特許異議申立
2024-700419
光射出装置、及び、光射出装置の製造方法
- 審判番号
- 2024-700419
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-562184外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7377719
- 請求日
- 2024年05月01日
- 審決日
- 2024年08月30日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】シーシーエス株式会社
- 【権利者代理人】西村 竜平
- 【権利者代理人】齊藤 真大
- 【異議申立人】大西 正憲
- 分類
- P1651.112-Y (F21S) / P1651.113-Y (H05K) / P1651.121-Y (F21S) / P1651.536-Y (F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7377719号発明「光射出装置、及び、光射出装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7377719号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7377719号の請求項1~7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2018年(平成30年)12月27日(優先権主張 平成29年12月28日)を国際出願日とする出願であって、令和5年11月1日に特許権の設定登録がされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行され、令和6年5月1日に特許異議申立人大西正憲(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また本件発明1~7をまとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
所定形状に湾曲した可撓性を有する配線基板と、
湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、
前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、
前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されており、
湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、
0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されていることを特徴とする
光射出装置。
【請求項2】
前記所定形状が、切頭円錐形状、部分切頭円錐形状、円筒形状、部分円筒形状、又は、かまぼこ形状である請求項1記載の光射出装置。
【請求項3】
y≦-24.8x+1.63を満たすように構成されている請求項1記載の光射出装置。
【請求項4】
y≦0.745を満たすように構成されている請求項1記載の光射出装置。
【請求項5】
y≦0.72を満たすように構成されている請求項4記載の光射出装置。
【請求項6】
前記複数組のパッドが、丸められた前記配線基板の周方向に複数列で設けられるとともに、当該各パッドに対応して前記表面実装型LEDが設けられており、
各列において0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されている請求項1記載の光射出装置。
【請求項7】
所定形状に湾曲した可撓性を有する配線基板と、湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、
前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されている光射出装置の製造方法であって、
湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、
0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成することを特徴とする光射出装置の製造方法。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、申立人は、申立書とともに、甲第1号証~甲第5号証を提出した(以下、甲第1号証等を甲1等と略記する。)。
理由1(特許法第29条第1項第2号:新規性)
理由1-1 本件発明1~5、7は、甲2に記載の発明と同一である。
理由1-2 本件発明1~5、7は、甲3に記載の発明と同一である。
理由2(特許法第29条第1項第3号:新規性)
理由2-1 本件発明1~5、7は、甲2に記載の発明と同一である。
理由2-2 本件発明1~5、7は、甲3に記載の発明と同一である。
理由3(特許法第29条第2項:進歩性)
理由3-1 本件発明1~5、7は、甲2に記載の発明から容易想到である。本件発明6は、甲2に記載の発明及び周知技術から容易想到である。
理由3-2 本件発明1~5、7は、甲3に記載の発明から容易想到である。本件発明6は、甲3に記載の発明及び周知技術から容易想到である。
理由3-3 本件発明1~5、7は、甲4に記載の発明及び甲5に記載の発明から容易想到である。本件発明6は、甲4に記載の発明、甲5に記載の発明及び周知技術から容易想到である。
理由4(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)
発明の詳細な説明において、本件発明の数式又は数値に関して配線基板や半田などの素材の具体的な条件が何ら記載されておらず、かつ、それらの数式又は数値は条件に依存するものであるから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
証拠一覧
甲1:”直射光 リング照明 LDR2/SQR series”、画像処理用LED照明総合カタログ”LIGHTING SOLUTION”、シーシーエス株式会社、2008年2月、p.13、14
甲2:「シーシーエス株式会社SQR-TP-28-OR図面の写し」と称する書面
甲3:「シーシーエス株式会社SQR-TP-34-OR図面の写し」と称する書面
甲4:特開2010-129281号公報
甲5:特開2002-117707号公報
第4 当審の判断
1 理由4について
事案に鑑み、まず理由4(実施可能要件)を検討する。
(1)本件発明1のうち、「所定形状に湾曲した可撓性を有する配線基板と、湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されており、」については、段落【0024】~【0027】、【図1】~【図3】等にその記載がある。
(2)また本件発明1のうち「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されていることを特徴とする光射出装置。」についても、段落【0028】~【0035】、【0043】、【図5】~【図7】等にその記載がある。
(3)確かに、配線基板や半田などの素材等の具体的な条件については記載されていないが、本件発明は、yとxの関係において形状や配置等を特定する発明であって、「可撓性を有する配線基板」、「複数組のパッド」、「表面実装型LED」、「はんだ」について特殊な素材の組み合わせや接合条件を特定する発明ではないため、本件発明が属する「光射出装置」の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば、当該分野で一般的に用いられる素材や接合条件におけるyとxの関係でよいことが理解できる。
(4)そうすると、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の当該記載に基づき、当業者において、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものといえる。
(5)また、本件発明2~7についても同様である。
(6)したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1~7について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
2 理由1-1(甲2を主引例とする特許法第29条第1項第2号)について
甲2の書面には、左上に「SQR-TP-28-OR」と記載されているものの、甲2は、その入手経路等が不明であって、甲1から2008年に公然実施されていたと認められる型式名「SQR-TP-28-OR」の照明器具の図面であると認めるに足る証拠はない。しかしながら、この点はひとまず措くとして、甲2から把握される発明により、本件発明の新規性が否定されるか否かについて検討する。
(1)甲2発明
ア 甲2発明1
(ア)甲2に記載された図から以下の事項が看取できる。
a 切頭円錐形状の基板がある。
b 8個のLEDが、基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている。
c リング状の照明器具である。
[図:0001415324000001.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、甲2から把握される発明(以下「甲2発明1」という。)は以下のとおりである。
「切頭円錐形状の基板と、
基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている8個のLEDと、
を備えるリング状の照明器具。」
(ウ)申立人の主張について
甲2に関する申立人の主張(申立書第10~11ページ)は、以下のとおり認められない。
a 「可撓性を有する」配線基板であることは、甲2から看取できない。
b 「複数組のパッド」が存在することは、甲2から看取できない。
c 「表面実装型」LEDであることは、甲2から看取できない。
d 「複数組のパッド」が「表面実装型LED」の「裏面に位置してはんだ付けにより」固定されていることは、甲2から看取できない。
e 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「湾曲した配線基板において複数組のパッドが列をなしている部分の周長さ」である「L」は、甲2から看取できない。
f 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「周長さLの中で複数組のパッドの周方向長さの総和」である「s」は、甲2から看取できない。
g 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「湾曲した配線基板において複数組のパッドが列をなしている部分の曲率」である「x」は、甲2から看取できない。
h 上記e~gのとおり、「L」、「s」、「x」が看取できないから、「y=s/L」として、「0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されていること」は、甲2から看取できない。
i 上記a~hについて、申立人は、甲2から把握できるとする根拠を何ら示していない。
イ 甲2発明7
(ア)甲2発明1の「リング状の照明器具」に関し、甲2から、以下の限度で「リング状の照明器具」の製造方法が看取できる。
・8個のLEDを、基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付ける製造方法。
(イ)上記(ア)によれば、甲2から把握される発明(以下「甲2発明7」という。)は以下のとおりである。
「切頭円錐形状の基板と、
基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている8個のLEDと、を備え
8個のLEDを、基板に取り付けるリング状の照明器具の製造方法。」
(ウ)申立人の主張について
甲2に関する申立人の主張(申立書第11ページ)は、上記ア(ウ)と同様に認められない。
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲2発明1を対比すると、後者の「基板」と「リング状の照明器具」は、前者の「配線基板」と「光射出装置」に相当する。
(イ)後者の「基板」が「切頭円錐形状」であることは、前者の「配線基板」が「所定形状に湾曲した」ものであることに相当する。
(ウ)後者の「8個のLED」と、前者の「複数個の表面実装型LED」とは、「複数個のLED」である点で共通する。
(エ)後者の「LED」が「基板」に「取り付けられている」ことと、前者の「表面実装型LED」が「配線基板」に設けられた「複数組のパッド」に「はんだ付け」により「固定」されていることは、「LEDが配線基板に固定されていること」の点で共通する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、後者の「8個のLED」が「基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている」ことと、前者の「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されて」いることとは、「複数個のLED」が「湾曲した配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された」点で共通する。
(カ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した配線基板と、
湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された複数個のLEDと、を備えた光射出装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲2相違点1-1〕
配線基板に関し、本件発明1は、「可撓性を有する」ものであるのに対して、甲2発明1は、可撓性の有無が不明な点。
〔甲2相違点1-2〕
LEDに関し、本件発明1は、「表面実装型」であるのに対して、甲2発明1は、表面実装型か否か不明な点。
〔甲2相違点1-3〕
複数組のパッドに関し、本件発明1は、「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた」ものであって、LEDが「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定され」るものであり、「前記複数組のパッド」は、それぞれLEDの「裏面に位置してはんだ付け」によりLEDに「固定されて」いるのに対して、甲2発明1は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってLEDとの固定関係も不明な点。
〔甲2相違点1-4〕
本件発明1は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されている」のに対して、甲2発明1は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
〔甲2相違点1-1〕~〔甲2相違点1-4〕は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明1ではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5は、甲2発明1ではない。
(4)本件発明7について
ア 対比
(ア)本件発明7と甲2発明7を対比すると、上記(2)で検討した相当関係に加えて、後者の「リング状の照明器具の製造方法」は前者の「光射出装置の製造方法」に相当する。
(イ)後者の「8個のLEDを、基板に取り付けるリング状の照明器具の製造方法」と、前者の「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されている光射出装置の製造方法」とは、「複数個のLEDが基板に固定されている光射出装置の製造方法」の点で共通する。
(ウ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した配線基板と、湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された複数個のLEDと、を備える光射出装置の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲2相違点7-1〕
配線基板に関し、本件発明7は、「可撓性を有する」ものであるのに対して、甲2発明7は、可撓性の有無が不明な点。
〔甲2相違点7-2〕
LEDに関し、本件発明7は、「表面実装型」であるのに対して、甲2発明7は、表面実装型か否か不明な点。
〔甲2相違点7-3〕
複数組のパッドに関し、本件発明7は、「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた」ものであって、LEDが「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定され」るものであり、「前記複数組のパッド」は、それぞれLEDの「裏面に位置してはんだ付け」によりLEDに「固定されている」のに対して、甲2発明7は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってLEDとの固定関係も不明な点。
〔甲2相違点7-4〕
本件発明7は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成する」のに対して、甲2発明7は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
〔甲2相違点7-1〕~〔甲2相違点7-4〕は実質的な相違点であるから、本件発明7は、甲2発明7ではない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~5、7は甲2から把握される発明ではないから、甲2に基づき公然実施発明が認定できるか否かについて検討するまでもなく、本件発明1~5、7は、特許法第29条第1項第2号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
3 理由1-2(甲3を主引例とする特許法第29条第1項第2号)について
甲3の書面には、「品名」欄に「SQR-TP-34-OR」と記載されているものの、甲3は、その入手経路等が不明であって、甲1から2008年に公然実施されていたと認められる型式名「SQR-TP-34-OR」の照明器具の図面であると認めるに足る証拠はない。しかしながら、この点はひとまず措くとして、甲3から把握される発明により、本件発明の新規性が否定されるか否かについて検討する。
(1)甲3発明
ア 甲3発明1
(ア)甲3に記載された図から以下の事項が看取される。
a 切頭円錐形状の基板がある。
b 18個のLEDが、基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている。
c リング状の照明器具である。
[図:0001415324000002.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、甲3から把握される発明(以下「甲3発明1」という。)は以下のとおりである。
「切頭円錐形状の基板と、
基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている18個のLEDと、
を備えるリング状の照明器具。」
(ウ)申立人の主張について
甲3に関する申立人の主張(申立書第12~13ページ)は、以下のとおり認められない。
a 「可撓性を有する」配線基板であることは、甲3から看取できない。
b 「複数組のパッド」が存在することは、甲3から看取できない。
c 「表面実装型」LEDであることは、甲3から看取できない。
d 「複数組のパッド」が「表面実装型LED」の「裏面に位置してはんだ付けにより」固定されていることは、甲3から看取できない。
e 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「湾曲した配線基板において複数組のパッドが列をなしている部分の周長さ」である「L」は、甲3から看取できない。
f 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「周長さLの中で複数組のパッドの周方向長さの総和」である「s」は、甲3から看取できない。
g 上記bのとおり「複数組のパッド」の存在が看取できないから、「湾曲した配線基板において複数組のパッドが列をなしている部分の曲率」である「x」は、甲3から看取できない。
h 上記e~gのとおり、「L」、「s」、「x」が看取できないから、「y=s/L」として、「0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されていること」は、甲3から看取できない。
i 上記a~hについて、申立人は、甲3から把握できるとする根拠を何ら示していない。
イ 甲3発明7
(ア)甲3発明1の「リング状の照明器具」に関し、甲3から、以下の限度で「リング状の照明器具」の製造方法が看取できる。
・18個のLEDを、基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付ける製造方法。
(イ)上記(ア)によれば、甲3から把握される発明(以下「甲3発明7」という。)は以下のとおりである。
「切頭円錐形状の基板と、
基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている18個のLEDと、を備えるリング状の照明器具と、を備え、
18個のLEDを、基板に取り付けるリング状の照明器具の製造方法。」
(ウ)申立人の主張について
甲3に関する申立人の主張(申立書第13ページ)は、上記ア(ウ)と同様に認められない。
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲3発明1を対比すると、後者の「基板」と「リング状の照明器具」は、前者の「配線基板」と「光射出装置」に相当する。
(イ)後者の「基板」が「切頭円錐形状」であることは、前者の「配線基板」が「所定形状に湾曲した」ものであることに相当する。
(ウ)後者の「18個のLED」と、前者の「複数個の表面実装型LED」とは、「複数個のLED」である点で共通する。
(エ)後者の「LED」が「基板」に「取り付けられている」ことと、前者の「表面実装型LED」が「配線基板」に設けられた「複数組のパッド」に「はんだ付け」により「固定」されていることは、「LEDが配線基板に固定されていること」の点で共通する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、後者の「18個のLED」が「基板の周方向に沿って列をなすように並べて取り付けられている」ことと、前者の「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されて」いることとは、「複数個のLED」が「湾曲した配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された」点で共通する。
(カ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した配線基板と、
湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された複数個のLEDと、を備えた光射出装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲3相違点1-1〕
配線基板に関し、本件発明1は、「可撓性を有する」ものであるのに対して、甲3発明1は、可撓性の有無が不明な点。
〔甲3相違点1-2〕
LEDに関し、本件発明1は、「表面実装型」であるのに対して、甲3発明1は、表面実装型か否か不明な点。
〔甲3相違点1-3〕
複数組のパッドに関し、本件発明1は、「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた」ものであって、LEDが「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定され」るものであり、「前記複数組のパッド」は、それぞれLEDの「裏面に位置してはんだ付け」によりLEDに「固定されて」いるのに対して、甲3発明1は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってLEDとの固定関係も不明な点。
〔甲3相違点1-4〕
本件発明1は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されている」のに対して、甲3発明1は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
〔甲3相違点1-1〕~〔甲3相違点1-4〕は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明1ではない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5は、甲3発明1ではない。
(4)本件発明7について
ア 対比
(ア)本件発明7と甲3発明7を対比すると、上記(2)で検討した相当関係に加えて、後者の「リング状の照明器具の製造方法」が前者の「光射出装置の製造方法」に相当する。
(イ)後者の「18個のLEDを、基板に取り付けるリング状の照明器具の製造方法」と、前者の「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されている光射出装置の製造方法」とは、「複数個のLEDが基板に固定されている光射出装置の製造方法」の点で共通する。
(ウ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した配線基板と、湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて固定された複数個のLEDと、を備える光射出装置の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲3相違点7-1〕
配線基板に関し、本件発明7は、「可撓性を有する」ものであるのに対して、甲3発明7は、可撓性の有無が不明な点。
〔甲3相違点7-2〕
LEDに関し、本件発明7は、「表面実装型」であるのに対して、甲3発明7は、表面実装型か否か不明な点。
〔甲3相違点7-3〕
複数組のパッドに関し、本件発明7は、「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた」ものであって、LEDが「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定され」るものであり、「前記複数組のパッド」は、それぞれLEDの「裏面に位置してはんだ付け」によりLEDに「固定されている」のに対して、甲3発明7は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってLEDとの固定関係も不明な点。
〔甲3相違点7-4〕
本件発明7は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成する」のに対して、甲3発明7は、複数組のパッドの有無が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
〔甲3相違点7-1〕~〔甲3相違点7-4〕は実質的な相違点であるから、本件発明7は、甲3発明7ではない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~5、7は甲3から把握される発明ではないから、甲3に基づき公然実施発明が認定できるか否かについて検討するまでもなく、本件発明1~5、7は、特許法第29条第1項第2号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
4 理由2-1(甲2を主引例とする特許法第29条第1項第3号)について
上記2で検討したとおり、本件発明1~5、7は甲2から把握される発明ではないから、甲2が「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当するか否か、又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた」か否かについて検討するまでもなく、本件発明1~5、7は、特特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
5 理由2-2(甲3を主引例とする特許法第29条第1項第3号)について
上記3で検討したとおり、本件発明1~5、7は甲3から把握される発明ではないから、甲3が「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当するか否か、又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた」か否かについて検討するまでもなく、本件発明1~5、7は、特特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
6 理由3-1(甲2を主引例とする特許法第29条第2項)について
甲2から把握される発明が、特許法第29条第2項の「前項各号に掲げる発明」に該当するか否かについては、ひとまず措くとして、本件発明が甲2から把握される発明に基いて容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
(1)本件発明1について
ア 対比
上記2(2)で検討したとおり、本件発明1と甲2発明1は、〔甲2相違点1-1〕~〔甲2相違点1-4〕で相違する。
イ 判断
事案に鑑み、〔甲2相違点1-4〕から検討する。
(ア)〔甲2相違点1-4〕に係る本件発明1の構成を示す証拠がないから、甲2発明1において、〔甲2相違点1-4〕に係る構成のように変更することが容易であるというための根拠がない。
(イ)甲2発明1において、LEDを表面実装型として基板に複数組のパッドを設けた上で、さらに、L、s、y、xの値と関係を〔甲2相違点1-4〕に係る本件発明1の構成のように調整することは、設計事項ということもできない。
(ウ)そして本件発明1は、〔甲2相違点1-4〕に係る構成によって、「可能な限り実装密度を高めながら、湾曲させた配線基板にはんだクラックが生じたり、配線基板が割れたりするといった不良が生じるのを防止できる。」(段落【0015】)という格別の効果を奏するものである。
(エ)したがって、甲2発明1において、〔甲2相違点1-4〕に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(オ)よって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
理由3-3における主張ではあるけれども、申立人は、〔甲2相違点1-4〕に係る本件発明1の構成は、普通の範囲であり、先行技術に対して貢献をもたらすものではない旨主張している(申立書第17~18ページ)ため、念のため検討する。
(ア)まず、「0.35≦y≦-1.04x+0.80」が、その上限と下限の間に中心(0.5)を含む範囲だからといって、直ちに普通の範囲ということはできない。
(イ)下限値「0.35」は、「リング型の光射出装置として従来品以上の輝度を実現するために実装密度の下限を満たすには、0.35≦yを満たすように構成されていればよい。」(段落【0019】)という技術的意義を有する値である。
(ウ)上限値「-1.04x+0.80」は、「当該各組のパッドに対応して前記表面実装型LEDが設けられ、各列においてy≦-1.04x+0.80を満たすように構成されていれば、各列で最適な実装密度を実現して高輝度を実現し、不良を発生させないようにできる。」(段落【0020】)、「y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されているので、表面実装型LEDの実装密度を限界近くまで高めて高輝度を実現しつつ、不良の生じ難い高い信頼性を確保することができる。」(段落【0021】)という技術的意義を有する値であって、「y≦-1.04x+0.80・・・で示される領域内で曲面に対して表面実装型LEDを行えば、所定の信頼性を実現する実装が可能であることを本願発明者らは鋭意検討の結果初めて見出した。」(段落【0043】)とするものである。
(エ)以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、甲2発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7について
ア 対比
上記2(4)で検討したとおり、本件発明7と甲2発明7は、〔甲2相違点7-1〕~〔甲2相違点7-4〕で相違する。
イ 判断
事案に鑑み、〔甲2相違点7-4〕から検討する。
(ア)上記(1)で〔甲2相違点1-4〕について検討したのと同様に、甲2発明7において、〔甲2相違点7-4〕に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)したがって、本件発明7は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2発明7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1~7は、甲2から把握される発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、甲2から把握される発明が、特許法第29条第2項の「前項各号に掲げる発明」に該当するか否かについて検討するまでもなく、本件発明1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
7 理由3-2(甲3を主引例とする特許法第29条第2項)について
甲3から把握される発明が、特許法第29条第2項の「前項各号に掲げる発明」に該当するか否かについては、ひとまず措くとして、本件発明が甲3から把握される発明に基いて容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
(1)本件発明1について
ア 対比
上記3(2)で検討したとおり、本件発明1と甲3発明1は、〔甲3相違点1-1〕~〔甲3相違点1-4〕で相違する。
イ 判断
事案に鑑み、〔甲3相違点1-4〕から検討する。
(ア)〔甲3相違点1-4〕に係る本件発明1の構成を示す証拠がないから、甲3発明1において、〔甲3相違点1-4〕に係る構成のように変更することが容易であるというための根拠がない。
(イ)甲3発明1において、LEDを表面実装型として基板に複数組のパッドを設けた上で、さらに、L、s、y、xの値と関係を〔甲3相違点1-4〕に係る本件発明1の構成のように調整することは、設計事項ということもできない。
(ウ)そして本件発明1は、〔甲3相違点1-4〕に係る構成によって、「可能な限り実装密度を高めながら、湾曲させた配線基板にはんだクラックが生じたり、配線基板が割れたりするといった不良が生じるのを防止できる。」(段落【0015】)という格別の効果を奏するものである。
(エ)したがって、甲3発明1において、〔甲3相違点1-4〕に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(オ)よって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲3発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、甲3発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7について
ア 対比
上記3(4)で検討したとおり、本件発明7と甲3発明7は、〔甲3相違点7-1〕~〔甲3相違点7-4〕で相違する。
イ 判断
事案に鑑み、〔甲3相違点7-4〕から検討する。
(ア)上記(1)イで〔甲3相違点1-4〕について検討したのと同様に、甲3発明7において、〔甲3相違点7-4〕に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)したがって、本件発明7は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲3発明7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1~7は、甲3から把握される発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、甲3から把握される発明が、特許法第29条第2項の「前項各号に掲げる発明」に該当するか否かについて検討するまでもなく、本件発明1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
8 理由3-3(甲4を主引例とする特許法第29条第2項)について
(1)甲4発明
ア 甲4発明1
甲4には、次の発明(以下「甲4発明1」という。)が記載されている(なお、括弧内に主な参照箇所を示す。以下同様。)。
「切頭円錐形状をなすフレキシブル配線基板2と(段落【0017】、【図2】)、
LED配設予定箇所に塗布された半田ペーストと(段落【0022】)、
同心円状に配設された複数の表面実装型のLED1と、を備え(段落【0021】、【0024】)、
切頭円錐形状をなすフレキシブル配線基板2の内側凹面2aの全体にLED1を配設した後で、内側凹面2aに印刷された半田ペーストを溶融した後、冷却することで、LED1がフレキシブル配線基板2に固定されている(段落【0027】、【0028】)、
照明装置100(段落【0017】)。」
[図:0001415324000003.jpg]
イ 甲4発明7
甲4には、次の発明(以下「甲4発明7」という。)が記載されている。
「切頭円錐形状をなすフレキシブル配線基板2と(段落【0017】、【図2】)、
LED配設予定箇所に塗布された半田ペーストと(段落【0022】)、
同心円状に配設された複数の表面実装型のLED1と、を備え(段落【0021】、【0024】)、
切頭円錐形状をなすフレキシブル配線基板2の内側凹面2aの全体にLED1を配設した後で、内側凹面2aに印刷された半田ペーストを溶融した後、冷却することで、LED1がフレキシブル配線基板2に固定されている(段落【0027】、【0028】)、
照明装置100(段落【0017】)の製造方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲4発明1を対比すると、後者の「フレキシブル配線基板2」は前者の「可撓性を有する配線基板」に相当し、以下同様に、「LED1」は「LED」に、「半田ペースト」は「はんだ」に、「照明装置100」は「光射出装置」に、それぞれ相当する。
(イ)後者の「フレキシブル配線基板2」が「切頭円錐形状をなす」ものであることは、前者の「可撓性を有する配線基板」が「所定形状に湾曲した」ものであることに相当する。
(ウ)後者の「複数の表面実装型のLED1」は、前者の「複数個の表面実装型LED」に相当する。
(エ)後者の「LED1」が「表面実装型」であることと、甲4の段落【0028】「LED1が実装されたフレキシブル配線基板2を室温で放置して冷却すると、電気的接続が確保された状態でLED1がフレキシブル配線基板2に堅固に固定される。」ことからすると、「半田ペースト」が塗布される「LED配設予定箇所」には、電気的接続のために「それぞれのLED1に対応した複数組の電極」が「配線基板」に設けられていると理解できる。そして、後者の「それぞれのLED1に対応した複数組の電極」は、前者の「複数組のパッド」に相当する。
(オ)後者の「LED1」が「同心円状に配設され」ることを踏まえると、上記(エ)の「それぞれのLED1に対応した複数組の電極」もまた「同心円状に配設され」ることが理解できる。そうすると、後者の「それぞれのLED1に対応した複数組の電極が同心円状に配設され」ることは、前者の「複数組のパッド」が「湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられ」ることに相当する。
(カ)上記(ア)~(オ)を踏まえると、後者の「切頭円錐形状をなすフレキシブル配線基板2の内側凹面2aの全体にLED1を配設した後で、内側凹面2aに印刷された半田ペーストを溶融した後、冷却することで、LED1がフレキシブル配線基板2に固定され」ることは、前者の「前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定され」ることに相当する。
(キ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した可撓性を有する配線基板と、
湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、
前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、
前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されている、
光射出装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲4相違点1〕
本件発明1は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成されている」のに対して、甲4発明1は、複数組の電極が存在することは理解できるものの、電極の配置構成が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
(ア)〔甲4相違点1〕に係る本件発明1の構成を示す証拠がないから、甲4発明1において、〔甲4相違点1〕に係る構成のように変更することが容易であるというための根拠がない。
(イ)甲4発明1において、L、s、y、xの値と関係を〔甲4相違点1〕に係る本件発明1の構成のように電極の形状・大きさや配線基板の曲率等を調整することは、設計事項ということもできない。
(ウ)そして本件発明1は、〔甲4相違点1〕に係る構成によって、「可能な限り実装密度を高めながら、湾曲させた配線基板にはんだクラックが生じたり、配線基板が割れたりするといった不良が生じるのを防止できる。」(段落【0015】)という格別の効果を奏するものである。
(エ)よって、甲4発明1において、〔甲4相違点1〕に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(オ)申立人は、〔甲4相違点1〕に係る本件発明1の構成は、普通の範囲であり、先行技術に対して貢献をもたらすものではない旨主張している(申立書第17~18ページ)が、上記6(1)ウで検討したとおり、その主張を採用することはできない。
(カ)したがって、本件発明1は、甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明7について
ア 対比
(ア)本件発明7と甲4発明7を対比すると、上記(2)で検討した相当関係に加えて、後者の「照明装置100の製造方法」は前者の「光射出装置の製造方法」に相当する。
(イ)そうすると両者は、
「所定形状に湾曲した可撓性を有する配線基板と、湾曲した前記配線基板において少なくとも一部が湾曲している方向である周方向に沿って列をなすように並べて設けられた複数組のパッドと、前記複数組のパッドに対してそれぞれ固定された複数個の表面実装型LEDと、を備え、
前記複数組のパッドは、それぞれ前記表面実装型LEDの裏面に位置してはんだ付けにより該表面実装型LEDに固定されている光射出装置の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔甲4相違点7〕
本件発明7は、「湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の周長さをL、周長さLの中で前記複数組のパッドの周方向長さの総和sが占める割合をy=s/L、湾曲した前記配線基板において前記複数組のパッドが列をなしている部分の曲率をxとした場合に、0.35≦y≦-1.04x+0.80を満たすように構成する」のに対して、甲4発明7は、複数組の電極が存在することは理解できるものの、電極の配置構成が不明であり、よってL、s、y、xの値や関係も不明な点。
イ 判断
(ア)上記(2)イで〔甲4相違点1〕について検討したのと同様に、甲4発明7において、〔甲4相違点7〕に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)したがって、本件発明7は、甲4発明7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1~7は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1~7は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人が申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700419