特許拒絶査定不服審判
2021-017595
高圧直噴用のレール
- 審判番号
- 2021-017595
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-247196外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月21日
- 審決日
- 2023年03月16日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】臼井国際産業株式会社
- 【請求人代理人】翠弁理士法人
- 分類
- P18 .121-WZ (F02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-247196「高圧直噴用のレール」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月11日出願公開、特開2019-113004〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月25日の出願であって、令和3年7月7日付け(発送日:令和3年7月14日)で拒絶理由が通知され、令和3年9月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年9月30日付け(発送日:令和3年10月4日)で拒絶査定がされ、これに対して令和3年12月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和4年10月20日付け(発送日:令和4年10月21日)で当審において拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和4年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和4年12月1日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
燃料の圧力が50MPa以上で使用される鉄鋼製のガソリン直噴用のフューエルレールにおいて、複数のブロック部材と、このブロック部材の間隔を連結するパイプ部材とを備え、上記ブロック部材は、上記パイプ部材と連通する分岐孔と、インジェクターを締結するためのメタルシール部とを備えるとともに、分岐孔の外周部分を上記パイプ部材よりも肉厚に形成し、このパイプ部材の外径を、上記ブロック部材の分岐孔から続く上記パイプ部材との接続部の内径よりも径小とするとともに当該パイプ部材の外径と内径とを当該パイプ部材の一端から他端まで一定とし、このブロック部材の硬度が、上記パイプ部材の硬度よりも高いことを特徴とするガソリン直噴用のフューエルレール。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
(進歩性)本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
1.特開平10-110883号公報
2.特開2010-216431号公報
3.特開2001-221127号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2007-127096号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2017-14900号公報
6.特開2012-52452号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2014-47678号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
当審拒絶理由において引用された特開平10-110883号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般にディーゼル内燃機関における高圧燃料多岐管或いはブロック・レール等のようなコモンレールに関するものである。」
(2)「【0004】また、従来のコモンレールは、図11に示すごとく、本管レール11の流通路11′の中心とボス12の貫孔12′の中心が一致した構造となっているため、本管レール11に、絶えず繰返される供給圧力が急激に変動する1000kgf/cm2以上にもおよぶ高圧流体の内圧が作用したとき、この内圧と、ボス12の貫孔12′に作用する内圧により合成された力によって本管レール流通路11′の開口端部P′に最も大きな応力が発生し、内圧疲労強度が低いという欠点がある。」
(3)「【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係るコモンレールのブロック単体の一例を示す正面図、図2は図1のAーA線上の縦断側面図、図3は同じく本発明に係るコモンレールのブラケット付きブロック単体の一例を示す正面図、図4は図3のAーA線上の縦断側面図、図5は同じく本発明に係るコモンレールの他のブロック単体の一例を示す正面図、図6は同じく本発明に係るコモンレールのブロック単体間に介在させるボス間隔調整用の短尺の筒体(スペーサ)の一例を示す正面図、図7は同じく本発明に係るコモンレールの別のブロック単体の一例を示す正面図、図8は図7のAーA線上の縦断側面図、図9は同じく本発明に係るコモンレールの全体構成の一例を示す正面図、図10は本発明の他の例を示す部分拡大断面図であり、1はコモンレールとしての本管レール、1-1、1-2、1-3、1-4はブロック単体、1-1a、1-2a、1-3a、1-4aはボス、2は短尺の筒体、3はろう熔着、4は本管レールの端部に固着された盲栓である。
【0009】コモンレールとしての本管レール1はブロック単体の複数を凹凸嵌合方式にて接合済めるとともに、その接合部をろう付けして一体化するもので、基本的には凹部を有するブロック単体1-1、1-2、1-4と、凸部を有するブロック単体1-3とから構成され、必要に応じて少なくとも1つの短尺の筒体2をブロック単体間に介在するよう使用して構成するものである。
【0010】図1、図2に示すブロック単体1-1は、例えば管径26m/m、肉厚8m/m程度の比較的厚肉で細径の金属管であって、その軸芯内部を流通路1-1′となして軸方向の周壁部に、該流通路に軸芯と偏心して連通する貫孔1-1a′を有するボス1-1aを軸芯と直角に突設し、流通路1-1′の両端部に内径22m/m程度の大径部(凹部)1-1″を設けてなるものである。ここで、ボス1-1aの貫孔1-1a′の偏心量△lとしては、特に限定するものではないが、貫孔1-1a′の流通路開口端部に発生する応力を軽減させるためには、図2に示すごとく流通路1-1′の内壁面の接線と貫孔1-1a′の内壁面の接線がほぼ一致する程度とするのが好ましい。1-1bは螺子部である。
【0011】図3、図4に示すブロック単体1-2は、外周に設けた該コモンレール取付用のブラケット1-2c以外は、前記図1、図2に示すブロック単体と同様、軸芯内部を流通路1-2′となして軸方向の周壁部に、該流通路に軸芯と偏心して連通する貫孔1-2a′を有するボス1-2aを軸芯と直角に突設し、流通路1-2′の両端部に内径22m/m程度の大径部(凹部)1-2″を設けてなるもので、前記ブラケット1-2cは該ブロック単体1-2の外周壁に一体に突設し、端部に取付孔1-2c′を穿設している。1-2bは螺子部である。
【0012】図5に示すブロック単体1-3は、前記ブロック単体1-1または1-2の大径部(凹部)1-1″、1-2″に凹凸嵌合方式にて接合するためのブロック単体であり、軸芯内部を流通路1-3′となして軸方向の周壁部に、該流通路に軸芯と偏心して連通する貫孔1-3a′を有するボス1-3aを軸芯とほぼ直角に突設し、流通路1-3′の一端に前記のブロック単体と同じ内径22m/m程度の大径部1-3″を設け、他端に前記大径部1-1″、1-2″、1-3″に凹凸嵌合する凸部1-3dを設けた構造となしたものである。1-3bは螺子部である。
【0013】図6に示す短尺の筒体2はボス間隔調整用のスペーサであって、各ブロック単体の径に対し任意の径(図示の例では同一径となっている)の流通路2-1を軸芯内部に有し、両端部に前記の各ブロック単体1-1、1-2、1-3の大径部1-1″、1-2″、1-3″に凹凸嵌合する凸部2-1′を有する。
【0014】図7、図8に示すブロック単体1-4は、ボス1-4を軸芯に対し軸芯方向に適当な角度に傾斜させたもので、全体的には前記ブロック単体1-1、1-2と同じ構造である。すなわち、軸芯内部を流通路1-4′となして軸方向の周壁部に、該流通路に軸芯と偏心して連通する貫孔1-4a′を有するボス1-4aを軸芯に対し軸芯方向に角度θ傾斜させて突設し、流通路1-4′の両端部に前記と同様の大径部1-4″を設けた構造となしたものである。1-4bは螺子部である。なお、上記のごとくボスを傾斜させて設けるのは、コモンレールをエンジンに取付けた場合の各シリンダに対する噴射ノズルへのインジェクションパイプや高圧ポンプからのフィードパイプなどの配管や取付の容易性を考慮したためである。
【0015】図9に示すコモンレール1は、一例として前記の各ブロック単体1-1、1-2、1-3と短尺の筒体2とで構成したもので、各ブロック単体1-1、1-2、1-3と短尺の筒体2はそれぞれ凹凸嵌合させて接合し、その接合部をろう熔着3して一体化したものである。かかる構造のコモンレールの場合、各ブロック単体1-1、1-2、1-3に内圧がかかった時高い応力が発生する場所は、貫孔1-1a′、1-2a′、1-3a′の各流通路開口端部の、流通路の内壁面と貫孔の内壁面がほぼ一致する側と反対側の端部Pの部分のみとなり、最大発生応力が必然的に小さくなることにより、各ブロック単体1-1、1-2、1-3の内圧疲労強度が向上し、コモンレール1自体の耐久性が向上する。なお、各ボスには必要に応じてフローリミッター等を設けることができる。
【0016】一方上記した例では、各ブロック単体1-1、1-2、1-3の端部に凹部を、短尺の筒体2の端部に凸部を形成して凹凸嵌合させて接合し、その接合部をろう熔着3したものを示したが、本発明では図10のようにブロック単体1-1の端部に凸部を、短尺の筒体2の端部に凹部を形成し、それぞれ凹凸嵌合させて接合し、その接合部をろう熔着3することもできる。また図10の例ではブロック単体1-1の流通路1-1′の径を短尺の筒体2の流通路2-1の径より細径として構成したために、貫孔1-1a′の周縁からブロック単体の外面までの肉厚が厚くなりブロック単体の内圧疲労強度が一層向上する。なおこの例では本管レール1の端部に盲栓4がろう熔着などにより固着されている。」
(4)
[図:0001397629000001.jpg]
(5)
[図:0001397629000002.jpg]
(6)
[図:0001397629000003.jpg]
(7)
[図:0001397629000004.jpg]
(8)上記(3)(段落【0013】を参照。)及び上記(6)の図示内容から、「短尺の筒体2の流通路2-1の径」は「短尺の筒体2の一端から他端まで一定」であるといえる。
上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明〕
「ディーゼル内燃機関におけるコモンレール1において、複数のブロック単体1-1、1-2、1-3、1-4と、このブロック単体1-1、1-2、1-3、1-4間に介在させる短尺の筒体2とを備え、上記ブロック単体1-1、1-2、1-3、1-4は、上記短尺の筒体2と連通する流通路1-1′、1-2′、1-3′、1-4′と、噴射ノズルへのインジェクションパイプを取り付けるためのボス1-1a、1-2a、1-3a、1-4aとを備えるとともに、短尺の筒体2の流通路2-1の径を当該短尺の筒体2の一端から他端まで一定とした、ディーゼル内燃機関におけるコモンレール1。」
2 引用文献2
当審拒絶理由において引用された特開2010-216431号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0003】
この種のコモンレールでは、中空部に超高圧(例えば数百MPa)の燃料が蓄圧されるため、中空部及び交差穴部を形成する内壁のうち、中空部及び交差穴部が交差する交差穴部の中空部側の開口部の周辺の内壁部分には応力が集中する。」
(2)「【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、蓄圧される高圧燃料の高圧化に耐え得るコモンレールの強度確保と、優れた生産性を有する構成とを両立させるコモンレールを提供することにある。」
(3)「【0012】
即ち、請求項1に記載の発明では、中空部を有し、中空部に高圧燃料を蓄圧するコモンレールにおいて、内部に中空部を有するレール本体と、内部に連絡通路部を有するジョイント部であって、連絡通路部に開口し、連絡通路部に交差する交差穴部と、連絡通路部とは反対側の端部に燃料配管が接続される配管接続部と有するジョイント部と、レール本体とジョイント部を接合する接合手段とを備え、レール本体とジョイント部は、接合手段によりレール本体とジョイント部とが一体的に接合されるとともに、中空部と連絡通路部が連通する構成としたことを特徴とする。
【0013】
これによると、コモンレールは、接合手段により一体的に接合されるレール本体とジョイント部とで構成されるので、中空部を有するレール本体と、連絡通路部及び交差穴部を有するジョイント部とは、それぞれ別部材で形成することができる。
【0014】
さらに、上記ジョイント部は、連絡通路部に交差する交差穴部であって、連絡通路部に開口する交差穴部と、連絡通路部とは反対側の端部に燃料配管が接続される配管接続部と有するので、ジョイント部に、交差穴部を集中配置する構成とすることができる。言い換えると、レール本体には、その中空部を形成する内壁に、交差穴部の開口部が形成されない構成とすることができる。
【0015】
以上の構成によると、レール本体の上記内壁には、応力集中し易い交差穴部の開口部が形成されることはないので、コモンレールに蓄圧される高圧燃料の高圧化に対し、例えば高価な、高強度の材料を、レール本体に使用する必要はない。」
(4)「【0039】
図1及び図2に示すレール本体40は、金属製であって、例えば炭素鋼(本実施例では、高炭素鋼(S48C))が使用されている。レール本体40は、中空の筒状に形成されている。レール本体40の両端部47、48は圧力制御弁32及びジョイント部50が気密に取り付けられており、内部に中空部41が形成されている。
【0040】
中空部41は、図1に示すレール本体40の内壁42で形成されている。中空部41は、レール本体40の長手方向Lに延びており、内部に燃料を蓄圧可能である。中空部41の一端部48側が圧力制御弁32の先端部32bで閉塞され、かつ中空部41の他端部47側がジョイント部50の接合部57によって閉塞されるように構成されているからである。
【0041】
また、レール本体40には、内壁42及び外壁43を貫通するリーク配管49が設けられている。リーク配管49と中空部41との間には、中空部41を気密に閉塞する先端部32bの外周壁によってリーク通路44が形成されている。このリーク通路44は、圧力制御弁32から排出される燃料を、リーク配管49を経由して排出通路15に排出する。」
(5)「【0042】
図1~図3に示すジョイント部50は、レール本体40とは異なる材料による金属製であって、例えば機械構造用合金鋼(本実施例では、クロムモリブデム鋼(SCM435))が使用されている。本実施形態によるジョイント部50の材料に使用する機械構造用合金鋼は、引張り強度に優れる材料であり、安価な炭素鋼に比べて引張り強度が高い。
【0043】
ジョイント部50は、概ね円筒状を呈する本体部50aを有している。本体部50aには、配管接続部60及び接合部57が本体部50aと一体に単一の部材で形成されている。配管接続部60及び接合部57は本体部50aより突出している。」
(6)「【0044】
連絡通路部51は、図1及び図3に示すように、本体部50aの内部に内壁52により区画形成され、接合部57を貫通するように長手方向Lに延びている。
【0045】
接合部57の外壁には、図1に示すように、雄ねじ部57aが設けられており、レール本体40の他端部47側に形成された雌ねじ部47aにねじ止め可能である。接合部57の雄ねじ部57a及びレール本体40の他端部47の雌ねじ部47aはレール本体40とジョイント部50を一体的に接合する接合手段であって、請求範囲に記載の接合手段に相当する。」
(7)「【0046】
配管接続部60は、ジョイント部50の本体部50aから径方向外側(図中の直交方向R)、並びに長手方向Lの接合部57とは反対側(図中の長手方向L左側)へ突出している。本実施形態では、配管接続部60が、本体部50aの外壁53の周囲に沿って五個所設けられている。五つの配管接続部60のうち一つには、燃料噴射ポンプ11に接続する供給配管16が接続される。残る四つの配管接続部60には、燃料噴射弁12に接続する燃料配管17が接続される。
【0047】
配管接続部60の外壁には、燃料配管17及び供給配管16のうちのいずれかの配管に接続するための雄ねじ部63が形成されている。雄ねじ部63には、上記配管側の接続構成要素としての接続ナット(図示せず)が取り付けられる。接続ナットの内壁には、雄ねじ部63とねじ止め可能な雌ねじ部が形成されている。接続ナットは、上記配管16、17の本体と係合しており、上記配管16、17の本体は、内部に燃料通路を形成する筒状のパイプである。そして、その上記配管16、17の本体は、配管接続部の座面部69に押し当てる接続ヘッドを有している。
【0048】
配管接続部60は、連絡通路部51とは反対側の端部に座面部69を有している。座面部69では、配管接続部60の内壁62が連絡通路部51側へかけて内径が小さくなる円錐台形状に形成されている。
【0049】
配管接続部60は、内周側に配管接続部60を貫通する交差穴部61を備えており、交差穴部61は、一方の開口部65が連絡通路部51に接続し、他方の開口部が座面部69に開口している。言い換えると、交差穴部61は、配管接続部50及び本体部50aを貫いて連絡通路部51に接続している。」
(8)「【0050】
本実施形態では、燃料配管17が接続する上記四つの配管接続部60の交差穴部61は、図1及び図3に示すように、連絡通路部51に対し直交方向Rに開口している。これらの配管接続部60は、図3(b)に示すように、ジョイント部50の本体部50aの周方向にそって配置されおり、隣接する配管接続部60同士が所定の相互間隔Pで配置されている。
【0051】
また、供給配管16が接続する上記一つの配管接続部60の交差穴部61は、連絡通路部51に対し長手方向Lに開口している。上記一つの配管接続部60は、図3(a)に示すように、他の上記四つの配管接続部60に対し所定の相互間隔Pを置いて配置されている。
ここで、連絡通路部51は中空部41に連通するため、ジョイント部50の内壁52、62には、中空部41並びに連絡通路部51及び交差穴部61に貯留した蓄圧された高圧燃料により、引張り応力が発生する。そして、内壁52、62のうち、上記交差穴部61の連絡通路部51側の開口部65の周辺の内壁部分で、応力集中が生じ易いため、当該開口部65の周辺内壁部分で引張り最大応力が発生する。
【0052】
言い換えると、コモンレール30内で燃料を蓄圧し、当該蓄圧燃料による内圧を受けて引張り応力が発生する内壁42、52、62のうち、引張り最大応力が発生する箇所は、ジョイント部50の内壁52、62に限定され、かつ交差穴部61の開口部65の周辺内壁部分の領域に限られるのである。
【0053】
これに対し本実施形態では、ジョイント部50は、引張り強度に優れる機械構造用合金鋼を使用するので、交差穴部61の開口部65の周辺内壁部分に生じる引張り最大応力を、効果的に低減することが可能となるのである。」
(9)「【0054】
以上説明した本実施形態では、コモンレール30は、接合手段70により一体的に接合されるレール本体40とジョイント部50とで構成されるため、中空部41を有するレール本体40と、連絡通路部51及び交差穴部61を有するジョイント部50とは、それぞれ別部材で形成することができる。
【0055】
さらに、上記ジョイント部50に交差穴部61を集中配置する構成としているので、コモンレール30内で蓄圧される燃料圧力の作用により引張り最大応力が発生する領域が、ジョイント部50に限定され、かつ交差穴部61の開口部65の上記周辺内壁部分の領域に限られるのである。
【0056】
そのようなレール本体40は、コモンレール30に蓄圧される高圧燃料の高圧化に対し、引張り強度に優れた高強度材料を使用する必要はなく、安価な炭素鋼などの材料を使用することができる。
【0057】
一方、ジョイント部50は上記高圧燃料の高圧化に対し高強度材料の使用が必要となるものの、高強度材料の使用をジョイント部50に限定することができる。
【0058】
それ故に、上記高圧燃料の高圧化対応のための高価な高強度材料使用をジョイント部50に限定できるので、その材料費を従来技術のコモンレールに比べて抑制することができる。
【0059】
したがって、本実施形態によるコモンレール30は、蓄圧される高圧燃料の高圧化に耐え得るコモンレールの強度確保と、優れた生産性を有する構成とが両立し得るのである。」
(10)「【0063】
また、以上説明した本実施形態では、連絡通路部51の通路径D1を、図1に示すように、中空部41の内径D2より小径に形成される構成とすることが好ましい。
【0064】
ここで、コモンレール30に構成される中空部41及び連絡通路部51のうち、高圧燃料を安定して蓄圧する蓄圧容積を、中空部41で確保することになる。それ故に、連絡通路部51を小径化する場合であっても、蓄圧燃料噴射装置10の燃料噴射性能へ影響を及ぼすことはなく、よって連絡通路部51の通路径D1を、中空部41の内径D2より小径化することが容易に実現できる。
【0065】
このようにジョイント部50の連絡通路部51を小径化することで、ジョイント部の肉厚を増やせ、当該肉厚増加により応力低減が図れるので、上記引張り最大応力を更に低減することができる。」
(11)【図1】
[図:0001397629000005.jpg]
(12)【図2】
[図:0001397629000006.jpg]
(13)【図3】
[図:0001397629000007.jpg]
上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2記載事項1」、「引用文献2記載事項2」及び「引用文献2記載事項3」という。)が記載されている。
〔引用文献2記載事項1〕
「内部に中空部41を有するレール本体40と、内部に連絡通路部51を有するジョイント部50であって、連絡通路部51に開口し、連絡通路部51に交差する交差穴部61と、燃料噴射弁12に接続する燃料配管17が接続される配管接続部60と有するジョイント部50と、を備えるコモンレール30において、レール本体40には高炭素鋼(S48C)を使用し、ジョイント部50にはクロムモリブデン鋼(SCM435)を使用すること。」
〔引用文献2記載事項2〕
「ジョイント部50の連絡通路部51を小径化することで、ジョイント部の肉厚を増やし、応力低減を図ること。」
〔引用文献2記載事項3〕
「レール本体40は、応力集中し易い交差穴部61が形成されないので、高強度の材料を使用する必要がないこと。」
第5 当審の判断
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ブロック単体1-1、1-2、1-3、1-4」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「ブロック部材」に相当し、以下同様に、「間に介在させる」は「間隔を連結する」に、「短尺の筒体2」は「パイプ部材」に、「流通路1-1′、1-2′、1-3′、1-4′」は「分岐孔」に、それぞれ相当する。
引用発明の「ディーゼル内燃機関におけるコモンレール1」と、本願発明の「ガソリン直噴用のフューエルレール」とは、「フューエルレール」という限りにおいて一致しており、同様に、引用発明の「噴射ノズルへのインジェクションパイプを取り付けるためのボス1-1a、1-2a、1-3a、1-4a」と本願発明の「インジェクターを締結するためのメタルシール部」とは、「インジェクターを取り付けるための部分」という限りにおいて一致している。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「フューエルレールにおいて、複数のブロック部材と、このブロック部材の間隔を連結するパイプ部材とを備え、上記ブロック部材は、上記パイプ部材と連通する分岐孔と、インジェクターを取り付けるための部分とを備えるとともに、当該パイプ部材の内径を当該パイプ部材の一端から他端まで一定とした、フューエルレール。」
〔相違点1〕
本願発明においては、「ガソリン直噴用の」フューエルレールであるのに対して、引用発明においては、「ディーゼル内燃機関における」コモンレール1である点。
〔相違点2〕
「インジェクターを取り付けるための部分」に関して、本願発明においては「インジェクターを締結するためのメタルシール部」であるのに対して、引用発明においては「噴射ノズルへのインジェクションパイプを取り付けるためのボス1-1a、1-2a、1-3a、1-4a」である点。
〔相違点3〕
本願発明においては、ブロック部材は「分岐孔の外周部分を上記パイプ部材よりも肉厚に形成し」たものであり、パイプ部材の外径を「上記ブロック部材の分岐孔から続く上記パイプ部材との接続部の内径よりも径小とするとともに当該パイプ部材の外径と」内径とを「当該パイプ部材の一端から他端まで一定とし」たものであるのに対して、引用発明においては、短尺の筒体2の流通路2-1の径を当該短尺の筒体2の一端から他端まで一定としたものである点。
〔相違点4〕
本願発明においては、「燃料の圧力が50MPa以上で使用される鉄鋼製」であって、「ブロック部材の硬度が、上記パイプ部材の硬度よりも高い」のに対して、引用発明においては、かかる事項を備えているか不明な点。
2 相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
ディーゼル内燃機関におけるコモンレール(フューエルレール)を、ガソリン直噴用のフューエルレールにも用いることができることは、本願の出願前に周知の事項である(以下「周知事項」という。例えば、当審拒絶理由で引用された引用文献3の段落【0026】及び【0053】、同引用文献4の段落【0030】、同引用文献5の段落【0011】を参照。)。
引用発明において、周知事項を参酌し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点2について検討する。
フューエルレールにおいて、インジェクターを取り付けるための部分を、インジェクターを締結するためのメタルシール部とすることは、例示するまでもなく、本願の出願前に周知の技術である(以下「周知技術1」という。)。
引用発明において、周知技術1を参酌し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点3について検討する。
引用文献2記載事項2及び3が、交差穴部61を有しないレール本体40はジョイント部51よりも強度を必要としないから厚みが小さくてもよいことを示していることは、当業者であれば容易に理解できる。よって、引用発明並びに引用文献2記載事項2及び3に接した当業者であれば、引用発明の短尺の筒体も、交差穴部を有しないから、厚みが小さくてもよいことは、容易に理解できる。
また、ブロック部材とパイプ部材とからなる直噴エンジン用フューエルレールにおいて、パイプ部材の外径と内径とを当該パイプ部材の一端から他端まで一定とすることは周知の技術である(以下「周知技術2」という。例えば、当審拒絶理由で引用された引用文献6の図3、同引用文献7の図3を参照。)。
そうすると、引用発明において周知技術2を参酌し、短尺の筒体の凸部2-1′の外径と凸部2-1′以外の部分の外径とを同じにすることで、短尺の筒体の外径をも当該短尺の筒体の一端から他端まで一定とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用文献1の図1、3、6及び9(上記第4 1(4)ないし(7)を参照。)から看取できるブロック単体の流通路1-1′、1-2′、1-3′、1-4′の外周部分の肉厚と、短尺の筒体の凸部2-1′の肉厚との関係を踏まえれば、そのようにして構成されたものは、ブロック単体(ブロック部材に相当)の流通路1-1′、1-2′、1-3′、1-4′(分岐孔に相当)の外周部分は、短尺の筒体(パイプ部材に相当)よりも肉厚となる。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献2記載事項2及び3並びに周知技術2を参酌することにより、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点4について検討する。
引用文献1の段落【0004】の記載から、引用発明のコモンレール1は、1000kgf/cm2(98MPa)以上での使用を想定していると理解でき、引用文献2の段落【0003】の記載から、引用文献2記載事項1のコモンレール30は、数百MPa以上での使用を想定していると理解できる。
そして、引用発明と引用文献2記載事項1とは、交差穴部を有するインジェクターを取り付けるための部分を、交差穴部を有しないパイプ状の部分とは別部材としたコモンレールという点で共通する。
よって、引用発明において、引用文献2記載事項1を参酌し、ブロック単体(ブロック部材に相当)にクロムモリブデン鋼(SMC435)を使用し、短尺の筒体(パイプ部材に相当)に高炭素鋼(S48C)を使用することは、当業者が容易に想到できたことである。
ここで、SCM435の硬度(ブルネリHBW)は269~331程度であり、S48Cの硬度(ブルネリHBW)は、143~277程度であるから、SCM435の方が総じて硬度が高く、引用文献2記載事項3が示すように「レール本体40は、応力集中し易い交差穴部61が形成されないので、高強度の材料を使用する必要がないこと。」を踏まえると、ブロック単体(ブロック部材に相当)の硬度が、短尺の筒体(パイプ部材に相当)の硬度よりも高くなるように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、全体として見ても、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項1ないし3、周知事項並びに周知技術1及び2から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は引用発明、引用文献2記載事項1ないし3、周知事項並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 請求人の主張について
請求人は令和4年12月1日の意見書において次のように主張している。
「引用文献1~5には、補正後の請求項1の必須の構成要件である「パイプ部材の外径と内径とを当該パイプ部材の一端から他端まで一定とし」た構成については全く開示も示唆もされておりません。」(【意見の内容】3.(2))
しかしながら、引用発明の短尺の筒体(本願発明における「パイプ部材」に相当)も、内径が一端から他端まで一定である。そして、ブロック部材とパイプ部材とからなる直噴エンジン用フューエルレールにおいて、パイプ部材の外径と内径とを当該パイプ部材の一端から他端まで一定とすることは、上記相違点3についての検討において周知技術2として示したように、本願の出願前に周知の技術である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項1ないし3、周知事項並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-017595