商標取消審判
2021-300722
アリア
- 審判番号
- 2021-300722
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2010-009958
- 登録番号
- 5373415
- 請求日
- 2021年09月17日
- 審決日
- 2022年08月24日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オペラ ナショナル ドゥ パリ
- 【請求人代理人】特許業務法人 有古特許事務所
- 【被請求人】株式会社 講談社
- 【被請求人代理人】特許業務法人中川国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 大山 健
- 審判官 鈴木 雅也
- 分類
- T132 .1 -Y (X41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第7号、商標法第50条第2項、商標法第38条第5項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5373415号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5373415号商標(以下「本件商標」という。)は、「ARIA」の欧文字を上段に、「アリア」の片仮名を下段に二段に書してなり、平成22年2月12日に登録出願、第16類「雑誌」及び第41類「電子出版物の提供,書籍の制作」を指定商品及び指定役務として、同年12月3日に設定登録されたものである。
また、令和2年9月30日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和3年10月7日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)10月7日ないし令和3年(2021年)10月6日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品及び指定役務中、第41類「電子出版物の提供」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1及び2を提出した。
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類「電子出版物の提供」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 コミック誌及びコミックレーベルについて
被請求人は、非日常的な世界観をテーマにした少女漫画雑誌として、「アリア\ARIA」を題号とした月刊誌(以下「本件月刊誌」という場合がある。)を2010年7月28日に創刊し(乙1)、2018年6月号(同年4月28日発売)まで毎月発行していた。
雑誌としての最終号の発売日は、2018年4月28日で本件審判の請求の登録日より3年以上前だが、後述2のとおり、被請求人は現時点においても、これまで発行してきた本件月刊誌の各号について、電子書籍配信サイト経由で電子出版物のダウンロード及びストリーミング配信によって販売を継続しており、購入した需要者が閲覧可能な状態においている。
また、被請求人は、後述3のとおり、被請求人の発行するコミック商品(紙媒体、電子出版物及び電子出版物の提供)のうち、本件月刊誌のコンセプトを受け継いだ少女漫画のレーベル「アリア\ARIA」を有している。
2 ストリーミング型の定期刊行物の題号としての商標の使用
(1)要証期間に日本国内で使用されていること
被請求人の電子出版物は、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社(乙2。以下「NTTソルマーレ株式会社」という。)が日本国内において運営する電子書籍配信ウェブサイト「コミックシーモア」において配信されており、被請求人は同社より定期的に販売状況の報告を受ける関係にある(乙3)。
被請求人は、要証期間に日本国内において、本件商標を使用している証拠として、コミックシーモアにおける、以下の電子出版物のダウンロード及びストリーミング配信用ページ(乙5、乙6)、及び、「インターネットアーカイブ」が収録した同ページの例(乙7)を提出する。
なお、「インターネットアーカイブ」は、世界中のウェブ情報を代表とする様々なデジタル情報をアーカイブしている非営利法人である(乙4)。
上記の本件月刊誌各号の配信用ページにおいて、被請求人は、掲載された表紙画像中に片仮名「アリア」と欧文字「ARIA」を二段に横書きした商標(以下「商標1」という。)を表示している。
また、上記の本件月刊誌各号の配信用ページにおいて、NTTソルマーレ株式会社は、被請求人の同意のもと需要者が商品名を容易に文字で認識できるように、欧文字「ARlA」を横書きした商標(以下「商標2」という。)を表示している。
本件月刊誌は2018年6月号をもって休刊となっているものの(乙5)、要証期間においても(乙7)、現時点でも(乙5、乙6)、同一の内容・方法でネットワークを通じて配信が継続されている。つまり、被請求人は、過去3年以上にわたって継続して、商標1及び商標2を電子版の定期刊行物の題号として映像面に表示することで使用している。
そして、現に、コミックシーモアにおいては、要証期間の2021年8月1日に本件月刊誌2018年6月号が1件販売された(乙8)。また、その他の電子書籍販売サイトにおいても、同日に本件月刊誌の各号が販売された。
(2)指定役務についての使用
コミックシーモアでは、書籍の購入・閲覧方法として「アプリで読む」と「ブラウザで読む」を選択することができる。このうち、「ブラウザで読む」を選択したときは「ストリーミング閲覧で保存不可」の扱いとなるので、情報端末の映像面を介した役務の提供に当たる。「アプリで読む」を選択したときはダウンロード可能の扱いとなる(乙9)。
つまり、同サイトで本件月刊誌のダウンロード又はストリーミングによる閲覧が可能な画面において商標1及び商標2が表示されるとき、被請求人は、商品「電子出版物」について商標を付すとともに、映像面を介した役務「電子出版物の提供」の提供に当たりその映像に商標を表示して役務を提供する行為としても、商標1及び商標2を使用している(商標法第2条第3項第7号)。
(3)商標1及び商標2と本件商標の同一性
商標法第38条第5項は、登録商標について「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標・・・と社会通念上同一と認められる商標を含む。第50条において同じ。」と定め、一定程度の変更が加えられていても、社会通念上同一と認識し得る商標は登録商標の使用に当たることを定めている。
商標1は、本件商標に対して書体のみに変更を加えた同一の文字商標(なお、仮に「I」についてローマ字の大文字と小文字の相互間の使用とみるとしても、同一の称呼及び観念を生じる。)の上下段を、文字の大きさを変更して置換したにすぎないものである。しかも、商標1の上段「アリア」と下段「ARIA」いずれからも、同一の称呼「アリア」及び「オペラ・オラトリオなどの中の旋律的な独唱歌曲。」(乙10)程度の同一の観念が生じる。
そうすると、たとえ商標1が本件商標から外観上若干の変更が加えられ同一とまではいえなくとも、同じ自他識別機能を果たしていることから、社会通念上同一と認識し得る商標に該当する。
商標2は、上段「ARIA」と下段「アリア」を二段に書した構成で、かつ、上段及び下段の各部が観念を同一とする本件商標のうち、上段「ARIA」部分の使用に当たる。このような商標の使用においても、本件商標と同じ自他識別機能を果たしていることから、社会通念上同一と認識し得る商標に該当する。
したがって、被請求人による商標1及び商標2の使用は、本件商標の使用に該当する。
(4)小括
以上より、要証期間に日本国内において商標権者である被請求人が、本件審判請求に係る指定役務について、本件商標を使用していることは明らかである。
3 ストリーミング型の書籍のレーベルとしての商標の使用
(1)要証期間に日本国内で使用されていること
被請求人は、自社が運営するウェブサイト「講談社コミックプラス」上で、自社が日本国内で刊行している各漫画単行本が各電子書籍配信サイトで配信されていること、及び自社ウェブサイト上で試し読みができることを紹介する広告を配信している。
そして、各漫画単行本のうち、本件月刊誌のコンセプトを受け継いだ少女漫画に対しては、そのコンセプトを明示する目的のレーベルとして商標1及び商標2を表示し、需要者が被請求人の電子出版物のうち本件月刊誌同様のコンセプトの書籍であることを識別できるようにしている。
被請求人は、ウェブサイト「講談社コミックプラス」における広告ページ及びインターネットアーカイブが収録した同ページの例を提出する(乙11~乙16)。
(2)指定役務についての使用
被請求人は、商標1及び商標2を表示した漫画単行本の広告ページにおいて、その漫画単行本をダウンロード又はストリーミングによる閲覧可能な電子書籍配信サイトへのリンクを表示している(乙13、乙15)。
つまり、被請求人発行の漫画単行本についての役務「電子出版物の提供」の広告に商標1及び商標2を付して電磁的方法により提供することによって、商標1及び商標2を使用している(商標法第2条第3項第8号)。
(3)商標1及び商標2と本件商標の同一性
被諸求人が、前述の漫画単行本の広告ページにおいて表示する商標1及び商標2はいずれも上述の2(3)と同じ構成によるものであるから、被請求人による商標1及び商標2の使用は、本件商標の使用に該当する。
(4)小括
以上より、要証期間に日本国内において商標権者である被請求人が、本件審判請求に係る指定役務について、本件商標を使用していることは明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(1)本件商標権者が運営するウェブサイト「講談社コミックプラス」について
乙第13号証は、本件商標権者が運営するウェブサイト「講談社コミックプラス」において、2021年5月21日発行の漫画単行本(「だんだらごはん(7)」)を紹介するページであって、そのページを2021年12月14日に出力した書面である。
当該ページには、上記単行本の画像とともに、「だんだらごはん(7)」の文字の下、赤枠内に多少図案化された「ARiA」の文字とその上部に小さく「アリア」の文字の表記及び「電子あり」の記載がある。
そして、「内容紹介」や「製品情報」などといった複数の項目のうち「オンライン書店で見る」の項には「電子版」の一つとして「コミックシーモア」の記載がある。
また、乙第14号証は、インターネットアーカイブのウェブサイトに保存されている2021年5月21日の本件商標権者のウェブサイト「講談社コミックプラス」のページの写しであって、乙第13号証と同様に、2021年5月21日発行の漫画単行本(「だんだらごはん(7)」)を紹介するページであり、上記単行本の画像とともに、「だんだらごはん(7)」の文字の下、赤枠内に多少図案化された「ARiA」の文字とその上部に小さく「アリア」の文字の表記及び「電子あり」の記載がある。
(2)「コミックシーモア」について
乙第6号証は、NTTソルマーレ株式会社が運営する電子書籍配信ウェブサイト「コミックシーモア」における「ARIA 2017年11月号」の配信用ページを2021年12月14日に出力した書面である。
また、当該ページの「作品ラインナップ」の項には、「ARIA 2017年9月号」ないし「ARIA 2018年6月号」の表紙の画像が表示され、いずれも表紙に多少図案化された「ARiA」の文字とその上部に小さく「アリア」の文字が表記されている。
さらに、「作品情報」の項には、「出版社:講談社」、「雑誌・レーベル:ARIA」、「ファイルサイズ:142.5MB」、「出版年月:2017年9月」及び「対応ビューア:ブラウザビューア(縦読み/横読み)、本棚アプリ(横読み)」の記載がある。
また、乙第7号証は、インターネットアーカイブのウェブサイトに保存されている2019年1月19日の「コミックシーモア」のページの写しであって、乙第6号証と同様に、「ARIA 2017年11月号」の配信用ページであり、「作品情報」の項には、「出版社:講談社」、「雑誌・レーベル:ARIA」、「ファイルサイズ:142.5MB」、「出版年月:2017年9月」及び「対応ビューア:ブラウザビューア(横読み)、本棚アプリ(横読み)」の記載がある。
(3)「コミックシーモア」で提供されている漫画や電子書籍の閲覧方法について
乙第9号証は、「コミックシーモア」の「本棚アプリ」についてのページであり、「本棚アプリとブラウザビューアの違いは?」のタイトル下に、「アプリで読む」場合は「作品をダウンロードして端末に保存可能」であるが、「ブラウザで読む」場合は「ストリーミング閲覧で保存不可」であることが記載されている。
(4)その他
乙第3号証は、2021年11月19日付けのNTTソルマーレ株式会社が本件商標権者宛てに作成した「2021年11月期定例報告資料(2021年10月期販売速報)」の表紙である。
2 上記1によれば、以下のとおり認められる。
(1)2021年12月14日の本件商標権者の運営するウェブサイト「講談社コミックプラス」において、「ARiA」の文字とその上部に小さく「アリア」の文字を配した標章(以下「使用商標」という。)を表示し、漫画単行本の電子版(電子書籍)を掲載したこと、当該ウェブサイトには、上記電子書籍を閲覧させる「コミックシーモア」(運営会社:NTTソルマーレ株式会社)のウェブサイトへのリンクが貼られており、2021年5月21日にも同様の状況であったことが推認できる。
(2)2021年12月14日の電子書籍配信ウェブサイト「コミックシーモア」には、本件商標権者が出版する使用商標が表記された電子書籍の2017年11月号などが、ブラウザビューア(ストリーミング閲覧であって、作品をダウンロードして端末に保存はできない形式)で閲覧させる状態で掲載されていたといえ、その状況は2019年1月19日においても同様であったことが推認できる。
なお、上記電子書籍をブラウザビューアで閲覧した場合に、その表紙も表示されること、すなわち、その表紙上の使用商標も、ブラウザ上の映像に表示されることは明らかである。
(3)被請求人(本件商標権者)は、「コミックシーモア」の運営会社であるNTTソルマーレ株式会社に対し、使用商標を使用することを許容しているといった主張に何ら不自然な点はなく、また、上記1(4)のとおり、本件商標権者は同社より定期的に販売状況の報告を受ける関係にあることが推認できる。
3 判断
(1)使用商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「ARIA」の欧文字を上段に、「アリア」の片仮名を下段に書してなるところ、使用商標は、多少図案化された「ARiA」の文字とその上部に小さく「アリア」の文字を配した標章であり、両者は、欧文字部分について多少図案化されていたり、欧文字と片仮名の配置が異なるといった差異はあるものの、いずれの文字も同一のつづりからなるものであって、同一の称呼を生じるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。
(2)使用行為、使用時期及び使用者について
ア 本件商標権者は、自社のウェブサイトにおいて、使用商標を表示して電子書籍の閲覧に関する広告を電磁的方法により提供したこと、すなわち、商標法第2条第3項第8号の使用行為をしたといえる。
そして、本件商標権者のウェブサイトの上記広告は、2021年5月21日に存在したといえるから、上記使用行為が要証期間においても提供されていたと推認できる。
さらに、使用商標を表示して電子書籍の閲覧に関する広告をしたのは、本件商標権者であるから、使用商標の使用者は、本件商標権者である。
イ NTTソルマーレ株式会社は、同社の運営する電子書籍配信ウェブサイトにおいて、本件商標権者が発行した電子書籍を閲覧させる際に、使用商標をブラウザ上の映像に付して提供したこと、すなわち、商標法第2条第3項第7号の使用行為をしたといえる。
そして、上記電子書籍配信ウェブサイトは2019年1月19日に存在したといえるから、上記使用行為が要証期間においても提供されていたと推認できる。
さらに、本件商標権者は、NTTソルマーレ株式会社から定期的に販売状況の報告を受けていることが推認でき、また、同社はNTTソルマーレ株式会社に対し、使用商標を使用することを許容しているといった主張に何ら不自然な点はないことから、本件商標権者とNTTソルマーレ株式会社との間で、本件商標について黙示の使用許諾があったと推認して差し支えない。
よって、NTTソルマーレ株式会社は、本件商標の通常使用権者といえる。
(3)使用役務について
ア 本件商標権者は、自社のウェブサイトにおいて、使用商標を表示して、電子書籍をブラウザビューアで閲覧することが可能である電子書籍配信ウェブサイトへのリンクを付した。
これは、本件商標権者による「電子出版物(電子書籍)の提供」に関する広告に当たる。
イ 通常使用権者(NTTソルマーレ株式会社)は、電子書籍配信ウェブサイトにおいて、使用商標をブラウザ上の映像に付し、ブラウザビューアで閲覧する方法により電子書籍を提供していたことからすると、通常使用権者により「電子出版物(電子書籍)の提供」がされたといえる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標権者又は通常使用権者は、要証期間に、日本国内において本件審判請求に係る指定役務である第41類「電子出版物の提供」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商標法第2条第3項第8号及び同項第7号に規定する使用行為により使用したといえる。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が本件審判請求に係る指定役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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