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特許異議申立

2021-700188

ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法

審判番号
2021-700188
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-512731
登録番号
6742511
請求日
2021年02月19日
審決日
2022年09月06日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】コーロン インダストリーズ インク
  • 【権利者代理人】山下 託嗣
  • 【権利者代理人】堀川 かおり
  • 【権利者代理人】朴 沼泳
  • 【異議申立人】村戸 良至
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.537-YAA(D02G) / P1651.121-YAA(D02G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6742511号発明「ハイブリッドタイヤコード及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6742511号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~22〕、23について訂正することを認める。 特許第6742511号の請求項1、3、6、8~14、16~23に係る特許を維持する。 特許第6742511号の請求項2、4、5、7、15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6742511号の請求項1~23に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年9月29日、2016年12月30日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月30日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 2月19日 :特許異議申立人村戸良至(以下「申立人」という。)による請求項1~23に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 7月 2日付け:取消理由通知書 同年10月 1日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 同年10月22日 :特許権者による手続補正書の提出 同年12月 9日 :申立人による意見書の提出 令和4年 3月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 6月 9日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正そのものを「本件訂正」という。) 本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。 令和3年10月1日の訂正の請求は、本件訂正請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第6742511の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22、23について訂正することを求める」ものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線は、当審で付したもの。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、」を、 「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、」と訂正し、 また、請求項1の「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、」を、 「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされており、」に訂正するとともに 「前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、」を加入し、 更に「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を 「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、6、8~14、16~22も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2、4、5、7を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載のハイブリッドタイヤコード」と記載されるのを「請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード」と、 特許請求の範囲の請求項6に「請求項5に記載のハイブリッドタイヤコード」と記載されるのを「請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード」と、特許請求の範囲の請求項8に「請求項7に記載のハイブリッドタイヤコード」と記載されるのを「請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード」と、それぞれ訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項14の「前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さい」を、 「前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さく、 前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005~1.050倍とし、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20である」に訂正する。(請求項14の記載を引用する請求項16~22も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項22の「前記熱処理後、前記ハイブリッドコードの撚り戻し後に測定された前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を、 「前記熱処理後、前記ハイブリッドコードの撚り戻し後に測定された前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項23の「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、」を、 「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、」と訂正し、 また、請求項23の「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、」を、 「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされており、」に訂正するとともに 「前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、」を加入し、 更に「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を 「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」に訂正する。 2.訂正の適否 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項2~22は、訂正前の請求項1を、直接的又は間接的に引用するものであって、訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 (2)訂正事項1に係る訂正について 請求項1に「前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、」との事項を加入する訂正は、「PET下撚糸」、「アラミド下撚糸」について新たな特定事項を追加するものであるから、当該加入事項に関する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、請求項1の「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、」を「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに 第3撚り方向に上撚りされており、」に訂正するとともに「前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、」を加入する訂正は、「上撚り」に関してその方向を新たに追加するものであるから、当該訂正及び加入による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 更に、請求項1の「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」への訂正は、訂正前に記載したアラミド下撚糸とPET下撚糸との長さの関係範囲をより狭める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1により導入された事項は、いずれも明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0010】、【0011】、【0014】、【0029】の【表2】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項2及び5に係る訂正について 訂正事項2及び5に係る訂正は訂正前の請求項2、4、5及び7と、請求項15を削除する訂正である。よって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項3に係る訂正について 訂正事項1の訂正により、当該訂正前の請求項2、5、7に記載された発明特定事項が各々訂正後の請求項1に限定され、請求項2、5、7が訂正事項2で削除されたことに伴い、請求項3、6、8が引用する請求項を、請求項2、5、7から限定された先の請求項1に訂正するものであるから、訂正事項3は、訂正により削除された請求項を引用することで不明瞭な記載となるのを解消するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項4に係る訂正について 請求項14に「前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005~1.050倍とし、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20である」との事項を加入する訂正は、「PET下撚糸」及び「アラミド下撚糸」に新たな特定事項を追加するものであるから、当該加入事項に関する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4により加入された事項は、明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0006】、【0011】、【0014】、【0019】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでも。 (6)訂正事項6に係る訂正について 請求項22の「前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を「前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」とする訂正は、アラミド下撚糸とPET下撚糸の長さの比の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6により導入された事項は、発明の詳細な説明の【0029】の【表2】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7に係る訂正について 請求項23に「前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、」との事項を加入する訂正は、「PET下撚糸」、「アラミド下撚糸」について新たな特定事項を追加するものであるから、当該加入事項に関する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、請求項23の「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされており、」を「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされており、」に訂正するとともに「前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、」を加入する訂正は、「上撚り」に関してその方向を新たに追加するものであるから、当該訂正及び加入による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 更に、請求項23の「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1~1.05倍である」を「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」への訂正は、訂正前に記載したアラミド下撚糸とPET下撚糸との長さの関係範囲をより狭める訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項7により導入された事項は、いずれも明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0010】、【0011】、【0014】、【0029】の【表2】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕、23について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、3、6、8~14、16~23に係る発明(以下「本件発明1」等といい、それらを総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3、6、8~14、16~23に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 PET下撚糸と、 アラミド下撚糸と、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされており、 前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、 所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍であるハイブリッドタイヤコード。 【請求項3】 前記PET下撚糸は1300~3000デニールの繊度を有し、 前記アラミド下撚糸は1500~3000デニールの繊度を有する、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項6】 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はともに第2撚り数で上撚りされており、 前記第2撚り数は前記第1撚り数と同一である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項8】 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は1:3~3:1である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項9】 ASTM D885に従って測定された破断強度が8.0~15.0g/dであり、破断伸び率が5~15%である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項10】 日本規格協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L 1017方法に従って実施されるディスク疲労テスト後の強度保持率が80%以上である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項11】 ASTM D885に従って測定された3%LASEが6kgf以上、5%LASEが10kgf以上、7%LASEが17kgf以上である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項12】 ASTM D885に従って測定された3%LASEが8kgf以上、5%LASEが15kgf以上、7%LASEが25kgf以上である、 請求項11に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項13】 180℃で初荷重0.01g/dで2分間測定された乾熱収縮率が0.3~2.5%である、 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。 【請求項14】 アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、 PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階と、 前記アラミド下撚糸と前記PET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階と、 前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させる段階と、 前記浸漬によって前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させる段階と、 前記乾燥した合撚糸を熱処理する段階とを含み、 前記第2方向は前記第1方向と同一であり、 前記第3方向は前記第1方向と反対であり、 前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さく、 前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005~1.050倍とし、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20である 請求項1に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項16】 前記PET下撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力は前記アラミド下撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力の50%~95%である、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項17】 前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は単一撚糸機で行う、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項18】 前記アラミド下撚糸を形成する段階、前記PET下撚糸を形成する段階及び前記合撚糸を形成する段階は連続工程で行う、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項19】 前記接着剤溶液は、RFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤及びエポキシ系接着剤の少なくとも1種を含む、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項20】 前記乾燥段階は70~200℃で30~120秒間行い、 前記熱処理段階は200~250℃で30~120秒間行う、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項21】 前記浸漬段階、前記乾燥段階、及び前記熱処理段階は連続的に行い、 前記浸漬段階、前記乾燥段階、及び前記熱処理段階で前記合撚糸に加わる張力はコード当たり0.4kg/cord以上である、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項22】 前記熱処理後、前記ハイブリッドコードの撚り戻し後に測定された前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である、 請求項14に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。 【請求項23】 PET下撚糸と、 アラミド下撚糸と、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸はともに第3撚り方向に上撚りされており、 前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、 所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍であるカーカス用ハイブリッドタイヤコード。 第4 当審の判断 1.取消理由(決定の予告)の概要 当審が令和4年3月9日付けで特許権者に通知した、進歩性に係る取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項1、3、6、8~14、16~23に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1、3、6、8~14、16~23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 引用文献1:特表2016-500769号公報(甲第1号証) 引用文献2:特表2016-506453号公報(甲第11号証) 引用文献3:特開昭61-71204号公報(甲第4号証) 2.取消理由(決定の予告)についての判断 (1)引用文献2の記載事項等 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1の撚り数を有するナイロン下撚り糸及び 第2の撚り数を有するアラミド下撚り糸を含み、 前記第1の撚り数及び前記第2の撚り数は同一であり、 前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸は、同一の構造で共に上撚りされていることを特徴とするハイブリッド繊維コード。 【請求項2】 前記第1及び第2の撚り数は300TPM~500TPMである請求項1に記載のハイブリッド繊維コード。 【請求項3】 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸の重量比は20:80~80:20である請求項1に記載のハイブリッド繊維コード。 ・・・・ 【請求項6】 ナイロンフィラメントを第1の撚り数で下撚りすることによってナイロン下撚り糸を製造する第1のステップ、 アラミドフィラメントを第2の撚り数で下撚りすることによってアラミド下撚り糸を製造する第2のステップ及び 前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸を同一の構造で共に上撚りすることによって合撚糸を製造する第3のステップを含み、 前記第1の撚り数と前記第2の撚り数は同一であることを特徴とするハイブリッド繊維コードの製造方法。 【請求項7】 前記第1~第3のステップを同時に行う請求項6に記載のハイブリッド繊維コードの製造方法。 【請求項8】 前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させるステップ、 前記浸漬工程によって前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させるステップ及び 前記の乾燥した合撚糸を熱処理するステップをさらに含む請求項6に記載のハイブリッド繊維コードの製造方法。 ・・・・」 イ「【技術分野】 【0001】 本発明は、ナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コード及びその製造方法に関し、より具体的には、既存のハイブリッド繊維コードに比べてその製造が簡便なだけでなく、より均一な物性及び改善された強度と耐疲労性を有することによって、超高性能タイヤに適用可能なナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コード及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 タイヤ、コンベヤベルト、V-ベルト、ホースなどのゴム製品の補強材として、繊維コード、特に、接着剤で処理された繊維コードが広く用いられている。繊維コードの材料としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維などがある。最終的なゴム製品の性能を向上させる重要な方法の一つは、補強材として使用される繊維コードの物性を向上させることである。 【0003】 自動車の性能が向上し、道路状況の改善によって走行速度が漸次増加しており、高速走行時にもタイヤの安定性及び耐久性を維持できるように、タイヤのゴム補強材として使用されるタイヤコードに対する研究が活発に進められている。 【0004】 タイヤコードは、使用される部位及び役割によって区分され、タイヤを全体的に支持するカーカス部分と、高速走行による荷重支持及び変形を防止するベルト部分と、ベルト部分の変形を防止するキャッププライ部分とに分けられる。最近、高速道路の状況が改善され、かつ自動車の走行速度が増加することによって、タイヤのベルト部分が変形し、乗り心地が低下するなどの問題が発生しており、前記ベルト部分の変形を防止するためのキャッププライに対する重要度が増加している。 【0005】 現在使用されているキャッププライ素材としては、ナイロンとアラミドとが主軸をなしている。そのうち、ナイロンは、他の素材に比べて低価格、優れた接着性能及び疲労後の接着性能を示すため、ほとんどのタイヤ規格で使用されている。また、キャッププライで要求される高速でのベルトコード支持のために有利な高い収縮応力を示す。しかし、ナイロンは、モジュラス部分で低値を示し、常温及び高温での変化が大きいため、フラットスポットなどの性能を示し、キャッププライとしての短所がある。 【0006】 前記ナイロンの他にキャッププライ素材として使用されているアラミドは、ナイロンに比べて低い収縮応力を示すが、優れたクリープ特性を保有しており、モジュラス特性が非常に高く、常温及び高温でのモジュラスの変化量が少ないため、長時間駐車した場合でも、タイヤが変形するフラットスポット現象をほとんど示さない。このようなアラミド材質は、タイヤの品質が非常に重要視される高級タイヤで主に使用されているが、材料自体が非常に高価であるため、汎用的なタイヤでは使用がほとんど不可能である。また、アラミドは、高いモジュラスによってタイヤ成形及び加硫中の膨張が非常に困難であるため、一般的なタイヤに使用しにくく、低い破断伸度によって低い疲労性能を示し、長期間の耐久性を確保しにくいという短所がある。 【0007】 これを補完するために、ナイロンとアラミドとを共に使用するハイブリッド構造が開発されてきたが、ナイロンとアラミドとの大きな物性差を考慮して、主に、ナイロンとアラミドとの下撚りの撚り数とその合撚糸の上撚りの撚り数とが全て異なる構造が使用されてきた。これによって、タイヤ製造中の膨張問題と疲労耐久性との問題を解決することができたが、全て異なる撚り数とするための球形リング撚糸機または特殊撚糸機の使用によって、生産性が低下するという限定された製造可能性、不安定な構造による物性変動値の増加及び不良率の上昇などの問題を有しており、使用量の拡大において限界が発生した。 【0008】 具体的に説明すると、従来のハイブリッドコードは、異なる撚り数をそれぞれ有するナイロン下撚り糸及びアラミド下撚り糸を含むだけでなく、これらが共に上撚りされるときにも異なる撚り数で上撚りされるため、ハイブリッド繊維コードの全体の物性が、下撚りの各撚り数及び上撚りの撚り数に支配的な影響を受けた。 【0009】 また、図1に概略的に示したように、従来の方法によると、ナイロン下撚り糸11とアラミド下撚り糸12が共に上撚りされるとき、ナイロン下撚り糸11をアラミド下撚り糸12が被覆する形態で合撚糸10が製造される。その結果、合撚糸10を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理する際、合撚糸10とガイド及びローラーとの間の摩擦が激しくなり、ナイロン下撚り糸11を被覆するアラミド下撚り糸12が押されてループを形成し、あるいは、ナイロン下撚り糸11の収縮による形態不均一がもたらされた。このようなループ形成及び形態不均一は、ハイブリッド繊維コードの物性不均一及び製造不良を招く。」 ウ「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、前記のような関連技術の制限及び短所に起因した各問題を防止できるハイブリッド繊維コード及びその製造方法に関する。 【0011】 本発明の一観点は、既存のハイブリッド繊維コードに比べてその製造が簡便なだけでなく、より均一な物性及び改善された強度と耐疲労性とを有することによって、超高性能タイヤに適用可能なナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コードを提供することである。 【0012】 本発明の他の観点は、既存のハイブリッド繊維コードに比べてその製造が簡便なだけでなく、より均一な物性及び改善された強度と耐疲労性とを有することによって、超高性能タイヤに適用可能なナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含むハイブリッド繊維コードの製造方法を提供することである。」 エ「【発明の効果】 【0017】 本発明によれば、ナイロン合撚糸とアラミド合撚糸とが同一の下撚りの撚り数を有するため、ハイブリッド繊維コードに対する製造工程の単純化及び適用機器の拡大を達成することができる。 【0018】 また、撚糸工程時、モジュラス特性が異なるナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の構造を有し得るように張力を調節することによって、ナイロン下撚り糸にアラミド下撚り糸が被覆される形態で製造されることなく、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の比率で撚られた安定した構造を与えることができる。その結果、ハイブリッド繊維コードの物性変動値及び不良率を減少させ得るだけでなく、改善された強度と耐疲労性を有することによって、高速走行用タイヤのキャッププライに効果的に適用できるハイブリッド繊維コードを提供することができる。」 オ「【発明を実施するための形態】 【0021】 本発明の技術的思想及び範囲から逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって自明であろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載した発明及びその均等物の範囲内の変更及び変形を全て含む。 【0022】 下撚りは、フィラメントを反時計方向、すなわち、Z-方向に撚ることによって行うことができ、上撚りは、各下撚り糸を時計方向、すなわち、S-方向に共に撚ることによって行うことができる。 【0023】 本明細書で使用される「合撚糸(ply yarn)」とは、2本以上の下撚り糸を共に撚って作った糸を意味し、「ローコード(raw cord)」と称される場合もある。 【0024】 本明細書で使用される「繊維コード」は、ゴム製品に直ぐ適用されるように接着剤を含有した合撚糸を意味し、「ディップコード(dipped cord)」と称される場合もある。合撚糸で織物を製造した後、この織物を接着剤溶液に浸漬させた場合の接着剤を含有した織物も「繊維コード」に含まれる。 【0025】 本明細書で使用される「撚り数(twist number)」とは、1m当たりの撚りの回数を意味し、その単位はTPM(Twist Per Meter)である。 【0026】 本発明のハイブリッド繊維コードは、ナイロンフィラメント及びアラミドフィラメントを含む。前記ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントの重量比は、20:80~80:20とすることができる。 【0027】 本発明のハイブリッド繊維コードは、ナイロンフィラメントとアラミドフィラメントがそれぞれ同一の撚り数で下撚りされたナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが共に上撚りされた2プライ-合撚糸及び前記合撚糸にコーティングされた接着剤を含む。 【0028】 本発明のハイブリッド繊維コードは、ASTM D885によって測定された切断強度が8.0g/d~15.0g/dで、ASTM D885によって測定された破断伸び率が7%~15%で、乾熱収縮率が1.5%~2.5%である特性を示す。 【0029】 本発明のハイブリッド繊維コードにおいて、同一の条件で製造された各物性の最小値と最大値との差は、切断強度が1g/d以内、破断伸び率が3%以内の値を示す。 【0030】 本発明のハイブリッド繊維コードは、日本標準協会(Japanese Standard Association:JSA)のJIS-L 1017方法によって実施されるディスク疲労テスト後の強力維持率が80%以上である。 【0031】 本発明の一実施例によれば、前記ハイブリッド繊維コードは、a)ケーブルコーダー(Cable Corder)のように下撚り及び上撚りを同時に行う撚糸機を用いてナイロンフィラメントとアラミドフィラメントに対して同一の撚り数で下撚り及び上撚りを同時に実施し、合撚糸を製造するステップ及びb)このように製造された前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理するステップを含む方法によって製造される。」 カ「【0050】 上述したように、従来のハイブリッド繊維コードは、異なる撚り数を有するナイロン下撚り糸11及びアラミド下撚り糸12を含むだけでなく、これらが共に上撚りされるときにも異なる撚り数で上撚りされるため、ハイブリッド繊維コードの全体の物性は、下撚りの各撚り数及び上撚りの撚り数に支配的な影響を受けるしかなかった。また、ナイロン下撚り糸11とアラミド下撚り糸12を共に上撚りするとき、図1に示したように、ナイロン下撚り糸11をアラミド下撚り糸12がカバーリングする形態で合撚糸10が製造されるしかなかった。その結果、前記合撚糸10を接着剤溶液に浸漬させた後、乾燥及び熱処理するとき、前記合撚糸10とガイド及びローラーとの間の摩擦が激しくなり、ナイロン下撚り糸11をカバーリングするアラミド下撚り糸12が押されてループを形成し、あるいは、ナイロン下撚り糸11の収縮による形態不均一がもたらされた。このようなループ形成及び形態不均一は、ハイブリッド繊維コードの物性不均一及び製造不良を招く。 【0051】 本発明によると、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸が同一の撚り数を有するため、i)下撚り及び上撚りを同時に行うことによって製造工程の単純化を図ることができ、ii)撚糸工程で撚り不良を著しく減少させることができ、iii)ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120が図2に示したように同一の構造を有することによって(すなわち、合撚糸100が全体的に安定した構造を有することによって)、従来のハイブリッド繊維コードで示されるループ形成及び形態不均一などによる物性不均一及び製造不良を著しく減少させることができる。 【0052】 図2に示したように、ナイロン下撚り糸110及びアラミド下撚り糸120が実質的に同一の構造を有するためには、撚糸工程を行うとき、モジュラス特性が異なるナイロンフィラメントとアラミドフィラメントにそれぞれ加えられる張力を適宜調節することができる。 【0053】 タイヤとの接着性を向上させるために、撚糸工程を通じて得られた合撚糸100を接着剤溶液に浸漬又は通過させるステップを経た後、乾燥して熱処理することによって本発明のハイブリッド繊維コードを完成する。」 キ「【0065】 実施例1 1260De'のナイロンフィラメントと1500De'のアラミドフィラメントに対してケーブルコーダー撚糸機を用いて下撚りを反時計方向に、上撚りを時計方向にそれぞれ同時に行い、ハイブリッド合撚糸を製造した。このとき、300TPMの撚り数が設定された。 【0066】 このように製造されたハイブリッド合撚糸を2.0重量%のレゾルシノール、3.2重量%のホルマリン(37%)、1.1重量%の水酸化ナトリウム(10%)、43.9重量%のスチレン/ブタジエン/ビニルピリジン(15/70/15)ゴム(41%)及び水を含むレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)接着剤溶液にディッピングした。ディッピング時、ハイブリッド合撚糸に加えられる張力は0.5kg/cordになるように制御した。 【0067】 浸漬によってRFL溶液を含有したハイブリッド合撚糸を150℃で100秒間乾燥させた後、240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッド繊維コードを完成した。」 ・・・・ 【0074】 乾熱収縮率(%) 温度25℃、相対湿度65%の雰囲気条件下で24時間以上放置した後、テストライト(Testrite)機器を用いて180℃で2分間超荷重0.01g/Deの荷重下でハイブリッド繊維コードの乾熱収縮率を測定した。 【0075】 ディスク疲労テスト後の強力維持率 強力(疲労前の強力)が測定されたハイブリッド繊維コードをゴムに加硫することによって試料を製造した後、日本標準協会のJIS-L 1017方法によってディスク疲労測定機(Disc Fatigue Tester)を用いて80℃で2500rpmの速度で回転させながら±2%範囲内で引張及び収縮を8時間繰り返すことによって、前記試料に疲労を加えた。続いて、前記試料からゴムを除去した後、ハイブリッド繊維コードの疲労後の強力を測定した。前記疲労前の強力と疲労後の強力に基づいて、下記の計算式1によって定義される強力維持率を計算した。 【0076】 <計算式1> 強力維持率(%)=[疲労後の強力(kgf)/疲労前の強力(kgf)]×100 ここで、疲労前及び疲労後の強力(kgf)は、ASTM D885試験方法によって、インストロン試験機を用いて250mmの試料長に対して300m/minの引張速度を加えながらハイブリッド繊維コードの切断強力(Strength at Break)を測定することによって求めた。 【0077】 【表1】 [図:0001391982000001.jpg] 」 ク「 [図:0001391982000002.jpg] 」 ケ 以上の記載によれば、引用文献2には、特に実施例1に着目すると、以下のハイブリッド繊維タイヤコードに係る発明、及び、その製造方法の発明(以下、順に「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明1> 「1260De’のナイロンフィラメントが反時計方向に300TPMで下撚りされたナイロン下撚り糸と、 1500De’のアラミドフィラメントが反時計方向に300TPMで下撚りされたアラミド下撚り糸と、 ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが共に上撚りされた合撚糸にコーティングされた接着剤を含み、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸とはそれぞれ上撚りを時計方向に同時に行われ、 前記合撚糸の前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸は、同一の構造で共に上撚りされている、 ハイブリッド繊維タイヤコード。」 <引用発明2> 「1260De'のナイロンフィラメントと1500De'のアラミドフィラメントに対してケーブルコーダー撚糸機を用いて下撚りを反時計方向に、上撚りを時計方向にそれぞれ同時に行って合撚糸を製造し、 前記合撚糸を接着剤溶液にディッピングし、 浸漬によって接着剤溶液を含有した合撚糸を150℃で100秒間乾燥させた後、240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッド繊維コードを製造する方法であって、 前記ナイロンフィラメントを下撚りしたナイロン下撚り糸と前記アラミドフィラメントを下撚りしたアラミド下撚り糸との重量比は20:80~80:20であり、 ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の構造を有するように撚糸工程を行うときにモジュラス特性が異なるナイロンフィラメントとアラミドフィラメントにそれぞれ加えられる張力が適宜調節されている、 ハイブリッド繊維タイヤコードの製造方法。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1を対比する。 引用発明1の「アラミド下撚り糸」は、本件発明1の「アラミド下撚糸」に相当する。 引用発明1の「ナイロン下撚り糸」と本件発明1の「PET下撚糸」とは、「アラミド以外の下撚糸」の限りで一致する。 引用発明1の「ナイロン下撚り糸」と「アラミド下撚り糸」を「共に上撚り」することと、本件発明1の「前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚り」されていることとは、「前記アラミド以外の下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚り」されているという限りで一致する。 引用発明1の「ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが共に上撚りされた合撚糸にコーティングされた接着剤」と、本件発明1の「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤」とは、「前記アラミド以外の下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤」の限りで一致する。 イ 以上により、両発明は以下の<一致点1>で一致し、<相違点1>で相違する。 <一致点1> アラミド下撚糸と、 アラミド以外の下撚糸と、 前記アラミド以外の下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに上撚りされ、 前記アラミド以外の下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤を含む、 ハイブリッドタイヤコード。 <相違点1> アラミド下撚糸とアラミド以外の下撚糸を含むハイブリッドタイヤコードに関し、 本件発明1は「前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸上にコートされた接着剤とを含み、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸は第1撚り方向を有し、 前記アラミド下撚糸は第2撚り方向を有し、 前記第2撚り方向は前記第1撚り方向と同一であり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸とはともに第3撚り方向に上撚りされており、 前記第3撚り方向は前記第1撚り方向と反対であり、 所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」のに対し、 引用発明1は「1260De’のナイロンフィラメントが反時計方向に300TPMで下撚りされたナイロン下撚り糸と、 1500De’のアラミドフィラメントが反時計方向に300TPMで下撚りされたアラミド下撚り糸と、 ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが共に上撚りされた合撚糸にコーティングされた接着剤を含み、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸とはそれぞれ上撚りを時計方向に同時に行われ、 前記合撚糸の前記ナイロン下撚り糸及び前記アラミド下撚り糸は、同一の構造で共に上撚りされている」点。 ウ 上記相違点1について検討する。 (ア)本件発明1は、ハイブリッドタイヤコードにおいて、アラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さの「1.010~1.035倍」であるとしたものである。 他方、引用発明1は、ナイロン下撚り糸及びアラミド下撚り糸を上撚りした合撚糸の、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸が「同一の構造」とするものである。 そして、本件発明1のアラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さの「1.010~1.035倍」であることは、アラミド下撚糸とPET下撚糸が「同一の構造」であることとは異なるものである。そうすると、引用発明1のナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とを「同一の構造」とすることから、本件発明1の「1.010~1.035倍」を導き出せるとはいえない。 しかも、引用発明1は、本件発明1のようなアラミド下撚糸とPET下撚糸の組み合わせではなく、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸の組み合わせにおいて、強度と耐疲労性を改善させるために特定の繊度と撚り数を備えるものである。そうすると、引用発明1を、アラミド下撚糸とPET下撚糸の組み合わせに換えようとする動機付けはないから、PET下撚糸とアラミド下撚糸の組み合わせに換えた上で、それらを上撚りして形成したハイブリッドタイヤコードにおいて、アラミド下撚糸の長さがPET下撚糸の長さの「1.010~1.035倍」とすることが、当業者であっても容易に想到できたものではない。 (イ)取消理由(決定の予告)で引用された、引用文献1(【0033】)には、ポリエステル糸と芳香族ポリアミド糸または芳香族コポリアミド糸のいずれかとのブレンドから作製されるハイブリッドコードは、ポリエステルの疲労性能および潜在的乗心地の利点とアラミドの高温安定性の利点とを合わせ持つことが、 また、引用文献3(6頁の表)には、アラミドフィラメント束とポリエステルを組み合わせた複合コードは、破断エネルギー及び耐屈曲疲労性が大幅に改良されることが、それぞれ記載されている。 しかし、特定の繊度と撚り数のナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸からなる引用発明1のものを、PETとアラミドの組み合わせのものに換える根拠になるとはいえない。 (ウ)よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 エ したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3、6、8~13について 本件発明3、6、8~13は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものであり、本件発明3、6、8~13を引用発明1と対比すると、両者の間には、少なくとも、本件発明1と引用発明1を対比した際の相違点1が存在し、その相違点1についての判断は、既に述べたとおりである。 したがって、本件発明3、6、8~13は、いずれも、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明14について ア 本件発明14と引用発明2を対比する。 引用発明2の「アラミドフィラメント」は本件発明14の「アラミドフィラメント」に相当し、引用発明2の「ナイロンフィラメント」と本件発明14の「PETフィラメント」とは「アラミド以外の糸」の限りで一致する。 引用発明2の「1260De'のナイロンフィラメントと1500De'のアラミドフィラメントに対してケーブルコーダー撚糸機を用いて下撚りを反時計方向に、上撚りを時計方向にそれぞれ同時に行って合撚糸を製造」することと、本件発明14の「アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階と、前記アラミド下撚糸と前記PET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階」は、「アラミドフィラメントを下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、アラミド以外の糸を下撚りして下撚糸を形成する段階と、前記アラミド下撚糸と前記アラミド以外の下撚糸をともに上撚りして合撚糸を形成する段階」という限りで一致する。 引用発明2の「ハイブリッド繊維タイヤコードの製造方法」は、本件発明14の「ハイブリッドタイヤコードの製造方法」に相当する。 イ 以上により、両発明は以下の<一致点2>で一致し、<相違点1>で相違するほか、<相違点2>でも相違する。 <一致点2> アラミドフィラメントを下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、 アラミド以外の糸を下撚りして下撚糸を形成する段階と、 前記アラミド下撚糸と前記アラミド以外の下撚糸をともに上撚りして合撚糸を形成する段階と含む、 ハイブリッドタイヤコードの製造方法。 <相違点2> アラミドフィラメントとアラミド以外の糸を含むハイブリッドタイヤコードの製造方法に関し、 本件発明14は「アラミドフィラメントを第1方向に下撚りしてアラミド下撚糸を形成する段階と、 PETフィラメントを第2方向に下撚りしてPET下撚糸を形成する段階と、 前記アラミド下撚糸と前記PET下撚糸をともに第3方向に上撚りして合撚糸を形成する段階と、 前記合撚糸を接着剤溶液に浸漬させる段階と、 前記浸漬によって前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させる段階と、 前記乾燥した合撚糸を熱処理する段階とを含み、 前記第2方向は前記第1方向と同一であり、 前記第3方向は前記第1方向と反対であり、 前記PET合撚糸を形成する段階で前記PETフィラメントに印加される張力が前記アラミド合撚糸を形成する段階で前記アラミドフィラメントに印加される張力より小さく、 前記合撚糸を形成する段階で形成された所定の長さの前記合撚糸において、前記合撚糸の撚り戻し後、前記PET下撚糸の長さが前記アラミド下撚糸の長さの1.005~1.050倍とし、 前記PET下撚糸は400~3000デニールのPETフィラメントからなり、 前記アラミド下撚糸は400~3000デニールのアラミドフィラメントからなり、 前記PET下撚糸及び前記アラミド下撚糸はそれぞれ200~500TPMの第1撚り数を有し、 前記PET下撚糸と前記アラミド下撚糸との重量比は20:80~80:20である」のに対し、 引用発明2は「1260De'のナイロンフィラメントと1500De'のアラミドフィラメントに対してケーブルコーダー撚糸機を用いて下撚りを反時計方向に、上撚りを時計方向にそれぞれ同時に行って合撚糸を製造し、 前記合撚糸を接着剤溶液にディッピングし、 浸漬によって接着剤溶液を含有した合撚糸を150℃で100秒間乾燥させた後、240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッド繊維コードを製造する方法であって、 前記ナイロンフィラメントを下撚りしたナイロン下撚り糸と前記アラミドフィラメントを下撚りしたアラミド下撚り糸との重量比は20:80~80:20であり、 ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸とが同一の構造を有するように撚糸工程を行うときにモジュラス特性が異なるナイロンフィラメントとアラミドフィラメントにそれぞれ加えられる張力が適宜調節されている」点。 ウ まず、上記相違点1について検討する。 相違点1に係る本件発明1の構成は、上記(2)で検討したように、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではなく、引用発明2に基いても、同様の理由で、当業者が容易に想到し得たものではない。 エ したがって、本件発明14は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明16~22について 本件発明16~22は、いずれも、本件発明14の発明特定事項を全て含んだ上で他の発明特定事項が付加されたものであり、本件発明16~22を引用発明2と対比すると、両者の間には、少なくとも、本件発明14と引用発明2を対比した際の相違点1及び相違点2が存在し、その相違点1についての判断は、既に述べたとおりである。 したがって、本件発明16~22は、いずれも、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明23について 本件発明23は、本件発明1に対して、「カーカス用」との特定を付したものであるが、引用発明1と対比すると、本件発明1と同様に上記相違点1で相違する。 そして、相違点1に係る本件発明1の構成は、上記(2)で検討したように、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではないから、同様の理由で、相違点1に係る本件発明23の構成は、引用発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、本件発明23は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.取消理由(決定の予告)において通知しなかった特許異議申立理由について 申立人は、上記引用文献1~3の他、以下の証拠を提出し、引用文献1を主引用例とする進歩性の理由、及び、甲第2-1号証を主引用例とする進歩性の理由を、それぞれ申立てている。 甲第2-1号証:韓国登録特許10-1602605号公報(訳文として、甲第2-2号証:特開2017-14678号公報) 甲第3号証:“11TH Brazilian Congress Of Rubber Technology Kevlar○R(当審注:丸内にR) Yarn As A Tensile Member In Rubber Products”、2006年5月10日 甲第5号証:特開平4-271904号公報 甲第6号証:特開平5-262104号公報 甲第7号証:特開平9-240213号公報 甲第8号証:特開2009-190728号公報 甲第9号証:特開2011-143899号公報 甲第10号証:特表2011-500427号公報 (1)引用文献1を主引用例とする進歩性の理由について ア 引用文献1には、特に請求項1~5の記載、段落【0064】の記載からみて、次の「甲1発明」が記載されている。 「撚り合わされた糸のブレンドを含む繊維質コードであって、前記コードは(i)5.0~12.0の撚り係数を有し、かつ (ii)ポリエステル糸と芳香族ポリアミド糸または芳香族コポリアミド糸のいずれかとのブレンドを含み、 前記ポリアミド糸またはコポリアミド糸が、コード組立て前に少なくとも3.5の撚り係数となるように予め撚られ、かつ少なくとも400dtexの線密度を有し、 前記ポリエステル糸が、少なくとも3.5の撚り係数を有するように予め撚られ、かつ少なくとも444dtexの線密度を有し、 前記芳香族ポリアミドが、パラ-アラミドであり、 前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンまたはポリ(トリメチレンテレフタレート)であり、 ポリアミド糸またはコポリアミド糸とポリエステル糸は、それぞれZ方向に撚られ、それらをS方向に撚り作成した、繊維質コード。」 イ 本件発明1と甲1発明を対比すると、 本件発明1が「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」のに対し、甲1発明は、アラミド下撚糸とPET下撚糸の長さについて特定されていない点で相違する。 ウ この相違点について検討すると、引用文献1には、ポリアミド糸またはコポリアミド糸とポリエステル糸の長さの比に着目する記載はなく、ポリアミド糸またはコポリアミド糸を、ポリエステル糸よりも「1.010~1.035倍」長いように設定する動機付けはない。 そうすると、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 エ 同様に、本件発明3、6、8~14、16~23についても、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (2)甲第2-1号証を主引用例とする進歩性の理由について ア 甲第2-1号証には、特に請求項1~11の記載、段落【0073】の記載からみて、次の「甲2発明」が記載されている。 「1260デニールのナイロン下撚り糸:及び 1500デニールのアラミド下撚り糸;を含み、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸は同じ方向に300TPMで撚られ、さらに、共に反対方向に上撚りされて合撚糸とされており、 前記ナイロン下撚り糸と前記アラミド下撚り糸との重量比は20:80~80:20であり、 前記合撚糸は接着剤溶液に浸漬されており、 所定長さの前記ハイブリッドタイヤコードにおいて、前記上撚りのアンツイスト後、前記アラミド下撚り糸の長さは前記ナイロン下撚り糸の長さの1.005倍~1.025倍である、ハイブリッドタイヤコード。」 イ 本件発明1と甲2発明を対比すると、 本件発明1が「PET下撚糸」と「アラミド下撚糸」を上撚りしたものであり、「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍である」のに対し、 甲2発明は、ナイロン下撚り糸とアラミド下撚り糸を上撚りしたものであり、アラミド下撚糸とPET下撚糸の長さの比は特定されていない点で相違する。 ウ この相違点について検討すると、甲2発明において、ナイロンとアラミドの下撚り糸の組み合わせから、PETとアラミドの下撚り糸の組み合わせのものに換える動機付けはなく、換えた上で、それらの長さを「所定の長さ部分に対する撚り戻し後、前記アラミド下撚糸の長さは前記PET下撚糸の長さの1.010~1.035倍」に設定することを想到し得るとはいえない。 そうすると、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 エ 同様に、本件発明3、6、8~14、16~23についても、甲2発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1、3、6、8~14、16~23に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1、3、6、8~14、16~23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件訂正により請求項2、4、5、7、15は削除されたため、請求項2、4、5、7、15に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700188

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