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特許拒絶査定不服審判

2021-016708

疲労感軽減用または凝り改善用組成物

審判番号
2021-016708
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-165676外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月03日
審決日
2023年10月18日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-165676「疲労感軽減用または凝り改善用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 43862〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年8月30日を出願日とする出願であって、その主な手続きの経緯は、次のとおりである。 令和3年 3月22日付け 拒絶理由の通知 同年 7月28日 意見書、手続補正書の提出 同年 9月 3日付け 拒絶査定 同年12月 3日 審判請求書、手続補正書の提出 令和5年 3月15日付け 当審による拒絶理由の通知 同年 5月19日 意見書、手続補正書の提出 同年 6月28日付け 当審による拒絶理由の通知 同年 8月25日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年8月25日提出の手続補正書によってなされた補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。なお、下線は補正された箇所を示す。 「【請求項1】 α-モノグルコシルルチンを有効成分として含有し、前記α-モノグルコシルルチンを含むケルセチン配糖体を、健常者1人につき、1日当たり100~500mgの投与量で経口投与される、医薬組成物としてのVDT作業による首の凝り改善用組成物。」 第3 当審拒絶理由 当審が、令和5年6月28日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本件補正前の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対する拒絶理由の概要は、補正前発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献2~5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献2:特開平11-171778号公報 引用文献3:特開2003-73279号公報 引用文献4:J.Food Agriculture & Environment(2012)Vol.10、No,2、p.107-110 引用文献5:栄養学雑誌(2014)Vol.72、No.Supplement5、p.205、2Fp-02 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 (1)引用文献2の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である引用文献2には以下の事項が記載されている。なお、下線は強調するために合議体が付したものである。 ア「【請求項1】 有効成分として糖転移ビタミンPを含んでなる血行改善剤。 【請求項2】 糖転移ビタミンPが糖転移ヘスペリジン及び/又は糖転移ルチンである請求項1に記載の血行改善剤。」(特許請求の範囲) イ「【0002】 【従来の技術】・・・OA機器の操作は、一般に、操作者に上腕を体幹から離した姿勢を強いるので、長時間操作すると、腕、肩、背中、腰などの特定の部位に筋硬直による「こり」が発生することとなる。筋肉の「こり」は、通常、その部位を掴むか揉むことにより軽快するが、OA機器を日常的に操作する場合には、「こり」が一旦発生すると、容易には解消できなくなることが多い。OA機器の操作以外にも、運動、肉体作業、不良姿勢、精神的緊張などの誘因に加えて、変形性頚椎症、胸郭出口症候群、高血圧症、眼精疲労、自律神経失調症、更年期障害などの疾患によっても「こり」の発生することがある。「こり」の程度によっては、独特の鈍痛や不快感が長時間続き、ときには、頭痛や嘔吐を伴うことがある。 【0003】「こり」が発症する機序についてはなお明らかではないが、神経の過剰刺激、筋の過労、自律神経失調が引金となり、その結果として、末梢血管が収縮し、筋に血行障害や欝血が発生して、独特の「こり」の症状を惹起するのではないかと考えられている。したがって、筋肉の「こり」を解消するには血行を改善するのが効果的である・・・」(【0002】-【0003】) ウ「・・・この発明の課題は、手軽に常用でき、副作用なく血行を効果的に改善し得る手段を提供することにある。 ・・・斯かる課題を解決すべく、本発明者が生理活性物質に着目して検索したところ、ビタミンの1種である糖転移ビタミンPは、ヒトに投与すると、副作用を惹起することなく血行を改善し、肩こり、腰痛などによる筋硬直の緩和に著効を発揮することを見出した。・・・」(【0004】-【0005】) エ「この発明は、有効成分として糖転移ビタミンPを含んでなる血行改善剤に関するものである。糖転移ビタミンPとしては、通常、α-モノグルコシル・ヘスペリジン、α-ジグルコシル・ヘスペリジン、α-トリグルコシル・ヘスペリジン、α-テトラグルコシル・ヘスペリジン及びα-ペンタグルコシル・ヘスペリジンを初めとする一連の糖転移ヘスペリジンや、α-モノグルコシル・ルチン、α-ジグルコシル・ルチン、α-トリグルコシル・ルチン、α-テトラグルコシル・ルチン及びα-ペンタグルコシル・ルチンを初めとする一連の糖転移ルチンが用いられる。これらはヒトにおいてほぼ同様の血行改善作用を発揮するので、この発明の血行改善剤においては、上記に例示したごとき血行改善作用ある糖転移ビタミンPの1又は複数が全体として有効量含まれていればよい。ちなみに、肩こり、腰痛、筋肉痛などに伴う筋硬直を緩和したり、筋硬直を伴う諸疾患を治療する効果についてみると、糖転移ルチンより、糖転移ヘスペリジンの方が勝っている。」(【0007】) オ「【0008】糖転移ビタミンPは種々の方法で調製することができる。経済性を問題にするのであれば、糖転移酵素を用いる生化学的方法が有利であり、例えば、澱粉部分加水分解物やマルトオリゴ糖などのα-グルコシル糖化合物の存在下で、ヘスペリジンやルチンなどのビタミンPにα-グルコシダーゼ、シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼを初めとする糖転移酵素を作用させると、上記のごとき糖転移ビタミンPが高収量で得られる。斯くして得られる反応物は、主たる成分として、通常、転移部分のグルコース重合度が1乃至5の範囲に分布する一連の糖転移ビタミンPを含有する。この一連の糖転移ビタミンPは、グルコアミラーゼと、必要に応じて、ラムノシダーゼを作用させることにより、α-モノグルコシル・ビタミンPとすることができる。・・・斯かる方法により調製された市販品としては、粉末糖転移ルチン(商品名『αGルチン』(固形分重量当りの全ルチン含量40乃至82%、株式会社林原商事販売)及び粉末糖転移ヘスペリジン(商品名『αGヘスペリジン』(固形分重量当りの全ヘスペリジン含量22乃至84%)、株式会社林原商事販売)がある。・・・)(【0008】) カ「【0013】この発明の血行改善剤は糖転移ビタミンP単独の形態であっても、糖転移ビタミンPと糖転移ビタミンPの投与を容易ならしめる他の成分との組成物の形態であってもよい。糖転移ビタミンPの投与を容易ならしめた組成物は、通常、液状、ペースト状又は固状の食品又は医薬品の形態で提供される。・・・ ・・・使用目的にもよるが、例えば、健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合には、通常、食品の形態にして経口的に投与し、一方、疾病の治療や健康回復を目的とする場合には、通常、医薬品又は食品の形態にして経口的又は注射、外用剤などにより非経口的に投与する。用量としては、通常、糖転移ビタミンPの投与量が約1mg乃至1g/回/成人、望ましくは、10mg乃至10g/回/成人になるようにして、1乃至4回/日又は1乃至5回/週の頻度で摂取する。」(【0013】-【0014】) キ「【実験2】〈臨床実験〉実験1の結果に基づき、慢性的な肩こり又は腰痛を訴える年齢28乃至51歳の男性被験者60名に対して臨床実験を行った。・・・並行して、残る30名から無作為に選出した被験者10名からなる3群を構成し、それぞれの群に対して、後記実施例5の方法により調製した錠剤(本発明3)、トレハロースを蔗糖で置換した以外は実施例5におけると同様にして調製した錠剤(本発明4)又は糖転移ビタミンPを省略した以外は実施例5におけると同様にして調製した偽薬(対照)のいずれかを毎食後3錠ずつ、1週間に亙って毎日経口摂取させた。実験には臨床検査技師が当り、最後の摂取から24時間後に施術の効果及び副作用について被験者を問診するとともに、施術の効果を上記と同様の基準で4段階評価した。結果を表2に示す。 【0024】 [図:0001405154000001.jpg] 【0025】表1及び表2の結果は、糖転移ビタミンPが、ヒトに投与すると、投与経路に拘らず、副作用を惹起することなく、肩こりや腰痛などによる筋硬直を効果的に緩和する作用があることと、この作用が糖質のなかの特定の糖質であるトレハロースによって有意に促進されることを裏付けている。なお、肩こり及び腰痛以外の症例について予備実験したところ、筋肉痛、神経痛、捻挫、冷え症、凍傷、打撲傷、関節炎、神経炎、腱鞘炎、眼精疲労、動脈硬化症などにも著効を発揮することが示された。」(【0021】-【0025】) ク「【実施例2】〈健康食品〉ガムベース3重量部を柔らかくなるまで加熱融解し、これにトレハロース含量約50%(w/w)の粉末緑黄色野菜(商品名『ニューミックス』、株式会社H+Bライフサイエンス販売)を7重量部加え、さらに、適量の着色料及び着香料とともに、糖転移ルチン粉末(商品名『αGルチンP』(固形分重量当りの全ルチン含量40乃至46%)、株式会社林原商事販売)を固形分重量含量0.1%になるように加えた後、常法により練り合わせ、成型し、包装して糖転移ビタミンPを含有するチューインガムを得た。 【0032】テキスチャー、呈味ともに良好な本品は、血行を改善・維持し、肩こり、腰痛、筋肉痛などに伴う筋硬直を緩和したり予防するための健康食品として有用である。」(【0031】-【0032】) ケ「【実施例5】〈錠剤〉糖転移ビタミンC粉末(商品名『AA-2G』、株式会社林原商事販売)10重量部に糖転移ヘスペリジン粉末(商品名『αGヘスペリジンPA』(固形分重量当りの全ヘスペリジン含量74乃至78%)、株式会社林原商事販売)3重量部、結晶性トレハロース粉末(商品名『トレハオース』、株式会社林原商事販売)17重量部をそれぞれ均一に混合した後、常法により打錠して、1錠当り糖転移ビタミンPを10mg含有する錠剤を得た。 【0038】摂取し易く、溶解性に優れ、ビタミンCの補給作用も兼備する本品は、血行を改善・維持し、肩こり、腰痛、筋肉痛などに伴う筋硬直を緩和したり予防するための錠剤として有用である。」(【0037】-【0038】) (2) 引用文献2に記載された発明 上記(1)の引用文献2の記載事項に基づけば、従来から、OA機器の操作や、運動、肉体作業、不良姿勢、精神的緊張などの誘因で、腕、肩、背中、腰などの筋硬直による「こり」が発生し、「こり」の程度によっては、独特の鈍痛や不快感が長時間続き、ときには、頭痛や嘔吐を伴うことがあるが、筋肉の「こり」を解消するには血行を改善するのが効果的であるところ(上記(1)イ)、α-モノグルコシル・ヘスペリジンやα-モノグルコシル・ルチンといった糖転移ビタミンPが血行改善作用を有し、経口摂取により、肩こりや腰痛などによる筋硬直を効果的に緩和することが実験的裏付けをもって記載されている(上記(1)ア、ウ、エ、キ及びケ)。 また、糖転移ビタミンPは、糖転移酵素を用いる生化学的方法によって、グルコース重合度が1乃至5の範囲に分布する糖転移ビタミンPを製造することができ、商品名「αGルチン」、「αGヘスペリジンPA」などの市販品も利用できること(上記(1)オ、ク及びケ)、健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合は、通常、食品として、疾病の治療や健康回復を目的とする場合には、通常、食品又は医薬品の形態で提供され、約1mg乃至1g/回/成人で摂取すること(上記(1)カ、ク及びケ)が記載されている。 そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「有効成分として糖転移ヘスペリジン及び/又は糖転移ルチンを含み、約1mg乃至1g/回/成人の投与量で、健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合は、通常、食品の形態にして経口的に投与し、疾病の治療や健康回復を目的とする場合には、通常、医薬品又は食品の形態にして経口的又は注射、外用剤などにより非経口的に投与される、凝り改善用組成物。」 (3)引用文献3の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である引用文献3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調するために合議体が付したものである。 ア「【0022】ルチンは、フェノール性物質であり、空気中では不安定である。また、ルチンは、アルカリ性水溶液には可溶であるが、水、酸性水溶液に難溶であり、室温では、1リットルの水に僅かに0.1g程度しか溶けないため、その利用分野が限定されている。そこで、ルチンの水溶性を高めるための種々の方法およびその誘導体が提案されており、ルチンに糖を転移(付加)させたα-グルコシル化ルチン混合物が開発され(特開平3-27293号公報)、商品名「αG-ルチンP」として市販されている。 【0023】この「αGルチンP」(以下、「αGルチン」という)は、上記ルチンに酵素グリコシダーゼ、トランスグリコシダーゼなどの転移作用によりデンプン、デキストリンなどからグルコースをルチンのグルコース4位に転移した水溶性ルチンであり、下記式(II)に示すようにグルコース数の異なるα‐グルコシル化ルチンの混合物である。 【0024】 [図:0001405154000002.jpg] 【0025】(但し、式(II)中、Rはグルコース残基、nは1~数十の整数を表わす) 「αG-ルチン」は、α-位のグルコース残基数(n)が1~数十の範囲、平均ではnが4~5程度のα-グルコシル化ルチンの混合物である。このαG-ルチンには、α-位のグルコース残基数(n)が1のモノグルコシルルチン(MGR)などが含まれる。」(【0022】-【0025】) イ「【0037】生体内における動態 本発明に係る水溶性クエルセチン配糖体を含有する経口栄養補給剤あるいは水溶性ヘスペレチン配糖体を含有する経口栄養補給剤がヒトやそれ以外の動物の体内に経口摂取されると、水溶性クエルセチン配糖体または水溶性ヘスペレチン配糖体を含有する経口栄養補給剤に含まれていたルチン類またはヘスペリジン類などは、腸に到達すると腸内細菌のもつβ‐グルコシダーゼなどの作用を受けて、アグリコンのクエルセチンと糖、あるいはヘスペレチンと糖とに加水分解されてから吸収されると考えられている。後述するように、糖の種類及び糖残基数などにより加水分解は必ずしも同じように進まず、その結果、吸収速度および吸収量の違いになって表われる。 【0038】ルチン類の場合、モノグルコシルルチンも含め、α-グルコシル化ルチンは、ルチンと同様に経口摂取すると、その糖残基を腸内細菌の作用により順次外してルチンを生成するため、イソクエルシトリンよりも遅れて徐々に吸収される。このことは、α-グルコシル化ヘスペリジンについても同様であり、β-モノグルコシルヘスペレチンよりもその吸収は遅れる。」(【0037】-【0038】) ウ「【0053】モノグルコシルルチンの製造には、原料としてα-グルコシル化ルチンとルチンとの混合物(A)が用いられ、この混合物(A)は、通常、「αGルチンP」(R)(東洋精糖(株)製)の商品名で市販されている。αG-ルチンは、例えば下記のようにして製造される。すなわち、前記の式(I)で表わされる、水に極めて難溶(溶解度:水100g当り0.01g程度)であるルチンに、糖供与体としての澱粉あるいはその部分加水分解物(例:デキストリン、マルトース)を加えてなる組成物に、アミラーゼ、グリコシダーゼ、トランスグリコシダーゼなどのグルコース残基転移酵素を作用させて澱粉あるいはその部分分解物からルチンに糖(グルコース)を転移(付加)させることにより、α-グルコシル化ルチン混合物は得られる。 【0054】上記α-グルコシル化ルチン混合物の製造方法の詳細は、例えば特公昭54ー32073号公報あるいは特公昭58ー54799号公報、特許第2926411号に記載されている。なお、このようにして得られた反応物には、通常、α-グルコシル化ルチン混合物とともに、未反応のルチンあるいはルチンの分解物であるクエルセチン等も少量含まれている。・・・」(【0053】-【0054】) エ「 [図:0001405154000003.jpg] 」(図1) (4)引用文献4の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献4は、外国語の文献であるため、当審による和訳で記す。なお、下線は強調するために合議体が付したものを含む。 ア「通常のソバ及び韃靼ソバ消費の粘膜症状、頭痛及び疲労における効果:二重盲検クロスオーバー介入研究」(表題) イ「ソバは、ヒトの健康に有益なフラボノイドルチン及び他の化合物を豊富に含む。ソバは異なる疾患の処置における健康食品として伝統的に使用されているが、症状や健康に対する効果に関する研究は少ない。本研究は2つのタイプのソバ:韃靼ソバ(TBW;Fagopyrumtataricum Gaertn.)及び通常のソバ(CBW;F.esculentum Moench)の消費の一般的な及び粘膜の症状における効果を調査することを目的とした。両方のタイプのソバ粉からクッキーを製造した。TBWクッキーはkg乾物重(DW)当たり2,530mgのルチン及び1,620mgクエルセチンを含んだ。・・・二重盲検無作為クロスオーバー研究が62名の健康女性で実施された。参加者は無作為に2つの群に分けられた。最初の群は1日に4枚のTBWクッキー(1日当たり359.7mgルチン当量)を、第2の群は4枚のCBWクッキー(1日当たり16.5mgルチン)を、2週間消費した。その後両群はクッキーのタイプを切り替えて、さらに2週間(毎日4枚のクッキーを)消費した。眼、鼻及び喉の症状、頭痛、疲労及び吐き気について症状の尺度を用いて監視した。両方のタイプのクッキーがベースラインと比較して正の効果があった。TBWは最初に疲労症状を減少したが(p>0.05)、眼の症状を増加させた(p<0.05)。結局、ソバの消費は一般的に、本研究において解析した症状を減少させた。TBWクッキーの形態での1日当たり359.7mgルチン当量の毎日の消費は、健康な被験者の疲労を減少させ、症状のレベルの増加はなかった。」(107頁要約) (5)引用文献5の記載事項 当審拒絶理由において引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である引用文献5には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調するために合議体が付したものである。 ア「健康食品「韃靼ソバ生活」の血行改善作用」(表題) イ「【目的】健康食品の効果的な摂取を生活習慣とすることは、予防医学の観点からも意義の高いことである。しかし、健康食品の機能性評価を科学的に行う方法が、まだまだ確立されているとは言い難い。そこで、今回、我々は「韃靼ソバ」に含まれるルチンが末梢血流に及ぼす効果を検証した。【方法】1.「韃靼ソバ生活」を摂取していない16名の被験者を対象に、単回投与による即時型有効性確認試験を行った。2.22.5~24.4℃の室温環境下で、レーザードップラー(Advance Laser Flowmeter ALF21)を用いて指突部の血流を測定した。3.手掌を氷水(1.2~4.6℃)に1分間浸漬後、速やかに水分を除去し、直ちに血流を20分間連続計測した。4.測定終了後、被験薬を1包服用してもらった。5.投与1時間後に、上記と同様の手順で再度血流計測した。【結果】寒冷負荷試験での血流量を被験者毎に算出したところ、16名の被験者のうち9名に血流改善効果が見られた。具体的には、服用後に血流量が増えた或いは速やかに回復した者が1名、血流の戻りが早くなった者が4名、血管収縮しない者が1名、総血流量の亢進が認められた者が2名であった。また、血流が負荷試験前値に回復するまでの時間で解析すると、9名が該当し、服用前の血流に戻る時間(秒)は、有意に短縮された。さらに、試験非適応者を除く13名で服用前後での定常の血流量を100%として総血流量(%)の比較を行ったところ、服用後の方が総血流量の増加傾向が認められた。【結論】これらの結果より、韃靼ソバの血流改善に及ぼす効果が示唆された。その主成分がルチンであることは知られており、このルチンによる血流改善作用の可能性が示唆された。今後は、連続投与による有効性を検証する必要があると考えている。」(本文) (6)参考文献Aの記載事項 本願の出願日当時の技術常識を示す、本願出願日前に頒布された刊行物であるオフィス・オートメーション、1989年、Vol.10、No.3、P.65-71(以下「参考文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調するために合議体が付したものを含む。 ア「3.1 OA化と仕事 仕事の種類 回答者がOA機器を使用して行う仕事の中で,図1に示すようにワープロ機能を用いた仕事が多い. このうちで,「自分で文章も立案する」場合よりも,「原稿による文書入力」,すなわち浄書が約2倍多い。伝票入力,受発注処理,財務会計処理で使用する者の数は,プログラム作成,システム仕様入力等で使用する者の数のほぼ2倍であった.」(66頁右欄16行~67頁左欄2行) イ「3.4 VDT機器の使用について 現在使用されているワープロ,パソコン,オフコン,汎用コンピュータ等のOA機器にはVDT(テレビ画面)とキーボードが不可欠である. VDT機器と呼称されるこれらの機器の長時間使用はVDT症候群すなわち,目に関する障害(目の疲れ,目の痛み,視力低下,目がかすむ・ぼける等)や,頸肩腕障害(肩やくびのこり,肩やくびの痛み,腕のだるさ,腕の痛み・しびれ,手指の痛み,手指のしびれ・だるさ,背中の痛み・だるさ,腰の痛み・だるさ等),さらに,様々な全身症状(からだの疲れやすさ,頭痛,頭が重い感じ,睡眠不良,めまい・たちくらみ,胃腸の具合のわるさ他)を引き起こすことが知られている.」(68頁左欄31行~右欄6行) (7)参考文献Bの記載事項 本願の出願日当時の技術常識を示す、本願出願日前に頒布された刊行物である労働の科学、1987年、42巻、10号、4~7頁(以下「参考文献B」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア「1.OA化と婦人の頸肩腕障害 1950年代から始まった事務作業の機械化によって,伝票,原稿などを視認しつつ打鍵する作業が生まれ,これに従事する婦人労働者の間に職業性の健康障害,なかでも頸肩腕障害に罹患するものが現れた。1980年代には,事務部門は,パーソナルコンピューターの利用の拡大に通信利用を加えて一変し,オフィスオートメーション(OA化)が進行した。従来の視認作業にはCRT画面注視作業が加わり,また,入力作業には対話型の判断作業が加わり,入力の打鍵作業は卓上の偏平化されたキーボードに変わった。パソコンに使用される事務処理用のプログラムが開発され,日本語入力,計算,図表の作成や印刷が容易になり,事務作業の能率は急速に向上し,これに伴って作業量は増加した。こうした作業の変化に伴う作業負担は,従来の事務作業に比べて,視認・判断・姿勢・連続作業時間などの点で作業者の緊張を増大させた。」(4頁左欄1~19行) イ「事務部門ではOA化として,VDT作業の導入を生み,事務部門の労働形態に大きい影響を与えている。」(5頁左欄9~11行) ウ「 [図:0001405154000004.jpg] 」(6頁図-3) 第5 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 本願発明における「ケルセチン配糖体」は、本願明細書の【0019】に説明されるように、既存のケルセチン配糖体を酵素などで処理して糖転移させたものも含まれ、ルチン、グルコシルルチン等を含むものである。 一方、上記第4(1)オの記載によれば、引用文献2に記載された糖転移ビタミンPは、グルコース重合度が1乃至5の範囲に分布する一連の糖転移ビタミンPを含有するものであり、糖転移酵素を用いる方法により調製された市販品として、粉末糖転移ルチン(商品名「αGルチン」)等がある。そして、引用文献3には、ルチンに糖を転移させたα-グルコシル化ルチン混合物が商品名「αG-ルチンP」として市販されており、この「αGルチンP」(以下、「αGルチン」という)には、ケルセチン配糖体の構造を有するα-モノグリコシルルチンが含まれていることが記載されている(上記第4(3)ア)。 そうすると、引用発明における「糖転移ルチン」は、本願発明における「α-モノグルコシルルチンを有効成分として含有」する組成物であって、かつ「α-モノグルコシルルチンを含有するケルセチン配糖体」に相当する。 また、引用発明における「健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合」は、本願発明における「健常者」への投与に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「α-モノグルコシルルチンを有効成分として含有し、前記α-モノグルコシルルチンを含むケルセチン配糖体を、健常者に経口投与される、凝り改善用組成物」で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> α-モノグルコシルルチンを含むケルセチン配糖体の投与量について、本願発明では「1日当たり100~500mg」であることが特定されているのに対し、引用発明の投与量は、「約1mg乃至1g/回/成人」であり、1日当たりの投与量が特定されていない点。 <相違点2> 組成物の形態について、本願発明では「医薬組成物」であるのに対し、引用発明では「通常、食品の形態」である点。 <相違点3> 凝りの発生原因及び部位にいて、本願発明では「VDT作業による首の凝り」に特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。 (2)判断 ア 相違点についての検討 (ア)相違点1について 引用文献2には、引用文献2の臨床実験では、糖転移ビタミンPとして糖転移ヘスペリジンを10mg含有する錠剤を毎食後3錠ずつ、すなわち、1日当たり90mg摂取させたことが記載されている(上記第4(1)キ及びケ)。 また、引用文献2には、治療効果について、糖転移ルチンより、糖転移ヘスペリジンの方が勝っていることも記載されていることから(上記第4(1)エ)、引用発明において糖転移ルチンを使用する場合には、上記臨床実験の投与量より多く設定することは、当業者が当然に想起することである。 そして、引用文献4(上記第4(4))に記載されるように、1日当たり359.7mgのルチンを経口摂取することで、疲労回復や健康維持に効果があることも知られていた。 そうすると、引用発明において、これらの情報を参考にして、糖転移ルチンの1日当たりの投与量を本願発明で特定する100~500mg程度に設定することに、格別な創意を要したものとは認められない。 (イ)相違点2について 引用発明は、「健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合」は「通常、食品の形態」の組成物であるところ、引用文献2の臨床実験では、「慢性的な肩こり又は腰痛を訴える年齢28乃至51歳の男性被験者」に対し「錠剤」を投与している(上記第4(1)キ及びケ)。 そして、本願明細書には、本願発明の「医薬組成物」が経口投与される「健常者」の明確な定義がなされておらず、上記臨床実験の「慢性的な肩こり又は腰痛を訴える」被験者の全てが、本願発明における「健常者」に該当するか否かは明らかではないものの、上記第4(1)イの記載事項にもあるように、特定の疾患を有する対象でなくとも、OA機器を日常的に操作する場合には、「こり」が一旦発生すると、容易には解消できなくなることが多く、OA機器の操作以外に、運動、肉体作業、不良姿勢、精神的緊張などでも、慢性的な肩こりや腰痛が生じるものであるから、上記臨床実験の被験者に、特定の疾患を罹患していない「健常者」が含まれていた蓋然性は高いものといえる。 また、疾患の治療を目的とするものではない健康食品においても、「錠剤」といった医薬組成物と同様の形態で薬効成分を経口摂取することも、一般的に行われているものである。 そうすると、引用発明において、健康の維持・増進や疾病の予防を目的とする場合であっても、凝り改善用組成物を食品ではなく、医薬組成物の形態で提供することは、当業者が容易に想到し得たものである。 (ウ)相違点3について 上記第4(1)イに記載されるように、引用発明において改善しようとする「凝り」には、長時間にわたるOA機器の操作によって発生する、腕、肩、背中、腰などの特定の部位の「凝り」が含まれるものである。 ここで、上記第4(6)及び(7)にあるように、「OA機器」には、ワープロやパソコンといったVDT(テレビ画面)及びキーボードを備えたVDT機器が含まれること、そして、OA機器操作の多くは文書の作成や入力といったVDT機器を使用した作業であり、長時間のVDT作業によって、肩等の凝りや痛みと同様に、首にも凝りや痛みを引き起こすことは、本願出願日当時の技術常識であった。 そうすると、引用発明に凝りの発生原因として記載された「OA機器の操作」は、実質的に「VDT作業」を意味するものであるし、凝りの発生部位には、引用文献2に明記されていなくても、当然「首」も含まれているものといえる。 また、仮に引用発明において、「VDT作業による首の凝り」を改善することは全く意図されていなかったとしても、上記本願出願日当時の技術常識から、長時間にわたるOA機器の操作で発生する凝りとして、「VDT作業による首の凝り」に対して使用してみることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 イ 本願発明の効果についての検討 (ア)本願明細書の実施例では、α-モノグルコシルルチン187.5mgを含有するαGルチンPS(東洋精糖社製)250mgを含むケルセチン配糖体ハードカプセルを2粒摂取し、VDT作業負荷による凝り(「首」の凝り等)に対する改善効果を確認している。 (イ)しかしながら、α-モノグルコシルルチンを含めた糖転移ビタミンPが、血流改善効果を有することは引用文献2(上記第4(2)ア)に記載されるうえ、α-モノグルコシルルチンを経口摂取した場合に腸内細菌によって生成され、体内に吸収されるルチンについても、健常者の疲労回復や血流改善の効果を有すること、さらには単回投与及び短時間で効果を発揮することも公知であることから(上記第4(3)イ~エ、(4)及び(5))、本願発明の実施例で確認された効果は、引用文献2~5、及び本願出願日当時の技術常識(参考文献A及びB)から予測し得るものに過ぎない。 (ウ)仮に、上記実施例において確認された効果が、引用文献2~5及び本願出願日当時の技術常識(参考文献A及びB)から予測し得ないものであったとしても、本願発明で特定する投与量は、上記実施例で実際に効果を確認したケルセチン配糖体の投与量(500mg/1日)よりも少ない範囲を包含している。 また、引用文献3の記載(上記第4(3)イ~エ)に基づけば、本願の実施例で使用された組成物には、α-モノグルコシルルチン以外の成分、特にαグルコシルルチンよりも吸収が早いことが知られる、ルチンやクエルセチン(ケルセチンと同義)等も含まれていたと考えるのが相当であるところ、本願発明の組成物は、実施例で実際に使用されたケルセチン配糖体ハードカプセルとは組成の異なる様々な組成物を包含している。 そうすると、本願発明の全範囲にわたって、上記実施例と同等の効果が奏されるものと推認することはできない。 ウ 意見書における主張について 審判請求人は令和5年8月25日提出の意見書において、「引用文献2に記載のない『VDT作業による首の凝り』を改善するために、引用文献2に記載の筋硬直の緩和に効果を示す糖転移ルチンを、疾患の機序が全く異なるVDT作業による首の凝りに対して使用する動機付けは当業者には存在しない」と主張しているが、上記ア(ウ)で検討したとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。 (3)小括 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2~5の記載事項並びに本願出願日当時の技術常識(参考文献A及びB)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2~5の記載事項並びに本願出願日当時の技術常識(参考文献A及びB)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-016708

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