特許異議申立
2021-700463
原子力プラント監視支援システム
- 審判番号
- 2021-700463
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-220014
- 登録番号
- 6786696
- 請求日
- 2021年05月17日
- 審決日
- 2022年01月13日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】鹿股 俊雄
- 【権利者代理人】石川 太郎
- 【権利者代理人】市橋 俊規
- 【権利者】東芝エネルギーシステムズ株式会社
- 【権利者代理人】鹿股 俊雄
- 【権利者代理人】石川 太郎
- 【権利者代理人】市橋 俊規
- 【異議申立人】村山 玉恵
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 吉野 三寛
- 分類
- P1651.121-YAA(G21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6786696号発明「原子力プラント監視支援システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6786696号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第6786696号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6786696号の請求項1~2に係る特許についての出願は、平成27年7月22日に出願された特願2015-144574号の一部を令和元年12月5日に新たな特許出願とした特願2019-220014号に係り、令和2年10月30日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 5月17日 :特許異議申立人村山玉恵(以下「申立人」と
いう。)による請求項1及び2に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和3年 7月19日付け:取消理由通知書
令和3年 9月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年11月16日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1(下線は当審が付した。訂正箇所を示す。)
特許請求の範囲の請求項1に「異常通知要因である当該項目に関連付けられた前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とする」と記載されているのを、「異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とし、
前記異常通知を行う判定条件は、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(2)なお、訂正前の請求項1及び2は、請求項2が請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1及び2について請求されている。
(3)訂正事項2
特許第6786696号明細書における段落【0012】に、「上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る原子力プラント監視支援システムは、緊急時活動レベルの各項目について異常通知を行うか否かの判定条件、及び前記緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されたプラント監視サーバと、前記プラント監視サーバに各種プラントデータを出力する信号処理装置と、前記プラント監視サーバに接続され前記各種プラントデータを蓄積するプラントデータベースと、前記緊急時活動レベルの各項目をマトリックス状に表示する表示装置と、関係機関に異常と判断された前記緊急時活動レベルの項目を通報する通報装置と、を備えた原子力プラント監視支援システムであって、前記プラント監視サーバは、前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を強調表示することで異常通知を実施するとともに、異常通知要因である当該項目に関連付けられた前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とすることを特徴とする。」と記載されているのを、「上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る原子力プラント監視支援システムは、緊急時活動レベルの各項目について異常通知を行うか否かの判定条件、及び前記緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されたプラント監視サーバと、前記プラント監視サーバに各種プラントデータを出力する信号処理装置と、前記プラント監視サーバに接続され前記各種プラントデータを蓄積するプラントデータベースと、前記緊急時活動レベルの各項目をマトリックス状に表示する表示装置と、関係機関に異常と判断された前記緊急時活動レベルの項目を通報する通報装置と、を備えた原子力プラント監視支援システムであって、前記プラント監視サーバは、前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を強調表示することで異常通知を実施するとともに、異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とし、前記異常通知を行う判定条件は、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合であることを特徴とする。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について(下線は当審が付した。以下同じ。)
訂正事項1は、「異常通知要因である当該項目に関連付けられた前記プラントデータ」を「異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータ」に訂正するとともに、「前記異常通知を行う判定条件は、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合であること」との記載を付加して「判定条件」を限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)段落【0033】ないし【0035】には、
「【0033】
(早期異常通知)
上述したEALの判定フローでは、少なくとも1のプラントデータが閾値を逸脱したか否かによって異常を通知しているが(図6(a))、閾値に達する前に早期に異常通知を行うことも可能である。
【0034】
以下に、AL21を例に、早期異常通知例(b)~(d)を説明する。
早期異常通知(b)では、図6(b)に示すように、閾値以下の値を通知設定値として、少なくとも1のプラントデータが閾値を逸脱した場合に異常通知を行う。この通知設定値は予め人間系により設定される。
【0035】
早期異常通知(c)では、図6(c)に示すように、プラントデータの上昇(又は下降)傾向から閾値逸脱を予測し異常通知を行う。すなわち、少なくとも1のプラントデータが一定時間上昇(又は下降)した場合、その変化率から閾値逸脱を予測し異常通知する。
【0036】
早期異常通知(d)では、図6(d)に示すように、複数のプラントデータについて、全プラントデータの上昇(又は下降)傾向から閾値逸脱を予測し異常通知を行う。単独のパラメータでは軽微な傾向を示していても、その他の判定条件関連パラメータの傾向を複合的に監視することで、早期異常判定(c)より早期段階で異常通知を行うことができる。」と記載されている。
(イ)図6は下記のとおりである。
【図6】
[図:0001384125000001.jpg]
(ウ)上記(ア)の「閾値に達する前に早期に異常通知を行うことも可能である。」(【0033】)、「早期異常通知(b)では、」「閾値以下の値を通知設定値として、少なくとも1のプラントデータが閾値を逸脱した場合に異常通知を行う。」(【0034】)との記載を踏まえて、図6(b)(上記(イ))を見ると、異常通知を行う判定条件が、複数のプラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値である通知設定値から閾値逸脱が予測される場合であることが記載されているといえる。
(エ)上記(ア)の「早期異常通知(c)では、」「少なくとも1のプラントデータが一定時間上昇(又は下降)した場合、その変化率から閾値逸脱を予測し異常通知する。」(【0035】)との記載を踏まえて、図6(c)(上記(イ))を見ると、異常通知を行う判定条件が、複数のプラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合であることが記載されているといえる。
(オ)上記(ア)の「早期異常通知(d)では、」「複数のプラントデータについて、全プラントデータの上昇(又は下降)傾向から閾値逸脱を予測し異常通知を行う。」(【0036】)との記載を踏まえて、図6(d)(上記(イ))を見ると、異常通知要因である当該項目に関連付けられたプラントデータが複数であること、及び、異常通知を行う判定条件が、複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合であることが記載されているといえる。
(カ)したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるために、訂正前の段落【0012】に、訂正事項1と同様の訂正を行うものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(1)のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2も同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)のとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項2も同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)したがって、訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成であるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
3 小括
よって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。なお、請求項1及び2は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下順に「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、下記のとおりのものである。(なお、AないしJは本件発明1及び2を分説するために当審が付した。以下「構成A」などという。)
「【請求項1】
A 緊急時活動レベルの各項目について異常通知を行うか否かの判定条件、及び前記緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されたプラント監視サーバと、
B 前記プラント監視サーバに各種プラントデータを出力する信号処理装置と、
C 前記プラント監視サーバに接続され前記各種プラントデータを蓄積するプラントデータベースと、
D 前記緊急時活動レベルの各項目をマトリックス状に表示する表示装置と、
E 関係機関に異常と判断された前記緊急時活動レベルの項目を通報する通報装置と、
F を備えた原子力プラント監視支援システムであって、
G 前記プラント監視サーバは、前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を強調表示することで異常通知を実施するとともに、異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とし、
J 前記異常通知を行う判定条件は、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合である、
F ことを特徴とする原子力プラント監視支援システム。
【請求項2】
H 前記関連図の表示と併せて、関係機関への通報を実行させる通報ボタンを表示する
F ことを特徴とする請求項1記載の原子力プラント監視支援システム。」
第4 取消理由の概要
1 令和3年7月19日付け取消理由の概要
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献等一覧
甲第1号証:中国特許出願公開第103928071号明細書
甲第2号証:米国特許出願公開第2007/0033095号明細書
甲第3号証:特開平2-292696号公報
甲第4号証:特開2011-145206号公報
甲第5号証:特開2012-128674号公報
(以下、甲第1ないし5号証を順に「甲1」ないし「甲5」と略して記載する。)
2 なお、上記取消理由で採用しなかった特許異議申立理由はない。
第5 取消理由に対する当審の判断
当審は、本件特許の請求項1及び2に係る特許については、令和3年7月19日付け取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公開された甲第1号証には下記各記載がある(日本語訳は、異議申立人が提出した翻訳文に基づいて当審が付した、以下同じ。下線は当審が付した、以下同じ。なお、甲第1号証では、下線は日本語訳のみに付した。)。
(ア)「
[図:0001384125000002.jpg]
」
(日本語訳:[0002]本発明は、原子力発電所が、緊急事態において、有効な緊急時活動レベルを実施する補助判断システム及び方法に関する。)
(イ)「
[図:0001384125000003.jpg]
」
(日本語訳:[0005] 緊急時活動レベル(EAL、Emergency Action Levels)は、原子力発電所が緊急事態の区分を決定するための基礎であり、相応の緊急対応行動を実行する開始条件である。EALは、あらかじめ決定された、あるいくつかの計器の測定値、特定の機器またはシステムの状態変化(運転開始、故障)または特定の事象(例えば火災、保安事象など)の深刻度であってよい。・・・)
(ウ)「
[図:0001384125000004.jpg]
」
(日本語訳:[0017] 図1に示す緊急時活動レベルに基づく原子力発電所緊急事態補助判断システムは、主に、EALモデル1、リアルタイムデータ収集モジュール2、手動データ収集モジュール3、論理制御モジュール4、可視化ユーザインターフェース5、EALリアルタイムデータベース8という、いくつかの大きなモジュールからなる。次に、いくつかのモジュールについて更に説明する:
ここで、EALモデル1は、規格に基づいて設定された、あるいくつかの計器の測定値、特定の機器またはシステムの状態変化(運転開始、故障)または特定の事象(例えば火災、保安事象など)の深刻度等のパラメータである。リアルタイムデータ収集モジュール2は、原子力発電所デジタル制御システム(DCS)6、原子力発電所環境モニタリングシステム7に接続され、原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータを収集するために用いられる。手動データ収集モジュール3は、特定の機器またはシステムの状態変化(運転開始、故障)または特定の事象(例えば火災、保安事象など)のデータをEALのリアルタイムデータベース8に手動で入力するために用いられる。EALリアルタイムデータベース8はさらに前記リアルタイムデータ収集モジュール2に接続され、EALリアルタイムデータベース8が一定の頻度でリアルタイムデータを直接取得した後、その中に格納する。)
(エ)「
[図:0001384125000005.jpg]
」
(日本語訳:[0018] 論理制御モジュール4は、EALモデル1、EALリアルタイムデータベース8とデータをやりとりし、EALリアルタイムデータベース8における関連するパラメータの変化状況をリアルタイムで監視し、閾値、EALパラメータ、フリップフロップ、論理判断プロセスのモデル実現を担う。一定の頻度でEALリアルタイムデータベース8からすべてのEALパラメータのデータを取得してEALモデル1に同期させ、EALをトリガする条件を各パラメータが満足するか否かを論理制御モジュール4が判断し、満足する場合は、フリップフロップによりそのトリガを遂行して論理判断プロセスに入ることにより判断を段階的に遂行するとともに、最終的な判断結果を導出する。)
(オ)「
[図:0001384125000006.jpg]
」
(日本語訳:[0019] 可視化ユーザインターフェース5は論理制御モジュール4の出力端に接続され、EALパラメータの監視、論理判断フロー、論理判断結果、勧告緊急事態等の情報をリアルタイムで表示するとともに、パラメータ閾値条件のトリガ及び緊急事態変化時の指示情報を適時に示し、しかも、論理制御モジュール4も緊急事態勧告を示し、緊急指令員が手動で関与し、最終的な緊急事態を決定するとともにシステムを介して対外的に公表する。)
(カ)「
[図:0001384125000007.jpg]
」
(日本語訳:[0021] 可視化インタフェースは可視化要素でEALの論理判断プロセスを組織して表示すると同時に、論理制御モジュールの制御の下、パラメータ状態、警告表示、緊急事態判断情報等を更新表示することができる。)
(キ)「
[図:0001384125000008.jpg]
」
(日本語訳:[0023] ステップ4:システムが緊急自体勧告を示し、緊急指令員が手動で関与し、最終的な緊急事態を決定するとともに、プラットフォームを介して対外的に公表する。)
(ク)図1は次のものである。
[図:0001384125000009.jpg]
(図1日本語訳)
「
[図:0001384125000010.jpg]
」
(ケ)上記(ア)ないし(キ)の記載を踏まえて、上記(ク)の図1を見ると、リアルタイムデータ収集モジュール2及び手動データ収集モジュール3は、論理制御モジュール4とやりとり([0018])するEALリアルタイムデータベース8を介して論理制御モジュール4と接続されることが見てとれる。
イ 上記アによれば、甲第1号証には下記発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、aないしfは当審が付した。以下「構成a」などという。)。
「a EALモデル1、EALリアルタイムデータベース8とデータをやりとりし、EALリアルタイムデータベース8における関連するパラメータの変化状況をリアルタイムで監視し、閾値、EALパラメータ、フリップフロップ、論理判断プロセスのモデル実現を担い、一定の頻度でEALリアルタイムデータベース8からすべてのEALパラメータのデータを取得してEALモデル1に同期させ、EALをトリガする条件を各パラメータが満足するか否かを判断し、満足する場合は、フリップフロップによりそのトリガを遂行して論理判断プロセスに入ることにより判断を段階的に遂行するとともに、最終的な判断結果を導出する論理制御モジュール4と([0018])、
b 原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータを収集するために用いられるEALリアルタイムデータベース8に接続されるリアルタイムデータ収集モジュール2、及び、特定の機器またはシステムの状態変化(運転開始、故障)または特定の事象(例えば火災、保安事象など)のデータをEALのリアルタイムデータベース8に手動で入力するために用いられる手動データ収集モジュール3と([0017])、
c 一定の頻度で、原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータを直接取得した後、その中に格納するEALリアルタイムデータベース8と([0017])、
d EALパラメータの監視、論理判断フロー、論理判断結果、勧告緊急事態等の情報をリアルタイムで表示するとともに、パラメータ閾値条件のトリガ及び緊急事態変化時の指示情報を適時に示し([0019])、可視化要素でEALの論理判断プロセスを組織して表示すると同時に、論理制御モジュールの制御の下、パラメータ状態、警告表示、緊急事態判断情報等を更新表示する可視化ユーザインターフェース5と([0021])、
e 最終的な緊急事態を決定するとともに対外的に公表するシステム([0019])からなり、
f 前記リアルタイムデータ収集モジュール2及び前記手動データ収集モジュール3は、前記論理制御モジュール4とやりとり([0018])する前記EALリアルタイムデータベース8を介して前記論理制御モジュール4と接続される(上記ア(ケ))、
g 原子力発電所緊急事態補助判断システム([0017])。」
(2)甲第2号証
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公開された甲第2号証には下記各記載がある。
(ア)「[0004] This invention relates to the field of Emergency Management Programs; more particularly, the invention relates to the design and implementation of a system and method for inputting, analyzing, and disseminating information necessary to respond under time-constrained emergency events or hazardous situations. ・・・」
(日本語訳[0004] 本発明は緊急事態管理プログラムの分野に関する;より詳細には、本発明は、時間に制約のある緊急事態または危険な状況下で対応するために必要な情報を入力、分析、及び配布するためのシステム及び方法の、設計及び実装に関する。・・・)
(イ)「[0044] FIG. 7 is an example of a display view of another Integrated Tool 103 in a preferred embodiment of the invention. This Integrated Tool 103 is one more typically used by a decision-maker located at the scene of the emergency event, such as an Incident Commander, as compared to the TIA Tool described in the preceding paragraph. ・・・
This FIG. 7 is a display view of a table that is used by a decision-maker to view information contained in the Database of Analyzed Hazards 101 and assist in selecting the most appropriate response to an emergency event or hazardous situation. ・・・In a preferred embodiment, this display is part of an Integrated Tool 103 identified by the inventor as the Emergency Action Level (EAL) Tool.」
(日本語訳[0044] 図7は、本発明の好ましい実施形態における、他の統合ツール103の表示画面の一例である。この統合ツール103は、緊急事態の現場に設けられた意思決定者がより典型的に使用する一方、事故対応指令官などが、前の段落に記載したTIA Toolと比較する。図7は、分析された危険のデータベース101に含まれる情報であって、緊急事態又は危険な状況に最も適切な応答を選択するのを補助するために意思決定者によって使用されるテーブルをデイスプレイ上に表示したものである。・・・好適な実施形態では、この表示は、緊急活動レベル(EAL)ツールとして本発明者によって認識された統合ツール103の一部である。)
(ウ)FIGURE 7(図7)は次のものである。
【FIGURE 7】
[図:0001384125000011.jpg]
(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)のFIGURE 7(図7)を見ると、緊急時活動レベル(EAL)の各項目を、マトリックス状に表示することが見てとれる。
イ 上記アによれば、甲第2号証には下記事項(以下「甲第2号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「緊急事態管理プログラムのシステムにおいて、緊急時活動レベル(EAL)の各項目を、マトリックス状に表示すること。」
(3)甲第3号証
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公開された甲第3号証には下記各記載がある。
(ア)「(産業上の利用分野)
本発明は、大規模プラントなどに発生した異常を表示するプラント異常表示装置に関する。」(1頁右欄2~4行)
(イ)「この場合、表示装置としてCRT表示装置を用い、第3図に示すように、そのCRT表示装置の表示画面DSの上部に形成した異常表示領域ARを小さな矩形領域に分割し、おのおのの領域にはそれに対応する異常内容を表示するとともに、それ以外の原因表示領域BRに、異常原因をあらわすメッセージを表示する。」(4頁左上欄12~18行)
(ウ)第3図は次のものである。
【第3図】
[図:0001384125000012.jpg]
(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の第3図を見ると、異常表示領域ARを小さな矩形領域に分割してマトリックス状に表示し、おのおのの領域にはそれに対応する異常内容を表示することが見てとれる。
イ 上記アによれば、甲第3号証には下記事項(以下「甲第3号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「プラント異常表示装置において、異常表示領域ARを小さな矩形領域に分割してマトリックス状に表示し、おのおのの領域にはそれに対応する異常内容を表示すること。」
(4)甲第4号証
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公開された甲第4号証には下記各記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は原子力プラント等の通報側システム、プラント情報通報システムおよびその方法に関し、特に、緊急時にプラント情報を通報側と外部の受信側とで確実に共有することができる通報側システム、プラント情報通報システムおよびその方法に関する。」
(イ)「【0017】
プラントデータ収集部1は、プラントのデータを収集し時系列にデータベース2に格納する。プラントデータ収集部1のデータ収集方式は、センサからの入力、伝送によるものなど種々の形式がある。
【0018】
判断支援部3は、通報側で判断する状態事象が定義されており、それぞれの状態事象に合わせて判断支援に使用するプラントパラメータが割り当てられている。状態事象とは例えば、原子炉の停止、冷却機能の維持、放射能閉じ込め、安全機能の維持である。判断支援部3は状態事象に対応したプラントパラメータのデータをデータベース2より取り出し、その時刻とともに判断支援表示部3aに表示する。判断支援表示部3aは、詳細は後述するが、複数の階層構造を有する画面から構成され、図2に示す判断支援表示部は第1層の判断支援画面であり、そこには各プラントパラメータ毎の判断結果及び総合判断結果(OK、NG又は未確認)の入力エリア、時刻表示エリア等が設けられている。なお、表示すべきプラントパラメータはあらかじめ準備されている画面の形式で表示することも可能である。」
(ウ)「【0026】
(判断支持部の作用)
プラント状態の判断を行うべき通報側では、図2に示す画面上でパラメータに対応する判断結果および事象に対する総合判断結果を入力し、画面上の『確定』または『速報』ボタンを選択する。そのときの時刻は、速報時刻又は確定時刻として画面上に表示記憶される。また、判断した通報者の所見をコメント欄に入力することができる。入力されたおよび選択された情報はデータベース2に格納される。
【0027】
データベース2への格納が完了すると、情報送信部5に通知する。『確定』の場合、情報送信部5は、判断に使用した事象番号、プラントデータおよび判断結果をセットにして情報受信部10に対して判断確定フラグを付加して送信する。」
(エ)図2は次のものである。
【図2】
[図:0001384125000013.jpg]
(オ)上記(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて、上記(エ)の図2を見ると、判断支援表示部3aに、パラメータに対応する判断結果および事象に対する総合判断結果を入力する、画面上の『確定』または『速報』ボタンを表示することが見てとれる。
イ 上記アによれば、甲第4号証には下記事項(以下「甲第4号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「緊急時にプラント情報を通報側と外部の受信側とで確実に共有することができる通報側システム(【0001】)において、複数の階層構造を有する画面からなる判断支援表示部3a(【0018】)に、パラメータに対応する判断結果および事象に対する総合判断結果を入力する、画面上の『確定』または『速報』ボタンを表示すること(上記ア(オ))。」
(5)甲第5号証
ア 本件特許に係る原出願の出願前に公開された甲第5号証には下記各記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントの運転状態を管理するための支援装置に係り、特に原子炉が規定された運転状態から逸脱した際の復旧時にヒューマンエラーの発生を防止する発電プラントの運転管理支援装置に関する。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る発電プラントの運転管理支援装置は、上記課題を解決するために、発電プラントに設けられたセンサで計測されたプラントデータと予め設定された警報閾値とを比較し、前記発電プラントに異常があると判定した場合に警報の発報を指示する警報発報指示信号を生成する警報処理部と、前記発電プラントの保安規定に関する情報を格納する保安規定格納部と、前記警報発報指示信号を受信した場合、前記警報の発報に関連する前記プラントデータに基づいて前記保安規定格納部から抵触する前記保安規定に関する情報を抽出する保安規定抽出部と、前記プラントデータと前記保安規定抽出部により抽出された前記保安規定に関する情報とを表示する表示部とを備えたことを特徴とする。」
(ウ)「【0024】
支援装置13は、警報処理装置12から警報発報指示信号を受信すると、警報が発報された原因として予測される(警報の発報に関連する)プラントデータをプラントデータDB11からリストアップし、個別表示装置16に表示させる。・・・
【0026】
保安規定DB14は、原子力発電プラント2の保安規定および保安規定に規定された要求される措置に関する情報を蓄積する。」
(エ)「【0031】
プラントデータ入出力部21は、原子力発電プラント2のセンサ3a~3xで計測されたデータの入出力を行う。
【0032】
プラントデータDB11は、プラントデータ格納部22を有する。プラントデータ格納部22は、プラントデータ入出力部21から送信されるプラントデータを蓄積する。また、プラントデータDB11は、プラントデータリスト抽出部41からの要求に応じて、後述するプラントデータリストを提供する。
【0033】
保安規定DB14は、保安規定格納部23を有する。保安規定格納部23は、保安規定条項毎に、運転上の制限、規定が適用される条件、要求される措置、およびAOTに関する情報を格納する。また、保安規定DB14は、保安規定抽出部45の要求に応じて、後述する保安規定選択画面を提供する。」
(オ)「【0043】
警報表示機能33は、警報情報抽出部49で構成される。警報情報抽出部49は、警報処理装置12から警報発報指示信号を受信すると、警報の名称と発報時刻とで構成される警報情報を画像処理部51および保全履歴管理部50へ伝送する。」
(カ)「【0063】
運転員は、プラントデータ(ii)~(iv)に基づいて系統Bの『(iii)機器▽△-B』の出力信号のみが変動していることが確認できる。さらに運転員は、機器▽△-Bの出力信号が変化した時刻を境にプラントデータ『(ii)▽△-A』、『(iv)▽△-C』にも変動が現れ、最終的に『(v)□□』のプラントデータ出力信号が時刻Tで閾値Xを超過したために『○○○接点』の信号がONとなり警報が発報されたことを確認することができる。すなわち、運転員は、プラントデータ表示画面80から、系統Bの機器▽△の出力上昇が警報発報の原因であると判断することができる。」
(キ)図6は次のものである。
【図6】
[図:0001384125000014.jpg]
(ク)上記(ア)ないし(カ)の記載を踏まえて、上記(キ)の図6を見ると、個別表示装置16の表示に、最終的に特定のプラントデータ出力信号が時刻Tで閾値Xを過したために警報が発報されたことを確認することができるプラントデータ表示画面80(【0063】)を併せて表示可能とすることが見てとれる。
イ 上記アによれば、甲第5号証には下記事項(以下「甲第5号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「発電プラントの運転状態を管理するための支援装置において(【0001】)、表示装置に表示された項目について、当該項目に関連付けられた特定のプラントデータと、当該特定のプラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とすること(上記ア(ク))。」
2 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲1発明の「EALパラメータ」(構成d)は、本件発明1の「緊急時活動レベルの各項目」に相当する。また、甲1発明の「原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータ」(構成c)は、本件発明1の「プラントデータ」に相当する。
甲1発明の「論理制御モジュール4」は「EALリアルタイムデータベース8における関連するパラメータの変化状況をリアルタイムで監視し、閾値、EALパラメータ、フリップフロップ、論理判断プロセスのモデル実現を担い、一定の頻度でEALリアルタイムデータベース8からすべてのEALパラメータのデータを取得してEALモデル1に同期させ、EALをトリガする条件を各パラメータが満足するか否かを判断し、満足する場合は、フリップフロップによりそのトリガを遂行して論理判断プロセスに入ることにより判断を段階的に遂行するとともに、最終的な判断結果を導出」(構成a)し、「可視化要素でEALの論理判断プロセスを組織して表示」(構成d)している。そうすると、「EALモデル1」とデータをやりとりする「論理制御モジュール4」には、異常通知を行うか否かの何らかの判定条件があるはずであり、甲1発明の「EALモデル1」と「論理制御モジュール4」には、異常通知を行うか否かの何らかの判定条件が保存されているといえる。
また、「EALリアルタイムデータベース8における関連するパラメータ」である「EALパラメータ」(構成a)が、「EALリアルタイムデータベース8に」「関連」していることは、EALの各項目とリアルタイムデータが関連づけられていることであるといえるから、当該構成は、本件発明1の「緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけ」に相当する。そうすると、甲1発明の「論理制御モジュール4」には、緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されているといえる。
以上によれば、甲1発明は、本件発明1の構成Aを備えるといえる。
(イ)甲1発明の「原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータを収集するために用いられるEALリアルタイムデータベース8に接続されるリアルタイムデータ収集モジュール2、及び、特定の機器またはシステムの状態変化(運転開始、故障)または特定の事象(例えば火災、保安事象など)のデータをEALのリアルタイムデータベース8に手動で入力するために用いられる手動データ収集モジュール3」(構成b)は、「前記論理制御モジュール4とやりとりする前記EALリアルタイムデータベース8を介して前記論理制御モジュール4と接続される」(構成f)から、上記構成b及びfに係る「リアルタイムデータ収集モジュール2及び手動データ収集モジュール3」は、本件発明1の「前記プラント監視サーバに各種プラントデータを出力する信号処理装置」(構成B)に相当する。
(ウ)甲1発明の「一定の頻度で原子力発電所デジタル制御システム6、原子力発電所環境モニタリングシステム7等のリアルタイムデータを直接取得した後、その中に格納するEALリアルタイムデータベース8」(構成c)は、「論理制御モジュール4」と「やりとりする」(構成a)から、本件発明1の「前記プラント監視サーバに接続され前記各種プラントデータを蓄積するプラントデータベース」(構成C)に相当する。
(エ)甲1発明の「EALパラメータの監視、論理判断フロー、論理判断結果、勧告緊急事態等の情報をリアルタイムで表示するとともに、パラメータ閾値条件のトリガ及び緊急事態変化時の指示情報を適時に示し、可視化要素でEALの論理判断プロセスを組織して表示すると同時に、論理制御モジュールの制御の下、パラメータ状態、警告表示、緊急事態判断情報等を更新表示する可視化ユーザインターフェース5」(構成d)は、本件発明1の「前記緊急時活動レベルの各項目をマトリックス状に表示する表示装置」(構成D)と、「前記緊急時活動レベルの各項目を表示する表示装置」(以下「構成D′」という。)の点で一致する。
(オ)甲1発明の「最終的な緊急事態を決定するとともに対外的に公表するシステム(構成e)は、本件発明1の「関係機関に異常と判断された前記緊急時活動レベルの項目を通報する通報装置」(構成E)に相当する。
(カ)甲1発明の「原子力発電所緊急事態補助判断システム」(構成g)は、本件発明1の「原子力プラント監視支援システム」(構成F)に相当する。
(キ)甲1発明の「論理制御モジュール4」は、「EALをトリガする条件を各パラメータが満足するか否かを判断し、満足する場合は、フリップフロップによりそのトリガを遂行して論理判断プロセスに入ることにより判断を段階的に遂行するとともに、最終的な判断結果を導出」(構成a)し、「可視化ユーザインターフェース5」は「EALパラメータの監視、論理判断フロー、論理判断結果、勧告緊急事態等の情報をリアルタイムで表示するとともに、パラメータ閾値条件のトリガ及び緊急事態変化時の指示情報を適時に示し、可視化要素でEALの論理判断プロセスを組織して表示すると同時に、論理制御モジュールの制御の下、パラメータ状態、警告表示、緊急事態判断情報等を更新表示する」(構成d)から、甲1発明の当該構成は、本件発明1の「プラント監視サーバ」は、「前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を強調表示することで異常通知を実施するとともに、異常通知要因である当該項目に関連付けられた前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とする」(構成G)ことと、「前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を表示することで異常通知を実施する」(以下「構成G′」という。)点で一致する。
(ク)以上(ア)ないし(キ)での検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「A 緊急時活動レベルの各項目について異常通知を行うか否かの判定条件、及び前記緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されたプラント監視サーバと、
B 前記プラント監視サーバに各種プラントデータを出力する信号処理装置と、
C 前記プラント監視サーバに接続され前記各種プラントデータを蓄積するプラントデータベースと、
D′ 前記緊急時活動レベルの各項目を表示する表示装置と、
E 関係機関に異常と判断された前記緊急時活動レベルの項目を通報する通報装置と、
F を備えた原子力プラント監視支援システムであって、
G′ 前記プラント監視サーバは、前記緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、前記表示装置に表示された当該項目を表示することで異常通知を実施する
F 原子力プラント監視支援システム。」
である点で一致するとともに、下記各点で相違する。
a 相違点1
表示装置が、緊急時活動レベルの各項目を、本件発明1は「マトリックス状に」表示するのに対して、甲1発明はこのように特定されない点。
b 相違点2
プラント監視サーバが、表示装置に表示された当該項目について異常通知を実施するに際して、本件発明1は「強調」表示するのに対して、甲1発明はこのように特定されない点。
c 相違点3
プラント監視サーバが、表示装置に表示された項目について異常通知を実施するに際して、本件発明1は「異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能とする」のに対して、甲1発明はこのように特定されない点。
d 相違点4
異常通知を行う判定条件が、本件発明1は「複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合である」のに対して、甲1発明はこのように特定されない点。
イ 判断
事案に鑑みて相違点4から検討する。
甲1発明は、「緊急時活動レベルの各項目について異常通知を行うか否かの判定条件、及び前記緊急時活動レベルの各項目とプラントデータの関連づけが保存されたプラント監視サーバ」を備えるのではなく、「EALリアルタイムデータベース8」と「EALモデル1」を「同期させ、EALをトリガする条件を各パラメータが満足するか否かを判断」するものである。
したがって、甲1発明における「異常通知を行う判定条件」は、複数のプラントデータの少なくとも1つが、「EALモデル1」の閾値の値から逸脱する場合にとどまり、該『EALモデル1』を「閾値以下の値から閾値逸脱が予測される」モデル、「プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される」モデル、あるいは、「複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される」モデルとする必要性はなく、また、このように構成することは想定されない。
そして、甲第2ないし5号証に記載された技術的事項を見ても、このように構成することを示唆する記載はなく、また、プラントデータが闘値に達する前に早期に異常通知を行うことが技術常識であったとしても、甲1発明は、本件発明1の「異常通知を行う判定条件」が、「複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、閾値以下の値から閾値逸脱が予測される場合か、複数の前記プラントデータの少なくとも1つが、当該プラントデータの上昇又は下降の変化率から閾値逸脱が予測される場合か、あるいは複数の前記プラントデータが、当該プラントデータの上昇又は下降傾向から閾値逸脱が予測される場合であ」って、緊急時活動レベルの少なくとも1つの項目が前記異常通知を行うとの判定条件を満たした場合に、「異常通知要因である当該項目に関連付けられた複数の前記プラントデータと、当該プラントデータの閾値との関連図を併せて表示可能と」する「監視サーバ」に相当するものを備えず、リアルタイムに判断することを前提するものであるから、本件発明1に相当する「監視サーバ」に類するものを適用した上で、更に、その前提で判定条件を満たしたか否か判断する構成となすことまでが、容易であったといえないから、当該プラントデータが闘値に達する前に早期に異常通知を行うとの構成を、甲1発明の「EALモデル1」に適用する動機はなく、甲1発明において上記相違点4に係る本件発明1の構成となすことは、甲1発明及び甲第2ないし5号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、相違点1ないし3について検討するまでもなく、当業者であっても、甲1発明及び周知の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとは認められない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、独立請求項に係る本件発明1に従属するものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
3 申立人の意見書での主張について
(1)申立人は、令和3年11月16日付け意見書において、下記のとおり主張する。
ア 「プラントデータが闘値に達する前に早期に異常通知を行うことは技術常識に過ぎず、当業者であれば容易に想到できる事項です。この技術常識は、以下のように甲第6号証~甲第10号証に例示される。」
イ 「また本件訂正発明1では、複数のプラントデータに基づいて閾値逸脱を予測するように要件が追加されているが、このような特徴もまた技術常識に過ぎず、当業者であれば容易に想到できる事項です。この技術常識は、以下のように甲第7号証、及び、甲第11号証に例示される」。
ウ なお、申立人の提示した甲第6号証ないし甲第11号証は、次のものである。
(ア) 甲第6号証:特開2011-145978号公報
(イ) 甲第7号証:特開2006-039786号公報
(ウ) 甲第8号証:特開平8-220278号公報
(エ) 甲第9号証:特開平8-220279号公報
(オ) 甲第10号証:特許第4608244号公報
(カ) 甲第11号証:特開2002-71877号公報
(2)しかしながら、例え、「プラントデータが闘値に達する前に早期に異常通知を行うこと」及び「複数のプラントデータに基づいて閾値逸脱を予測する」ことが技術常識であったとしても、上記2(1)イで検討したとおり、甲1発明において、「プラントデータが闘値に達する前に早期に異常通知を行う」構成となすことが容易に想到し得たことであるということはできないから、申立人の上記(1)の主張は採用できない。
6 むすび
したがって、請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700463