特許拒絶査定不服審判
2021-016582
結晶形機能性甘味料
- 審判番号
- 2021-016582
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-569276外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2023年09月12日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サムヤン コーポレイション
- 【請求人代理人】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (C07H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-569276「結晶形機能性甘味料」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月 3日国際公開、WO2019/004555、令和 2年 8月 6日国内公表、特表2020-523377〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、2018年2月12日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2017年6月30日 韓国(KR)、2017年12月29日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和2年10月6日付けで拒絶理由が通知され、令和3年4月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月13日(受付日)に手続補足書が出され、同年7月26日付けで拒絶査定され、同年12月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和5年4月21日付けで当審合議体から拒絶理由が通知され、同年7月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月18日(受付日)の手続補足書が提出されたものである。
なお、本件については、令和3年5月7日受付の刊行物等提出書が提出されている。
第2 本願発明について
1 本願発明の認定
この出願の請求項1~14に係る発明は、令和5年7月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°に相対的強度が最も高い5つのうち4つのピークを有するX線分光スペクトルを有し、
125.8℃±5℃の溶融温度(Tm)を有するものである、D-アルロース結晶。」(以下「本願発明」という。)
第3 当審合議体から通知した拒絶の理由
当審合議体から通知した拒絶の理由は、令和5年4月21日付け拒絶理由通知書において通知された以下のものを含むと認める。
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・
記
1 引用文献1:韓国登録特許第10-1617379号公報
・・・
理由1について
請求項 1~12
・・・」
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、本願発明は、引用文献2に記載されるような本願の優先日時点の技術常識、及び引用文献3に示されるような科学的事実を参照すれば、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法同条第1項の規定により特許を受けることができないと判断する。
理由は、以下のとおりである。
1 引用文献及びその記載事項
(1)引用文献1:韓国登録特許第10-1617379号公報(当審合議体の拒絶理由の理由における引用文献1)
当審合議体の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献1」には、当審合議体による和訳として、次の記載がある。
(1a)「 [0064]1-3:プシコース粉末の製造
[0065]製造例1-2で得られたプシコースシロップを有色およびイオン成分などの不純物を除去するために陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂および陽イオンと陰イオン交換樹脂が混合された樹脂で充填された常温のカラムに時間当りイオン交換樹脂2倍(1ないし2倍)体積の速度で通液させて脱塩させた後、カルシウム(Ca2+)タイプのイオン交換樹脂で充填されたクロマトグラフィーを用いて高純度プシコース溶液を分離収得した。前記高純度プシコースシロップを82Bx(%、w/w)(80ないし83Bx)濃度で濃縮させ、過飽和状態になる温度35℃(35ないし40℃)で徐々に温度10℃(10ないし15℃)まで冷却させて結晶を生成させた。この時、プシコース種晶を添加せず、前記結晶化段階で得られたプシコース結晶は遠心脱水によって母液を除去して結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
[0066]前記得られたプシコース結晶粉末の平均粒度は237μmであり、粒径範囲は74ないし428μmで分布しており、結晶構造は斜方晶系の長い直六面体の模様を有する。直六面体結晶の横X縦の直径比率は、平均1X4であり、1X1.5ないし6.9の直径範囲を有する。本発明によるプシコース結晶の走査電子顕微鏡(SEM)写真と、プシコース結晶の実体顕微鏡写真(X400倍拡大)を図1及び図2に示し、結晶からX線回折パターンを分析して主な回折角(θ)は、15.35°、18.83°、30.95°、47.15°であることを確認し、これを図3に示した。」
(1b)「図3
[図:0001407011000001.jpg]
」
(1c)「図1
[図:0001407011000002.jpg]
」
(1d)「図2
[図:0001407011000003.jpg]
」
(2)引用文献2:機器分析のてびき(3)増補改訂版、(株)化学同人、第3刷1987年11月10日、p.77~79(技術常識を示すための文献)
(2a)「6.8 結果の解析
・・・ピークの先端の位置から2θを求め,式(1)によりn=1としてdを算出するか,2θ-d表*からdを求める.・・・次に,各回折線の強度としてピークの高さを測る.最も強度大の回折線の高さ(I1)を100として,各回折線の高さ(I)の相対値(I/I1)を算出する.
6.8.1 物質の同定
未知物質(A)について得られたdとI/I0を既知物質(B)のそれらと比較し,両者が一致すればA=Bであるといえる.
ASTMカードの利用法
既知物質のデータ集としてはJCPDS Powder Diffraction File(PDF;通称ASTMカード)**が最もよい.・・・
・・・
このカードを利用するには,まず未知試料の回折線のうち強度が最も強い3本を選ぶ.次に,カードの索引,Index to the Powder Diffraction Fileで“候補者”を見つけ出す.このInexは最も強い回折線のdの順に並べてあるから,簡単に“マト”がしぼれる.
未知試料の回折強度の二番目,三番目のもののdと強度の順がIndexのそれと一致するかどうか調べ,一致するもののASTMカードをすべて抜き出し,今度はカードのデータをもとに,他の回折線についてもdと回折強度を比較する.
未知試料のd-I/I1とASTMのデータとが一致すれば,ASTMカードに記載されている化合物が未知試料の化合物である.
回折線の相対強度I/I1は試料のつめ方,粒度,粉砕の程度,試料の結晶の生長の特異性などに影響されるので,二番目以下の強度の回折線の順番が逆転する場合がある.したがって,完全に一致したカードを見い出せないかもしれないが,固溶体以外,すなわち純物質またはこれの混合物のdの値は変化しないから,dの値とだいたいの回折強度の関係をたよりに同定する.
同定の場合,存在元素がほぼ判明している場合が多いので,大きな誤りを犯すことは希である.」(6 粉末X線回折法の章の6.8 結果の解析の項目)
(3)引用文献3:新・講座 いまさら聞けない分析機器Part 2○1(審決注:原文は丸数字)菅原 義之、粉末X線回折法の基礎とその解析法、化学と教育、2022年、70巻3号、p.134~137(本願優先日後刊行されたものであるが、科学的事実であり不変の基礎的技術的事項であるため引用した。)
(3a)「6 粉末X線回折法
・・・
粉末の配向がランダムであれば,回折条件を満たした一部の粒子で回折が起こる。ディフラクトメーターでは回折されるX線の一部が検出される(図7)。このため,測定する粉末を十分粉砕し,細かい粒子がランダムに配向する状態を達成することが試料調製で必要になる。なお,板状粒子などでは試料ホルダへの充填時にある特定の方向に配向する可能性があり,その場合は特定の格子面による回折線の相対強度が高くなる。また過度の粉砕により結晶性が低下する可能性があるので注意を要する。
得られる個々のX線回折ピークは,異なるd値を有する。・・・」(6 粉末X線回折法の項目)
2 引用文献記載の発明
(1)引用文献1記載の発明
ア 摘記(1a)及び摘記(1b)から、図3のプシコース結晶として以下の発明が記載されているといえる。
「15.35°、18.83°、30.95°、47.15°を含むピークを有する図3のX線回折パターンを示すプシコース結晶」(以下「引用発明1」という。)
3 本願発明と引用発明1との対比・判断
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「プシコース」は引用文献1の[0004]及び[0005]の記載から「D-プシコース」のことであり、技術常識から本願発明の「D-アルロース」」に相当する。
また、引用発明1の図3には、15.35°、18.83°、30.95°、47.15°以外に、31.87±0.2°に回折ピークを有することが図3から読みとれるので、引用発明1の「15.35°、18.83°、30.95°、47.15°を含むピークを有する図3のX線回折パターンを示す」ことは、本願発明の「X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°に相対的強度が最も高い5つのうち4つのピークを有する」ことと、
少なくとも「X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°でピークを有するX線分光スペクトルを有」する点で共通する。
イ したがって、本願発明は、引用発明1と、
「X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°でピークを有するX線分光スペクトルを有する、D-アルロース結晶。」という点で一致し、以下の点で一応相違する。
相違点1:本願発明は、「X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°に相対的強度が最も高い5つのうち4つのピークを有する」と特定されているのに対して、引用発明1においては、X線回折分析において15.24、18.78、30.84、および31.87の回折角(2θ)±0.2°でピークを有するものの、相対的強度が最も高い5つのうち4つのピークを有するとの特定のない点
相違点2:本願発明は、125.8℃±5℃の溶融温度(Tm)を有するものであるのに対して、引用発明1においては、そのような特定のない点。
(2) 相違点の判断
ア 相違点1についての判断
引用発明1の図3から、15.35°、18.83°、30.95°、31.87°、47.15°±0.2°に回折ピークを有することが読みとれ、相対強度は、それぞれ、1番目、3番目、2番目、9番目、4番目に相当しているといえる(摘記(1b))。
回折線の相対強度は試料のつめ方、粒度、粉砕の程度、試料の結晶の生長の特異性などに影響されるので、二番目以下の強度の回折線の順番が逆転する場合があるので、完全に一致しなくても、2θから求まるdの値は変化しないから,2θ(又はd)の値とだいたいの回折強度の関係をたよりに同定するという技術常識を考慮すれば(引用文献2摘記(2a))、X線回折分析におけるX線分光スペクトルの回折ピークが一致しており、結晶構造を特定するための回折ピークの全てが一致している以上、31.87°の回折ピークと他のピークとの相対強度の関係、つまり一部の相対強度の順序が一致していないからといって、最強強度を含めて多くの相対強度の順序が全体として一致していることに鑑みれば、本願発明の結晶と引用発明1の結晶は同一であると理解するのが相当である(引用文献3の科学的事実との整合性からみても矛盾はない。)。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
イ 相違点2についての判断
本願発明のD-アルロース結晶と引用発明1のプシコース結晶は、X線回折分析におけるX線分光スペクトルの回折ピークが、相違点1で検討したとおり、実質的に一致しており、結晶構造を特定するための回折ピークの全てが一致している以上、本願発明1の結晶と引用発明1の結晶とを区別することができないので、同一の結晶であれば溶融温度は一定のものに定まることは技術常識であることを考慮すると、結晶としてはその溶融温度(Tm)も実質的に一致していると合理的に解される。
また、本願明細書の図1~3や引用文献1の図1及び2を参照しても(摘記(1c)(1d))、結晶の粒子形態は酷似乃至類似しており、結晶のレベルで本願発明と引用発明1とが異なるもの(多形体)であるとは理解できない。
してみると、相違点2が実質的な相違点であるとは認められない。
4 審判請求人の主張の検討
審判請求人は、令和5年7月14日に提出された意見書2頁7行~3頁14行において、異なる晶癖を示す結晶間で結晶の形状やサイズが異なって各回折ピークの強度が変化することについて示すために参考資料1を提出し、本願発明の結晶の粉末X線回折パターンを示すための参考資料2を提出した上で、XRDピークの位置が同一であっても、各ピークの相対強度が異なれば結晶は異なるといえるので、引用文献1の結晶は、相対強度が高い4つのXRDピークの中に31.87±0.2°のピークが含まれないことから、本願発明の結晶と異なるものである旨主張している。
しかしながら、上記3で述べたとおり、結晶の同定に関する技術常識を考慮すれば(引用文献2摘記(2a))、X線回折分析におけるX線分光スペクトルの回折ピークが一致しており、結晶構造を特定するための回折ピークの全てが一致している以上、相対強度が高い4つのXRDピークの中に31.87±0.2°のピークが含まれないからといって、最強強度を含めて多くの相対強度の順序が全体として一致しているのであるから、本願発明の結晶と引用発明1の結晶は同一であると理解すべきである。
審判請求人は、参考資料1を提出して、異なる晶癖示す結晶間で結晶の形状やサイズが異なって各回折ピークの強度が変化する旨主張しているが、まさに、技術常識で示した各回折ピークの強度が変化する一要因である試料の結晶の生長の特異性(晶癖)に関して述べているにすぎず、結晶の形状やサイズを特定しているわけでもない結晶格子構造を特定する結晶の発明である本願発明が、引用発明1の発明と結晶として異なることを説明していることにならない。
さらに、本願明細書【0057】~【0059】においては、X線回折分析法(XRD)分析として、表4の実施例1~3の結晶を同一の結晶格子構造であると確認したこと、外形的な結晶の形態がやや相異して結晶格子の配向性の差があり得、強度値の差が生じていると類推しており、上記実施例1~3に具体例を含めて結晶格子構造を特定した本願発明の結晶が引用発明1の結晶と異なるとの審判請求人の主張は、本願明細書の記載と整合しない主張である。
また、審判請求人は、参考資料3を提出して従来の公知のアルロース結晶の溶融温度(Tm)は109℃である点で本願発明の溶融温度(Tm)125.8℃±5℃と異なる旨主張しているが、化合物の同定としての融点が記載されているだけで、本願発明を対象とした純粋な結晶としての溶融温度(Tm)が測定された場合、特定の結晶構造の結晶であれば溶融温度は一定であると理解できるので、上記審判請求人の主張は結晶に関する主張として採用できない。
したがって、上記審判請求人の主張はいずれも採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、本願優先日時点の技術常識を考慮すると、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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