特許異議申立
2021-700585
成分含有量測定装置
- 審判番号
- 2021-700585
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-025833外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6817239
- 請求日
- 2021年06月21日
- 審決日
- 2022年04月25日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(G01N) / P1651.537-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6817239号発明「成分含有量測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6817239号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6817239号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第6817239号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年2月16日に出願され、令和2年12月28日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月20日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
・令和3年6月21日 :特許異議申立人 平賀博(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
・令和3年10月29日付け:取消理由通知書(これによる取消理由通知を、以下「本件取消理由通知」という。)
・同年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)
・令和4年2月3日 :申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2.本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものである。
その内容は、以下の訂正事項1のとおりであるところ、訂正前の請求項2~5は請求項1を直接的又は間接的に引用するもので、請求項1~5は一群の請求項であり、以下の訂正事項1は、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正前請求項1」という。他の請求項についても同様。)について、
「 一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部と、
前記測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、
前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部と、を備え、
前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出することを特徴とする成分含有量測定装置。」
と記載されているのを、
「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して同時に近赤外線を照射する照射部と、
前記複数の測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、
前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部と、を備え、
前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出することを特徴とする成分含有量測定装置。」に訂正する(下線は当該訂正による変更箇所を示す。)。
2 訂正の目的の適否
(1)訂正事項1-1
訂正事項1は、訂正前請求項1の「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部と、」なる記載を「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して同時に近赤外線を照射する照射部と、」と訂正する訂正事項(以下「訂正事項1-1」という。)を含む。
該訂正事項1-1は、訂正前請求項1が含む、「照射部」による「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射」するという機能について、それが複数の測定対象物に対し「同時」に行われることを限定するものである。
よって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)訂正事項1-2
訂正事項1は、訂正前請求項1の2箇所に記載された「前記測定対象物」なる記載について、それぞれ「前記複数の測定対象物」と訂正する訂正事項(以下「訂正事項1-2」という。)を含む。
該訂正事項1-2は、訂正前請求項において前記2箇所の「前記測定対象物」が、これらに先行して記載される「複数の測定対象物」を指すか明確でなかったため、それらが該先行して記載される「複数の測定対象物」を指すことを明確化させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(3)訂正事項1-3
訂正事項1は、訂正前請求項1の「前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさ」について、訂正前請求項1では「前記測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさ」としていたものを、「前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさ」とする訂正事項(以下「訂正事項1-3」という。)を含む。
訂正事項1-3のうち、「前記測定対象物」を「前記複数の測定対象物」とする訂正については、上記訂正事項1-2に該当し、上記(2)で説示したとおりである。
訂正事項1-3のうち、「前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」することを追加した点は、訂正前請求項1が含む「測定対象物が前記視野領域内を通過する間に」為される事象について、付加的に特定事項を追加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項1-3のうち、「異なる領域の」を追加した点は、訂正前請求項1が含む、「測定対象物から前記反射光を複数回取得する」という事象について、その「複数回取得」される「測定対象物からの反射光」が(測定対象物の)「異なる領域」のものであることについて限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(4)小括
以上(1)~(3)のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
3 訂正についての新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1-1について
本件特許明細書【0012】には「照明部11は、錠剤搬送部2aに収容された複数の錠剤Mに対して同時に近赤外線を照射可能な位置に配置される。」との記載があり、訂正事項1-1により限定された事項は、当該本件特許明細書の記載により裏付けられる。よって、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1-1が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(2)訂正事項1-2について
本件特許明細書の【0012】には「分光カメラ12は、矩形状の長尺の視野領域ARを有し、視野領域ARの長手方向と錠剤搬送部2aの搬送方向とが斜めに交差し、且つ錠剤搬送部2a上の複数の錠剤Mを視野領域AR内に含む位置に配置される。例えば、図1中に示すように、視野領域AR内に錠剤搬送部2a上の7個の錠剤Mを含むとき、視野領域ARの一端側の錠剤M1は搬送方向左端側のみが視野領域AR内に含まれ、視野領域ARの他端側の錠剤M2は搬送方向右端側のみが視野領域AR内に含まれるようになっている。」と記載され、同【0015】には「続いて時点t3に示すように、錠剤M1からM3が視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1、M2については、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側にずれるため、錠剤M1、M2上の時点t2での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤M3については、搬送方向左端の一部の領域のみが撮影される。」と記載されている。
該記載から、訂正前請求項1の「撮影部」に該当する「分光カメラ」が、その視野領域内を搬送されてゆく複数の錠剤Mが同時に視野領域内に含まれ、それら各錠剤の「異なる領域」が同時に撮影されるとの技術事項を読み取ることができ、該技術事項は、訂正事項1-2によって限定・追加された事項を裏付けるものである。
よって、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1-2が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)訂正事項1-3について
本件特許明細書の【0005】には「測定対象物で反射された近赤外線の反射光を取得し、反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部」との記載がある。
また、同【0014】~【0015】には、
「【0014】
図3は、錠剤M上の、分光カメラ12による撮影領域を説明するための説明図である。
図1に示すように、視野領域ARは、搬送方向に沿って並ぶ複数の錠剤Mの列に対して斜めに交差する。
そのため、図3の時点t1に示すように錠剤M1のみが視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1のうち視野領域ARに含まれる領域のみが撮影される。つまり、錠剤M1のうち視野領域ARと重なる搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
続いて時点t2に示すように、錠剤M1及びM2が視野領域ARに含まれる状態では、視野領域ARが、その長手方向と、錠剤Mの搬送方向とが交差するように配置されているため、錠剤M1については、視野領域ARに含まれる領域つまり撮影領域が、時点t1における撮影領域とは異なり、時点t1における撮影領域よりも搬送方向右側に移動する。
錠剤M2については、視野領域ARに含まれる、搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
【0015】
続いて時点t3に示すように、錠剤M1からM3が視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1、M2については、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側にずれるため、錠剤M1、M2上の時点t2での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤M3については、搬送方向左端の一部の領域のみが撮影される。
以後、同様に、時点t4~t7に示すように、錠剤M1からM7のいずれかが視野領域ARに含まれる状態では、各時点で、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側に順にずれて、錠剤M上の、一つ前の時点での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤については搬送方向左端側の領域のみが撮影される。」
との記載があり、この記載で参照される図3と合わせ、少なくともM1~M3の3つの錠剤が同時に視野領域内に含まれる形で時点t3~t7にかけて順次搬送され、その間、視野領域からの反射光が各時点において撮影され、個々の錠剤について、各時点で撮影される撮影領域は相互に異なっているとの技術事項を読み取ることができる。この技術事項は訂正事項1-3により訂正前請求項1に付加・限定された事項を裏付けるものである。
よって、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1-3が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
4 中括
以上、上記2~3のとおりであるから本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」~「訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5(以下、それぞれ「訂正請求項1」~「訂正請求項5」という。)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ここで、各構成単位冒頭の「A」などは当審で付した分説番号であり、以下、該各構成単位について該分説番号により「構成A」などという。以下、引用発明についても同様。
「【請求項1】
A 一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して同時に近赤外線を照射する照射部と、
B 前記複数の測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、
C 前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部と、を備え、
D 前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
E 前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
F 前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出することを特徴とする
G 成分含有量測定装置。
【請求項2】
2A 前記測定対象物は前記一の方向に沿って一列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成分含有量測定装置。
【請求項3】
3A 前記測定対象物は錠剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成分含有量測定装置。
【請求項4】
4A 前記複数の測定対象物を前記一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送する搬送機を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成分含有量測定装置。
【請求項5】
5A 前記搬送機は、前記複数の測定対象物を保持する保持部を備え、
5B 前記保持部は、前記複数の測定対象物を一定の姿勢に保持することを特徴とする請求項4に記載の成分含有量測定装置。」
第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前請求項1~5に係る特許に対して、本件取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項1には、
「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」
と記載されているが、当該記載だけでは様々な態様が想定され、例えば申立人が特許異議申立書第21頁の参考図2で示したとおりの、視野領域が測定対象物に比べて大幅に小さいような極端な態様も含み得る。
このような態様を含むとすると、当該きわめて小さい視野領域では、単に
「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」
だけでは、充分に測定対象物全体の状況を把握しきれないので、本件発明における、一つの錠剤中において成分分布にばらつきが生じている場合に錠剤全体の成分含有量の測定精度が低下するという未解決の問題に着目して、成分含有量の測定精度をより向上させるという本件発明の課題を解決できない。
よって、請求項1に係る発明は、課題を解決できると認識できる範囲を超えていることになることから、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえない。
(2)取消理由2(進歩性)
ア 訂正前請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「訂正前発明1」~「訂正前発明5」という。)は、下記引用文献1~4に記載された発明それぞれ、及び引用文献5・6に記載された技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1-5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 引用文献等一覧
1.特開2017-133953号公報(甲第1号証)
2.特開2007-192751号公報(甲第2号証)
3.国際公開第2015/136620号(甲第3号証)
4.国際公開第2013/002291号(甲第4号証)
5.特開2007-17319号公報(当審が追加した文献)
6.特開2016-217989号公報(当審が追加した文献)
2 取消理由1についての当審の判断
(1)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の方法の成分含有量の測定方法にあっては、錠剤上の測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定している。
ここで、錠剤中の各成分は均一に混合されてはいるものの、成分分布にはある程度のばらつきがある。特に主薬成分が少ない場合には、成分分布のばらつきが顕著になることが多い。
このように一つの錠剤中において、成分分布にばらつきが生じている場合、錠剤上のある測定点からの反射光のみに基づき成分含有量を測定する方法では、主薬成分の多い測定点からの反射光に基づき成分含有量を測定した場合と、主薬成分の少ない測定点からの反射光に基づき成分含有量を測定した場合とでは、同一の錠剤であっても、得られる成分含有量にばらつきが生じる。つまり、測定点からの反射光に基づき取得した成分含有量を、錠剤全体の成分含有量相当値として適用するにはばらつきが大きく、錠剤全体の成分含有量の測定精度が低下することになる。
本発明は、上記未解決の問題に着目してなされたものであり、成分含有量の測定精度をより向上させることの可能な成分含有量測定装置を提供することを目的としている。」
「【0012】
成分含有量測定装置100は、図1に示すように、錠剤Mに対して近赤外線を照射する照明部(照射部)11と、分光画像を撮影する分光カメラ(撮影部)12と、分光カメラ12により撮影した分光画像をもとに成分含有量を検出する処理部13と、を備える。
照明部11は、錠剤搬送部2aに収容された複数の錠剤Mに対して同時に近赤外線を照射可能な位置に配置される。また、分光カメラ12は、矩形状の長尺の視野領域ARを有し、視野領域ARの長手方向と錠剤搬送部2aの搬送方向とが斜めに交差し、且つ錠剤搬送部2a上の複数の錠剤Mを視野領域AR内に含む位置に配置される。例えば、図1中に示すように、視野領域AR内に錠剤搬送部2a上の7個の錠剤Mを含むとき、視野領域ARの一端側の錠剤M1は搬送方向左端側のみが視野領域AR内に含まれ、視野領域ARの他端側の錠剤M2は搬送方向右端側のみが視野領域AR内に含まれるようになっている。
【0013】
分光カメラ12は、例えば搬送機2からトリガ信号が入力されるタイミングで撮影を開始し、以後、予め設定した周期で撮影を行う。分光カメラ12は、例えば近赤外イメージング分光器を含んで構成され、矩形状の長尺の視野領域ARに含まれる錠剤Mからの反射光を分光し、分光した分光画像をCCDやCMOS等の撮像素子により撮影し、スペクトルデータを出力する。」
「【0014】
図3は、錠剤M上の、分光カメラ12による撮影領域を説明するための説明図である。
図1に示すように、視野領域ARは、搬送方向に沿って並ぶ複数の錠剤Mの列に対して斜めに交差する。
そのため、図3の時点t1に示すように錠剤M1のみが視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1のうち視野領域ARに含まれる領域のみが撮影される。つまり、錠剤M1のうち視野領域ARと重なる搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
続いて時点t2に示すように、錠剤M1及びM2が視野領域ARに含まれる状態では、視野領域ARが、その長手方向と、錠剤Mの搬送方向とが交差するように配置されているため、錠剤M1については、視野領域ARに含まれる領域つまり撮影領域が、時点t1における撮影領域とは異なり、時点t1における撮影領域よりも搬送方向右側に移動する。
錠剤M2については、視野領域ARに含まれる、搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
【0015】
続いて時点t3に示すように、錠剤M1からM3が視野領域ARに含まれる状態では、錠剤M1、M2については、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側にずれるため、錠剤M1、M2上の時点t2での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤M3については、搬送方向左端の一部の領域のみが撮影される。
以後、同様に、時点t4~t7に示すように、錠剤M1からM7のいずれかが視野領域ARに含まれる状態では、各時点で、視野領域ARに含まれる領域が搬送方向右側に順にずれて、錠剤M上の、一つ前の時点での撮影領域とは異なる領域が撮影され、新たに視野領域ARに含まれた錠剤については搬送方向左端側の領域のみが撮影される。
【0016】
そして、時点t8に示すように、錠剤M1が視野領域ARから外れた状態では、今度は錠剤M2からM8が視野領域ARに含まれるため、これら錠剤M2からM8それぞれの一部が撮影されることになる。
ここで、錠剤M1のみに着目すると、時点t1から時点t7では、それぞれ錠剤M1上の異なる領域を撮影しているため、時点t1から時点t7で、錠剤M1の略全体を網羅して撮影が行われたことになる。つまり、時点t1から時点t7の各時点で得られたスペクトルデータにおいて、錠剤M1に対応するスペクトルデータを抽出し、錠剤M1に対応するスペクトルデータを統合することによって、図4に示すように、平面視で錠剤M1をほぼ網羅するスペクトルデータを得ることができることになる。
【0017】
したがって、この統合したスペクトルデータを用いて所定成分の含有量を測定すれば、錠剤M1において成分分布にばらつきが生じていたとしても、実際の成分分布に則して、錠剤M1に含まれる成分含有量を検出することができる。つまり、成分分布にばらつきがあったとしても、錠剤M1の複数領域のスペクトルデータを統合して得たスペクトルデータを用いて含有量を検出することにより、成分分布のばらつきを平均化することができ、錠剤M1全体の成分含有量の測定精度を向上することができる。
【0018】
ここで、搬送機2による搬送速度と、分光カメラ12による撮影間隔とは、例えば、錠剤M1を複数時点で撮影した撮影領域と、錠剤M1の表面とを対応させたときに、複数時点における撮影領域が錠剤M1の表面全体を覆い、且つ、各時点の撮影領域が重畳しないように設定すればよい。このように錠剤M1全体を覆い且つ撮影領域が重畳しないように設定することによって、錠剤M1の全体における所定成分の含有量を高精度に検出することができる。また、撮影間隔と視野領域ARとを、例えば、錠剤M1が視野領域AR内を通過する間に、錠剤M1の一部を複数回撮影することのできる撮影間隔と視野領域ARの大きさとに設定してもよい。
【0019】
なお、撮影領域が重畳しないようにする場合に限るものではなく、例えば、撮影領域が重畳するように撮影してもよい。このように撮影領域が重畳する場合には、同一錠剤Mの各撮影タイミングにおけるスペクトルデータを統合する際に重畳する領域を考慮して統合すればよい。また、逆に撮影領域が重畳しないように撮影するようにしてもよい。このように錠剤M全体が撮影されない場合には、同一錠剤Mの各撮影タイミングにおけるスペクトルデータを統合する際に撮影されていない領域を考慮して統合すればよく、例えば補完する等して統合したスペクトルデータを取得すればよい。」
「【0026】
これに対し、本実施形態に係る成分含有量測定装置100では、図3に示すように、一つの錠剤Mに対して、錠剤M全体を網羅するように複数回に分けて複数領域におけるスペクトルデータを取得しているため、図6(b)に示すように、複数領域におけるスペクトルデータを統合したスペクトルデータから得られる含有量は、錠剤Mにおける成分分布が平均化された含有量となる。つまり、錠剤M全体の含有量の測定精度を向上させることができる。
また、仮に、矩形状の視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが直交するように分光カメラ12を配置した場合、錠剤Mの全面を撮影するには、錠剤Mが視野領域ARの短手方向の幅だけ進む周期で分光カメラ12での撮影を行う必要があり、撮影可能な周期には制約があることから、搬送速度が制約を受けることになる。
【0027】
これに対し、本実施形態における成分含有量測定装置100では、図3に示すように、視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが同一方向となり、且つ視野領域ARと錠剤Mの搬送方向とが斜めに交差するように分光カメラ12を配置している。そのため、錠剤Mの全面を撮影するためには、錠剤M上において視野領域ARと重なる領域が視野領域ARの短手方向の幅だけずれた状態となる位置、つまり、図3の場合には、時点t1から時点t2の位置まで錠剤M1が移動する周期で分光カメラ12での撮影を行えばよい。したがって、視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが直交する方向に分光カメラ12が配置され、視野領域ARの短手方向の幅だけ移動する周期で撮影する場合に比較して、撮影周期はより長い。そのため、搬送速度の自由度をより大きくすることができ、言い換えれば、高い処理性能を有する処理装置を用いなくとも、所定成分の含有量を容易に検出することができる。」
・図3の記載事項
[図:0001386124000001.jpg]
・図4の記載事項
[図:0001386124000002.jpg]
(2)発明の課題と具体的な実施形態
上記(1)より、本件特許明細書には、
ア 錠剤上のある測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定する従来の成分含有量の測定方法では、一つの錠剤中において成分分布にばらつきが生じている場合に錠剤全体の成分含有量の測定精度が低下する、という未解決の問題に着目して、成分含有量の測定精度をより向上させることを課題としていること、及び、
イ 具体的な実施形態として、矩形状の長尺の視野領域ARを有し、該視野領域ARの長手方向と錠剤搬送部2aの搬送方向とが斜めに交差している分光カメラ12により、予め設定した周期で撮影を行い、時点t1から時点t7ではそれぞれ錠剤M1上の異なる領域を撮影して、時点t1から時点t7で錠剤M1の略全体を網羅して撮影し、時点t1から時点t7の各時点で得られたスペクトルデータにおいて錠剤M1に対応するスペクトルデータを抽出し、錠剤M1に対応するスペクトルデータを統合することによって錠剤M1をほぼ網羅するスペクトルデータを得、この統合したスペクトルデータを用いて錠剤Mにおける成分分布が平均化された錠剤M1全体の成分含有量を測定して、錠剤M1全体の成分含有量の測定精度を向上すること、
ウ 測定対象物の搬送方向と視野領域の長尺方向とが斜めに交差することにより、視野領域の長尺方向と測定対象物の搬送方向とが直交する方向とし、視野領域の短手方向の幅だけ移動する周期で撮影する場合に比較して、撮影周期はより長くなるため、搬送速度の自由度をより大きくすることができ、高い処理性能を有する処理装置を用いなくとも、より長い撮影周期で所定成分の含有量を容易に検出することができること、
が記載されているといえる。
そして、前記実施形態によって、前記アの課題が解決され、前記イ、ウの効果が期待できることが理解できる。
(3)訂正請求項1について
ア(ア)訂正請求項1において、撮影部の視野領域と、そこを通過する複数の測定対象物との関係、及び該各測定対象物個々の反射光取得(すなわち撮影)・処理形態について、
「D 前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
E 前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
F 前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」、
と記載されている。
(イ)この記載によれば、(a)視野領域は「前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」できる程度、すなわち、《隣接する最低でも2つの測定対象物にわたる》大きさを有すること、(b)撮影部の撮影動作の制御としても、該大きさの視野領域が《隣接する最低でも2つの測定対象物にわたる》状態である時に撮影動作を行うこと、(c)各測定対象物についてみたときに、複数回の撮影動作により、「異なる領域」、すなわち、測定対象物における完全には一致しない(相互に異なる)最低2つの領域の反射光が取得(撮影)されること、が特定されているといえる。
(ウ)そうすると、本件発明1によっては、各測定対象物について、最低でも2回にわたり、最低2つの、相互に異なる領域が撮影されるのであるから、下記カ(ア)のとおり、申立人が特許異議申立書第21頁の参考図2で示したような、視野領域が測定対象物に比べて大幅に小さく、且つ、該視野領域により、測定対象物上のほぼ同じ領域について連続的に複数回撮影されるような、「錠剤上のある測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定する従来の成分含有量の測定方法」と実質的に差異のない撮影形態は排除されるといえる。
(エ)そして、構成E・Fを併せて、前記最低2つの相互に異なる領域のスペクトルデータを統合して所定成分の含有量が検出されることにより、「錠剤上のある測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定する従来の成分含有量の測定方法」に比べ、測定対象物上に成分のばらつきがあっても、成分含有量の検出値が平均化されることで前記ばらつきの影響が軽減され、上記本件特許明細書で掲げる、成分含有量の測定精度が向上する効果が期待できるといえる。
(オ)また、構成Dによれば、矩形状の長尺の視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜め(以下、角δとする。;0°<δ<90°)に交差する、すなわち平行(δ=0°)でも垂直(δ=90°)でもないのであるから、ある測定対象物上の一回の撮影による撮影領域は、視野領域の短手方向の幅(以下、dとする。)よりも前記一の方向の幅が長い(d/sinδ)ものとなる。そうすると、例えば測定対象物の全領域を重複なく撮影する場合について考えると、ある回の撮影から、次の回の撮影までに測定対象物が移動すべき距離は、従来技術のように、同じ矩形状の視野領域が一の方向に対し垂直となるようにして撮影した場合には[d]であるのに対し、訂正発明1によれば、[d/sinδ]と、[d]より長くなり、測定対象物の搬送速度が同じであれば、該撮影間隔での移動距離が長くなる分、撮影周期がより長くなる効果(上記(2)ウの効果)も期待できるといえる。
イ(ア)訂正発明1では、申立人が異議申立書において示す下記参考図1のように、「視野領域が錠剤に比ベて極端に大きい場合には、1回目の撮影タイミングt1においても、2回目の撮影タイミングt2においても、それぞれ一度に全ての錠剤の画像が入ってしまう」態様は、複数回の撮影が測定対象物全体という同一の領域を撮影領域とするものであるから、構成Eの「同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する」との特定事項を充足せず、排除されるといえる。
(イ)この解釈は、本件特許請求の範囲・明細書・図面において、そのような態様が開示されていないことと整合する。
ウ(ア)下記申立人意見書の参考図1-Aのような、「反射光を複数回取得」する過程の一つの取得回において測定対象物全体の反射光を一度に取得(撮影)してしまうような態様は、該《全体を取得する取得回》に対し、それに前後する、測定対象物の一部領域の反射光を取得する《一部取得の取得回》において取得される反射光の領域の全てが前記《全体を取得する取得回》における取得領域と重複することから、「異なる領域」にあたるとはいえない。
よって、前記態様は、構成Eの「同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する」との特定事項を充足せず、排除されるといえる。
(イ)また、訂正発明1における、構成Eの「同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得」することを前提とする構成Fの「スペクトルの統合」は、本件特許明細書【0016】に「時点t1から時点t7の各時点で得られたスペクトルデータにおいて、錠剤M1に対応するスペクトルデータを抽出し、錠剤M1に対応するスペクトルデータを統合することによって、図4に示すように、平面視で錠剤M1をほぼ網羅するスペクトルデータを得ることができる」と説明されるとおり、「平面視で錠剤M1をほぼ網羅する」ことを目的とするものである。
そうすると、上記(ア)の態様は、該《全体を取得する取得回》1回のみによって「平面視で錠剤M1をほぼ網羅する」目的を達成してしまっていることから、該取得回に前後して《一部取得の取得回》をさらに実行することは、前記目的に沿うものとはいえない。
また、上記(2)ウの効果を明らかに奏するともいえない。
また、当該態様は本件特許請求の範囲・明細書・図面に開示もない。
よって、訂正発明1の趣旨に照らしても、上記イ(ア)の態様は訂正発明1において排除されているといえる。
(ウ)仮に、《全体を取得する取得回》及びそれに前後する《一部取得の取得回》が相互に反射光取得領域を異にすることを以て上記(ア)の態様が訂正発明に含まれるとしても、構成E・Fを併せて、前記最低2つの相互に異なる領域のスペクトルデータを統合して所定成分の含有量が検出されることにより、「錠剤上のある測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定する従来の成分含有量の測定方法」に比べ、測定対象物上に成分のばらつきがあっても、成分含有量の検出値が平均化されることで前記ばらつきの影響が軽減され、上記本件特許明細書で掲げる、成分含有量の測定精度が向上する効果が期待できるといえる。
エ 下記申立人意見書の参考図2-Aのような態様は、ここに示される2つの錠剤の前後にも他の錠剤が近接して存在し、撮影領域が該前後の錠剤との間でも該図と同様にまたがって設定される限りにおいて、訂正発明1に含まれるといえる。
また、訂正発明1にこのような態様が含まれうることについては、本件特許明細書【0018】の「撮影間隔と視野領域ARとを、例えば、錠剤M1が視野領域AR内を通過する間に、錠剤M1の一部を複数回撮影することのできる撮影間隔と視野領域ARの大きさとに設定してもよい。」なる記載、及び【0019】の「逆に撮影領域が重畳しないように撮影するようにしてもよい。このように錠剤M全体が撮影されない場合には、同一錠剤Mの各撮影タイミングにおけるスペクトルデータを統合する際に撮影されていない領域を考慮して統合すればよく、例えば補完する等して統合したスペクトルデータを取得すればよい。」なる記載によって裏付けられるものである。
そして、このような態様であっても、構成E・Fを併せて、前記最低2つの相互に異なる領域のスペクトルデータを統合して所定成分の含有量が検出されることにより、「錠剤上のある測定点からの反射光を取得し、これに基づき成分含有量を測定する従来の成分含有量の測定方法」に比べ、測定対象物上に成分のばらつきがあっても、成分含有量の検出値が平均化されることで前記ばらつきの影響が軽減され、上記本件特許明細書で掲げる、成分含有量の測定精度が向上する効果が期待できるといえる。
また、上記ア(オ)に記載した理由により、上記(2)ウの効果を奏しうることも期待できるといえる。
また、測定対象物全体を撮影しない態様において、どの程度の面積で、どの部位に撮影されない部分を設定するかは、想定される成分分布に応じて適宜設定すべき事項であるし、【0014】~【0017】、図3・4において、測定対象物の全領域を網羅する撮影形態も開示されているのであるから、《測定対象物全体を撮影しない》ことにより特定の成分偏在箇所が測定漏れとなり得ることを以て、当該態様が本件特許明細書に掲げる作用効果を奏しないとはいえない。
オ 下記申立人意見書の参考図3-Aのような態様も、上記エの態様に類するものであるといえ、上記エで説示したものと同様の理由により、訂正発明1に含まれ得、本件特許明細書で掲げる、成分含有量の測定精度が向上する効果が期待できるといえる。
カ(ア)異議申立書の参考図2
[図:0001386124000003.jpg]
(イ)異議申立書の参考図1
[図:0001386124000004.jpg]
(ウ)申立人意見書の参考図1-A
[図:0001386124000005.jpg]
(エ)申立人意見書の参考図2-A
[図:0001386124000006.jpg]
(オ)申立人意見書の参考図3-A
[図:0001386124000007.jpg]
(3)まとめ
以上(1)~(2)のとおりであるから、訂正発明1~5は、それに含まれ得るあらゆる態様を検討しても、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、該発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか、または、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえる。
3 取消理由2についての当審の判断
3-1 引用文献等に記載された事項
(1)引用文献1に記載された事項
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0002】
従来から、下記の特許文献1,2のように、近赤外光を用いて複数の錠剤の中から異種錠剤や薬剤成分の量が相違する錠剤を検出する方法が検討されている。
・・・
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法は、異常を有する錠剤を検出することは可能であるが、例えば、錠剤の一部に異常がある場合にそれを検出することは困難であると考えられる。」
(イ)「【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る錠剤検査装置1の概略構成を説明する図である。図1に示される錠剤検査装置1は、所定の方向に搬送される測定対象物である錠剤Oに対して近赤外光を照射することで、錠剤Oからの反射光を検出して解析することで、錠剤Oに係る異常を検出する装置である。このような錠剤検査装置1は、例えば、錠剤Oの検査等に用いられる。錠剤検査装置1の錠剤Oとしては、食品又は医薬品等の錠剤が挙げられる。錠剤検査装置1において検出する「異常」とは、例えば、錠剤Oが異種品である場合、錠剤Oの少なくとも一部が正常品とは異なる材料(異種錠剤の材料や、変質等が生じた材料)を含む場合、錠剤Oの内部構造に異常が生じている場合、等が挙げられる。」
(ウ)「【0026】
錠剤検査装置1は、近赤外光の測定光を搬送手段により搬送される測定台20上の錠剤Oに対して照射することにより得られる反射光を測定し、その反射光の強度又はスペクトル形状等に基づいて錠剤Oの光学測定を行う。このため、錠剤検査装置1は、光源部10A,10B、錠剤Oを載置すると共に搬送手段により搬送される測定台20、撮像部30(撮像手段)、分析部40(分析手段)、判定部50(判定手段)、及び出力部60(出力手段)を備える。
【0027】
本実施形態で説明する錠剤検査装置1では、搬送手段が例えばコンベア、シューター、リフト等の搬送機構により構成され、測定台20上に載置された錠剤Oが、搬送方向(図1における矢印A方向)に移動するとする。
【0028】
撮像部30は、測定台20の面内で搬送方向(矢印A方向)に対して垂直な方向に長辺を有する視野領域を有して撮像を行う。本実施形態では、撮像部30がラインカメラである場合について説明する。」
(エ)「【0036】
撮像部30は、光源部10A,10Bから照射領域に対して照射される測定光に対して錠剤Oから出射される反射光L3をレンズ31から入射して、分光カメラ32において受光することで、錠剤Oの撮像を行う。分光カメラ32は、照射領域と重なって形成され且つ測定台20上において搬送方向(矢印A方向)に対して垂直な方向に延びるライン状の視野領域からの光を分光した後に、ライン状又は2次元に配置された画素により構成される受光面により受光する。」
(オ)「【0040】
分析部40は、撮像部30から送られる反射スペクトルの情報(スペクトルデータ)を受け取り、種々の演算処理等を行う。撮像部30が取得したスペクトルデータのうち、分析の対象となるのは、錠剤Oからの反射光に係るスペクトルデータである。一方、撮像部30からは背景である測定台20を撮像したスペクトルデータも送られる場合があるので、分析部40において、錠剤Oに係るスペクトルデータと背景に係るスペクトルデータとを区別する処理を行ってもよい。
【0041】
また、分析部40では、錠剤Oの錠剤の撮像位置によってスペクトルデータが変化することから、予めスペクトルデータの正規化処理を行った後に、錠剤の異常を判定する際に用いる特徴量を算出する。」
(カ)「【0044】
判定部50は、分析部40によって算出されたスペクトルデータ毎の特徴量に基づいて、各画素のスペクトルデータ毎に、異常の有無を判定する。特徴量に基づいて異常の有無を判定する場合には、異常の有無を判定するための閾値を特定する情報を予め判定部50が保持しておき、その閾値に基づいて判定を行う。なお、判定部50は、必要に応じて、近隣する画素のスペクトルデータの特徴量や判定結果に基づいて、画素毎の判定結果の信頼性を確認する構成としてもよい。さらに、錠剤毎に異常の有無を判定する構成を備えていてもよい。」
(キ)「【0048】
まず、光源部10A,10Bによって、搬送中の測定台20上の錠剤Oに対して測定光L1,L2を照射することで、撮像部30により、錠剤Oからの反射光L3に係るスペクトルデータを取得する(S01)。移動する測定台20上の錠剤Oからの反射光L3を撮像部30のラインカメラで検出することで、錠剤Oの各位置に対応したスペクトルデータを画素毎に取得することができる。
・・・
【0050】
図3(A)は錠剤Oの一例の側面図である。また、図3(B)は、錠剤検査装置1を用いて錠剤Oを撮像した結果を示している。なお、図3(B)では、撮像部30で受光した特定の波長(1500nm)の反射光L3の強度を、反射光L3の出射元である錠剤Oの位置に対応させて白黒の濃淡で示しているものである。」
(ク)「【0061】
錠剤においてスペクトルデータを取得した領域に異常があるか否かの判定の結果、全ての画素に係るスペクトルデータにおいて異常なしと判定された場合(S04-NO)には、出力部60により「異常なし」との結果を出力して終了する(S05)。一方、判定の結果、少なくとも一部の画素に係るスペクトルデータにおいて異常ありと判定された場合(S04-YES)には、当該判定結果の信頼性を確認する処理を行ってもよい。錠剤に異常が発生した場合、その異常は、1つの画素によってスペクトルデータが取得される領域よりも広い範囲に分布していることが多いと考えられる。また、装置におけるノイズ等に由来して形状が変化したスペクトルデータを取得してしまうことも考えられる。したがって、信頼性を確認する手法として、異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対して、その周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて、信頼性を判断する方法を用いることができる(S06)。
・・・
【0063】
次に、判定部50では、異常判定の信頼性を確認した結果、錠剤が異常を有するか否かを判定する(S07)。」
(ケ)「【0081】
・・・また、複数の錠剤が搬送方向に並んでいる場合についても、1錠ごとに異常を判定し出力するが、カメラを複数台利用して、複数の錠剤を同時に計測してもよい。」
イ 引用文献1の図面
引用文献1には、次の図面がある。
(ア)図1
[図:0001386124000008.jpg]
(イ)図2
[図:0001386124000009.jpg]
(ウ)図3(B)
[図:0001386124000010.jpg]
ウ 引用文献1の記載より自明な事項
上記ア(キ)には撮像部30はラインカメラであり、移動する測定台20上の錠剤Oからの反射光L3を検出することで錠剤Oの各位置に対応したスペクトルデータを画素毎に取得することが記載されており、また、上記イ(ウ)の図3(B)より錠剤Oの全体に画素が分布することが看取されることから、撮像部30は同一の錠剤Oの異なる複数箇所から反射光L3を複数回取得していると認められる。
エ 引用発明1
上記ウも踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「1a 光源部10A,10B、錠剤Oを載置すると共に搬送手段により搬送される測定台20、撮像部30、分析部40、判定部50を備える錠剤検査装置1であって、
1b 光源部10A,10Bは、搬送中の測定台20上の錠剤Oに対して近赤外光の測定光L1,L2を照射し、
1c 撮像部30は、測定台20の面内で搬送方向に対して垂直な方向に長辺を有する視野領域を有するラインカメラであり、個々の錠剤Oから出射される反射光L3を分光カメラ32において受光することで、複数の錠剤Oが搬送方向に並んでいる場合は1錠ごとに錠剤Oの撮像を行い、同一の錠剤Oの異なる複数箇所から反射光L3を複数回取得して錠剤Oの各位置に対応したスペクトルデータを画素毎に取得し、
1d 分析部40は、撮像部30から送られるスペクトルデータを受け取り、錠剤Oの異常を判定する際に用いる特徴量を算出し、
1e1 判定部50は、分析部40によって算出されたスペクトルデータ毎の特徴量に基づいて各画素のスペクトルデータ毎に正常品とは異なる材料を含む等の異常の有無を判定し、
1e2 少なくとも一部の画素に係るスペクトルデータにおいて異常ありと判定された場合には、異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対してその周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて当該判定結果の信頼性を確認する処理を行い、異常判定の信頼性を確認した結果、錠剤Oが異常を有するか否かを判定し、
1f 複数の錠剤Oが搬送方向に並んでいる場合は1錠ごとに異常を判定する、
1g 錠剤検査装置1。」
(2)引用文献2に記載された事項
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0012】
(光学分析装置の第1実施形態)
先ず、本発明に係る光学分析装置の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る光学分析装置1の構成図である。この図に示される光学分析装置1は、損失スペクトルの測定によって測定対象物9の同定や物質の状態の評価を行うことが可能な装置であって、診断光光源部10、光学系20、スペクトル測定部30、記憶部40、演算部50および表示部60を備える。」
(イ)「【0015】
・・・SC光は、800nm~3000nmの波長範囲において1[μW/nm]以上のパワースペクトル密度を有する。」
(ウ)「【0016】
・・・このようにして診断光光源部10から出力されるSC光は、測定対象物9に照射されるべき診断光となる。」
(エ)「【0020】
・・・分光器31a,31bは、物体光のパワースペクトルおよび診断光のパワースペクトルを同時計測する。そして、減算器32は、ログスケールで物体光のパワースペクトルから診断光のパワースペクトルを減算することにより、測定対象物9の損失スペクトルAを得る。
【0021】
記憶部40は、様々な既知物質の損失スペクトルBの情報を記憶するものである。演算部50は、記憶部40から損失スペクトルBの情報を一つずつ読み出して、スペクトル測定部30により得られた損失スペクトルAと損失スペクトルBとの一致度を計算し、物質と一致度との表Cを作成して、最も一致度の高い物質を選択することにより、測定対象物9に含まれる物質を同定することができる。」
(オ)「【0048】
(薬剤選別方法の実施形態)
次に、本発明に係る薬剤選別方法の実施形態について説明する。本実施形態に係る薬剤選別方法は、上述した実施形態に係る光学分析装置と同様の構成を有する光学分析装置5A,5Bを用いて、測定対象物である薬剤中の生理活性分子の空間分布を測定し、その空間分布が所定の規定を満たしているかどうかを判定する。
【0049】
図5は、本実施形態に係る薬剤選別方法の一例を説明する斜視図である。光学分析装置5A,5Bそれぞれは、上述した第1~第4実施形態の光学分析装置と同様の構成のものであり、特に第3実施形態の光学分析装置と同様の構成のものであるのが好適である。光学分析装置5A,5Bは、z方向およびy方向から診断光を薬剤9に照射する。錠剤の形状を持つ測定対象物としての薬剤9は、ベルトコンベア71によって供給される。ここで、xはコンベア71の進行方向であり、zはコンベア71の面に垂直な方向であり、yはxおよびzに垂直な方向である。
【0050】
一方の光学分析装置5Aは、x方向に長細いビーム形状を持つ診断光をz方向に出射し、レンズ70Aによって薬剤9上にy方向に長細いスポットを結ぶ。他方の光学分析装置5Bは、x方向に長細いビーム形状を持つ診断光をy方向に出射し、レンズ70Bによって薬剤9上にz方向に長細いスポットを結ぶ。ベルトコンベア71の移動に従い、薬剤9上のスポット位置はx方向に移動する。
【0051】
光学分析装置5A,5Bそれぞれのスペクトル測定部30に含まれる分光器31b,31cは、図6に示されるような構成を有する。この図に示される分光器は、x'方向に長細いビーム形状を持ちy'方向に伝搬する物体光Dを入力し、この物体光Dを回折格子311により波長毎に分散させて2次元のアレイディテクタ312で受光することにより、x'方向の位置および波長の関数として物体光DのパワースペクトルEを測定する。その結果、光学分析装置5A,5Bそれぞれは、薬剤9のxy面およびxz面に投影した成分分布を測定する。これらの測定結果により、成分分布が予め定められた規格に適合しているかどうかを判定し、不適合な薬剤は押し出し装置73によって別のコンベア72へ分別される。
【0052】
第3実施形態に係る光学分析装置のように損失スペクトルおよびラマンスペクトルを併用することにより、多種類の成分を含有する薬剤の特定の成分を分離して測定することが可能となる。ただし、成分の種類が少ない薬剤の場合は、損失スペクトルおよびラマンスペクトルのうち何れか一方のみでもよい。
【0053】
本実施形態では、800nmより長波長の第2診断光と1400nmより長波長の第1診断光を用いるため、散乱の影響を低減して薬剤9の深部の情報を得ることができ、蛍光の影響も排除して高い信号対雑音比を実現することができる。」
イ 引用文献2の図面
引用文献2には、次の図面がある。
(ア)図1
[図:0001386124000011.jpg]
(イ)図5
[図:0001386124000012.jpg]
(ウ)図6
[図:0001386124000013.jpg]
ウ 引用文献2の記載より自明な事項
(ア)上記イ(イ)より、薬剤9はコンベア71の進行方向xに沿って列状に並んだ状態でコンベア71の進行方向xに搬送されることが看取される。
(イ)上記ア(オ)には、光学分析装置5Aが出射する診断光は薬剤9上にy方向に長細いスポットを結ぶこと、及び、分光器はx'方向に長細いビーム形状を持ちy'方向に伝搬する物体光Dを入力し、この物体光Dを回折格子311により波長毎に分散させて2次元のアレイディテクタ312で受光することが記載されている。そして、分光器は、長細いビーム形状を持つ物体光Dを回折格子311により波長毎に分散させて2次元のアレイディテクタ312で受光していることから、矩形状の長尺の視野領域を有していると認められる。また、その矩形状の長尺の視野領域は診断光のy方向に長細いスポットにより生じる物体光Dを受光するものであるから、その長手方向は診断光と同様に薬剤9上においてy方向であると認められる。
(ウ)上記ア(オ)には薬剤9のxy面に投影した成分分布を測定することが記載されているところ、上記イ(イ)より診断光のy方向に長細いスポットは薬剤9のx方向の長さよりも格段に短いことが看取されることから、一の薬剤9から診断光のy方向に長細いスポットにより生じる物体光Dを一の薬剤9の異なる複数箇所から複数回取得していると認められる。
エ 引用発明2
上記ウも踏まえると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「2a 光学分析装置5Aであって、
2b 薬剤9はコンベア71の進行方向xに沿って列状に並んだ状態でコンベア71の進行方向xに搬送され、
2c 薬剤9に800nm~3000nmの波長範囲において1[μW/nm]以上のパワースペクトル密度を有するSC光である診断光を照射し、
2d 光学分析装置5Aのスペクトル測定部30に含まれる分光器は物体光Dを入力し、この物体光Dを回折格子311により波長毎に分散させて2次元のアレイディテクタ312で受光することにより、物体光DのパワースペクトルEを測定し、
2e 分光器は矩形状の長尺の視野領域を有し、その長手方向は薬剤9上においてy方向であり、一の薬剤9から診断光のy方向に長細いスポットにより生じる物体光Dを一の薬剤9の異なる複数箇所から複数回取得し、ここで、yはxに垂直な方向であり、
2f 物体光のパワースペクトルから診断光のパワースペクトルを減算することにより薬剤9の損失スペクトルを得、得られた損失スペクトルAと記憶部40から読み出された損失スペクトルBとの一致度を計算し、最も一致度の高い物質を選択することにより薬剤9に含まれる物質を同定し、薬剤9のxy面に投影した成分分布を測定し、成分分布が予め定められた規格に適合しているかどうかを判定する、
2g 光学分析装置5A。」
(3)引用文献3に記載された事項
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0010】
図1に示されるように、錠剤包装システム100は、プラスチックシート搬送部110、加熱装置120、成形装置121、錠剤充填装置130、蓋シート搬送部140、シール装置150、包装シート切り出し部160、取り出し部170、プレート180、近赤外スペクトルカメラ190、近赤外線照明191、錠剤検査装置90を有する。」
(イ)「【0013】
ポケットに錠剤400が供給されたプラスチックシート300は、プレート180上のプラスチックシート300に供給された錠剤を照射するように配置された近赤外照明191により近赤外光を照射され、近赤外スペクトルカメラ190により、プレート180の幅方向、すなわち、プラスチックシート300の搬送方向に直交する方向の線上のスペクトルが撮像される。この撮像された画像は、後述の錠剤検査装置90により処理演算され、異種錠剤を判定するために用いられる。」
(ウ)「【0018】
錠剤検査装置90は、取得部901、シェーディング補正部902、2次元画像生成部903、検出部904、抽出部905、正規化部906、選択部907、2次微分算出部908、判定部909を備える。これらの各機能は、予め上述の不揮発性の記憶装置912に保存されているプログラムが上述のメモリ911にロードされ、上述のCPU910がロードされたプログラムを演算実行することで実現される。
【0019】
取得部901は、近赤外スペクトルカメラ190により10msec毎に撮像される錠剤のスペクトル画像を順次取得する。シェーディング補正部902は、取得部901に取得されたスペクトル画像のそれぞれに対してシェーディング補正を行う。2次元画像生成部903は、シェーディング補正がなされたスペクトル画像を波長方向に積分した2次元画像を生成する。検出部904は、生成された2次元画像を2値化することにより2次元画像による錠剤位置を検出する。抽出部905は、2次元画像における各錠剤の中心近傍の矩形領域を抽出画像として抽出する。正規化部906は、各錠剤の抽出画像における画素(以降、サンプル画素と称する)の強度スペクトルの平均、標準偏差に基づいて正規化した正規化スペクトルを算出する。選択部907は、2次元画像から抽出された各錠剤を順次選択する。2次微分算出部は、選択された錠剤内の各画素の正規化スペクトルを錠剤内で平均化した平均スペクトルを算出し、この平均スペクトルを2次微分した2次微分スペクトルを算出する。判定部909は、2次微分スペクトルに基づく主成分分析を行い、選択された抽出画像に対応する錠剤が異種の錠剤であるか否かを判定する。」
(エ)「【0021】
・・・図4は、時系列に並べたスペクトル画像を示す図である。スペクトル画像は、上述したように、近赤外スペクトルカメラ190によりプレート180の幅方向の線上のスペクトルが10msec毎に撮像されたものであり、また、ポケットに錠剤400が供給されたプラスチックシート300は、プレート180の幅方向に直交する方向に搬送されている。このため、図4に示すように、1列の錠剤に対して、搬送方向に異なる位置で複数のスペクトル画像が撮像される。
【0022】
スペクトル画像が取得された後、取得されたスペクトル画像のそれぞれに対して、シェーディング補正がなされる(S102)。このシェーディング補正は、スペクトル画像のx方向の強度のバラつきと波長ごとの感度のバラつきを補正する輝度補正処理である。具体的には、シェーディング補正は、予め近赤外スペクトルカメラ190により撮像されたホワイトの基準版の撮像画像をB(x,λ)、同様に予め撮像されたダークの基準版の撮像画像をD(x,λ)、ポケットに錠剤400が供給されたプラスチックシート300の撮像画像をF(x,λ)、補正係数をK(x,λ)=B0/(B(x,λ)-D(x,λ))とした場合、シェーディング補正画像Fc(x,λ)は、Fc(x,λ)=(F(x,λ)-D(x,λ))・K(x,λ)の式で示される補正処理である。
【0023】
・・・図5は、複数のスペクトル画像をもとに2次元画像生成部903が生成した2次元画像を示す図である。図5に示すように、2次元画像は、幅方向x及び時間方向T(即ち搬送方向y)の2軸を有する画像である。」
イ 引用文献3の図面
引用文献3には、次の図面がある。
(ア)図1
[図:0001386124000014.jpg]
(イ)図5
[図:0001386124000015.jpg]
ウ 引用文献3の記載より自明な事項
上記イ(イ)より、錠剤は搬送方向yに沿って列上に並んだ状態で搬送されることが看取される。
エ 引用発明3
上記ウも踏まえると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「3a プラスチックシート搬送部110、近赤外スペクトルカメラ190、近赤外線照明191、錠剤検査装置90を有する錠剤包装システム100であって、
3b 近赤外線照明191は、ポケットに錠剤400が供給されたプラスチックシート300に近赤外光を照射し、
3c 近赤外スペクトルカメラ190は、プラスチックシート300の搬送方向に直交する方向の線上のスペクトル画像を1列の錠剤に対して搬送方向に異なる位置で撮像し、
3d 錠剤検査装置90は、取得部901、シェーディング補正部902、2次元画像生成部903、検出部904、抽出部905、正規化部906、選択部907、2次微分算出部908、判定部909を備え、
3e 取得部901は、近赤外スペクトルカメラ190により撮像される錠剤のスペクトル画像を順次取得し、
3f シェーディング補正部902は、取得部901に取得されたスペクトル画像のそれぞれに対してシェーディング補正を行い、
3g 2次元画像生成部903は、シェーディング補正がなされたスペクトル画像を波長方向に積分した2次元画像を生成し、
3h 検出部904は、生成された2次元画像を2値化することにより2次元画像による錠剤位置を検出し、
3i 抽出部905は、2次元画像における各錠剤の中心近傍の矩形領域を抽出画像として抽出し、
3j 正規化部906は、各錠剤の抽出画像における画素の正規化スペクトルを算出し、
3k 選択部907は、2次元画像から抽出された各錠剤を順次選択し、
3l 2次微分算出部908は、選択された錠剤内の各画素の正規化スペクトルを錠剤内で平均化した平均スペクトルを算出し、この平均スペクトルを2次微分した2次微分スペクトルを算出し、
3m 判定部909は、2次微分スペクトルに基づく主成分分析を行い、選択された抽出画像に対応する錠剤が異種の錠剤であるか否かを判定し、
3n 錠剤は搬送方向yに沿って列上に並んだ状態で搬送される、
3o 錠剤包装システム100。」
(4)引用文献4に記載された事項
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0017】
本実施形態に係る薬剤検査装置は、主として、治験薬としての錠剤において、薬剤成分の量が相違する錠剤の種類を判別するためのものである。例えば、治験薬としての錠剤は、複数列に亘って設けられた包装材(例えば、PTPシート)のポケット部に、複数種の錠剤が収容されている。そして、錠剤の薬剤成分の量は、一列ごとに、或いはポケット毎に異なるようにされているが、外観からは判別がつかないように製造されている。本実施形態は、そのような治験薬を検査し、正しい薬剤が正しい位置に収容されていることを確認するためのものである。図1に示すように、ここで対象となる包装材100は、搬送方向Xに並ぶ複数の列を有しており、各列には複数の錠剤101が収容されている(図1の例では5個)。そして、この包装材100は、PP、PVCなどで形成されたシート状の基材103に、各錠剤101を収容する透明のポケット部102が複数形成されたものである。錠剤が収容された後、シート基材103の上面は、Al箔などでヒートシールされ、ポケット部102を塞いでしまうが、ここでは、Al箔などでヒートシールされる前の、ポケット部102に錠剤101が収容されたときに、後述する検査を行う。すなわち、このように形成された包装材100は、ポケット部102が下方に突出するように搬送路200にて搬送され、錠剤101が上方に開放された状態で検査が行われる。
【0018】
図1に示すように、この薬剤検査装置は、包装材100の搬送路200の上方に設置されたレンズ14、分光器3、及び近赤外線を撮像可能なラインセンサカメラ4を備えている。このほか、装置の駆動、データの処理などを行うコンピュータ5が取り付けられている。また、包装材100に対して近赤外線を含む光線(白色光など)を照射する一対の光源13が、包装材100における一列の錠剤を、搬送方向に沿って挟むように設置されている。」
(イ)「【0022】
続いて、上述した薬剤検査装置を用いた錠剤の検査方法について説明する。まず、上述したような包装材100を搬送路200に配置し、図1に示すように、搬送方向Xに対して搬送を行う。次に、光源13から近赤外線を含む光線を錠剤101の一列に向けて照射する。近赤外線を含む光線は、錠剤101の表面で反射され、その反射光がレンズ14で集光された後、分光器3に送られる。上述したように、この装置では、ラインセンサカメラ4を用いているが、撮像を行う一列に所定の画素数を割り付けて、撮像を行う。例えば、一列に付き、320画素を割り付けることができる。そして、搬送路200の搬送速度とラインセンサカメラ4のシャッタースピードとの関係にもよるが、一列に並ぶ錠剤101上に、少なくとも一回の撮像で、撮像される一列のYが配置されるようにする。このとき、図2に示すように、一列に並ぶ錠剤101上で、2回またはそれ以上の撮像が行われることが望ましい。
【0023】
分光器3に錠剤からの反射光が入射されると、分光スペクトルが形成される。そして、この分光スペクトルは、ラインセンサカメラ4の撮像面に結像され、撮像データはコンピュータ5に送られる。コンピュータ5では、次のような処理が行われる。まず、錠剤101の表面に割り付けられた画素に基づく、数個から数十個程度のスペクトルが平均化され、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータが算出される。例えば、図3に示すように、錠剤101一錠当たり4つの画素Z1が割り当てられている場合には、この4つの画素Z1におけるスペクトルが平均化される。」
(ウ)「【0024】
こうして、各錠剤上の複数の画素のスペクトルが得られると、平均化が行われるが、平均化の方法としては、例えば、加算平均がある。錠剤表面から得られた画素のスペクトルを加算し、その画素数で除して算出している。こうして、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータが得られると、これを記憶部に保存されているデータと照合し、薬剤の種類を判別する。このとき、例えば、得られた平均スペクトルの特定波長における形状や強度を抽出し、これを記憶部のデータと照合して薬剤の種類を判別することができる。こうして、PTPポケット毎に異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の種類を判別することができる。しかし、このとき得られた平均スペクトルデータからでは、薬剤の種類を判別できない場合がある。例えば、同種の薬剤で成分量の差が僅差である場合が該当する。このような場合には、得られた平均スペクトルデータを、上述したソフトウエアで解析し、例えば、主成分分析により、判別を試みることができる。こうして、PTPポケット毎に異なる薬剤成分の量を含有する錠剤101の種類を判別することができる。
【0025】
本実施形態に係る薬剤検査装置によれば、外観からは判別がつかない錠剤であっても、得られるスペクトルデータにより、異なる薬剤成分の量の錠剤の種類を判別することができる。」
イ 引用文献4の図面
引用文献4には、次の図面がある。
(ア)図1
[図:0001386124000016.jpg]
(イ)図2
[図:0001386124000017.jpg]
(ウ)図3
[図:0001386124000018.jpg]
ウ 引用文献4の記載より自明な事項
上記ア(イ)には「一列に並ぶ錠剤101上に、少なくとも一回の撮像で、撮像される一列のYが配置されるようにする」と記載されており、また、上記イ(イ)から「Y」は「搬送方向X」に対して直交することが看取されることから、ラインセンサカメラ4の視野領域の長手方向は搬送方向Xに対して直交すると認められる。
エ 引用発明4
引用文献4には次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「4a 包装材100の搬送路200の上方に設置されたレンズ14、分光器3、及び近赤外線を撮像可能なラインセンサカメラ4と、装置の駆動、データの処理などを行うコンピュータ5と、包装材100に対して近赤外線を含む光線を照射する一対の光源13とを備える薬剤検査装置であって、
4b 包装材100は、搬送方向Xに並ぶ複数の列を有しており、各列には複数の錠剤101が収容され、
4c 近赤外線を含む光線は錠剤101の表面で反射され、その反射光がレンズ14で集光された後、分光器3に送られて分光スペクトルが形成され、この分光スペクトルはラインセンサカメラ4の撮像面に結像され、撮像データはコンピュータ5に送られ、
4d ラインセンサカメラ4は、撮像を行う一列に所定の画素数を割り付けて撮像を行い、一列に並ぶ錠剤101上で2回またはそれ以上の撮像が行われ、視野領域の長手方向は搬送方向Xに対して直交し、
4e コンピュータ5では、錠剤101の表面に割り付けられた画素に基づく数個から数十個程度のスペクトルが平均化され、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータが算出され、錠剤一錠あたりの平均スペクトルデータを記憶部に保存されているデータと照合して異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の種類を判別する、
4f 薬剤検査装置。」
オ 技術事項4
引用文献4には次の技術事項(以下「技術事項4」という。)が開示されていると認められる。
「一の錠剤の複数箇所におけるスペクトルデータを平均して平均スペクトルデータを算出し、当該平均スペクトルデータを記憶部に保存されているデータと照合して、異なる薬剤成分の量を含有する錠剤の種類を判別する技術。」
(5)引用文献5に記載された事項
ア 引用文献5の記載事項
引用文献5には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0010】
ラインセンサカメラ1は、検査対象物であるカラーフィルター100を撮像して撮像画像を得るための撮像手段である。図3、図4に示すように、本発明の塗布ムラ検査装置においては、撮像ためのラインセンサカメラ1による走査(主走査)の方向は、カラーフィルター100における塗布方向に対して傾斜させている。カラーフィルター100はコロコンベヤ4によって搬送されるが、このときカラーフィルター100における塗布方向が搬送方向(副走査方向)に対して直角方向となるように搬送が行われる。したがって、塗布方向と主走査方向とが成す角度をθとすると、主走査方向と副走査方向とが成す角度は(90°-θ)となる。言い換えると、ラインセンサカメラ1は、その主走査方向が副走査方向に対して(90°-θ)となるように設置される。」
イ 引用文献5の図面
引用文献5には、次の図面がある。
(ア)図3
[図:0001386124000019.jpg]
(6)引用文献6に記載された事項
ア 引用文献6の記載事項
引用文献6には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0033】
次に、撮像部1のラインセンサを回転角度θで回転させた場合を説明する。
図5は、ラインセンサを回転させて正方形の欠陥を撮像するイメージ図である。図5に示すように、回転角度θが正の値であるので、撮像部1のラインセンサ20は、正方形の欠陥10(幅、長さともにN)を、左上から撮像し、最後に右下を撮像することになる。」
イ 引用文献6の図面
引用文献6には、次の図面がある。
(ア)図5
[図:0001386124000020.jpg]
(7)周知技術
ア 周知技術1
上記(5)、上記(6)より次の技術事項は周知技術であると認められる。以下、下記技術事項を「周知技術1」という。
「矩形状の長尺の視野領域を有する撮影部を測定対象物の搬送方向に対して斜めに交差するよう配置して光学検査を行う技術。」
イ 周知技術2
上記(1)ア(ア)、上記(4)アの(ア)及び(ウ)より次の技術事項は周知技術であると認められる。以下、下記技術事項を「周知技術2」という。
「近赤外光による錠剤の検査において錠剤の異常として薬剤成分の量が所定量と相違することを検出する技術。」
(8)甲第5号証に記載された事項
申立人が異議申立書において甲第5号証として挙げた、本件特許出願日において公知である特開2009-204426号公報には、次の事項が記載されている。
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品検査システムは製造ラインに沿った載置面上に載置され製造ラインに沿って輸送される食品からなる検査対象物の検査を行う食品検査システムであって、近赤外光を出力する光源と、載置面上に視野領域をそれぞれ有し、光源から出力された近赤外光のうち視野領域内の検査対象物により拡散反射した拡散反射光を分光する分光器、及び、分光器によって分光された各波長の光を受光して当該受光した光の強度に応じた信号を出力する複数の受光素子をそれぞれ含む複数の検出装置と、複数の検出装置から出力される信号により得られる拡散反射光のスペクトルに基づいて、検査対象物の検査を行う検査装置と、を備え、複数の検出装置は、各視野領域が製造ラインの進行方向と垂直な方向にずれるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の食品検査システムでは、複数の検出装置を備え、その複数の検出装置の各視野領域が製造ラインの進行方向と垂直な方向に沿って互いにずれるように、複数の検査装置が配置されている。これにより、検査対象物の載置された領域における製造ラインの進行方向と垂直な方向の長さに対して、一台の検出装置の視野領域が小さい場合でも、食品検査システムとしての視野領域を大きくすることができる。従って、効率よく全ての検査対象物を検査することができる。
」
・図1・図2の記載事項
[図:0001386124000021.jpg]
(9)甲第6号証に記載された事項
申立人が異議申立書において甲第6号証として挙げた、本件特許出願日において公知である特開平10-246702号公報には、次の事項が記載されている。
「【0014】
識別装置15は,光源21と,錠剤等aの表面で反射した反射光を受光すると共に,その受光した反射光のスペクトルを検出する識別手段22によって構成されている。光源21は,例えばハロゲンランプ,重水素放電管,キセノンランプなどからなり,図3に示すように,コンベアベルト12上で搬送されるプラスチックシート1の凹部2に収納された錠剤等aの表面に対して紫外線(波長が約190~400nmの光)と可視光線(波長が約400~750nmの光)の両方を照射できるように構成されている。識別手段22は,錠剤等aの表面で反射した反射光を受光してスリット25に入射させた後,プリズムや回析格子などのグレーティング26で分光して,反射光のスペクトルを得ることが可能である。また,受光した反射光をフォトダイオードなどを配列した走査素子27に結像させ,反射光のスペクトルを得ることも可能である。そして,その反射光のスペクトルに基づいて錠剤等aの成分や色を特定して錠剤等aの種類を識別するように構成されている。この錠剤等aの種類の識別は,検査対象となる錠剤等aの表面で反射した反射光を,予め成分と色が分かっている錠剤等についての反射光のスペクトルと比較し,検査対象となる錠剤等aの種類の正否を判定することにより行われる。なお図3に示す例では,プラスチックシート1に5列に配置された凹部2の第3列(中央)の凹部2に収納された錠剤等aの種類の識別を行う場合のみについて説明したが,その他の第1,2,4,5列の凹部2に収納された錠剤等aについても,同様に光源21から紫外線と可視光線の両方の光が照射され,それぞれ別の識別手段22によって,その反射光のスペクトルに基づいて錠剤等aの種類が識別されるように構成されている。また,図示はしないが,他の列の凹部2に収納された錠剤等aからの反射光の影響を受けずに各列の凹部2に収納された錠剤等aについて正確な識別ができるように,各列の凹部2に対する識別手段22同士の間に遮光板などを配置したり,あるいは,各列の凹部2に対する識別手段22同士を斜めにずらして配置することも可能である。更に,凹部2の配列は5列に限らず,任意の列数とすることができる。」
・図2の記載事項
[図:0001386124000022.jpg]
・図3の記載事項
[図:0001386124000023.jpg]
3-2 引用文献1を主引例とする場合
(1)訂正発明1と引用発明1との対比
ア 構成1aにおいて、「光源部10A,10B」は、構成1bにおいて「搬送中の測定台20上の錠剤Oに対して近赤外光の測定光L1,L2を照射」すると特定されるものであるところ、引用発明1の「錠剤検査装置1」が「複数の錠剤Oが搬送方向に並んでいる場合は1錠ごとに異常を判定する」(構成1f)際には、「光源部10A,10B」は搬送中の測定台20上の搬送方向に並ぶ複数の錠剤Oに対して各錠剤Oが光源部10A,10Bに対向する度に近赤外光の測定光L1,L2を照射することとなるのは明らかである。
よって、構成1aの「光源部10A,10B」は、構成Aの「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部」に相当する。
イ 構成1aの「撮像部30」は、「錠剤Oから出射される反射光L3を分光カメラ32において受光」し「スペクトルデータを画素毎に取得」するもの(構成1c)であり、上記アで説示したことと同様に、「複数の錠剤Oが搬送方向に並んでいる場合は1錠ごとに異常を判定する」(構成1f)際には、「光源部10A,10B」が搬送中の測定台20上の搬送方向に並ぶ複数の錠剤Oに対して各錠剤Oが光源部10A,10Bに対向する度に近赤外光の測定光L1,L2を照射し、それに応じて「撮像部30」も該搬送中の複数の錠剤Oに対し個々に順次「反射光L3を複数回取得」(構成1c)することとなるのは明らかである。
よって、構成1aの「撮像部30」は、構成Bの「前記複数の測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部」に相当する。
ウ 構成1dの「分析部40」は、「撮像部30から送られるスペクトルデータを受け取り、錠剤Oの異常を判定する際に用いる特徴量を算出」し(構成1d)、「判定部50」は「分析部40によって算出されたスペクトルデータ毎の特徴量に基づいて各画素のスペクトルデータ毎に正常品とは異なる材料を含む等の異常の有無を判定」(構成1e1)するものである。
よって、引用発明1の「分析部40」及び「判定部50」からなる要素と、構成Cの「前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分の含有量を検出する処理部」とは、「前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分」に関する検査を行う「処理部」である点で共通する。
エ 引用発明1の「撮像部30」が、「測定台20の面内で搬送方向に対して垂直な方向に長辺を有する視野領域を有するラインカメラ」である点(構成1c)と、構成Dの「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され」とは、「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが交差するように配置され」る点で共通する。
オ 引用発明1において、「撮像部30」は「測定台20の面内で搬送方向に対して垂直な方向に長辺を有する視野領域を有するラインカメラ」であり「同一の錠剤Oの異なる複数箇所から反射光L3を複数回取得」するもの(構成1c)であるから、《該「撮像部30」の撮影間隔及び視野領域の大きさは錠剤Oが視野領域内を通過する間に同一の錠剤Oから反射光L3を複数回取得する間隔及び大きさである》(以下「認定事項オ」という。)といえる。
そして、該認定事項オは、構成Eの「前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、」「同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであ」ること、に相当する。
カ(ア)引用発明1において、「判定部50」は「少なくとも一部の画素に係るスペクトルデータにおいて異常ありと判定された場合には、異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対してその周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて当該判定結果の信頼性を確認する処理を行い、異常判定の信頼性を確認した結果、錠剤が異常を有するか否かを判定」(構成1e2)するものである。
そして、「異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対してその周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて当該判定結果の信頼性を確認する処理を行」うことは、「異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素」の「スペクトルデータ」と「その周辺の画素により取得されたスペクトルデータ」とをひとまとまりのデータセットと捉えて判定結果の信頼性を確認する処理を行っているということができる。
(イ)また、引用発明1において、「撮像部30」は「同一の錠剤Oの異なる複数箇所から反射光L3を複数回取得して錠剤Oの各位置に対応したスペクトルデータを画素毎に取得」(構成1e)するものであり、「分析部40」は「撮像部30から送られるスペクトルデータを受け取り、錠剤Oの異常を判定する際に用いる特徴量を算出」(構成1d)するものであり、「判定部50」は「分析部40によって算出されたスペクトルデータ毎の特徴量に基づいて各画素のスペクトルデータ毎に正常品とは異なる材料を含む等の異常の有無を判定」(構成1e1)するものであるから、構成1e2における「異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素」の「スペクトルデータ」と、「その周辺の画素により取得されたスペクトルデータ」とからなるデータセットは、同一の錠剤Oの異なる複数箇所から反射光L3を複数回取得することで取得されたものであり、異なる時点で取得されたデータを含み得ることは明らかである。
(ウ)一方、訂正発明1の「スペクトルデータを統合」に関して、本件特許明細書には「錠剤M1に対応するスペクトルデータを統合することによって、図4に示すように、平面視で錠剤M1をほぼ網羅するスペクトルデータを得ることができることになる。」(【0016】)と記載されている。当該記載によると、本件発明1の「スペクトルデータを統合」には、少なくとも、個々の錠剤について、平面視で複数箇所のスペクトルデータを集めてひとまとまりのデータセットとする態様が含まれると認められる。
(エ)以上を踏まえると、引用発明1の「異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対してその周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて当該判定結果の信頼性を確認する処理を行」う点(構成1e2)は、構成Fの「前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合し」に相当する。
(オ)そうすると、引用発明1の「判定部50」が「少なくとも一部の画素に係るスペクトルデータにおいて異常ありと判定された場合には、異常を示す結果が得られたスペクトルデータを取得した画素に対してその周辺の画素により取得されたスペクトルデータにも同様に異常を示すもの含まれるか否かに基づいて当該判定結果の信頼性を確認する処理を行い、異常判定の信頼性を確認した結果、錠剤Oが異常を有するか否かを判定」(構成1e2)することと、構成Fの「前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」こととは、「前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分」に関する検査を行う点で共通する。
キ 引用発明1の「錠剤検査装置1」と、構成Gの「成分含有量測定装置」とは、「成分」検査「装置」である点で共通する。
(2)一致点・相違点
上記(1)から、訂正発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次の通りである。
ア 一致点
「A 一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対して近赤外線を照射する照射部と、
B 前記複数の測定対象物で反射された前記近赤外線の反射光を取得し、前記反射光を分光してスペクトルデータを出力する撮影部と、
C’前記撮影部から出力されるスペクトルデータをもとに、前記複数の測定対象物それぞれに含まれる所定成分に関する検査を行う処理部と、を備え、
D’前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが交差するように配置され、
E’前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、
F 前記処理部は、前記同一の測定対象物で反射された反射光を含む複数時点での前記スペクトルデータを統合して、前記同一の測定対象物に含まれる所定成分に関する検査を行う、
G’成分検査装置。」
イ 相違点
(ア)相違点1-1 (構成D、E)
一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対し、撮影部が、訂正発明1においては、その矩形状の長尺の視野領域の長手方向と、測定対象物が列状に並ぶ方向であり搬送される方向である「一の方向」との交差方向が「斜め」であり、「撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさ」が「前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」するものであるのに対し、引用発明1では、前記交差方向が「垂直方向」であり、撮像も「1錠ごと」すなわち「複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」しない点。
(イ)相違点1-2(構成C、G)
訂正発明1は、「処理部」が行う「所定成分に関する検査」が「測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」ことである「成分含有量測定装置」であるのに対し、引用発明1では、「所定成分に関する検査」が正常品とは異なる材料を含む等の異常の有無判定であり、「所定成分の含有量を検出」しているかは不明である点。
(3)相違点の検討
ア 相違点1-1について
(ア)一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物に対し、撮影部が、訂正発明1においては、その矩形状の長尺の視野領域の長手方向と、測定対象物が列状に並ぶ方向であり搬送される方向である「一の方向」との交差方向が「斜め」であり、かつ「撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさ」が「前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」すること、について、引用文献2~6及び甲第5・6号証(甲第2~6号証及び取消理由通知書で当審にて探知・採用した引用文献5・6)の何れにも記載がない。
a 例えば、測定対象物の搬送方向に対し、矩形長尺の視野領域の長手方向を斜めに交差させることについては、引用文献5・6に記載されており、上記3-1(7)で説示したとおり周知技術であるといえるが、これら各文献においても、矩形長尺の視野領域による撮影は測定対象物個々について行うことしか開示がなく、搬送方向に並ぶ複数の測定対象物に対し同時に撮影を行うことについては開示がない。
また、前記引用文献5・6の記載事項(周知技術)において、矩形長尺の視野領域を搬送方向に並ぶ複数の測定対象物にわたるように変更することは、そのようにする動機が引用文献5・6の記載事項や技術常識に照らしても見いだせないし、そのように変更することで、同時に複数の異なる測定対象物からの画像が取得されることになり、これらを個別の測定対象物ごとに分離するという新たな技術課題が生じることになるから、当該変更することについて、引用文献1~6及び甲第5・6号証の何れにも開示がない以上、直ちに当業者にとって容易になし得たということはできない。
b また、構成Eの「前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」することについては、引用文献1~6及び甲第5・6号証を通じ、開示が見いだせない。
引用文献3には、図3などに、搬送方向に並ぶ複数の測定対象物を含む2次元領域の画像を得ることが開示されるものの、この2次元画像は、「近赤外スペクトルカメラ190により、プレート180の幅方向、すなわち、プラスチックシート300の搬送方向に直交する方向の線上のスペクトルが撮像され」(【0019】)た一次元領域のスペクトル画像データから、「2次元画像生成部903」が生成した「幅方向x及び時間方向T(即ち搬送方向y)の2軸を有する」(【0023】)2次元画像であり、相違点1-1に係る、「矩形状の長尺の視野領域」により「前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」することで生成されたものではない。
(イ)以上、上記(ア)のとおりであるから、引用文献1~6及び甲第5・6号証によって、相違点1-1は充足されない。
(ウ)さらに、構成DとEとは、構成Dにおいて規定される、矩形状の長尺でその長手方向が搬送方向と斜めに交差する視野領域を前提として、構成Eにおいて、この視野領域によって、「前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する」ことができるように撮影間隔を設定すること、または、ある撮影間隔に対し、「前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する」ことができるように視野領域の形状を設定することを特定するもので、一体不可分の構成であるといえる。
そうすると、上記(ア)bにおいて、仮に、引用文献3の図3のような2次元画像を、「一の方向に沿って列状に並んだ状態で前記一の方向に搬送される複数の測定対象物」「からの反射光を同時に受光」することにより撮影するという技術事項が、引用文献3の記載事項から容易に想到し得るといえたり、引用文献3によらずともそれ自体周知であるといえたとしても、当該技術事項と、構成Dの「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差する」ことに相当する技術事項とを組み合わせる技術思想が引用文献1~6及び甲第5・6号証の何れにも開示されていない以上、相違点1-1に係る構成が当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点1-2について論考するまでもなく、訂正発明1は、引用発明1及び引用文献2~6並びに甲第5・6号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、訂正発明2~5は、訂正発明1をさらに限定した構成を備えるものであるから、同様に、引用発明1及び引用文献2~6並びに甲第5・6号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
3-3 引用文献2~4のいずれかを主引例とする場合
上記3-2(3)で説示したとおり、構成Eの「前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」することや、一体不可分である上記相違点1-1に相当する構成については、引用文献1~6及び甲第5・6号証を通じ、開示が見いだせない。
また、これらが周知技術であるとの証拠もない。
よって、引用文献2~4(引用発明2~4)の何れを主引例(主引用発明)としたとしても、上記相違点1-1に係る、構成D及びEの組み合わせに相当する構成とすることが当業者にとって容易になし得たということはできないから、訂正発明1は、引用発明1及び引用文献2~6並びに甲第5・6号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、訂正発明2~5は、訂正発明1をさらに限定した構成を備えるものであるから、同様に、引用発明1及び引用文献2~6並びに甲第5・6号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第5.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 サポート要件について
(1)申立人の主張事項
申立人は、異議申立書及び申立人意見書において、本件訂正前の本件特許請求の範囲の記載についてのサポート要件違反に関し、上記第4.2で検討した参考図1・2、参考図1-A~3-Aの各態様の含否に関係する事項(異議申立書3.(4)エ(a)・(b)、申立人意見書3(2)(2-2))以外に、下記の事項について不備を主張する。
(主張1-ア)本件特許明細書には、「本件特許図面の図3の場合には、時点t1から時点t2の位置まで錠剤Mlが移動する周期で分光カメラ12での撮影を行えばよい。したがって、視野領域ARの長手方向と錠剤Mの搬送方向とが直交する方向に分光カメラ12が配置され、視野領域ARの短手方向の幅だけ移動する周期で撮影する場合に比較して、撮影周期はより長い。」(【0027】)と記載されるが、そのような効果は無い。
すなわち、視野領域の向きに関係なく、視野領域内に錠剤が存在するときにのみ、その視野領域では錠剤の撮像ができるということに何ら変わりはない筈であって、撮像周期が長いという効果はそもそも無い筈である。そして、【0027】の効果が、本件発明によって奏されるものであるというのであれば、サポート要件に違反する。(異議申立書3.(4)エ(f))
(2)主張1-アについて
上記【0027】に記載された効果は、上記2(3)ア(オ)で説示したとおり、矩形状の長尺の視野領域(短手方向幅d)の長手方向と前記一の方向とが斜め(以下、角δとする。;0°<δ<90°)に交差することにより、例えば測定対象物の全領域を重複なく撮影する場合における撮影間の移動距離が[d/sinδ]と、[δ=90°]の場合より延びることで、撮影時間間隔が増すことを述べたものであると解され、構成Dの「前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され」ることによる効果であるといえる。
よって、上記主張1-アは失当である。
2 明確性要件について
(1)申立人の主張事項
申立人は、異議申立書において、本件訂正前の本件特許請求の範囲の記載についての明確性要件違反に関し、下記の事項について不備を主張する。
(主張2-ア)本件訂正前発明1が上記参考図1・2、参考図1-A・2-Aにあたる態様を含み、所期の効果が得られないため、発明が不明確であること。(異議申立書3.(4)エ(a)、申立人意見書3(2)(2-1))
(主張2-イ)本件発明1の「D ・・・当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置」について、どの程度の『斜め』なのかについて発明の詳細な説明を参照するも特段の記載は認められない。それ故、文言どおりの意味として解釈するならば、『当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが』『平行する場合』と、『直交する場合』とを除く全ての場合を含むと解することができる。つまり、例えば0.001度でも『斜め』になっていればこの要件を満たすことになるが、そのような僅かな『斜め』では、平行する場合や、直交する場合との差異は殆どない筈であるから、この点において従来技術との明確な差はなく、発明が不明確である。(異議申立書3.(4)エ(c))
(主張2-ウ)本件発明1の「D 撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し・・・」について、該記載からは、「正方形」の視野領域は含まないと認識することはできるが、どの程度の縦横比であれば『矩形状の長尺の視野領域』といえるのかが不明確である。例えば、縦横比が「100:101」、或いは、「100:150」のような長方形も含むのか、発明の外縁が不明瞭であって、発明が不明確である。(異議申立書3.(4)エ(d))
(2)申立人の各主張事項について
ア 主張2-アについて
訂正1発明1(~5)について、上記参考図1・2、参考図1-A・2-Aに係る態様個々の含否、及び、該各発明に含まれる態様について、所期の効果を奏することについては、上記2(3)で説示したとおりである。
よって、主張2-アはあたらず、訂正後発明1~5がこの点で不明確とはいえない。
イ 主張2-イについて
(ア)構成Dの「斜め」がわずかな角度であっても、上記1(2)で説示した効果がわずかであっても皆無であるとはいえない。
(イ)訂正発明1において、視野領域の「斜め」の程度は、構成D・Eを満たす限りにおいて任意であることが、訂正後請求項1の記載から明確に把握できるから、「例えば0.001度でも『斜め』になっていればこの要件を満たすことになる」こと自体により訂正後請求項1の記載が不明確と言うことはできない。
また、「そのような僅かな『斜め』では、平行する場合や、直交する場合との差異は殆どない筈であるから、この点において従来技術との明確な差はな」いこと、すなわち効果が従来技術に比して有意でないこと自体は、訂正後請求項1の記載の明確性に関する判断を左右しない。
ウ 主張2-ウについて
(ア)構成Dの「矩形状の長尺」なる特定事項は、例えば長方形は含み、正方形は含まないことが明らかであり、特段その外縁が不明確であるとはいえない。
(イ)また、上記2(3)で説示したとおり、訂正発明1の構成D・Eは
「D 前記撮影部は、矩形状の長尺の視野領域を有し、当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差するように配置され、
E 前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさは、前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光し、且つ、同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさであり、」
というものであり、視野領域の形状に関しては、「矩形状の長尺」であること以外に、「当該視野領域の長手方向と前記一の方向とが斜めに交差」し、「前記撮影部の撮影間隔及び前記視野領域の大きさ」が「前記複数の測定対象物が前記視野領域内を通過する間に、前記複数の測定対象物からの反射光を同時に受光」し(する間隔及び大きさ)、かつ「同一の測定対象物から異なる領域の前記反射光を複数回取得する間隔及び大きさ」であることも特定されるから、「矩形状の長尺」すべてが含まれるものではなく、撮影間隔や測定対象物の間隔・搬送速度との組み合わせが特定されていることにより、さらに形状が限定され得るものである。
また、該組み合わせについての特定事項に合致することが理解できる態様として本件特許図面の図1・3・4に関連する例が本件特許明細書中に示されるとおり、当該特定事項が技術的欠陥や矛盾を伴うとか、技術的意味を理解できないということもできない。
エ 小括
以上ア~ウのとおりであるから、本件特許明細書・図面を考慮し、技術的常識を基礎として、訂正請求項1~5を理解した場合、該各請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまでいうことはできない。
3 実施可能要件について
(1)申立人の主張事項
構成Fの「同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」ことについて、「含有量」を検出する具体的な技術が実施可能に開示されていない。
発明の詳細な説明を参照すると、
「ステップS4での含有量の検出は、統合したスペクトルデータに対し、例えば、平滑化処理、平均化処理、標準化処理、吸光度変換処理、一次微分処理、二次微分処理、ベースライン補正処理、波長データの選択処理等といった、波形処理を行い、波形処理により得た波形処理スペクトルデータに基づき、PCA・・・やPLS・・・といった多変量解析を用いて、錠剤Mの主薬成分の含有量を決定する。」(【0024】)
と記載されているが、錠剤の厚さや体積が不明なままで、如何にして「スペクトルデータ」から絶対量である「含有量」が導き出せるのかについて、実施可能に開示されているとはいえない。
(2)申立人の主張事項について
訂正発明1~5に基づいて、少なくとも測定対象物の表面近傍の成分含有量が測定可能であることは明らかである。
また、混練物のように、測定対象物全体の成分分布が、夾雑物や成分の偏在を含め、表面の成分分布により代表しうるとの仮定をおくことができる場合があり得ることは、技術常識に照らし容易に想像できるのであり、そのような場合には訂正発明1~5に係る発明により、測定対象物全体の成分分布が推定可能であるといえる。
以上のとおりであるから、訂正発明1~5により、構成Fの「同一の測定対象物に含まれる所定成分の含有量を検出する」ことについて、「含有量」を検出する具体的な技術が実施可能に開示されていないとまではいえない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700585