2021-016112
ロボットシステム及びその運転方法
- 審判番号
- 2021-016112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-099562外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月25日
- 審決日
- 2023年05月11日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】川崎重工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和1年5月28日(優先権主張 平成31年3月22日)の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
補正却下の決定、拒絶査定
書による補正を「本件補正」という。)の 提出
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】作業エリア内に設置されているロボットと、操作者が把持して、前記ロボットを操作するように構成されている操作器と、操作エリアに配置され、前記操作器の位置情報及び姿勢情報を無線で検出するセンサと、記憶器を有する制御装置と、を備え、前記制御装置は、一のワークに対して、実際に作業を前記ロボットに実行させるときに、前記センサが検出した前記操作器の位置情報及び姿勢情報を基に、前記操作器の軌跡を算出し、算出した軌跡を追従するように、リアルタイムで前記ロボットを動作させ、算出した軌跡に基づいて、前記一のワークに対して、実際に前記ロボットに実行させた作業である、前記操作器の軌跡情報を第1情報として、前記記憶器に記憶させるように構成され、前記制御装置は、前記記憶器に前記第1情報を記憶させた後に、前記第1情報を基に、他のワークに対して実際に前記ロボットに作業を実行させるように構成され、前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である、ロボットシステム。」
第3 拒絶の理由
本願発明に対して、令和4年11月28日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。
本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献の記載、及び引用発明
1 引用文献1の記載事項、及び引用発明
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(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0011】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、ロボット操作に熟練していない操作者でも安全にかつ容易に、実際のロボットの動きを見ながらロボットエフェクタが適切に3次元的な動きをするように作業教示できるようなロボット3次元位置姿勢教示システムを提供することを課題とする。」
「【0018】本発明のロボット3次元位置姿勢教示システムによれば、相対座標原点を有する相対位置姿勢計測装置が操作グリップに組み込まれた6自由度位置姿勢センサから操作グリップの位置姿勢信号を入力して相対座標原点を基準とする操作グリップの3次元相対位置姿勢を算出し、制御装置が操作グリップの3次元相対位置姿勢に基づいてロボット手首の3次元絶対位置姿勢を算出しロボット手首がその3次元位置姿勢を取るように制御するようになっている。」
「【0021】このようにして、操作者はロボットから離れた位置でロボットの手先の代わりに操作グリップを掴んで動かすことにより、あたかもロボットの手先を掴んで自分に見える通りに動かすかのようにロボットを操作することができる。さらに、操作者は自分の見るままの方向として移動方向あるいは動作速度をロボットに指示することができる。」
「【0027】ロボット3次元位置姿勢教示システムを塗装ロボットに用いる場合は、操作グリップは自由に動かせるにもかかわらずロボット手首はロボットの腕を順次動かすことにより始めて所定の位置まで移動するため、動きに遅延が生じる。また、塗装ガンを持った手首が所定の位置姿勢をとって塗装ガンの開閉を指示しても塗料が実際に噴出してくるまでに一定の遅延がある。従って、ロボットの動きを観察してはいても実際には塗料を噴霧しない操作グリップを操作して塗装ガンの開閉を指示したデータは、そのまま加工しないで使用すると、実際に塗料噴霧をするときには目標とする位置から外れてしまうことになる。そこで、操作グリップに塗装ガンの開閉を指示する開閉スイッチを備え、制御装置がロボットの動作の遅れを評価してロボット手首の3次元絶対位置姿勢と塗装ガンの開閉タイミングを算出し記録するようにして、塗料が適切な位置で噴出して所望の塗装をするように作業教示できるようにしてある。」
「【0031】【実施例】図1は本発明のロボット3次元位置姿勢教示システムの一実施例を示すブロック図である。本実施例のロボット3次元位置姿勢教示システムは、ロボット1とロボット制御装置2と相対位置姿勢計測装置3と操作グリップ4とを備えている。【0032】ロボット1はアームの先端の手首11に適当なエンドエフェクタ12を取り付けて作業を行う。ロボット制御装置2はロボットの手首11の位置姿勢を制御することによりエンドエフェクタ12の位置姿勢を制御して決められた作業を実施させる。相対位置姿勢計測装置3は操作者5の腰に装着して操作者5と共に移動するようになっている。エンドエフェクタの作用点を代表する操作グリップ4の先端には6自由度位置姿勢センサ41が組み込まれている。6自由度位置姿勢センサ41は相対位置姿勢計測装置3内に設定された座標原点に対する操作グリップ4の相対位置姿勢を検出する。【0033】本実施例では6自由度位置姿勢センサ41として、マクダネル・ダグラス社の3SPACEディジタイザー(商品名)を用いた。図2は6自由度位置姿勢センサ41の機能を説明する図面である。6自由度位置姿勢センサ41は互いに直交する方向に巻いた3個の検出コイルからなり、相対位置姿勢計測装置3に収納された磁場発生装置31から発生する磁場の変化に応じてそれぞれの検出コイルに誘導される電流を独立に検出できるようになっている。」
「【0035】すなわち、磁場発生装置31を基準とする6自由度位置姿勢センサ41の絶対的な位置および姿勢、すなわち磁場発生装置31を座標原点Oとして操作グリップ4の位置と姿勢P(x、y、z;θ、φ、ψ)が求められることになる。6自由度位置姿勢センサ41が十分に機能するためには磁場発生装置31との間の距離に制約があるが、上記のようには磁場発生装置31を収納する相対位置姿勢計測装置3を操作者5の腰に付けて操作すれば操作グリップは手の届く範囲内に留まるので測定範囲を逸脱する心配はない。従って、操作者5は座標原点の位置に囚われることなく自由に動き回って最適な観測位置を選ぶことができる。【0036】操作グリップ4にはロボット作業教示を行うときに必要となる動作スイッチ42や教示スイッチ43、スケール変更スイッチ44、モード切替スイッチ45、音声取り込みスイッチ46、開閉スイッチ47など各種スイッチが設けられている。操作グリップ4の根本に設けられた引き金型のスイッチは動作スイッチ42で、ロボット1はこの動作スイッチ42を押している間のみ動作する。操作者5が動作スイッチ42を押した瞬間に操作グリップ4の位置姿勢がその瞬間におけるロボット手首11の位置姿勢に対応する初期値として制御装置2に記憶される。」
「【0038】制御装置2は上記演算を実行するためにロボットの基準座標系と操作グリップの計測座標系の変換行列を取得しなければならない。変換行列は座標原点である相対位置姿勢計測装置3の位置により異なるため、制御装置2は常時、操作者5とロボット1の位置関係を計測あるいは決定する必要がある。このため、周囲の適当な場所にCCDカメラ21を配置し、操作者5の位置をトラッキングすることにより相対位置姿勢計測装置3の位置を検出する。基準となるロボット1の位置は不動なので予め計測して記憶しておく。」
「【0040】こうして相対位置姿勢計測装置3を介して求められた操作グリップ4の位置姿勢データは制御装置2においてロボットの基準座標系における位置姿勢に変換されて、ロボット手首の位置姿勢として実現される。本実施例によれば、操作グリップ4の相対的な移動変位をロボット1の移動変位として用いるので、操作者5は常に自分の動かし易い範囲でロボット1を操作することができる。また、操作者5は動作スイッチ42を押している間自分の手でロボットの手先11を掴んで動かしているようにロボット1を動かすことができる。動作スイッチ42を切って操作を中断し、操作グリップを持ったまま改めて観測しやすい位置に移ってから操作を継続するようなやり方が可能である。【0041】教示スイッチ43は、ロボットの手先11が通過する点や軌道を指示するためのスイッチである。操作者5は操作グリップ4を操作してロボット手首11を誘導し目標の位置にあることを確認したら教示スイッチ43を押す。するとこの教示点を制御装置2内の記憶部に記録することができる。ロボット手首11はこうした教示点を連結した軌道を移動するようになる。また、教示スイッチ43を押したままロボットを操作すると手首11が辿る動作軌道がそのまま制御装置2に記憶される。こうしてロボット1の繰り返し動作の教示点あるいは軌道の記録ができる。」
「【0046】なお、操作グリップ4によりロボット手首11の移動方向のみを指示し移動速度は別途指令するモードを選択できるように構成してもよい。これにより操作者5は操作グリップ4により動作方向を指示するだけでロボット1を動作させることができる。また、操作グリップ4の相対移動の速度に基づいてロボット手首11の移動速度を指令するように構成してもよい。これにより操作者5は操作グリップ4によりロボット1の動作方向と移動速度の両方を教示することができる。【0047】操作グリップ4の形状は、ロボット1の用途に合わせて選択することができる。例えば塗装ロボットに適用する場合には、図2にあるような塗装ガンと同じ様な形状にすると、操作者5は自分で作業する感覚でロボット作業を教示することができ、馴染みやすいばかりでなく、ロボット手首11の動きによりエンドエフェクタ12が実際にどのように動くのかを確認しながら作業教示できるという利点がある。また、塗装ガン自体に位置姿勢センサ41を仕込んで操作グリップ4にしてもよい。なお、塗装ロボットに適用するときは、適当なタイミングで塗装ガンの作動を指示するために、操作グリップ4に開閉スイッチ47を備える必要がある。」
「【0049】以下に、上記実施例のロボット3次元位置姿勢教示システムを塗装ロボットに適用した例によって使用方法を説明する。図5は教示の手順を示すフローダイヤグラムである。まず、教示したい動作の開始位置にロボット1を誘導する(S1)。次に、教示スイッチ42を押すと(S2)、制御装置2は教示スイッチ42が押された時点の操作グリップ4の位置姿勢とロボット手先11の位置姿勢を対応付けて記憶する(S3)。操作者5はさらに教示スイッチ42を押したままロボット1を操縦し教示動作を行う(S4)。教示スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動きをロボット手先11の実際の動きに換算してロボット1の各アームを動かしてロボット手先11を指示通りに動かすとともに、その動作軌道を記憶する(S5)。【0050】操作者5はロボット手先11が塗料噴霧を開始すべき所に来たところで開閉スイッチ47を操作して塗装ガンが作動するように教示する(S6)。しかし、ロボット1の操作には動作遅れが存在するので、開閉スイッチ57の操作タイミングをそのまま記憶して再現すると、目的の場所以外に塗料を吹き付けることになるので、予め算定された動作遅れ分を算入して制御装置2に記録させる(S7)。操作者5がロボット1の動きを全て規定したところで教示スイッチ42を離すと(S8)、制御装置2がこうして記憶した教示軌道に基づいてロボットの作業プログラムを作成する(S9)。動作遅れ分を考慮することによって操作者の感覚に忠実な塗装タイミングが再現されるようになる。」
「【0052】【発明の効果】本発明のロボット3次元位置姿勢教示システムは、操作者がロボット手首の動きを観察しながら、操作グリップをロボット手首とみなして好ましい姿勢で動かしたい方向に動かしたい量だけ動かすことにより、極めて直感的にロボット作業教示を行うことができるようになる。ロボットと操作グリップの位置関係は任意に選択できるから、操作者は自分の身を安全で手首の動きを観察できる場所に置いて操縦することができ、教示中の操作者の安全性も向上する。本発明のロボット3次元位置姿勢教示システムは、塗装ロボットやハンドリングロボットの作業教示、原子炉や海底などの危険環境下で作業するロボットの遠隔操縦などに適用できる。」
「【図1】[図:0001399867000001.jpg]」
(2)引用文献1に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から、以下の技術的事項が理解できる。
ア 段落【0031】、【0035】、【0038】の記載、及び図1から、ロボット3次元位置姿勢教示システムは、ロボット1と、操作グリップ4と、6自由度位置姿勢センサ41、及びCCDカメラ21と、ロボット制御装置2と、を備えることが理解できる。
イ 図1から、ロボット1は、作業エリア内に設置されていることが看取される。
ウ 段落【0021】の記載から、操作グリップ4は、操作者5が掴んで、ロボット1を操作するものであることが理解できる。
エ 段落【0052】の記載、及び図1から、操作者5は、自分の身を、安全でロボット手首11の動きを観察できる場所に置いていることが理解できる。そして、6自由度位置姿勢センサ41は、操作グリップ4に組み込まれ(段落【0032】)、また、CCDカメラ21は、操作者5の位置をトラッキングできる場所に配置されている(段落【0038】)から、6自由度位置姿勢センサ41、及びCCDカメラ21も、安全でロボット手首11の動きを観察できる場所に配置されていると理解するのが自然である。
また、段落【0032】~【0033】、【0035】の記載から、6自由度位置姿勢センサ41は、相対位置姿勢計測装置3(磁場発生装置31)を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢を磁場の変化で検出することが理解できる。
さらに、段落【0038】の記載から、CCDカメラ21は、相対位置姿勢計測装置3の位置を検出することが理解できるところ、技術常識から、CCDカメラ21が、光(画像)を検出するものであることは明らかである。
オ 段落【0041】の記載から、ロボット制御装置2は、記憶部を有することが理解できる。
カ 段落【0027】、【0047】、【0049】~【0050】の記載から、ロボット3次元位置姿勢教示システムは、ロボット1の教示の際、エンドエフェクタ12である塗装ガンをリアルタイムに移動させているものの、塗装噴霧までは行っていないことが理解できる。
また、段落【0018】、【0035】~【0036】、【0040】、【0049】の記載から、相対位置姿勢計測装置3は、6自由度位置姿勢センサ41が検出した相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢に基づいて、動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き(操作グリップ4の位置姿勢データ)を算出するものであることが理解できる。
さらに、段落【0018】、【0036】、【0040】、【0049】の記載から、ロボット制御装置2は、動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き(操作グリップ4の位置姿勢データ)を、CCDカメラ21が検出した相対位置姿勢計測装置3の位置に基づいて、ロボット1の基準座標系に変換し、ロボット1であるロボット手首11の実際の動きとして、ロボット1(ロボット手首11)を指示通りに動かしていると理解できる。
さらに、段落【0018】、【0041】、【0049】の記載から、算出された動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動きに基づいて、ロボット1(ロボット手首11)を指示通りに動かした際の、ロボット手首11の実際の動きの動作軌道を記憶部に記憶させることが理解できる。
したがって、ロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3は、ロボット1を指示通りに動かすときに、6自由度位置姿勢センサ41が検出した相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢に基づいて、動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動きを算出し、算出された操作グリップ4の動きを、CCDカメラ21が検出した相対位置姿勢計測装置3の位置に基づいて、ロボット1の基準座標系に変換し、ロボット1であるロボット手首11の実際の動きとして、ロボット1(ロボット手首11)を指示通りに動かし、
算出された動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動きに基づいて、ロボット1(ロボット手首11)を指示通りに動かしたときの動作軌道を、記憶部に記憶することが理解できる。
キ 段落【0041】、【0050】の記載、及び上記カから、ロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3は、記憶部に記憶した動作軌道を基に、ロボット1が目的の場所に塗料を吹き付けるように構成されていることが理解できるところ、ロボット1を指示通りに動かしたとき、すなわち動作軌道を記憶する教示のときと、目的の場所に塗料を吹き付けるときのロボット1の動作方向が同じと理解することが自然である。
(3)引用発明
上記(1)~(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「作業エリア内に設置されているロボット1と、操作者5が掴んで、ロボット1を操作する操作グリップ4と、安全でロボット手首11の動きを観察できる場所に配置され、相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢を磁場の変化で検出する6自由度位置姿勢センサ41、並びに相対位置姿勢計測装置3の位置を光で検出するCCDカメラ21と、記憶部を有するロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3と、を備え、ロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3は、ロボット1を指示通りに動かすときに、6自由度位置姿勢センサ41が検出した相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢に基づいて、動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動きを算出し、算出された操作グリップ4の動きを、CCDカメラ21が検出した相対位置姿勢計測装置3の位置に基づいて、ロボット1の基準座標系に変換し、ロボット1であるロボット手首11の実際の動きとして、ロボット1を指示通りに動かし、算出された操作グリップ4の動きに基づいて、ロボット1を指示通りに動かしたときの動作軌道を、記憶部に記憶し、ロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3は、記憶部に記憶した動作軌道を基に、ロボット1が目的の場所に塗料を吹き付けるように構成され、ロボット1を指示通りに動かしたときと、目的の場所に塗料を吹き付けるときのロボット1の動作方向が同じである、ロボット3次元位置姿勢教示システム。」
2 引用文献2の記載事項、及び引用文献2記載の技術的事項
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(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「[0010] 本発明は、これらの問題点を解決するために、教示内容にリアルタイムに追随するロボットの動作を観察しつつ、直感的かつ人体に負担がかからない方法でロボットの移動を教示する多関節構造体教示装置を提供することを目的とする。また、操作者の示した行為に基づく原データを修正又は編集して、より適切な教示を行うことを目的とする。」
「[0046] 多関節構造体の移動による教示情報を保存蓄積することにより、繰り返して同じ教示情報によりロボットの1又は複数の部分を移動させたり、複数の教示情報を組み合わせてより適切な一連の教示情報を構築することが可能となる。」
「[0065] 図9は塗装ロボットの教示である。ロボットの背後から操作を行っている。多関節構造体アタッチメント4は電子グローブ21に塗装ガンタイプアタッチメント27を結合したものである。固定、変動選択については、ハイブリッドモードを選択し、両者の利点を組合せて活用する。[0066] 準備段階については、ハイブリッドモード選択以外は図7,図8と同様である。教示を開始した時点では変動型モードになっている。操作開始時点ですぐメモリを押さず、塗装対象の開始位置までロボットを追随移動させた時点ではじめてメモリ1を押す。次にモードを固定モードに切り替える。ジョイスティック10あるいはアナログ量検知スイッチを使用して塗装の塗布量を制御しながら多関節構造体3を移動、変形させてロボットアーム16を追随移動させ、塗装ガン28により塗装を行わせる。塗装完了後は塗装対象の開始位置に移動又は原点復帰する。[0067] なお、一品一様で塗装する場合には都度多関節構造体装置によりロボットを教示して塗装を実行させる。人間が直接行うと芸術品等商品によっては塗装用のエアガンの使用によって危険なガスが発生する場合があるからである。このような場合は本発明による多関節構造体装置を利用することが好ましい。なお、安全面を考慮して本実施例では操作者はロボットから離れた背後から遠隔操作を行っている。」
「[0076]・・・18 対象物・・・」
「[図9][図:0001399867000002.jpg]」
(2)引用文献2記載の技術的事項
上記(1)の記載事項から、以下の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が理解できる。
「商品である対象物18に対してロボットに塗装を行わせたときの多関節構造体3及び塗装ガンタイプアタッチメント27の移動による教示情報を蓄積保存し、この教示情報を繰り返して、ロボット1により塗装を行わせること。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「ロボット1」が、本願発明の「ロボット」に相当することは明らかであり、同様に、「操作グリップ4」が「操作器」に、「6自由度位置姿勢センサ41」並びに「CCDカメラ21」が「センサ」に、「ロボット制御装置2、並びに相対位置姿勢計測装置3」が「制御装置」に、「ロボット3次元位置姿勢教示システム」が「ロボットシステム」に相当する。
(2)引用発明の「操作者5」が、本願発明の「操作者」に相当することは明らかであり、同様に、「操作者5が掴」むことは「操作者が把持」することに相当する。
したがって、引用発明の「操作者5が掴んで、ロボット1を操作する操作グリップ4」は、本願発明の「操作者が把持して、前記ロボットを操作するように構成されている操作器」に相当する。
(3)引用発明の「安全でロボット手首11の動きを観察できる場所」は、操作者5が操作グリップ4によりロボット1を操作する際に位置する場所であるから、本願発明の「操作エリア」に相当する。
また、引用発明の「相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢」並びに「相対位置姿勢計測装置3の位置」は、操作グリップ4の位置姿勢に関連する情報であるから、本願発明の「前記操作器の位置情報及び姿勢情報」に相当し、同様に、「磁場の変化」及び「光」は「無線」に相当する。
したがって、引用発明の「安全でロボット手首11の動きを観察できる場所に配置され、相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢を磁場の変化で検出する6自由度位置姿勢センサ41、並びに相対位置姿勢計測装置3の位置を光で検出するCCDカメラ21」は、「操作エリアに配置され、前記操作器の位置情報及び姿勢情報を無線で検出するセンサ」に相当する。
(4)引用発明の「記憶部」が、本願発明の「記憶器」に相当することは明らかである。
(5)引用発明の「ロボット1を指示通り動」かすことと、本願発明の「一のワークに対して、」「実際に」「作業を」「前記ロボットに実行」させることとは、「作業」には通常「移動」を伴うことから、「実際に」「移動を」「前記ロボットに実行」させるという点に限り一致する。
また、引用発明の「動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き」は、「6自由度位置姿勢センサ41が検出した相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢」に基づいて算出されるところ、引用発明の「6自由度位置姿勢センサ41が検出した相対位置姿勢計測装置3を基準とする操作グリップ4の位置及び姿勢」は、本願発明の「前記センサが検出した前記操作器の位置情報及び姿勢情報」に相当することから、引用発明の「動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き」は、本願発明の「前記操作器の軌跡」に相当する。
さらに、引用発明の「算出された操作グリップ4の動きを、CCDカメラ21が検出した相対位置姿勢計測装置3の位置に基づいて、ロボット1の基準座標系に変換し、ロボット1であるロボット手首11の実際の動きとして、ロボット1を指示通りに動か」すことは、ロボット1の基準座標系に変換した「算出された操作グリップ4の動き」どおりに、ロボット1を動かすことであるから、本願発明の「算出した軌跡を追従するように、リアルタイムで前記ロボットを動作させ」ることに相当する。
(6)本願発明の「算出した軌跡に基づいて、前記一のワークに対して、実際に前記ロボットに実行させた作業である、前記操作器の軌跡情報」という記載について、「軌跡情報」が操作器の軌跡に関する情報であることが特定されている一方、「実際に前記ロボットに実行させた作業である、」という修飾により、当該「軌跡情報」がロボットの作業であることについても特定されている。そして、この特定は、本願明細書の「ロボット101に実行させた作業(操作器102の軌跡情報である、第1情報)」という記載(段落【0040】)や、「ロボット101に実行させた作業(操作器102の軌跡情報)」という記載(段落【0092】)とも符合するから、本願発明の「軌跡情報」は、操作器の軌跡に関する情報だけでなく、ロボットの作業に伴う軌跡に関する情報をも含むものといえる。
そうすると、引用発明の「算出された操作グリップ4の動きに基づいて、ロボット1を指示通りに動かしたときの動作軌道」は、実際にロボット1に移動を実行させることに伴う軌跡に関する情報であるから、本願発明の「算出した軌跡に基づいて、前記一のワークに対して、実際に前記ロボットに実行させた作業である、前記操作器の軌跡情報」と対比すると、「算出した軌跡に基づいて、実際に前記ロボットに実行させた移動である、前記操作器の軌跡情報」という点に限り一致する。
また、引用発明において「動作軌道を、記憶部に記憶」することは、本願発明において「軌跡情報を第1情報として、前記記憶器に記憶させるように構成」することに相当する。
(7)引用発明の「目的の場所に塗料を吹き付ける」ことが、本願発明の「他のワークに対して実際に前記ロボットに作業を実行させる」ことに相当することは明らかである。
したがって、引用発明の「記憶部に記憶した動作軌道を基に、ロボット1が目的の場所に塗料を吹き付けるように構成され」ることは、本願発明の「前記記憶器に前記第1情報を記憶させた後に、前記第1情報を基に、他のワークに対して実際に前記ロボットに作業を実行させるように構成され」ることに相当する。
(8)上記(5)、(7)をふまえると、引用発明の「ロボット1を指示通りに動かしたときと、目的の場所に塗料を吹き付けるときのロボット1の動作方向が同じである」ことと、本願発明の「前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である」ことは、「前記第1情報を記憶させるときに実際に実行される移動と前記他のワークに対して実際に実行される移動とが同じ動作方向である」点に限り一致する。
2 一致点及び相違点
上記(1)~(8)から、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1)一致点
「作業エリア内に設置されているロボットと、操作者が把持して、前記ロボットを操作するように構成されている操作器と、操作エリアに配置され、前記操作器の位置情報及び姿勢情報を無線で検出するセンサと、記憶器を有する制御装置と、を備え、前記制御装置は、実際に移動を前記ロボットに実行させるときに、前記センサが検出した前記操作器の位置情報及び姿勢情報を基に、前記操作器の軌跡を算出し、算出した軌跡を追従するように、リアルタイムで前記ロボットを動作させ、算出した軌跡に基づいて、実際に前記ロボットに実行させた移動である、前記操作器の軌跡情報を第1情報として、前記記憶器に記憶させるように構成され、前記制御装置は、前記記憶器に前記第1情報を記憶させた後に、前記第1情報を基に、他のワークに対して実際に前記ロボットに作業を実行させるように構成され、前記第1情報を記憶させるときに実際に実行される移動と前記他のワークに対して実際に実行される移動とが同じ動作方向である、ロボットシステム。」
(2)相違点
本願発明は、「操作器の軌跡」が「一のワークに対して、実際に作業を前記ロボットに実行させる」ときのものであり、「軌跡情報」が「一のワークに対して、実際に前記ロボットに実行させた作業」であり、その結果、「前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である」ことになるのに対して、引用発明は、「操作器の軌跡」(動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き)が「ロボット1を指示通りに動かす」ときのものであり、「軌跡情報」(動作軌道)が「ロボット1を指示通りに動かしたときの動作軌道」であり、その結果、「ロボット1を指示通りに動かしたときと、目的の場所に塗料を吹き付けるときのロボット1の動作方向が同じである」ことにとどまる点。
第6 判断
1 相違点の検討
ア 上記相違点は、引用発明の「操作器の軌跡」(動作スイッチ42が押されている間の操作グリップ4の動き)が、本願発明のように「一のワークに対して、実際に作業を前記ロボットに実行させる」ときのものではないこと、すなわち、引用文献1の教示において、ロボット手首11が実際の作業である塗装噴霧までは行っていないこと(上記第4の1(2)カ)から、本願発明のように「前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である」とまではいえない、というものである。
イ これに対して、引用文献2記載の技術的事項は、
「商品である対象物18に対してロボットに塗装を行わせたときの多関節構造体3及び塗装ガンタイプアタッチメント27の移動による教示情報を蓄積保存し、この教示情報を繰り返して、ロボット1により塗装を行わせること。」というものである(上記第4の2(2))。
ウ 引用文献2記載の技術的事項の「商品である対象物18」が本願発明の「一のワーク」に相当することは明らかであり、以下同様に、「ロボットに塗装を行わせた」が「実際に作業を前記ロボットに実行させる」に、「多関節構造体3及び塗装ガンタイプアタッチメント27の移動による教示情報」が「操作器の軌跡情報」に、「教示情報を蓄積保存」することが「軌跡情報を第1情報として、前記記憶器に記憶」させることに、「この教示情報を繰り返して、ロボット1により塗装を行わせること」が、「前記第1情報を基に、他のワークに対して実際に前記ロボットに作業を実行させる」こと及び「前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である」ことに相当する。
エ そうすると、引用文献2記載の技術的事項は、
「一のワークに対して実際に作業をロボットに実行させるときの操作器の軌跡情報を第1情報として、記憶器に記憶させ、第1情報を基に、他のワークに対して実際にロボットに作業を実行させ、一のワークに対して実際に実行される作業と他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業であること。」を示しているといえる。
オ 引用文献2記載の技術的事項には、「操作器の軌跡」が「一のワークに対して、実際に作業を前記ロボットに実行させる」ときのものであることや、「一のワークに対して実際に実行される作業と他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業であること」が示されているところ、引用文献1の段落【0011】の記載、及び引用文献2の段落[0010]の記載からみて、引用発明と引用文献2記載の技術的事項は、いずれも操作器の動きに追従するロボットの動きを見ながらロボットに作業教示を行うという作用・機能が共通する。さらに、引用文献1の段落【0021】、【0027】、【0050】には、塗装ガンから塗料が噴出するまでの遅延を想定することなどが記載されるように、実際の塗装「作業」を想定した教示についても示唆があることから、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 小括
したがって、本願発明は、引用発明、及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人の主張の概要
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審判請求人は、令和5年1月27日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、概ね次の主張をしている。
(1)主張1(意見書の2ページ下から15行~3ページ21行)
ア 引用文献1の発明は、実際にロボットの動きを見ながら教示ができるようにするもので、実際に塗料を噴霧する必要性がないから、実際に塗料を噴霧することを、引用文献1の発明に組み合わせる動機付けがない。
イ 仮に、引用文献1の発明で、実際に塗料を噴霧するのであれば、むしろ、その噴霧された塗料は、ロボットの動きの確認を妨げることから、引用文献1の教示において、実際に塗料を噴霧させることは、容易とはいえない。
ウ また、引用文献1の発明は、「リピート」自動運転を行うための「ティーチ」作業であるところ、通常、「ティーチ」作業を実施し、これが終了した後に「リピート」自動運転を実施し、「ティーチ修正」作業を実施するという手順で実行されることから、実際に塗料を噴霧させることは容易とはいえない。
(2)主張2(意見書3ページ22行~4ページ9行)
ア 引用文献1の発明において、教示の際のロボットの移動速度を、塗料を吹き付ける際の移動速度と同じにすることに困難性がある。
イ 引用文献1の段落【0046】は、単に相対移動の速度に基づいてロボット手首の移動速度を指令するように構成することを記載したものであって、教示の際の移動速度と実際に塗料を吹き付ける際の移動速度とを同じにすることは記載されていない。
ウ さらに、引用文献1の発明は、ロボットの作業エリアと操作者の操作エリアとを分けて教示するものに限定されておらず、ロボットの動作範囲内に操作者が侵入し教示を行うものであるところ、このような教示では、日本工業規格(JISB8433-1:2015)で規定された制限速度下で行われることから、教示の際のロボットの移動速度を、塗料を吹き付ける際の移動速度と同じにすることはできない。
(3)主張3(意見書4ページ10~19行)
「塗料を噴霧」する作業に基づく主張は、引用文献1に記載された塗装の教示と、引用文献2に記載された塗装ロボットアームに関する技術との組み合わせが当業者にとって容易でないことを主張するものであるから、本願発明における、ロボットの実行する作業が「塗料を噴霧」する作業であるか否かとは関わりがない。
(4)主張4(意見書4ページ20行~5ページ4行)
ア 仮に、引用文献1に係る教示の発明に、引用文献2に記載の教示の技術事項を組み合わせることができたとしても、ロボットに教示するものであって、本願発明のように、ワークに対して作業を実行するものでなく、本願発明の「前記一のワークに対して実際に実行される作業と前記他のワークに対して実際に実行される作業とが同じ作業である」構成を満たさない。
イ 引用文献1~2の教示は、一の教示ポイントから次の教示ポイントに到る軌道、時間、速度が、制御装置の計算によって決定され、教示されたロボットの動作を組み合わせて、ロボットの一連の動作として作業を実行させるのに対し、本願発明におけるロボットの作業は、制御装置がリアルタイムで操作器の軌跡に追従させて実行され、ロボットがワークに対して実行する一連の動作である。
ウ 引用文献1の発明は、ロボットの動作範囲内に操作者が侵入し教示を行うものであるところ、このような教示において、日本工業規格(JISB8433-1:2015)の規定を満足させると、本願発明のように、操作器を操作してロボットにワークに対して作業を実行させるものにならない。
2 審判請求人の主張の検討
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審判請求人の上記主張1~4について検討する。
(1)主張1について
上記第4の2に示すとおり、引用発明と同様の作業手順を有し、かつ、引用発明と同様に操作器の動きに追従するロボットの動きを見ながらロボットに作業教示を行うという作用・機能を有する引用文献2記載の技術的事項は、「リピート」自動運転を行うための「ティーチ」作業において、実際に塗料を噴霧させるものである。
そして、上記第6に示すとおり、引用発明に、作業・機能が共通する引用文献2記載の技術的事項を適用し、実際に塗料を噴霧させることは、十分に動機付けられ、当業者が容易に想到し得たことといえる。
また、主張1のイ、ウの点について、引用発明において、仮に、塗料を噴霧すれば、噴霧された塗料がロボットの動きの確認を妨げるか否か、及び「ティーチ修正」作業を実施する必要があるか否かは明らかでないが、引用文献2においても塗料を噴霧しているところ、それによりロボットの動きの確認が妨げられるような課題は示されていないし、請求人のいう「ティーチ修正」作業が常に必要であるとまではいえないから、そのことが引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用することを阻害するとまではいえない。
したがって、審判請求人の上記主張1を採用することはできない。
(2)主張2について
本願発明では、「記憶器」に記憶させた「実際に前記ロボットに実行させた作業である、前記操作器の軌跡情報」である「第1情報」を基に、一のワークに対して実際に実行される作業と「同じ作業」を、他のワークに対して実際にロボットに実行させる旨、特定されているところ、「記憶器」に記憶させた「第1情報」(軌跡情報)は「位置情報及び姿勢情報」を基に算出した軌跡の情報であって、速度に関する情報は含まれていない。また、本願の明細書の段落【0040】~【0041】、【0092】にも、記憶器110bに記憶した軌跡情報に従って、ロボット101を動作させる旨が記載されているまでであり、速度に関し何ら言及されていない。
さらに、審判請求人も、意見書の4ページ下から21~19行において、「これに対して、本発明におけるロボットの作業は、制御装置が教示ポイントに基づく計算によって軌道、時間、速度を決定するものではなく、制御装置がリアルタイムで操作器の軌跡に追従させて実行されるものです。」と記載しており、「記憶器」に記憶されるロボットの作業に、速度が含まれないことを自認している。
そうすると、本願発明で特定される「記憶器」に記憶されるロボットの作業について、速度は含まれないと解するのが自然であるから、審判請求人の上記主張2は、本願発明及び明細書に基づいたものでなく、さらに、意見書内の記載ですら整合しておらず、採用できない。
なお、仮に、本願発明において、「記憶器」に記憶されるロボットの作業(操作器の軌跡情報)に「速度」が含まれると仮定した場合についても一応検討する。
引用文献1には「・・・さらに、操作者は自分の見るままの方向として移動方向あるいは動作速度をロボットに指示することができる。」(段落【0021】)、「・・・また、操作グリップ4の相対移動の速度に基づいてロボット手首11の移動速度を指令するように構成してもよい。これにより操作者5は操作グリップ4によりロボット1の動作方向と移動速度の両方を教示することができる。」(段落【0046】)と記載されている。
そうすると、ロボットの作業エリアと操作者の操作エリアとを分けて教示する場合に、制限速度が存在するか否かについてはさておき、引用文献1の記載からは、動作速度をロボットに指示できること、すなわち、教示の際のロボットの移動速度が、塗料を吹き付ける際の移動速度と同じとなるように指示できると理解するのが自然である。
また、主張2のウについて、引用文献1の段落【0052】に「・・・操作者は自分の身を安全で手首の動きを観察できる場所に置いて操縦することができ、・・・」と記載されているように、引用文献1には、ロボットの作業エリアと操作者の操作エリアとを分けることの示唆があるから、審判請求人の上記主張2のウは採用できない
(3)主張3について
上記第6に示すとおりであるから、仮に、本願発明における、ロボットの実行する作業が「塗料を噴霧」する作業と特定されていたとしても、引用発明に、作業・機能が共通する引用文献2記載の技術的事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、審判請求人の上記主張3を採用することはできない。
(4)主張4について
引用文献1の段落【0041】には、「・・・また、教示スイッチ43を押したままロボットを操作すると手首11が辿る動作軌道がそのまま制御装置2に記憶される。こうしてロボット1の繰り返し動作の教示点あるいは軌道の記録ができる。」と記載されており、引用文献1では、リアルタイムで操作器の軌跡に追従させたロボットの一連の動作を教示していることは明らかである。
また、引用文献2の段落[0046]には、「多関節構造体の移動による教示情報を保存蓄積することにより、繰り返して同じ教示情報によりロボットの1又は複数の部分を移動させたり、複数の教示情報を組み合わせてより適切な一連の教示情報を構築することが可能となる。」と記載されている上に、図7及び段落[0061]~[0063]には、ベルトコンベアに載せられて移動するシャンプー容器18を把持して梱包容器26に納める動作を教示することが示されていることを考慮すると、引用文献2では、リアルタイムで操作器の軌跡に追従させたロボットの一連の動作を教示していることは明らかである。
また、上記第4の2、及び第6に示すとおり、引用文献2記載の技術的事項は、商品である対象物18に対してロボットに塗装を行わせたときに保存蓄積した教示情報を繰り返して、ロボット1により塗装を行わせることから、一つの商品である対象物18に対する塗装(一のワークに対して実際に実行される作業)と、他の商品である対象物18に対する塗装(他のワークに対して実際に実行される作業)が同じであることは明らかである。
そして、上記第6に示すとおり、引用発明に、作業・機能が共通する引用文献2記載の技術的事項を適用し、実際に塗料を噴霧させることは、十分に動機付けられ、当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、審判請求人の上記主張4のア~イを採用することはできない。
また、主張4のウは、上記主張2のウと同趣旨のものであり、上記(2)で説示するとおり、採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-016112