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特許拒絶査定不服審判

2023-014037

エンジン装置

審判番号
2023-014037
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-085768外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年08月21日
審決日
2024年05月28日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-85768「エンジン装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年8月9日出願公開、特開2022-116187〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年4月8日に出願した特願2016-78468号の一部を令和2年8月31日に新たな特許出願とした特願2020-145880号の一部を令和4年5月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年2月20日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年2月28日) 令和5年4月24日 :意見書の提出 令和5年5月16日付け:拒絶査定(発送日:同年5月23日) 令和5年8月21日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 燃料噴射装置に燃料を供給するコモンレールを備えたエンジン装置において、 前記コモンレールは、前記エンジン装置の左右一側部に位置し、 前記エンジン装置の前後一側部に、クランク軸と一体回転するフライホイールを収容するフライホイールハウジングが配置され、 前記コモンレールの一端部が、前記フライホイールハウジングの上方に配置され、 上方から見て、前記コモンレールと前記フライホイールハウジングとが重なるように配置される、エンジン装置。」 第3 原査定における拒絶理由の概要 当該拒絶理由のうち、本願発明についての新規性及び進歩性に係る理由の概要は、次のとおりである。 1 (新規性)本出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 (進歩性)本出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について 引用文献1:特開2011-17257号公報 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-17257号公報(平成23年1月27日公開。以下「引用文献1」という。)には、「燃料噴射システム及びこれを備えたエンジン」に関し図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 (1) 「【0014】 (1).ディーゼルエンジンの全体構造 まず、主として図1~図5を参照しながら、コモンレール式のディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線aと平行な両側部(クランク軸線aを挟んで両側の側部)を左右、フライホイールハウジング78設置側を前側、冷却ファン76設置側を後側と称して、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン70における四方及び上下の位置関係の基準としている。 【0015】 図1~図3に示すように、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えている。実施形態では、シリンダヘッド72の左側面に吸気マニホールド73が配置されており、シリンダヘッド72の右側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸74とピストン(図示省略)が内蔵されたエンジンブロック75上に搭載されている。エンジンブロック75の前後両側面から、クランク軸74の前後先端側を突出させている。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する一側部には、冷却ファン76が設けられている。実施形態では、エンジンブロック75の後側面側に冷却ファン76が位置している。クランク軸74の後端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。 【0016】 図1~図3に示す如く、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する他側部(実施形態ではエンジンブロック75の前側面側)に、フライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はクランク軸74の前端側に軸支されていて、クランク軸74と一体的に回転するように構成されている。作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。」 (2) 「【0030】 (2).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造 次に、図2、図7及び図8を参照しながら、コモンレールシステム117とディーゼルエンジン70の燃料系統構造を説明する。なお、図8では説明の便宜上、吸気マニホールド73に取り付けられるコレクタ92、EGRバルブ部材96等のEGR装置91の図示を省略している。図2、図7及び図8に示すように、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、燃料ポンプ116とコモンレールシステム117とを介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を有している。コモンレールシステム117は、円筒状のコモンレール120(蓄圧室)を有している。 【0031】 図2、図7及び図8に示すように、燃料ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料ポンプ116に吸い込まれる。一方、燃料ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。円筒状のコモンレール120の長手中途部に高圧管コネクタ124が設けられている。当該高圧管コネクタ124に、高圧管123の端部が高圧管コネクタナット125の螺着にて連結されている。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向に4気筒分の燃料噴射管コネクタ127が設けられている。当該燃料噴射管コネクタ127に、燃料噴射管126の端部が燃料噴射管コネクタナット128の螺着にて連結されている。 【0032】 上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。このため、ディーゼルエンジン70から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。 【0033】 なお、図7に示すように、燃料タンク118には、ポンプ燃料戻り管129を介して燃料ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する圧力調整バルブ付きの戻り管コネクタ130を介して、コモンレール燃料戻り管131が接続されている。燃料ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とは、ポンプ燃料戻り管129及びコモンレール燃料戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。」 (3) 「【0060】 (5).コモンレールシステムの配置構造の詳細 次に、図8、図9、図13及び図16~図19を参照しながら、コモンレールシステム117の配置構造の詳細について説明する。図8、図9、図13及び図16~図19に示すように、エンジンブロック75における吸気マニホールド73側の左側面に、コモンレール120に高圧燃料を供給するための燃料ポンプ116が、吸気マニホールド73の下方で且つ冷却ファン76側に寄せた状態で配置されている。燃料ポンプ116は、燃料タンク118内の燃料を吸い込むためのフィードポンプ177と、フィードポンプ177による燃料吸込み量を調整するための調量弁178と、調量弁178を経由した燃料を加圧してコモンレール120に供給するためのプランジャ179とを備えている。クランク軸74の回転駆動によって、フィードポンプ177が駆動して燃料タンク118内の燃料が燃料フィルタ121を介して吸い込まれる。また、クランク軸74の回転駆動は、プランジャ179を往復駆動させ、調量弁178を経由した燃料を加圧してからコモンレール120に圧送する。 【0061】 図16~図19に示すように、燃料ポンプ116におけるフライホイールハウジング78寄りの前側面に、フィードポンプ177が配置されている。燃料ポンプ116の上部側からは、調量弁178の上部とプランジャ179の上部とが上向きに突出している。実施形態では、クランク軸線a方向から見て、横方向内側(右側、エンジンブロック75側)にプランジャ179が位置し、横方向外側(左側)に調量弁178が位置している。また、クランク軸線a方向から見て、調量弁178及びプランジャ179の上部は、燃料ポンプ116の上部側においてV字状に並んで配置されている。従って、調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間には、V字状のデッドスペース180が存在することになる。 【0062】 図8、図9及び図16~図19に示す如く、コモンレール120は、吸気マニホールド73の左外寄りの斜め下方に位置するように、吸気マニホールド73に直接取り付けられている。実施形態では、吸気マニホールド73の下面側に、前後一対の締結台部133がヘッド側フランジ142とは別に一体形成されている。これに対して、コモンレール120には、各締結台部133に対応する上向き突出状の締結ボス部134が一体形成されている。横方向外側(左側)からのレール取付ボルト135にて締結台部133に締結ボス部134を締結することにより、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。この場合、吸気マニホールド73の左斜め下方の角隅部にコモンレール120が近接している。従って、コモンレール120は、エンジンブロック75の一側面(左側面)と適宜間隔ΔLを開けて対峙している。換言すると、コモンレール120は、エンジンブロック75の一側面(左側面)から適宜間隔ΔLだけ、横方向外側に離して配置されている。 【0063】 また、図8、図9及び図16~図19に示すように、コモンレール120は、これに設けられた高圧管コネクタ124及び燃料噴射管コネクタ127が横方向外向き(左外向き)になるように長手軸線回りに傾倒している(寝かされている)。高圧管コネクタ124と4気筒分の燃料噴射管コネクタ127とは、長手方向(前後方向)に同じピッチ間隔Pで並べて設けられている。実施形態では、コモンレール120の長手中央部に高圧管コネクタ124が配置されている。そして、高圧管コネクタ124を挟んだ両側に、燃料噴射管コネクタ127が2つずつ配置されている。一方の締結ボス部134は、コモンレール120における最前端(戻り管コネクタ130側の端部)の燃料噴射管コネクタ127の箇所から上向きに突出している。他方の締結ボス部134は、最後端の燃料噴射管コネクタ127の箇所から上向きに突出している。 【0064】 前述の通り、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。その上で、クランク軸線a方向から見た場合は、燃料ポンプ116上の調量弁178とプランジャ179との間にコモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が位置するように、燃料ポンプ116とコモンレール120との配置関係が設定されている(図13及び図17参照)。すなわち、クランク軸線a方向から見た場合は、調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間のデッドスペース180に、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)を位置させている(デッドスペース180にコモンレール120の後端部を臨ませている)。」 (4) 「【0072】 (6).気筒数の異なるエンジン間でのコモンレールシステムの配置態様 次に、図16、図20~図22を参照しながら、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間でのコモンレールシステム117の配置態様について説明する。図16に示すディーゼルエンジン70は4気筒型のものであるのに対して、図20に示すディーゼルエンジン70′は3気筒型のものである。これらのディーゼルエンジン70,70′において目立つ相違点は、エンジンブロック75,75′及びシリンダヘッド72,72′のクランク軸線a方向の前後長さに関して、3気筒型のディーゼルエンジン70′のほうが1気筒少ない分だけ短くなっている点である。これに伴い、3気筒型のディーゼルエンジン70′の吸気マニホールド73′も、クランク軸線a方向の前後長さが4気筒型の場合より短くなっている。なお、以下の説明において、コモンレールシステム117の構成は、4気筒型の場合と3気筒型の場合とで基本的に共通するものなので、先に説明した4気筒型のときの符号をそのまま用いることとする。 【0073】 図16に示す4気筒型のディーゼルエンジン70と、図20に示す3気筒型のディーゼルエンジン70′との比較において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係は、4気筒型の場合より3気筒型の場合のほうが、コモンレール120が燃料ポンプに近付くように、コネクタ124,127の並びピッチ間隔Pだけずらされている。従って、図20及び図21に示すように、3気筒型の場合は、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が燃料ポンプ116上の調量弁178とプランジャ179との間のデッドスペース180に入り込んでいる。3気筒型の場合は、コモンレール120における最前端の燃料噴射管コネクタ127が塞がれている。前から2番目のコネクタが高圧管コネクタ124に設定されている。残りの3つの燃料噴射管コネクタ127が燃料噴射管126を介して3気筒分の各インジェクタ115に接続されている。」 (5) 「【0076】 図22は、3気筒型のディーゼルエンジン70′において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合のように設定した例を示している。すなわち、図22は、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした例を示している。この例では、コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)がエンジンブロック75のフライホイール側の前面より外にはみ出すことになるが、4気筒型で用いられた第2、第3及び第4燃料噴射管126b,126c,126dと、高圧管123とが、共通部品として3気筒型でも使用されている。 【0077】 すなわち、第2燃料噴射管126bは、3気筒型におけるフライホイールハウジング78側のインジェクタ115と、コモンレール120における前から2番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第3燃料噴射管126cは、3気筒型における真ん中のインジェクタ115と、コモンレール120における前から4番目の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。第4燃料噴射管126dは、3気筒型における冷却ファン76側のインジェクタ115と、コモンレール120における最後端の燃料噴射管コネクタ127とをつないでいる。コモンレール120における真ん中の高圧管コネクタ124と、燃料ポンプ116とが前述の高圧管123を介してつながっている。 【0078】 上記の記載並びに図16~図22から明らかなように、エンジンブロック75,75′の一側方に、吸気マニホールド73,73′に近接して配置されるコモンレール120を有する燃料噴射システム117であって、前記コモンレール120には、その長手方向に同じピッチ間隔Pで並ぶコネクタ124,127が設けられており、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で、吸気マニホールド73,73′の下方にある燃料ポンプ116に対する前記コモンレール120の位置関係を同じにするか、又は、前記コネクタ124,127群のピッチP分だけずらすかすることによって、前記コネクタ124,127群に接続される少なくとも複数の燃料噴射管126を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記コモンレール120だけでなく、湾曲形状の異なる様々な燃料噴射管126を前記エンジン70,70′の型式毎に準備する必要がなく、部品点数を削減できる。従って、前記燃料噴射システム117を採用するに当たってコストダウンを図れるという効果を奏する。 【0079】 上記の記載並びに図16~図22から明らかなように、前記コモンレール120のコネクタ124,127群は、エンジン70,70′の各気筒に対応するインジェクタ115に燃料噴射管126を介して接続される複数の燃料噴射管コネクタ127と、前記燃料ポンプ116に高圧管123を介して接続される高圧管コネクタ124とにより構成されており、前記高圧管123を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしているから、前記燃料噴射管126と同様に、前記高圧管123についても、前記エンジン70,70′の型式毎の専用部品にしなくて済み、部品点数の更なる削減、ひいてはより一層のコストダウンに寄与できるという効果を奏する。」 (6) 「 [図:0001413086000001.jpg] 」(【図1】) (7) 「 [図:0001413086000002.jpg] 」(【図2】) (8) 「 [図:0001413086000003.jpg] 」(【図3】) (9) 「 [図:0001413086000004.jpg] 」(【図5】) (10) 「 [図:0001413086000005.jpg] 」(【図7】) (11) 「 [図:0001413086000006.jpg] 」(【図10】) (12) 「 [図:0001413086000007.jpg] 」(【図16】) (13) 「 [図:0001413086000008.jpg] 」(【図17】) (14) 「 [図:0001413086000009.jpg] 」(【図18】) (15) 「 [図:0001413086000010.jpg] 」(【図19】) (16) 「 [図:0001413086000011.jpg] 」(【図21】) (17) 「 [図:0001413086000012.jpg] 」(【図22】) 2 引用発明 上記1の記載及び図面の図示内容から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「インジェクタ115に燃料を供給するコモンレール120を備えたディーゼルエンジン70’において、 コモンレール120は、ディーゼルエンジン70’のクランク軸74を回転自在に軸支するエンジンブロック75’の一側方に位置し、 ディーゼルエンジン70’のエンジンブロック75’の前側面側にクランク軸74と一体的に回転するフライホイール79を配置するフライホイールハウジング78が固着され、 コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)が、エンジンブロック75のフライホイール79側の前面より外にはみ出している、 ディーゼルエンジン70’。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「インジェクタ115」はその機能、構成又は技術的意義からみて本願発明における「燃料噴射装置」に相当し、以下同様に、「コモンレール120」は「コモンレール」に、「ディーゼルエンジン70’」は「エンジン装置」に、「ディーゼルエンジン70’のクランク軸74を回転自在に軸支するエンジンブロック75’の一側方」は「エンジン装置の左右一側部」に、「ディーゼルエンジン70’のエンジンブロック75’の前側面側」は「エンジン装置の前後一側部」に、「クランク軸74」は「クランク軸」に、「一体的に回転する」ことは「一体回転する」ことに、「フライホイール79」は「フライホイール」に、「配置する」ことは「収容する」ことに、「フライホイールハウジング78」は「フライホイールハウジング」に、「固着され」ることは「配置され」ることに、「コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)」は「コモンレールの一端部」に、それぞれ相当する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「燃料噴射装置に燃料を供給するコモンレールを備えたエンジン装置において、 コモンレールは、エンジン装置の左右一側部に位置し、 エンジン装置の前後一側部にクランク軸と一体回転するフライホイールを収容するフライホイールハウジングが配置される、エンジン装置。」 【相違点】 コモンレールの一端部に関して、本願発明は、コモンレールの一端部が、「フライホイールハウジングの上方に配置され、上方から見て、コモンレールとフライホイールハウジングとが重なるように配置される」ものであるのに対し、引用発明は、コモンレール120(コモンレール)における長手方向の他端部(後端部)(の一端部)が、「エンジンブロック75のフライホイール79側の前面より外にはみ出している」ものである点。 第6 判断 以下、相違点について検討する。 1 コモンレールの一端部が「フライホイールハウジングの上方に配置され」るものであることについて 引用文献1の段落【0072】の記載事項から、【図22】に図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’と【図1】ないし【図6】に図示される4気筒型のディーゼルエンジン70とは、基本的な構成が同じであることが理解でき、段落【0016】の記載事項及び【図1】ないし【図3】の図示内容から、フライホイールハウジング78は、エンジンブロック75の前側面に近接して配置されているといえる。 そうすると、【図22】に図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’においても、フライホイールハウジング78は、エンジンブロック75’の前面に近接して配置されていると解するのが相当であり、また、【図22】に、【図2】におけるフライホイールハウジング78と同様の形状の部材の上方にコモンレール120における長手方向の他端部(後端部)が配置されていることが看取できることからすれば、フライホイールハウジング78とコモンレール120の上下関係は把握でき、「コモンレール120(コモンレール)における長手方向の他端部(後端部)(の一端部)が、エンジンブロック75のフライホイール79側の前面より外にはみ出している」引用発明においても、相違点に係る本願発明の発明特定事項にように、コモンレール120(コモンレール)における長手方向の他端部(後端部)(の一端部)が、フライホイールハウジング78(フライホイールハウジング)の上方に配置されているといえる。 2 コモンレールの一端部が「上方から見て、コモンレールとフライホイールハウジングとが重なるように配置される」ものであることについて (1) まず、引用文献1の【図1】及び【図10】に平面図として図示される4気筒型のディーゼルエンジン70の図示内容から、4気筒型のディーゼルエンジン70では、コモンレール120がエンジンブロック75’のクランク軸74のクランク軸線aと交差する左右方向においてフライホイールハウジング78の左右幅の内側に配置されることが看取できる。 (2) 次に、引用文献1の【図2】に側面図として図示される4気筒型のディーゼルエンジン70の図示内容及び【図22】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’の図示内容並びに段落【0072】の記載事項、段落【0076】の「図22は、3気筒型のディーゼルエンジン70′において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合のように設定した例を示している。すなわち、図22は、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした例を示している。」、段落【0078】の「前記コネクタ124,127群に接続される少なくとも複数の燃料噴射管126を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしている」及び段落【0079】の「前記高圧管123を、その湾曲形状を変更することなく、気筒数の異なる複数のエンジン70,70′間で共通部品にしている」という記載事項から、【図22】に図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’は、エンジンブロック75に対する燃料ポンプ116の配置は特に変更することなく、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした、すなわち、エンジンブロック75’に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型のディーゼルエンジン70の場合と同じにしたものであるといえる。 ここで、エンジンブロック75、75’に対する燃料ポンプ116の配置及び燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係については、段落【0060】ないし【0064】の記載事項及び【図17】に側面図として図示される4気筒型のディーゼルエンジン70の図示内容から、4気筒型のディーゼルエンジン70においては、エンジンブロック75における吸気マニホールド73側の左側面に燃料ポンプ116が吸気マニホールド73の下方で且つ冷却ファン側に寄せた状態で配置され、クランク軸線a方向から見た場合、燃料ポンプ116の上部側から上向きに突出している調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間に存在するV字状のデッドスペース180に、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が位置しているといえ、また、段落【0076】の「図22は、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係を4気筒型の場合と同じにした例を示している。」、段落【0078】の「図16~図22から明らかなように、・・・気筒数の異なる複数のエンジン70,70’間で、吸気マニホールド73,73’の下方にある燃料ポンプ116に対する前記コモンレール120の位置関係を同じにするか、又は、前記コネクタ124,127群のピッチP分だけずらすかする」及び段落【0073】の「図16に示す4気筒型のディーゼルエンジン70と、図20に示す3気筒型のディーゼルエンジン70’との比較において、燃料ポンプ116に対するコモンレール120の位置関係は、4気筒型の場合より3気筒型の場合のほうが、コモンレール120が燃料ポンプに近付くように、コネクタ124,127の並びピッチ間隔Pだけずらされている。従って、図20及び図21に示すように、3気筒型の場合は、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が燃料ポンプ116上の調量弁178とプランジャ179との間のデッドスペース180に入り込んでいる。」という記載事項並びに【図21】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’の図示内容から、【図22】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’においても、同様に、エンジンブロック75’における吸気マニホールド73’側の左側面に燃料ポンプ116が吸気マニホールド73’の下方で且つ冷却ファン側に寄せた状態で配置され、クランク軸線a方向から見た場合、燃料ポンプ116の上部側から上向きに突出している調量弁178の上部とプランジャ179の上部との間に存在するV字状のデッドスペース180に、コモンレール120の長手方向の一端部(後端部)が位置しているといえ、これらの具体的な配置ないし位置関係は、【図17】に側面図として図示される4気筒型のディーゼルエンジン70の図示内容と同様ないし極めて類似するものであるといえる。 そうすると、3気筒型のディーゼルエンジン70’におけるコモンレール120のエンジンブロック75’のクランク軸74のクランク軸線aと交差する左右方向における配置についても、4気筒エンジンにおける同配置と同様ないし極めて類似するものであるといえる。 (3) そして、引用文献1の【図2】に側面図として図示される4気筒型のディーゼルエンジン70におけるフライホイールハウジング78と、【図22】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’において【図2】におけるフライホイールハウジング78と同様の形状の部材の図示内容から、同図面の上下方向、すなわち、同部材の径方向でみて、同部材の各部位のディーゼルエンジン70’における位置は【図2】におけるフライホイールハウジング78の同様な各部位と概ね同じ位置となっていることが看取できる。また、3気筒型のディーゼルエンジン70’の フライホイールハウジング78については、他の構成要素のように「’」を付すことなく記載されている(段落【0077】の「フライホイールハウジング78」)。そうすると、【図22】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’におけるフライホイールハウジング78と【図2】に側面図として図示される4気筒型ディーゼルエンジン70のフライホイールハウジング78とは、概ね同じ径を有するものであるといえる。 (4) 上記(1)ないし(3)からみて、引用文献1に記載された【図22】に側面図として図示される3気筒型のディーゼルエンジン70’においても、コモンレール120がエンジンブロック75’のクランク軸74のクランク軸線aと交差する左右方向においてフライホイールハウジング78の左右幅の内側に配置されるものであるといえ、上記1とあわせてみると、「コモンレール120(コモンレール)における長手方向の他端部(後端部)(の一端部)が、エンジンブロック75のフライホイール79側の前面より外にはみ出している」引用発明においても、相違点に係る本願発明の発明特定事項にように、上方から見て、コモンレール120(コモンレール)とフライホイールハウジング78(フライホイールハウジング)とが重なるように配置されているといえる。 したがって、上記相違点は実質的な相違点ではないから、本願発明は引用発明である。 また、仮にそのようにいえないとしても、引用文献1の段落【0016】、【0072】及び【0076】ないし【0079】の記載事項並びに【図1】ないし【図3】、【図10】及び【図22】の図示内容に基いて、コモンレール120(コモンレール)における長手方向の他端部(後端部)(の一端部)が、フライホイールハウジング78(フライホイールハウジング)の上方に配置され、上方から見て、コモンレール120(コモンレール)とフライホイールハウジング78(フライホイールハウジング)とが重なるように配置された構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 そして、その効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本願発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 審判請求人の審判請求書における主張の検討 1 審判請求人の審判請求書における主張の内容 審判請求人は、審判請求書において、原査定において、引用文献1として拒絶の理由に引用された上記特開2001-177257号公報に記載された発明からみた本願発明の新規性及び進歩性について、以下のように主張している(注:下線は審判請求書のとおりである。)。 「4.本願が特許されるべき理由について <4-1.理由1の新規性について> 審査官は、以下の(1)~(4)の4つの点を総合的に判断して、「引用文献1(特開2011-017257号公報)に記載された3気筒エンジンでは、上方から見て、コモンレール120とフライホイールハウジング78とが重なるように配置されると認められる」とし、この見解をもとに本願請求項1に係る発明の新規性を否定しています。 (1)段落0076の「コモンレール120における長手方向の他端部(後端部)がエンジンブロック75のフライホイール側の前面より外にはみ出す」との記載及び図22(3気筒側面視)に図示されるコモンレール120とフライホイールハウジング78との位置関係から、引用文献1に記載された3気筒エンジンでは、コモンレール120が前後方向においてフライホイールハウジング78の位置まではみ出していることが把握できる。したがって、コモンレール120が左右方向においてフライホイールハウジング78の左右幅の範囲に配置されていれば、上方から見て、コモンレール120とフライホイールハウジング78とが重なる。 (2)図1及び図10(いずれも4気筒上面視)に図示されるコモンレール120とフライホイールハウジング78との位置関係から、4気筒エンジンでは、コモンレール120が左右方向においてフライホイールハウジング78の左右幅の十分内側に配置されることが把握できる。 (3)図2及び図22(4気筒側面視及び3気筒側面視)に図示されるエンジン構造から、3気筒エンジンと4気筒エンジンとは、気筒数を除けば、コモンレール120を含む燃料系をはじめ、共通性の高い構造が採用されていることが把握できる。また、請求項1には「気筒数の異なる複数のエンジン間で、吸気マニホールドの下方にある燃料ポンプに対する前記コモンレールの位置関係を同じにする」と記載されている。したがって、3気筒エンジンの左右方向におけるコモンレール120の配置は、4気筒エンジンにおける同配置と同様ないし極めて類似すると理解できる。 (4)図2及び図22(4気筒側面視及び3気筒側面視)に図示されるフライホイールハウジング78から、3気筒エンジンのフライホイールハウジング78と4気筒エンジンのそれとは、概ね同じ径を有することが把握できる。 しかし、上記(1)、(3)および(4)の見解は、以下の点で妥当ではないと考えます。 (上記(1)について) 審査官は「・・・及び図22(3気筒側面視)に図示されるコモンレール120とフライホイールハウジング78との位置関係から、引用文献1に記載された3気筒エンジンでは、・・・把握できる。したがって、コモンレール120が左右方向においてフライホイールハウジング78の左右幅の範囲に配置されていれば、上方から見て、コモンレール120とフライホイールハウジング78とが重なる。」と述べています。しかし、これは仮定の話に過ぎず、「左右幅の範囲に配置」されているか否かは、図22からはわかりません。 (上記(3)について) 審査官は、「・・・また、請求項1には「気筒数の異なる複数のエンジン間で、吸気マニホールドの下方にある燃料ポンプに対する前記コモンレールの位置関係を同じにする」と記載されている。したがって、3気筒エンジンの左右方向におけるコモンレール120の配置は、4気筒エンジンにおける同配置と同様ないし極めて類似すると理解できる。」と述べています。しかし、請求項1の上記記載は、気筒数の異なる複数のエンジン間で、「燃料ポンプとコモンレールとの位置関係」を同じにすることを意味するのであって、「フライホールハウジングとコモンレールとの位置関係」を同じにすること(例えばコモンレールがフライホイールハウジングの左右幅の内側に配置されること)を意味するものではありません。 (上記(4)について) 審査官は、「図2及び図22(4気筒側面視及び3気筒側面視)に図示されるフライホイールハウジング78から、3気筒エンジンのフライホイールハウジング78と4気筒エンジンのそれとは、概ね同じ径を有することが把握できる。」と述べています。しかし、図22では、フライホールハウジングの部分が破断して示されていることから、「概ね同じ径を有すること」は把握困難です。 以上より、「上記(1)~(4)を総合的に判断すれば、引用文献1に記載された3気筒エンジンでは、上方から見て、コモンレール120とフライホイールハウジング78とが重なるように配置されると認められる。」との審査官の見解は妥当ではなく、それゆえ、本願発明は、引用文献1に記載の発明と同一ではないと考えます。 <4-2.理由2の進歩性について> 審査官は、「引用文献1に記載された3気筒エンジンにおいて、上方から見て、コモンレールとフライホイールハウジングとが重ならないとしても、当該重なるか僅かに重ならないかは、配置としての微差であって設計変更の範ちゅうである。」との見解です。 しかし、本願発明では、請求項1の構成により、以下の(A)および(B)の作用効果を得ることができます。 (A)コモンレール16の一端がフライホイールハウジング7の上方に配置されることで、コモンレール16の配置領域が占める面積を小さくすることができます。これにより、シリンダブロック6の右側面302における他の部材のレイアウトの自由度を向上させることができます(段落〔0068〕参照)。 (B)コモンレール16の一端がフライホイールハウジング7の上方に配置されることで、インジェクタ余剰燃料戻り管132c(図20参照)の配管の長さを短くでき、これによってコンパクトなレイアウトが可能となります。 上記(A)および(B)の効果は、引用文献1の構成からは予期できない効果です。特に、上記(B)の効果は、本願のインジェクタ余剰燃料戻り管132cに相当する部材について開示のない引用文献1の構成からは全く予期することはできません。したがって、本願発明は、上記設計変更の域をはるかに超えるものと言えます。 したがって、以上より、本願発明は、引用文献1に基づいて容易に想到できるものではないと考えます。」(審判請求書第2ページないし第5ページ) 2 上記1の主張に対する検討 (1) 上記1の「<4-1.理由1の新規性について>」の「(上記(1)について)」の主張については、原査定の上記(1)は、同主張のように仮定の話として説示したものではなく、同(1)に続く(2)ないし(4)で検討する点を述べたものに過ぎず、また、原査定の同(2)ないし(4)の検討については、上記「第6 判断」の2(1)ないし(4)で説示したとおりである。 (2) 上記1の「<4-1.理由1の新規性について>」の「(上記(3)について)」の主張については、原査定の上記(3)において摘記した引用文献1の請求項1の記載と同様な段落【0076】の記載を含めて、上記「第6 判断」の2(1)ないし(4)で説示したとおりである。 (3) 上記1の「<4-1.理由1の新規性について>」の「(上記(4)について)」の主張については、上記「第6 判断」の2(3)で説示したとおりである。 (4) 上記1の「<4-2.理由1の進歩性について>」の「(A)および(B)の作用効果」の主張の上記(A)の効果については、上記「第6 判断」で説示したとおり、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであり、同主張の上記(B)の効果については、本願発明の発明特定事項ではない「インジェクタ余剰燃料戻り管132c」における効果であって、本願発明の発明特定事項に基づく効果とは認められない。 (5) したがって、審判請求人の上記1の審判請求書に記載された主張は失当であって採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-014037

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