審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2024-004639

内燃機関の微小液滴噴射装置

審判番号
2024-004639
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-043232
請求日
2024年02月28日
審決日
2026年04月30日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】斎藤 文修
  • 【請求人代理人】竹村 壽
  • 【請求人】池田 時広
  • 【請求人代理人】竹村 壽
審判長/審判官
  • 審判長 川俣 洋史
  • 審判官 門 良成
  • 審判官 濱本 禎広
分類
P18 .121-WZ (F02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-43232「内燃機関の微小液滴噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年7月27日出願公開、特開2020-112155〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年1月8日に出願した特願2019-1495号の一部を平成31年3月9日に新たな特許出願(特願2019-43232号)としたものであって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和4年10月21日付け:拒絶理由通知書 同年12月25日 :意見書及び手続補正書の提出 令和5年 2月24日付け:拒絶理由通知書 同年 6月24日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 9月21日 :手続補正書の提出 同年11月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月28日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 2月28日 :審判請求書及び手続補正書の提出 令和7年10月22日付け:拒絶理由通知書 令和8年 1月19日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和8年1月19日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 液体燃料の液滴を噴射する噴射口を備えた内燃機関の微小液滴噴射装置であって、前記微小液滴噴射装置とエンジンや車台が導線で電気的に接続され、振動板と、圧電素子と、前記液滴の気化を容易にするために、前記圧電素子に直流のパルス電圧を加えて前記振動板を振動させ、前記振動によって前記液滴を加速するアクチュエータと、検出器と、空気流量、エンジン回転数、冷却水温度、スロットル開口度及び蓄電池電圧などの前記検出器からの信号を受け取るセンサと、前記センサからの情報に基づき液滴噴射量を制御するコントローラとを備え、直径50μm以下の前記噴射口から直径50μm以下の前記液滴を噴出することを特徴とする内燃機関の微小液滴噴射装置。」 第3 当審において通知した拒絶の理由の概要 令和7年10月22日付けで当審において通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下の理由を含むものである。 (進歩性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2004-085835号 2.特開2006―336509号公報(周知技術を示す文献) 第4 当審の判断 1 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1 ア 当審拒絶理由で引用された、国際公開第2004-085835号(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「発明を実施するための最良の形態 以下、本発明による液体噴射装置(液体噴霧装置、液体供給装置、液滴吐出装置)の各実施形態について図面を参照しながら説明する。 (第1実施形態) 本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置10は、図1の概略構成図に示したように、例えば、微粒子化された液体(燃料)を必要とする機械装置としての内燃機関に対する電子式燃料噴射制御装置(電子式液体噴射制御装置)として使用される。 電子式燃料噴射制御装置は、内燃機関の吸気管(又は吸気ポート)30等により形成される燃料噴射空間(液体噴射空間)31に、内燃機関の吸気弁32の背面に向けて、微粒子化された液体(液体燃料、例えばガソリン、以下、単に「燃料」と云うこともある。)を噴射するようになっている。電子式燃料噴射制御装置は、アクチュエータとして機能する圧電/電歪素子を備えた液体噴射装置10、加圧手段としての加圧ポンプ(燃料ポンプ)21、燃料供給管(液体供給管、燃料配管)22、プレッシャレギュレータ23、電磁開閉式吐出弁(吐出弁、開閉弁)24、燃料タンク(液体貯蔵タンク)25、及び電気制御装置40を含んでいる。加圧ポンプ21及びプレッシャレギュレータ23は燃料供給管22に介装されている。」(21頁28行~22頁11行) (イ)「液体噴射装置10は、燃料噴射空間31に噴射する液体(吸気弁32の背面に向けて噴射する燃料)を微粒子化するために少なくともその壁面に圧電/電歪素子を形成したチャンバーと、その圧電/電歪素子が形成された壁と異なる壁に形成された液体噴射孔(液体噴射用ノズル)とを備えた噴射デバイスであり、図3~図5に詳細に示されている。 液体噴射装置10は、各辺が互いに直交するX,Y及びZ軸に対して平行に延びる略直方体形状を有している。液体噴射装置10は、図4及び図5に示したように、順に積層された複数の金属の薄板(以下、「金属板」と云う。)10a~10cと、金属板10cの外側面(Z軸正方向のX-Y平面に沿った平面)に固着された圧電/電歪素子11とからなっている。金属板10a~10cの材質は、この例においてはステンレス(SUS304又はSUS316)である。金属板10cは極めて薄く、容易に変形及び復元する(変形可能な)ダイヤフラムを構成している。なお、後述する他の実施形態に係る金属板の材質も金属板10a~10cと同様である。」(23頁16~31行) (ウ)「チャンバー10-3を構成している一つの壁(下壁)である金属板10aには、複数(この例では、全部で15×8=120個)の貫通孔が液体噴射孔(液体噴射用ノズル)10-3aとして形成されている。各液体噴射孔10-3aは、Z軸方向に軸を有する底面の直径がdである円筒状の空間である。従って、金属板10aの下面には、直径dの円形の噴射口が複数個形成されている。」(24頁22~27行) (エ)「電気制御装置40は、マイクロコンピュータを含む回路であり、図1に示したように、エンジン回転速度センサ41、及び吸気管圧力センサ42等のセンサと接続されている。電気制御装置40は、これらのセンサからエンジン回転速度Nや吸気管圧力Pを入力して内燃機関に必要な燃料量及び噴射開始タイミングを決定するとともに、同決定した燃料量及び噴射開始タイミングに応じて電磁開閉式吐出弁24の電磁機構に吐出弁駆動信号INJを供給するようになっている。また、電気制御装置40は、少なくとも吐出弁駆動信号INJが供給及び供給停止されることによりチャンバー10-3内の液体の圧力が上昇及び下降している期間、圧電/電歪素子11の電極11a及び11b間に駆動周波数fで0(V)とVmax(V)との間を変化する圧電素子駆動電圧信号DVを送出するようになっている。 ・・・ 以上の構成により、電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eから吐出された燃料は、液体導入口10-1を介して液体供給通路10-2に供給され、その後、液体導入通路部10-4のスリットを介して(スリット内をX軸方向に通流して)チャンバー10-3内に導入される。そして、チャンバー10-3内に導入された液体は液体噴射孔10-3a(液体噴射孔の噴射口)を介し吸気管30内に押し出される(噴射される)。このとき、噴射される燃料には圧電/電歪素子11の作動による振動エネルギー(周波数fの圧力変動)がチャンバー10-3内において加えられている。従って、図7に示したように、噴射された燃料にくびれ部が発生し、同燃料はその先端部において同くびれ部からちぎれるように離脱する。この結果、均一で精細に微粒子化された燃料が吸気管30の燃料噴射空間31内に噴射される。なお、以下に述べる他の実施形態に係る液体噴射装置ついても、上述した液体噴射装置10の作動と同様に作動する。」(26頁10行~27頁9行) (オ)「図36は、上述した液体噴射装置10の断面図である図5を説明のために模式的に示した図である。この液体噴射装置10において、噴射される液体の流量(噴射量)を多くするためには、液体噴射孔10-3aが形成されている部分(液体噴射孔の配置領域)の面積を大きくし、液体噴射孔10-3aの数を増大する必要がある。 液体噴射孔10-3aの配置領域の面積を大きくした場合であっても、圧電/電歪素子11のX-Y平面における中心(重心)の直下(以下、「圧電/電歪素子中心直下」と称呼する。)付近(中央部)に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は相対的に小さく、且つ、液滴間の粒径は均一である。 しかしながら、圧電/電歪素子中心直下からの距離が大きい周辺部に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴には、その粒径が圧電/電歪素子中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径と同程度の大きさを有する液滴に加え、その液滴よりも相対的に大きい粒径を有する液滴が含まれてしまう傾向がある。 実験によれば、例えば、圧電素子駆動電圧信号DVの駆動周波数fを50kHzとしたとき、圧電/電歪素子中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は約30~40μmであり、液滴間の粒径は均一であった。これに対し、最も周辺に位置する(最端部の)液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は約30~90μmであり、液滴間の粒径は不均一であった。換言すると、周辺部に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴には、粒径の大きいものと小さいものとが混在していた。 この理由の一つは以下のように推定される。複数の貫通孔10-3aの軸線は互いに平行であるから、液体噴射装置10により噴射された多数の液滴は略平行に飛行する。従って、噴射された液滴の密度は、液滴の飛行距離に関わらず高い値に維持される。このため、一つの液滴により生じる空気の乱れが近接する他の液滴の飛行方向に影響を及ぼすので、近接する液滴同士が空間中で結合し、これにより大きな粒径の液滴が発生する。 図37に示した液体噴射装置130は、このような問題に対処することができる装置である。具体的に述べると、液体噴射装置130は液体噴射装置10の金属板10aを金属板131に置換した点のみにおいて同液体噴射装置10と相違している。従って、以下、係る相違点を中心に説明する。 ・・・ 換言すると、複数の液体噴射孔131a(液体噴射用ノズル)は、同複数の液体噴射孔が形成された壁(チャンバー130-3の下壁である金属板131)からの距離が大きくなるにつれて、同複数の液体噴射孔131aから略同時に噴射された液滴同士の距離が大きくなるように、その軸線方向が定められている。従って、液滴の飛行に伴って液滴間の距離が大きくなるので、隣接又は近接する液滴同士が空間中で結合してしまう頻度を低減することができる。その結果、粒径が微細で且つ均一な多数の液滴を噴射することができる。なお、金属板131は、液体噴射孔形成壁又は液体噴射用ノズル形成壁とも称呼される。」(48頁10行~50頁7行) (カ)「次に、液体噴射装置130について、効果確認のために実施した実験の条件及び結果について述べる。なお、比較のために、液体噴射装置130の液体噴射孔131aの軸線を、総べてZ軸に平行(液体噴射用ノズル形成壁である金属板131の下面と直交する方向と平行)とした装置(以下、「比較例」と称呼する。)についても、同様な実験を行った。 (実験条件) (1)液体噴射孔の径はφ30μmとした。 (2)液体噴射孔は288個であり、格子状に0.15mm間隔で配置した。 (3)チャンバーの大きさは2×6mmで、厚みは0.2mmとした。 (4)振動板(液体噴射孔対向壁、金属板10c)の厚みは0.01mmとした。 (5)液体噴射孔形成壁(金属板131)の厚みは0.03mmとした。 (6)液体導入通路10-4のスリットの厚み(幅)tは0.03mm、Y軸方向長さWは5.8mm、X軸方向長さは2mmとした。 (7)圧電/電歪素子の大きさは、1.8×5.8mmとした。 (8)圧電/電歪素子は、一液熱硬化型エポキシ接着剤を用いて振動板(液体噴射孔対向壁、金属板10c)に一枚だけ接着した。 (9)圧電素子を駆動する電圧信号の周波数は70kHz、最高電圧は12V、波形は矩形波とした。 (10)チャンバーに導入される液体の圧力は0.3MPaで、流量は130cc/分とした。 (11)噴射された液滴の径を測定するため、使用した液体をドライソルベルトとした。 (12)ストロボスコープを光源として顕微鏡を使用し、噴射された液滴を写真撮影した。そして、写真の液滴径を測定した後に顕微鏡倍率から逆算することで、液滴の径の測定を行った。」(53頁5~35行) (キ)「 [図:0001436536000001.jpg] 」 (ク)「 [図:0001436536000002.jpg] 」 (ケ)「 [図:0001436536000003.jpg] 」 (コ)「 [図:0001436536000004.jpg] 」 イ 前記アから、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「微粒子化された液体燃料を噴射する、内燃機関に対する電子式燃料噴射制御装置であって(ア(ア))、 アクチュエータとして機能する圧電素子を備えた液体噴射装置10、加圧手段としての加圧ポンプ(燃料ポンプ)21、燃料供給管(液体供給管、燃料配管)22、プレッシャレギュレータ23、電磁開閉式吐出弁24、燃料タンク25、及び電気制御装置40を含んでおり(ア(ア))、 液体噴射装置10は、燃料噴射空間31に噴射する燃料を微粒子化するために少なくともその壁面に圧電素子を形成したチャンバーと、その圧電素子が形成された壁と異なる壁に形成された液体噴射孔とを備えた噴射デバイスであり、順に積層された複数の金属板10a~10cと、金属板10cの外側面に固着された圧電素子11とからなり(ア(イ))、 金属板10cは変形可能なダイヤフラムを構成する振動板であり(ア(イ)、(カ))、 チャンバー10-3を構成している一つの壁である金属板10aには、複数の貫通孔が液体噴射孔10-3aとして形成されており、金属板10aの下面には、直径dの円形の噴射口が複数個形成されており(ア(ウ))、 電気制御装置40は、エンジン回転速度センサ41、及び吸気管圧力センサ42等のセンサと接続されており、これらのセンサからエンジン回転速度Nや吸気管圧力Pを入力して内燃機関に必要な燃料量を決定するとともに、同決定した燃料量に応じて電磁開閉式吐出弁24の電磁機構に吐出弁駆動信号INJを供給するようになっており、少なくとも吐出弁駆動信号INJが供給及び供給停止されることによりチャンバー10-3内の液体の圧力が上昇及び下降している期間、圧電素子11の電極11a及び11b間に駆動周波数fで0(V)とVmax(V)との間を変化する圧電素子駆動電圧信号DVを送出するようになっている構成により(ア(エ))、 電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eから吐出された燃料は、液体導入口10-1を介して液体供給通路10-2に供給され、その後、液体導入通路部10-4のスリットを介してチャンバー10-3内に導入され、チャンバー10-3内に導入された液体は液体噴射孔10-3aを介し吸気管30内に噴射され、このとき、噴射される燃料には圧電素子11の作動による周波数fの圧力変動がチャンバー10-3内において加えられているので、噴射された燃料にくびれ部が発生し、同燃料はその先端部において同くびれ部からちぎれるように離脱し、この結果、均一で精細に微粒子化された燃料が吸気管30の燃料噴射空間31内に噴射され(ア(エ))、 液体噴射装置10において、圧電素子11中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は相対的に小さく、且つ、液滴間の粒径は均一であって、圧電素子11中心直下からの距離が大きい周辺部に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴には、その粒径が圧電素子11中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径と同程度の大きさを有する液滴に加え、その液滴よりも相対的に大きい粒径を有する液滴が含まれてしまう傾向があるという問題に対処するために金属板10aを金属板131に置換し、粒径が微細で且つ均一な多数の液滴を噴射することができる液体噴射装置130とし(ア(オ))、 液体噴射装置130の液体噴射孔の径はφ30μmである(ア(カ))、 電子式燃料噴射制御装置。」 ウ また、前記アから、引用文献1には下記の技術事項(以下「引用文献1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「電子式燃料噴射制御装置に含まれる液体噴射装置10であって、 圧電素子中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は相対的に小さく、且つ、液滴間の粒径は均一であって、圧電素子駆動電圧信号DVの駆動周波数fを50kHzとしたとき、圧電素子中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は約30~40μmであり、最も周辺に位置する(最端部の)液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は約30~90μmである(ア(オ))、 液体噴射装置10。」 (2)引用文献2 ア 当審拒絶理由で引用された、特開2006―336509号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0023】 吸気管18の上流部に設けられたエアクリーナ20から流入された空気は、スロットルバルブ3で流量を調節され、燃料噴射手段である燃料インジェクタ(燃料噴射弁)1から所定の角度で吸気通路へ噴射されたガソリンと混合されて各燃焼室11に供給される。」 「【0037】 具体的には、I/OLSI154は、吸気管圧力センサ30、エアフローセンサ2、クランク角センサ13、燃圧センサ31、スタータスイッチ157、空燃比センサ17、水温センサ29、バッテリ電圧センサ160及びスロットルセンサ26からの出力信号を、必要に応じてI/OLSI内蔵のA-D変換器を介して、あるいは外部のA-D変換器を介して入力する。MPU151が所定の演算を行い、エンジン制御用アクチュエータである燃料インジェクタ1、点火プラグ12、燃料ポンプ22、エアポンプ50、開閉バルブ53の各々の動作を制御する。」 イ 前記アから、引用文献2には下記の技術事項が記載されていると認められ、当該事項は自動車の技術分野において周知の技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 「エアフローセンサ、クランク角センサ、水温センサ、バッテリ電圧センサ及びスロットルセンサからの出力信号が入力され、MPUが所定の演算を行い、エンジン制御用アクチュエータである燃料インジェクタの動作を制御する事項。」 (3)引用文献3 本願の出願前に発行された特表2009―529311号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、電装品を保護的に被覆する際に用いる封入構成に関する。詳細には、これらに限定しないが、本発明は自動車用燃料噴射器の圧電アクチュエータのための封入構成に関する。」 「【0024】 図1を参照すると、アクチュエータ構成2の形をとる周知の圧電デバイスは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの、強誘電体材料で形成される複数の層6を備える、圧電スタック4を含む。各層6は、スタック4内のその隣接する層または両隣の層と、内部電極8、10によって区切られ、内部電極8、10は圧電層6と互いに組み合わされ、それぞれ正の内部電極8、負の内部電極10が交互の配列を形成する。したがって、正の内部電極8と負の内部電極10との各隣接する対がそれぞれの圧電層6を間にはさみ、このため正の内部電極8および負の内部電極10を介して印加された電圧に応じた物理的歪みが生じる。」 「【0039】 導電性層34には、電気アースまたは電圧源のいずれかに接続が提供されることは、上述の構成から明らかであろう。しかしながら、場合によっては、そのような電気的接続を省略してもよく、その場合は、導電層34がスタックの内部電極8、10、金属化領域16、18、外部電極22、24に近いために、相互キャパシタンスを介して導電性層34が充電される。このような構成では、導電層34は、それが収容される噴射器本体の電圧に関して浮動電圧にある。通常は、噴射器本体は、それが設置されるエンジンに接地接続されているために、接地電位である。」 (4)引用文献4 本願の出願前に発行された再公表特許第2016/152429号(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0049】 また、インジェクタユニット6Aは、図1に示す内燃機関1のシリンダヘッド4に取り付けた際、図2に示すシリンダヘッド4に設けられた連通孔4aにおいて、インジェクタの外周部に設けられたフランジ部6bが連通孔4aに設けられた第3の孔部4dの端面にクランプされ固定されることにより、シリンダヘッド4に電気的に接続され、車体に接地される。」 (5)周知技術2 前記(3)、(4)の記載から、自動車用燃料噴射器をエンジンや車体に接続して接地電位とする技術は、自動車の技術分野において周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。 2 対比 本願発明と引用発明1を対比する。 ア 後者の「内燃機関」、「液体燃料」、「燃料」、「液体噴射孔」、及び「圧電素子」は、前者の「内燃機関」、「液体燃料」、「液体燃料」、「噴射口」、及び「圧電素子」に相当する。 イ 後者の「液体噴射装置10」は、「アクチュエータとして機能する圧電素子を備えた」ものであって、「均一で精細に微粒子化された燃料」が「噴射され」るものであるから、前者の「アクチュエータ」と後者の「液体噴射装置10」は、「アクチュエータ」である点で一致する。 ウ 後者の「圧電素子駆動電圧信号DV」は、「0(V)とVmax(V)との間を変化する」ものであって、「圧電素子11の電極11a及び11b間に送出」されるものであるから、後者の「直流のパルス電圧」に相当する。 エ 後者の「金属板10c」は、「圧電素子11」が固着された「振動板」であるから、前者の「振動板」に相当する。 オ 後者の「液体噴射装置10」は、「圧電素子11の作動による周波数fの圧力変動」を「チャンバー10-3内」において「燃料」に加え、「精細に微粒子化された燃料」を「噴射」するものであるから、「燃料」を「噴射」する速度は、「燃料」が「チャンバー10-3内」に導入される速度よりも高くなっているといえる。 そして、後者の「微粒子化された燃料」は「吸気管30の燃料噴射空間31内に噴射され」るものであるから、前記イ~エ、及び内燃機関構造の技術常識をふまえると、前者の「アクチュエータ」と後者の「液体噴射装置10」は、「液滴の気化を容易にするために、前記圧電素子に直流のパルス電圧を加えて前記振動板を振動させ、前記振動によって前記液滴を加速する」ものである点で一致する。 カ 後者の「センサ」は、「エンジン回転速度センサ41、及び吸気管圧力センサ42等」であるから、「エンジン回転速度」、「吸気管圧力」を検出するための部材を有することは自明であって、当該「部材」は、前者の「検出器」に相当し、後者の「センサ」は、前者の「検出器からの信号を受け取るセンサ」に相当する。 キ 後者の「電気制御装置40」は、「センサからエンジン回転速度Nや吸気管圧力Pを入力して内燃機関に必要な燃料量を決定するとともに、同決定した燃料量に応じて電磁開閉式吐出弁24の電磁機構に吐出弁駆動信号INJを供給する」ものであるから、後者の「電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eから吐出された燃料」が「チャンバー10-3内に導入され」、「液体噴射孔10-3aを介し吸気管30内に噴射され」ること、及び前記イ~オをふまえると、前者の「前記センサからの情報に基づき液滴噴射量を制御するコントローラ」に相当する。 ク 後者の「液体噴射装置130」は、「液体噴射装置10」の「金属板10aを金属板131に置換し」たものであって、「粒径が微細で且つ均一な多数の液滴を噴射」するものであるから、前記イ、オをふまえると、前者の「アクチュエータ」と後者の「液体噴射装置130」は、「液滴の気化を容易にするために、前記圧電素子に直流のパルス電圧を加えて前記振動板を振動させ、前記振動によって前記液滴を加速するアクチュエータ」である点で一致する。 ケ 後者の「電子式燃料噴射制御装置」は、「内燃機関に対する」ものであって、「微粒子化された液体燃料を噴射する」ものであり、「液体噴射孔」を備える「液体噴射装置10」、「電磁開閉式吐出弁24」、及び「電気制御装置40」を含むものであって、「電気制御装置40」は「センサと接続されて」いるものであるから、前記カ~クをふまえると、前者の「微小液滴噴射装置」と後者の「「電子式燃料噴射制御装置」及び「センサ」」は、「液体燃料の液滴を噴射する噴射口を備えた内燃機関の微小液滴噴射装置」であって、「振動板と、圧電素子と、アクチュエータと、検出器と、センサと、コントローラとを備える」ものである点で一致する。 コ 後者の「液体噴射装置130」は、その「液体噴射孔の径はφ30μm」であることから、前記オ、ケをふまえると、前者の「微小液滴噴射装置」と後者の「「電子式燃料噴射制御装置」及び「センサ」」は、「直径50μm以下の前記噴射口から液滴を噴出する」ものである点で一致する。 サ したがって、本願発明と引用発明1は、 「液体燃料の液滴を噴射する噴射口を備えた内燃機関の微小液滴噴射装置であって、振動板と、圧電素子と、前記液滴の気化を容易にするために、前記圧電素子に直流のパルス電圧を加えて前記振動板を振動させ、前記振動によって前記液滴を加速するアクチュエータと、検出器と、前記検出器からの信号を受け取るセンサと、前記センサからの情報に基づき液滴噴射量を制御するコントローラとを備え、直径50μm以下の前記噴射口から前記液滴を噴出することを特徴とする内燃機関の微小液滴噴射装置。」 である点において一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明の「センサ」が、「空気流量、エンジン回転数、冷却水温度、スロットル開口度及び蓄電池電圧など」の信号を受けるのに対し、引用発明1の「センサ」が「エンジン回転速度Nや吸気管圧力P」以外に検出するものであるか明らかでない点。 [相違点2] 本願発明が、「粒径50μm以下の前記液滴を噴出する」のに対し、引用発明1は液滴の径が明らかでない点。 [相違点3] 本願発明の「微小液滴噴射装置」が、「エンジンや車台が導線で電気的に接続され」るのに対し、引用発明1がそのような構成であるのか明らかでない点。 3 判断 (1)相違点1について検討する。 ア 周知技術1の「エアフローセンサ」、「クランク角センサ」、「水温センサ」、「バッテリ電圧センサ」、及び「スロットルセンサ」は、それぞれ本願発明の「「空気流量」の前記検出器からの信号を受けるセンサ」、「「エンジン回転数」の前記検出器からの信号を受けるセンサ」、「「冷却水温度」の前記検出器からの信号を受けるセンサ」、「「蓄電池圧」の前記検出器からの信号を受けるセンサ」、及び「「スロットル開口度」の前記検出器からの信号を受けるセンサ」に相当する。 イ 引用発明1の「電子式燃料噴射制御装置」の「液体噴射装置10」は、「センサ」からの入力に応じて「燃料量」を制御するものであるところ、燃料インジェクタ1の動作を制御するための周知技術1を採用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について検討する。 ア 引用文献1技術事項の「電子式燃料噴射制御装置に含まれる液体噴射装置10」は、「圧電素子中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径」が「約30~40μm」であるから、本願発明の「微小液滴噴射装置」と引用文献1技術事項の「電子式燃料噴射制御装置に含まれる液体噴射装置10」は、「粒径50μm以下の液滴を噴出する微小液滴噴射装置」である点で一致する。 そうすると、引用文献1技術事項は相違点2に係る構成を充足するといえる。 イ 引用発明1と引用文献1技術事項は、電子式燃料噴射制御装置に関する技術分野で共通し、また、微細な粒径の液滴を噴射するという課題で共通しているので、引用発明1に引用文献1技術事項を適用する動機付けはあるといえる。 ウ そして、引用発明1の「液体噴射装置130」は、「液体噴射装置10において、圧電素子11中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径は相対的に小さく、且つ、液滴間の粒径は均一であって、圧電素子11中心直下からの距離が大きい周辺部に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴には、その粒径が圧電素子11中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径と同程度の大きさを有する液滴に加え、その液滴よりも相対的に大きい粒径を有する液滴が含まれてしまう傾向があるという問題に対処するために金属板10aを金属板131に置換し」たものであって、「粒径が微細で且つ均一な多数の液滴を噴射することができる」ものであるから、「液体噴射孔」全体から均一に、圧電素子11中心直下付近に位置する液体噴射孔10-3aから噴射される液滴の粒径の液滴が噴射されるといえるところ、引用文献1技術事項を適用し、「液体噴射孔」全体から均一に、粒径30~40μmの液滴を噴出することで、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点3について検討する。 ア 燃料が配管や噴射ノズル内を高速で通過する際、燃料と配管の摩擦によって電荷が発生し、燃料が流動帯電する事象に対応するために、燃料ラインの部材をエンジン本体や車体と電気的に接続して接地する事項は、自動車分野において技術常識である。 イ そして、引用発明1の「電子式燃料噴射制御装置」においても当該技術常識をふまえ、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、当該技術常識をふまえると、引用発明1の「電子式燃料噴射制御装置」に周知技術2を適用し、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4)本願発明の効果も、引用発明1、引用文献1技術事項、及び周知技術1、2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。 (5)審判請求人の主張について ア 審判請求人は、審判請求書において、概略以下の主張をしている。 (ア)「(2)引用文献の圧電素子の設置方法 ・・・ 本願発明では、図12のように圧電素子と振動板の間には空隙が設けられている。このため圧電素子が表面に対し垂直(Z軸方向)に伸びた場合のみ、振動板に力が加わる。圧電素子のX軸方向とY軸方向の伸縮による振動板の歪及び振動板の湾曲による圧電素子の歪が抑えられ、自動車の長時間の安全な運行が可能となっている。」 (イ)「(3)流動体電に対する対策 ・・・ 引用文献1 流動体電についての言及はなく、微小液滴噴射装置を接地するとの開示はない。 本願発明 微小液滴噴射装置をエンジンや車台と導体で接続するため、流動体電によって微小液滴噴射装置に溜まる電荷は効率的に除去される。この結果、燃料液滴と装置の噴射口に働くクーロン引力が小さくなり、燃料は噴射とともに遅滞なく放出される。」 イ 審判請求人の主張についての見解 (ア)前記ア(ア)の主張について 本願発明には「圧電素子と振動板の間には空隙が設けられている」点について特定されていないから、請求項の記載に基づく主張ではなく、審判請求人の主張は採用できない。 (イ)前記ア(イ)の主張について 前記1(5)で示したように、自動車用燃料噴射器をエンジンや車体に接続して接地電位とする技術は、自動車の技術分野において周知の技術であるし、前記(3)アで示したように、燃料が配管や噴射ノズル内を高速で通過する際、燃料と配管の摩擦によって電荷が発生し、燃料が流動帯電する事象に対応するために、燃料ラインの部材をエンジン本体や車体と電気的に接続して接地する事項は、自動車分野において技術常識であって、前記(3)イに示したとおりであるから、前記3の判断を左右するものでなく採用できない。 (6)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献1技術事項、及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 したがって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-004639

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決2件(斎藤 文修、池田 時広)
  • 2023-020609拒絶査定不服審判 / 2025-09-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)内燃機関の微小液滴噴射装置
    同じ当事者: 斎藤 文修、池田 時広
  • 2023-021189拒絶査定不服審判 / 2024-06-12 / 却下微小液滴噴射装置
    同じ当事者: 斎藤 文修、池田 時広
同じ論点・分野の審決(審決分類)110件(121・F02M)
  • 2024-011956拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)排気ガス再循環ポンプ
    共通の審決分類: 121・F02M
  • 2024-011886拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)大型2ストローク圧縮点火高圧ガス噴射内燃エンジンのための燃料供給システム
    共通の審決分類: 121・F02M
  • 2024-012837拒絶査定不服審判 / 2025-10-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)エンジン
    共通の審決分類: 121・F02M
  • 2024-005141拒絶査定不服審判 / 2025-09-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)エンジン装置
    共通の審決分類: 121・F02M
  • 2023-020609拒絶査定不服審判 / 2025-09-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)内燃機関の微小液滴噴射装置
    共通の審決分類: 121・F02M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存