商標取消審判
2024-300706
ミニスダジオ、スタジオ
- 審判番号
- 2024-300706
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1983-107152
- 登録番号
- 2477508
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年08月12日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】アイピーエックス コーポレイション
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】中村 稔
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】藤倉 大作
- 【請求人代理人】相良 由里子
- 【請求人代理人】石戸 孝
- 【請求人代理人】松下 友哉
- 【被請求人】テイアツク 株式会社
- 【被請求人代理人】弁理士法人栄光事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 正和
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T132 .1 -Z (Y09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第2477508号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第2477508号商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第2477508号商標(以下「本件商標」という。)は、「MINISTUDIO」の文字を書してなり、昭和58年11月11日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年11月30日に設定登録され、その後、同15年4月2日に指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」並びに第7類、第8類、第10類から第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同24年10月16日に第9類のみについて存続期間の更新登録がされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年10月17日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同3年(2021年)10月17日から同6年(2024年)10月16日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「MiNiSTUDIO CREATOR US-42」及び「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32」について
被請求人は、「MiNiSTUDIO CREATOR US-42」及び「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32」(以下、この「第2 請求人の主張」において「本件機器」という。)と、「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる「コンピュータインターフェース」とが商品概念において適合する旨を主張している。
しかしながら、これら商品は、「家庭用放送機器」及び「オーディオインターフェース」と称して販売しているところ、「家庭用放送機器」と用途及び機能を同じにする「放送用機械器具」と「オーディオインターフェース」は、いずれも「電気通信機械器具」に属する商品である(甲2、甲3)。
実際、本件機器は、インターネットを用いた放送に使用される商品であり、かつ、需要者はインターネット放送を行っている者やこれを予定する者であり、放送を行うことを目的として商品を購入する以上、本件機器の商品概念は、「電気通信機械器具」のそれと適合するものである。
また、「オーディオインターフェイス」とは、「マイクや楽器をPCに繋ぐための機器です。PCに音声を取り込み、音楽制作ソフトを介して録音ができるため、PCでの音楽制作には欠かせない存在です。また、取り込んだ音声やPCのサウンドを高音質に再生することが可能です。」と定義付けられているところ(甲4)、これは、まさに本件機器の性能と共通している。
そして、電気通信機械器具に属するこれら商品と、本件機器との間に、機能や用途における何らの差異も見いだすことができない以上、本件機器は、いずれも「電気通信機械器具」に属する商品であるというべきである。
この点、被請求人は、本件機器が「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属する理由として、本件機器はコンピュータとの接続を必須の構成要素としており、ソフトウェアをコンピュータにインストールすることにより使用が可能になることに着目し、電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素となっていることから、本件機器が「電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる旨を主張している。
この「電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素」とする商品が電子応用機械器具及びその部品」であることは、「商品及び役務の区分解説」から引用したものと推察するが、本件機器の機能は、「インターネットを通じて行う放送」にあり、「放送」は「特定または不特定の受信者に向けて、無線・有線などの電気通信技術を用いて、映像・音声・文字などの情報を同時的に送信すること」(甲5)である以上、「電子の作用」は本件機器の機能である「放送」において本質的な要素ではない。
本件機器がコンピュータとの接続を必須の構成要素としていることや、ソフトウェアをコンピュータにインストールすることにより使用が可能になることといった特徴については、あくまで、商品の構造上の観点、及び「放送」という本件機器の機能を実現するためのプロセスにすぎず、本件機器の本質的な機能である「電気通信技術を用いて行う放送」の部分を差し置いて、このような商品の構造や機能実現のための一部のプロセスのみを切り取って、本件機器が「電子応用機械器具及びその部品」に属するとの主張は、被請求人による独自の解釈であるといわざるを得ない。
(2)「ソフトウェア」について
被請求人は、「コンピュータ用インターフェース及びコンピュータソフトウェアを製造販売している」と主張しているが、販売されているものは本件機器のみであり、前記「ソフトウェア」(以下、この「第2 請求人の主張」において「本件ソフトウェア」という。)そのものは、販売の対象、すなわち独立して商取引対象となっていない。
また、本件ソフトウェアは、あくまで、本件機器と常に共に使用され、かつ、その用途以外で使用されることはない性質を踏まえると、本件ソフトウェアは、本件機器の構成要素、又は専用の付属品であることは明らかである。
そうすると、本件ソフトウェアそれ自体は、商品ではないというべきである。また、百歩譲って仮に本件ソフトウェアが商品であるとしても、本件機器の構成要素や専用の付属品である性質を踏まえると「家庭用放送機器の部品及び付属品」というべきであるため、本件機器と同様に、「電気通信機械器具」に属するものである。
なお、今日においては、機器の構造の簡略化、作業者の負担減、開発コストの削減、作業効率化等の側面から産業用や一般用で使用されている機械器具の中には、コンピュータを搭載したり、専用のソフトウェアに当該機械器具の機能の一部を持たせたりする製品が数多く存在していることは、既に常識となっている。
そういった常識の中において、これらの機械器具の機能を実現するための一部のプロセスにおいて、コンピュータを活用していたり、また、ソフトウェアを活用していたりすることをもって、これらの産業用機械器具が一律に「電子応用機械器具及びその部品」に属すると解釈することはさすがに無理があるといわざるを得ない。
被請求人の主張を是とするのであれば、コンピュータを活用していたり、また、ソフトウェアを活用していたりする機械器具が等しく「電子応用機械器具及びその部品」に属することになりかねず、これが妥当ではないことはいうまでもない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人は、「MiNiSTUDIO」と称するコンピュータ用インターフェース及びコンピュータソフトウェアを製造販売している。
乙第1号証は、被請求人の製品「MiNiSTUDIO CREATOR US-42」を紹介するウェブサイト及び当該ウェブサイトに関する2024年6月14日付けインターネットアーカイブのスクリーンショットである。
乙第2号証は、被請求人の製品「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32」を紹介するウェブサイト及び当該ウェブサイトに関する2024年4月19日付けインターネットアーカイブのスクリーンショットである。
各ウェブサイトに示されるように、「MiNiSTUDIO」は、被請求人の製品のシリーズを表す名称として、製品の種類や型番を示す「CREATOR」、「PERSONAL」、「US-42」、「US-32」の語とともに使用されるのみならず、独立した態様でも使用されている。
乙第3号証及び乙第4号証は、それぞれ被請求人の製品「MiNiSTUDIO CREATOR US-42」及び「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32」並びに包装の写真である。
乙第5号証は、被請求人の製品に係るインターフェースとともに使用されるソフトウェアの操作画面である。ソフトウェアのユーザーインターフェースにおいては一般的に画面上部の操作とは無関係の部分に商標が付されるところ、本操作画面の左上及び右上に表示されている「MiNiSTUDIO」は同ソフトウェアの名称として使用されていると判断されるものである。
本件商標は「MINISTUDIO」の欧文字からなる商標であるところ、被請求人の使用する「MiNiSTUDIO」の商標と比較すると一部大文字・小文字の相違が存するにすぎず、同一の文字から構成されており、称呼や観念に差異はないことから、両者は社会通念上同一の商標というべきである。
2 乙第1号証及び乙第2号証に示されるように、被請求人の製品はインターネットにおけるコンテンツ配信に特化したインターフェース及びソフトウェアである。一般的に、放送機器や音響機器はそれ自体が独立して音響を録音・再生・編集等する機能を有するが、被請求人の製品はコンピュータとの接続を前提とする製品である。被請求人の製品はUSB接続を通じてコンピュータから電源供給される仕様となっており、コンピュータと接続しない限り、製品の使用目的である配信用として機能しない。また、被請求人の製品は、コンピュータにソフトウェアをインストールすることで使用が可能となり、インターフェースはソフトウェアを操作するために使用される。そして、インターフェースに入力されたアナログ音声信号はデジタル信号に変換され、USBを経由してコンピュータへ送信され、ソフトウェアで処理された上でインターネットでのコンテンツ配信に供される(乙6)。
このように、被請求人の製品はコンピュータを必須の構成要素としており、コンピュータにインストールされたソフトウェアによる情報処理を通じてインターネットへコンテンツを配信する機能を有するものである。被請求人の製品は、インターフェース装置とソフトウェア及びコンピュータが一体となって機能を発揮するものといえるところ、電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素となっているものであり、電子応用機械器具の範ちゅうに含まれるものというべきである。
また、国際分類において、第9類「コンピュータ用インターフェース」が採録されており、被請求人の製品に係るインターフェースはこの商品概念が適合するところ、この商品は類似商品・役務審査基準において「電子応用機械器具及びその部品」と同じ類似群コード「11C01」に分類されている。加えて、被請求人の製品に係るソフトウェアも「電子応用機械器具及びその部品」の下位概念に属するものである。
したがって、被請求人の製造販売に係るインターフェース及びソフトウェアは、本件商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」に該当するものと解すべきである。
3 乙第7号証の1は、大手インターネットショッピングモールの「楽天市場」内において被請求人が運営するオンラインストアにおける、製品の受注確認の電子メールであり、乙第7号証の2は、その後の製品出荷を知らせる電子メールである。これらの資料から、被請求人は、要証期間内である2023年11月26日に石川県能美市の需要者から「TASCAM MiNiSTUDIO CREATOR US-42W」すなわち乙第1号証に係る製品を受注し、同じく要証期間内である2023年12月4日に、同需要者へ製品を発送したことが分かる。
また、乙第8号証の1は、被請求人自ら運営するオンラインストア「ティアックストア本店」における、製品の受注確認の電子メールであり、乙第8号証の2は、その後の製品出荷を知らせる電子メールである。これらの資料から、被請求人は、要証期間内である2024年4月12日に滋賀県東近江市の需要者から「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32W」すなわち乙第2号証に係る製品を受注し、同じく要証期間内である2024年4月15日に、同需要者へ製品を発送したことが分かる。
加えて、「楽天市場」内において被請求人が運営するオンラインストア、及び「ティアックストア本店」において被請求人の製品が販売されていることを示すスクリーンショット、及び各オンラインストアの運営者情報を示すウェブページのスクリーンショットを添付する(乙9、乙10)。このように、各オンラインストアは被請求人によって運営されている。
このように、被請求人の製品は、被請求人自身によって、要証期間内に日本国内において販売されていることが明らかである。
4 「音声周波機械器具」とは、「電気通信機械器具」の範疇に属する商品であり、これに属するものとして「ICレコーダー、拡声機械器具、携帯型オーディオプレーヤー、コンパクトディスクプレーヤー、ジュークボックス、テープレコーダー、電気蓄音機、レコードプレーヤー、録音機械器具」が例示されている。例示された商品から、「音声周波機械器具」は、主として音声の記録・再生のための機械器具が該当するものと解される。
一方、被請求人の製品は主にインターネット配信のために用いられるものであり、コンピュータを必須の構成要素とし、コンピュータにインストールされたソフトウェアによる情報処理を通じて、インターネット配信に必要な様々な機能を発揮する製品である。被請求人の製品は、単に音声の送信・記録や加工・調整のみに用いられるものでなく、声の音量に合わせてBGMの音量を自動調整する機能や、映像の遅れに音声を自動で合わせる機能、DAW(デジタル音楽制作用ソフトウェア)と連携する機能など、コンピュータ及びソフトウェアを通じて初めて実現できる高度な機能を備えている(乙11)。このような機能は、主として音声の記録・再生のみを機能とする「音声周波機械器具」及びその下位概念の例示商品において予定されている機能とは本質的に異なるものである。
したがって、被請求人の製品は、その用途・機能に照らし、「音声周波機械器具」に属する商品であるとはいえない。
5 請求人は、被請求人の製品が「家庭用放送機器」及び「オーディオインターフェース」として販売されていると指摘し、「家庭用放送機器」と用途及び機能を同じにする「放送用機械器具」と「オーディオインターフェース」は、いずれも「電気通信機械器具」に属する商品であると主張する。
確かに、被請求人の製品を紹介するウェブサイトにおいて「家庭用放送機器」との表示が見られるが、実際には、被請求人の製品はインターネット配信に使用される電子機器であり、それ自体が電気通信を行うものではなく、電波を送受信する機能を有するものでもない。類似商品・役務審査基準においては「放送用機械器具」の項において、これに属するものとして「テレビジョン受信機」「テレビジョン送信機」「ラジオ受信機」「ラジオ送信機」が例示されているが、これらの商品と被請求人の製品は用途や機能が全く異なることが明らかである。
したがって、被請求人の製品は、「放送用機械器具」に該当するものとはいえない。
6 請求人は、被請求人の製品が「オーディオインターフェース」と称して販売されていると指摘し、「オーディオインターフェース」が、「マイクや楽器をPCに繋ぐための機器です。PCに音声を取り込み、音楽制作ソフトを介して録音ができるため、PCでの音楽制作には欠かせない存在です。また、取り込んだ音声やPCのサウンドを高音質に再生することが可能です。」と定義付けられていることから、被請求人の製品が「オーディオインターフェース」に該当する旨主張する。
しかし、被請求人の製品を紹介するウェブサイトでは、正しくは「USBオーディオインターフェース」と表示されている(乙1の1ほか)。これは、被請求人の製品に係るインターフェースがUSBにより接続されるコンピュータ用のインターフェースであることを表そうとしたものにすぎない。また、一般的な「オーディオインターフェース」とは、「マイクや楽器をPCに繋ぐための機器」であるが、被請求人の製品はインターフェース及びソフトウェアが一体となって構成され、ソフトウェアを通じて、インターネット配信を行うための様々な機能を実現する商品である。そのため、被請求人の製品を、単にマイクや楽器をコンピュータに接続するための「オーディオインターフェース」であると判断することは、用途や機能において全く不十分であり、商品の範囲を不当に狭く解釈するものである。
7 「WIPO Madrid Goods and Services Manager」及び審査採用表示において、音響や映像・データの再生等を行う装置について類似群コード11B01及び11C01に属するものが例示されている。被請求人の製品は、単なる「オーディオインターフェース」とは異なる様々な用途や機能を、インターフェースとソフトウェアが一体となって、主にソフトウェアの情報処理により実現する電子的な装置であることに照らすと、被請求人の製品は正に当該商品表示に相当する商品である。そうであれば、被請求人の製品は、類似群コード11C01を含む第9類「電子応用機械器具及びその部品」の下位概念に属する商品であると解すべきである。
8 請求人は、被請求人の製品を構成するソフトウェアは独立して商取引の対象となっておらず、それ自体は商品ではなく、被請求人の製品専用の附属品であると指摘する。
しかし、被請求人の製品においてはソフトウェアが多くの機能を担っており、インターフェースはソフトウェアの操作の用に供されるものである。ソフトウェアがインターフェースの附属品であるとの指摘は、主たる機能を担っている部分を附属品と認定することになってしまい、現実に適合する解釈とはいえない。ソフトウェアの機能は製品全体の性能を左右するものであるから、ソフトウェアの性能は製品購入の決め手となり得るところであり、需要者の視点からもソフトウェアを付属品とする解釈は妥当とはいえない。加えて、被請求人の製品の販売はインターフェースの販売によって行われ、ソフトウェアは購入者にダウンロードにて提供されているが、これは販売上の便宜のためにすぎない。被請求人の製品の開発に当たっては、インターフェースのみならずソフトウェアにも多額の費用を要しており、ソフトウェアが附属品であるとの認識は供給者側にも存在しない。
第4 当審の判断
1 両当事者の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
(1)2024年(令和6年)6月14日における「TASCAM」と称するウェブサイトには、「MiNiSTUDIO CREATOR US-42」及び「家庭用放送機器(USBオーディオインターフェース)」と称する、数種の接続端子や操作用のスイッチ等を有する略直方体の機器(以下「使用商品1」という。)が掲載されており、当該ウェブサイトには、使用商品1の説明として、「かんたん操作で各種ネット配信サービスを使った音声演出を楽しめる家庭用放送機器。」、「パソコンとMiNiSTUDIOで世界に自分だけの番組を配信しましょう」、「MiNiSTUDIOは、放送局譲りのポンだし機能やVRコンテンツと相性がよいボイスエフェクトなどライブ配信やチャットを盛り上げる様々な機能が満載。」、「「歌ってみた」「演奏してみた」などの配信にもMiNiSTUDIOは大活躍。」などの記載がある(乙1の2)。
(2)2024年(令和6年)4月19日における「TASCAM」と称するウェブサイトには、「MiNiSTUDIO PERSONAL US-32」及び「家庭用放送機器(USBオーディオインターフェース)」と称する、数種の接続端子や操作用のスイッチ等を有する略直方体の機器(以下「使用商品2」といい、使用商品1及び2を合わせて「使用商品」という。)が掲載されており、当該ウェブサイトには、使用商品2の説明として、「TASCAM MiNiSTUDIOシリーズは、インターネット配信用のオーディオインターフェースです。」、「MiNiSTUDIOシリーズが持つ特長のうち、音楽制作用に作られたオーディオインターフェースと最も異なる点がユーザーインターフェースです。インターネット配信用途に特化されており、音響機器に詳しくない方でも迷わず使えるよう操作子を厳選しました。」、「MiNiSTUDIOは、放送局譲りのポンだし機能やVRコンテンツと相性がよいボイスエフェクトなどライブ配信やチャットを盛り上げる様々な機能が満載。」などの記載があり、また、スマートフォンと使用商品2とをケーブルで接続している状態の写真が掲載されている(乙2の2)。
(3)使用商品の包装箱には、使用商品がパソコン、マイク又はイヤフォンと接続している写真が掲載されている(乙3の1、乙4の1)。
(4)使用商品1の取扱説明書には、「MiNiSTUDIOシリーズは、かんたん操作で音声演出を楽しめるインターネット生放送向けの家庭用放送機器(オーディオインターフェース)です。」、「Windowsを中心にMac/iOSデバイスにも対応したインターネット生放送専用オーディオインターフェース」、「本機を使用するには、パソコンに専用のソフトウェアをインストールする必要があります。」、「付属のUSBケーブルを使ってパソコンと接続します。」、「本機を使用するには、パソコンに専用ソフトウェアをインストールする必要があります。」などの記載があり、また、「接続図」の欄には、マイク、ギター、ヘッドホン、ヘッドセット、携帯オーディオプレーヤー、スピーカー及びパソコンと、使用商品1とが接続される図が掲載されており、さらに、最終ページには、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)の名称と住所が掲載されている(乙6の1)。
(5)使用商品1の機能説明画面には、「環境にあわせた設定がかんたんに呼び出せるモードプリセット機能」、「BGMの音量をトークにあわせて自動的に下げるダッキング機能」及び「ビデオキャプチャカード使用時の映像の遅れに音声をあわせられるUSBディレイ機能」などの記載がある(乙11)。
(6)「SOUND HOUSE」と称するウェブサイトにおいて、「オーディオインターフェイス」の説明として、「オーディオインターフェイス」とは、「マイクや楽器をPCに繋ぐための機器」であり、「PCに音声を取り込み、音楽制作ソフトを介して録音ができるため、PCでの音楽制作には欠かせない存在」であり、「取り込んだ音声やPCのサウンドを高音質に再生することが可能」なものであることが記載されている(甲4)。
2 本件商標が第9類「電子応用機械器具及びその部品」に使用をされたかについて
(1)第9類「電子応用機械器具及びその部品」について
商標法施行規則の別表における第9類には、「十五」として「電子応用機械器具及びその部品」が掲載されており、これに含まれる商品として、「(一)」として「電子応用機械器具」、「(二)」として「電子管」、「(三)」として「半導体素子」、「(四)」として「電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)」及び「(五)」として「電子計算機用プログラム」が挙げられており、また、「(一)電子応用機械器具」には、これに含まれる商品として「イ」として「電子計算機及びその周辺機器 光学式マウス スキャナー 電子計算機 電子計算機用ディスプレイ装置 ハードディスクユニット プリンター」、「ロ」として「電子応用静電複写機 電子式卓上計算機 電子辞書 ワードプロセッサ」及び「ハ」として「ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測深器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用扉自動開閉装置 電子顕微鏡」が例示されている。
また、当該第9類には、「十二」として「電気通信機械器具」が掲載されており、これに含まれる商品として、「(八)」として「音声周波機械器具」が挙げられており、これに含まれる商品として「ICレコーダー 拡声機械器具 携帯型オーディオプレーヤー コンパクトディスクプレーヤー ジュークボックス テープレコーダー 電気蓄音機 レコードプレーヤー 録音機械器具」が例示されている。
そうすると、第9類における「電子応用機械器具及びその部品」とは、「電子計算機」、「光学式マウス スキャナー」などの電子計算機の周辺機器、「電子応用静電複写機 電子式卓上計算機」などの電子の作用を応用した事務機器、「ガイガー計数器 高周波ミシン」などの電子の作用を応用した産業用の機器、「電子管 半導体素子 電子回路」といった電子部品及び「電子計算機用プログラム」を包括するものといえる。
一方、「ICレコーダー 拡声機械器具 携帯型オーディオプレーヤー コンパクトディスクプレーヤー ジュークボックス テープレコーダー 電気蓄音機 レコードプレーヤー 録音機械器具」といった音声又は音響に関する機器は、「電気通信機械器具」における「音声周波機械器具」に含まれるとされている。
そして、「電子応用機械器具及びその部品」には、音声又は音響に関する機器は特に例示されていないことからすると、たとえ電子の作用を応用したものであるとしても、音声又は音響に関する機器は「電気通信機械器具」における「音声周波機械器具」に含まれるというべきであって、「電子応用機械器具及びその部品」には含まれないと解するのが相当である。
(2)使用商品について
前記1で認定した事実によれば、使用商品は、インターネット配信用の機器であり、使用商品を使用するには、専用のソフトウェアをインストールしたパソコンに接続する必要があり、マイク、ギター、ヘッドホン、ヘッドセット、携帯オーディオプレーヤー及びスピーカーと接続することができ、BGMの音量をトークに合わせて自動的に下げる機能や映像の遅れに音声を合わせる機能を有していることが認められる。
また、使用商品は、「USBオーディオインターフェース」と称されており、「音声演出を楽しめる」や「音響機器に詳しくない方でも迷わず使える」などと説明されているものである。
そして、音響に関するウェブサイトにおいて、「オーディオインターフェイス」とは、「マイクや楽器をPCに繋ぐための機器」であり、「PCに音声を取り込み、音楽制作ソフトを介して録音ができるため、PCでの音楽制作には欠かせない存在」であり、「取り込んだ音声やPCのサウンドを高音質に再生することが可能」なものであると説明されている。
以上によれば、使用商品は、インターネット配信用の機器であって、音声又は音響に関する機器であるといえる。
そうすると、使用商品は、たとえ専用のソフトウェアをインストールしたパソコンに接続して使用するものであるとしても、音声又は音響に関する機器であって、商標法施行規則の別表における第9類の「電気通信機械器具」における「音声周波機械器具」に含まれる商品であると判断するのが相当である。
そして、本件審判の請求に係る商品は「電子応用機械器具及びその部品」であるところ、これは、商標法施行規則の別表の第9類における「電子応用機械器具及びその部品」を表したものといえる。
したがって、使用商品は、本件審判の請求に係る商品である「電子応用機械器具及びその部品」に含まれるものとは認めることができない。
(3)本件商標の使用について
前記1によれば、使用商品1は商標権者の取扱いに係る商品であると認められ、そのため、使用商品2についても商標権者の取扱いに係る商品であると推認することができる。
また、要証期間内である令和6年4月19日及び同年6月14日における「TASCAM」と称するウェブサイトには、使用商品が掲載され、その商品の説明において、「MiNiSTUDIOは、・・・」や「パソコンとMiNiSTUDIOで・・・」などのように、商品の出所を表示し、自他商品を識別するものと取引者及び需要者において認識される態様で「MiNiSTUDIO」の文字(以下「使用商標」という。)が使用されている。
そして、使用商標は、本件商標とは「I(i)」の文字が大文字か小文字かの違いはあるものの、その構成文字を共通にするものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
そうすると、商標権者は、要証期間内に、使用商品に関する広告を内容とする情報(ウェブサイト)に使用商標を付して電磁的方法(インターネット)により提供したこと、すなわち商標法第2条第3項第8号に係る使用行為をしたことが認められる。
しかしながら、前記(2)のとおり、使用商品は、本件審判の請求に係る商品である「電子応用機械器具及びその部品」に含まれるものとは認められない。
したがって、使用商標は、本件審判の請求に係る商品である「電子応用機械器具及びその部品」に使用をされていたと認めることはできない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、使用商品は、インターネットにおけるコンテンツ配信に特化したインターフェース及びソフトウェアであるとし、コンピュータを必須の構成要素としており、コンピュータにインストールされたソフトウェアによる情報処理を通じてインターネットへコンテンツを配信する機能を有するものであり、インターフェース装置とソフトウェア及びコンピュータが一体となって機能を発揮するものといえ、電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素となっているから、「電子応用機械器具」の範ちゅうに含まれる旨主張している。
しかしながら、使用商品は、専用のソフトウェアをインストールしたパソコンに接続して使用するものであるから、ソフトウェアそれ自体ではないことは明らかである。
また、たとえ、専用のソフトウェアをインストールしたパソコンと一体となって機能を発揮するとしても、これらが一体の一つの商品として取引の対象となっていることを示す証拠の提出はなく、使用商品とパソコンとは別個の商品というべきである。
さらに、「電子応用機械器具及びその部品」とは、「電子計算機」、その周辺機器、電子の作用を応用した事務機器及び産業用の機器、電子部品並びに「電子計算機用プログラム」を包括するものであり、また、音声又は音響に関する機器は「電気通信機械器具」における「音声周波機械器具」に含まれるというべきであるから、たとえ使用商品がインターネットにおけるコンテンツ配信に特化した商品であるとしても、そのことをもって、使用商品が「電子応用機械器具及びその部品」に含まれるということはできない。
なお、乙第5号証は、ソフトウェアの操作画面の写しとされ、その左上及び右上には、「TASCAM MiNiSTUDIO」の文字が表示されていることが認められるが、仮に当該表示がソフトウェアに付されているといえたとしても、「TASCAM MiNiSTUDIO」の文字がまとまりよく一体に表されていることから、「MINISTUDIO」の文字からなる本件商標とは、「TASCAM」の文字の有無の相違により、社会通念上同一とは認められない。
したがって、使用商品が「電子応用機械器具」の範ちゅうに含まれるとの請求人の主張は採用することができない。
(2)被請求人は、「WIPO Madrid Goods and Services Manager」及び審査採用表示において、音響や映像・データの再生等を行う装置について類似群コード11B01及び11C01に属するものが例示されているとし、使用商品は、類似群コード11C01を含む第9類「電子応用機械器具及びその部品」の下位概念に属する商品である旨主張している。
しかしながら、類似群コードは、商品又は役務の類似を推定するためのコードであるから、類似群コードによって使用商品が「電子応用機械器具及びその部品」に含まれるか否かを判断することは適切ではない。
仮に、当該判断の参考とする余地があるとしても、被請求人が挙げる例は、音響や映像・データの再生等を行う装置についてのものであって、音響のみについて再生等を行う装置についてのものではないから、音声又は音響に関する機器であるといえる使用商品について、参考となるものではない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る商品についての本件商標の使用をしていることを証明したとはいえず、また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の「電子応用機械器具及びその部品」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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