2021-700069
難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
- 審判番号
- 2021-700069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-502489外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6726378
- 請求日
- 2021年01月21日
- 審決日
- 2022年01月31日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポリプラスチックス株式会社
- 【権利者代理人】園田・小林特許業務法人
- 【異議申立人】平居 博美
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第113条第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8、特許法第113条第4号、特許法第113条
- データ出所
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結論
理由
目次 ▾ 25項目
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲
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1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6726378号に係る出願(特願2020-502489号、以下「本願」ということがある。)は、令和元年9月30日(優先権主張:平成30年9月28日、特願2018-183368号)の国際出願日に出願人ポリプラスチックス株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされたものとみなされる特許出願であり、令和2年6月30日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、令和2年7月22日に特許掲載公報が発行されたものである。
2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和3年1月21日に特許異議申立人平居博美(以下「申立人」という。)により、「特許第6726378号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」という。)
3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6726378号の特許請求の範囲の全請求項に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外となる請求項は存しない。
4.以降の手続の経緯
令和3年 6月10日付け 取消理由通知
同年 8月 3日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 8月19日付け 通知書(申立人あて)
同年 9月22日 意見書(申立人)
第2 取消理由の概要
1.申立人が主張する取消理由
申立人が主張する取消理由はそれぞれ以下のとおりである。
(1)申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下のア.ないしウ.が存するとしている。
ア.本件の請求項1ないし6に係る発明は、いずれも、甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由1」という。)
イ.本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載では、記載不備であり、本件の請求項1及び同項を引用する請求項3ないし6に係る発明を当業者が実施することができるように記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の各請求項に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(以下「取消理由2」という。)
ウ.本件特許の請求項1及び3ないし6は、記載不備であり、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1及び3ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。)
(2)また、申立人は、上記令和3年9月22日付けの意見書において、下記甲第5号証を提示し、概略、以下の取消理由が存するとしている。
エ.令和3年8月3日付け訂正請求に係る訂正により追加された本件請求項7及び8に係る特許は、当該訂正が新規事項の追加であるから、特許法第113条第1号に該当し、取り消すべきである。(以下「取消理由4」という。)
オ.令和3年8月3日付け訂正請求に係る訂正により追加された本件請求項7及び8に係る特許は、各請求項の記載が不備であり、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由5」という。)
カ.令和3年8月3日付け訂正請求に係る訂正により追加された本件請求項7及び8に係る発明は、いずれも、当審が先の取消理由通知で提示した引用例及び申立人が新たに提示する甲第5号証又は甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項7及び8に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由6」という。)
●申立人提示の甲号証
・申立書に添付されたもの
・令和3年9月22日付け意見書に添付されたもの
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第5号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲5」と略して表記することがある。)
2.当審が通知した取消理由
当審が通知した取消理由は、概略以下のとおりである。
本件特許の請求項2、5及び6に係る発明は、いずれも、当審が職権により新たに引用する下記引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項2、5及び6に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由A」という。)
第3 令和3年8月3日付け訂正請求について
1.訂正請求の内容
令和3年8月3日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1ないし6(以下項番に従い「旧請求項1」などという。)を一群の請求項ごとに訂正することにより、訂正後の請求項1ないし8(以下項番に従い「新請求項1」などという。)にするものであり、以下の訂正事項1ないし4を含むものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1または2に記載の難燃性ポリプチレンテレフタレート樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤。」とあるのを、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、
「末端カルボキシル基量が50meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下であることを特徴とし、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂1 00質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤。」
と記載し、新たに請求項7とする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法。」とあるのを、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「末端カルボキシル基量が50meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下であることを特徴とし、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法。」と記載し、新たに請求項8とする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3~6について、請求項2を引用しないものに訂正する。
2.各訂正事項に係る訂正の適否について
(1)各訂正の目的について
ア.訂正事項1に係る訂正
訂正事項1に係る訂正では、旧請求項2の内容を全て削除して新請求項2としているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.訂正事項2及び3に係る訂正
訂正事項2及び3に係る訂正では、旧請求項3又は4における旧請求項2を引用する各部分につき、訂正事項1に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、当該各部分に対して旧請求項2に記載された事項を書き下して独立形式に改めた上で新請求項7又は8にしているものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
ウ.訂正事項4に係る訂正
訂正事項4に係る訂正では、旧請求項3ないし6における旧請求項2を引用する点につき、訂正事項1に係る訂正により旧請求項2の内容が全て削除されたことに伴い、引用関係が不明瞭になったものを単に正しているものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
エ.各訂正の目的のまとめ
以上のとおり、本件訂正における各訂正事項に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に規定の目的要件を満たしているものと認められる。
(2)新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
本件訂正に係る各訂正事項に係る訂正は、上記(1)でそれぞれ検討したとおり、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、各訂正によって本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。
(3)独立特許要件
なお、本件特許異議の申立ては、本件の旧請求項1ないし6、すなわち全請求項に係る発明についての特許に対してされたものであるところ、本件訂正では、旧請求項1ないし6に基づき、分割などが行われて新請求項1ないし8とされたものであるから、本件特許異議の申立ては、訂正後の全ての請求項に対してされたものとみなすことができ、申立てが行われていない請求項に係る特許は存するものでなく、独立特許要件につき検討すべき請求項は存するものではない。
3.本件訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件も満たすものであるから、本件訂正を認める。
第4 本件特許の特許請求の範囲に記載された事項
上記本件訂正により適法に訂正された本件特許の特許請求の範囲には、以下のとおりの請求項1ないし8が記載されている。
「【請求項1】末端カルボキシル基量が50meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、続きを表示(全32行)三酸化アンチモンとを含み、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下であることを特徴とし、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部未満のハイドロタルサイトを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。【請求項2】(削除)【請求項3】請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤。【請求項4】請求項1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法。【請求項5】請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。【請求項6】請求項1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品。【請求項7】末端カルボキシル基量が50meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下であることを特徴とし、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤。【請求項8】末端カルボキシル基量が50meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下であることを特徴とし、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法。」
(以下、上記請求項1ないし8に記載された事項で特定される発明を項番に従い、「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)
第5 当審の判断
当審は、
申立人が主張する上記取消理由及び当審が通知した上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものであり、
本件の請求項2に対する特許異議の申立ては、訂正により請求項2の内容が全て削除されて、異議申立ての対象がなくなったことにより、不適法となったものであって、治癒できないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきもの、
と判断する。
以下、取消理由1ないし6及び取消理由Aにつきそれぞれ検討・詳述する。
I.取消理由A、取消理由1及び6について
1.各甲号証及び引用例に記載された事項並びに甲1及び引用例に記載された発明
取消理由A、取消理由1及び取消理由6は、いずれも特許法第29条に係るものであるから、上記各甲号証及び引用例に係る記載事項を確認し、甲1及び引用例に記載された発明を認定する。
(なお、各記載事項の摘示における下線は、当審が付したものである。)
(1)引用例
事案に鑑み、まず、引用例の記載内容を確認し、引用例に記載された発明を認定する。
ア.引用例に記載された事項
上記引用例には、以下の事項が記載されている。
(a1)
「【請求項1】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)ABS樹脂、(C)臭素化エポキシ化合物、(D)アンチモン化合物および(E)ガラス繊維の合計を100重量%として、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂30~50重量%、(B)ABS樹脂10~30重量%、(C)臭素化エポキシ化合物10~20重量%、(D)アンチモン化合物1~10重量%、(E)ガラス繊維10~30重量%を配合してなる組成物であって、上記(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100重量部に対し(F)体積平均粒子径1~10μmであるタルク5~20重量部および(G)体積平均粒子径10~60μmであるマイカ5~20重量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物。【請求項2】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。」
(a2)
「【0001】本発明は熱可塑性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは優れた難燃性、電気特性、低反り性を示す熱可塑性樹脂組成物に関するものである。・・(中略)・・【発明が解決しようとする課題】【0006】しかしながら、特許文献1に記載された熱可塑性樹脂組成物は、高度な耐トラッキング性を有しながらも、電気・電子用途のケース部品等に必要な成形品の低反り性の点で不十分であった。また、特許文献2に記載された難燃性樹脂組成物は、特許文献1と同様に電気・電子用途のケース部品等に必要な成形品の低反り性が不十分であった。【0007】本発明者らはかかる従来技術の有する問題点を解決すべく誠意検討した結果、本発明を完成したものである。すなわち本発明は高度な難燃性と耐トラッキング性、および、低反り性が均衡して優れる耐電圧部品に適したポリエステル樹脂組成物を得ることを課題としたものである。」
(a3)
「【0041】本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃性、耐トラッキング性、低そり性に優れた樹脂組成物であり、かかる特性を活かして、電気、電子部品としてケース類、カバー類、定着機部品、電装部品などに使用することができる。【実施例】【0042】続きを表示(全38行)以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例及び比較例の評価方法を以下に示す。【0043】(I)難燃性棒状の試験片(125.0×13.0×0.75mm厚)を使用した。成形後、23℃、50%RH環境下で24h放置後、UL94に準拠して測定した。試験は10本を行い、UL94に従って判定を行った。・・(中略)・・【0047】実施例1~10以下の材料を用いて、表1に示す組み合わせにより材料を投入し、をスクリュー径57mmΦの二軸押出機を用いて、バレル設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmで押出し、樹脂組成物ペレットを製造した。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度0.85東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1100S(B)ABS樹脂東レ(株)社製ABS樹脂“トヨラック”MPVX(C)臭素化エポキシ化合物大日本インキ化学(株)社製“プラサーム”ECX-30(D)アンチモン化合物鈴裕化学(株)社製“ファイヤーカットAT-3”(E)ガラス繊維日東紡績(株)社製“3J948”(平均繊維長3.0mm、平均繊維径10μm)(F-1)タルク富士タルク工業(株)社製“LMS-300”(体積平均粒子径:4.5μm)(F-2)タルク富士タルク工業(株)社製“NK-64”(体積平均粒子径:19.0μm)(G-1)マイカ山口雲母(株)社製“A-21”(体積平均粒子径:22.5μm)(G-2)マイカ山口雲母(株)社製“A-11”(体積平均粒子径:5.2μm)(G-3)マイカ山口雲母(株)社製“A-61”(体積平均粒子径:75.0μm)。【0048】得られたペレットから各種物性測定用の試験片をシリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、上記の試験を行った。結果を表1に示す。得られた組成物は何れも高い難燃性、耐トラッキング性、低反り性、引張強さを有する材料であった。【0049】【表1】[図:0001384053000001.jpg]」
イ.引用例に記載された発明
引用例には、(A)ポリブチレンテレフタレートである熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)ABS樹脂、(C)臭素化エポキシ化合物、(D)アンチモン化合物および(E)ガラス繊維の合計を100重量%として、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂30~50重量%、(B)ABS樹脂10~30重量%、(C)臭素化エポキシ化合物10~20重量%、(D)アンチモン化合物1~10重量%、(E)ガラス繊維10~30重量%を配合してなる組成物であって、上記(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100重量部に対し(F)体積平均粒子径1~10μmであるタルク5~20重量部および(G)体積平均粒子径10~60μmであるマイカ5~20重量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物が記載され(摘示(a1))、当該樹脂組成物に係る実施例2として、(A)固有粘度0.85のポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部、(B)ABS樹脂10重量部、(C)「プラサームECX-30」なる製品名の臭素化エポキシ化合物17重量部、(D)「ファイヤーカットAT-3」なる製品名のアンチモン化合物6重量部、(E)ガラス繊維17重量部、(F)タルク8重量部及び(G)マイカ8重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物、その製造方法並びに当該組成物から得られる試験片なる成形物が記載されている(摘示(a3))。
してみると、引用例には、上記記載事項(特に摘示(a3)「実施例2」)からみて、
「(A)固有粘度0.85のポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部、(B)ABS樹脂10重量部、(C)「プラサームECX-30」なる製品名の臭素化エポキシ化合物17重量部、(D)「ファイヤーカットAT-3」なる製品名のアンチモン化合物6重量部、(E)ガラス繊維17重量部、(F)タルク8重量部及び(G)マイカ8重量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「引用発明」という。)、
「引用発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。」
に係る発明並びに
「引用発明の熱可塑性樹脂組成物から得られた成形物。」
に係る発明が記載されているといえる。
(2)甲1
甲1に記載された事項を確認し、それに基づき甲1に記載された発明を認定する。
ア.甲1に記載された事項
上記甲1には、以下の事項が記載されている。
(b1)
「【請求項1】ベース樹脂(A)と、ハロゲン系難燃剤(B)と、リン酸塩(C)とで構成され、かつ電気特性の向上した難燃性樹脂組成物であって、前記リン酸塩(C)が、・・(中略)・・から選択された少なくとも一種で構成されている難燃性樹脂組成物。・・(中略)・・【請求項4】続きを表示(全23行)ベース樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリプロピレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステルから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。・・(中略)・・【請求項6】ハロゲン系難燃剤(B)が、臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、臭素化スチレン系樹脂、臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂及びアルキレンビス臭素化フタルイミドから選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。・・(中略)・・【請求項11】さらに、芳香族樹脂、アンチモン含有化合物、フッ素含有樹脂、ケイ素含有化合物及びリン含有化合物から選択された少なくとも一種の難燃助剤(D)を含む請求項1記載の樹脂組成物。【請求項12】難燃助剤(D)が、フェノール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂及び芳香族ポリエステルアミド系樹脂、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、(ポリ)オルガノシロキサン、層状ケイ酸塩、フッ素含有単量体の単独又は共重合体、(縮合)リン酸エステル、(縮合)リン酸エステルアミド、(架橋)アリールオキシホスファゼン、(亜)リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸金属塩、有機(亜)ホスホン酸アミノトリアジン塩、有機(亜)ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸金属塩、及び有機ホスフィン酸アミノトリアジン塩から選択された少なくとも一種である請求項11記載の樹脂組成物。【請求項13】難燃助剤(D)の割合が、ハロゲン系難燃剤(B)100重量部に対して、1~150重量部である請求項11記載の樹脂組成物。・・(中略)・・【請求項18】さらに、メラミンシアヌレート、タルク、カオリン、(含水)ホウ酸亜鉛、(含水)ホウ酸カルシウム、(含水)スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、およびリン酸水素カルシウムから選択された少なくとも一種の電気特性向上助剤(F)を含む請求項1記載の樹脂組成物。・・(中略)・・【請求項22】請求項1記載の樹脂組成物で形成された成形体。【請求項23】電気・電子部品、オフィスオートメーション機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品である請求項22記載の成形体。」
(b2)
「【技術分野】【0001】本発明は、難燃性に優れるとともに、電気特性が改良された樹脂組成物及びこの組成物で形成された成形体に関する。・・(中略)・・【発明が解決しようとする課題】【0005】従って、本発明の目的は、難燃性及び成形性に優れるとともに電気特性を向上できる難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。【0006】本発明の他の目的は、耐トラッキング性などの電気特性がさらに向上された難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。」
(b3)
「【0018】(ベース樹脂(A))ベース樹脂(A)としては、特に制限されず、種々の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂[例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ケトン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホンなど)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトンなど)、ポリエーテルイミド、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド、ポリオキシベンジレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、熱可塑性エラストマーなど]、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、アミノ樹脂、熱硬化性ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂など)などが挙げられる。以下、代表的なベース樹脂について詳述する。【0019】続きを表示(全12行)(ポリエステル系樹脂)ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル系樹脂には、通常、飽和ポリエステル系樹脂、特に芳香族飽和ポリエステル系樹脂が含まれる。・・(中略)・・【0026】好ましいポリエステル系樹脂には、シクロアルカンジアルキレンアリレート単位(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位など)及びアルキレンアリレート単位(アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位、例えば、C2-4アルキレンテレフタレート単位、C2-4アルキレンナフタレート単位など)から選択された少なくとも一種の単位を有する[例えば、主成分(例えば、50~100重量%、好ましくは75~100重量%程度)として有する]ホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリ1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレート)などのホモポリエステル;シクロアルカンジアルキレンテレフタレート、アルキレンテレフタレート及びアルキレンナフタレートから選択された少なくとも一種の単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含有するコポリエステル]が含まれる。特に好ましいポリエステル系樹脂には、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル:例えば、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートなど)]、プロピレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリプロピレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリプロピレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリプロピレンテレフタレートコポリエステル)]、及びエチレンテレフタレート単位を主成分として含有するポリエチレンテレフタレート系樹脂[例えば、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位を主成分とするコポリエステル(ポリエチレンテレフタレートコポリエステル:例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート、4-ヒドロキシ安息香酸変性ポリエチレンテレフタレートなど)]が含まれる。ポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。・・(中略)・・【0028】ポリエステル系樹脂は、慣用の方法、例えば、エステル交換、直接エステル化法などにより製造できる。ポリエステル系樹脂の固有粘度は、例えば、0.4~2.0、好ましくは0.5~1.8、さらに好ましくは0.6~1.5程度であってもよい。」
(b4)
「【0047】(ハロゲン系難燃剤(B))ハロゲン系難燃剤(B)としては、有機ハロゲン化物が使用できる。有機ハロゲン化物は、通常、塩素、臭素及びヨウ素原子から選択された少なくとも一種を含有している。・・(中略)・・【0049】ハロゲン系難燃剤としては、塩素原子及び/又は臭素原子を含有する化合物が好ましく、特に臭素原子を含有する有機臭素化物[臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有ポリカーボネート系樹脂(例えば、臭素化ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などの臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂)、臭素含有エポキシ化合物[例えば、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂(臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などの臭素化エポキシ樹脂;臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂(臭素化ビスフェノールA型フェノキシ樹脂など)などの臭素化フェノキシ樹脂など]、臭素化ポリアリールエーテル化合物(オクタブロモジフェニルエーテルなどのビス(臭素化アリール)エーテル化合物など)、臭素化芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物、臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物など]などの臭素原子含有難燃剤]が好ましい。これらの臭素原子含有難燃剤のうち、特に、臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、臭素化スチレン系樹脂[例えば、臭素化ポリスチレンなどのスチレン系樹脂の臭素化物(又はスチレン系樹脂を臭素化処理した臭素化物)、臭素化スチレン系単量体の単独又は共重合体(例えば、ポリ臭素化スチレンなど)など]、臭素化ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール型フェノキシ樹脂およびアルキレンビス臭素化フタルイミド(例えば、エチレンビス臭素化フタルイミドなどのC2-6アルキレンビス臭素化フタルイミドなど)から選択された少なくとも一種などが好ましい。【0050】ハロゲン系難燃剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、3~30重量部、好ましくは5~25重量部、さらに好ましくは7~20重量部程度である。」
(b5)
「【0086】(難燃助剤(D))本発明の樹脂組成物は、さらに難燃助剤(D)を含んでいてもよい。難燃助剤(D)としては、芳香族樹脂(フェノール系樹脂、アニリン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、液晶性であってもよい芳香族ポリエステル系樹脂)、芳香族ポリエステルアミド系樹脂(例えば、液晶性であってもよい芳香族ポリエステルアミド系樹脂)など)、アンチモン含有化合物、モリブデン含有化合物(酸化モリブデンなど)、タングステン含有化合物(酸化タングステンなど)、ビスマス含有化合物(酸化ビスマスなど)、スズ含有化合物(酸化スズなど)、鉄含有化合物(酸化鉄など)、銅含有化合物(酸化銅など)、前記リン酸塩(C)以外のリン含有化合物(前記リン酸塩(C)の範疇に属さないリン含有化合物)、ケイ素含有化合物[(ポリ)オルガノシロキサン、ポリシルセスキオキサン、層状ケイ酸塩など]、イオウ含有化合物(有機スルホン酸化合物、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩、スルファミン酸化合物又はその塩など)、フッ素含有樹脂などが例示できる。これらの難燃助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。・・(中略)・・【0089】アンチモン含有化合物としては、例えば、酸化アンチモン[三酸化アンチモン(Sb2O3など)、五酸化アンチモン(xNa2O・Sb2O5・yH2O(x=0~1、y=0~4)など)など]、アンチモン酸塩[アンチモン酸金属塩(例えば、アンチモン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、アンチモン酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩など)、アンチモン酸アンモニウムなど]などが挙げられる。これらのアンチモン含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記アンチモン含有化合物のうち、酸化アンチモン及びアンチモン酸のアルカリ金属塩などが好ましい。【0090】また、アンチモン含有化合物は、必要により、エポキシ化合物、シラン化合物、イソシアネート化合物及び/又はチタネート化合物などの表面処理剤で表面処理して用いてもよい。」
(b6)
「【0116】(他の添加剤)本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに他の添加剤、例えば、電気特性向上助剤(電気特性を向上させるための添加剤)、他の難燃剤(窒素系、リン系難燃剤など)、充填剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤、耐熱安定剤、加工安定剤、リン系安定剤、反応性安定剤など)、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶化核剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料など)、潤滑剤、ドリッピング防止剤などを含有してもよい。これらの他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記樹脂組成物は、これらの添加剤のうち、特に、電気特性向上助剤、充填剤、耐熱安定剤、加工安定剤などを含有してもよい。【0117】続きを表示(全22行)(電気特性向上助剤(F))電気特性向上助剤(F)としては、例えば、非リン系の窒素含有化合物[アミノトリアジン化合物(メラミン;グアナミン;メラム、メレムなどのメラミン縮合物など)、アミノトリアジン化合物の塩(前記アミノトリアジン化合物の有機酸又は無機酸塩、例えば、メラミンシアヌレートなどのシアヌール酸塩など)など]、無機酸金属化合物{例えば、無機酸金属塩[例えば、(含水)ケイ酸金属塩(タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラストナイトなど)、(含水)ホウ酸金属塩(例えば、(含水)ホウ酸亜鉛、(含水)ホウ酸カルシウム、(含水)ホウ酸アルミニウムなど)、(含水)スズ酸金属塩(例えば、(含水)スズ酸亜鉛など)、硫酸金属塩(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなど)など]など}、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ水和物(ベーマイト)など)、金属硫化物(硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、アルカリ土類金属塩(例えば、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩)など)などの無機金属化合物が挙げられる。これらの電気特性向上助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。【0118】電気特性向上助剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0~30重量部、好ましくは1~20重量部、さらに好ましくは1.5~15重量部(例えば、2~15重量部)程度であってもよい。また、電気特性向上助剤の割合は、ハロゲン系難燃剤100重量部に対して、例えば、0~300重量部、好ましくは0.5~200重量部、さらに好ましくは1~150重量部程度であってもよい。【0119】(充填剤(G))充填剤(G)としては、慣用の繊維状、板状、粉粒状などの充填剤が挙げられる。繊維状充填剤としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維(ウイスカー)等)、有機繊維(アミド繊維など)等が例示できる。板状充填剤としては、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。粉粒状充填剤としては、金属酸化物(酸化亜鉛、アルミナなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなど)、炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、ガラス類(ミルドファイバー、ガラスビーズ、ガラスバルーンなど)、ケイ酸塩(タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラストナイトなど)、硫化物(二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、炭化物(フッ化黒鉛、炭化ケイ素など)、活性炭、窒化ホウ素などが例示できる。充填剤は、単独で又は2種以上組みあわせて使用できる。【0120】充填剤の使用量は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0~100重量部、好ましくは1~80重量部(例えば、5~75重量部)、さらに好ましくは10~70重量部(例えば、20~65重量部)程度であってもよい。【0121】(耐熱安定剤(H))耐熱安定剤(H)としては、・・アルカリ又はアルカリ土類金属化合物[例えば、リン酸水素アルカリ又はアルカリ土類金属塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム(第二リン酸カルシウム,CaHPO4)、リン酸二水素バリウム、リン酸一水素バリウムなどのリン酸水素(又は一水素又は二水素)アルカリ土類金属塩など)];無機金属又は鉱物系安定剤(ハイドロタルサイト、ゼオライトなど)などが挙げられる。【0122】これらの耐熱安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。【0123】特に少なくともヒンダードフェノール系化合物を耐熱安定剤として使用してもよい。例えば、耐熱安定剤は、ヒンダードフェノール系化合物単独で構成してもよく、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤(例えば、リン系化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物、及びハイドロタルサイトから選択された少なくとも一種)とで構成してもよい。【0124】耐熱安定剤の割合は、ベース樹脂100重量部に対して、例えば、0.001~10重量部、好ましくは0.01~5重量部、さらに好ましくは(特に0.05~2重量部)程度の範囲から選択できる。また、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤とを組みあわせる場合、ヒンダードフェノール系化合物と他の耐熱安定剤との割合は、前者/後者(重量比)=99/1~1/99、好ましくは98/2~10/90、さらに好ましくは95/5~20/80程度であってもよい。」
(b7)
「【産業上の利用可能性】【0134】本発明の難燃性樹脂組成物(及び成形体)は、難燃性及び電気特性に優れており、種々の用途、例えば、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、自動車部品、機械機構部品などに好適に用いることができる。【実施例】続きを表示(全88行)【0135】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の試験により、樹脂組成物の難燃性及び電気特性(比較トラッキング指数)を評価した。【0136】[燃焼性試験]UL94に準拠して、試験片の厚み1.6mm又は0.8mmで燃焼性を評価した。【0137】[比較トラッキング指数(CTI)]IEC112(UL746A)に準拠して、塩化アンモニウム0.1%水溶液Aを用いて比較トラッキング指数(CTI)[単位:V]を評価した(試験片の厚み3mm)。【0138】[成形性(モールドデポジット)]80t射出成形機[東芝機械(株)製]を用いて70mm×50mm×3mmの成形片を30ショット成形した後に目視観察により金型表面上のモールドデポジットを下記の基準で評価した。【0139】○:金型表面にモールドデポジットが全く観察されない△:金型表面にモールドデポジットが若干観察される×:金型表面に著しいモールドデポジットが観察される。【0140】実施例及び比較例で使用したベース樹脂、ハロゲン系難燃剤、リン酸塩、難燃助剤、電気特性向上樹脂、電気特性向上助剤、充填剤、耐熱安定剤、加工安定剤は以下の通りである。【0141】1.ベース樹脂(A)(A-1):ポリブチレンテレフタレート[固有粘度=0.85](A-2):ポリエチレンテレフタレート[固有粘度=0.75](A-3):ポリプロピレンテレフタレート[固有粘度=0.85](A-4):ポリアミド66(A-5):12.5モル%イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート[固有粘度=0.80]。【0142】2.ハロゲン系難燃剤(B)(B-1):ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)[FR1025、ブロムケムファーイースト社製](B-2):臭素化ポリスチレン[パイロチェック68PB、フェロケミカルズ社製](B-3):臭素化ポリスチレン[SYTEX HP-7010P、アルベマール社製](B-4):エチレンビステトラブロモフタルイミド[SYTEX BT-93、アルベマール社製](B-5):臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂[SRT5000、阪本薬品工業(株)製](B-6):臭素化ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂[ファイヤガード FG-7500、帝人化成(株)製]。・・(中略)・・【0144】4.難燃助剤(D)[アンチモン含有化合物(D1)](D1-1):三酸化アンチモン(D1-2):アンチモン酸ナトリウム[フッ素含有樹脂(D2)](D2-1):ポリテトラフルオロエチレン[ケイ素含有化合物(D3)](D3-1):膨潤性合成雲母[ME100、コープケミカル(株)製][リン含有化合物(D4)](D4-1):(2-カルボキシエチル)メチルホスフィン酸のアルミニウム塩(D4-2):(2-カルボキシエチル)メチルホスフィン酸のカルシウム塩(D4-3):レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシリルホスフェート)(D4-4):環状フェノキシホスファゼン(3~4量体混合物)(D4-5):1,4-ピペラジンジイルテトラフェニルホスフェート(D4-6):メチルホスホン酸ビス[2-メチル-2-オキソ-5-エチル-1,3-ジオキサ-2-ホスファ(V)シクロヘキサン-5-イルメチル](D4-7):ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩[芳香族樹脂(D5)](D5-1):ポリカーボネート樹脂[パンライトL1225、帝人化成(株)製]。【0145】5.電気特性向上樹脂(E)(オレフィン系樹脂(E))(E-1):エチレン/アクリル酸エチル共重合体[NUC-6570、日本ユニカー(株)製](E-2):エチレン/メタアクリル酸グリシジル共重合体[ボンドファストE、住友化学工業(株)製](E-3):無水マレイン酸変性ポリオレフィン[タフマーMP、三井化学(株)製]。【0146】6.電気特性向上助剤(F)(F-1):酸化チタン[TITONE SR-1、堺化学工業(株)製](F-2):タルク(F-3):メラミンシアヌレート。【0147】7.充填剤(G)(G-1):ガラス繊維[直径13μm、長さ3mmのチョップドストランド](G-2):ガラス繊維[直径10μm、長さ3mmのチョップドストランド]。・・(中略)・・【0151】実施例1~26および比較例1~13ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、反応性安定剤(J)を表1~表3に示す割合(重量部)で混合し、30mm径の二軸押出機で混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性、耐トラッキング性(比較トラッキング指数)及び成形性(モールドデポジット)を評価した。結果を表1~3に示す。なお、比較例10は、押出時に樹脂の発泡分解が起こった。【0152】【表1】[図:0001384053000002.jpg]・・(中略)・・【0155】実施例27~35ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)、反応性安定剤(J)を表4に示す割合(重量部)で混合し、押出機により混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性(1.6mm)及び耐トラッキング性(比較トラッキング指数)を評価した。結果を表4に示す。【0156】実施例36~40、比較例14~15ベース樹脂(A)に、ハロゲン系難燃剤(B)、リン酸塩(C)、難燃助剤(D)、電気特性向上樹脂(E)、電気特性向上助剤(F)、充填剤(G)、耐熱安定剤(H)、加工安定剤(I)を表4に示す割合(重量部)で混合し、押出機により混練押出してペレット状の樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形により試験用成形品を作製し、燃焼性(0.8mm)及び耐トラッキング性(比較トラッキング指数)を評価した。結果を表4に示す。【0157】【表4】[図:0001384053000003.jpg]」
イ.甲1に記載された発明
甲1には、上記ア.で摘示した甲1の記載(特に摘示(b1)、(b6))からみて、
「ポリブチレンテレフタレートなどのベース樹脂(A)と、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのハロゲン系難燃剤(B)と、リン酸塩(C)と、さらに、酸化アンチモン等アンチモン含有化合物などの難燃助剤(D)とタルクなどの電気特性向上助剤(F)で構成され、かつ電気特性の向上した難燃性樹脂組成物であって、ベース樹脂100重量部に対して、電気特性向上助剤(F)が1~20重量部である難燃性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)が、
甲1の記載(特に摘示(b7)「実施例36」、「実施例38」及び「実施例39」)からみて、
「(A-1)ポリブチレンテレフタレート100重量部、(B-5)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂15~20重量部、(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩15重量部、(D1-1)三酸化アンチモン10~25重量部、(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部、(G-1)ガラス繊維60~75重量部、(H1-1)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]耐熱安定剤0.5~1.0重量部及び(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部を含有する難燃性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が、
甲1の記載(特に摘示(b7)「実施例32」)からみて、
「(A-1)ポリブチレンテレフタレート100重量部、(B-1)ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)12重量部、(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩10重量部、(D1-1)三酸化アンチモン10重量部、(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部、(F-2)タルク10重量部、(G-1)ガラス繊維60重量部、(H1-1)耐熱安定剤0.5重量部及び(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部を含有する難燃性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明3」という。)並びに
上記各記載からみて、
「甲1発明1、甲1発明2又は甲1発明3の難燃性樹脂組成物を成形してなる成形物。」
に係る発明が記載されているものといえる。
(3)他の甲号証に記載された事項
ア.甲2
甲2には、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物において、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、通常60eq/トン以下、さらには10~50eq/トンが好ましく、末端カルボキシル基量が60eq/トンより高いと、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすく、また、末端カルボキシル基量が過度に低いとポリアルキレンテレフタレート樹脂の生産性が悪くなるという傾向があるとともに、エポキシ化合物を配合する場合には、末端カルボキシル基量が多すぎるとエポキシ化合物との反応により流動性が低下し、射出成形性を阻害する可能性もあること(【0017】)並びに当該樹脂組成物には、更に(C)エポキシ化合物を配合することが好ましく(【0028】)、当該エポキシ化合物の一部として難燃性を付与する目的で、臭素化ビスフェノールA系エポキシ樹脂類を使用することにより、耐加水分解性と難燃性の両方の改良効果があるため、特に好ましいこと(【0042】)が開示されている。
イ.甲3
甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)マグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され(【請求項1】)、当該(E)マグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物がハイドロタルサイトであることも記載されている(【請求項6】)。
そして、当該樹脂組成物から成形品を製造した場合に黒色斑点の発生が認められないことも記載されている(【0048】)。
ウ.甲4
甲4には、「(A)末端カルボキシル基濃度[COOH]が[COOH]≦60当量/トンである芳香族ポリエステル100重量部当たり、(B)下記一般式(I)で表される臭素化エポキシ化合物と、(C)下記一般式(II)で表される臭素化ポリアクリレートとを、臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)との合計量として5~50重量部および(D)三酸化アンチモン2~20重量部からなり、かつ臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)の重量割合が(B)/(C)=5/95~95/5の範囲にある難燃性ポリエステル樹脂組成物。
【化1】
[図:0001384053000004.jpg]
(上記(I)式において、n=11~50である)
【化2】
[図:0001384053000005.jpg]
(上記(II)式において、Rは水素原子またはメチル基であり、p=1~5、m=20~160である)」が記載され(【請求項1】)、当該樹脂組成物には、更に他の配合剤を発現量添加してもよく、タルクなどの無機充填剤が添加できるものとして例示されている(【0033】)。
エ.甲5
甲5には、ポリエステル系樹脂(A)、末端エポキシ基が封鎖された数平均分子量8000以下のハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)、アンチモン系難燃助剤(C)及び帯電防止剤(D)で構成されたポリエステル系樹脂組成物が記載され(【請求項1】)、樹脂組成物の難燃化技術としては、ハロゲン化エポキシ樹脂を難燃剤として樹脂組成物に添加する方法が従来から知られているが、このような難燃剤が添加された樹脂組成物は、押出機内での溶融混練や射出成形機内での滞留等における熱履歴によって著しく粘度が上昇するため、樹脂組成物の流動性が低下して成形加工性が悪化したり、最終的には蛍光灯丸管口金に黒色異物を発生させること(【0004】)及びハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)の数平均分子量は、8000以下であり、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂の数平均分子量が大きすぎると、成形加工での樹脂組成物の流動性が低下したり、寸法安定性が低下したりするとともに、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)は、末端エポキシ基の60%以上が封鎖された構造を有するものであり、末端エポキシ基に対する封鎖率が小さすぎると、溶融した樹脂組成物の熱安定性が低下し、ゲル化が起こって成形加工過程で粘度が上昇すること(【0032】及び【0033】)も記載されている。
2.検討
(1)引用発明に基づく検討
ア.当審が通知した取消理由Aについて
当審が通知した取消理由Aは、旧請求項2並びに同項を引用する旧請求項5及び旧請求項6に係る特許に対するものであるところ、上記第3で示したとおり、適法にされた本件訂正により、旧請求項2の記載事項が全て削除され、更に旧請求項5及び6につき請求項2を引用しないものに訂正されて新請求項5及び6とされたので、取消理由Aは理由がないものとなった。
イ.本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と引用発明とを対比すると、引用発明における「(A)固有粘度0.85のポリブチレンテレフタレート樹脂」、「(C)「プラサームECX-30」なる製品名の臭素化エポキシ化合物」、「(D)「ファイアーカットAT-3」なる製品名のアンチモン化合物」、「(F)タルク」及び「熱可塑性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明7における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「臭素化エポキシ系難燃剤」、「三酸化アンチモン」、「タルク」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
また、引用発明における「ポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部、・・(F)タルク8重量部・・を含有する」は、ポリブチレンテレフタレート樹脂50重量部を100重量部として換算すると、タルク16重量部となるから、本件発明7における「ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む」と一致する。
してみると、本件発明7と引用発明とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し16質量部のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点a4につき検討すると、引用例には、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物につき、黒色異物抑制剤として使用すること又は成形物を製造した際に黒色異物の発生が抑制されることについては記載又は示唆されていないから、上記相違点a4は、実質的な相違点であり、引用発明に基づいて直ちに当業者が適宜なし得ることということはできない。
そして、上記相違点a4につき、他の甲号証に記載の発明又は技術を組み合わせることを検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物を使用する場合に係る記載のみであって、ガラス繊維、タルク及びマイカの組合せのみを使用する引用発明の場合とは異なる組成物に係るものであるから、当該甲3に記載された技術に基づいて、引用発明の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
さらに、甲5には、樹脂組成物の難燃化技術として、ハロゲン化エポキシ樹脂を難燃剤として添加された樹脂組成物は、押出機内での溶融混練や射出成形機内での滞留等における熱履歴によって著しく粘度が上昇するため、樹脂組成物の流動性が低下して成形加工性が悪化したり、最終的には蛍光灯丸管口金に黒色異物を発生させることが記載され、それを防止するために末端エポキシ基の60%以上が封鎖された構造を有するハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を使用するところ、引用発明では、使用する臭素化エポキシ化合物の末端エポキシ基を封鎖することが全く考慮されていないから、当該甲5に記載された技術に基づいて、引用発明の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
してみると、引用発明において、他の甲号証に記載された技術を組み合わせても、上記相違点a4につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7が、引用発明、すなわち引用例に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ.本件発明8について
本件発明8につき検討すると、本件発明8は、本件発明7の用途物発明につき用途方法に係る発明に改めたものと認められるから、本件発明8と引用発明とを対比すると、上記イ.(ア)で示した相違点a4と略同様の以下の点で少なくとも相違するものと認められる。
そして、上記イ.(イ)で説示したとおり、相違点a4は実質的な相違点であり、他の甲号証に記載された技術を組み合わせることにより、引用発明において、当業者が適宜なし得ることでもないから、同様の理由により、相違点a5についても、実質的な相違点であり、他の甲号証に記載された技術を組み合わせることにより、引用発明において、当業者が適宜なし得ることでもない。
したがって、上記相違点a5以外の点につき検討するまでもなく、本件発明8が、引用発明、すなわち引用例に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
エ.引用発明に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明7及び8は、いずれも、引用例に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、申立人が主張する取消理由6は、理由がない。
(2)甲1発明1に基づく検討
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「ポリブチレンテレフタレートなどのベース樹脂(A)」、「臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのハロゲン系難燃剤(B)」、及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「臭素化エポキシ系難燃剤」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明1における「酸化アンチモン等アンチモン含有化合物などの難燃助剤(D)」は、難燃助剤として当業界で慣用されている酸化アンチモンは、三酸化アンチモンであり、甲1における実施例においても三酸化アンチモンのみが使用されているから、本件発明1における「三酸化アンチモン」に相当するものといえる。
さらに、甲1発明1における「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」は、アルカリ性の金属無機化合物であるから、本件発明1における「アルカリ性の金属無機化合物」である限りにおいて一致する。
してみると、本件発明1と甲1発明1とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
相違点b3:本件発明1では「アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部未満のハイドロタルサイトを含む」のに対して、甲1発明1では「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」につき「ベース樹脂100重量部に対して、電気特性向上助剤(F)が1~20重量部である」点
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点b3につき検討すると、甲1発明1では、「タルク」につき、アルカリ性の金属無機化合物として使用することについては示唆されておらず、「電気特性向上助剤(F)」として使用されているのであって、甲1には、ハイドロタルサイトをタルクと同様に「電気特性向上助剤(F)」として使用することについては全く記載も示唆もされていない。
また、甲1には、「電気特性向上助剤(F)」と同様に「耐熱安定剤(H)」を使用できることが記載され(【請求項16】)、当該耐熱安定剤としてハイドロタルサイトなどの無機金属又は鉱物系安定剤を使用できることが記載されている(【0121】)ものの、実際上はヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤を耐熱安定剤として使用することが前提となっており(【0123】~【0124】)、特にハイドロタルサイトを使用すべきことを開示するものではないから、上記相違点b3は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明1に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることでもない。
また、上記相違点b3につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることを検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ガラス繊維、タルク又はマイカはいずれも無機充填剤(F)として例示されているものであり、ハイドロタルサイトとは別異の成分として使用されているものである(必要ならば【0020】~【0023】参照)から、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明1の組成物において「電気特性向上助剤(F)」として使用されているタルクをハイドロタルサイトに代えるべきこと又は「耐熱安定剤(H)」としてハイドロタルサイトを選択的に使用すべきことを動機付ける事項が存するものとはいえないし、他の甲号証又は引用例の記載を検討しても同様であるから、甲1発明1において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点b3につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
イ.本件発明3ないし6について
本件発明1を引用する本件発明3ないし6についても、上記ア.で説示した理由と同様に理由により、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ.本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「ポリブチレンテレフタレートなどのベース樹脂(A)」、「臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのハロゲン系難燃剤(B)」、「酸化アンチモン等アンチモン含有化合物などの難燃助剤(D)」、「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「臭素化エポキシ系難燃剤」、「三酸化アンチモン」、「タルク」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明1における「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」に係る「「ベース樹脂100重量部に対して、電気特性向上助剤(F)が1~20重量部である」は、本件発明7における「ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む」と5.0質量部以上20質量部以下の範囲で重複する。
してみると、本件発明7と甲1発明1とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上20質量部以下のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点b8につき検討すると、甲1には、難燃性樹脂組成物につき、黒色異物抑制剤として使用すること又は成形物を製造した際に黒色異物の発生が抑制されることについては記載又は示唆されていないから、上記相違点b8は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明1に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることということはできない。
また、上記相違点b8につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることにつき検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物を使用する場合に係る記載のみであって、「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」のみを使用する甲1発明1の場合とは異なる組成物に係るものであるから、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明1の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
さらに、甲5には、樹脂組成物の難燃化技術として、ハロゲン化エポキシ樹脂を難燃剤として添加された樹脂組成物は、押出機内での溶融混練や射出成形機内での滞留等における熱履歴によって著しく粘度が上昇するため、樹脂組成物の流動性が低下して成形加工性が悪化したり、最終的には蛍光灯丸管口金に黒色異物を発生させることが記載され、それを防止するために末端エポキシ基の60%以上が封鎖された構造を有するハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を使用するところ、甲1発明1では、使用する臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのハロゲン系難燃剤(B)の末端エポキシ基を封鎖することが全く考慮されていないから、当該甲5に記載された技術に基づいて、甲1発明1の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
してみると、甲1発明1において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点b8につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7が、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
エ.本件発明8について
本件発明8につき検討すると、本件発明8は、本件発明7の用途物発明につき用途方法に係る発明に改めたものと認められるから、本件発明8と甲1発明1とを対比すると、上記ウ.(ア)で示した相違点b8と略同様の以下の点で少なくとも相違するものと認められる。
そして、上記ウ.(イ)で説示したとおり、相違点b8は実質的な相違点であり、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明1において、当業者が適宜なし得ることでもないから、同様の理由により、相違点b9についても、実質的な相違点であり、甲1発明1に基づいて直ちに当業者が適宜なし得ることではなく、また、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明1において、当業者が適宜なし得ることでもない。
したがって、上記相違点b9以外の点につき検討するまでもなく、本件発明8が、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ.甲1発明1に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1及び3ないし8は、いずれも、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)甲1発明2に基づく検討
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「(A-1)ポリブチレンテレフタレート」、「(B-5)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂」、「(D1-1)三酸化アンチモン」及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「臭素化エポキシ系難燃剤」、「三酸化アンチモン」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明2とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
相違点c2:本件発明1では「組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下である」のに対して、甲1発明2ではPBT樹脂100重量部あたり「(B-5)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂15~20重量部」を含有し、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量につき特定されていない点
相違点c3:本件発明1では「アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部未満のハイドロタルサイトを含む」のに対して、甲1発明2では「(A-1)ポリブチレンテレフタレート100重量部」に対し「(H1-1)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]耐熱安定剤0.5~1.0重量部」であり、「(H)耐熱安定剤」としてハイドロタルサイトを使用することが特定されていない点
相違点c4:甲1発明2では「(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩15重量部」、「(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部」、「(G-1)ガラス繊維60~75重量部」及び「(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部」をそれぞれ含有するのに対して、本件発明1では当該各成分を含有することにつき特定されていない点
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点c3につき検討すると、甲1発明2では、「(H)耐熱安定剤」としてハイドロタルサイトを使用することについては示唆されておらず、甲1には、「電気特性向上助剤(F)」と同様に「耐熱安定剤(H)」を使用できることが記載され(【請求項16】)、当該耐熱安定剤としてハイドロタルサイトなどの無機金属又は鉱物系安定剤を使用できることが記載されている(【0121】)ものの、実際上はヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤を耐熱安定剤として使用することが前提となっており(【0123】~【0124】)、特にハイドロタルサイトを使用すべきことを開示するものではないから、上記相違点c3は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明2に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることでもない。
また、上記相違点c3につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることを検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ガラス繊維、タルク又はマイカはいずれも無機充填剤(F)として例示されているものであり、ハイドロタルサイトとは別異の成分として使用されているものである(必要ならば【0020】~【0023】参照)から、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明2の組成物において「電気特性向上助剤(F)」として使用されている「タルク」をハイドロタルサイトに代えるべきこと又は「耐熱安定剤(H)」としてハイドロタルサイトを選択的に使用すべきことを動機付ける事項が存するものとはいえないし、他の甲号証又は引用例の記載を検討しても同様であるから、甲1発明2において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点c3につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
イ.本件発明3ないし6について
本件発明1を引用する本件発明3ないし6についても、上記ア.で説示した理由と同様に理由により、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ.本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「(A-1)ポリブチレンテレフタレート」、「(B-5)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂」「(D1-1)三酸化アンチモン」及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「臭素化エポキシ系難燃剤」、「三酸化アンチモン」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
してみると、本件発明7と甲1発明2とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、臭素化エポキシ系難燃剤と、三酸化アンチモンとを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
相違点c7:甲1発明2では、「(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩15重量部」、「(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部」、「(G-1)ガラス繊維60~75重量部」、「(H1-1)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]耐熱安定剤0.5~1.0重量部」及び「(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部」をそれぞれ含有するのに対して、本件発明7では当該各成分を含有することにつき特定されていない点
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点c8につき検討すると、甲1には、難燃性樹脂組成物につき、黒色異物抑制剤として使用すること又は成形物を製造した際に黒色異物の発生が抑制されることについては記載又は示唆されていないから、上記相違点c8は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明2に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得るものということもできない。
また、上記相違点c8につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることにつき検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物を使用する場合に係る記載のみであって、「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」のみを使用する甲1発明2の場合とは異なる組成物に係るものであるから、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明2の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
さらに、甲5には、樹脂組成物の難燃化技術として、ハロゲン化エポキシ樹脂を難燃剤として添加された樹脂組成物は、押出機内での溶融混練や射出成形機内での滞留等における熱履歴によって著しく粘度が上昇するため、樹脂組成物の流動性が低下して成形加工性が悪化したり、最終的には蛍光灯丸管口金に黒色異物を発生させることが記載され、それを防止するために末端エポキシ基の60%以上が封鎖された構造を有するハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を使用するところ、甲1発明2では、使用する臭素化難燃剤(B)の種別が全く異なるから、当該甲5に記載された技術に基づいて、甲1発明2の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
してみると、甲1発明2において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点c8につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7が、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
エ.本件発明8について
本件発明8につき検討すると、本件発明8は、本件発明7の用途物発明につき用途方法に係る発明に改めたものと認められるから、本件発明8と甲1発明2とを対比すると、上記ウ.(ア)で示した相違点c8と略同様の以下の点で少なくとも相違するものと認められる。
そして、上記ウ.(イ)で説示したとおり、相違点c8は実質的な相違点であり、甲1発明2に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることではなく、また、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明2において、当業者が適宜なし得ることでもないから、同様の理由により、相違点c9についても、実質的な相違点であり、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明2において、当業者が適宜なし得ることでもない。
したがって、上記相違点c9以外の点につき検討するまでもなく、本件発明8が、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ.甲1発明2に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1及び3ないし8は、いずれも、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)甲1発明3に基づく検討
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明3とを対比すると、甲1発明3における「(A-1)ポリブチレンテレフタレート」、「(D1-1)三酸化アンチモン」及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「三酸化アンチモン」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明3における「(B-1)ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)」は、臭素化化合物であるハロゲン系難燃剤として使用されているものであるから、本件発明1における「臭素化エポキシ系難燃剤」と間で「臭素化難燃剤」である限りにおいて一致する。
さらに、甲1発明3における「(F-2)タルク」は、アルカリ性の金属無機化合物であるから、本件発明1における「アルカリ性の金属無機化合物」である限りにおいて一致する。
してみると、本件発明1と甲1発明3とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンとを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
相違点d2:本件発明1では「臭素化エポキシ系難燃剤」を含有し「組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下である」のに対して、甲1発明3では「(B-1)ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)12重量部」を含有し、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量につき特定されていない点
相違点d3:本件発明1では「アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部未満のハイドロタルサイトを含む」のに対して、甲1発明3では「(A-1)ポリブチレンテレフタレート100重量部」に対し「(F-2)タルク10重量部」であり、ハイドロタルサイトを使用することが特定されていない点
相違点d4:甲1発明3では「(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩10重量部」、「(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部」、「(G-1)ガラス繊維60重量部」、「(H1-1)耐熱安定剤0.5重量部」及び「(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部」をそれぞれ含有するのに対して、本件発明1では当該各成分を含有することにつき特定されていない点
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点d3につき検討すると、甲1発明3では、「タルク」につき、アルカリ性の金属無機化合物として使用することについては示唆されておらず、「電気特性向上助剤(F)」の一種として使用されているのであって、甲1には、ハイドロタルサイトをタルクと同様に「電気特性向上助剤(F)」として使用することについては全く記載も示唆もされていないから、上記相違点d3は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明3に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることでもない。
また、上記相違点d3につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることを検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ガラス繊維、タルク又はマイカはいずれも無機充填剤(F)として例示されているものであり、ハイドロタルサイトとは別異の成分として使用されているものである(必要ならば【0020】~【0023】参照)から、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明3の組成物において「電気特性向上助剤(F)」として使用されている「タルク」をハイドロタルサイトに代えるべきことを動機付ける事項が存するものとはいえないし、他の甲号証又は引用例の記載を検討しても同様であるから、甲1発明3において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点d3につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
イ.本件発明3ないし6について
本件発明1を引用する本件発明3ないし6についても、上記ア.で説示した理由と同様に理由により、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
ウ.本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明3とを対比すると、甲1発明3における「(A-1)ポリブチレンテレフタレート」、「(D1-1)三酸化アンチモン」、「(F-2)タルク」及び「難燃性樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明1における「ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「三酸化アンチモン」、「タルク」及び「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」に相当する。
また、甲1発明3における「(B-1)ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)」は、臭素化化合物であるハロゲン系難燃剤として使用されているものであるから、本件発明7における「臭素化エポキシ系難燃剤」と間で「臭素化難燃剤」である限りにおいて一致する。
さらに、甲1発明3における「(A-1)ポリブチレンテレフタレート100重量部」及び「(F-2)タルク10重量部」は、本件発明7における「ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む」と一致する。
してみると、本件発明7と甲1発明3とは、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂と、アルカリ性の金属無機化合物と、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンとを含み、アルカリ性の金属無機化合物として、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し10質量部のタルクを含む、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」
で一致し、少なくとも以下の4点で相違する。
相違点d6:本件発明7では「臭素化エポキシ系難燃剤」を使用し「組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.010mol/kg以上、0.020mol/kg以下である」のに対して、甲1発明3では「(B-1)ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)12重量部」を含有し、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量につき特定されていない点
相違点d7:甲1発明3では、「(C1-1)ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩10重量部」、「(D2-1)ポリテトラフルオロエチレン1.5重量部」、「(G-1)ガラス繊維60重量部」、「(H1-1)耐熱安定剤0.5重量部」及び「(I-1)ポリエチレンワックス2.0重量部」をそれぞれ含有するのに対して、本件発明7では当該各成分を含有することにつき特定されていない点
(イ)検討
事案に鑑み、上記相違点d8につき検討すると、甲1には、難燃性樹脂組成物につき、黒色異物抑制剤として使用すること又は成形物を製造した際に黒色異物の発生が抑制されることについては記載又は示唆されていないから、上記相違点d8は、実質的な相違点であるものといえ、甲1発明3に基づいて、直ちに当業者が適宜なし得ることとはいえない。
また、上記相違点d8につき他の甲号証又は引用例に記載の発明又は技術を組み合わせることを検討すると、甲3には、(A)ポリブチレンテレフタレート及び/又はブチレンテレフタレートモノマーを60.0wt%以上含有する共重合体、及び/又はポリブチレンテレフタレートを60.0wt%以上含有する熱可塑性ポリエステル混合物、(B)臭素化エポキシ樹脂系難燃剤及び/又は臭素化ポリカーボネート系難燃剤2.0~25.0wt%(全組成物中)、(C)三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを主成分とする難燃助剤2.0~15.0wt%(全組成物中)、(D)エチレン-エチルアクリレート共重合体2.0~20.0wt%(全組成物中)、(E)ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物0~10.0wt%(全組成物中)、および(F)無機充填剤0~70.0wt%(全組成物中)からなる難燃性樹脂組成物が記載され、当該難燃性樹脂組成物が成形時の黒色斑点の発生防止ができることは記載されているものの、ハイドロタルサイトなどのマグネシウムとアルミニウムとの含水塩基性炭酸塩化合物を使用する場合に係る記載のみであって、「タルクなどの電気特性向上助剤(F)」のみを使用する甲1発明3の場合とは異なる組成物に係るものであるから、当該甲3に記載された技術に基づいて、甲1発明3の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
さらに、甲5には、樹脂組成物の難燃化技術として、ハロゲン化エポキシ樹脂を難燃剤として添加された樹脂組成物は、押出機内での溶融混練や射出成形機内での滞留等における熱履歴によって著しく粘度が上昇するため、樹脂組成物の流動性が低下して成形加工性が悪化したり、最終的には蛍光灯丸管口金に黒色異物を発生させることが記載され、それを防止するために末端エポキシ基の60%以上が封鎖された構造を有するハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を使用するところ、甲1発明3では、使用する臭素化難燃剤(B)の種別が全く異なるから、当該甲5に記載された技術に基づいて、甲1発明3の組成物について黒色異物抑制剤として使用することを動機付ける事項が存するものとはいえない。
してみると、甲1発明3において、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせても、上記相違点d8につき当業者が適宜なし得たものと認めることはできない。
(ウ)小括
したがって、上記他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明7が、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
エ.本件発明8について
本件発明8につき検討すると、本件発明8は、本件発明7の用途物発明につき用途方法に係る発明に改めたものと認められるから、本件発明8と甲1発明3とを対比すると、上記ウ.(ア)で示した相違点d8と略同様の以下の点で少なくとも相違するものと認められる。
そして、上記ウ.(イ)で説示したとおり、相違点d8は実質的な相違点であり、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明3において、当業者が適宜なし得ることでもないから、同様の理由により、相違点d9についても、実質的な相違点であり、他の甲号証又は引用例に記載された技術を組み合わせることにより、甲1発明3において、当業者が適宜なし得ることでもない。
したがって、上記相違点d9以外の点につき検討するまでもなく、本件発明8が、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ.甲1発明3に基づく検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1及び3ないし8は、いずれも、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証又は引用例に記載された発明又は技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(5)検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び3ないし8は、いずれも特許法第29条第2項の規定により、特許を受けられないものではない。
よって、申立人が主張する取消理由1は、理由がない。
3.取消理由A、1及び6に係るまとめ
よって、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものではなく、上記取消理由A、1及び6は、いずれも理由がない。
II.取消理由2及び3について
1.申立人が主張する取消理由2及び3の概要
申立人が主張する取消理由2及び3は、申立書第23頁ないし第24頁の主張からみて、以下をいうものと認められる。
「本件特許発明1は、難燃性、耐加水分解性、黒色異物抑制を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の提供を課題としているところ、請求項1では、ハイドロタルサイト量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部未満と規定されているのに対して、本件特許明細書の実施例1ないし3及び7に係るハイドロタルサイトを使用した場合をみると、難燃性に加えて、耐加水分解性、黒色異物抑制を満たす為には、ハイドロタルサイト量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1.6質量部前後であることが必要であると認められ、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1に規定するハイドロタルサイト量の下限0.01質量部付近のデータを記載しておらず、かかる量における難燃性、耐加水分解性、黒色異物抑制を実証していないことから、本願特許明細書の発明の詳細な説明に当業者が本件特許発明1及び3ないし6を実施できる程度に明確かつ十分に記載したといえない(取消理由2)し、また、特許請求の範囲に記載された本件特許発明1が、本件特許明細書の発明な詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ、開示されているとは認められず、本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし6も、同様に認められない(取消理由3)ことにより、いずれにしても特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきである。」
2.取消理由2について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、実施例1ないし3及び7として、本件の請求項1に記載された事項を具備する難燃性樹脂組成物が記載されており、各樹脂組成物が難燃性、耐加水分解性及び黒色異物抑制に係る効果を奏していることが記載されており、当該効果の発現を妨げる要因となる当業者の技術常識が存するものとも認められないから、当業者ならば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の当該記載に照らして、本件の請求項1に記載された事項を具備する難燃性樹脂組成物をハイドロタルサイトの使用量範囲の下限値である0.01重量部のものを含み製造することができ、当該樹脂組成物に係る発明として実施することができるものと認められ、請求項1を引用する請求項3ないし6に記載された事項を具備する各発明についても同様である。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件の請求項1及び3ないし6に記載された事項で特定される発明を、当業者が実施することができるように明確かつ十分に記載したものということができる。
したがって、上記取消理由2は、理由がない。
3.取消理由3について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、本件発明の解決しようとする課題は、難燃性に優れ、更に耐加水分解性及びスクリューへの付着物に起因する黒色異物の抑制にも優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤又は当該樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法の提供にあるものと認められる(【0007】、【0037】、【0052】及び【0053】)。
そして、更に実施例及び比較例に係る記載(特に【0048】【表1】)を検討すると、PBT樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイトを0.6ないし2.9質量部含有する実施例1ないし3及び7並びにタルクを6.0ないし20.4質量部含有する実施例4ないし6の場合に、難燃性に優れると共に耐加水分解性及びスクリュー付着物の点で一定程度の効果が発現しているのに対して、他のアルカリ性の金属無機化合物又はカルボジイミド化合物を含有する実施例8ないし13(当審注:現時点の請求項に記載した事項を具備しない参考例である。)又は比較例2ないし4並びにアルカリ化合物を含有しない比較例1又は5の場合には、難燃性に優れるものの耐加水分解性又はスクリュー付着物のいずれかの点で効果を発現しないことが看取できるから、これら実施例1ないし7の樹脂組成物を適宜の適用対象(他の樹脂など)に対して添加使用しても、同様の効果が奏されるものと理解するのが自然である。
してみると、上記実施例及び比較例に係る記載に接した当業者は、本件請求項1に記載された事項を具備する発明であれば、ハイドロタルサイトの含有量範囲の下限値の場合であろうとも、本件発明の上記課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められ、当該実施例1ないし3及び7の場合以外の請求項1に記載された事項を具備する場合(上記下限値の場合)において、課題を解決できないであろうと当業者が認識すべき技術的要因又は技術常識が存するものとも認められない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件請求項1又は同項を引用する請求項3ないし6の各項に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明の上記課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められるから、本件の請求項1及び3ないし6に記載された発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる。
よって、上記取消理由3は、理由がない。
4.取消理由2及び3に係るまとめ
以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由2及び3はいずれも理由がない。
III.取消理由4及び5について
1.申立人が主張する取消理由4及び5の概要
申立人が令和3年9月22日付けで提示した意見書の主張(第3頁ないし第5頁)からみて、本件訂正で追加された本件請求項7及び8に係る特許は、各項に記載の「ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し5.0質量部以上25質量部以下のタルクを含む」との点において、本件特許明細書に記載されている範囲を超えており、新規事項の追加にあたり(取消理由4)、またサポート要件を満たしていないものであるというものであり(以下この点を「取消理由5a」という。)、また、本件の請求項7に係る特許は、同項記載の「黒色異物抑制剤」の適用対象の点で発明を特定できず明確性要件違反に該当し(以下この点を「取消理由5b」という。)、さらに、対象物の黒色異物を抑制することが本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載していないことからサポート要件違反に該当する(以下この点を「取消理由5c」という。)ことにより、特許法第113条第1号又は第4号に該当するから、特許を取り消すべきであるというものと認められる。
2.検討
(1)取消理由4について
特許法第113条(柱書)では、「何人も・・特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。」と規定され、同条第1号には、「その特許が第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語特許出願を除く。)に対してされたこと。」と規定されている。
それに対して、申立人が主張する本件請求項7及び8はいずれも、特許法第120条の5第2項に規定する訂正請求による本件訂正により追加されたものであり、同法第17条の2第1項に規定する「補正」によるものではないから、その前提が異なり、特許法第113条第1号の適用はできないものである。
なお、本件訂正による請求項7及び8の追加は、上記第3の2.(1)イ.で説示したとおり、旧請求項3又は4における旧請求項2を引用する各部分につき、旧請求項2に記載された事項を書き下して独立形式に改めた上で新請求項7又は8にしているのであるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内であるということができ、いわゆる新規事項の追加であるとも認められない。
したがって、取消理由4は、理由がない。
(2)取消理由5bについて
事案に鑑み、取消理由5bにつき検討すると、本件請求項7に係る「難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤」は、当該樹脂組成物を適用対象である他の材料(他の樹脂など)に添加して対象物(成形物など)を構成した場合の黒色異物の発生を抑制するための「剤」なる用途物に係る発明であることが明確であり、適用対象が特定されていないからといって、直ちに発明が明確でないということはできず、適用対象を特定すべき技術的要因が存するものとも認められない。
したがって、本件請求項7の記載では、同項に係る発明が明確でないということはできず、取消理由5bは理由がない。
(3)取消理由5a及び5cについて
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、本件発明の解決しようとする課題は、難燃性に優れ、更に耐加水分解性及びスクリューへの付着物に起因する黒色異物の抑制にも優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる黒色異物抑制剤又は当該樹脂組成物を用いた黒色異物抑制方法の提供にあるものとも認められる(【0007】、【0037】、【0052】及び【0053】)。
そして、更に実施例及び比較例に係る記載(特に【0048】【表1】)を検討すると、PBT樹脂100質量部に対して、ハイドロタルサイトを0.6ないし2.9質量部含有する実施例1ないし3及び7並びにタルクを6.0ないし20.4質量部含有する実施例4ないし6の場合に、難燃性に優れると共に耐加水分解性及びスクリュー付着物の点で一定程度の効果が発現しているのに対して、他のアルカリ性の金属無機化合物又はカルボジイミド化合物を含有する実施例8ないし13(当審注:現時点の請求項に記載した事項を具備しない参考例である。)又は比較例2ないし4並びにアルカリ化合物を含有しない比較例1又は5の場合には、難燃性に優れるものの耐加水分解性又はスクリュー付着物のいずれかの点で効果を発現しないことが看取できるから、これら実施例1ないし7の樹脂組成物を適宜の適用対象(他の樹脂など)に対して添加使用しても、同様の効果が奏されるものと理解するのが自然である。
してみると、上記実施例及び比較例に係る記載に接した当業者は、本件請求項7又は8に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明の上記課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められ、当該実施例4ないし6の場合以外の請求項7又は8に記載された事項を具備する場合において、課題を解決できないであろうと当業者が認識すべき技術的要因又は技術常識が存するものとも認められない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件請求項7又は8に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明の上記課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められるから、本件の請求項7又は8に記載された発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる。
よって、上記取消理由5a及び5cは、いずれも理由がない。
3.取消理由4及び5に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由4及び5は、いずれも理由がない。
IV.当審の判断のまとめ
よって、申立人が主張する取消理由1ないし6及び当審が通知した取消理由Aは、いずれも理由がなく、本件訂正後の請求項1及び3ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は、適法であるからこれを認める。
そして、本件の請求項2に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、不適法なものであるから、却下すべきものである。
また、本件特許に係る異議申立てにおいて特許異議申立人が主張する取消理由はいずれも理由がなく、更に当審が職権により通知した取消理由も理由がないから、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700069