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特許拒絶査定不服審判

2021-017568

半導体デバイス位置決めシステム及び半導体デバイス位置決め方法

審判番号
2021-017568
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-566444外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月20日
審決日
2022年12月21日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-566444「半導体デバイス位置決めシステム及び半導体デバイス位置決め方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日国際公開、WO2017/220245、令和 1年 6月27日国内公表、特表2019-518339〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2017年(平成29年)5月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年(平成28年)6月20日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の 経緯は以下のとおりである。

令和 3年 4月23日付け :拒絶理由通知書
令和 3年 7月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年10月15日付け :拒絶査定
令和 3年12月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 8月 3日付け :拒絶理由通知書
令和 4年11月 7日 :意見書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~20に係る発明は、令和3年12月20日提出の手続補正書の請求項1~20に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1の記載は次のとおりである。(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

「 【請求項1】
半導体デバイスの位置決めをするための位置決めシステムであって、
支持構造に対して平面内で直線的に移動可能であるように構成された長ストロークステージと、一組の直線ガイドを介して前記長ストロークステージに取り付けられ、半導体デバイスを搬送すべく前記平面内で直線的に移動可能であるように構成された短ストロークステージとを備え、
前記短ストロークステージが、板バネを介して前記長ストロークステージにさらに取り付けられ、
前記長ストロークステージが、前記短ストロークステージと前記支持構造との間でバランス質量として作用する、
位置決めシステム。 」

第3 当審における拒絶の理由

令和4年8月3日付けで、当審において通知した拒絶の理由1、2の概要は次のとおりである。

1 理由1(進歩性)

本願の請求項1~20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1、2、A、Bに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 特開平10-116779号公報

2 特開平7-321024号公報

A 実開平6-62390号公報(新たに引用する文献)

B 特開昭60-85848号公報(新たに引用する文献)

2 理由2(明確性)

請求項10、17において「複数の短ストローク駆動装置」と、一つの「短ストロークステージ」との関係が明確でないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 引用文献、引用発明等

1 引用発明1

(1) 引用文献1の記載

当審における拒絶の理由1で、引用文献1として引用した特開平10-116779号公報には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付加した。)

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はステージ装置に係り、更に詳しくは縮小投影型露光装置等の試料(例えばウエハ)を高速、高精度で位置決めする必要のある精密機器に好適なステージ装置に関する。
・・・(中略)・・・
続きを表示(全12行)
【0017】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》以下、本発明の第1の実施形態を図1ないし図2に基づいて説明する。
【0018】図1には、一実施形態に係るステージ装置10の構成が概略的に示されている。このステージ装置10は、複数(ここでは4つ)の除振パッド12を介して水平に保持された除振台としての定盤14上を所定の移動方向(図1における紙面左右方向)に移動可能な第1ステージとしての粗動ステージ16と、この粗動ステージ16に搭載され、当該粗動ステージ16に対して前記移動方向に相対移動可能な第2ステージとしての微動ステージ18と、定盤14の一端部(図1における右端部)上面に固定され、粗動ステージ16を送りねじ20を介して駆動する第1の駆動手段としての第1モータ22と、粗動ステージ16一端部上面に固定され、微動ステージ18を送りねじ24を介して駆動する第2の駆動手段としての第2モータ26と、第1、第2モータ22、26を制御する制御手段としての制御装置30とを備えている。ここで、本実施形態では、第1、第2モータとしてロータリ・モータ、例えばパルス・モータが使用される。
【0019】除振パッド12としては、ここでは機械式ダンパが用いられている。微動ステージ18は、ハニカム構造のようなリブ構造をした極めて軽量で高剛性を持つステージである。この微動ステージ18は機構的に高応答特性を持ち、また高いサーボ剛性を持っている。また、この微動ステージ18の移動時のストロークは十分長く設定されている。
【0020】微動ステージ18上には不図示の保持部材(例えば、ウエハホルダ)を介して試料(例えばウエハ等の基板)28が吸着保持されている。この微動ステージ18他端部の上面には、移動方向に直交する方向(図1における紙面直交方向)に移動鏡32が延設されており、この移動鏡32に対向して定盤14の他端部上面の延設部14aの上面には、第1の位置計測手段としての第1レーザ干渉計34が固定されている。このレーザ干渉計34は、移動鏡32にレーザビームを照射し、その反射光を受光して例えば0.01μmの分解能で微動ステージ18の位置を計測する。
・・・(中略)・・・
【0029】この場合において、微動ステージ18は粗動ステージ16に比べて質量が極めて小さいので、高加速度で移動しても、その反力が定盤14にもたらす影響は小さく、また、質量の大きい粗動ステージ16は低加速度で移動するのでその反力も小さい。従って、定盤14の揺動する大きさも小さくなり微動ステージ18に対する外乱は小さくなる。更に、質量の大きな粗動ステージ16のサーボ剛性が低いので定盤14及びステージ16、18を含む装置本体の機械的共振を励起することもない。従って、本実施形態のステージ装置10によると、微動ステージ18上の試料28の高速、高精度の位置決めが可能になる。」
「【図1】
[図:0001397628000001.jpg]
」

(2) 引用発明1

上記(1)によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「定盤14上を所定の移動方向(図1における紙面左右方向)に移動可能な第1ステージとしての粗動ステージ16と、この粗動ステージ16に搭載され、当該粗動ステージ16に対して前記移動方向に相対移動可能な第2ステージとしての微動ステージ18と、定盤14の一端部(図1における右端部)上面に固定され、粗動ステージ16を送りねじ20を介して駆動する第1の駆動手段としての第1モータ22と、粗動ステージ16一端部上面に固定され、微動ステージ18を送りねじ24を介して駆動する第2の駆動手段としての第2モータ26と、第1、第2モータ22、26を制御する制御手段としての制御装置30とを備え(段落0018)た、縮小投影型露光装置等の試料(例えばウエハ)を高速、高精度で位置決めする必要のある精密機器に好適なステージ装置(段落0001)であって、
微動ステージ18上には保持部材(例えば、ウエハホルダ)を介して試料(例えばウエハ等の基板)28が吸着保持され(段落0020)、
微動ステージ18は粗動ステージ16に比べて質量が極めて小さいので、高加速度で移動しても、その反力が定盤14にもたらす影響は小さく、また、質量の大きい粗動ステージ16は低加速度で移動するのでその反力も小さく、従って、定盤14の揺動する大きさも小さくなり微動ステージ18に対する外乱は小さくなり、更に、質量の大きな粗動ステージ16のサーボ剛性が低いので定盤14及びステージ16、18を含む装置本体の機械的共振を励起することもなく、従って、本実施形態のステージ装置10によると、微動ステージ18上の試料28の高速、高精度の位置決めが可能になる(段落0029)、
ステージ装置。」

2 公知技術A

(1) 引用文献Aの記載

当審における拒絶の理由1で、引用文献Aとして引用した実開平6-62390号公報には次の記載がある。

「【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、走査電子顕微鏡などの荷電粒子ビーム装置において、試料を水平方向に移動させるための試料移動機構に関する。
続きを表示(全30行)
【0002】
【従来の技術】
図1は従来の走査電子顕微鏡の移動機構を示しており、1は試料移動ステージ(図示せず)と一体的に動く移動体である。移動体1は基台2上に固定されたガイドレール3にガイドされて図中矢印方向に移動させられる。移動体1には送りネジ4と噛み合ったナット5が取り付けられている。送りネジ4は支持体6,7によって支持され、そして、モータ8によって回転させられる。この様な構成の動作を次に説明する。
【0003】
移動体1(試料が載せられた試料ステージ)を図中矢印方向に移動させる場合、モータ8を駆動し、送りネジ4を回転させる。この送りネジ4の回転により、このネジと噛み合ったナット5は回転が制限されているために、ネジ4の軸方向に直線状に移動されることになる。このナット5の直線状の移動により、移動体1とこの移動体1と一体的な試料ステージは直線移動させられる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記のような回転運動を直線運動に変換する機構においては、送りネジ4の回転によりナット5,移動体1が移動するが、送りネジ4の回転時にナット5にかかるネジ軸と直交する方向の力によって移動体1にピッチング(上下動)やヨーイング(左右動)が発生する。このピッチングやヨーイングにより試料ステージ自体を精度良く滑らかに移動させることができず、その結果、正確な像の観察が困難となる。このピッチングやヨーイングの発生は、ガイドレール3の水平度や平行度,加工精度に限界があることに起因している。
【0005】
本考案はこのようなな点に鑑みてなされたもので、その目的は、移動体(試料ステージ)のピッチングやヨーイングを防止することができる荷電粒子ビーム装置の試料移動機構を実現するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案に基づく荷電粒子ビーム装置の試料移動機構は、回転する送りネジと、送りネジに噛み合わされ送りネジの回転に伴ってネジ軸方向に移動するナット部と、試料ステージと一体的に移動するブロックとを備えており、ナット部と移動ブロックとの間を弾性体を介して接続したことを特徴としている。
【0007】
【作用】
本考案に基づく荷電粒子ビーム装置の試料移動機構は、送りネジの回転によって直線状に移動するナットと試料ステージと一体化された移動体とを板バネなどの弾性体によって接続し、ナットと移動体との変位を板バネによって吸収する。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照して本考案の一実施例を詳細に説明する。図2は本考案の一実施例を示しており、図1の従来装置と同一部分には同一番号が付されている。この図において、10は送りネジ4と噛み合ったナットであり、11は試料ステージ(図示せず)と一体的に移動する移動ブロックである。ナット10と移動ブロック11との間には、図中のX方向の変位を吸収する一組の板バネ12,13と、図中のY方向の変位を吸収する一組の板バネ14,15とによって接続されている。板バネ12,13と板バネ14,15との間には、中間ブロック16が設けられており、ナット10の移動は板バネ12,13,中間ブロック16,板バネ14,15を介して移動体ブロック11に伝えられる。なお、中間ブロック16と移動体ブロック11は、送りネジ4とは噛み合わされておらず、送りネジ4の回転によってそれ自体が直接移動させられたり、回転の力を受けることはない。このような構成の動作を次に説明する。
【0009】
図1の従来装置と同様に、送りネジ4を回転させることによりナット10は図中矢印方向に直線状に移動させられる。このナット10の移動の際、移動体ブロック11とナット10との間に変位を発生させる力が発生するが、X方向の変位(ヨーイング)に対しては板バネ12と13がその力を吸収し、また、Y方向の変位(ピッチング)に対しては、板バネ14と15がその力を吸収する。その結果、移動体ブロック11はピッチングやヨーイングの発生が防止され、移動体ブロック11と一体的に移動する試料ステージを精密に何等の振動も発生させずに移動させることが可能となる。
【0010】
以上、本考案の一実施例を詳述したが、本考案はこの実施例に限定されない。例えば、板バネ12,13,中間ブロック16,板バネ14,15は夫々別個の部材をネジ止めなどによって一体化したが、図3(a)に示すように、十字状にバネ部材17を切抜き、図3(b)に示すように、各バネ片17a~17dを折り曲げ、バネ片17a,17cをX方向の板バネ、17b,17dをY方向の板バネとして使用し、板バネ17a,17cをナット10と接続し、板バネ17b,17dを移動体ブロック11に接続するようにしても良い。なお、18は送りネジの貫通孔である。
【0011】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案に基づく荷電粒子ビーム装置の試料移動機構は、送りネジの回転によって直線状に移動するナットと試料ステージと一体化された移動体とを板バネなどの弾性体によって接続し、ナットと移動体との変位を板バネによって吸収するように構成したので、移動体(試料ステージ)のピッチングやヨーイングを防止することができる。」
「【図1】
[図:0001397628000002.jpg]
」
「【図2】
[図:0001397628000003.jpg]
」

(2) 公知技術A

上記(1)によると、引用文献Aには次の事項(以下「公知技術A」という。)が開示されているといえる。

「送りねじ4を用いた試料ステージの取付構造において、試料移動ステージ1を一組の直線ガイドといえるガイドレール3、及び板バネ12~15を介して取り付けること。」

3 公知技術B

(1) 引用文献Bの記載

当審における拒絶の理由1で、引用文献Bとして引用した特開昭60-85848号公報には次の記載がある。

「3. 発明の詳細な説明
〔発明の利用分野〕
本発明は、高精度送りを必要とする送りネジナットの支持構造に係り、特にネジのラジアル振れを直接テーブルに伝達させない高精度直動テーブルに関する。
〔発明の背景〕
パターン検査装置や露光装置等の半導体製造設備においては高精度移動テーブルが必要不可欠であるが、近年LSIの微細化、高集積化に伴ない移動テーブルに対する要求精度も一段と高まりつつある。現在これらの移動テーブルに対する要求精度はストローク200mm程度のテーブルにおいて直進性、送り精度共にサブミクロンオーダの精度が要求されている。
第1図は従来の一般的な構成を示した図である。図において移動テーブル1はペース2上に固定した直動案内3によってガイドし、駆動モータ4により送りネジ5を回転させ、移動テーブル1に固定したナット6に送りをかけることにより直線移動させる。移動テーブル1は、直動案内3の案内精度で移動することが望ましいが、第1図に示した様にナット6を移動テーブル1にソリッドに自由度なく取付けた場合は、比較的入手が容易な直動案内3の直進案内精度が長さ200mm程度で1~2μmであるのに対し直径16mm、長さ300mm程度の送りネジ5を精度よく製作してもラジアル振れ40~50μm程度以下にすることは困難であり、従って送りネジ5のラジアル振れが直接移動テーブル1に伝達され、本来の精度が出なかったり、直動案内3部や送りネジ5のナツト6との結合部で摩擦抵抗が増加して円滑な動作が阻害されてしまうという問題があった。特に最近では案内精度に優れる静圧直進空気案内が急増しているが、この案内方式は、高精度直進案内が可能な反面剛性が低い為、上述した 従来技術の欠点は大きな問題となっている。
上記従来技術の問題点の解決策として以下に示す2つの例がある。
先ず第1の例を第2図に示す。この例はナット6を板バネ7で支持したもので、第2図は直動テーブルのうちナット6の支持部を部分的に示した図である。ナット6は移動テーブル1の端部に設けたコの字形の溝部内に、一定の空隙を有する様に配置し、ナット6の一辺と移動テーブル1とを図示の如き2ケ所を半円状に湾曲させた板バネ7で結合し固定ネジ8により固定して送りネジ5のラジアル振れに対して自由度を持たせである。本実施例によれば、送りネジ5のラジアル振れに対しては、板バネ7の上下左右方向への変形で逃げており、変形量に応じて移動テーブル1に外力が発生する。この外力は第1図の実施例に比較した場合、がなり小さい力である為、案内剛性の大きい直動テーブルに対しては有効であるが静圧直進空気条内の様な低剛性の案内を有する直動テーブルに対して十分な解決手段にならない。又、第2図の例においては、ナット6を送シネジ5の軸心回りの回転方向に拘束してない為、送りネジ5の送り方向に対して正確な位置決めができない欠点がある。第3図はこの欠点を説明する為の図で送りネジ5が第3図の矢印の方向に回転した場合、送りネジ5とナット6との摩擦抵抗に応じてナット6が回転する。このナット6の回転は送りネジ5の送り誤差を意味し、例えばナット6がθ(rad)だけ回転したとすると(ネジリ-ド)×(θ/2π)の送り誤差となる。
又、このことは定速性が重要である直動テーブルにおいては速度変動を意味するものである。
更にナット6が送りネジ5との摩擦抵抗により容易に回転するということは、送りネジ5の駆動を停止して移動テーブル1の送りを止めても板バネ7の復元力によりナット6が減衰振動をしながら所定の停止位置に停止する為位置決め時間が長くかかるという問題もある。」(1ページ左下欄9行~2ページ左下欄4行)
「
[図:0001397628000004.jpg]
」

(2) 公知技術B

上記(1)によると、引用文献Bには、次の事項(以下「公知技術B」という。)が開示されているといえる。

「送りネジ5を用いた、パターン検査装置や露光装置等の半導体製造設備における高精度移動テーブルの取り付け構造において、移動テーブル1を一組の直線ガイドといえる直動案内3、及び板バネ7を介して取り付けること。」

第5 当審の判断

1 対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

(1) 本願明細書段落0037や段落0046~0052の記載、及び図3~図6によると、本願発明1における半導体デバイスはウェハーを含むから、「縮小投影型露光装置等の試料(例えばウエハ)を高速、高精度で位置決めする必要のある精密機器に好適なステージ装置」である引用発明1は、「半導体デバイスの位置決めをするための位置決めシステム」といえる点で本願発明1と共通する。

(2) 引用発明1の「定盤14」は、本願発明1の「支持構造」に対応する。

また、それぞれ、送りねじ20を介して第1モータ22と、送りねじ24を介して第2モータ26とによって駆動される、引用発明1の「定盤14上を所定の移動方向(図1における紙面左右方向)に移動可能な第1ステージとしての粗動ステージ16と、この粗動ステージ16に搭載され、当該粗動ステージ16に対して前記移動方向に相対移動可能な第2ステージとしての微動ステージ18と」は、いずれも平面内で直線的に移動可能に搭載されているといえる。

さらに、「粗動」及び「微動」との文言の意味に加えて、図1に示される「粗動ステージ16を駆動する送りねじ20」及び「微動ステージ18を駆動する送りねじ24」の長さの関係により、微動ステージ18の移動範囲(ストローク)は粗動ステージ16の移動範囲(ストローク)に対して短いことも見てとれるから、引用発明1の「粗動ステージ16」及び「微動ステージ18」はそれぞれ「長ストロークステージ」及び「短ストロークステージ」といえる。

そうすると、引用発明1の「定盤14上を所定の移動方向(図1における紙面左右方向)に移動可能な第1ステージとしての粗動ステージ16」は、本願発明1の「支持構造に対して平面内で直線的に移動可能であるように構成された長ストロークステージ」に相当し、引用発明1の「当該粗動ステージ16に対して前記移動方向に相対移動可能な第2ステージとしての微動ステージ18」は、本願発明1の「前記長ストロークステージに取り付けられ、半導体デバイスを搬送すべく前記平面内で直線的に移動可能であるように構成された短ストロークステージ」に対応するといえる。

したがって、引用発明1は「支持構造に対して平面内で直線的に移動可能であるように構成された長ストロークステージと、前記長ストロークステージに取り付けられ、半導体デバイスを搬送すべく前記平面内で直線的に移動可能であるように構成された短ストロークステージとを備え」る点で本願発明1と共通する。

(3) 「微動ステージ18は粗動ステージ16に比べて質量が極めて小さいので、高加速度で移動しても、その反力が定盤14にもたらす影響は小さく、また、質量の大きい粗動ステージ16は低加速度で移動するのでその反力も小さく、従って、定盤14の揺動する大きさも小さくなり微動ステージ18に対する外乱は小さくなり、更に、質量の大きな粗動ステージ16のサーボ剛性が低いので定盤14及びステージ16、18を含む装置本体の機械的共振を励起することもなく、従って、本実施形態のステージ装置10によると、微動ステージ18上の試料28の高速、高精度の位置決めが可能になる」引用発明1において、粗動ステージ16は微動ステージ18と定盤14との間でバランス質量として作用しているといえる。

(4) 以上を踏まえると本願発明1と引用発明1とは次の点で一致し、相違する。

ア 一致点

半導体デバイスの位置決めをするための位置決めシステムであって、

支持構造に対して平面内で直線的に移動可能であるように構成された長ストロークステージと、前記長ストロークステージに取り付けられ、半導体デバイスを搬送すべく前記平面内で直線的に移動可能であるように構成された短ストロークステージとを備え、

前記長ストロークステージが、前記短ストロークステージと前記支持構造との間でバランス質量として作用する、

位置決めシステム。

イ 相違点1

本願発明1の短ストロークステージが「一組の直線ガイドを介して」前記長ストロークステージに取り付けられ、「板バネを介して前記長ストロークステージにさらに取り付けられ」ているのに対し、引用発明1の微動ステージ18は、粗動ステージ16一端部上面に固定された第2モータ26により、送りねじ24を介して駆動されるものであり、粗動ステージ16に対して前記移動方向に相対移動可能にこの粗動ステージ16に搭載されるものであって、「一組の直線ガイド」及び「板バネ」のいずれも介さずに搭載されている点。

2 相違点1の検討

引用発明1と、公知技術A又は公知技術Bとは、いずれも送りねじを用いた移動ステージの取付構造に係る点で共通の技術分野に属するから、引用発明1の粗動ステージ16に対する微動ステージ18の送りねじを用いた取付構造として、公知技術A又は公知技術Bを採用し、「一組の直線ガイド」及び「板バネ」を介して搭載し、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。

そうすると、本願発明1は、引用発明1、及び、公知技術A又は公知技術Bにより当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

3 請求人の主張について

(1) 請求人の主張

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請求人は、令和4年11月7日提出の意見書(以下「意見書」という。)で、当審における拒絶の理由1について次の主張をした。

ア 「すなわち、引用文献Aの図1にはガイドレール3のみに関する構成が示され、図2には板バネ12~15のみに関する構成のみが示されています。したがって、引用文献Aには、ガイドレール3と板バネ12~15の両方が一つの位置決め装置に含まれる実施形態が開示されていません。そして、引用文献Aでは、図1に文献A考案に対する先行技術についての実施例が示されており、図2に、図1の先行技術に存在する技術的課題を解決するための考案の実施形態が示されていす。引用文献Aには、「板バネ」との構成が開示されているももの、引用文献Aから、図1と図2の異なる構成を組み合わせて請求項1発明の事項(4)の「短ストロークステージが、板バネを介して前記長ストロークステージにさらに取り付けられている」との構成に想到することができません。もちろん、引用文献Aには、この事項(4)の構成についての示唆もありません。」(意見書2ページ下から5行~3ページ5行)

イ 「すなわち、引用文献Bには、ナット6と移動テーブル1を板バネ7のみで連結し、移動テーブル1を、直動案内3を介してベース2に取り付ける構成が示されています。そして、この構成では、ナット6と移動テーブル1が板バネ7で連結され、移動テーブル1が直動案内3を介してベース2に取り付けられています。このように、引用文献Bには、直動案内3と板バネ7の両方の部品について開示されているものの、これら二つの部品が一緒に取り付けられている構成については全く開示されていません。
一方、本願の請求項1発明は、事項(3)の「一組の直線ガイドを介して前記長ストロークステージに取り付けられ、半導体デバイスを搬送すべく前記平面内で直線的に移動可能であるように構成された一組の直線ガイドを介して長ストロークステージに取り付けられる短ストロークステージ」との構成と、事項(4)の「前記短ストロークステージが、板バネを介して前記長ストロークステージにさらに取り付けられている」との構成をともに備えています。
・・・(中略)・・・
本願発明は、上記の構成により、短ストロークステージが、直線ガイドを介してモータにより駆動され、板バネからなる取付装置228により、長ストロークステージ222に取り付けられていますが、板バネからなる取付装置228は、短ストロークステージ224に駆動力を与えるためのものではなく、短ストロークステージ224から長ストロークステージ222に加速力をさらに伝達するためのものであります。それによって、本願発明では、長ストロークステージ222が短ストロークステージ224の加速力に対するバランスマスとして機能し、支持構造(フレーム226)の反力を軽減することができ、高速で高い位置精度を可能とするものであります。
一方、引用文献A及び引用文献Bには、板バネが開示されていますが、直線ガイドと板バネの双方で二つの部材を取り付けることについては開示されていません。
すなわち、本願発明では、上記説明図3(当初の図2)に示したように、短ストロークステージ224と長ストロークステージ222との間に、短ストロークステージ224を長ストロークステージ222に沿って移動させるための一組の直線ガイドに加え、長ストロークステージ222を短ストロークステージ224の加速力に対するバランスマスとして機能させ、支持構造226上の反力を低減させ、高速で高い位置決め精度を可能にするために、板バネからなる取付装置228を設けています。そして、このような構成は、引用文献1、引用文献A、引用文献Bのいずれにおいても検討さえされなかったものであります。もちろん、引用文献2においても検討されていません。
以上より、請求項1発明、請求項1発明と実質的に同じ構成を備えて同じ効果を奏する請求項12,18発明、及びこれらの請求項に係る発明を引用する他の請求項に係る発明、すなわち請求項1~20発明には理由1が存在しないものと思料いたします。」(意見書3ページ下から3行~5ページ2行)

(2) 請求人の主張の検討

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ア 引用文献A、及び引用文献Bの開示について

(ア)引用文献Aの図2の開示について

請求人は、「引用文献Aには、ガイドレール3と板バネ12~15の両方が一つの位置決め装置に含まれる実施形態が開示されていません。」(意見書2ページ下から4行~下から2行)と主張する。

しかしながら、上記「第4の2(1)」によると、引用文献Aの図1は、図2に示される考案に対する従来の技術を示すものであって、図2に、ガイドレール3についての直接の記載はないものの、段落0008~0009の記載を踏まえれば、図2は、図1に示される従来の技術において、課題を解決するための手段として段落0006に記載された事項である、送りネジ4、ナット部5、及び、試料ステージと一体的に移動するブロックに焦点を当て、これらを抽出して説明する図面と理解するのが自然であり、また、図2に示される考案において、図1に示されるガイドレール3をあえて省く理由もない。

そうすると、引用文献Aには、「ガイドレール3と板バネ12~15の両方が一つの位置決め装置に含まれる実施形態」が開示されているといえるから、請求人の上記主張は、引用文献Aの開示に基づくものとはいえない。

(イ) 引用文献Bの開示について

請求人は「このように、引用文献Bには、直動案内3と板バネ7の両方の部品について開示されているものの、これら二つの部品が一緒に取り付けられている構成については全く開示されていません。」(意見書4ページ1~3行)と主張する。

しかしながら、上記「第4の3(1)」によると、引用文献Bには、「直動案内3と板バネ7の両方の部品について開示され」、板バネ7に加えて、図番が示されてないが右下に直動案内3が示される第2図には、これら二つの部品が一緒に取り付けられている構成が開示されているといえる。

そうすると、請求人の上記主張は、引用文献Bの開示に基づくものとはいえない。

(ウ) 引用文献A及び引用文献Bの開示について

請求人は「一方、引用文献A及び引用文献Bには、板バネが開示されていますが、直線ガイドと板バネの双方で二つの部材を取り付けることについては開示されていません。」(意見書4ページ下から11行~下から10行)と主張する。

しかしながら、上記「第4の2(1)」によると、引用文献Aには、試料移動ステージ1という部材を、一組の直線ガイドといえるガイドレール3、及び板バネ12~15を介して基台2という部材に取り付けることが開示され、また、上記「第4の3(1)」によると、引用文献Bには、移動テーブル1という部材を一組の直線ガイドといえる直動案内3、及び板バネ7を介してベース2という部材に取り付けることが開示されているといえる。

そうすると、請求人の上記主張は、引用文献A及び引用文献Bの開示に基づくものとはいえない。

イ 機能について

(ア) 請求人は、「板バネからなる取付装置228は、短ストロークステージ224に駆動力を与えるためのものではなく、短ストロークステージ224から長ストロークステージ222に加速力をさらに伝達するためのものであります。」(意見書4ページ下から17行~下から15行)と主張するが、本願明細書には当該主張の根拠となるような記載はない。

(イ) 請求人は「本願発明では、長ストロークステージ222が短ストロークステージ224の加速力に対するバランスマスとして機能し、支持構造(フレーム226)の反力を軽減することができ、高速で高い位置精度を可能とする」(意見書4ページ下から15行~下から12行)、及び「長ストロークステージ222を短ストロークステージ224の加速力に対するバランスマスとして機能させ、支持構造226上の反力を低減させ、高速で高い位置決め精度を可能にするために、板バネからなる取付装置228を設けています。」(意見書4ページ下から7行~下から4行)と主張する。

しかしながら、引用文献1の段落0029(上記「第4の1(1)」)には、板バネの存在とは無関係に同様の機能が開示されているから、当該事項は、上記「第5の1(3)」で対比したとおり、引用発明1との一致点に基づく機能といえる。

また、本願明細書の「図2に示された実施形態において、長ストロークステージ222は、支持構造226に対して移動可能であるように構成されている。短ストロークステージ224は、長ストロークステージ(例えば、少なくとも1つの取付装置228(例えば、板バネ又は他の適切な装置)を介して)に取り付けられ、半導体デバイス204を搬送するように構成される。また、長ストロークステージは、支持構造に対して直線的に移動可能であるように構成され、短ストロークステージは、半導体デバイスを搬送すべく、直線的に移動可能及び/又は回転可能であるように構成される。長ストロークステージは、支持構造に対して第1の移動範囲を有する実施形態もある。短ストロークステージは、長ストロークステージに対して、第1の移動範囲よりも小さい第2の移動範囲を有する。また、長ストロークステージは直線的に移動可能であるように構成され、短ストロークステージは直線的に移動可能及び回転可能であるように構成される実施形態もある。長ストロークステージは、短ストロークステージと支持構造との間のバランス質量として作用する。したがって、長ストロークステージは、短ストロークステージの加速力のバランス質量として機能し、支持構造への反力を低減することができ、高速での高い位置決め精度を可能にする。」(段落0042、下線は当審において強調のために付加した。)、及び「長ストロークステージ222及び短ストロークステージ224を使用することにより、位置決めステージ202は支持構造226への加速力を低減することができる。長ストロークステージは、高い位置決め精度要件を有していないので、長ストロークの加速力はより低くなり、そのため、より少ない力が支持構造に伝達される。したがって、短ストロークステージによって発生する高加速力は、長ストロークステージの慣性により吸収され、支持構造に伝達されない。長ストロークステージは、バランス質量と測定システム機能の両方を統合する。また、長ストロークステージに対する位置決め精度要件は短ストロークステージに対する位置決め精度要件よりも低いので、低性能アクチュエータで駆動することができる。別個の移動バランス質量が短ストロークステージ及び長ストロークステージと共に使用される半導体デバイス位置決めステージに比べ、図2に示された位置決めステージ202は、長ストロークステージを短ストロークステージと半導体デバイスとの間のバランス質量として使用する。したがって、図2に示す位置決めシステム202は、別個の移動バランス質量なしに実施することができる。」(段落0043)との記載によると、請求人が主張する機能は、「長ストロークステージは、短ストロークステージと支持構造との間のバランス質量として作用する」ことに起因する機能と理解するのが自然であり、取付装置228として、他の適切な装置とともに例示された板バネを採用することに起因する機能とはいえない。

ウ 小括

以上のとおり、請求人の主張は、いずれも、本願明細書、引用文献A、及び引用文献Bの開示事項に基づくものではないから、採用できない。

4 まとめ

以上のとおり、本願発明1は、引用発明1、及び公知技術A又は公知技術Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

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2021-017568

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