特許異議申立
2021-700576
VEGF拮抗薬を収容したプレフィルドプラスチックシリンジ
- 審判番号
- 2021-700576
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-567833
- 登録番号
- 6802069
- 請求日
- 2021年06月16日
- 審決日
- 2022年12月27日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】フォーマイコン アーゲー
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【権利者代理人】本田 淳
- 【権利者代理人】中村 美樹
- 【異議申立人】目黒 茂
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 村上 聡
- 審判官 村上 哲
- 分類
- P1651.113-ZAA(A61M) / P1651.121-ZAA(A61M) / P1651.536-ZAA(A61M) / P1651.537-ZAA(A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6802069号発明「VEGF拮抗薬を収容したプレフィルドプラスチックシリンジ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6802069号の特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第6802069号の請求項1、8に係る特許を取り消す。
特許第6802069号の請求項2~7、9~11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6802069号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る発明についての出願は、平成27年5月12日に出願され、令和2年11月30日にその特許権の設定登録がされ、令和2年12月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 6月16日 :異議申立人目黒茂(以下、「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議申立書の提出
令和3年10月28日付け :取消理由通知書
令和4年 2月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 3月30日 :申立人による意見書の提出
令和4年 6月15日付け :取消理由通知書(決定の予告)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年2月3日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6802069号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「前記プレフィルドシリンジは、0.5mL~1.0mLの公称最大充填量を有し」と記載されているのを、「前記プレフィルドシリンジは、0.5mL又は1.0mLの公称最大充填量を有し」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記ラニビズマブは6mg/ml又は10mg/mlの濃度で含有され」との記載から「6mg/ml又は」との選択肢を削除し、「前記ラニビズマブは10mg/mlの濃度で含有され」に訂正する。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に記載の「プレフィルドシリンジ」について「前記プレフィルドシリンジは未被覆であることによって、前記シクロオレフィンポリマー又はコポリマー材料は、前記プレフィルドシリンジの内部に収容された液体組成物と直接接触する」との要件を加える訂正を行う。
エ 請求項8の訂正事項
請求項1を引用する請求項8についても上記訂正事項1-1、訂正事項1-2、訂正事項1-3のとおり訂正する。
(2)訂正事項2~7
特許請求の範囲の請求項2~7を削除する。
(3)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項に記載の1つ以上のプレフィルドシリンジを含むキット」とあるのを「請求項1に記載の1つ以上のプレフィルドシリンジを含むキットであって、前記キットは酸素吸収材を含まない、請求項1に記載の1つ以上のプレフィルドシリンジを含むキット」に訂正する。
(4)訂正事項9~11
特許請求の範囲の請求項9~11を削除する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正事項1-1、訂正事項1-2及び訂正事項1-3を含み、訂正事項1-1は、プレフィルドシリンジの公称最大充填量について、「0.5mL~1.0mL」と範囲で特定していたものについて、その範囲に含まれる値である「0.5mL又は1.0mL」に限定するものある。また、訂正事項1-2は、ラニビズマブの濃度について、「6mg/ml又は10mg/ml」と選択的に特定しているものについて、その選択肢の一方である「10mg/ml」に限定するものである。さらに、訂正事項1-3は、「プレフィルドシリンジ」について、「未被覆」である構成に限定し、それによりプレフィルドシリンジを構成する「シクロオレフィンポリマー又はコポリマー材料は、前記プレフィルドシリンジの内部に収容された液体組成物と直接接触する」との作用を特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに適合する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更するものでないこと
訂正事項1-1、訂正事項1-2及び訂正事項1-3は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、それにより請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
上記アで示したとおり、訂正事項1-1は、訂正前に特定されていた範囲内の特定の値に限定するものであり、訂正事項1-2は、訂正前の複数の選択肢をひとつに限定するものである。また、訂正事項1-3については、本件明細書の段落【0042】に、「好適には、前記プレフィルドシリンジは未被覆である、すなわち、前記シクロオレフィンポリマー又はコポリマー材料は、その内部に収容された液体組成物と直接接触し」と記載されているように、本件明細書に記載された事項である。
したがって、訂正事項1-1、訂正事項1-2及び訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 請求項8の訂正事項
請求項1を引用する請求項8についても、訂正事項1-1、訂正事項1-2、訂正事項1-3は、上記ア~ウと同様の理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合し、さらに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2~7について
訂正事項2~7は、請求項の削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項2~7は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項2~7は、請求項の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正事項2~7により削除された請求項2~7を引用しないようにするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、1つ以上のプレフィルドシリンジを含む「キット」について、「酸素吸収材を含まない」ものに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更するものでないこと
訂正事項8は、上記アで示したとおり明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、それにより請求項8に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項8は、本件明細書の段落【0064】に、「好適には、キットは、典型的にはブリスターパックのようなパッケージ内の酸素濃度を低下させるために用いられる酸素吸収材を含まない。」と記載されているように、本件明細書に記載された事項であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)訂正事項9~11について
訂正事項9~11は、請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項9~11は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項9~11は、請求項の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1~11について、請求項2~11は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものある。したがって、訂正前の請求項1~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 小括
上述のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正をすることを認める。
第3 当審の判断
上記第2のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、「本件発明1~11」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものである。
これに対して、令和4年6月16日付けで取消理由通知書(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められる。
したがって、本件発明1、8は、甲第1号証(豪州特許第2012101677号)に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1発明及び周知例(特開2004-229750号公報、特開平10-57446号公報、特開平11-332984号)に示された技術常識ないし周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、本件発明1、8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1、8は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。さらに、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。したがって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、請求項2~7、9~11に係る特許は、本件訂正により削除された。これによって、申立人による請求項2~7、9~11に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなり、その補正をすることができないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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