特許異議申立
2021-700525
窒化ホウ素凝集粒子、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法、該窒化ホウ素凝集粒子含有樹脂組成物、及び成形体
- 審判番号
- 2021-700525
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-021246
- 登録番号
- 6794613
- 請求日
- 2021年05月31日
- 審決日
- 2024年02月07日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6794613号発明「窒化ホウ素凝集粒子、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法、該窒化ホウ素凝集粒子含有樹脂組成物、及び成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6794613号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第6794613号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6794613号の請求項1~11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2015年(平成27年)2月5日(優先権主張 平成26年2月5日(2件)、平成26年10月8日、平成26年12月22日、平成27年1月14日(2件))に出願され、令和2月11月16日にその特許権の設定登録がされ、令和2年12月2日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許について、特許異議申立人 株式会社レクレアル(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、次のとおりに手続が行われた。
令和 3年 5月31日 特許異議の申立て
令和 3年 9月28日付け 取消理由通知
令和 3年11月30日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 1月 7日 異議申立人による意見書の提出
令和 4年10月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 4年12月27日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和4年12月27日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)に対して、異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、指定期間内に意見書は提出されなかった。また、本件訂正請求がされたので、令和3年11月30日にされた訂正の請求(以下、「先の訂正請求」といい、この訂正請求により訂正された各請求項を「先の訂正後の請求項1」などという。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「該BN一次粒子の長軸が10μm以下であり、」
と記載されているのを、
「該BN一次粒子の長軸が3μm以下であり、」
に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上2.0以下であり、」
と記載されているのを、
「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、」
に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上1000Å以下であることを特徴とする」
と記載されているを、
「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上456Å以下であることを特徴とする」
に訂正する。
(4) 一群の請求項について
訂正前の請求項2~11は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、請求項1~11は一群の請求項であるところ、訂正事項1~3による訂正は、その一群の請求項に対して請求されたものである。
2 訂正の適否について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に「該BN一次粒子の長軸が10μm以下であり、」と記載されているのを、「該BN一次粒子の長軸が3μm以下であり、」と訂正して、BN一次粒子の長軸の上限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0022】の「BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の長軸は ・・・ 通常10μm以下、 ・・・ より好ましくは3μm以下である。」という記載に基づくものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1に「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上2.0以下であり、」と記載されているのを、「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、」と訂正して、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))の上限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0026】の「BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))は、 ・・・ 通常2.0以下、 ・・・ 更に好ましくは1.2以下である。」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1に「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上1000Åであることを特徴とする」と記載されているのを、「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上456Å以下であることを特徴とする」と訂正して、BN一次粒子の平均結晶子径の上限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0126】の表1において、実施例3のBN一次粒子の平均結晶子径が「456Å」であることが記載されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(4) 独立特許要件について
本件特許の請求項1~11の全ての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされたので、訂正後の請求項1~11に係る発明について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件特許について
1 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。
「【請求項1】
窒化ホウ素一次粒子(以下「BN一次粒子」と称する。)が凝集してなる窒化ホウ素凝集粒子(以下「BN凝集粒子」と称す。)であって、
該BN一次粒子の長軸が3μm以下であり、
10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、かつ該BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上456Å以下であることを特徴とするBN凝集粒子。
【請求項2】
球状である請求項1に記載のBN凝集粒子。
【請求項3】
BN凝集粒子がカードハウス構造を有する請求項1または2に記載のBN凝集粒子。
【請求項4】
前記BN一次粒子が、h-BN一次粒子である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のBN凝集粒子。
【請求項5】
樹脂と、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のBN凝集粒子を含むBN凝集粒子含有樹脂組成物。
【請求項6】
BN凝集粒子含有樹脂組成物中におけるBN凝集粒子の含有割合が、前記BN凝集粒子と前記樹脂の合計を100質量%とした際、5質量%以上95質量%以下である請求項5に記載のBN凝集粒子含有樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂が熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂である請求項5又は6に記載のBN凝集粒子含有樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のBN凝集粒子を含む成形体。
【請求項9】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載のBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項10】
請求項8または9に記載の成形体を含むパワー半導体デバイス。
【請求項11】
原料窒化ホウ素粉末のスラリー(以下「BNスラリー」と称す。)を造粒し、加熱処理をすることによって請求項1ないし4の何れか1項に記載のBN凝集粒子を製造する方法であって、
原料窒化ホウ素粉末中の全酸素濃度が4質量%以上10質量%以下であり、
前記原料窒化ホウ素粉末の粉末X線回折測定により得られる(002)面のピーク半値幅が、2θの角度で、0.4°以上2.0°以下であり、
該BNスラリーがバインダーを含み、
該BNスラリーの粘度が200mPa・s以上5000mPa・s以下であり、
前記加熱処理を1800℃以上2300℃以下で行うことを特徴とするBN凝集粒子の製造方法。」
2 本件明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明及び図面(以下、単に「発明の詳細な説明」、「図面」ということがある。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は窒化ホウ素凝集粒子(以下「BN凝集粒子」と称す。)、該粒子の製造方法に係り、詳しくは、窒化ホウ素一次粒子(以下「BN一次粒子」と称す。)が凝集してなるBN凝集粒子及びその製造方法に関する。
本発明はまた、このBN凝集粒子を含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素(以下「BN」と称す。)は、絶縁性のセラミックであり、ダイヤモンド構造を持つc-BN、黒鉛構造をもつh-BN、乱層構造を持つα-BN、β-BNなど様々な結晶型が知られている。
これらの中で、h-BNは、黒鉛と同じ層状構造を有し、合成が比較的容易でかつ熱伝導性、固体潤滑性、化学的安定性、耐熱性に優れるという特徴を備えていることから、電気・電子材料分野で多く利用されている。
【0003】
近年、特に電気・電子分野では集積回路の高密度化に伴う発熱が大きな問題となっており、いかに熱を放熱するかが緊急の課題となっている。h-BNは、絶縁性であるにもかかわらず、高い熱伝導性を有するという特徴を活かして、このような放熱部材用熱伝導性フィラーとして注目を集めている。
しかしながら、h-BNは板状の粒子形状であり、その板面方向(ab面内あるいは(002)面内)には高い熱伝導性を示すものの(通常、熱伝導率として400W/mK程度)、板厚方向(C軸方向)には低い熱伝導性(通常、熱伝導率として2~3W/mK程度)しか示さないため、これを樹脂に配合してBN粒子含有樹脂組成物とし、例えば、板状の成形体を成形した場合、板状のh-BNが成形時にBN粒子含有樹脂組成物の流動方向である成形体の板面方向に配向することとなり、得られる成形体は、板面方向には熱伝導率に優れるものの、厚み方向には低熱伝導率しか示さないという問題があった。
・・・
【0006】
このような従来のBN凝集粒子の用途として、パワー半導体デバイスなどで必要とされる放熱シートに用いることが知られているが、BN凝集粒子間の接触抵抗を低減するためには、一定の圧力下での成形が必要なため、その圧力によってBN凝集粒子が崩壊し、h-BN一次粒子が成形面方向に配向してしまい、結果として成形面に垂直方向な熱伝導は低く、実用化レベルに到達していないのが現状である。つまり、一定圧力下でも放熱シート垂直方
向に高い熱伝導性を付与可能なBN凝集粒子が望まれており、さらにBN凝集粒子自体が高い熱伝導性を有する凝集粒子の開発が望まれている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの検討によると、従来のBN凝集粒子では、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子間の界面およびh-BN一次粒子の結晶性の低さが、BN凝集粒子の熱伝導を低下させる原因の一つであるということがわかってきた。即ち、これらの原因はh-BN一次粒子界面およびh-BN一次粒子中の結晶粒界に於いて熱伝導の担い手であるフォノンが散乱されるからであると考えた。
【0009】
また、樹脂に従来のBN凝集粒子を充填した場合にも、BN凝集粒子を大きくすることによる凝集粒子間の接触抵抗はある程度低減可能であるが、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の配向がBN凝集粒子同士の接触抵抗を増加させ、熱伝導性を低下させる原因となることがわかってきた。即ち、成形体としての熱伝導性を向上させるためには、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の配向を制御し、BN凝集粒子同士の接触抵抗を低減させるとともに、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の結晶性を高め、さらにBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子中の粒界を低減することが有効であると考えた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子が高熱伝導性でありながら、BN凝集粒子同士の接触抵抗も低減したBN凝集粒子を製造し、各種成形体への適用性に優れたBN凝集粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。本発明はまた、このBN凝集粒子と樹脂とを含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、BN凝集粒子を作製する際の原料スラリー粘度を特定の範囲にすることによって、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子中の平均結晶子径が大きくなることを見出した。平均結晶子径が大きくなることでh-BN一次粒子中の結晶子間の粒界が減少し、結果としてBN凝集粒子の熱伝導性を高めることに成功した。さらに驚くべきことに、このようにして作製されたBN凝集粒子は、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の特定の結晶面が配向するため、該BN凝集粒子を用いて成形体とした際に、従来のBN凝集粒子と比較して熱伝導性の高い成形体を作製可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【発明の効果】
【0015】
本発明のBN凝集粒子は、粉末X線回折測定により得られる、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面の粉末X線回折測定における前記h-BN一次粒子の(002)面ピークから求めた前記h-BN一次粒子の平均結晶子径が320Å以上であるため、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子中の結晶粒界で生じるフォノン散乱を減らすことができ、その結果として、高い熱伝導性を示す。さらに、特定の圧力範囲で成形した場合でもh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であるため、本発明のBN凝集粒子を含有する樹脂組成物を成形して得られる成形体は、成形後でもBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の特定の結晶面の配向が保たれる。従って、成形面に垂直方向(成形体厚み方向)に高い熱伝導性を示し、好ましくはパワー半導体デバイスなどで必要とされる放熱シートに非常に有用なものである。」
「【図面の簡単な説明】
【0016】
・・・
【図2】本発明のBN凝集粒子の倍率100万倍のSEM写真である。」
「【0022】
(BN凝集粒子の特性)
・h-BN一次粒子の大きさ BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の長軸は通常0.5μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、更に好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.1μm以上である。また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。
尚、上記長軸とはSEM測定により得られたBN凝集粒子1粒を拡大し、1粒のBN凝集粒子を構成しているh-BN一次粒子について、画像上で観察できるh-BN一次粒子の最大長を平均した値である。
【0023】
・BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の結晶構造
h-BN一次粒子の結晶構造は、特に限定されないが、合成の容易さと熱伝導性の点で六方晶系のh-BNを主成分として含むものが好ましい。また、バインダーとしてBN以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、BNが主成分として含まれていればよい。なお、上記h-BN一次粒子の結晶構造は、粉末X線回折測定により確認することができる。
【0024】
・h-BN一次粒子の平均結晶子径
BN凝集粒子を粉末X線回折測定して得られるh-BN一次粒子の(002)面ピークから求めたh-BN一次粒子の平均結晶子径は、特に制限はされないが、平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点から好ましい。例えば、通常300Å以上、好ましくは320Å以上、より好ましくは375Å以上であり、更に好ましくは380Å以上、より更に好ましくは390Å以上、特に好ましくは400Å以上であり、通常5000Å以下、好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下である。上記平均結晶子径が大きすぎると、h-BN一次粒子が成長しすぎるため、BN凝集粒子内の間隙が多くなり、成形体とする際の成形性が悪化するとともに、間隙が多くなることにより熱伝導性が向上しなくなる傾向がある。上記平均結晶子径が小さすぎると、h-BN一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。
【0025】
尚、粉末X線回折測定は、0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるようにBN凝集粒子を充填し、測定される。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られるh-BN一次粒子の(002)面ピークから、後述の実施例において記載の通り、Scherrer式にて求められる結晶子径である。
【0026】
・h-BN一次粒子のピーク面積強度比
BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))は、通常0.25以上、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上であり、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。
【0027】
通常、放熱シートなどにおいて最適なプレス圧力条件は、放熱シートの種類によって異なる。樹脂マトリックス中に分散したBN凝集粒子は、用途に応じた圧力条件にさらされるが、通常、BN粒子は圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する傾向にある。BN凝集粒子を用いた場合でも成形圧力に対して粒子変形が生じ、結果としてab面が圧力方向に直行する方向に配向する傾向にある。
例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもh-BN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要である。
【0028】
本発明では、本明細書で規定する物性を満たすBN凝集粒子、好ましくはBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子がカードハウス構造、すなわち、h-BN一次粒子同士が一次粒子平面部と端面部で接触することによる相互補強構造を有することから、広い成形圧力範囲でBN凝集粒子の変形を抑制することが可能である。用途に応じて最適な圧力範囲は異なるが、成形体の厚み方向に高熱伝導化するためには、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲において、少なくとも一定以上のh-BN一次粒子の配向が保持される状態が達成することが好ましい。
【0029】
一定以上のh-BN一次粒子の配向とは、例えばh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。高熱伝導性を達成するには、少なくともピーク面積強度比は0.25以上であることが必要と考えている。ピーク面積強度比の下限、上限については前述のとおりである。
尚、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲におけるピーク面積強度比は、上記圧力範囲において一点でも所定の数値を満たせば問題なく、本発明の圧力範囲全てにおいて達成する必要はない。また、好ましくは、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2の3点にて所定の数値を満たすことである。
【0030】
なお、上記ピーク面積強度比は、錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gの粉末を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、種々のプレス圧で錠剤成形した試料を測定に供する(例えば、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2等)。測定は、オランダPANalytical社製X‘PertPro MPD粉末X線回折装置を用いて行うことで、該当するピーク面積の強度比を計算することができる。」
「【0039】
[BN凝集粒子の製造方法]
本発明のBN凝集粒子は、好ましくは、粘度が200~5000mPa・sである原料BN粉末を含むスラリー(以下「BNスラリー」と称す場合がある。)を用いて粒子を造粒し、造粒粒子を加熱処理することによって、該造粒粒子の大きさを保持したままBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の結晶子を成長させて、製造することができる。BNスラリーの粘度は、好ましくは300mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは700mPa・s以上、特に好ましくは1000mPa・s以上であり、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下である。
【0040】
上記BNスラリーの粘度は、生成するBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50および、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶子径に大きく影響し、該粘度を200mPa・s以上とすることにより、h-BN一次粒子の平均結晶子径及びBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50を大きくすることができる。
一方BNスラリーの粘度を5000mPa・s以下とすることにより、造粒を容易にすることができる。BNスラリーの粘度の調製方法は、後述する。
【0041】
なお、本発明におけるBNスラリーの粘度とは、FUNGILAB社の回転粘度計「VISCO BASIC Plus R」を用い、ブレード回転数100rpmにて測定した粘度のことである。
さらに、本発明のBN凝集粒子をフィラーとしてBN凝集粒子含有樹脂組成物を作製する場合、同一の充填量においても、他のBN粒子と比較して得られる成形体の熱伝導率が劇的に改善できる。これは、本発明のBN凝集粒子では、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶粒子径の増大により、h-BN一次粒子中の結晶粒界が減少すること、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の特定面が配向していることによると推察され、好ましくは、凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50が大きいことにより、BN凝集粒子間の接触抵抗が低減することも影響すると考えられる。
【0042】
本発明のBN凝集粒子はBN凝集粒子自体の熱伝導性が高いだけでなく、樹脂と複合化して作製した成形体の熱伝導性も高くなる。
すなわち、本願発明によれば、当業者では通常制御することを想定していなかったスラリー粘度を特定の範囲に制御することにより、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶子径を大きくすることが可能である製造方法を見出したものである。
【0043】
更に、本発明によれば、上記スラリー粘度を特定の範囲に制御することにより、本発明で規定するBN凝集粒子を製造する方法を見出したものである。
なお、上記ピーク面積強度比およびh-BN一次粒子の平均結晶子径は、BNスラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度、原料BN粉末中に存在する酸素濃度によっても制御できる。具体的には、後程述べる通り、BNスラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度範囲を1800℃以上2300℃以下とすることでピーク面積強度比を0.25
以上とすることができ、原料BN粉末中に存在する酸素濃度が1.0重量%以上の原料を用いることで、h-BN一次粒子の平均結晶子径を所望の範囲に制御できる。即ち、適切な焼成温度範囲と適切な酸素濃度の原料BN粉末を用いることで上記ピーク面積強度比と上記平均結晶子径を同時に制御できる。
【0044】
これによりBN凝集粒子をBN凝集粒子含有樹脂組成物とした際のBN凝集粒子間の接触抵抗の低減並びにBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子中の結晶粒界が減少し、該BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の特定の結晶面が配向した、熱伝導性の高いBN凝集粒子を作製できる。
本発明によって得られるBN凝集粒子は、高熱伝導性を維持しながら様々な大きさに設計することが可能なため、成形体として幅広い用途に適用可能である。
【0045】
{スラリーの調製}
<原料BN粉末>
・原料BN粉末の種類
本発明で用いる原料BN粉末としては、市販のh-BN、市販のαおよびβ-BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh-BNが本発明の効果をより発揮する点で好ましく用いられる。
【0046】
・原料BN粉末の結晶性
本発明で用いる原料BN粉末の形態としては、粉末X線回折測定により得られるピークの半値幅が広く、結晶性が低い粉末状のBN粒子が好適である。即ち、板状のh-BNを原料として使用することも可能であるが、板状でないナノ粒子も好適に用いられる。結晶性の目安として、粉末X線回折測定から得られる(002)面のピーク半値幅が、2θの角度で、通常0.4°以上、好ましくは0.45°以上、より好ましくは0.5°以上である。また、通常2.0°以下、好ましくは1.5°以下、更に好ましくは1°以下である。上記上限より大きいと、結晶子が十分大きくならず、大きくするためには長時間を要するため、生産性が悪くなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、十分な結晶成長が見込めず、また、スラリー作製時の分散安定性が悪くなる傾向がある。なお、粉末X線回折測定方法は後述の実施例の項に記載する。
【0047】
・原料BN粉末中の酸素原子濃度
BN結晶成長の観点からは、原料BN粉末中に酸素原子がある程度存在することが好ましく、本発明では、原料BN粉末中の全酸素濃度は、通常1質
量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。また、通常、10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。上記上限より大きいと、熱処理後も酸素が残存しやすくなるため、熱伝導性の改善効果が小さくなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、結晶成長が見込めず、粉末X線回折測定から確認できるピーク強度比が所望の範囲から外れる傾向がある。
【0048】
本発明においては、原料BN粉末中に存在する酸素濃度が1.0重量%以上の原料を用いることでも、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶子径を所望の範囲に制御できる。
なお、原料BN粉末の全酸素濃度を上記範囲に調製する方法としては、例えばBN合成時の合成温度を1500℃以下の低温で行う方法、500℃~900℃の低温の酸化雰囲気中で原料BN粉末を熱処理する方法などが挙げられる。
なお、原料BN粉末の全酸素濃度は、不活性ガス融解-赤外線吸収法により、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
・・・
【0051】
<媒体>
BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶媒を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水を用いることが好ましく、純水がより好ましい。
【0052】
BNスラリーの調製に用いる媒体の使用量は、BNスラリーの粘度が200~5000mPa・sとなる量を加えることが好ましい。
具体的にはBNスラリーの調製に用いる媒体の使用量は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、通常、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。媒体の使用量が上記上限より大きいと、スラリー粘度が低くなりすぎるため、沈降などによるBNスラリーの均一性が損なわれ、得られるBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の結晶子径が所望の範囲から外れる傾向がある。下限未満であるとスラリー粘度が高すぎるため、造粒が困難になる傾向がある。すなわち、上記媒体の使用量が上記範囲外であると、BN凝集粒子の大きさとBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の結晶性とh-BN一次粒子中の結晶粒界の低減を同時に満足することが困難になる。
【0053】
<界面活性剤>
BNスラリーには、スラリーの粘度を調節すると共に、スラリー中の原料BN粉末の分散安定性(凝集抑制)の観点から、種々の界面活性剤を添加するのが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
一般に、界面活性剤はスラリーの粘度を変化させることが可能である。従って、BNスラリーに界面活性剤を添加する場合、その量は、BNスラリーの粘度が200~5000mPa・sとなるような量に調整する。例えば、原料BNとして、粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅2θが0.67°、酸素濃度が7.5質量%であるBNを用いて固形分50質量%のスラリーを調整する場合、通常、陰イオン性界面活性剤の有効成分として、スラリー全量に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上添加し、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下添加する。上記上限より大きいと、スラリー粘度が下がりすぎるとともに、生成したBN凝集粒子中に界面活性剤由来の炭素成分が残りやすくなる傾向がある。上記下限未満だと、スラリー粘度が高くなりすぎ、造粒自体が困難になる傾向がある。
【0055】
<バインダー>
BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に粒子状に造粒するために、バイ
ンダーを含んでもよい。バインダーは、h-BN一次粒子を強固に結びつけ、造粒粒子を安定化するために作用する。
BNスラリーに用いるバインダーとしては、BN粒子同士の接着性を高めることができるものであればよいが、本発明においては、造粒粒子は粒子化後に加熱処理されるため、この加熱処理工程における高温条件に対する耐熱性を有するものが好ましい。
【0056】
このようなバインダーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの金属の酸化物などが好ましく用いられる。これらの中でも、酸化物としての熱伝導性と耐熱性、BN粒子同士を結合する結合力などの観点から、酸化アルミニウム、酸化イットリウムが好適である。なお、バインダーはアルミナゾルのような液状バインダーを用いてもよく、加熱処理中に反応して、他の無機成分に変換されるものであってもよい。これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
バインダーの使用量(液状バインダーの場合は、固形分としての使用量)は、BNスラリー中の原料BN粉末に対して、通常0質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0質量%以上20質量%以下、より好ましくは0質量%以上15質量%以下である。上記上限を超えると造粒粒子中の原料BN粉末の含有量が少なくなり、結晶成長に影響するばかりか熱伝導性のフィラーとして用いた場合に熱伝導性改善効果が小さくなる。
【0058】
<スラリー調製方法>
スラリー調製方法は、原料BN粉末及び媒体、更に必要により、バインダー、界面活性剤が均一に分散し、所望の粘度範囲に調製されていれば特に限定されないが、原料BN粉末及び媒体、更に必要により、バインダー、界面活性剤を用いる場合、好ましくは以下のように調製する。
【0059】
原料BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで、バインダーを所定量添加する。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを加えて、ポットミル回転台で所望の粘度になるまで0.5~5h程度撹拌する。
添加の順番は特に制限はないが、大量の原料BN粉末をスラリー化する場合、だまなどの凝集物ができやすくなるため、水に界面活性剤とバインダーを加えた水溶液を作製した後、所定量の原料BN粉末を少量ずつ添加し、ここにジルコニア性のセラミックボールを加えて、ポットミル回転台で分散、スラリー化しても良い。
【0060】
また、分散に際しては、ポットミルのほかに、ビーズミル、プラネタリーミキサーなどの分散装置を使用しても良い。
スラリー化に際して、スラリーの温度は、10℃以上60℃以下で行う。下限よりも低いと、スラリー粘度が上昇し、所望の粘度範囲から外れる傾向にあり、上限よりも高いと原料BN粉末が水溶液中でアンモニアに分解しやすくなる。通常、10℃以上60℃以下であるが、好ましくは15℃以上50℃以下、より好ましくは15℃以上40℃以下、更に好ましくは15℃以上35℃以下である。
【0061】
{造粒}
BNスラリーから造粒粒子を得るには、スプレードライ法、転動法、流動層法、そして撹拌法などの一般的な造粒方法を用いることができ、この中でもスプレードライ法が好ましい。
・・・
【0062】
造粒により得られた造粒粒子の平均粒子径は、本発明のBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径の範囲を25μm以上200μm以下とする場合には、体積基準の平均粒子径D50で通常15μm以上150μm以下、好ましくは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、造粒粒子の体積基準の平均粒子径D50は、例えば、湿式では堀場製作所製「LA920」、乾式ではMalvern社製「Morphorogi」などで測定することができる。
【0063】
{加熱処理}
上記のBN造粒粒子は、更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理することでBN凝集粒子を製造することができる。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類によりBN凝集粒子の結晶化速度が異なるものとなり、結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。
加熱処理温度は通常1800℃以上2300℃以下であるが、好ましくは
1900℃以上であり、また好ましくは2200℃以下である。加熱処理温度が低すぎると、h-BN一次粒子の平均結晶子の成長が不十分となり、BN凝集粒子および成形体の熱伝導率が小さくなる場合がある。加熱処理温度が高すぎると、BNの分解などが生じてしまうおそれがある。
【0064】
上記加熱処理温度を1800℃以上2300℃以下とすることにより、h-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を所望の値とすることができる。
加熱処理時間は、通常5時間以上20時間以下であり、好ましくは5時間以上15時間以下である。加熱処理時間が上記下限未満の場合、結晶成長が不十分となり、上記上限を超えるとBNが一部分解するおそれがある。」
「【実施例】
・・・
【0099】
{測定条件}
本発明における特性は以下に記載の方法にて測定した。
・スラリー粘度:
FUNGILAB社の回転粘度計「VISCO BASIC Plus R」を用い、ブレード回転数100rpmにて測定した。
・・・
【0101】
・h-BN一次粒子の平均結晶子径:
粉末X線回折測定によって得られたh-BN一次粒子の(002)面由来のピークから、Scherrer式を用いて平均結晶子径を求めた。粉末X線回折測定は、PANalytical社製X線回折装置「X‘Pert Pro MPD」を用いた。Scherrer式とは次の式である。
D=(K・λ)/(β・cosθ)
ここで、D:結晶子径、K:Scherrer定数、λ:X線(CuKα1)波長、β:ピーク半値幅、θ:CuKα1由来のブラッグ角、である。またβは、次の補正式を用いて求めた。
β=(βo2-βi2)0.5
ここで、βiは、標準Siにより求めておいた装置由来の半価幅であり、βoは、h-BNの(002)面由来のピーク半値幅である。各定数の値は、以下を用いた。
K=0.9、λ=1.54059Å
【0102】
・h-BN一次粒子の(100)/(004)ピーク面積強度比:
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gのBN凝集粒子を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、0.85ton/cm2のプレス圧で錠剤成形した。得られた試料について、粉末X線回折測定と同様の装置を用いて、h-BN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表1に示した。
【0103】
・成形体の厚み方向熱伝導率
成形体の厚み方向の熱拡散率を株式会社アイフェイズ製の熱拡散率測定装置「ai-Phase Mobile 1u」を用いて測定し、以下により求めた。
成形体の厚み方向熱伝導率=成形体の厚み方向の熱拡散率×成形体の比重×成形体の比熱
【0104】
BN凝集粒子、BN凝集粒子含有樹脂組成物および成形体の製造
(実施例1)
<BNスラリーからのBN凝集粒子の作製>
[BNスラリー(スラリーA)の調製]
(原料)
原料h-BN粉末(粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%):10000g バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g 界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
(スラリーの調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いでバインダーを所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。
スラリーの粘度は、810mPa・sであった。
【0105】
[造粒]
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC-20を用いて、ディスク回転数20000~23000rpm、乾燥温度80℃で実施し、球状のBN凝集粒子を得た。
【0106】
[BN凝集粒子(BN-A凝集粒子)の作製]
上記BN造粒粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら2000℃まで83℃/時で昇温し、2000℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら5時間保持した。その後、室温まで冷却し、カードハウス構造を有する球状のBN-A凝集粒子を得た。
【0107】
[分級]
更に、上記加熱処理後のBN-A凝集粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、BN-A凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶子径、該h-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比(100)/(004))、BN-A凝集粒子のD50を測定した。測定結果は表1に示す。
【0108】
<成形体シートの製造>
上記で得られたBN-A凝集粒子をフィラーとして用い、フィラーと樹脂組成物とからなるBN凝集粒子含有樹脂組成物を調製した。
[樹脂組成物]
三菱化学(株)製エポキシ樹脂である「157S70」、「828US」、「4275」および四国化成工業(株)製の硬化剤である「C11Z-CN」を、「157S70」:「828US」:「4275」:「C11Z-CN」=1:0.25:0.25:0.11(質量比)の割合で混合して樹脂組成物を得た。
【0109】
[BN凝集粒子含有樹脂組成物の調製]
BN-A(BN凝集粒子)と上記樹脂組成物をBN-A凝集粒子の充填量(樹脂組成物とBN-A凝集粒子の合計に対するBN-凝集粒子の含有割合)が80質量%になるように配合した。
調製された樹脂組成物/BN-A凝集粒子混合物100質量部と、メチルエチルケトン50質量部をポリプロピレン製の蓋付きカップに入れ、さらに、樹脂組成物成分100質量部に対して6質量部の1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール(硬化剤)を加え、自公転攪拌機(シンキー社製「泡取り錬太郎 AR-250」))を用いて混合して、BN凝集粒子含有樹脂組成物塗布液を調製した。
【0110】
[塗布]
得られたBN凝集粒子含有樹脂組成物塗布液を、ギャップ間隔400μmのバーコーター(テスター産業株式会社製「オートフィルムアプリケーター」)で、厚さ100μm、10cm×20cmの銅基板上に塗布した。その後、50℃で、30分間真空乾燥を行って、銅基板に塗布膜を形成した。
【0111】
[成形体の製造]
得られた塗布膜が形成された銅版を4cm角に切断した。金型に入れて、130℃、500kg/cm2で3分間ホットプレスを行い、さらにオーブン中で160℃、2時間硬化させることにより、熱伝導率評価用の成形体(4cm×4cm)を得た。測定結果は表1に示す。
【0112】
(実施例2)
実施例1において、スラリーAを原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーB)とした以外は、実施例1と同様に行い、カードハウス構造を有する球状のBN凝集粒子(凝集BN-B)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。測定結果を表1に示す。
【0113】
[BNスラリー(スラリーB)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
純水:7500g
バインダー:5750g
界面活性剤:250g
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、2200mPa・sであった。
【0114】
(実施例3)
実施例1において、スラリーAを原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーC)とした以外は、実施例1と同様に行い、カードハウス構造を有する球状のBN凝集粒子(凝集BN-C)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。測定結果を表1に示す。
【0115】
[BNスラリー(スラリーC)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
バインダー:11496g
界面活性剤:250g
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いでバインダーを所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、1600mPa・sであった。
【0116】
(比較例1)
実施例2におけるスラリーBを、原料の配合比を変更した以下に示すスラリーDとした以外は、実施例2と同様に行い、BN凝集粒子(BN-D凝集粒子)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。スラリーの粘度は155mPa・sであった。測定結果を表1に示す。
【0117】
[BNスラリー(スラリーD)]
スラリーD配合
(原料)
原料h-BN粉末:2400g
純水:2199g
バインダー:1380g
界面活性剤:60g
【0118】
(比較例2)
実施例1と同様にスラリーの調製および造粒を行い、BN凝集粒子作製時の焼成温度を1300℃、保持時間を24hとした以外は実施例1と同様にBN凝集粒子を作製した(凝集BN-E)。このBN凝集粒子を用いて、実施例1と同様の方法でBN凝集粒子含有樹脂組成物の作製、成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0119】
(比較例3)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてモメンティブ社製PTX60を用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0120】
(比較例4)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてモメンティブ社製PTX25を用いた以外は実施例1と同様に行った。表1に結果を示す。
【0121】
(比較例5)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えて電気化学工業社製SGPSを用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0122】
(比較例6)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてサンゴバン社製CTS7Mを用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0123】
(比較例7)
実施例1と同様にスラリーの調製および造粒を行い、BN凝集粒子作製時の焼成温度を1600℃、保持時間を24hとした以外は実施例1と同様にBN凝集粒子を作製した(凝集BN-F)。このBN凝集粒子を用いて、実施例1と同様の方法でBN凝集粒子含有樹脂組成物の作製、成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0124】
(比較例8)
実施例2において、スラリーBの原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーE)とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0125】
[BNスラリー(スラリーE)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
純水:7750g
バインダー:5750g
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、8000mPa・sであった。
【0126】
【表1】
[図:0001410171000001.jpg]
」
「【0127】
BN凝集粒子成形圧縮成形体におけるh-BN一次粒子の(100)/(004)面のピーク面積強度比の評価
実施例4
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gの実施例1で作製したBN-A凝集粒子を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、表2に記載の種々のプレス圧で錠剤成形した。得られた試料について、粉末X線回折測定と同様の装置を用いて、h-BN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0128】
実施例5
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gのBN凝集粒子として実施例2で作製したBN-B凝集粒子を用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0129】
比較例9
BN凝集粒子としてBN-E凝集粒子を用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0130】
比較例10
BN凝集粒子としてモメンティブ社製PTX60凝集粒子を用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0131】
比較例11
BN凝集粒子としてモメンティブ社製PTX25を用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0132】
比較例12
BN凝集粒子として電気化学工業社製SGPSを用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0133】
比較例13
BN凝集粒子としてサンゴバン社製CTS7Mを用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0134】
比較例14
BN凝集粒子としてBN-F凝集粒子を用いた以外は、実施例3と同様にしてh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0135】
【表2】
[図:0001410171000002.jpg]
【0136】
表1から、本発明のBN凝集粒子を用いることにより、成形体として高い熱伝導性を示すことがわかる。h-BN一次粒子の平均結晶子径が375Å未満の比較例では、熱伝導性が低く、平均結晶子径が375Åを超えるものの、BN凝集粒子の粉末X線回折測定によるh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以下である比較例も高い熱伝導率を達成することができない。従って、BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上であり、かつ粉末X線回折測定によるh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上である本発明のBN凝集粒子は、熱伝導性フィラーとして従来にはない性能を発揮し、熱の課題が多い電気電子分野など様々な用途に幅広く適用可能である。
【0137】
さらに、表1の結果と表2から、特定の圧力以上でもh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であり、h-BN一次粒子の平均結晶子径が375Åより大きい凝集粒子を用いることで、厚み方向に高い熱伝導性を発現するシートを得ることができる。」
「【図2】
[図:0001410171000003.jpg]
」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が通知した、令和3年9月28日付けの取消理由、及び令和4年10月25日付けの取消理由(決定の予告)をまとめて整理すると、その概要は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
設定登録時の請求項1に係る発明において、「BN一次粒子の長軸」は「10μm以下」であることが特定されている。
しかし、上記「BN一次粒子の長軸」について、発明の詳細な説明(【0022】)にSEM測定により得られた値であることが記載されているものの、画像の拡大の程度、観察する粒子の数などの判断基準が不明であり、上記「BN一次粒子の長軸」の値を一義的に決定することができないから、設定登録時の請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2~11に係る発明は明確であるとはいえない。
(2) 取消理由2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 設定登録時及び先の訂正後の請求項1に係る発明において、「BN一次粒子の長軸」の長さが特定されている。
しかし、発明の詳細な説明には、BN一次粒子の長軸について、実施例としての具体的な数値は示されておらず、単に好ましい数値範囲が記載されているのみであるから(【0022】)、「BN一次粒子の長軸が10μm以下」と特定する設定登録時及び先の訂正後の請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2~11に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
イ 設定登録時及び先の訂正後の請求項1に係る発明において「10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))」(以下、「BN一次粒子のピーク面積強度比」という場合がある。)及び「BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径」(以下、「BN一次粒子の平均結晶子径」という場合がある。)が特定されている。
しかし、発明の詳細な説明の実施例で示された「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」は、ごく一部の数値範囲に限られることから、設定登録時及び先の訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2~11に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識することができない。
(3) 取消理由3(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
設定登録時及び先の訂正後の請求項1~11に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明は、実施例で示された範囲外
のものについてまで当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
2 取消理由についての当審の判断
(1) 取消理由1(明確性要件違反)について
ア 本件発明1~11について
本件発明1に係る窒化ホウ素凝集粒子の「BN一次粒子の長軸」の測定方法について、発明の詳細な説明には「上記長軸とはSEM測定により得られたBN凝集粒子1粒を拡大し、1粒のBN凝集粒子を構成しているh-BN一次粒子について、画像上で観察できるh-BN一次粒子の最大長を平均した値である。」(【0022】)と記載されているところ、本件発明1に係る窒化ホウ素凝集粒子の実施例であると認められる図2のSEM写真「本発明のBN凝集粒子の倍率100万倍のSEM写真」(【0016】)により、h-BN一次粒子の長軸は測定可能であり、長軸が3μm以下であることは、当該図面から容易に確認可能であるといえる。また、測定誤差が生じないように所定個数以上の任意の粒子の長軸の長さの平均値を採用することは当業者であれば当然のことである。
そうすると、発明の詳細な説明及び図面全体の記載や技術常識を参酌すれば、当業者にとって、本件発明1の「BN一次粒子の長軸」の判断基準は明らかであるから、本件発明1の「BN一次粒子の長軸」の特定事項は明確であるといえる。
したがって、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~11は明確である。
イ 小括
よって、取消理由1は理由がない。
(2) 取消理由2(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「サポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解されるから、この観点によって検討する。
イ 本件発明の課題について
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0001】~【0010】の記載によると、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子及びその製造方法を提供すること、及びこのBN凝集粒子と樹脂とを含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物並びにこのBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを含むものである。
ウ 本件発明1~10について
(ア)「BN一次粒子の長軸」について
特許権者が令和4年12月27日付けの意見書に添付して提出した乙第7号証(船橋敏彦 外5名,“高純度六方晶窒化硼素(h-BN)粉末の開発と応用”,川崎製鉄技報,平成4年,第24巻,第2号,p.135-141)には、BN粒子の加熱処理による結晶化工程後の一次粒子の結晶子径と一次粒子の粒子径との相関を示す次の記載がある。
「3.2 結晶化および高純度化
窒化(nitrization)では,1000℃以下のNH3あるいはN2中の熱処理により,結晶化度の低いh-BNが合成される。すなわち,Fig.1に示した結晶構造の点から述べると,平板状構造体の二次元的な広がりも乏しく,また,c軸方向の積み重なり方も不規則な段階の結晶であり,B2O3成分等の不純物成分のかなりの残留が認められる。
h-BN粉末としての基本評価特性は純度と粒径であるが,これらの特定は, ・・・ 結晶化(crystallization)工程の熱処理温度に強く依存する。当然,粒径は結晶化度に強く影響され,粒径とともに結晶化度も重要な評価項目の一つである。結晶化度は,通常,結晶子のLa,Lcの値によって評価される。すなわち,Laは平板状構造体の二次元的な広がりの程度を示し,LcはC軸方向の積み重なりの程度を示す。LaおよびLcはX線回折の半価幅の広がりから次の(2)式により求められる10) 。
[図:0001410171000004.jpg]
Fig.2に結晶化工程の熱処理温度に対する粒径,結晶子のLa,Lcの変化を示す11)。BNの結晶化の程度を示す粒径,結晶子のLa,
[図:0001410171000005.jpg]
Lcともに熱処理温度に強く依存する。低温度では,層間の重なり方が不規則で乱層構造となっているが,高温度になるにしたがって炭素の黒鉛化と同様な粒成長が起こり,規則性の高い六方晶になる。Fig.2から明らかなように熱処理温度を変えることにより,広範囲に純度および粒径を制御することが可能で,種々の特性を持つh-BN粉末が得られる。」
上記(1)アに記載のとおり、本件発明に係る窒化ホウ素凝集粒子の実施例を示す本件の図2のSEM写真において、画像から判断するとBN一次粒子の長軸は、明らかに上限の「3μm」より十分小さなものであるといえる。
図2に示された窒化ホウ素凝集粒子は、実施例1~3のいずれの窒化ホウ素凝集粒子を示しているのか明らかではないが、実施例1~3は、同一の原料h-BN粉末を使用し、BN造粒粒子を同一の熱処理条件で加熱処理し(【0106】、【0112】、【0114】)、BN一次粒子の平均結晶子径が383Å~456Åの範囲であるBN凝集粒子を得たものである(【表1】)。そして、本件発明に係るBN凝集粒子も、熱処理により結晶化を行って結晶子径を制御しているといえるところ(【0063】、【0106】)、上記乙第7号証に記載のとおり、熱処理による結晶化工程において、一次粒子の粒子径と結晶子径の成長は、熱処理温度に依存し、粒子径が小さければ、両者は相関性があることは周知の技術事項である。
そうすると、本件発明の実施例1~3のBN一次粒子の結晶子径は、「383Å~456Å」の狭い範囲にあって、熱処理条件は同じであるから、当該実施例1~3のBN一次粒子の長軸は、同程度であって、図2に示されたように、3μm以下の範囲にあると認められる。
したがって、本件発明に係るBN凝集粒子の「BN一次粒子の長軸が3μm以下」であることは、本件明細書の発明の詳細な説明に具体例をもって裏付けられているものであって、当該BN凝集粒子は高熱伝導性となることを認識することができる。
(イ)「BN一次粒子のピーク面積強度比」について
本件発明に係るBN一次粒子について、「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、「0.40以上1.2以下」であることが特定された。ここで、発明の詳細な説明に記載された実施例の上記「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、錠剤成形圧力が0.85ton/cm2、1.69ton/cm2及び2.54ton/cm2の場合に、それぞれ0.90~0.96(実施例1~3、表1)、0.74~0.92(実施例4、5、表2)、及び0.65~0.77(実施例4、5、表2)であり、上記数値範囲に含まれており、実施例1~3のBN凝集粒子を用いた成形体は、高熱伝導性であることを把握できる。
そして、「BN一次粒子のピーク面積強度比」について、発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0026】
・h-BN一次粒子のピーク面積強度比
BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))は、通常0.25以上、・・・更に好ましくは0.40以上であり、通常2.0以下、・・・更に好ましくは1.2以下である。大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。
【0027】
通常、放熱シートなどにおいて最適なプレス圧力条件は、放熱シートの種類によって異なる。樹脂マトリックス中に分散したBN凝集粒子は、用途に応じた圧力条件にさらされるが、通常、BN粒子は圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する傾向にある。BN凝集粒子を用いた場合でも成形圧力に対して粒子変形が生じ、結果としてab面が圧力方向に直行する方向に配向する傾向にある。
例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもh-BN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要である。
【0028】
・・・用途に応じて最適な圧力範囲は異なるが、成形体の厚み方向に高熱伝導化するためには、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲において、少なくとも一定以上のh-BN一次粒子の配向が保持される状態が達成することが好ましい。
【0029】
一定以上のh-BN一次粒子の配向とは、例えばh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。高熱伝導性を達成するには、少なくともピーク面積強度比は0.25以上であることが必要と考えている。ピーク面積強度比の下限、上限については前述のとおりである。
尚、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲における
ピーク面積強度比は、上記圧力範囲において一点でも所定の数値を満たせば
問題なく、本発明の圧力範囲全てにおいて達成する必要はない。また、好ま
しくは、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/
cm2の3点にて所定の数値を満たすことである。」
以上の記載から、本件発明における「BN一次粒子のピーク面積強度比」
は、放熱シートをプレス成形する際に樹脂マトリックス中に分散したBN凝
集粒子は、用途に応じた圧力条件にさらされるところ、圧力方向に対して直
行する方向にどの程度ab面が配向しているかを表現したものであって、高
熱伝導性を達成するために下限を特定したものであり、また、BN凝集粒子
を含む樹脂マトリックスの成形性の観点から上限を特定したことが理解でき
る。
そして、各比較例のうち最大の熱伝導率11.4W/mKを示す比較例3(比較例10)は、BN一次粒子の平均結晶子径が370Åであり、本件発明で特定する数値の下限375Åの近傍であるが、「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2の3点において、0.20(0.21)~0.16(比較例10)であって本件発明1の下限より小さいところ、上記の説明のとおりピーク面積強度比を大きくすることで熱伝導度が向上する傾向があることが理解できるから、本件発明で特定したピーク面積強度比の下限0.40以上とすることで、比較例3よりさらに熱伝導率が向上すると認識することができる。
したがって、ピーク面積強度比を、本件発明1で特定した範囲とすることで、BN凝集粒子が高熱伝導性となることを認識することができる。
(ウ)「BN一次粒子の平均結晶子径」について
本件発明1に係るBN凝集粒子において、BN一次粒子の平均結晶子径は
「375Å以上456Å以下」であることが特定され、下限値「375Å」は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例(【表1】)において、最も低い値である実施例2の「383Å」の近傍の値であり、また、上限値「456Å」は、実施例3の値であるから、実施例1~3のBN凝集粒子を用いた成形体は、高熱伝導性であることを把握できる。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の【0024】に「・・・h-B
N一次粒子の平均結晶子径は、平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点か
ら好ましい。・・・より好ましくは375Å以上であり・・・上記平均結晶
子径が大きすぎると、h-BN一次粒子が成長しすぎるため、BN凝集粒子
内の間隙が多くなり、成形体とする際の成形性が悪化するとともに、間隙が
多くなることにより熱伝導性が向上しなくなる傾向がある。上記平均結晶子
径が小さすぎると、h-BN一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱
が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。」と記載されている。
以上の記載から、BN一次粒子の平均結晶子径を、本件発明1で特定した範囲とすることで、BN凝集粒子が高熱伝導性となることを認識することができる。
(エ) 上記(ア)~(ウ)のとおりであるから、上記アの判断手法に照らすと、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~10は、サポート要件を満足する。
エ 本件発明11について
本件発明11は、本件発明1~4に係るBN凝集粒子を製造する方法であって、原料窒化ホウ素粉末の全酸素濃度、(002)面のピーク半値幅、BNスラリーの粘度、及び加熱処理温度が特定されているところ、発明の詳細な説明は、それぞれの特定事項について説明され(【0046】~【0048】、【0052】、【0054】、【0063】、【0064】)、発明の詳細な説明に記載された実施例は当該特定事項を充足することで(実施例1~3)、上記BN凝集粒子を製造することが記載されている。
したがって、本件発明11は、本件発明1~4と同様にサポート要件を満足する。
オ 小括
よって、取消理由2は理由がない。
(3) 取消理由3(実施可能要件違反)について
発明の詳細な説明には、BN凝集粒子の製造方法について説明されているところ(【0039】~【0066】)、本件発明に係るBN凝集粒子は、粘度が200~5000mPa・sである原料BN粉末を含むスラリーを用いて粒子を造粒して製造することができ(【0039】)、ピーク面積強度比およびh-BN一次粒子の平均結晶子径は、BNスラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度、原料BN粉末中に存在する酸素濃度によっても制御できることが記載されている(【0043】)。
そして、上記(2)に記載されたとおり、本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるところ、実施例には、本件発明1~9、11のそれぞれの具体例が記載され、本件発明9に係る成形体を、パワ
ー半導体デバイスの放熱部材として使用できることも当業者であれば自明である。
したがって、上記BN凝集粒子の製造方法の記載及び実施例の記載により、当業者であれば、本件発明に係るBN凝集粒子を製造でき、またその製造条件を調整可能であるといえるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
よって、取消理由3は理由がない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 標記の特許異議申立理由の概要
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、次の(1)、(2)に関するものである。
(1) サポート要件違反
ア 本件発明1の課題は、「BN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子が高熱伝導性」であること、あるいは、「BN凝集粒子同士の接触抵抗が低減」することであるが、実施例で具体的に評価されているのは、BN凝集粒子を含む成形体の厚み方向の熱伝導率(【0103】)のみであり、当該熱伝導率は、BN一次粒子の熱伝導性のみで決まるのではなく、それ以外の要素にも左右されることは明らかであるから、発明の詳細な説明の記載からは、上記の各課題を解決できることを認識できない。
イ 本件明細書の記載からすると、実施例は、カードハウス構造を有するBN凝集粒子のみであるから、カードハウス構造を有するBN凝集粒子以外のBN凝集粒子により課題が解決されることを認識できない。
(2) 実施可能要件違反
ア 本件明細書には、実施例1~3で得られたBN凝集粒子におけるBN一次粒子の長軸の値が記載されておらず、その値を推測できるような記載やBN一次粒子の長軸の調整方法についての記載も一切ないから、過度の試行錯誤を要する。
イ 本件明細書には、本件発明1で特定する「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」は、スラリー粘度、酸素濃度等によって制御できる旨記載されているが、実施例以外のBN凝集粒子を製造するためには、過度の試行錯誤を要する。
ウ 本件明細書に記載された実施例1~3で製造されたBN凝集粒子は、いずれもカードハウス構造を有するBN凝集粒子であるから、カードハウス構造を有さないBN凝集粒子であって、本件発明の「ピーク面積強度比」及び
「平均結晶子径」を満たすBN凝集粒子をどのように製造すればよいのか、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
2 当審の判断
(1) サポート要件違反について
ア 上記「1(1)ア」について
上記「第4 2(2)」で検討したとおり、本件発明1の課題は、結局のところ、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子を提供することであり、BN凝集粒子におけるBN一次粒子の「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」を特定した本件発明1によって、当該課題を解決できると認識できるものである。
他方、異議申立人の主張は、発明の詳細な説明の【0010】の「BN凝集粒子を構成するBN一次粒子が高熱伝導性でありながら、BN凝集粒子同士の接触抵抗も低減したBN凝集粒子を製造」するとの記載に基づくものであるが、接触抵抗についての記載は、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子を提供するという課題を解決する際のBN凝集粒子の具体的な作用を記載したものであって、本件発明1の課題とはいえない。
また、接触抵抗を低減することが本件発明1の課題であったとしても、同【0026】の「BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))は、・・・大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。」との記載により、本件発明1の上記「一次粒子のピーク面積強度比」を特定することで、BN凝集粒子同士の接触抵抗が低減されるという作用効果を奏することを当業者であれば理解することができる。
イ 上記「1(1)イ」について
本件発明1の「ピーク面積強度比」に関して、発明の詳細な説明の【00
26】に「小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向
上しない傾向がある。」、【0027】に「例えば、樹脂製の高放熱基板は
、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触の
ために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような
比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもh
-BN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要で
ある。」、【0029】に「一定以上のh-BN一次粒子の配向とは、例え
ばh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(1
00)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわ
ち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少な
いかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど
、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。」との記載からすると、本件発明1の「ピーク面積強度比」により、熱伝導性に影響するBN凝集粒子におけるBN一次粒子の配向構造を特定しているといえる。
そして、「カードハウス構造」は、【0028】に「本明細書で規定する物性を満たすBN凝集粒子、好ましくはBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子がカードハウス構造、すなわち、h-BN一次粒子同士が一次粒子平面部と端面部で接触することによる相互補強構造を有することから、広い成形圧力範囲でBN凝集粒子の変形を抑制することが可能である。」と記載されているから、本件発明1の「ピーク面積強度比」で特定した配向構造を充足するBN凝集粒子の一形態であることが理解できる。
そうすると、本件発明1は、「BN一次粒子のピーク面積強度比」を特定することによってサポート要件を満足するものであるから、BN凝集粒子の配向構造の一形態である「カードハウス構造」であることを特定する必要はない。
(2) 実施可能要件違反について
ア 上記「1(2) ア」について
「BN一次粒子の長軸」は、具体的な値は示されていないが、上記「第4 2(2)ウ(ア)」のとおり、実施例1~3のBN一次粒子の長軸は3μm以下であると認められるから、BN一次粒子の平均結晶子径を383Å~456Åの範囲に調整することにより、これに連動してBN一次粒子の長軸を「3μm以下」に調整可能であるといえる。
イ 上記「1(2) イ、ウ」について
上記「第4 2(3)」に記載したとおり、「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」の調整方法が発明の詳細な説明に記載されているから、当該記載にしたがって当業者は、本件発明に係るBN凝集粒子を製造することができるといえる。
また、本件発明1において、カードハウス構造の特定が必要ないことは、上記「(1)イ」に記載したとおりのものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明の「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」を充足する実施例1~3が記載されているから、カードハウス構造でないBN凝集粒子の具体的な製造例が記載されていないことをもって、実施可能要件違反とはいえない。
(3) 申立理由のまとめ
よって、上記「1 (1)、(2)」の申立理由に理由はない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~
11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700525