特許拒絶査定不服審判
2021-017094
線維筋痛症感受性試験の組成物、デバイスおよび方法
- 審判番号
- 2021-017094
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-548869
- 請求日
- 2021年12月10日
- 審決日
- 2022年11月21日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バイオメリカ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人R&C
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 長井 真一
- 審判官 渡戸 正義
- 分類
- P18 .121-Z (G01N) / P18 .561-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N) / P18 .537-Z (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-548869「線維筋痛症感受性試験の組成物、デバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日国際公開、WO2017/160869、平成31年 4月11日国内公表、特表2019-510226〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年3月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年3月13日に手続補正書が提出され、令和3年2月1日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、同年5月7日に意見書が提出されるとともに誤訳訂正書が提出されたが、同年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月10日に審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 令和3年12月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「線維筋痛症と診断される患者又は線維筋痛症が疑われる患者において食物感受性を試験するための検査キットパネルであって、
それぞれの食物調製物が個々にアドレス可能な固相担体に独立して固定された、複数の異なる食物調製物からなり、
前記複数の異なる食物調製物が、それぞれ、0.07以下の未処理p値を有し、
前記p値が、線維筋痛症と診断される、または、線維筋痛症が疑われる第一の患者検査群からの異なる食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコアの平均値または中央値を、線維筋痛症と診断されない、または線維筋痛症が疑われない第二の患者検査群からの前記異なる食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコアの平均値または中央値の少なくとも90パーセンタイル順位と比較することを含むプロセスによって決定され、
前記免疫アッセイは、ELISAまたは抗体捕捉免疫アッセイである、検査キットパネル。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年5月7日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「線維筋痛症と診断される患者又は線維筋痛症が疑われる患者において食物感受性を試験するための検査キットパネルであって、
それぞれの食物調製物が個々にアドレス可能な固相担体に独立して固定された、複数の異なる線維筋痛症誘因食物調製物から実質的になり、
前記複数の異なる線維筋痛症誘因食物調製物が、それぞれ、0.07以下の未処理p値、又は、0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値を有する、検査キットパネル。」
2 補正の適否について
(1)新規事項追加の有無
ア 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「0.07以下の未処理p値」について、「前記p値が、線維筋痛症と診断される、または、線維筋痛症が疑われる第一の患者検査群からの異なる食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコアの平均値または中央値を、線維筋痛症と診断されない、または線維筋痛症が疑われない第二の患者検査群からの前記異なる食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコアの平均値または中央値の少なくとも90パーセンタイル順位と比較することを含むプロセスによって決定され、前記免疫アッセイは、ELISAまたは抗体捕捉免疫アッセイである」こと(以下「p値特定事項」という。)と特定することを含んでいる。
イ 特許法17条の2第3項の規定により、明細書、特許請求の範囲又は図面について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものでない新規事項を追加する補正はできないところ、「p値特定事項」が、本願当初明細書等に記載したものであるか、以下、検討する。
ウ 請求人は、審判請求書において、「p値特定事項」を追加する補正は、本願当初明細書の段落【0031】、【0034】、【0035】及び実施例等の記載に基づくものであると主張する。
しかし、本願当初明細書の段落【0031】、【0034】には、それぞれ、線維筋痛症と診断されるか線維筋痛症が疑われる患者において食物不耐性を試験する方法についての記載、及び、食物調製物が固相表面に固定化されるのが好ましいことの記載はあるが、未処理p値を決定することに関する記載はない。
また、本願当初明細書の段落【0035】には、既に線維筋痛症と診断されたか疑いのある線維筋痛症患者における誘因食品品目を特定することについて、線維筋痛症と診断されるか線維筋痛症が疑われる患者の体液と線維筋痛症と診断されないか線維筋痛症が疑われないコントロール群の体液に基づいて検査することの記載はあるが、未処理p値を決定することに関する記載はない。
次に、本願当初明細書の実施例(段落【0038】以下)についての記載をみると、段落【0043】に「ELISA調製およびサンプルの試験」について、「食物抗原調製物を・・・それぞれのマイクロタイターウェルに固定化した。アッセイのために、食物抗原を患者の血清中に存在する抗体と反応させ・・・た。IgG抗体結合を検出するために、酵素標識された抗IgG抗体コンジュゲートを抗原-抗体複合体と反応させ・・・カップリングされた酵素と反応する基質の添加によって発色させた。・・・色の強度が、特定の食物抗原に対して特異的なIgG抗体の濃度に正比例している。」との記載があり、段落【0044】以下に「線維筋痛症をコントロール被験者から識別するためのELISAシグナルの能力の順で順位づけされた食物リストを決定するための方法論」についての記載があり、段落【0045】に「試験した食物のそれぞれについて、残りのシグナルスコアが、比較的大きい再サンプリング回数(例えば、1,000回超・・・)による二標本t検定での並べ替え検定を使用して線維筋痛症とコントロールとの間で比較される」との記載と「両側並び替えp値がそれぞれの食物についての未処理p値を表す」との記載があり、これらは未処理p値に関する記載といえる。
しかし、「p値特定事項」は、「p値」の「決定」に際し、「線維筋痛症と診断される、または、線維筋痛症が疑われる第一の患者検査群」からの「食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコア」の「平均値または中央値」を、「線維筋痛症と診断されない、または線維筋痛症が疑われない第二の患者検査群」からの「食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコア」の「平均値または中央値」の「少なくとも90パーセンタイル順位」と「比較」するプロセスが関係することを意味する。「二標本t検定」が、標本データからt値とよばれる統計量を計算し、t値を利用して2つのグループ間の母平均に差があるかどうかを検定する方法であることが技術常識であることを踏まえても、本願当初明細書の上記実施例についての記載からは、「p値」の「決定」に際し、上記「第一の患者検査群」からの「食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコア」と上記「第二の患者検査群」からの「食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコア」について、当該2つの検査群におけるIgG免疫アッセイスコアの「平均値」を比較することは理解できるとしても、「p値特定事項」における「第一の患者検査群」の「平均値または中央値」と「第二の患者検査群」の「平均値または中央値」の「少なくとも90パーセンタイル順位」とを比較することを意味するとは認められないし、自明であるとも認められない。
さらに、本願当初明細書の段落【0048】以下に「それぞれの食物についてのカットポイント選択のための統計学的方法」についての記載、段落【0053】以下に「線維筋痛症の根底にある食物過敏性を有する線維筋痛症患者のサブセットを決定するための方法論」についての記載、段落【0063】以下に「『陽性』と宣言される食物の1人あたりの数の分布を決定するための方法」、段落【0065】以下に「診断成績を見積もるための方法」についての記載があるが、食物調製物のp値を決定することに関するものではなく、「p値特定事項」を記載するものではない。
エ 以上のとおりであるから、本件補正により追加された「p値特定事項」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできないから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。
(2)特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1に「前記複数の異なる線維筋痛症誘因食物調製物が、それぞれ、0.07以下の未処理p値、又は、0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値を有する、」と記載されていたのを、「0.07以下の未処理p値」を有する場合のみに限定することを含んでいるところ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載される発明は同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができる)ものでなければならない。
イ 本件補正後の請求項1に記載される発明が「検査キットパネル」という物の発明であり、「複数の異なる食物調製物」からなるものであることに照らすと、本件補正後の請求項1に記載される「検査キットパネル」の発明が物の発明として明確であるというためには、「食物調製物」について、「0.07以下の未処理p値を有」すると特定することで、「食物調製物」の構造又は特性を明確に特定しているといえるものでなければならない。
ウ そこで検討するに、「p値」とは、技術常識によれば、統計学的仮説検定における概念であり、帰無仮説のもとで検定統計量がその値となる確率を意味するところ、本件請求項1には、「0.07以下の未処理p値」とされているから、検定統計量が7%以下であれば帰無仮説を棄却して対立仮説を採択する(有意差がある)とするものである。
このようなp値の概念に照らすと、「0.07以下の未処理p値」との特定は、「食物調製物」の構造又は特性を直接特定するものとはいえないことは明らかである。
そして、検定統計量として周知のものであり、本願明細書の段落【0045】にも記載の「二標本t検定」におけるt値が、母平均に差があるかどうかを検定したい2つの各グループにおける標本データの標本平均、不偏標準偏差、サンプルサイズから算出されることが技術常識であることを踏まえると、t値は、標本データ(IgG免疫アッセイスコア)をどのような試料についてどのような試験方法により取得するのかによって影響を受けるし、サンプル数によっても影響を受けるものであると認められる。
そうすると、本件補正により、2つの患者検査群から無作為に抽出した「食物調製物に対するIgG免疫アッセイスコア」をデータとして用いることが特定され、「ELISAまたは抗体捕捉免疫アッセイ」により求められることが特定されたとしても、ELISAによるのか、それ以外の抗体捕捉免疫アッセイによるかによっても算出される検定統計量は異なり得るし、ELISAに限ったとしても如何なる試料を用いるのか、すなわち、血清、血漿、尿、唾液等のいずれを用いるのかによって、「IgG免疫アッセイスコア」は異なり得るし、母集団の人種、年齢、性別等が異なればそれによっても異なり得るものと認められる。
以上によれば、本件補正後の請求項1の記載によっても、「0.07以下の未処理p値」を有する「食物調製物」の技術的範囲は一義的に定まらないし、同じ食物調製物であっても「0.07以下の未処理p値」になる場合とならない場合があり得るから、「食物調製物」について、「0.07以下の未処理p値を有」すると特定する記載は、「食物調製物」の構造又は特性を明確に特定するものとはいえない。
エ また、上記(1)で新規事項の追加に当たると判断した「p値特定事項」の記載を考慮したとしても、「第一の患者検査群」の「平均値または中央値」と「第二の患者検査群」の「平均値または中央値」の「少なくとも90パーセンタイル順位」とを比較することの技術的意義を理解することができず、「未処理p値」を決定するプロセスを理解することができない。
オ 以上のとおり、請求項1に係る発明の範囲は不明確であるから、特許法36条6項2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反し、また、同条6項において準用する同法126条7項の規定にも違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年12月10日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年5月7日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の要旨
(1)原査定の拒絶の理由のうちの理由1は、請求項1の「0.07以下の未処理p値」及び「0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値」との記載が不明確であるから、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。
(2)原査定の拒絶の理由のうちの理由2は、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:米国特許出願公開第2007/0122840号明細書
3 理由1(明確性)について
本件補正前の請求項1の「0.07以下の未処理p値」及び「0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値」との記載が明確でないことは、前者について、上記第2[理由]2(2)で検討したとおりであり、後者も「p値」に関するもので少なくとも前者の記載が明確でないのと同様の理由により明確でない。
4 理由2(進歩性)について
(1)引用文献1の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。下線は当審が付した。)。
(ア)「[0002]The invention relates to an immunoassay for the
detection of antibodies which bind food allergens the presence of
which is linked to food intolerance. The invention also relates to a
substrate for use with said immunoassay.
・・・
[0003]A number of chronic pathological conditions are thought to
be caused or provoked by allergic reactions to allergens present in
food. For example, conditions such as irritable bowel syndrome,
migraine, eczema, arthritis, asthma, autism, Candidiasis, celiac
disease, chronic fatigue, diabetes, ear infections, fibromyalgia,
hyperactivity, hypoglycemia, hypertension, leaky gut, skin rashes
and, sinusitis, are each considered in some cases to be provoked or
caused by intolerance to allergens present in food.」
(翻訳:[0002]本発明は、その存在が食物不耐性にリンクされている食物アレルゲンに結合する抗体の検出のためのイムノアッセイに関する。本発明はまた、イムノアッセイでの使用のための基板に関するものである。
・・・
[0003]多数の慢性の病理学的状態は、食品中に存在するアレルゲンに対するアレルギー反応によって引き起こされると考えられる。例えば、過敏性腸症候群、頭痛、湿疹、関節炎、喘息、自閉症、カンジダ症、セリアック病、慢性疲労、糖尿病、耳感染症、線維筋痛症、活動亢進、低血糖症、低血圧症、腸管壁浸漏、皮膚の発疹、および副鼻腔炎のような状態は、食品中に存在するアレルゲンに対する過敏症によって引き起こされると考えられる場合もある。)
(イ)「[0008] According to a first aspect of the invention there
is provided a substrate to which is applied, coupled or cross-linked
to at least one part of said substrate an allergen wherein said
allergen is a protein derived from an extract selected from at least
one of the following food groups: cereal, legume, cocoa bean, nut,
fruit, vegetable, shellfish, fish, yeast, dairy product, egg and
meat.
[0009] The allergen may be selected from at least 2, 4, 6, 8, 10, or
from all, of said food groups.」
(翻訳:[0008]本発明の第1の態様によれば、上記アレルゲンは、次の食品群のうちの少なくとも1つから選択される抽出物に由来するタンパク質であることを特徴とするアレルゲンを印加することにより、前記基板の少なくとも一部に結合されるか又は架橋されている基板を提供するものである:穀類、豆類、カカオ豆、ナッツ、果実、野菜、甲殻類、魚、酵母、酪農製品、卵及び肉。
[0009]アレルゲンは、前記食品群から少なくとも2、4、6、8、10個又は全てを選択することができる。)
(ウ)「[0018] In a preferred embodiment the allergen derived from
each of the extracts is arranged as an array on said substrate.
Preferably, the array is a microarray or a microdot.」
(翻訳:好ましい実施形態においては、抽出物のそれぞれに由来するアレルゲンは、前記基板上にアレイとして配置されている。好ましくは、前記アレイはマイクロアレイ又はマイクロドットである。)
(エ)「[0042] The food allergens for inclusion in the panel were
selected from an examination of the frequency of IgG positivity in
preliminary experiments with a larger panel of food allergens. The
following 29 food allergens were selected:
[図:0001396747000001.jpg]
」
(翻訳:パネルに含めるための食物アレルゲンは、食物アレルゲンのより大きなパネルを用いた予備実験で、IgG陽性の頻度の試験から選択した。以下の29種類の食物アレルゲンを選択した。
大麦、セロリ、ブラジルナット、トウモロコシ、インゲン豆、カシューナッツ、米、エンドウ、ピーナッツ、ライ麦、ジャガイモ、クルミ、小麦、化大豆油、ココア豆、牛乳、トマト、ビール酵母、牛肉、リンゴ、甲殻類の混合物、ニワトリ、オレンジ、白身魚混合物、豚肉、イチゴ、全卵、キャベツ、アーモンド)
イ 引用発明
上記アからみて、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「アレルゲンが、基材の少なくとも一部に結合されるか又は架橋され、アレイとして配置されている、食物アレルゲンに結合する抗体の検出のためのイムノアッセイでの使用のための基板であって、
前記アレルゲンは、穀類、豆類、カカオ豆、ナッツ、果実、野菜、甲殻類、魚、酵母、酪農製品、卵及び肉の食品群の少なくとも1つから選択されるメンバーである抽出物に由来するタンパク質であり、
前記アレルゲンは、大麦、セロリ、ブラジルナット、トウモロコシ、インゲン豆、カシューナッツ、米、エンドウ、ピーナッツ、ライ麦、ジャガイモ、クルミ、小麦、化大豆油、ココア豆、牛乳、トマト、ビール酵母、牛肉、リンゴ、甲殻類の混合物、ニワトリ、オレンジ、白身魚混合物、豚肉、イチゴ、全卵、キャベツ、アーモンドである、基板。」
(2)対比、判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、牛乳、トウモロコシ、ライ麦、小麦、セロリ、トマト、リンゴ、イチゴ、アーモンド、クルミ、ココア豆、全卵はいずれも、本願明細書では、未処理p値が0.07以下又はFDR多重度調整p値が0.10以下の食物調製物に対応するものとしていることを踏まえると(本願明細書[表2-1]を参照)、両者は以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
食物感受性を試験するための検査キットパネルであって、
それぞれの食物調製物が個々にアドレス可能な固相担体に独立して固定された、複数の異なる食物調製物を含み、
前記複数の異なる食物調製物が、それぞれ、0.07以下の未処理p値、又は、0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値を有する、検査キットパネル。
【相違点1】
食物感受性を試験するための検査パネルが、本願発明では、線維筋痛症と診断される患者または線維筋痛症が疑われる患者において食物感受性を試験するためのものであるのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。
【相違点2】
本願発明では、「0.07以下の未処理p値、又は、0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値を有する」「複数の異なる食物調製物」から「実質的にな」るのに対し、引用発明では、本願明細書[表2-1]に記載のもの以外のものが含まれており、本願発明が特定するようなものといえるのか不明である点。
上記相違点1について検討する。
引用文献1の[0003]には、線維筋痛症は、食品中に存在するアレルゲンに対する過敏症によって引き起こされると考えられる場合があることが示唆されているから、引用発明の食物アレルゲンに結合する抗体の検出のためのイムノアッセイを、線維筋痛症と診断される患者または線維筋痛症が疑われる患者を対象として行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。
上記相違点2について検討する。
理由1で検討したとおり、「0.07以下の未処理p値」及び「0.10以下の偽発見率(FDR)多重度調整p値」との記載が明確でないので、本願発明における「食物調製物」の範囲が不明確であるが、本願明細書[表2-1]に記載のものは、本願発明の「食物調製物」に含まれるものと解して検討する。
引用発明における食物アレルゲンには「牛乳、トウモロコシ、ライ麦、小麦、セロリ、トマト、リンゴ、イチゴ、アーモンド、クルミ、ココア豆、全卵」といった本願明細書の[表2-1]に記載のものが含まれているところ、引用文献1の[0009]には、アレルゲンを食品群から2ないし10種類程度選択することが記載されており、引用発明における29の食物アレルゲンから2ないし10種程度を適宜選択し、「牛乳、トウモロコシ、ライ麦、小麦、セロリ、トマト、リンゴ、イチゴ、アーモンド、クルミ、ココア豆、全卵」に含まれるものから実質的になるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条条6項2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
また、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-017094