえない。 (10)申立理由14について 特許異議申立人が主張する申立理由14(新規事項を追加する補正)は、願書に最初に添付した明細書等の記載を参酌しても「表面処理された金属粉末に含まれる表面処理剤の量」は記載されていないので、第3補正による補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を具備しないというものである(申立書の第46頁)。 そして、上記第4の〔理由1〕において、申立理由14は採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1、本3~本5及び本7~本10発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本1、本3~本5及び本7~本10発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正前の請求項2及び6は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項2及び6に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700608

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決341件(セイコーエプソン株式会社、藤江 桂子)
  • 2019-700199異議申立 / 2019-11-01 / 訂正認容インクセット及びそれを用いた記録方法
    同じ当事者: セイコーエプソン株式会社、藤江 桂子
  • 2018-700667異議申立 / 2019-05-15 / 訂正認容紫外線硬化型インクジェット組成物及び収容体
    同じ当事者: セイコーエプソン株式会社、藤江 桂子
  • 2025-700874異議申立 / 2026-06-18 / 訂正認容アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置
    同じ当事者: 藤江 桂子
  • 2025-700485異議申立 / 2026-06-05 / 訂正認容金属基板およびこれを用いた蒸着用マスク
    同じ当事者: 藤江 桂子
  • 2025-700827異議申立 / 2026-05-11 / 訂正認容水洗大便器
    同じ当事者: 藤江 桂子
同じ論点・分野の審決(審決分類)517件(113・C09D、121・C09D、536・C09D ほか)
  • 2021-700653異議申立 / 2023-10-03 / 訂正認容紫外線硬化型コーティング剤
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D ほか1件
  • 2019-700146異議申立 / 2020-06-03 / 訂正認容樹脂成形体用プライマー
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D ほか1件
  • 2023-020432拒絶査定不服審判 / 2026-01-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)厚さ制限エレクトロスプレーデポジション
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D ほか1件
  • 2022-001798拒絶査定不服審判 / 2023-12-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)インクジェットプリント鋼板用インク組成物、それを用いたインクジェットプリント鋼板…
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D ほか1件
  • 2021-002829拒絶査定不服審判 / 2023-02-01 / 請求不成立ポリビニルアルコール及びエチレンビニルアルコール共重合体バリアコーティング
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D ほか1件

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存