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商標取消審判

2021-300128

エッチエイシイ、エイチエイシイ

審判番号
2021-300128
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願2003-036569
登録番号
4765383
請求日
2021年02月24日
審決日
2022年12月05日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ティーディーケー-ミクロナス ゲーエムベーハー
  • 【請求人代理人】弁理士法人中川国際特許事務所
  • 【被請求人】シャープ 株式会社
  • 【被請求人代理人】堅田 裕之
審判長/審判官
  • 審判長 小松 里美
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 鈴木 雅也
分類
T132 .1 -Y (Y09)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第50条第2項、商標法第50条、商標法第50条第1項、商標法第1条、商標法第2条第3項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4765383号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第4765383号商標(以下「本件商標」という。)は、「HAC」を標準文字で書してなり、平成15年5月7日に登録出願され、第9類「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,電線及びケーブル,配電用又は制御用の機械器具」を指定商品として、同16年4月16日に設定登録され、同26年4月15日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判請求の登録日は、令和3年3月11日である。 また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年(2018年)3月11日ないし令和3年(2021年)3月10日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」(以下「本件審判の請求に係る指定商品」という。)について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書、令和3年4月27日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年6月29日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書1」という。)、同4年2月15日付け審判事件弁駁書(2)(以下「弁駁書2」という。)、及び同年7月26日付け審判事件弁駁書(3)(以下「弁駁書3」という。)において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、本件審判請求に係る指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 弁駁書1による弁駁の要旨 (1)乙第1号証ないし乙第4号証について ア 要旨 被請求人は、乙第1号証及びこれに関連する乙第2号証ないし乙第4号証を提示しながら、商品「液晶ディスプレイ」又は「電子応用機械器具及びその部品」に対して本件商標を使用したと主張するが、以下の理由により、定格銘板(乙1)における「HAC」の表示(以下「本件表示1」という。)は、表示主体との関わりについて立証がなく、出所識別表示でなく本件商標の使用に当たらず、本件審判請求に係る指定商品に対する使用でもないので、商標法第50条第2項に定める証明に当たらない。 イ 表示主体について 被請求人が示す定格銘板(乙1)には、独特の書体で最も目立つように示された商標「BUFFALO」や、事業者の名称「Buffalo Inc.」等が表示されているから、定格銘板(乙1)及び本件表示1の表示主体は、被請求人とは相違する請求外の第三者「Buffalo Inc.」であることは明白である。 商標法第50条第2項は、被請求人が商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる商標の使用について証明すべきことを定めるところ、被請求人は、単に自ら製造したとの主張をするにとどまり、被請求人自身と請求外の第三者「Buffalo Inc.」との関係を示す証拠を一切提出していないため、本件表示1が商標権者等によるものなのか立証がない。 そのため、被請求人は、請求外の第三者が本件表示1を表示したことを示しているにすぎない。 なお、被請求人は、電気用品安全法に基づき、経済産業大臣宛てに「電子応用機械器具」等を対象に「登録商標表示届出書」を届け出ていることをもって、被請求人が本件表示1を電子応用機械器具に使用している旨述べているとみられるが、届出自体は商標の使用とは無関係である。また、たとえ届け出た登録商標と同じ文字列が商品に表示されていても、それが他人の商品である以上、当然ながら届け出た者による商標の使用がそのまま導かれるものでもない。 したがって、被請求人は、本件表示1が商標権者等によってなされたことを証明していない。 ウ 出所識別表示でなく登録商標の使用に当たらないこと 商標法第50条の取消審判において、裁判例は「「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として同法2条3項、4項所定の行為がされることを要するものというべきである」(東京高等裁判所平成13年2月28日判決)と判示している。 つまり、自他商品を識別する機能を果たす出所識別表示と認識することができない表示を使用しても、商品についての登録商標の使用に当たらない。 以下、これを定格銘板(乙1)について具体的に検討する。 定格銘板(乙1)には「BUFFALO」、「Buffalo Inc.」、「HDMI」、「液晶ディスプレイ」、「DSP-W2360HVBKZ」、「VCCI」マーク、「PSE」マーク、「HAC」及び「>PET<」などの商標、標章、製品名、記号及びその他の文字列が多数表示されている。 ところで、一般に、電気製品の定格銘板は幅10cm以下のものが多いが、定格銘板(乙1)は書面上幅15cm程あり、拡大のうえ提出されたものと考えられ、当該定格銘板の原寸を考慮すれば、本件表示1は、製品の現物においては、わずか1mm前後の極めて小さな文字列と推測され、当該定格銘板の中で最も小さい文字列であり、その他のより大きな商標、標章、商品の名称、記号及びその他の文字列に完全に埋もれている。 また、乙第3号証(経済産業省のウェブサイトにおける「電気用品安全法」のガイドライン該当部写し)によると、特定電気用品以外の表示については、円で囲ったPSEマークに近接して届出事業者名やこれに代えて登録商標を表示する旨、説明されている。 定格銘板(乙1)においては、そのPSEマークに近接して、一見して製品を販売する事業者と理解できる「Buffalo Inc.」の表示が存在するため、かえって本件表示1が電気用品安全法上の届出事業者名に代えてなされた表示と理解することが需要者・取引者にとって困難である。しかも、本件表示1は通常の書体の欧文字3文字のみからなることから、需要者・取引者は何らかの記号としか認識することができない。 このような本件表示1を、需要者・取引者が自他商品を識別する機能を果たす出所識別表示と認識することは不可能であり、本件表示1は出所識別表示として機能しない。 したがって、出所識別表示に当たらない本件表示1の使用をしても、登録商標の使用があったとはいえない。 エ 本件審判の請求に係る指定商品に対する使用でないこと 登録商標の使用は、商標法上の商品又は役務との具体的関係において、指定商品に対して使用されていることによって証明される必要がある。 被請求人は、前述のとおり電気用品安全法に基づいて「電子応用機械器具」に「登録商標表示届出書」を届け出た旨述べるので、電気用品安全法の電気用品の区分「電子応用機械器具」について確認すると、これは商標法の「商品及び役務の区分」に基づく類似商品・役務審査基準による指定商品の表示「電子応用機械器具及びその部品」に対応する関係ではなく、より広範な製品を含んだ概念である。このことは、「経済産業省ウェブサイト・電気用品安全法・特定電気用品以外の電気用品(341品目)一覧」の「電子応用機械器具」の項目(甲2)に、例えば、「電子時計」、「インターホン」、「電子楽器」及び「ラジオ受信機」など、いずれも商標法に関する類似商品・役務審査基準の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれないものまで列挙されていることから明らかである。そして、経済産業省製品安全課によれば、独立動作可能で単独販売される汎用HDMI端子を有するモニターは、「テレビジョン受信機」として取り扱う旨、記載されている。(甲3)。なお、電子計算機及びその周辺機器については、電気用品安全法の対象として明記されていない(甲2、甲4の「電子応用機械器具」の項目)。 そして、定格銘板(乙1)においては、「HDMI」の表示があることから、液晶ディスプレイは汎用HDMI端子を有する構成である。つまり、液晶ディスプレイは、電気用品安全法の規制を受ける製品・商品「テレビジョン受信機」に該当し、そうであるからこそPSEマークが付されたものと考えられる。そうすると、仮に被請求人が自ら液晶ディスプレイを製造し、本件表示1をPSEマークとともに液晶ディスプレイに付したとしても、製品・商品「テレビジョン受信機」との関係で表示したにすぎない。つまり、被請求人が示した証拠においては、「HAC」の表示は、商標法上の商品においては単に商品「テレビジョン受信機」又は「電気通信機械器具」に対して使用されていることを意味する。 また、商標法上の商品「テレビジョン受信機」又は「電気通信機械器具」は、本件審判の請求に係る指定商品と同一ではない。 さらに、そもそも、本件表示1は前述のとおり、出所識別表示に当たらず、商標として機能していない。 したがって、本件表示1は、本件審判の請求に係る指定商品に対して使用された商標とみることはできない。 オ 小括 以上より、本件表示1について、表示主体が商標権者等であるか証明がなく、出所識別表示に当たらない表示であり本件商標の使用がなく、本件審判の請求に係る指定商品に対する使用でもないので、商標法第50条第2項に定める証明に当たらない。 (2)乙第5号証及び乙第6号証について ア 要旨 被請求人は、請求外のトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ社」という。)の自動車の商品カタログの写し(乙6)及びこれに関連する乙第5号証を提示しながら、商品「電子応用機械器具及びその部品」に対して本件商標を使用したと主張するが、以下の理由により、商品カタログ(乙6)における「ヒルスタートアシストコントロール(HAC)」の表示(以下「本件表示2」という。)は、表示主体との関わりについて立証がなく、出所識別表示でなく本件商標の使用に当たらず、本件審判の請求に係る指定商品に対する使用でもないので、商標法第50条第2項に定める証明に当たらない。 イ 表示主体について 被請求人が示す商品カタログ(乙6)はトヨタ社の製作に係るものであるから、本件表示2の表示主体はトヨタ社である。 商標法第50条第2項は、被請求人が商標権者等のいずれかによる商標の使用について証明すべきことを定めるところ、被請求人は、単に請求外のトヨタ社が通常使用権者であると述べるにとどまり、トヨタ社に対して使用許諾をしたことを示す証拠を一切提出していないため、本件表示2が商標権者等によるものなのか立証がない。そのため、被請求人は、請求外の第三者が本件表示2を表示したことを示したにすぎない。 したがって、被請求人は、本件表示2が商標権者等によってなされたことを証明していない。 ウ 出所識別表示でなく登録商標の使用に当たらないこと 商品カタログ(乙6)において、本件表示2は、「トヨタ ランドクルーザープラド主要装備一覧表」及び「共通標準装備」の欄に、ヒルスタートアシストコントロールの略語として、数ある仕様の項目の一つとして記載されているにすぎない。商品カタログ(乙6)中に他の仕様を示す多数の文字列と同書同大で普通に用いられる方法で列記された項目を、需要者・取引者が自他商品を識別する機能を果たす出所識別表示と認識することは不可能であり、本件表示2は出所識別表示として機能しない。 したがって、出所識別表示に当たらない本件表示2の使用をしても、本件商標の使用があったとはいえない。 エ 本件審判の請求に係る指定商品に対する使用でないこと 「商品」とは、一般に、「商取引の目的たり得るべき物」と理解され(甲5)、裁判例は「商標法50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければなら」ない(東京高等裁判所平成13年2月28日判決)と判示している。 そして、被請求人の主張する「自動車用坂道発進システム」が、コンピュータが組み込まれた装備であるとしても、当該システムは自動車の一機能にすぎず、当該システムは商取引の目的たり得るべき物、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物ではない。つまり、当該システムは商標法上の商品ではない。また、商品カタログ(乙6)は、商品「自動車」を商取引の対象とするものである。 このことから、本件表示2は、そもそも商品に対して使用されているものではないか、商取引の対象である「自動車」に対して使用されたものである。 さらに、そもそも、本件表示2は前述のとおり、出所識別表示に当たらず、商標として機能していない。 したがって、本件表示2に関する装備に、コンピュータが組み込まれていることを理由に、本件表示2が本件審判の請求に係る指定商品に対して使用された商標とみることはできない。 オ 小括 以上より、本件表示2について、表示主体が商標権者等であるか証明がなく、出所識別表示に当たらない表示であり本件商標の使用がなく、本件審判の請求に係る指定商品に対する使用でもないので、商標法第50条第2項に定める証明に当たらない。 (3)結論 以上より、被請求人による本件表示1に係る証拠(乙1~乙4)及び本件表示2に係る証拠(乙5、乙6)のいずれによっても商標法第50条第2項に定める本件商標の使用の証明にならないから、同条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る指定商品についての登録は取り消されるべきである。 3 弁駁書2による弁駁の要旨 (1)被請求人と株式会社バッファロー(以下「バッファロー社」という。)との関係に関する立証責任について 被請求人は、商標権の使用も含め被請求人とバッファロー社がどのような取決めを行っているか等に関しては、被請求人と株式会社バッファローの二社間での守秘義務等の観点から提示が困難であるため、使用証拠の提出は差し控える旨を述べている。 被請求人が提示した乙第1号証は、バッファロー社の販売する液晶ディスプレイに関する定格銘板であるため、商標法第50条第2項の規定から、当然に被請求人はバッファロー社との関係の立証を要する。また、守秘義務があれば、被請求人は商標法第50条第2項の立証を免れることができるとは定められていない。 そうすると、被請求人はバッファロー社の製品を証拠として提示しながら、バッファロー社との関係性を証明しなかったのであるから、立証責任を果たさなかった不利益は被請求人に課されるべきである。 (2)電気用品安全法について 被請求人は、電気用品安全法に基づいて定格銘板上のPSEマークの近傍に表示された登録商標は、届出事業者である商標権者による商標の使用であって、届出事業者である商標権者の出所を表示する機能を有していることは電気用品安全法の観点からは明白である等述べている。 ところで、電気用品安全法施行規則は、届出事業者の名称に代えて登録商標を表示することができる旨を定めているが、その届出主体は商標権者のみならず、専用使用権者、通常使用権者もなり得る。そうである以上、被請求人が電気用品安全法に基づいて登録商標の表示の届出を行ったこと、バッファロー社の製品に本件商標と同じ文字列が付されていたことの二点をもって、被請求人が本件商標を使用したといえるはずがなく、被請求人が、商標法第50条第2項に定める証明をしていないことは明らかである。 なお、被請求人は、定格銘板(乙1)上の「BUFFALO」又は「Buffalo Inc.」はあくまでも定格銘板の表示内容の一つではあるが、当該表示は定格銘板の届出事業者の表示運用の本来の趣旨とは無関係なものと述べているが、客観的に見て事業主体であるバッファロー社を指し示す定格銘板上の表示内容が、なぜ届出事業者の表示としては無関係になるのか、被請求人は根拠を示していない。 また、被請求人は、定格銘板(乙1)への使用が、商標権者による商標の使用とは見なされず、登録商標が取り消されてしまえば、商標権者が電気用品安全法を遵守するために使用商標を登録し、経済産業省に登録商標の届出を行い、適切に使用しているにも拘わらず、その使用が商標法の観点からは「商標の使用ではない」と判断されることと同義であり、電気用品安全法の運用そのものが否定されることになりかねず、関係事業者の間において大きな混乱を招く懸念がある旨も述べているが、これは論点のすり替えにすぎない。提出した使用証拠が被請求人とは異なる事業者によって製造・販売される製品に関するときに、被請求人とその異なる事業者との関係が適切に立証されればよく、関係事業者間で混乱は生じない。 (3)乙第9号証について 被請求人は、本件商標が使用された日付を補足する証拠として提出する製品試験のレポートの写し(乙9)に、被請求人の奈良工場の名称及び住所が記載されている旨を述べているが、そもそも乙第9号証は中国国内で発行された文書とみられ、日本国内における使用を証明すべき商標法第50条第2項の趣旨に鑑みれば無関係である。 また、被請求人が使用証拠として提出した本件定格銘板(乙1)には「MADE IN CHINA」と明記されているにもかかわらず、乙第9号証には被請求人の日本の奈良工場の名称及び住所が記載されていると述べており、辻棲が合わない。 (4)乙第6号証、乙第11号証ないし乙第12号証等について 被請求人は、トヨタ社と締結した本件商標の通常使用権許諾契約書の写し(乙12)を提出し、当該契約において、本件商標の通常使用権者(トヨタ社)が、許諾対象商品を「自動車用坂道発進を制御する電子応用機械器具」と規定しているから、トヨタ社の使用商品が「電子応用機械器具」であることが明確になった旨も述べているが、「商標法50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければなら」ない(東京高等裁判所平成13年2月28日判決)ものである。そうすると、いかなる商品を対象に商標が使用されているのかは、実際の市場における商品の性質・流通の態様等に基づいて認定されるべきである。また、商標法の目的は「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」(商標法第1条)である。つまり、商標が使用された対象商品は、市場から離れて需要者不在で、商標権者・通常使用権者間の契約書の文言のみによって認定されるべきではない。 したがって、被請求人の提出する証拠によって、通常使用権者が本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる商品について商標を使用しているとはいえない。 (5)付言 なお、請求人は、改めて、出所識別表示に当たらない表示をしても、登録商標の使用とはいえない点について主張する。商標法第50条の取消審判において「「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として同法2条3項、4項所定の行為がされることを要するものというべきである」(東京高等裁判所平成13年2月28日判決)とされている。 定格銘板(乙1)における「HAC」の文字列は、現物においては、わずか1mm前後の極めて小さな文字列と推測され、当該定格銘板の中で最も小さい文字列であり、その他のより大きな商標、標章、商品の名称、記号及びその他の文字列に完全に埋もれており、識別表示として認識することが困難である。したがって、当該文字列は出所識別表示に当たらない。 (6)結語 以上より、被請求人のいずれの証拠によっても商標法第50条第2項に定める登録商標の使用の証明にならないから、同条第1項の規定により、本件審判請求に係る指定商品についての登録は取り消されるべきである。 4 弁駁書3による弁駁の要旨 (1)乙第13号証が通常使用権の根拠とならないこと 被請求人は、商標権者とバッファロー社との間で取り交わした、2020年8月25日付けの納品書及び受領書(乙13)を提示しながら、当該証拠は被請求人とバッファロー社の間で正当な業務上の取引があったことを示すものであり、本件商標が付された定格銘板が貼付された商品を被請求人がバッファロー社に供給しているから、バッファロー社は本件商標の実質的な通常使用権者である旨述べているが、当該納品書及び受領書をもってバッファロー社が本件商標についての通常使用権を有するとはいえない。もし、納品書が存在すればその発行者から受領者に対して通常使用権を許諾したことが一般に認められるのであれば、商品の譲渡を伴うあらゆる商取引において商品が納品されることをもって通常使用権の存在を認めることを意味するにほかならず、明らかに商慣行に合致せず不当である。一方、本件の場合では通常使用権の許諾が認められるとするのであれば、なぜこの納品書及び受領書(乙13)に限り被請求人がバッファロー社に通常使用権を許諾した根拠となるのか不明である。 (3)乙第13号証等が日本国内での本件商標の使用の根拠とならないこと ア 乙第13号証の取引が日本国外で行われたと推認されること 納品書及び受領書(乙13)は金額がドル建てで表示されており、また、消費税の記載がない。国内企業が消費税の課税対象となる国内取引を行う際、為替リスクの生じない円建てとするのが通常の商慣行であり、かつ、納品書等に消費税額を記載することが一般的である。例えば、国税庁・タックスアンサーNo.6625「請求書等の記載事項や発行のしかた[令和2年4月1日現在法令等]」(甲6)においても、「取引の相手方から交付を受ける、請求書、納品書等」には、「○4(当審注:「○4」は「4」を丸で囲ったもの)税率ごとに区分して合計した税込対価の額」が記載事項であると明記されている。そうである以上、ドル建てで消費税の記載のない当該納品書及び受領書は、これに関する取引が日本国内で行われたのか極めて疑わしく、むしろ日本国外で行われたことを推認させる。 イ 乙第9号証及び乙第15号証との関係 製品試験のレポートの写し(乙9、乙15)は日本国外で発行されたものとみられる。ところで、定格銘板(乙1)には、「MADE IN CHINA」と記載されているにもかかわらず、被請求人は、当該製品試験のレポートに日本国内の住所の記載を含まれることをもって、「乙第1号証の定格銘板との関係を明確にする」と述べているが、仮に製品が日本国内で製造されたのであれば、当該定格銘板には日本製と表記されたはずであるし、国内企業であるバッファロー社と被請求人との間で消費税の記載のないドル建ての納品書が交わされたとは考えられない。つまり、被請求人の一連の主張は事実関係に矛盾が生じている。 ウ 小括 結局、納品書及び受領書(乙13)に係る取引が日本国外で行われたものであると推認されること、製品試験のレポート(乙9、乙15)が日本国外で発行されたものとみられることを総合的に考慮すれば、被請求人が補充した証拠は日本国外における諸事情を指摘するにとどまるものである。 商標法第50条第2項は、被請求人が日本国内において登録商標を使用していることを証明すべきと定めているのであり、日本国外の事情は日本国内における登録商標の使用とは無関係である。 したがって、補充された証拠は被請求人等が日本国内における本件商標の使用をしたことを何ら裏付けるものではない。 (4)結語 以上のとおり、被請求人は再三の機会を与えられたにもかかわらず、被請求人がバッファロー社に通常使用権を許諾したことについて合理的な立証を尽くさず、また、補充された証拠が日本国外における事情を指摘するにとどまることから、被請求人が日本国内における本件商標の使用を証明しなかったことは明白である。 よって、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る指定商品についての登録は取り消されるべきである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、令和3年9月3日付け審判事件回答書(以下「回答書1」という。)、及び同4年5月19日付け審判事件回答書(以下「回答書2」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。 1 答弁の要旨 (1)乙第1号証は、被請求人が製造し、第三者に供給している形名DSP-W2360HVBKZの液晶ディスプレイの定格銘板の写真である。 電気用品安全法の認証を示すPSEマークの下部に、商標「HAC」が使用されていることが確認できる。 (2)乙第2号証は、被請求人が製造する商品の供給先のウェブサイトで、形名DSP-W2360HVBKZの液晶ディスプレイを紹介している記事の写しであり、当該記事には、「発売時期:2020年7月」と記載されている。 したがって、商標「HAC」は2020年7月以降に販売されている上記商品「液晶ディスプレイ」に使用されていることは明らかである。 (3)定格銘板における本件商標の位置付けについて説明する。 電気用品の製造、輸入及び販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とした法令である電気用品安全法の規定に基づき、電気用品の製造又は輸入の事業を行う事業者は、経済産業大臣に所定の届出を行い、届出を行った電気用品を技術上の基準に適合するようにする義務があり、当該義務を履行した場合、PSEマークを表示することができる。 さらに、当該PSEマークの近傍には、届出事業者名を表示する義務があるが、表示する届出事業者名の代わりに商標を表示しても良く、商標を使用する場合は登録商標で届けておく必要がある。 乙第3号証は、インターネットで検索した経済産業省の電気用品安全法に関する届出事業者名の運用を説明した箇所の写しである。 被請求人は実際に、社名に代わる表示として本件商標を登録商標として経済産業大臣宛てに届出を行っており、乙第4号証は、被請求人が、「電子応用機械器具」について、本件商標を「登録商標」として、経済産業大臣宛てに届出を行った平成13年7月6日付け「登録商標表示届出書」の写しである。 したがって、被請求人が提出した乙第1号証のマークの近傍に表示されている商標「HAC」は、被請求人が製造する電子応用機械器具に使用している登録商標であることは明らかである。 (4)さらに、被請求人は、通常使用権者の商品に搭載された「自動車用坂道発進システム」に対し、本件商標の使用を許諾している。 「自動車用坂道発進システム」は、自動車用の装置ではあるが、センサーで車両の停止を検知し、坂道の傾きを算出して制御するためのコンピュータが組み込まれていることから、電子応用機械器具であることは明らかである。 乙第5号証は、通常使用権者のウェブサイトにおいて、当該通常使用権者の商品に搭載された「自動車用坂道発進システム」である「ヒルスタートアシストコントロール」の説明ページの写しである。 (5)乙第6号証は、2020年10月版の上記通常使用権者の商品カタログの写しであり、「主要装備一覧表」の「予防安全」の欄に、「ヒルスタートアシストコントロール(HAC)」の記載がある。当該カタログの裏表紙には、「(このカタログの内容は、‘20年10月現在のもの)」という記載も確認できる。 (6)ついては、被請求人又は通常使用権者が本件商標を本件審判の請求に係る指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」について要証期間に使用していることは明白である。 2 回答書1の要旨 (1)乙第1号証ないし乙第4号証について、商品の定格銘板へのPSEマークの近傍に付された登録商標は、電気用品安全法の義務に基づきその届出事業者の名称に代わるものであって、届出事業者である登録商標の権利者の出所を明確に表示するものである。電気用品安全法では製造又は輸入する事業者の商標などをPSEマークに近接して表示することを義務づけている。PSEマークの近傍に付された商標が届出事業者の正式名称又は承認を受けた略称ではない場合は、届出事業者の登録商標であることは電気用品安全法の運用の定めるところであり、当該法令に基づき、経済産業省当局はPSEマークに近接して表示される届出された登録商標から製造・輸入事業者を識別している。実際に、定格銘板が付された登録商標をJ-Plat-Pat等のデータベースで検索すれば、容易に商標権者が特定でき、当該商標権者が、定格銘板が付された商品の製造又は輸入する事業者であることが把握できる。 さらに、定格銘板(乙1)へのPSEマークの近傍に付された登録商標と、登録商標表示届出書(乙4)の組合せは、登録商標の権利者と定格銘板が付される商品とが直接結びつけられている事実を明確に示すものである。 したがって、乙第1号証及び乙第4号証は、被請求人が電気用品安全法に基づき登録商標を使用している証拠である。 そして、本件商標を商標権者が要証期間に日本国内において使用していることを証明するために乙第2号証を提出した。 商標権の使用も含め被請求人とバッファロー社がどのような取決めを行っているか等に関しては、被請求人とバッファロー社の二社間での守秘義務等の観点から提示が困難であるため、証拠の提出は差し控えるが、電気用品安全法に基づいて定格銘板上のPSEマークの近傍に表示された登録商標は、届出事業者である商標権者による商標の使用であって、届出事業者である商標権者の出所を表示する機能を有していることは電気用品安全法の観点から明白である。定格銘板(乙1)上の、「BUFFALO」又は「Buffalo Inc.」の表示はあくまでも定格銘板の表示内容の一つではあるが、当該表示は当該定格銘板の届出事業者の表示運用の本来の主旨とは無関係なものであり、電気用品安全法においては、定格銘板上のPSEマークの近傍に表示された登録商標こそが、商標権者の出所を表示している。 なお、登録商標を届け出ることによって、届出事業者の名称に代えて登録商標を表示させる運用が認められている法令は、電気用品安全法のみにとどまらず、「液化石油ガス器具等の技術上の基準等に関する省令」、「浄化槽法」、「計量法」等、多数存在する。かかる法令の一例を示すため、被請求人は、インターネットで検索した経済産業省の「消費生活用製品安全法」に関する運用を説明した箇所の写し(乙8)を新たな証拠として提出する。 もし、定格銘板への登録商標の使用が商標権者による商標の使用とは見なされず、登録商標が取り消されれば、商標権者が電気用品安全法を遵守するために使用商標を登録し、経済産業省に登録商標の届出を行い、適切に使用しているにも拘わらず、その使用が商標法の観点からは「商標の使用ではない」と判断されたことと同義であるから、電気用品安全法の運用そのものを否定することになりかねない。さらに、電気用品安全法と同様に、届出事業者の名称に代えて登録商標を表示させる運用が認められている法令等の運用が全て否定されることを意味し、当該運用を根底から覆すことになり、関係事業者の間において大きな混乱を招く。 (2)被請求人は、バッファロー社との契約書等の提出は差し控えるが、定格銘板(乙1)へのPSEマークの近傍に付された登録商標と、登録商標表示届出書(乙4)の組合せをもって、商標権者と定格銘板が付される商品とが関連付けられ、商標権者が商標を使用していることを立証している旨、改めて主張する。 なお、本件商標が使用された日付を補足する証拠として、被請求人は、2020年6月4日付け製品試験のレポートの写し(乙9)を新たな使用証拠として提出する。当該レポートには、乙第1号証に記載された商品「液晶ディスプレイ」の形名DSP-W2360HVBKZ用の定格銘板と、被請求人の奈良工場の名称及び住所(乙10)が記載されている。当該資料からも、2020年6月に、本件商標が使用された定格銘板を付した商品の製造に被請求人が関与していることは明白である。 (3)乙第4号証及び乙第5号証に関し、被請求人は、トヨタ社のカタログの裏表紙の日付部分を拡大したものと、被請求人がトヨタ社と締結した本件商標の通常使用権許諾契約書の写しを新たに提出する(乙11、乙12)。 当該契約において、本件商標の通常使用権者(トヨタ社)は、許諾対象商品を「自動車用坂道発進を制御する電子応用機械器具」と規定しているから、トヨタ社の商品は「電子応用機械器具」であることも明確になった。 (4)請求人による弁駁書1の主張は実情とは異なっており、請求人は電気用品安全法の主旨を理解していないと推察される。 (5)弁駁書1で請求人が主張する乙第1号証ないし乙第4号証については、定格銘板上の「BUFFALO」又は「Buffalo Inc.」の表示はあくまでも定格銘板の表示内容の一つであり、定格銘板へのPSEマークの近傍に付された登録商標は、届出事業者である商標権者の出所を明確に表示しており、登録商標の商標権者が商標を使用していることを立証している。 電気用品安全法に基づく登録商標の届出と、届出商標の使用は無関係ではなく、上記法令の運用に基づき直接関連を有するものであって、届出商標の定格銘板への使用は、当該商品の出所を識別するためのものであり、登録商標の使用に相当する。 そして、定格銘板(乙1)を付した商品は、定格銘板上にも明確に記載されているとおり、「液晶ディスプレイ」であり、「電子応用機械器具」であることは明らかである。 一方で、乙第5号証及び乙第6号証については、発行の日付が2020年であることが確認可能であり、かつ、商標使用許諾契約書の存在をもって、本件商標が、通常使用権者によって、「自動車用坂道発進を制御する電子応用機械器具」に使用されていることは明白である。 3 回答書2の要旨 (1)乙第2号証について、被請求人は、被請求人とバッファロー社との間で取り交わした、2020年8月25日付けの本件商標を使用した商品の納品書及び受領書の写し(乙13)を新たな使用証拠として提出する。当該証拠に記載されている商品の「機種名」欄には商品の形名「DSP-W2360HVBKZ」が記載されており、これまでに被請求人が提出した証拠(乙1、乙2)の機種名と一致している。また、当該証拠の「品名」欄には、「23.6型PCモニター」と記載されているが、「PCモニター」の語は、市場においては一般的に、「液晶ディスプレイ」と同義語として扱われており、「液晶ディスプレイ」とは一般の商取引において使い分けをすることなく、実質的に同じ商品を指す語であることは明白であるから(乙14)、乙第13号証に記載の品名「23.6型PCモニター」と、定格銘板(乙1)の品名「液晶ディスプレイ」及び商品名「23.6型ワイド液晶ディスプレイ」(乙2)との品名の表現の違いは、証拠の有効性には何ら影響を与えるものではない。 当該証拠により、被請求人が2020年8月25日の時点で本件商標を使用した定格銘板を付した商品をバッファロー社に供給していたことは明らかになった。当該証拠は被請求人とバッファロー社の間で正当な業務上の取引があったことを示すものであり、本件商標が付された定格銘板が貼付された商品を被請求人がバッファロー社に供給しているのであるから、バッファロー社は本件商標の実質的な通常使用権者である。 (2)乙第9号証について、被請求人は、乙第9号証中において、定格銘板を付した商品の製造に被請求人が関与していることが記載された部分を着色した資料を新たな証拠(乙15)として提出する。 乙第9号証は、被請求人の商品である「DSP-W2360HVBKZ」の、電気用品安全法に関する製品試験の試験結果であり、受験した製品サンプルについて、電気製品に関する安全規格(感電、火災、熱、機械的危険等に対する基準)に適合していることを証明するものである。 乙第9号証の1葉目に記載された、「Test Verification of Conformity」の訳は「適合性試験証明書」、「Relevant Standard(s):IEC62368-1&National Deviation for Japan-62368-1(H30)&J3000(H25)」の訳は「該当規格:IEC62368-1:2014及び日本独自規格 J62368-1(平成30年)及びJ3000(平成25年)」となる。また、乙第9号証の6葉目に記載された、「Name and address of factory(ies)」の訳は「工場名及び住所」であり、被請求人の商品である形名「DSP-W2360HVBKZ」の製品の製造・開発に関わる工場が、被請求人の奈良工場であることが記載されている。 なお、被請求人が今回提出した乙第13号証によって、本件商標を使用した定格銘板を付した商品をバッファロー社に供給していたことは明らかであることから、乙第15号証は、被請求人の奈良工場が、電気用品安全法の規定に基づいた製品試験の証明書において、製造・開発に関わる工場として記載されていることを示すのみで、定格銘板(乙1)との関係を明確にする資料としては十分であり、乙第9号証の他の箇所の翻訳及び説明を行うことは不要である。 (3)請求人は商標法第50条第2項の規定について言及しているが、乙第13号証によって、被請求人とバッファロー社の間で正当な業務上の取引があったことは明らかになった。同条第2項によれば、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明する必要があるが、商標の使用について、実際に、商標権者と専用使用権者又は通常使用権者がどのような取り決めを交わしているか等を詳細に提示する義務まで負うものではない。 (4)電気用品安全法施行規則は、届出事業者の名称に代えて登録商標を表示できる旨を定めているが、請求人は、その届出主体は商標権者のみならず、専用使用権者、通常使用権者もなり得る旨を主張しているが、登録商標表示届出書(乙4)の存在により、被請求人が届出事業者であることは明白である。定格銘板(乙1)上のPSEマークの近傍に付された登録商標と、登録商標表示届出書(乙4)の組合せは、商標権者と定格銘板が付される商品が、直接結びつけられている事実を明確に示すものであり、今回提出した乙第13号証により、被請求人が本件商標を貼付した定格銘板を使用して製造した商品をバッファロー社に供給したという主張が補強された。 (5)請求人は、定格銘板(乙1)における「HAC」の文字は、現物においては、わずか1mm前後の極めて小さな文字列と推察され、本件定格銘板の中でも最も小さい文字列であり、その他のより大きな商標、標章、商品の名称、記号及びその他の文字列に完全に埋もれており、識別表示として認識することが困難であるから、当該文字列は出所識別表示に当たらない表示である旨を主張しているが、定格銘板はそもそも、慣習上、商品の外観に影響を与える程大きい面積のものが商品に貼付されることはないから、定格銘板の記載内容も各語が大きく表示されることはない。 既に述べたとおり、電気用品安全法に基づいて定格銘板上のPSEマークの近傍に表示された登録商標は、届出事業者である商標権者による商標の使用であって、届出事業者である商標権者の出所を表示する機能を有していることは電気用品安全法の運用の観点からは明白である。さらに、商品における定格銘板の扱いについては、本来概観に影響を与える程の大きさは求められていない前提で、届出事業者である商標権者の出所を表示する語として登録商標の使用が推奨され、認められているのであるから、登録商標の文字の大小で商標の出所を標識する機能を有するかどうかを判断している請求人の主張は、商慣習を無視したものである。 (6)今回提出した使用証拠及び上記説明により、被請求人又は通常使用権者が本件商標を本件審判請求に係る指定商品について要証期間に使用していることは明白である。 第4 当審の判断 1 認定事実 被請求人の主張、同人が提出した証拠及び職権調査によれば、以下のとおりである。 (1)納品書及び受領書(乙13)について 乙第13号証は、上段に納品書、下段に受領書が記載された書面であり、上段の納品書は、2020年8月25日付けの東京都港区所在のシャープ株式会社からバッファロー社宛て、また、下段の受領書は、同日付けのバッファロー社の受領印がある、同所在のシャープ株式会社を宛先とするものである。なお、上記シャープ株式会社の住所は、シャープ株式会社のホームページにある「会社概要」(乙10)に記載された東京の事業所の住所である。 そして、当該納品書及び受領書(乙13)には、いずれも「納品日」、「品名」、「機種名」、「摘要」、「数量」、「単価(US$)」、「金額(US$)」の欄で構成された表があり、それぞれ順に「8/25」、「23.6型 PCモニター」、「DSP-W2360HVBKZ(A2LLM241B)」、「BB20200622-01」、「480」の記載がある。なお、「単価(US$)」及び「金額(US$)」に該当する箇所は墨消しされている。 (2)定格銘板について(乙1、乙9) ア 乙第1号証は、定格銘板の写真であるところ、斜字体風にデザインされた「BUFFALO」の文字、「液晶ディスプレイ」、「DSP-W2360HVBKZ」の各文字の記載、及び「HDMI」、「Buffalo Inc.」、「MADE IN CHINA」等の文字の記載、さらに「PSEマーク」の表示の下に隣接して「HAC」の文字の記載がある。 イ 乙第9号証は、製品試験のレポートとされ、その1葉目に、上部から、「Test Verification of Conformity」(「適合性試験証明書」)、「Product:液晶ディスプレイ」、「Model(s):・・・DSP-W2360HVBKZ」、「Date:2020.6.4」の記載がある。 また、4葉目には、乙第1号証の定格銘板とほぼ同じ内容の表示が記載されている。 さらに、6葉目には、「Name and address of factory(ies)」(工場名及び住所)として、「2.Name:SHARP CORPORATI0N NARA PLANT/Address:・・・/・・・YAMATOKORIYAMA-SHI,NARA 639-1186 JAPAN.」(1.の欄は墨消しされている。)の記載がある。なお、この住所は、シャープ株式会社の奈良事業所の住所である(乙10)。 (3)「HAC」の登録商標表示届出書について(乙4) 乙第4号証は、大阪市阿倍野区所在のシャープ株式会社から経済産業大臣に宛てた、平成13年7月6日付けの「登録商標表示届出書」であり、「電気用品安全法施行規則第17条第3項の規定により届出事業者の氏名又は名称に代えて登録商標を表示することについて次のとおり届け出ます。」の記載の下、「電気用品の区分」、「登録商標に代える事項」、「登録商標」の欄で構成された表があり、「電気用品の区分」の欄には「4.電子応用機械器具」、「登録商標に代える事項」の欄には「名称」、「登録商標」の欄には「HAC」の記載がある。 なお、上記「大阪市阿倍野区」の住所は、本件商標の商標登録原簿によれば、本件商標権者(シャープ株式会社)の旧住所である(職権調査)。 (4)バッファロー社のウェブサイトについて(乙2) 乙第2号証は、バッファロー社のウェブサイトにおける液晶ディスプレイの商品紹介のページであり、「DSP-W2360HVBKZ:法人向け液晶ディスプレイ|バッファロー」、斜字体風にデザインされた「BUFFALO」の文字、「発売時期:2020年7月」の記載の下、商品の画像とともに、「DSP-W2360シリーズ」、「DSP-W2360HVBKZ」、「23,980円(税抜21,800円)」の記載、及び「特長」として、「23.6型ワイド液晶ディスプレイ」の記載がある。 (5)以上の(1)ないし(4)から、以下の事実が認められる。 バッファロー社は、自身のウェブサイトに、掲載時期は不明であるが、発売時期を2020年7月とする法人向けの23.6型液晶ディスプレイ(機種名「DSP-W2360HVBKZ」)を掲載した(乙2)。 一方、シャープ株式会社(東京の事業所)は、2020年8月25日にバッファロー社に対して、機種名が「DSP-W2360HVBKZ」である「23.6型 PCモニター」を480台販売し、納品した(乙13)。 そして、上記2020年8月25日に販売された、機種名「DSP-W2360HVBKZ」の「23.6型 PCモニター」は、上記バッファロー社のウェブサイトに掲載した23.6型液晶ディスプレイと、品名の表記が「モニター」と「ディスプレイ」と異なるものの、両者は同義であり(広辞苑第7版)、機種名、サイズ(23.6型)について共通するから、同じ商品である。 さらに、機種名「DSP-W2360HVBKZ」の液晶ディスプレイ(以下「使用商品」という。)の定格銘板(乙1、乙9)には、「PSEマーク」の下に隣接して「HAC」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されているところ、当該「HAC」の表示は、シャープ株式会社が電気用品安全法に基づき、電子応用機械器具等の電気用品について、シャープ株式会社の社名に代えて、「HAC」の登録商標を使用する旨届出を行ったことによるものである(乙4)。 加えて、2020年6月4日付けの適合性試験証明書(乙9)において、上記(2)イのとおり記載されていることからすれば、使用商品がシャープ株式会社の奈良事業所において製造されたものであるといった被請求人の主張を否定する理由は見当たらない。 そうすると、シャープ株式会社は、2020年6月頃に同社の奈良事業所において製造した使用商品の定格銘板に使用商標を付し、同社(東京の事業所)は、当該使用商品を少なくとも同年8月25日にバッファロー社に対し販売し、納品したものといえる。 2 判断 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は「HAC」を標準文字で書してなるものである。 一方、定格銘板(乙1、乙9)のPSEマークは、電気用品安全法に基づき基準に適合し、検査等を実施した電気用品について付す記号であって、その下に表示した「HAC」の文字部分が事業者の氏名又は名称に代えて登録商標を表示した部分であるから、使用商標は「HAC」の文字である。 そうすると、本件商標と使用商標は、いずれも「HAC」の文字からなり、つづりが共通するから、使用商標は、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標であると認められる。 (2)使用商品について 使用商品は、「液晶ディスプレイ」であるから、本件審判の請求に係る指定商品である第9類「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品であると認められる。 (3)使用者、使用時期及び使用行為について 使用商標を付した使用商品は、本件商標権者により製造されたものであり、同人が2020年8月25日に我が国の顧客に対し販売、納品したものであるから、本件商標の使用者は本件商標権者であり、要証期間に使用商品を日本国内で引き渡したことが認められる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)より、本件商標権者は、要証期間に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品(第9類「電子応用機械器具及びその部品」)の範ちゅうに含まれる商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して引き渡した(商標法第2条第3項第2号に該当。)というのが相当である。 3 請求人の主張について 請求人は、納品書及び受領書(乙13)に係る取引が日本国外で行われたものであると推認され、被請求人が補充した証拠は日本国外における諸事情を指摘するにとどまる旨を主張するが、本件商標権者とバッファロー社とが、商品の代金をどの通貨で行うかは両当事者間の契約等に基づくものであって、納品書及び受領書(乙13)の金額がドル建てで表示されていることや消費税の記載がないことをもって、上記取引が日本国外で行われたと認定することはできない。 また、請求人は、定格銘板(乙1)には、「MADE IN CHINA」と記載されているにもかかわらず、製品試験のレポート(乙9)に日本国内の住所の記載を含まれており、矛盾が生じている旨も主張するが、製品試験のレポート(乙9)には、工場名及び住所の欄にシャープ社の奈良工場の住所だけでなく、他の工場(墨消しとなっている)も記載されており、商品を日本と中国とで分業して生産するようなことは一般的に行われているといえるから、使用商品について、定格銘板(乙1)に「MADE IN CHINA」と記載されていることと、製品試験のレポート(乙9)に本件商標権者の奈良工場が記載されていることとが矛盾を生じているとまではいうことができない。 さらに、請求人は、定格銘板(乙1)における使用商標の表示は、現物においては、わずか1mm前後の極めて小さな文字列と推測され、当該定格銘板の中で最も小さい文字列であり、その他のより大きな商標、標章、商品の名称、記号及びその他の文字列に完全に埋もれており、識別表示として認識することが困難であるから出所識別表示に当たらない旨も主張するが、定格銘板(乙1)において、使用商標はPSEマークに隣接して「HAC」と表示されているものであり、電気用品安全法に、PSEマークに近接して表示する必要がある届出事業者名について、届出を行った登録商標も表示できる旨が規定されていること(乙3)に鑑みれば、上記定格銘板(乙1、乙9)において、文字の大きさが小さいものであるとしても、「PSEマーク」に隣接して表示されているのが商品の事業者を示す商標であるといえ、文字が小さいから出所識別表示に当たらないということはできない。 よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 4 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標権者が本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品について、本件商標(社会通念上同一を含む。)の使用をしていたことを証明したというべきである。 したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-300128

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