特許異議申立
2021-700116
シーラントフィルム
- 審判番号
- 2021-700116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-116208
- 登録番号
- 6740728
- 請求日
- 2021年02月02日
- 審決日
- 2022年07月06日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【異議申立人】成田 隆臣
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 山崎 勝司
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6740728号発明「シーラントフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6740728号の明細書の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1,2〕,3について訂正することを認める。
特許第6740728号の請求項3に係る特許を維持する。
特許第6740728号の請求項1~2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6740728号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年6月10日を出願日とする出願であって、令和2年7月29日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和3年 2月 2日 :特許異議申立人成田隆臣(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和3年 6月11日付け:取消理由通知書
令和3年 7月29日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和3年 9月10日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年10月 8日 :特許権者による意見書の提出
令和4年 3月 2日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 4月15日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和4年 5月10日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和4年 6月 7日 :申立人による意見書の提出
なお、令和4年4月15日の訂正請求により、上記令和3年7月29日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和4年4月15日の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1及び請求項2を削除する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項3の「内層及び外層が下記樹脂A-1と樹脂A-2の混合物から成り」との記載を「内層及び外層が下記樹脂A-1と樹脂A-2の混合物のみから成り」と訂正し、訂正前の「樹脂A-1が、下記樹脂A-11と下記樹脂A-12との混合物から成り」との記載を「樹脂A-1が、下記樹脂A-11と下記樹脂A-12との混合物のみから成り」と訂正し、そして、訂正前の「樹脂A-2:化石燃料由来のポリオレフィン」との記載を「樹脂A-2:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」と訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~3は、請求項2が請求項1を引用するものであって、請求項3は他請求項の記載を引用しない請求項であるから、本件訂正前の請求項1及び2は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そうすると、本件訂正請求は、本件訂正後の請求項〔1,2〕,3についてするものである
3 本件訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1~2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の「内層及び外層が下記樹脂A-1と樹脂A-2の混合物から成」るとしていたものを、「内層及び外層が下記樹脂A-1と樹脂A-2の混合物のみから成」ると限定し(以下「訂正事項2-1」という。)、訂正前の「樹脂A-1が、下記樹脂A-11と下記樹脂A-12との混合物から成」るとしていたものを、「樹脂A-1が、下記樹脂A-11と下記樹脂A-12との混合物のみから成」ると限定し(以下「訂正事項2-2」という。)、訂正前の「樹脂A-2:化石燃料由来のポリオレフィン」とあったものを、「樹脂A-2:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」と限定する(以下「訂正事項2-3」という。)ものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無
(ア)訂正事項2-1及び2-2について
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
「(実験例4-3) 実験例4-3は、外層11及び内層13のいずれについても、バイオC4LLDPEの一部をバイオC4/C6LLDPEで置換した例である。すなわち、この例の外層11及び内層13は、C4LLDPE、バイオC4LLDPE、バイオC4/C6LLDPEの三成分の混合物で構成した。バイオC4LLDPEの配合量は20重量%、バイオC4/C6LLDPEの配合量は60重量%である。その他の点については、実験例4-2と同様にシーラントフィルムを製造し、一軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ12μm)に接着して得られた包装フィルムの引裂き強度を測定した。」(【0091】)
「次に、図面を参照して本発明を説明する。なお、各樹脂とこれを構成するモノマーの種類との対応関係を分かり易くするため、これら樹脂を略号で表記する。各樹脂の略号は次のとおりである。
樹脂A-1‥略号:バイオLLDPE。
樹脂A-11‥略号:バイオC4LLDPE。
樹脂A-12‥略号:バイオC4/C6LLDPE。
樹脂A-2‥略号:PO。
樹脂B-1‥略号:COC。
樹脂B-2‥略号:C4LLDPE。
樹脂B-3‥略号:バイオC4/C6LLDPE。」(【0029】)
「ポリオレフィンは任意のPOであってよいリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用することが望ましい。」(【0034】)
上記各記載事項を併せみると、実験例4-3においては、内層及び外層が、樹脂A-11(バイオC4LLDPE)20重量%と樹脂A-12(バイオC4/C6LLDPE)60重量%と樹脂A-2(LLDPE)20重量%の混合物から構成されていると共に、それら3成分の重量%の合計が100重量%となることから、内層及び外層が、それら3成分のみから構成されていることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項2-1及び2-2は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2-1及び2-2は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(イ)訂正事項2-3について
本件明細書の段落【0014】及び【0015】の「樹脂B-2:炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレン(略号:C4LLDPE)。」との記載から、本件明細書においては「C4LLDPE」は「炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレン」の略号として用いられていることがわかる。そして、本件明細書において、植物由来のエチレンについて、「バイオLLDPE」と記載して区別していることから、単にLLDPEと記載したものは、従来からふつうに用いられてきた、植物由来でない、つまり、化石燃料由来のものであることは明らかである。
そうすると、本件明細書において、「C4LLDPE」は「炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」を意味しているといえる。
次に、段落【0029】の
「樹脂A-1‥略号:バイオLLDPE。
樹脂A-11‥略号:バイオC4LLDPE。
樹脂A-12‥略号:バイオC4/C6LLDPE。
樹脂A-2‥略号:PO。
樹脂B-1‥略号:COC。
樹脂B-2‥略号:C4LLDPE。
樹脂B-3‥略号:バイオC4/C6LLDPE。」
との記載を参酌すると、段落【0091】の「(実験例4-3) ・・・、この例の外層11及び内層13は、C4LLDPE、バイオC4LLDPE、バイオC4/C6LLDPEの三成分の混合物で構成した。」との記載における、「バイオC4LLDPE」が樹脂A-11に、「バイオC4/C6LLDPE」が樹脂A-12に、「C4LLDPE」すなわち「炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」が「樹脂A-2」に対応していることがわかる。
したがって、訂正事項2-3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2-3は、本件訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上を総合すると、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第4項並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項3】
基材フィルムに積層してヒートシール性包装フィルムを構成するシーラントフィルムであって、
前記基材フィルムに接着する面から順に、外層、中間層、内層の三層構造を有しており、かつ、これら三層の合計厚みが30~130μmであり、
内層及び外層が下記樹脂A-1と樹脂A-2の混合物のみから成り、
樹脂A-1が、下記樹脂A-11と下記樹脂A-12との混合物のみから成り、
内層及び外層の樹脂A-12の含有量が5~60重量%であり、
中間層が、下記樹脂B-1又は樹脂B-1と樹脂B-2との混合物から成り、かつ、樹脂B-1の含有量が10重量%以上であり、
中間層の厚みがシーラントフィルムの総厚の40%以上であることを特徴とするシーラントフィルム。
樹脂A-1:化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体。
樹脂A-2:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン。
樹脂A-11:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体。
樹脂A-12:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィン、炭素数6の化石燃料由来のα-オレフィン、および植物由来のエチレンとの共重合体。
樹脂B-1:ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマー。
樹脂B-2:炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレン。」
第4 令和4年3月2日付け取消理由通知(決定の予告)の該要
当審が、本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に対して特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2013-1440号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2012-167172号公報(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献3:特開2015-189160号公報(申立人が提出した甲第3号証
第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 引用文献に記載された事項、発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
シーラント層と延伸フィルムを少なくとも積層してなる積層体を表裏に用いて延伸フィルムを外側に配置して重ねた端部をヒートシールして形成されたパウチであって、該延伸フィルムの延伸方向のパウチ両端に開封開始部が設けられており、該シーラント層はC4-LLDPEで表される炭素数4のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンとCOCで表される環状オレフィンコーポリマーを配合した層を少なくとも1層含んでなることを特徴とする易カット性パウチ。
【請求項2】
シーラント層が内側のラミネート層としてC4-LLDPE、中間層としてC4-LLDPE及びCOC、外側のシール層としてC4-LLDPEからなることを特徴とする、請求項1に記載の易カット性パウチ。
【請求項3】
中間層に含まれるCOCの配合量が10重量%から40重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の易カット性パウチ。
【請求項4】
シーラント層に含まれるラミネート層/中間層/シール層の層比がそれぞれ0.5~2/1~5/0.5~2の範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の易カット性パウチ。
【請求項5】
シーラント層に含まれるラミネート層/中間層/シール層の各層にさらにC6-LLDPEで表される炭素数6のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンまたはC8-LLDPEで表される炭素数8のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンを配合し、配合比がラミネート層とシール層にあってはC4-LLDPE70%~90%+C6-LLDPE10%~30%、中間層にあってはC4-LLDPE30%~50%+C6-LLDPE10%~30%+COC10%~20%またはラミネート層とシール層にあってはC4-LLDPE70%~90%+C8-LLDPE10%~30%、中間層にあってはC4-LLDPE30%~50%+C8-LLDPE10%~30%+COC10%~20%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の易カット性パウチ。」
「【0007】
・・・
また、同様の目的でのシーラント層ポリエチレンへの添加樹脂としては、ノルボルネンとエチレンをメタロセン触媒にて共重合した環状オレフィンコポリマー(COC)も挙げられるが、シーラント層樹脂中に単に配合させただけではやはり通常のシーラントフィルムよりも強度的に劣るため問題解決には至らなかった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は一般的に用いられているシーラント樹脂を使用して、開封時に直線状の開口部を容易に形成することが出来る易カット性のパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
引裂き性と切断性に優れたシーラント層として、ラミネート層とシール層で、引裂き性と切断の方向性に優れた材料であるCOCを含む中間層を挟んだ多層構成とすることで、易カット性、シール性、ラミネート性の物性を損なわないシーラント層とした。さらに落下時の耐衝撃性を上げるために柔軟性を補強するC6またはC8のLLDPEを加えることで、カットの直線性、易開封性を保持したままで物性面を強化したシーラント層とした。
またパウチの開封及び切り取りのきっかけとなるノッチを一の字状の複数の傷からなる多数配列のノッチとすることによって開封作業及び切り取り作業を容易にすることが可能となった。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、
シーラント層と延伸フィルムを少なくとも積層してなる積層体を表裏に用いて延伸フィルムを外側に配置して重ねた端部をヒートシールして形成されたパウチであって、該延伸フィルムの延伸方向のパウチ両端に開封開始部が設けられており、該シーラント層は炭素数4のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレン(C4-LLDPE)と環状オレフィンコーポリマー(COC)を配合した層を少なくとも1層含んでなることを特徴とする、易カット性パウチである。
【0013】
パウチを構成する積層体の延伸フィルムの延伸方向のパウチ両端に開封開始部が設けられていることによって延伸フィルムの延伸方向にカットして開封する場合の易カット性と直線カット性は保持されているが、この場合でもシーラント層が伸びてカットライン近傍にヒゲ状に残ることがあり、直線カット性を確保することができない場合があった。
シーラント層にCOCを用いることによってヒゲ状のカット断面のない直線カット性が実現できることは知られているが、COCのみではシール強度が低く特に重量物の包装に用いる場合には包装材としての強度が不足気味であった。
本発明のパウチにおいては、通常シーラントに用いるC4-LLDPEをCOCに混合して用いることで直線カット性と必要なシール強度を満たすことができるようになった。」
「【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の易カット性パウチによれば、
シーラントフィルムに引裂き性を与えるための添加剤としてシーラント層ポリエチレンへの無機フィラーやCOC等の樹脂の添加だけでは通常のシーラントフィルムよりも強度的に劣る問題と、開封時にパウチの表裏で開封線の位置が二股になり、そのまま最後まで二股になった状態で切り取られて行く事が起こりやすく直線状の開口部を形成できないという問題を解決して、一般的に用いられているシーラント樹脂を使用して、開封時に直線状の開口部を容易に形成することが出来る易カット性のパウチを提供することが可能となった。
【0028】
とくに本発明のスタンディングパウチ用途のシーラント層構成は、一般的に用いられているC4-LLDPEとCOCを用いて、ラミネート層、中間層、シール層に分けて多層にすることで、ラミネート強度、易カット性、シール強度の物性を損なわないシーラントフィルムの提供を可能とした。」
「【0032】
また、図2は本発明の易カット性パウチに用いる積層体の断面略図を示したものである。図2(A)は上面がパウチ外側とした積層体の断面を、図2(B)は積層体を構成するシーラント層の断面を示した。
【0033】
本発明の易カット性パウチは、シーラント層(6)と延伸フィルム(5)を少なくとも積層してなる積層体(1)を表裏に用いて延伸フィルム(5)を外側に配置して重ねた端部をヒートシールして形成されたパウチである。
ヒートシールされた端部は底部シール部(4)および左右の側面シール部(2)からなり、底部シール部(4)は底部端面から高さ(f)の位置で折り返された底テープ(図示せず)を挟み込んだ形でシールされている。パウチ天面は内容物充填後にヒートシールされる予定でありこの段階では封止されていない。」
「【0037】
シーラント層(6)には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルムを使用することができる。通常はシール適性からLLDPEがよく用いられる。
【0038】
LLDPEとしては通常炭素数4のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレン(C4-LLDPE)が用いられる。α-オレフィンの炭素数によって柔軟性が異なり炭素数4(以下C4)よりも炭素数6(C6)、炭素数8(C8)の方がLLDPEが柔軟になることから、重量物の包装の場合にとくに問題になる特性である落下強度の向上のために、C6とC8のα-オレフィンを側鎖に有するLLDPEをシーラント層(6)の各層に配合することがある。
【0039】
本発明の易カット性パウチに用いる積層体(1)のシーラント層(6)は単層ではなく、図2(B)に断面を示したように容器外側から順にラミネート層(9)、中間層(10)、シール層(11)の少なくとも3層からなる。
中間層(10)がシーラント層(6)の易カット性を発現する上でおもな役割を果たし、中間層(10)のみでは不足することがある接着剤層(8)とのラミネート強度とヒートシール時のシーラント層同士のシール強度をラミネート層(9)とシール層(10)で補強するという構成である。
中間層(10)はC4-LLDPEに易カット性に優れた環状オレフィンコーポリマー(COC)を配合した中間層を含んでなる層でありシーラント層の開封時の直線状の直線カット性の保持に貢献するCOCを含むことによって開封時のヒゲ等の発生を防止する機能を有する。
【0040】
中間層に含まれるCOCの配合量は開封時に袋が切れにくくなることを防止し、隣接する層との層間剥離が起こりやすくなるも防止するためには10重量%から40重量%の範囲であることが望ましい。
シーラント層(6)の総厚は特に限定されないが、密封性、生産性、コスト等の観点より通常30μm~150μm程度、好ましくは60μm~80μm程度、引裂き強度は1~10gとすることが望ましい。
また、シーラント層(6)に含まれるラミネート層(9)/中間層(10)/シール層(11)の層比はそれぞれ0.5~2/1~5/0.5~2の範囲であることが望ましい。総厚が60μm~80μmの範囲でのシーラント層の代表的な構成としては、表1のような例を示すことが出来る。
【表1】
[図:0001389369000001.jpg]
【0041】
シーラント層(6)の各層にシーラント被膜の柔軟性を高める目的でC4に加えてC6あるいはC8のLLDPEを添加する場合は易カット性と落下強度の兼ね合いから、配合比がラミネート層(9)とシール層(11)にあってはC4-LLDPE70%~90%+C6-LLDPE10%~30%、中間層(10)にあってはC4-LLDPE30%~50%+C6-LLDPE10%~30%+COC10%~20%であること、またはラミネート層(9)とシール層(11)にあってはC4-LLDPE70%~90%+C8-LLDPE10%~30%、中間層(10)にあってはC4-LLDPE30%~50%+C8-LLDPE10%~30%+COC10%~20%であることが望ましい。
【0042】
延伸フィルム(5)と、シーラント層(6)とを接着剤層(8)を介してラミネーションして積層体(1)を作成する方法としては、例えば、ドライラミネーション方法などの公知の方法を使用することができる。
前記ドライラミネーション方法に使用する接着剤は、一般的に、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのラミネート用接着剤を使用することができる。」
「【図2】
[図:0001389369000002.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「シーラントフィルムからなるシーラント層と延伸フィルムを少なくとも積層してなる積層体を表裏に用いて、延伸フィルムを外側に配置して重ねた端部をヒートシールして形成されたパウチのシーラント層であり、
延伸フィルムをパウチ外側とした積層体において、シーラント層は、パウチ外側から順にラミネート層、中間層、シール層の少なくとも3層からなり、
ラミネート層としてC4-LLDPE、中間層としてC4-LLDPE及びCOC、外側のシール層としてC4-LLDPEからなり、
シーラント層の総厚は、通常30μm~150μm程度、好ましくは60μm~80μm程度であり、
中間層に含まれるCOCの配合量が10重量%から40重量%の範囲であり、
シーラント層に含まれるラミネート層/中間層/シール層の層比がそれぞれ0.5~2/1~5/0.5~2の範囲であり、
シーラント層に含まれるラミネート層/中間層/シール層の各層にさらにC6-LLDPEで表される炭素数6のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンを添加する場合は、配合比がラミネート層とシール層にあってはC4-LLDPE70%~90%+C6-LLDPE10%~30%、中間層にあってはC4-LLDPE30%~50%+C6-LLDPE10%~30%+COC10%~20%である、
シーラント層。」
(2)引用文献3
ア 引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30~90質量%、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン10~30質量%及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン0~60質量%を含むラミネート層と、
石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むシール層と、
を含み、
バイオマス度が25%以上であることを特徴とする、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905~0.935g/cm3であり、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体であって、前記α-オレフィンは、炭素数4又は6の化合物若しくはこれらの混合物であり、前記植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレンは、密度が0.945~0.965g/cm3であることを特徴とする、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905~0.935g/cm3であり、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体であって、前記α-オレフィンは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラントフィルムに関する。より詳しくは、植物由来のポリエチレン樹脂原料を使用することで環境への負荷が軽減されるとともに、良好な剛性、耐衝撃性、ヒートシール性を有するシーラントフィルム、並びにそれを用いたフィルム積層体及びスタンディングパウチに関する。
【背景技術】
・・・
【0004】
ところで近年、地球温暖化防止及び枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、従来の石油由来プラスチック材料からカーボンニュ―トラルな植物由来プラスチック材料への置き換えが検討されている。製品中の植物由来プラスチックの質量比率が25%以上の基準を満たしている場合、日本バイオプラスチック協会よりバイオマスプラマークが認定される。
【0005】
植物由来のポリエチレン樹脂については、2011年からBraskem社によって直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)のグレードが製造販売されており、当該植物由来のポリエチレンを用いた検討がされている(特許文献3~6を参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、植物由来のポリエチレンを用いた既存のシーラントフィルム等は必ずしも、良好な剛性、耐衝撃性、及び低温ヒートシール性を兼備するものではない。
【0008】
現在、植物由来のポリエチレンは、Braskem社から製造販売されているのみであり、当該製造販売されているLLDPE及びHDPEのグレードが石油由来のポリエチレンほど細分化されていない。このため、当該LLDPE及びHDPEを用いて製品の量産化を行う場合には、既存のシーラントフィルムにおいて、石油由来のポリエチレンを、密度及びメルトフローレートなどの物性が一致する植物由来のポリエチレンにそのまま置き換えることができないことがあり、所望のフィルム特性を達成することが容易ではない。
【0009】
したがって、現在市販されている植物由来のポリエチレンを原料として用いることも考慮して、各層が単一の石油由来のポリエチレンから形成された従来の3層構造とは相違する新たなシーラントフィルムの設計が求められる。」
「【0017】
<シーラントフィルム>
本発明のシーラントフィルムは、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30~90質量%、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン10~30質量%及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン0~60質量%を含むラミネート層と、石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むシール層とを含み、バイオマス度が25%以上である。
【0018】
図1は、本発明のシーラントフィルムを示す断面図である。同図に示すシーラントフィルム10は、ラミネート層12とシール層14とを備える。
【0019】
(ラミネート層12)
ラミネート層12は、後述するフィルム積層体の形成時に、接着剤層を介して基材フィルムと貼り合わされる層である。
【0020】
ラミネート層12は、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30~90質量%、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン10~30質量%及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン0~60質量%を含む。
【0021】
ラミネート層12は、剛性及び耐衝撃性の両特性を向上させるために、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンの全質量に対して、30~90質量%、好ましくは40~80質量%含む。
【0022】
本発明において、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、植物を原料として用いて製造したエチレンと、α-オレフィンとの共重合体であり、公知の製造方法により合成したものであってよい。
【0023】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4又は6の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン又は1-ヘキセン若しくはこれらの混合物である。
【0024】
植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、市販品でもよく、Braskem社から製造販売されているものを用いることができる。具体的には、炭素数が4の化合物(C4)をα-オレフィンとして用いた、SLL118(MFR;1.0g/10分、密度;0.916g/cm3)、SLL118/21(MFR;1.0g/10分、密度;0.918g/cm3)、SLL218(MFR;2.3g/10分、密度;0.918g/cm3)、SLL318(MFR;2.7g/10分、密度;0.918g/cm3)、炭素数が4及び6の化合物の混合物(C4/C6)をα-オレフィンとして用いた、SLH118(MFR;1.0g/10分、密度;0.916g/cm3)、SLH218(MFR;2.3g/10分、密度;0.916g/cm3)、SLH0820/30AF(MFR;0.8g/10分、密度;0.920g/cm3)を好適に使用することができる。
・・・
【0026】
ラミネート層12は、剛性及び耐衝撃性の両特性を向上させるために、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレンを、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンの全質量に対して、10~30質量%、好ましくは15~25質量%含む。
【0027】
本発明において、植物由来および石油由来の高密度ポリエチレンはそれぞれ、植物を原料として用いて製造したエチレンおよび石油を原料として用いて製造したエチレンをチーグラー触媒やフィリップス触媒の存在下で、中圧または低圧条件で重合合成したものであってよい。
・・・
【0030】
ラミネート層12は、剛性及び耐衝撃性の両特性を向上させること、並びにコストを低減するために、(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンを、(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンの全質量に対して0~60質量%、好ましくは10~50質量%含む。
【0031】
本発明において、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、石油を原料として用いて製造したエチレンと、αーオレフィンとの共重合体であり、公知の製造方法により合成したものであってよい。
【0032】
α-オレフィンとしては、炭素数が3~20の化合物を用いることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン若しくはこれらの混合物である。
・・・
【0036】
ラミネート層12の厚みは、加工性等を考慮して、60~150μmであることが好ましい。
【0037】
(シール層14)
シール層14は、シーラントフィルム10を包装材として用いる際、内容物を包装封止する役割を果たす層である。
【0038】
シール層14は、良好な低温ヒートシール性を実現するため、直鎖状低密度ポリエチレンが用いられ、該直鎖状低密度ポリエチレンとしては、石油由来もしくは植物由来、またはその両方を用いることができる。
・・・
【0040】
該石油由来および植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンの原料および好適な市販品等は、ラミネート層12で使用するものと同様のものを用いることができる。
【0041】
シール層14は、本発明の効果を損なわない範囲で他の高分子材料をさらに含んでいてもよい。また、密着、滑り、酸化などを防止する目的で、アンチブロッキング剤、スリップ剤、酸化防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
・・・
【0043】
(バイオマス度)
シーラントフィルム10のバイオマス度は、バイオマスプラマークの認定基準を満たす25%以上である。シーラントフィルム10を包装材として用いる場合には、最終製品(例えばスタンディングパウチ)のバイオマス度が25%以上となるようにシーラントフィルム10のバイオマス度を適宜設定することができる。」
イ 引用文献3に記載された事項
上記アの記載事項を総合すると、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30~90質量%、
(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン10~30質量%及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン0~60質量%を含むラミネート層と、
石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むシール層と、
を含み、
バイオマス度が25%以上であり、
前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905~0.935g/cm3であり、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体であって、前記α-オレフィンは、炭素数4又は6の化合物若しくはこれらの混合物であり、前記植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレンは、密度が0.945~0.965g/cm3である、
シーラントフィルム。」
2 本件特許に係る出願前の技術常識
引用文献2の「ところで近年、地球温暖化防止及び枯渇資源である石油使用量低減の意識の高まりにより、従来の石油由来プラスチック材料からカーボンニュ―トラルな植物由来プラスチック材料への置き換えが検討されている。製品中の植物由来プラスチックの質量比率が25%以上の基準を満たしている場合、日本バイオプラスチック協会よりバイオマスプラマークが認定される。」(段落【0040】)という記載及び引用文献3の「しかしながら、石油など枯渇資源の節約志向とともに、二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化など環境問題の意識が高まる中で、上述したような石油由来によるポリエチレン系樹脂では、石化製品の製造から廃棄に至るまでの間に、石油原料の持つ固定化した二酸化炭素が大量に排出されてしまうため、上記志向に沿うことができない。このような問題を踏まえ、近年、プラスチック類を、カーボンニュートラルで再生可能資源である植物から製造する技術の開発が進んでおり、その中でも、プラスチック類中で最も多く生産されているポリエチレンを、バイオマス系のサトウキビを出発原料として生産する技術が確立した。(加工技術研究会編、コンバーテック2009.9、P63~67)なお、カーボンニュートラルとは、植物の生育時の二酸化炭素吸収量と、燃焼時の二酸化炭素排出量とが略同一であることをいう。」(段落【0023】~【0024】)という記載から、本件特許に係る出願前の技術常識として、次の事項が認められる(以下、当該技術常識を、単に「技術常識」という。)。
「地球温暖化防止及び枯渇資源である石油使用量低減という課題の解決を目的として、石油由来のプラスチック材料を植物由来のプラスチック材料へ置き換えること。」
3 本件発明3について
(1)本件発明3と引用発明1との対比
引用発明1の「延伸フィルム」、「シーラントフィルムからなるシーラント層」及び「パウチ」を「形成」する「シーラントフィルムからなるシーラント層と延伸フィルムを少なくとも積層してなる積層体」は、その機能・構成からみて、それぞれ本件発明3の「基材フィルム」、「シーラントフィルム」及び「ヒートシール性包装フィルム」に相当する。
引用発明1の「ラミネート層」、「中間層」及び「シール層」は、それぞれ本件発明3の「外層」、「中間層」及び「内層」に相当するから、引用発明1の「延伸フィルムをパウチ外側とした積層体において、シーラント層は、パウチ外側から順にラミネート層、中間層、シール層の少なくとも3層からな」ることは、本件発明3の「前記基材フィルムに接着する面から順に、外層、中間層、内層の三層構造を有して」いることに相当する。
引用発明1の「ラミネート層としてC4-LLDPE、」「外側のシール層としてC4-LLDPEからなり、」「各層にさらにC6-LLDPEで表される炭素数6のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンを添加する場合、」「配合比がラミネート層とシール層にあってはC4-LLDPE70%~90%+C6-LLDPE10%~30%」であることと、本件発明3の「内層及び外層が」「樹脂A-1:化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体」と「樹脂A-2:炭素数4の石油燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」「の混合物のみから成り、」「樹脂A-1が、」「樹脂A-11:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体」「と樹脂A-12:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィン、炭素数6の化石燃料由来のα-オレフィン、および植物由来のエチレンとの共重合体」「との混合物のみから成り、内層及び外層の」「樹脂A-12:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィン、炭素数6の化石燃料由来のα-オレフィン、および植物由来のエチレンとの共重合体」「の含有量が5~60重量%であ」ることとは、「内層及び外層が低密度ポリエチレンの混合物から成」る限りで一致する。
引用発明1の「C4-LLDPE」及び「COC」は、それぞれ本件発明3の「炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレン」及び「ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマー」に相当する。
引用発明1の「中間層」が「C4-LLDPE及びCOC」「からなり」、「中間層に含まれるCOCの配合量が10重量%から40重量%の範囲であ」ることと、本件発明3の「中間層が、」「樹脂B-1:ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマー」又は「樹脂B-1:ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマー」と「樹脂B-2:炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレン」「との混合物から成り、」「かつ、」「樹脂B-1:ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマー」「の含有量が10重量%以上であ」ることとは、「中間層が、ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマーと炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレンとの混合物から成」る限りで一致する。
そうすると、本件発明3と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点1~4で相違する。
[一致点]
「基材フィルムに積層してヒートシール性包装フィルムを構成するシーラントフィルムであって、
前記基材フィルムに接着する面から順に、外層、中間層、内層の三層構造を有しており、
内層及び外層が低密度ポリエチレンの混合物から成り、
中間層が、ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマーと炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレンとの混合物から成る、
シーラントフィルム。」
[相違点1]
本件発明3は、「外層、中間層、内層の」「三層の合計厚みが30~130μmであ」るのに対し、引用発明1は「ラミネート層、中間層、シール層の少なくとも3層からな」る「シーラント層の総厚は、通常30μm~150μm程度、好ましくは60μm~80μm程度であ」る点。
[相違点2]
「内層及び外層が低密度ポリエチレンの混合物から成」ることについて、本件発明3の「内層及び外層が」「樹脂A-1:化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体」と「樹脂A-2:炭素数4の石油燃料由来のα-オレフィンをモノマーの一部とする化石燃料由来のリニア低密度ポリエチレン」「の混合物のみから成り、」「樹脂A-1が、」「樹脂A-11:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィンと植物由来のエチレンとの共重合体」「と樹脂A-12:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィン、炭素数6の化石燃料由来のα-オレフィン、および植物由来のエチレンとの共重合体」「との混合物のみから成り、内層及び外層の」「樹脂A-12:炭素数4の化石燃料由来のα-オレフィン、炭素数6の化石燃料由来のα-オレフィン、および植物由来のエチレンとの共重合体」「の含有量が5~60重量%であ」るのに対し、引用発明1は、「ラミネート層としてC4-LLDPE、」「外側のシール層としてC4-LLDPEからなり、」「各層にさらにC6-LLDPEで表される炭素数6のα-オレフィンを側鎖に有するリニア低密度ポリエチレンを添加する場合、」「配合比がラミネート層とシール層にあってはC4-LLDPE70%~90%+C6-LLDPE10%~30%」である点。
[相違点3]
「中間層が、ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマーと炭素数4のα-オレフィンをモノマーの一部とするリニア低密度ポリエチレンとの混合物から成」ることについて、本件発明3は、「ノルボルネンとエチレンとの共重合体から成るシクロオレフィンコポリマーの含有量が10重量%以上である」のに対し、引用発明1は、「中間層に含まれるCOCの配合量が10重量%から40重量%の範囲であ」る点。
[相違点4]
本件発明3は、「中間層の厚みがシーラントフィルムの総厚の40%以上である」であるのに対し、引用発明1は、「シーラント層に含まれるラミネート層/中間層/シール層の層比がそれぞれ0.5~2/1~5/0.5~2の範囲である」点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
上記技術常識によれば、引用発明1には、植物由来のプラスチック材料を用いることについて動機付けがある。
そうすると、引用発明1の「ラミネート層」を引用文献3記載事項における「ラミネート層」に置換すると共に、引用発明1の「シール層」を引用文献3記載事項における「シール層」に置換することは当業者が容易に想到し得たことといえる。
しかしながら、引用発明1の「ラミネート層」と「シール層」の樹脂を引用文献3記載事項の樹脂に置換したものにおいては、「ラミネート層」に高密度ポリエチレンが含まれることになるが、他方、本件発明3においては、「外層」を構成する樹脂A-11、樹脂A-12及び樹脂A-12に、高密度ポリエチレンは含まれていない。そして、引用発明1に引用文献3記載事項を適用するに際し、高密度ポリエチレンに着目して、高密度ポリエチレンを含まないようにする動機付けもない。
したがって、引用発明1において、上記相違点2に係る本件発明3の事項とすることを、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明1及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立書において、申立人が主張した特許異議申立理由は、すべて取消理由として通知された。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び申立人がした特許異議の申立理由によっては、本件特許の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項3に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700116