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特許拒絶査定不服審判

2021-018062

調光システム、調光フィルムの駆動方法、車両

審判番号
2021-018062
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-529912外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月27日
審決日
2023年06月05日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
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特願2018-529912「調光システム、調光フィルムの駆動方法、車両」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日国際公開、WO2018/021308〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年(平成29年)7月25日(優先権主張 平成28年7月26日。以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 4月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月14日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年 9月14日付け:拒絶査定
令和3年12月27日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和4年12月26日付け:拒絶理由通知書
令和5年 3月13日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明の認定

本願の請求項に係る発明は、令和5年3月13日に提出された手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載されたとおりのものであるところ、そのうち請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「調光フィルムと前記調光フィルムに駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムであって、
前記調光フィルムは、
液晶分子及び二色性色素を含む液晶層を第1の積層体及び第2の積層体により挟持し、前記液晶層の前記液晶分子及び前記二色性色素の配向を制御して透過光を透過させる透光状態と、透過光を遮光する遮光状態とに制御する調光フィルムであり、
前記第1の積層体は、
続きを表示(全13行)
少なくとも第1の基材及び第1の電極を備え、
前記第2の積層体は、
少なくとも第2の基材及び第2の電極を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ、シート抵抗が50Ω/□以上300Ω/□以下であり、
給電点から前記調光フィルムの面内方向における最も離れた位置までの距離が、50mm以上1250mm以下であり、
前記駆動電源は、
周波数480Hz以下の矩形波により前記駆動用の電源を供給し、
前記調光フィルムは、透光時において、前記給電点から1250mm範囲内の全光線透過率が26%以上であること、
を特徴とする調光システム。」

第3 拒絶の理由

令和4年12月26日付け拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)により当審が通知した拒絶理由は、本件補正前の請求項6に係る発明(本願発明に対応するものである。)は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という内容を含むものである。

引用文献1:特開2010-230759号公報(当審拒絶理由通知書の引用文献3)
引用文献2:特開2013-72895号公報(当審拒絶理由通知書の引用文献2)

第4 引用文献の記載

1 引用文献1及び引用発明の認定

(1)当審拒絶理由通知書によって引用された引用文献1(特開2010-230759号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【背景技術】」、

「【0002】
電圧を印加することにより光の透過率が変化する調光体は、広く用いられている。近年、防眩ミラー等の自動車用ミラー、自動車の天井用ガラス、パーティション、窓ガラス等の建材、ショーケース、ディスプレー等のインテリア材に、調光体を用いた調光シートを用いることが提案されている。」、
「【0004】
これに対して、液晶と二色性色素とを含有する液晶シートは、応答速度が速く、低温時においても応答速度の低下を抑制できるという利点がある。また、二色性色素の種類や量を選択することにより多色を呈することができることから、意匠性にも優れる(特許文献1~3等)。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】」、

「【0007】
本発明は、応答速度が速く、意匠性に優れ、耐候性にも優れる調光シートとして使用できる液晶シートを提供することを目的とする。」
ウ 「【0023】
本発明の液晶シートは、通常、配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム又はガラス板間に、上記液晶層をスペーサを介して挟持し、端部をシール剤で封止した態様が挙げられる。
図1に、本発明の液晶シートの一例を表す模式図を示した。
(当審注:「スペーサ介して」は「スペーサを介して」の明らかな誤記であるので、誤記を正して摘記した。)
続きを表示(全16行)
【0024】
上記透明樹脂フィルム1は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)からなるフィルム等が挙げられる。
上記ガラス板1は、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、グリーンガラス等の一般に使用されている透明板ガラスが挙げられる。
【0025】
上記透明電極2は、透明樹脂フィルム1又はガラス板1の表面に設けられ、交流電圧を稼働させる。
上記透明電極2は、例えば、インジュウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化スズ、銀、カーボンからなる電極等が挙げられる。なかでも、透明性に優れることからITOからなる透明電極が好適である。
【0026】
上記配向膜3は、液晶層を配向させる役割を有するものである。
上記配向膜3は、例えば、上記透明電極2上にイミド配向剤をコーティングし、該イミド配向剤を熱硬化してなる、膜厚が0.01~0.03μmのポリイミドからなる配向膜等が挙げられる。
【0027】
上記スペーサ4は、上記液晶層の厚さを規定し、ポリスチレン等の樹脂からなる球状のスペーサが挙げられる。
上記スペーサ4の粒子径は、目的とする液晶層の厚さに応じて適宜選択して用いるが、30μm以下であることが好ましい。スペーサの粒子径が30μmを超えると、液晶層の厚みが厚くなり、液晶中に指紋状液晶縞が発生しやすくなることがある。」
エ 「【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、応答速度が速く、意匠性に優れ、耐候性にも優れる調光シートとして使用できる液晶シートを提供することができる。」

オ 図1

[図:0001399895000001.jpg]

カ 引用文献1に記載された調光シートとして使用できる液晶シート(【0007】)は、当該調光シートを構成する透明電極2が交流電圧を稼働させる(【0025】)ようになっているところ、このような交流電圧を稼働させる構造が、調光シートに対して駆動用の電源を供給する駆動電源を備えるということは、当業者にとって自明である。よって、引用文献1には、調光シートとして使用できる液晶シートと当該調光シートに対して駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムが記載されているに等しいと認められる。

(2)上記(1)によれば、引用文献1には、図1に係る調光シートとして使用できる液晶シートと調光シートに対して駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に引用発明等の認定に用いた段落番号等を参考までに付してある。以下同じ。)。

「調光シートとして使用できる液晶シートと当該調光シートに対して駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムであって、(上記(1)カ)
液晶シートは、配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム間に、液晶層をスペーサを介して挟持し、端部をシール剤で封止しており、(【0023】)
液晶層は、液晶と二色性色素とを含有しており、(【0004】)
透明電極は、透明樹脂フィルムの表面に設けられ、交流電圧を稼働させるものであり、(【0025】)
透明電極は、ITOからなる透明電極であり、(【0025】)
電圧を印加することにより光の透過率が変化するものである、(【0002】)
調光システム。」

2 引用文献2及び引用文献2に記載された技術的事項の認定

(1)当審拒絶理由通知書によって引用された引用文献2(特開2013-72895号公報)には、次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】」、

「【0001】
本発明は、高分子分散型液晶を液晶層とする液晶調光素子を備える液晶調光装置及び液晶調光素子を透明状態又は不透明状態に駆動する液晶調光素子の駆動装置に関する。」

イ 「【背景技術】」、

「【0002】
液晶調光素子10は、図7(a)に示すように、透明性及び電気絶縁性を有する一対の対向する基板(以下、絶縁性基板1と称す)間で、高分子分散型液晶に代表される液晶材料を挟持して液晶層3を構成する。また、液晶調光素子10は、絶縁性基板1上の一対の透明電極2への電圧の印加状態(電源ON)で液晶層3が透明状態になり、電圧の無印加状態(電源OFF)で液晶層3が白濁状態(不透明状態)になり、電源(スイッチ)のON/OFFで液晶層における透過と散乱とが瞬時に切り替えられる。」、
「【0005】
また、液晶調光素子10は、駆動周波数が商用電源周波数の50Hz又は60Hzの固定値であり、図7(c)に示すように、一対の透明電極2の各抵抗Rと液晶層3の静電容量Cとで接続された等価回路で表わされる。このため、透明電極2への印加電圧は、図7(d)に示すように、商用電源201側の位置(A点)から商用電源201から最も離れた末端側の位置(B点)にかけて電圧降下を起こし、実質的には、末端側の位置(B点)で印加電圧が低くなる。すなわち、液晶調光素子10は、末端側の位置(B点)においても、閾値電圧以上になるような十分な電圧を透明電極2に印加する必要があり、消費電力が増大するという問題点がある。
【0006】
なお、従来の液晶調光素子10では、消費電力を低減するために、図7(e)に示すように、透明電極2の両端(商用電源201側、末端側)から電圧を印加する方法も採られているが、透明電極2への接続端子を末端側に配設して、この接続端子と商用電源201とを接続するための作業工程数が増加することや引廻し配線数が増加することにより、液晶調光素子10の設置上の制限が発生するなどの問題点もある。
【0007】
また、液晶調光素子10の消費電力を低減するために、透明電極2に用いる酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide:ITO)などの透明導電膜の厚みを増やすことにより、透明電極2の抵抗値を下げて電圧降下を抑制する方法もあるが、液晶調光素子10のコストが増加するうえに、液晶調光素子10の透過率の減少や黄色味が増すなどの外観的な弊害も生じるという問題点がある。」
ウ 「【0063】
表4及び図6(b)に示すように、矩形波交流電圧における光学特性は、周波数依存性がないことが分かる。すなわち、本実施形態に係る液晶調光装置100は、光学特性上、5Hzから60Hzまでの周波数の矩形波交流電圧を用いることができる。
【0064】
したがって、本実施形態に係る液晶調光装置100は、矩形波交流電圧の周波数を自由に設定可能であるため、矩形波交流電圧の低周波化により、液晶層3のインピーダンスを上昇させ、液晶調光素子10の消費電力(電流)を低減することができると共に、液晶調光素子10の電源200側から末端側にかけての電圧降下を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る液晶調光装置100は、電圧降下の抑制により、印加電圧を50Vからさらに低電圧化することができ、液晶調光素子10の消費電力を低減することができると共に、透明電極2の両端(商用電源201側、末端側)から矩形波交流電圧を印加する必要がなく、配線作業に伴う作業工程数及び配線数の増加を防止することができる。
また、本実施形態に係る液晶調光装置100は、電圧降下の抑制により、高抵抗の透明導電膜(例えば、ITO膜)を透明電極2に用いる(例えば、表面抵抗値を150Ω/□から250Ω/□に変更した高抵抗ITOフィルムを用いる)ことができ、低コスト化を図ることができる。
【0066】
特に、高抵抗の透明導電膜を透明電極2に用いるということは、透明導電膜の膜厚を薄くすることができ、液晶調光素子10に黄色味が帯びることを抑え(外観的な品質も上げ)、液晶調光素子10の透過率を上げることができ、液晶調光素子10に対して総合的に透明度を向上することができる。」

(2)上記(1)によれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「液晶調光素子の消費電力を低減するためには、商用電源の位置から商用電源から最も離れた末端側の位置にかけて生じる電圧降下を抑制することが必要であるが、透明電極に用いるITOの厚みを増やすと液晶調光素子の透過率の減少が生じる(【0007】)ので、交流電圧の低周波化(5Hzから60Hzまでの周波数の矩形波交流電圧(【0063】)により、液晶層のインピーダンスを上昇させて、上記電圧降下を抑制し(【0064】)、そして、電圧降下の抑制により、高抵抗の導電膜(例えば、表面抵抗値を150Ω/□から250Ω/□に変更した高抵抗ITOフィルム)を透明電極に用いることができるので、透明導電膜の膜厚を薄くすることができ、液晶調光素子の透過率を上げることができる(【0065】・【0066】)という技術的事項。」

第5 対比、一致点及び相違点の認定

1 本願発明と引用発明を対比する。

(1)本願発明の「調光フィルムと前記調光フィルムに駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムであって、」との特定事項について

引用発明の「液晶シート」は、「調光シートとして使用できる」ものであるから、本願発明の「調光フィルム」に相当する。

引用発明の「調光システム」は、本願発明の「調光システム」に相当する。

引用発明の「当該調光シートに対して駆動用の電源を供給する駆動電源」は、本願発明の「前記調光フィルムに駆動用の電源を供給する駆動電源」に相当する。

よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

(2)本願発明の「前記調光フィルムは、液晶分子及び二色性色素を含む液晶層を第1の積層体及び第2の積層体により挟持し、前記液晶層の前記液晶分子及び前記二色性色素の配向を制御して透過光を透過させる透光状態と、透過光を遮光する遮光状態とに制御する調光フィルムであり、前記第1の積層体は、少なくとも第1の基材及び第1の電極を備え、前記第2の積層体は、少なくとも第2の基材及び第2の電極を備え、」との特定事項について

ア 引用発明の「配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム」は、その「間に、液晶層をスペーサを介して挟持」するものであるから、第1のものと第2のものの2枚存在するといえる。このような第1の「配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム」及び第2の「配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム」は、それぞれ、本願発明の「第1の積層体」及び「第2の積層体」に相当する。そして、第1の「配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム」における「透明樹脂フィルム」及び「透明電極」がそれぞれ本願発明の「第1の基材」及び「第1の電極」に相当し、同様に、第2の「配向膜、透明電極を積層した透明樹脂フィルム」における「透明樹脂フィルム」及び「透明電極」がそれぞれ本願発明の「第2の基材」及び「第2の電極」に相当する。

イ 引用発明の「調光シートとして使用できる液晶シート」に含まれる「液晶層」は「液晶と二色性色素とを含有して」いるところ、当該「液晶層」及び「二色性色素」は、それぞれ、本願発明の「液晶層」及び「二色性色素」に相当し、また、引用発明の「液晶」が本願発明でいう「液晶分子」を含むことは明らかである。

ウ 引用発明の「調光シートとして使用できる液晶シート」は、これを構成する「液晶層」が「液晶、二色性色素、を含有」しており、「電圧を印加することにより光の透過率が変化」するので、本願発明でいう「前記液晶層の前記液晶分子及び前記二色性色素の配向を制御して透過光を透過させる透光状態と、透過光を遮光する遮光状態とに制御する」ものであることが明らかである。

エ よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。

(3)本願発明の「前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ、シート抵抗が50Ω/□以上300Ω/□以下であり、給電点から前記調光フィルムの面内方向における最も離れた位置までの距離が、50mm以上1250mm以下であり、」との特定事項について

引用発明の2つの「透明電極」が本願発明の特定事項を満たしているか不明である。

(4)本願発明の「前記駆動電源は、周波数480Hz以下の矩形波により前記駆動用の電源を供給し、」との特定事項について

引用発明の「駆動電源」は、本願発明の特定事項を満たしているか不明である。

(5)本願発明の「前記調光フィルムは、透光時において、前記給電点から1250mm範囲内の全光線透過率が26%以上である」との特定事項について

引用発明の「液晶シート」は、本願発明の上記特定事項を満たしているか不明である。

2 上記1によれば、本願発明と引用発明は

「調光フィルムと前記調光フィルムに駆動用の電源を供給する駆動電源とを備えた調光システムであって、
前記調光フィルムは、
液晶分子及び二色性色素を含む液晶層を第1の積層体及び第2の積層体により挟持し、前記液晶層の前記液晶分子及び前記二色性色素の配向を制御して透過光を透過させる透光状態と、透過光を遮光する遮光状態とに制御する調光フィルムであり、
前記第1の積層体は、
少なくとも第1の基材及び第1の電極を備え、
前記第2の積層体は、
少なくとも第2の基材及び第2の電極を備える、
調光システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

「第1の電極及び前記第2の電極」が、本願発明は、「それぞれ、シート抵抗が50Ω/□以上300Ω/□以下であり、給電点から前記調光フィルムの面内方向における最も離れた位置までの距離が、50mm以上1250mm以下」であるのに対し、引用発明は、そうであるか不明である点。

<相違点2>

「駆動電源」が、本願発明は、「周波数480Hz以下の矩形波により前記駆動用の電源を供給」しているのに対し、引用発明は、そうであるか不明である点。

<相違点3>

「調光フィルム」が、本願発明は、「透光時において、前記給電点から1250mm範囲内の全光線透過率が26%以上である」のに対し、引用発明は、そうであるか不明である点。

第6 相違点の判断

1 相違点1~3について

(1)相違点1~3について併せて検討する。

ア 引用発明は、「調光シートとして使用できる液晶シート」を用いた「調光システム」に係る発明であるところ、このような調光シートが、「防眩ミラー等の自動車用ミラー、自動車の天井用ガラス、パーティション、窓ガラス等の建材、ショーケース、ディスプレー等のインテリア材」(引用文献1の【0002】)に用いられるのが想定されていることを踏まえれば、引用発明の調光システムにおいて、透過率を向上することや消費電力を低減することは、当然の技術的課題であるといえる。

イ そして、引用文献2に記載された技術的事項(上記第4の2(2))は、引用発明と共通する技術分野に属するといえるところ、当該技術的事項は、交流電圧の低周波化により、液晶層のインピーダンスを上昇させて、商用電源の位置から商用電源から最も離れた末端側の位置にかけて生じる電圧降下を抑制し、液晶調光素子の消費電力を低減すること、さらに、上記電圧降下の抑制により、高抵抗の導電膜を透明電極に用いることができるので、液晶調光素子の透過率を上げられることであるといえる。

この点、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項とは、調光素子を実現するメカニズムという観点では異なる、つまり、引用発明が液晶と二色性色素とを用いるのに対し、引用文献2に記載された技術的事項が高分子分散型液晶を想定する(引用文献2の【0001】)点で異なるが、その一方で、上記の引用文献2に記載された技術的事項が依拠する物理的原理が妥当するという観点では異ならないことが明らかである。すなわち、消費電力の低減については、交流電圧の低周波化による液晶層のインピーダンス上昇に依拠するところ、これは要するに液晶層をコンデンサと評価することにほかならないのであるが、引用発明の液晶と二色性色素からなる構造もコンデンサと評価できることには変わりない。また、透過率の向上については、高抵抗の導電膜を透明電極に用いることに依拠するところ、これが両者のメカニズムの相違に依存しないことは明らかである。

ウ このように、引用発明から出発した当業者は、透過率の向上及び消費電力の低減という課題を認識するところ、引用発明と共通する技術分野に属する引用文献2に記載された技術的事項において、透過率の向上や消費電力の低減を実現する物理的原理が引用発明にも同様に妥当するのが明らかであることから、上記の当業者は、上記課題を解決するために引用文献2に記載された上記技術的事項を採用することに容易に想到し得るといえる。

その際、透過率の向上及び消費電力の低減の程度をどの程度にするかは当業者が適宜設定するべき事項であるところ、消費電力の低減の程度は、商用電源の位置から商用電源から最も離れた末端側の位置にかけて生じる電圧降下の程度に影響することから、交流電圧の低周波化の程度のみならず、商用電源の位置から商用電源から最も離れた末端側の位置までの長さ(以下「本件長さ」という。)の程度(本件長さが短いほど、消費電力の低減の程度は大きくなる。)にも影響することが明らかである。そのため、当業者は、上記の透過率の向上及び消費電力の低減の程度を設定するに当たり、(i)周波数をどの程度まで低くする必要があるか、(ii)本件長さをどの程度まで短くする必要があるか、(iii)導電膜の抵抗をどの程度とすべきか、を適宜設定するといえる。

そして、引用発明は「透明電極」に「交流電圧を稼働させるもの」であるところ、引用発明のような「液晶と二色性色素とを含有」する構造の調光システムにおいて、交流電圧として矩形波の電圧を印加することは周知技術(例えば、特開昭61-57935号公報の特許請求の範囲の(1)、及び、

第3頁左上欄第12-13行等を参照。)であり、これを採用することも設計的事項にすぎない。

その上で、相違点1~3で特定されたような周波数、本件長さ及び導電膜の抵抗の各値は、通常設定し得るものであって、上記の設定を通じて、当業者が適宜至ることができるというべきである。

エ これに対し、請求人は、(i)引用発明には周波数480Hz以下の矩形波による駆動用の電源供給がなされているか不明であること、(ii)これに対し、引用文献2には、5Hzから60Hzまでの矩形波交流電圧を用いることが記載されているものの、二色性色素を含む液晶層の開示がないこと、を主張するが、上記イ及びウで説示したとおりである。

(2)よって、当業者は、引用発明並びに引用文献1に記載された技術的事項、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、相違点1~3に係る本願発明の構成に容易に至るといえる。

2 本願発明の効果について

本願発明の効果は、その構成が奏するものとして引用発明並びに引用文献1に記載された技術的事項、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が予測し得たことにすぎないものである。

3 小括

したがって、本願発明は、引用発明並びに引用文献1に記載された技術的事項、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-018062

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