2021-700089
照明装置
- 審判番号
- 2021-700089
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-146889外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6753719
- 請求日
- 2021年01月26日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZDA(G01N) / P1651.113-ZDA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 30項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
特許第6753719号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年7月27日に出願され、令和2年8月24日にその特許権の設定登録がされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
という。)による請求項1ないし3に係る特許
に対する特許異議の申立て
同年 5月31日付け:取消理由通知
同年 8月 2日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 9月15日 :申立人による意見書の提出
同年 2月 9日付け:特許権者に対する審尋
なお、令和4年2月9日付けでした特許権者に対する審尋に対して、特許権者から回答書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)特許権者が令和3年8月2日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし3を一群の請求項として訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし5のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた拡散板」と記載されているのを、「前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散板」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項1に「照明装置であって、」と記載されているのを、「検査用の照明装置であって、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられる筒状部材」と記載されているのを、「少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された箇状部材」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項1に「前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、」と記載されているのを、「前記拡散板は、当該拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く、
前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項3に「前記筒状部材は、筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え、
前記基板と前記拡散板のうちの一方に前記本体の他端部が当接または埋設され、他方に前記フランジ部が係合していることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。」とあるうち、請求項1を引用するものついて、独立形式に改め、「基板と、この基板に設けられた光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた拡散板とを備えた照明装置であって、
前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、
光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられる筒状部材とを備え、
前記筒状部材は、筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え、
前記基板と前記拡散板のうちの一方に前記本体の他端部が当接または埋設され、他方に前記フランジ部が係合しており、
前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、
前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散板によって拡散、 均一化された光とともに前記ワークに照射することを特徴とする照明装置。」に訂正する。
ここで、「前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔」について、訂正請求書の第4頁1~2行には、「前記拡散板の前記基板側と反対側の表面まで貫通する貫通孔」と記載されている。これについて、令和3年10月11日付け取消理由通知(決定の予告)において、訂正前の請求項1及び訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3には「前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔」と記載されていることから、上記の通り「前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔」と訂正することを求めるものと解するとしたところ、特許権者は、令和3年12月20日提出の意見書において反論していないことから、上記のとおり訂正するものと解することとする(下線は強調のため当審で付加した。)。
(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1ないし4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1ないし5は、訂正前に引用関係を有する請求項1ないし3に対して請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項〔1-3〕に対して請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1ないし4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「拡散板」を「平板状の拡散板」に限定し、訂正事項2は、「照明装置」を「検査用の照明装置」に限定し、訂正事項3は、「筒状部材」を「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された箇状部材」に限定し、訂正事項4は、「拡散板」について「当該拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く」との限定事項を追加するものであるから、訂正事項1ないし4は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1は、明細書段落【0016】の「照明装置1は、図1~図3に示すように、・・・概略矩形平板状をなす拡散板5とを備えている。」との記載に基づくものである。
(イ)訂正事項2は、明細書段落【0001】の「本発明は、製品の表面検査等における照明として使用される照明装置に関する。」との記載、及び段落【0015】の「本実施形態に係る照明装置1は、ライン上を流れる製品(ワーク)の表面欠陥や異物検査等を行う製品検査システム等に用いられる概略矩形状のフラットな発光面を有する面照明装置である。」との記載に基づくものである。
(ウ)訂正事項3について、明細書には、「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された筒状部材」という記載そのものの記載はない。
しかしながら、「筒状部材」が「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された」ものであることは、明細書段落【0022】の「このような貫通孔10には、図3および図4に示すように、筒状部材11が挿入されている。この筒状部材11は、透明なアクリル樹脂によって形成されたものであり、図5に示すように、円筒状の本体11aと、この本体11aの一端部に当該本体11aと一体的に設けられたフランジ部11bとを備えている。」との記載、及び図面の図3ないし8の記載から読み取れることである。
(エ)訂正事項4について、明細書には、「前記拡散板は、当該拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く」という記載そのものの記載はない。
しかしながら、「拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長」いことは、図面の図2及び3の記載から読み取れることである。
(オ)したがって、訂正事項1ないし4は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項1ないし4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1ないし4は、上記アで示したように、特許請求の範囲を減縮するものであって特許請求の範囲を拡張するものではなく、当該訂正により訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1ないし4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する従属形式の請求項であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで示したとおり、訂正事項5は、請求項3について、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて独立形式の請求項へ改めるものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
4 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
(本件発明1)
【請求項1】
基板と、この基板に設けられた光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散板とを備えた検査用の照明装置であって、
前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、
光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された筒状部材とを備え、
前記拡散板は、当該拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く、
前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、
前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散板によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射することを特徴とする照明装置。
(本件発明2)
【請求項2】
前記光拡散部は、前記筒状部材の内周面を白塗装してなる白塗装面から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
(本件発明3)
【請求項3】
基板と、この基板に設けられた光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた拡散板とを備えた照明装置であって、
前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、
光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられる筒状部材とを備え、
前記筒状部材は、筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え、
前記基板と前記拡散板のうちの一方に前記本体の他端部が当接または埋設され、他方に前記フランジ部が係合しており、
前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、
前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散板によって拡散、 均一化された光とともに前記ワークに照射することを特徴とする照明装置。
第4 取消理由の概要
訂正後の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和3年10月11日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項1及び2に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 甲号証等の記載
申立人は、証拠方法として、甲5のほか、以下の甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第6号証を提出している。
1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1には以下の記載がある(下線は当審で付加した。甲号証等の記載において以下同様。)。
(甲1-ア)「【図面の簡単な説明】
【図1】LED照明器の平面図と発光断面図を示す。
【図2】LED照明器の高さとの関係を表した図である。
【符号の説明】
1 ブラケット
LED照明器を固定するためのベース板でネジ加工等を施すことにより固定しやすくする。
2 LED
LEDがリング円板形状の基板等に配列されている。
3 拡散樹脂
半ドーナツ形状の拡散樹脂により180°近い範囲の発光が得られる。
4 LED照明器
5 照射対象物」
(甲1-イ)「【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案が属する技術分野】
画像処理に使用するLED照明器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のLED照明器はLEDランプの取り付けの関係から照射角度が決まった方向にしか照射できないものであった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
本案はその欠点を除いて、LED照明器1台で、その照射角度を変えられるように開発しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(イ)半ドーナツ形状の拡散樹脂構造の中にLEDランプを内蔵。
(ロ)拡散樹脂を通して広範囲に発光をおこなう。
【0005】
【考案の実施の形態】
本案は以上の構造であるから、これを利用するときには、照射対象物からの高さを変えることにより、任意の照射角度が得られるので、画像処理に必要な画像を選ぶことができる。」
(甲1-ウ)【図1】
「[図:0001388342000001.jpg]」
(甲1-エ)【図2】
「[図:0001388342000002.jpg]」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(甲1-ウ)の断面図から、半ドーナツ形状の拡散樹脂は、殻状の部材であることが見て取れる。
イ 上記アを踏まえると、上記(甲1-ア)ないし(甲1-エ)の記載から、甲1には、
「 画像処理に使用するLED照明器であって、LEDがリング円板形状の基板に配列されており、半ドーナツ形状で殻状の拡散樹脂構造の中にLEDランプを内蔵しており、拡散樹脂を通して広範囲に発光をおこない、照射対象物からの高さを変えることにより、任意の照射角度が得られる、LED照明器。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
2 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)甲2には以下の記載がある。
(甲2-ア)第17頁上段左側の写真
「[図:0001388342000003.jpg]」
(甲2-イ)第17頁上段及び第18頁上段
「マルチライティングシリーズ シマテックが開発した角形タイプ。【特に角型ワークを均一に照射するのに適しています。】コントラスト技術に新しい革命。マルチライティングは、樹脂内に内蔵されたLEDが拡散樹脂を通し、180°近い広範囲の照射が可能な構造となっています。これによりワークディスタンスが変化すると照明の照射角度が変化し、画像処理に必要な最適なコントラストを簡単に得ることが出来ます。・・・MC series 角型照明器」
(甲2-ウ)第17頁中段
「180°近い照射範囲を持っている為、ワークディスタンスを変えることにより照射角度が変わります。又拡散光なので均一性も高く、ワークへの映りこみが少なく、反射率の高いワークにも最適です。」
(2)甲2に記載された発明
ア 上記(甲2-ア)の写真から、角型照明器は、中央に開口部を有するフレーム形状であること、及び基板上にLEDが配列されていることが見て取れる。
イ 上記アを踏まえると、上記(甲2-ア)ないし(甲2-ウ)の記載から、甲2には、
「 中央に開口部を有するフレーム形状の角型照明器であって、基板上にLEDが配列されており、樹脂内に内蔵されたLEDが拡散樹脂を通し、180°近い広範囲の照射が可能な構造となっており、これによりワークディスタンスが変化すると照明の照射角度が変化し、画像処理に必要な最適なコントラストを簡単に得ることができ、拡散光なので均一性も高く、ワークへの映りこみが少ない、角型照明器。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
3 甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)甲3には以下の記載がある。
(甲3-ア)第6頁タイトル
「マルチアングル照明[丸形]/[角型]」
(甲3-イ)第6頁上段
「これ一台で、均一照射からローアングル照射まで自由自在ワークに合せて最適な照明条件に合わせられるフレキシブルな照明です。」
(甲3-ウ)第6頁上段の写真
「[図:0001388342000004.jpg]」
(甲3-エ)第6頁中段の「照明の特徴と設定」の項
「パワーLEDを高密度実装[図:0001388342000005.jpg]バワーLEDを狭ピッチで高密度実装することで、ムラのない拡散光の照射を実現しています。マット仕上げの拡散板[図:0001388342000006.jpg]拡散効果を最大限得るために、LED全域をカバーする拡散板をすべてマット仕上げにしています。」
(2)甲3に記載された発明
ア 上記(甲3-ウ)の写真から、角型マルチアングル照明は、中央に開口部を有するフレーム形状であることが見て取れる。
イ 上記(甲3-エ)の図から、パワーLEDが実装された基板がアルミボディーに取り付けられていることが見て取れる。
ウ 上記ア及びイを踏まえると、上記(甲3-ア)ないし(甲3-エ)の記載から、甲3には、
「 中央に開口部を有するフレーム形状である角型マルチアングル照明であって、バワーLEDを狭ピッチで高密度実装した基板がアルミボディーに取り付けられており、LED全域をカバーする拡散板を備え、拡散効果を最大限得るために拡散板はすべてマット仕上げにしてあり、均一照射からローアングル照射まで自由自在で、ワークに合せて最適な照明条件に合わせられる、角型マルチアングル照明。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
4 甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)甲4には以下の記載がある。
(甲4-ア)第53頁上段左側
「マルチリング照明OPMRシリーズ照射角度自在の拡散リング照明高い位置からの均一照射とローアングルに1台で対応します。パワーLEDによる高出力の拡散光照射を実現しました。」
(甲4-イ)第53頁上段右側の写真
「[図:0001388342000007.jpg]」
(甲4-ウ)第53頁中段右側の「設置イメージ」の図
「[図:0001388342000008.jpg]」
(2)甲4に記載された発明
ア 上記(甲4-イ)の写真から、マルチリング照明は、中央に開口部を有する円形フレーム形状であることが見て取れる。
イ 上記(甲4-イ)の写真及び上記(甲4-ウ)の図から、マルチリング照明は、リング状の底部と円筒状の側部を備えていることが見て取れる。
ウ 上記(甲4-イ)の写真から、マルチリング照明は、円筒状の側部上端からリング状の底部の開口部に渡って延在する、ラッパ状の表面形状を有する白色、赤色又は青色の発光部を備えていることが見て取れる。
エ 上記アないしウを踏まえると、上記(甲4-ア)ないし(甲4-ウ)の記載から、甲4には、
「 中央に開口部を有する円形フレーム形状であるマルチリング照明であって、リング状の底部と円筒状の側部を備えさらに、円筒状の側部上端からリング状の底部の開口部に渡って延在する、ラッパ状の表面形状を有する白色、赤色又は青色の発光部を備え、高い位置からの均一照射とローアングルに1台で対応でき、パワーLEDによる高出力の拡散光照射を実現する、マルチリング照明。」
の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。
5 甲5の記載事項及び甲5に記載された発明
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)甲5には以下の記載がある。
(甲5-ア)表紙
「LED照明総合カタログ」
(甲5-イ)第58頁上段左側の写真
「[図:0001388342000009.jpg]」
(甲5-ウ)第58頁下段右側の「穴空き面照明」の項
「大型対象ワークを均一照射できます。穴位置やサイズなど変更可能です。[図:0001388342000010.jpg][図:0001388342000011.jpg]」
(2)甲5に記載された発明
ア 上記(甲5-イ)及び(甲5-ウ)の写真から、穴空き面照明は、全体形状が矩形平板状であること、中央に概略円筒面状の表面を有する開口部を備えること、矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部が白色の部材で形成されていること、矩形状の底部及び側面を備えること、並びに開口部と側面との間の距離は穴空き面照明の厚さよりも長いことが見て取れる。
イ 上記アを踏まえると、上記(甲5-ア)ないし(甲5-ウ)の記載から、甲5には、
「 LED照明としての穴空き面照明であって、全体形状が矩形平板状であって、中央に概略円筒面状の表面を有する開口部を備え、矩形状の底部及び側面を備え矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部が白色の部材で形成されており、開口部と側面との間の距離は穴空き面照明の厚さよりも長く、大型対象ワークを均一照射できる、穴空き面照明。」
の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
6 甲6の記載事項及び甲6に記載された発明
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)甲6には以下の記載がある。
(甲6-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント基板、ICパッケージ、ハイブリッド用基板およびMCM(Multi Chip Module )などの回路基板における回路パターンや搭載された回路部品の良否を検査するための回路基板検査に用いられている基板検査用カメラの照明装置に関するものである。」
(甲6-イ)「【0017】次に、撮影部4の構成について、図1,2を参照して説明する。
【0018】両図に示すように、撮影部4は、プリント基板31を備えており、プリント基板31には、検査用カメラ32と、本発明における検査用カメラの照明装置に相当する照明部33が搭載されている。ここで、検査用カメラ32は、プリント基板31に形成された孔部38に貫通させられた状態で、図示しない取付具によってプリント基板31に固定されている。
【0019】一方、照明部33は、4つのLED34a~34d(以下、区別しないときは、「LED34」ともいう)と、本発明における遮光手段および拡散手段にそれぞれ相当する遮光板35a,35b(以下、区別しないときは、「遮光板35」ともいう)および拡散板36a,36b(以下、区別しないときは、「拡散板36」ともいう)とを備えて構成されている。ここで、遮光板35は、黒色に塗装されて側面形状がコ字状に形成された金属板によって構成されており、LED34から回路基板2に対して垂直方向に出射された直接光を遮光する。拡散板36は、側面形状がL字状に形成されると共に、乳白色のポリカーボネイトや、表面処理したアクリル板などによって構成されている。また、拡散板36は、遮光板35と互いに対向するように遮光板35に固定されており、LED34から遮光板35の開口部側に出射された光を拡散する。」
(甲6-ウ)「【0026】次に、図4(a),(b)を参照して、他の実施形態に係る撮影部51について説明する。なお、この実施形態では、撮影部4と同一の構成要素については同一の符号を付して、異なる点についてのみ説明する。
【0027】同図に示すように、撮影部51では、4つのLED52a~52dが所定の円周上に等間隔で位置するようにプリント基板31に取り付けられている。また、筒状の遮光板53がLED52a~52dを取り囲むようにプリント基板31に立設されており、遮光板53には、孔部54が形成された底部55が形成されている。さらに、遮光板53には、筒状の拡散板56が、遮光板53の立設方向と平行になるように立設されており、拡散板56と遮光板53とで空間57が形成される結果、LED52a~52dが、その空間57内に位置している。
【0028】この撮影部51では、LED52a~52dから回路基板2に対して垂直方向に出射された光は、遮光板53の底部55によって遮光される。また、LED52a~52dから回路基板2に対して斜め方向に出射された光は、拡散板によって拡散された後、孔部54を介して回路基板2の所定の範囲を出射する。
【0029】この撮像部51においても、撮影部4と同じようにして、検査用カメラ32の視野範囲における照度むらを軽減することができる。」
(甲6-エ)【図4】
「[図:0001388342000012.jpg]」
(2)甲6に記載された発明
ア 上記(甲6-ウ)に記載された「拡散板56」及び「拡散板」は、同じものを意味すると認められることから、以下「拡散板56」に記載を統一する。
イ 上記アを踏まえると、上記(甲6-ア)ないし(甲6-エ)の記載から、甲6には、
「 回路基板検査に用いられている基板検査用カメラの照明装置であって、プリント基板31には、検査用カメラ32が貫通する孔部38が形成されており、4つのLED52a~52dが所定の円周上に等間隔で位置するようにプリント基板31に取り付けられており、筒状の遮光板53がLED52a~52dを取り囲むようにプリント基板31に立設されており、遮光板53には、孔部54が形成された底部55が形成されており、遮光板53には、筒状の拡散板56が、遮光板53の立設方向と平行になるように立設されており、拡散板36は側面形状がL字状に形成され、拡散板56と遮光板53とで空間57が形成される結果、LED52a~52dが、その空間57内に位置しており、LED52a~52dから回路基板2に対して垂直方向に出射された光は、遮光板53の底部55によって遮光され、また、LED52a~52dから回路基板2に対して斜め方向に出射された光は、拡散板56によって拡散された後、孔部54を介して回路基板2の所定の範囲を出射し、検査用カメラ32の視野範囲における照度むらを軽減することができる、照明装置。」
の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。
7 引用文献7の記載事項及び引用文献7に記載された技術事項
折りたたみ中(クリックで表示)
(1)引用文献7には以下の記載がある。
(引7-ア)「【0018】
本実施形態に係る検査用照明装置100は、ライン上を流れる製品(ワーク)の表面欠陥や異物検査等を行う製品検査システム等に用いられる概略矩形状の発光面を有する面光源装置である。
【0019】
具体的にこのものは、図1~図3に示すように、光源である複数のLED2が配置される概略矩形平板状をなす底板3と、当該底板3の4辺に固定された4つの側板4と、当該側板4に支持された概略矩形平板状をなす拡散板5とを備えている。なお、1つの側板4からLED2に電力を供給するための電源ケーブル6(図3には図示しない)が延設されている。
【0020】
底板3は、複数のLED2が配列されたLED基板が載置され、又は複数のLED2が直接載置されるものである。なお、LED2は例えば縦横に等間隔にマトリックス状に配置されている(図2等参照)。
【0021】
側板4は、底板3の各辺の長さと同程度の長さを有する長尺状をなすものであり、例えば押出加工又は引抜加工の一次加工後、切削加工等の二次加工が施されることにより形成される。また、図4~図6に示すように、各側板4の内面4aにおける上側所定位置には、拡散板5の端縁部51が収容される取付溝41が長手方向に沿って形成されている。なお、取付溝41は、内側に開口する断面コの字状をなす凹溝である。
【0022】
各側板4の外面4bには、取付用枠体(不図示)に設けられた固定用ナット(不図示)の頭部がスライド可能に引っかかる固定用溝42と、側板4の下側(底板側)に放熱フィンFを形成する複数の放熱用溝43とが長手方向に沿って形成されている。なお、固定用溝42は、取付溝41よりも下側に形成され、開口部がその他の部位に比べて窄まった形状であり、当該開口部に固定用ナットの頭部が引っかかることにより検査用照明装置100が取付用枠体に固定される。また、固定用溝42は、検査用照明装置100の不使用時等において、側板4から延設された電源ケーブル6を収容する可能である。
【0023】
本実施形態の側板4は、底板3の各辺における端縁部においてねじ固定される(図3参照)。具体的に側板4は、図5等に示すように、下面4cが底板3の上面3aに接触するように固定されるものであり、当該下面4cには雌ねじ部44が長手方向に沿って複数形成されており、各雌ねじ部44は側板4の長手方向から見た中心軸Cに沿って形成されている。この中心軸Cは、側面視において側板4の内面4a及び外面4bに平行な軸である。そして、側板4は、底板3の端縁部に形成された貫通孔3Hを介してねじ7が螺合されることによって底板3に固定される(図3参照)。
【0024】
拡散板5は、各辺の端縁部51がそれぞれ側板4の取付溝41内に収容され、LED2の光射出側前方に固定される。この拡散板5は、底板3及び側板4により形成される概略箱形状をなすケーシングの開口全面を塞ぎ、複数のLED2から出た光を拡散、均一化して前方に射出する。」
(引7-イ)【図1】
「[図:0001388342000013.jpg]」
(引7-ウ)【図2】
「[図:0001388342000014.jpg]」
(引7-エ)【図3】
「[図:0001388342000015.jpg]」
(2)引用文献7に記載された技術事項
上記(引7-ア)ないし(引7-エ)の記載から、引用文献7には、
「 光源である複数のLED2が配置される概略矩形平板状をなす底板3と、当該底板3の4辺に固定された4つの側板4と、当該側板4に支持された概略矩形平板状をなす拡散板5とを備えている、概略矩形状の発光面を有する面光源装置において、底板3を、複数のLED2が配列されたLED基板が載置されたものとするか、又は複数のLED2が直接載置されるものとすること。」
(以下「引7技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
第6 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
1 甲5の発行日について
(1)特許権者は、令和3年12月20日提出の意見書において、甲5の公知日について、以下のとおり主張する。
「甲第5号証について精査したところ、公知日の認定に疑義がありますので、以下に意見を申し述べます。すなわち、甲第5号証の表紙を参照すると、『2016~LED照明カタログ The next level of vision』と記載され、同号証の裏表紙を参照すると、同裏表紙の右下欄に極小さな文字で『2016.4.5500 (ACC)』と記載されています。しかし、これら『2016~LED照明カタログ The next level of vision』および『2016.4.5500 (ACC)』という記載が、甲第5号証の公知日または発行日であることについては、甲第5号証には何ら記載されておりません。このため、甲第5号証の公知日が、2016年4月であるかは全く不明です。つまり、甲第5号証は、本件特許の出願日である2016年7月27日より前に公知となった刊行物であるかは全く不明です。そうすると、甲第5号証に記載の甲5発明は、主引用発明たり得ないと思料します。」
(2)特許権者の上記主張について検討する。
ア カタログにおいて、裏表紙等に、発行日を表す数字等を記載することは、よく行われていることである。
イ 甲5の表紙には「2016~LED照明カタログ The next level of vision」と記載されており、「2016」は、2016年を意味するものと解される。そして、上記アを踏まえれば、裏表紙に記載された「2016.4.5500 (ACC)」のうち、「2016.4」は、2016年4月を意味する蓋然性が高い。
ウ 令和4年1月31日に申立人が提出した回答書には株式会社レイマックからの返答(2022年1月27日付け 株式会社レイマック LED照明機器グループ 営業部 開田圭祐作成、以下「返答書」という。)が添付されており、当該返答書には、「『2016~LED照明総合カタログ』の裏表紙の『2016.4.5500(ACC)』の『2016.4』は、2016年4月発行の意味です。『5500(ACC)』は、社内の管理コードです。」と記載されている。ここで、株式会社レイマックは、甲5を発行した株式会社イマックが、令和元年9月に社名変更したものである。
返答書に添付された添付資料1のメール(「2016~LED照明総合カタログ」の発行時に登録者に送信した発行を知らせるメールについて、登録者の1名が受信したメール)には、「差出人:株式会社イマック 送信日時:2016年4月5日火曜日6:43 件名:【イマック】新製品多数ラインナップ!2016年度版LED照明総合カタログのご案内」
・・・LED照明総合カタログが新しくなりました!!・・・この度、LED照明総合カタログの2016年度版が完成致しました!!」と記載されている。
エ 上記イ、ウの状況から見て、甲5は、2016年4月、すなわち本件特許に係る出願の出願日である平成28年(2016年)7月27日よりも前に発行されたものと認める。
2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲5発明とを対比する。
ア 甲5発明の「矩形状の底部」は、本件発明1の「基板」に相当する。
イ 甲5発明の「LED」は、本件発明1の「光源」に相当する。
ウ 甲5発明において、「LED」は、「矩形状の底部」と「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「矩形状平面部」との間に存在するものと認められる。
また、甲5発明は「大型対象ワークを均一照射できる」もので、「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部が白色の部材で形成されて」いることから、甲5発明の「発光部」の「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部」は、拡散機能を有しているといえる。
したがって、甲5発明の「白色の部材で形成されて」いる「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「矩形状平面部」と、本件発明1の「前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散板」とは、「前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散部材」で共通する。
エ 甲5発明の「穴空き面照明」は、「大型対象ワークを均一照射できる」ものであるから、「大型対象ワーク」の検査に用いることを想定したものといえる。
したがって、甲5発明の「穴空き面照明」は、本件発明1の「検査用の照明装置」に相当する。
オ 上記ウのとおり、甲5発明において、「LED」は、「矩形状の底部」と「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「矩形状平面部」との間に存在するものと認められ、甲5発明の「開口部」は穴空き面照明の厚さ方向を貫通していることから、甲5発明の「開口部」は、本件発明1の「前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔」に相当する。
カ 甲5発明の「白色の部材で形成されており」「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「開口部の概略円筒面状部」の部分と、本件発明1の「光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された筒状部材」とは、「光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散部材の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面が形成された筒状内周面を有する部材」で共通する。
キ 甲5発明の「開口部と側面との間の距離は穴空き面照明の厚さよりも長く」と、本件発明1の「前記拡散板は、当該拡散板の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散板の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く」とは、「前記拡散部材は、当該拡散部材の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散部材の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く」で共通する。
ク 甲5発明の「大型対象ワーク」は、本件発明1の「ワーク」に相当する。
ケ 甲5発明は「大型対象ワークを均一照射できる」ものであることから、甲5発明は、本件発明1の「前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し」、及び「前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散板によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射する」と、「前記拡散部材は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し」、及び「前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散部材によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射する」で共通する構成を備えているといえる。
(2)そうすると、本件発明1と甲5発明とは、
「 基板と、光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散部材とを備えた検査用の照明装置であって、前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散部材の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散部材の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面が形成された筒状内周面を有する部材とを備え、前記拡散部材は、当該拡散部材の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散部材の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く、前記拡散部材は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散部材によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射する照明装置。」
の発明である点において一致し、次の3点において相違する。
(相違点1)
「拡散部材」について、本件発明1においては、「拡散板」であるのに対し、甲5発明においては、「白色の部材で形成されており」「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「矩形状平面部」であるものの、「拡散板」であることは特定されていない点。
(相違点2)
「軸方向の全長に渡って内周面が形成された筒状内周面を有する部材」について、本件発明1においては、その内周面が軸方向の全長に渡って「ストレート状」に形成された「筒状部材」であるのに対し、甲5発明においては、「白色の部材で形成されており」「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「概略円筒面状部」であるものの、その内周面が軸方向の全長に渡って「ストレート状」に形成された「筒状部材」であることは特定されていない点。
(相違点3)
「光源」が、本件発明1においては、「基板に設けられ」ているのに対し、甲5発明においては、LEDがどの部材に取り付けられているかは特定されていない点。
(3)上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
引7技術事項は、面光源装置の発光面を拡散板で構成することを開示している。
甲5発明と引7技術事項は、面照明装置として共通する技術の分野に属するものであるところ、上記(1)ウで説示したように、甲5発明の「発光部」の「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部」は拡散機能を有しているわけであるから、引7技術事項に基づき、甲5発明の「矩形状平面部」を拡散機能を有する板状部材(拡散板)で構成し、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
上記アで検討した相違点1について拡散機能を有する「発光部」の「矩形状平面部」を開口部を有する板状部材で構成することに伴い、当該「発光部」の「概略円筒面状部」を「筒状部材」で構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、上記(甲5-イ)及び(甲5-ウ)の写真に付された開口部付近の2つの矢印の先端の間に、底部の開口部右側を表す円弧状の輪郭が見て取れ、特に(甲5-イ)の写真から、当該円弧状の輪郭の右側に矩形状平面部の白色よりも色の薄い三日月形状の部分があり、これらを含むように矩形状平面部の開口部を表す円形状の輪郭が見て取れ、底部の開口部の径と矩形状平面部の開口部の径は同程度であることが見て取れることから、甲5発明の「概略円筒面状部」の形状は円筒の内面と同じ形状であるといえ、本件発明1の「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された」を満たすといえる。
したがって、内周面が軸方向の全長に渡って「ストレート状」に形成された点は、実質的な相違点ではない。
加えて、上記(甲5-イ)及び(甲5-ウ)の写真から甲5発明の「概略円筒面状部」が本件発明1の「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された」を満たしていると充分に読み取れない場合について検討する。
甲5発明の開口部はカメラによる撮影を可能とするためのものであるから、カメラのレンズが挿入できるか、撮影のための光路が確保できれば充分であって、特殊な形状のものとする必要はなく、また、甲5発明は「大型対象ワークを均一照明」する「面照明」であるから、大型対象ワーク全体を均一に照明するためには発光面が広くて発光面の発光強度が均一化されていることが求められ、そのため開口部は小さい方が好ましいものである。
そうすると、甲5発明の「概略円筒面状部」を、本件発明1のように「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された」ものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
ウ 相違点3について
引7技術事項は、面光源装置の光源である複数のLEDを、本件発明1の基板に相当する底板に配置することを開示している。
甲5発明と引7技術事項は、面照明装置として共通する技術の分野に属するものであるところ、引7技術事項に基づき、甲5発明の「LED」を「矩形状の底部」に配置し、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(4)本件発明1の奏する作用効果について
本件発明1によりもたらされる効果は、甲5及び引用文献7の記載から当業者が予測し得る程度を超えるものではない。
(5)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲5発明及び引7技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件発明2について
(1)本件発明2と甲5発明とを対比する。
本件発明2の発明特定事項のうち、請求項1の記載を引用する部分についての甲5発明との対比は、上記2(1)での本件発明1と甲5発明との対比と同じである。
(2)そうすると、本件発明2と甲5発明とは、
「 基板と、光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散部材とを備えた検査用の照明装置であって、前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散部材の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散部材の各対向面間に渡って設けられ、かつ軸方向の全長に渡って内周面が形成された筒状内周面を有する部材とを備え、前記拡散部材は、当該拡散部材の外周部と前記貫通孔との間における前記拡散部材の面内方向の長さが前記貫通孔の軸方向の長さより長く、前記拡散部材は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散部材によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射する照明装置。」
の発明である点において一致し、上記相違点1ないし3に加え、次の点において相違する。
(相違点4)
「光拡散部」が、本件発明2においては、「筒状部材の内周面を白塗装してなる白塗装面から形成されている」のに対し、甲5発明においては、「概略円筒面状部」が「白色の部材で形成されて」いるものの、「内周面を白塗装してなる白塗装面から形成されている」か不明な点。
(3)上記各相違点について検討する。
ア 相違点1ないし3について
相違点1ないし3については、上記2(3)で検討したとおりである。
イ 相違点4について
光拡散機能を有する部分を白塗装面により形成することは、文献を示すまでもなく従来周知であり、甲5発明において、光拡散機能を有する「白色の部材で形成されて」いる「概略円筒面状部」を、内周面を白塗装した白塗装面とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(4)本件発明2の奏する作用効果について
本件発明2によりもたらされる効果は、甲5及び引用文献7の記載並びに周知技術からから当業者が予測し得る程度を超えるものではない。
(5)以上のとおりであるから、本件発明2は、甲5発明、引7技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 特許権者の主張について
(1)特許権者は、令和3年8月2日提出の意見書において、以下の主張をする。
「しかし、訂正後の本件発明1では、『筒状部材の内周面』は軸方向の全長に渡ってストレート状に形成されています。これに対し、甲5発明では、『矩形状平面部及び開口部の円筒面状部を有する発光部』の『開口部の円筒面状部』の部分の内周面は、軸方向の全長に渡ってストレート状に形成されておりません。甲第5号証では、開口部の断面形状が明確に示されていないため、『開口部の円筒面状部』の部分の内周面の形状は明らかではありませんが、甲第5号証の58頁の上段の写真を参照すると、開口部の矩形平面部側の内周面は矩形平面部に向けてラッパ状に広がる曲面になっているように見えます。また、当該写真では、矩形平面部と、開口部の矩形平面部側の内周面とは、明るさが異なっていることから、『開口部の円筒面状部』の部分の内周面は、軸方向の全長に渡ってストレート状に形成されておらず、開口部の円筒面状部の矩形平面部側の内周面がラッパ状に広がる曲面になっていると考えられます。開口部の円筒面状部がラッパ状に広がって曲面になっていたのでは、円筒面状部側に向かって、ワーク(検査対象物)と発光面(平板状の拡散板+円筒面状部)との距離が遠ざかるため、円筒面状部のラッパ状に広がる曲面近傍において照度ムラが生じます。実際、甲第5号証の58頁の上段の写真でも明るさが同じでないように見えます(全体が白色でないように見えます。)したがって、甲5発明は、本件発明1における『軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された筒状部材』を備えておりません。本件発明1は、上述したように、『前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた平板状の拡散板』という構成A1及び『軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された筒状部材』という構成A2を備えることによって、上述したような効果Bを奏します。このような構成A1、A2及び効果Bについては甲第5号証には何ら記載や示唆はありません。」(第11頁3行~下から3行)
(2)特許権者の上記主張について検討する。
ア 特許権者が主張するように、甲5には、開口部の断面形状を説明する記載や、開口部の断面形状示す断面図の記載はないが、上記2(3)イで示したように上記(甲5-イ)及び(甲5-ウ)の写真から把握される開口部の形状は、本件発明1の「軸方向の全長に渡って内周面がストレート状に形成された」を満たしているといえる。
そして、開口部が「ラッパ状に広がる曲面」になっているのであれば、開口部が円筒面状である場合よりも底部の開口部の輪郭が広い範囲で視認可能となるはずであるが、上記(甲5-イ)及び(甲5-ウ)の写真から視認できる底部の開口部の輪郭の範囲は、開口部が「ラッパ状に広がる曲面」になっているといえるほど広くはなく、特許権者が「甲第5号証の58頁の上段の写真を参照すると、開口部の矩形平面部側の内周面は矩形平面部に向けてラッパ状に広がる曲面になっているように見えます」と主張する根拠が不明である。
イ また、特許権者は、「当該写真では、矩形平面部と、開口部の矩形平面部側の内周面とは、明るさが異なっていることから、『開口部の円筒面状部』の部分の内周面は、軸方向の全長に渡ってストレート状に形成されておらず、開口部の円筒面状部の矩形平面部側の内周面がラッパ状に広がる曲面になっていると考えられます。」と主張する。
しかしながら、甲5発明はLED照明であることから指向性を有し、角度により照度が異なる性質を有していることから、光源であるLEDから概略円筒面状部に向かう光強度は矩形状平面部に向かう光強度よりも小さくなり、概略円筒面状部の形状がラッパ状に広がる曲面になっていなくとも、開口部内周面の照度が矩形平板状の照度よりも暗くなることは想定されることである。
また、開口部には光源が配置されていないことから、開口部周辺の照度が他の部分の照度よりも暗くなることも想定されることである。
したがって、矩形平面部と、開口部の矩形平面部側の内周面とは、明るさが異なっていることから、直ちに開口部の円筒面状部の矩形平面部側の内周面がラッパ状に広がる曲面になっていると断定できるものではない。
ウ さらに、甲5発明において、開口部の内周面をラッパ状に広がる曲面にする必要があるとも認められない。
エ よって、特許権者の上記主張は採用できない。
第7 請求項3に対する異議申立理由について
申立人は、本件発明3は、甲1発明ないし甲6発明のいずれか及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
1 本件発明3と甲5発明とを対比する。
本件発明3の発明特定事項のうち、「基板と、この基板に設けられた光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた拡散板とを備えた照明装置であって、前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散板の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散板の各対向面間に渡って設けられる筒状部材とを備え、」「前記拡散板は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散板によって拡散、 均一化された光とともに前記ワークに照射することを特徴とする照明装置」については、上記第6の2(1)での本件発明1と甲5発明との対比と同様のことがいえる。
2 そうすると、本件発明3と甲5発明とは、
「 基板と、光源と、前記光源を挟んで前記基板と対向して設けられた拡散部材とを備えた照明装置であって、前記基板の前記光源配置側とは反対側の表面から、前記拡散部材の前記基板側とは反対側の表面まで貫通する貫通孔と、光拡散部を有し、前記貫通孔の、少なくとも前記基板および拡散部材の各対向面間に渡って設けられた筒状内周面を有する部材とを備え、前記拡散部材は、前記光源から出射した光を拡散、均一化してワークに照射し、前記光拡散部は、前記光源から出射した光を拡散、均一化して、前記拡散部材によって拡散、均一化された光とともに前記ワークに照射する照明装置。」
の発明である点において一致し、上記相違点1及び3に加え、次の点において相違する。
(相違点5)
「筒状内周面を有する部材」について、本件発明3においては、「筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え」た「筒状部材」であり、「前記基板と前記拡散板のうちの一方に前記本体の他端部が当接または埋設され、他方に前記フランジ部が係合して」いるのに対し、甲5発明においては、「白色の部材で形成されており」「矩形状平面部及び開口部の概略円筒面状部を有する発光部」の「概略円筒面状部」であるものの、「筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え」た「筒状部材」であることは特定されておらず、矩形状平面部及び矩形状の底部に対してどのように固定されているのか不明な点。
3 上記各相違点について検討する。
(1)相違点1及び3について
相違点1及び3については、上記第6の2(3)で検討したとおりである。
(2)相違点5について
上記第6の2(3)イで検討した相違点2と同様に、相違点1について拡散機能を有する「発光部」の「矩形状平面部」を開口部を有する板状部材で構成することに伴い、当該「発光部」の「概略円筒面状部」を「筒状部材」で構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
しかしながら、甲1ないし甲4、甲6及び引用文献7には、照明装置の開口部を形成する筒状部材を「筒状の本体と、この本体の一端部に設けられたフランジ部とを備え」たものとし、「前記基板と前記拡散板のうちの一方に前記本体の他端部が当接または埋設され、他方に前記フランジ部が係合して」いる構成(以下「筒状部材構成」という。)とすることは、記載も示唆もされておらず、照明装置において周知な構成であるとも認められない。
したがって、甲1ないし甲6及び引用文献7に触れた当業者といえども、上記相違点5に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、容易になし得たこととはいえない。
4 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲5発明、甲1ないし甲4、甲6及び引用文献7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、筒状部材構成は、甲1ないし甲6及び引用文献7に開示されておらず、照明装置において周知な構成であるとも認められないことから、甲1発明ないし甲4発明又は甲6発明のいずれを主引用発明としても、本件発明3は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立人の主張について
(1)申立人は、特許異議申立書において、甲1発明ないし甲6発明において、筒状部材に相当する部分の具体的形状、構成は当業者が適宜認定し選択する設計的事項であり、また、当該構成とすることに格別の困難性はない旨主張する。
(2)しかしながら、上記3で述べたとおり、筒状部材構成は、照明装置において周知な構成であるとは認められない。そして、申立人は筒状部材構成を開示する証拠を提出しておらず、筒状部材構成を採用する根拠も示していない。そのため、筒状部材構成が当業者が適宜選択する設計的事項であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件請求項3に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-700089