2021-017772
デジタル病理学システム
- 審判番号
- 2021-017772
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-501905外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月23日
- 審決日
- 2022年11月25日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2016年(平成28年)7月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年7月16日、ヨーロッパ特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和3年12月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】分子診断のために除去されるべき染色されていない組織サンプルのサンプル除去領域を選択する方法であって、a) 対象の参照スライスの参照画像内の参照除去領域を選択するステップであって、前記参照スライス内の生体物質は染色された組織サンプルである、ステップと、b) イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質はパラフィンに包埋された染色されていない組織サンプルである、ステップと、前記サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、明視野顕微鏡の光源と画像検出器との間の光路内に配置され、前記光源と前記画像検出器との間の光路に、パラフィンに包埋された染色されていない生体物質と背景との間のコントラストを向上させるコントラスト強調装置がさらに設けられ、前記サンプルスライスを通過して前記画像検出器によって受け取られる光が供給され、c) 前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像内の前記参照除去領域を前記デジタルサンプル画像にトランスレートするステップと、d) トランスレートされた参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップとを含む、方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概要は、
1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
記
引用文献1.特表2012-525579号公報
引用文献2.特開2003-161893号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2001-091822号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特表2012-524276号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用されたその出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】生物学、組織学及び病理学のために使用する方法であり、前記方法は:生物材料を含む対象物の第一のスライスの第一のデジタルイメージの準備;前記対象物の第二のスライスの第二のデジタルイメージの生成;前記第一のイメージの領域に基づき前記第二のスライスの関心領域の決定;前記第二のイメージの領域に基づき前記第二のスライスの関心領域の決定;及び前記第二のスライスの前記関心領域から材料を抽出することを含む、方法。」
「【0005】適切な切断技術、例えばレーザーによるミクロ切断(レーザーミクロ切断)などを用いて、ひとつ又はそれ以上の小さなサンプルを組織スライスから切り出し、DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験の対象とされる。該組織スライドの調製は、病理組織スライドの場合において非常にアナログ的であり、該選択された組織サンプルの抽出及び収集を可能とするためにカバースリップが組織の上には置かれない、という違いがある。組織学的試験は、関心領域のひとつ又はいくつかの領域を選択して顕微鏡観察により実行される。しばしばこの選択は病理学者によりなされ、スライドの背面にマークされる。オペレータはその後、該関心領域とその他の領域を分ける線に沿って切断するために集光レーザービームを使用することができる。分離された組織はその後、粘着テープを用いるか又はそれを脱焦点化させたビームで動かして収集カゴに集められる。その後集められた組織はさらに処理される。現在レーザーミクロ切断システムは主に研究実験室で用いられている。」
「【0022】一組の処理識別子には、スライスに関する処理の次の事項から選択される処理を識別する処理識別子が含まれる。即ち、前記スライスにつきなにもしない;前記スライスを記録する;前記スライスを取り出す;前記スライスのイメージを生成する;前記スライスを顕微鏡スライド又はカートリッジに含める;前記スライスを他の実験室へ送る;前記スライスから材料を抽出する;前記スライスを凍結する;前記スライスを加熱する;前記スライスをシールする;前記スライスの関心領域をマークする;前記スライスを染色する;前記スライスを第一の染色方法で染色する;前記スライスを第二の染色方法で染色する;2つの染色方法の間で色の変換を定める、こと。」
「【0046】図3は病理学及び組織学で使用される方法の例を示す。第一のステップ301で、生物学材料を含むパラフィンブロックが調製される。これは当該技術の全ての知られた方法で実施可能である。第一の切断を例えばミクロトームを用いて行いブロックから第一のスライスを取得する(ステップ302)。前記第一のスライスは透明基板に載せて染色されかつカバースリップでカバーされ標準スライドを形成する。これは顕微鏡によりイメージ化され得る。前記顕微鏡は、例えば、明視野イメージイングモード及び/又は暗視野イメージイングモード又は共焦点イメージイングモードを提供する。病理学者又はコンピュータはその後前記第一のスライスのイメージを分析する。コンピュータは、パターン認識ソフトウェアを備えていてよい。第一のスライスのイメージに基づき、さらに詳細な分析がなされるべきかを決定される。その場合、興味領域が前記第一のスライスで定められ(ステップ306)、第二のスライスが前記第一の切断に対して平行に、好ましくは隣接してブロックから切断される(ステップ308)。場合により、前記第二のスライスはイメージ化される前に、標準スライドを作成するために用いた同じ染色又は異なる染色剤で染色され得る。前記第一のスライスのイメージと前記第二のスライスのイメージを重ね合わせることで、前記第一のスライスで定めた興味領域が第二のスライスに投影され、第二のスライスの興味領域を定める(ステップ310)。ステップ310は、切断ユニットに前記第二のスライスを置くことを含む。前記切断ユニットは、前記第二のスライスのイメージを取得し、該イメージ(第二のイメージ)及び前記第一のスライスのイメージ(第一のイメージ)を重ね合わせて、前記第一イメージの興味領域から前記第二のスライスの対応する興味領域を決定するように構成されている。前記切断ユニットは、これらのステップを制御するためのコンピュータを含んでよい。第二のスライスの興味領域が決定されると、それが前記第二のスライスから切断される(ステップ311)。これはさらなる分析のための異なるステーションへ送られる。ステップ305においてさらなる分析を要求されない場合、前記プロセスは終了する。」
「【0050】図7及び8には、光源28、ステージ26、顕微鏡対象物30、イメージセンサ32、レーザー34及び情報処理装置38を含むミクロ切断装置40が模式的に示される。示される例では、情報処理装置38はデータキャリア42を含むパーソナルコンピュータである。PC38は、ステージ26、イメージセンサ32及びレーザー34と操作可能に接続される(連続線で示されるように)。データキャリア42は前記装置40に次に記載する操作を行わせるように制御する。【0051】生物学的材料を含む、例えばパラフィンブロックなどの対象物から切り出された薄いスライス(第二のスライス)14が、透明基板18(例えばガラススライド)に置かれる。基板18はステージ26により支持される。調製の第一の操作段階で、図7に示されるように、光源28(例えば白色発光ランプ)が透明基板18を介して前記スライス14を均等に照明する。スライス14の少なくとも一部分が顕微鏡対象物30の視野内にある。顕微鏡対象物30は、少なくともスライス14からの光りを集め、前記スライス14の光学イメージ又は前記スライス14の一部分の光学イメージを前記センサ32上に生成する。ここで「スライスのイメージ」とは、またそれぞれのスライスの一部分のイメージをも意味する。イメージセンサ32は、例えば、ピクセル化光センサ(例えば電荷結合装置(CCD)などにより提供される)であり得る。光センサ32は、前記スライス14の光学イメージの強度及び色分布を示す出力シグナルを生成する。出力シグナルはPC38に送られる。出力シグナルに基づいて、PC38は前記スライス14のデジタルイメージを生成する。スライス14のデジタルイメージのそれぞれのピクセルの位置は、前記顕微鏡対象物30に関して前記スライス14のxy位置に対応して関連する。第一のスライス12(図1参照)であって、同じパラフィンブロックから前記第二のスライス14と平行に切断された第一のスライス12のデジタルイメージは、データキャリア42へ記録される。前記第一のスライス12及び第二のスライス14のデジタルイメージは、前記第一のイメージ及び前記第二のイメージとして参照される。また、前記第一のイメージとともにデータキャリア42の記憶されるのは、前記第一の定められた興味領域である。前記第一のイメージ及びそこで定められた興味領域は、病理学者により使用される(図示されていない)他の情報処理装置から受け取られ得る。他の情報処理装置を使用することで、病理学者は前記最初のイメージの興味領域を定めた。前記第1のイメージ及びそこで定められた興味領域から、PC38は前記第二の対応する興味領域を決定する。前記第一のイメージ、第二のイメージ及びそこで定められた興味領域の模式的表現が図9の例として与えられている。前記第二のイメージの興味領域のピクセルは、基板18の前記第二のスライス14の興味領域に対応してxy位置に直接対応する。」
「【0054】
図9は、図7及び8を参照して説明された第一のイメージ44及び第二のイメージ46が模式的に例示されている。第一のイメージ44及び第二のイメージ46は、生物学的材料(例えば組織又は個々の細胞など)を含むパラフィンブロックの平行スライスから得られた。従って前記第一のイメージ及び第二のイメージは類似している。特徴A、B、C、D(例えば細胞の塊)は両方のイメージに見える。第二のイメージ46での特徴A、B、C、Dは、第一のイメージ44の対応する特徴A、B、C、Dと比較するといくらかサイズが異なる。さらに、第二のイメージ46は第一のイメージに対して約20度回転している。図9にはまた、第一のイメージ44の興味領域48及び、前記第一のイメージ44の興味領域48から前記第二のイメージ46で決定された対応する興味領域50が示されている。ひとつの実施態様において、第二のイメージ46での興味領域50は、幾何学的変換により得られたものである。該幾何学的変換は、前記第一のイメージ44の特徴A、B、C、Dを前記第二のイメージ46での類似の特徴A、B、C、Dの位置へマッピングし、かかる決定された幾何学的変換を前記第一のイメージの興味領域48の領域に適用するものである。他の実施態様によれば、第二のイメージの興味領域50が、前記第一のイメージ44及び第二のイメージ46を、第一のイメージの少なくともいくつかの特徴(例えば、A、B及びC)を第二のイメージの類似の特徴(例えばA、B及びC)上に投影するように並べることで決定される。又は、第二のイメージの興味領域50は、第一のイメージ44及び第二のイメージ46の重なりのコントラストが最大となるように決定され得る。
【0055】
図10には、本発明の第四の側面による情報処理システム62の例が示される。示される例において、情報処理システム62はデータキャリア54(例えば磁気ディスク又は光学記憶装置又は全ての適切なメモリなど)、モニタ60(例えば液晶表示(LCD))、キーボード58及びマウス又はトラックボール56を含む。データキャリア54はひとつ又はそれ以上の物理的ユニットで提供されてよい。データキャリア54は、PC32を制御するための指示を含み、特にユーザーインタフェースを提供するための指示を含み、ユーザ(図示されていない)が、キーボード及び/又はマウス又はトラックボール56を介して前記照明システムにデータを入力し、かつ該モニタ60を介してデータを取り出すことを可能とする。情報処理システム62はさらに、入力手段及び/出力手段(例えば音響により入出力手段)を含み得る。さらにひとつ又はそれ以上のコンピュータを含んでいてよい。例えば、情報処理システム62はコンピュータネットワークにより提供されてよい。
【0056】
情報処理システム62のデータキャリア54が図11に模式的に示される。データキャリア62に記憶されているのは、既定のプロセス識別子64のセット及び生物学的材料を含む対象物10(図1に示される)に関するデータ記録68、70、72のセットである。データキャリア54はさらに、情報処理システム62を制御するための指示66を含む。示される例では、プロセス識別子64のセットは6つの異なるプロセス識別子(プロセスID1からプロセスID6)が含まれ、それぞれが固有の英数字で定められている。データキャリア54に記憶されるのはまた、前記プロセス識別子に関するラベル(図示されていない)である。例えば、識別子「プロセスID1」はラベル「ミクロ切断」又はラベル「取り出し」を伴うことが可能である。さらに、この例では、データ記録68、70、72のそれぞれが、前記対象物のスライスを識別するスライス識別子及びプロセス識別子64のセットから選択されるプロセス識別子を含み、前記プロセス識別子は前記それぞれのスライスが対象とされるべきプロセスを指示する。例えば、データ記録68はスライス識別子「スライスID1」及びプロセス識別子「プロセスID1」を持ち、これは、識別子「スライスID1]で識別される物理的スライスは、ミクロ切断プロセスの対象とされることが意図されていることを意味する。スライス識別子はまた、例えば英数字形、又はバーコードで、物理的スライス自体の上に又はスライド、カートリッジ又は他の前記物理的スライスを含む支持装置上に指示され得る。データ記録68、70、72のそれぞれはさらにスライス番号を含むことができる。これにより、それぞれのスライスが対象物(例えばパラフィンブロック)から切り出される前に対応する順に配置することができる。例えば、「スライス番号1」、「スライス番号2」及び「スライス番号3」は、数値3、4、5をそれぞれ持ち、これらの番号は、スライス識別子「スライスID1」、「スライスID2」、「スライスID3」が、パラフィンブロックから切り出される前にこの順に隣接して配置されることを意味する。スライス番号「スライス番号1」、「スライス番号2」、「スライス番号3」はまた、それぞれのスライス識別子「スライスID1」、「スライスID2」、「スライスID3」と統合されてもよい。」
図7~9、11は以下のとおりである。
【図7】
[図:0001396753000001.jpg]
i 明細書の【0050】、【0051】を参照しつつ、図7を見ると、薄いスライス(第二のスライス)14が透明基板18(例えばガラススライド)に置かれ、顕微鏡の光源28とイメージセンサ32との間の光路内に配置されていることが、把握できる。
【図8】
[図:0001396753000002.jpg]
【図9】
[図:0001396753000003.jpg]
【図11】
[図:0001396753000004.jpg]
ii 明細書の【0055】、【0056】参照しつつ、図11を見ると、各スライスのそれぞれのイメージが、データキャリア54に記憶されていることが、把握できる。
2 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定の根拠となった箇所の段落番号等を括弧内に記載する。)。
「生物学材料を含むパラフィンブロックから取得される第一のスライスは透明基板に載せて染色されかつカバースリップでカバーされ標準スライドを形成し、第一のスライスの第一のイメージに基づき、興味領域が前記第一のスライスで定められ、(【0046】)生物学的材料を含む、パラフィンブロックなどの対象物から切り出された第二のスライスが透明基板に置かれ、明視野イメージイングモードを提供する顕微鏡の光源とイメージセンサとの間の光路内に配置され、第二のスライスの光学イメージをイメージセンサ上に生成し、第二のスライスの光学イメージの強度及び色分布を示す出力シグナルを生成し、出力シグナルに基づいて、第二のスライスのデジタルイメージを生成し、(【0046】、【0050】、【0051】、図7、上記i)前記第一のスライス及び第二のスライスのデジタルイメージは、前記第一のイメージ及び前記第二のイメージとして参照され、(【0051】)各スライスのそれぞれのイメージが、データキャリアに記憶され、(【0055】、【0056】、図11、上記ii)第二のイメージでの興味領域は、前記第一のイメージの特徴A、B、C、Dを前記第二のイメージでの類似の特徴A、B、C、Dの位置へマッピングし、かかる決定された幾何学的変換により得られたものであり、(【0054】)前記第一イメージの興味領域から前記第二のスライスの対応する興味領域を決定し、(【0046】)第二のスライスの興味領域が決定されると、それが前記第二のスライスから切断され、これはDNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験のための異なるステーションへ送られる、方法。(請求項1、【0005】、【0046】)」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験」は、本願発明の「分子診断」に、
引用発明の「『標準スライドを形成』する『第一のスライス』」は、本願発明の「参照スライス」に、
引用発明の「『第一のスライスの第一のイメージに基づき』『定められ』た『興味領域』」は、本願発明の「参照スライスの参照画像内の参照除去領域」に、
引用発明の「『第一のスライス』の『染色され』た『生物学材料』」は、本願発明の「参照スライス内の生体物質は染色された組織サンプル」に、
引用発明の「第二のスライス」は、本願発明の「サンプルスライス」に、
引用発明の「デジタルイメージ」は、本願発明の「デジタルサンプル画像」に、
引用発明の「『パラフィンブロック』は『生物学的材料を含む』」は、本願発明の「生体物質はパラフィンに包埋された」に、
引用発明の「第二のスライスが透明基板に置かれ、明視野イメージイングモードを提供する顕微鏡の光源とイメージセンサとの間の光路内に配置され」は、本願発明の「前記サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、明視野顕微鏡の光源と画像検出器との間の光路内に配置され」に、
それぞれ相当する。
2 引用発明の方法では、「第二のスライスの興味領域が決定されると、それが前記第二のスライスから切断され、これはDNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験のための異なるステーションへ送られる」ことから、DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験のために、第二のスライスから切断される第二のスライスの興味領域が決定されている。
したがって、引用発明の「『DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどのさらなる分子レベル試験のため』に『第二のスライスから切断され』る『第二のスライスの興味領域が決定される』『方法』」と、本願発明の「分子診断のために除去されるべき染色されていない組織サンプルのサンプル除去領域を選択する方法」とは、「分子診断のために除去されるべき組織サンプルのサンプル除去領域を選択する方法」の点で一致する。
3 引用発明の「『生物学材料を含むパラフィンブロックから取得される第一のスライスは透明基板に載せて染色されかつカバースリップでカバーされ標準スライドを形成し、第一のスライスの第一のイメージに基づき、興味領域が前記第一のスライスで定められ』ること」は、本願発明の「対象の参照スライスの参照画像内の参照除去領域を選択するステップであって、前記参照スライス内の生体物質は染色された組織サンプルである、ステップ」に相当する。
4 引用発明の「『生物学的材料を含む、パラフィンブロックなどの対象物から切り出された第二のスライス』の『デジタルイメージを生成』すること」と、本願発明の「イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質はパラフィンに包埋された染色されていない組織サンプルである、ステップ」とは、「イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質はパラフィンに包埋された組織サンプルである、ステップ」の点で一致する。
5 引用発明の「生物学的材料を含む、パラフィンブロックなどの対象物から切り出された第二のスライスが透明基板に置かれ、明視野イメージイングモードを提供する顕微鏡の光源とイメージセンサと光路内に配置され、第二のスライスの光学イメージをイメージセンサ上に生成し」は、本願発明の「前記サンプルスライスを通過して前記画像検出器によって受け取られる光が供給され」に相当する。
6 本願発明の「前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像内の前記参照除去領域を前記デジタルサンプル画像にトランスレートするステップ」の構成について
引用発明では、「前記第一のスライス及び第二のスライスのデジタルイメージは、前記第一のイメージ及び前記第二のイメージとして参照され、各スライスのそれぞれのイメージが、データキャリアに記憶され」ていることから、前記第一のスライス及び第二のスライスのデジタルイメージは、データキャリアに記憶されているといえる。
そして、引用発明では、「第二のイメージでの興味領域は、前記第一のイメージの特徴A、B、C、Dを前記第二のイメージでの類似の特徴A、B、C、Dの位置へマッピングし、かかる決定された幾何学的変換により得られたもの」であり「前記第一イメージの興味領域から前記第二のスライスの対応する興味領域を決定し」ていることから、デジタルイメージである第一のイメージの興味領域から幾何学的変換によりデジタルイメージである第二のイメージの興味領域が得られているものといえる。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。
7 本願発明の「トランスレートされた参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップとを含む」の構成について
引用発明では、「第二のイメージでの興味領域は、前記第一のイメージの特徴A、B、C、Dを前記第二のイメージでの類似の特徴A、B、C、Dの位置へマッピングし、かかる決定された幾何学的変換により得られたもの」であり「前記第一イメージの興味領域から前記第二のスライスの対応する興味領域を決定し」ていることから、デジタルイメージである第一のイメージの興味領域から幾何学的変換によりデジタルイメージである第二のイメージの興味領域を決定しているものといえる。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。
8 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「分子診断のために除去されるべき組織サンプルのサンプル除去領域を選択する方法であって、a) 対象の参照スライスの参照画像内の参照除去領域を選択するステップであって、前記参照スライス内の生体物質は染色された組織サンプルである、ステップと、b) イメージング設定の下で前記対象のサンプルスライスのデジタルサンプル画像を取得するステップであって、前記サンプルスライス内の生体物質はパラフィンに包埋された組織サンプルである、ステップと、前記サンプルスライスは、サンプルスライド上に受け入れられ、明視野顕微鏡の光源と画像検出器との間の光路内に配置され、前記サンプルスライスを通過して前記画像検出器によって受け取られる光が供給され、c) 前記デジタルサンプル画像を前記参照画像とレジストレーションし、前記参照画像内の前記参照除去領域を前記デジタルサンプル画像にトランスレートするステップと、d) トランスレートされた参照除去領域に基づいて、前記デジタルサンプル画像内のサンプル除去領域を特定するステップとを含む、方法。」
【相違点】
本願発明は、サンプルスライス内の生体物質は「染色されていない」組織サンプルであり、「前記光源と前記画像検出器との間の光路に、パラフィンに包埋された染色されていない生体物質と背景との間のコントラストを向上させるコントラスト強調装置がさらに設けられ」ているのに対し、引用発明は、第二のスライスの生物学材料が染色されていないのか明らかでなく、コントラスト強調装置が設けられているのか明らかでない点。
第6 判断
1 相違点について
(1)引用発明は、第二のスライスから切断された興味領域について、DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどの分子レベル試験が行われるものである。
(2)そして、無染色の組織標本について細胞を採取し、細胞に与えるダメージを少なくし、より精度の高い分析を行うようにすることは、当業者が通常考慮することであり(必要ならば、特開2003-161893号公報(特に、【0083】参照。)、特開2013-195133号公報(特に、【0025】、【0038】参照。)を参照されたい。)、DNA遺伝子型又はRNA転写プロフィールなどの分子レベル試験についても当てはまる。
(3)そうすると、引用発明の生物学的材料を含む、パラフィンブロックなどの対象物から切り出された第二のスライスにおいても、無染色とするほうが、細胞に与えるダメージを少なくでき、上記切断された興味領域の上記分子レベル試験において、より精度の高い分析を行うことができるといえる。
さらに、引用文献1の【0022】には、「スライスに関する処理」として「スライスにつきなにもしない」と記載され、引用文献1は、第二のスライスを無染色とすることを排除はしていない。
したがって、引用発明の第二のスライスにおいて、無染色としようとする動機が存在する。
(4)上記(3)のように、第二のスライスを無染色とした場合には、生物学的材料が染色されていないことから生物学的材料の位置が把握しづらくなる。そして、無染色の生物学的材料の場合には、光源と画像検出器との間の光路の間に、生体物質と背景との間のコントラストを向上させコントラストを強調する装置を設けることは、周知技術(必要ならば、特開2003-161893号公報(特に、【0083】-【0088】、図12等の照明光源11とCCDカメラの光路の間に、ポラライザ43とDICプリズム44を設けている旨の記載参照)、特開2014-209085号公報(特に、【0002】、【0087】-【0090】、図10等の光源2とCCDカメラ13の光路の間に、像コントラスト変化ユニット5を設けている旨の記載参照)、特開平9-15504号公報(【0001】、【0016】、【0017】、【0065】、図1等の光源7と電子撮像素子4の光路の間に、偏光子8及びのノマルスキープリズム9を設けている旨の記載参照)等を参照されたい。)である。そうすると、無染色の組織標本上の採取する細胞の位置は把握しやすくするために、引用発明に上記周知技術を適用することは、当業者が、容易に想到し得たことである。
(5)したがって、引用発明において、周知技術を考慮し、相違点に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
2 効果について
そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
4 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「これらの記載から、引用文献1では、第一のイメージ中の各特徴A、B、C、Dに幾何学的変換をしていることが分かります。第一のイメージ全体をレジストレーションしていません。」、「すなわち、分子診断のために除去されるべき染色されていないサンプルの領域(すなわち、引用文献1の「特徴」以外の領域)を選択するためには、各特徴を幾何学的変換してもだめで、デジタルサンプル画像全体を参照画像とレジストレーションする必要があるからです。」旨主張している。
しかしながら、本願発明では「デジタルサンプル画像を」「レジストレーションする」と特定しており、「デジタルサンプル画像全体を」「レジストレーションする」とは特定されていないので、上記主張は、本願発明に基づかないものである。また、引用文献1の【0055】の「データキャリア54」の記載及び図11から、各スライスのそれぞれのイメージが、データキャリア54に記憶されていることが、把握できるので、引用文献1においても、各スライスのイメージ中の各特徴を記憶していると考えるよりも、各スライスのそれぞれイメージ、例えば、第一のスライスの第一イメージ44、第二のスライスの第二イメージ46などのイメージ全体を記憶していると考えるのが自然である。
したがって、審判請求人の主張は採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-017772