特許拒絶査定不服審判
2021-014720
段付きの径を有するシャフトを備えたオルタネータ、及びこのタイプのオルタネータの組立方法
- 審判番号
- 2021-014720
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-171736外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月29日
- 審決日
- 2023年01月06日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
- 【請求人代理人】中村 行孝
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】堀田 幸裕
- 【請求人代理人】榎並 薫
- 分類
- P18 .121-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-171736「段付きの径を有するシャフトを備えたオルタネータ、及びこのタイプのオルタネータの組立方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 73960〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願は、平成28年9月2日(パリ条約による優先権主張 2015年(平成27年)9月3日、仏国)の出願であって、令和2年10月14日付けで拒絶理由が通知され、令和3年3月11日に意見書が提出されたが、令和3年6月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和3年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものであり、その後、当審において、令和4年5月30日付けで拒絶理由が通知され、令和4年8月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項に係る発明は、令和4年8月30日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「前方マグネットホイール(230)と、後方マグネットホイール(205)と、シャフト(100)と、を備えた自動車用のオルタネータ(10)であって、前記シャフト(100)は、軸方向に割り振られた第1セクション(110)、第2セクション(115)、第3セクション(120)及び第4セクション(125)を有しているオルタネータ(10)において、
- 前記第1セクション(110)、前記第2セクション(115)、前記第3セクション(120)及び前記第4セクション(125)は、軸方向にこの順で互いに隣接しており、
- 前記第1セクション(110)は、前記シャフト(100)と前記前方マグネットホイール(230)との間の回転方向における保持を確保するように構成された刻み(130)を有し、
- 前記第2セクション(115)は、前記前方及び後方マグネットホイール(230、205)のセンタリングを可能とするように構成され、
- 前記第3セクション(120)は、前記シャフト(100)と前記後方マグネットホイール(205)との間の回転方向における保持を確保するように構成された刻み(135)を有し、
- 前記第4セクション(125)は、前記シャフト(100)と前記後方マグネットホイール(205)との間の軸方向保持を確保するように構成されたカラー(140)を有し、且つ
前記第1セクションの直径(D1)、前記第2セクションの直径(D2)、前記第3セクションの直径(D3)及び前記第4セクションの直径(D4)は、D1<D2<D3<D4の式に従い、
前記前方マグネットホイール(230)は、
- 前記第1セクション(110)の少なくとも一部と相補的なクランプ領域(210)と、
- 前記第2セクション(115)の少なくとも一部と相補的なセンタリング領域(215)と、を有し、
前記後方マグネットホイール(205)は、
- 前記第2セクション(115)の少なくとも一部と相補的なセンタリング領域(220)と、
- 前記第3セクション(120)の少なくとも一部と相補的なクランプ領域(225)と、を有し、
前記第2セクションの軸方向に沿った長さは、前記前方マグネットホイールの前記センタリング領域の軸方向に沿った長さ(L3)と前記後方マグネットホイールの前記センタリング領域の軸方向に沿った長さ(L2)との和に等しい、
ことを特徴とするオルタネータ(10)。」
第3 拒絶の理由
令和4年5月30日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の理由2(進歩性)のうち、請求項1に係る発明に対するものは、概略、次のとおりのものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、あるいは引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2008-535453号公報
引用文献2:特開2001-235010号公報
引用文献3:特開2014-117020号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された、前記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用の、オルタネータ、またはオルタネータスタータ等の回転電気機械用のロータに関する。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の2つの公知の実施の形態によると、中心シャフトの駆動部は、セレーションが存在するため、磁極部材の中心およびコアの中心、あるいはそのいずれかを、十分な精度でシャフトの回転軸に合わせることができない。実際に、各磁極部材の中心に設けられた孔は、半径方向に塑性的に変形し、その変形は一様ではない。これは、セレーションが、磁極部材とコアの中心に設けられた孔を一様に貫通しないためである。
【0012】
このように、中心が合わない配置を補正するために、ロータの外縁部とシャフトの回転軸とが同心に配置されるよう、磁極部材を取り付けた後、磁極部材の外周面に機械加工を施す必要がある。」
ウ「【0073】
励磁コイル34は、磁極部材20、22それぞれのフランジ24の間に、軸方向に配置されている。また、励磁コイル34は、ロータ12における円筒形の環状コア36の部分に保持されている。環状のコア36は、中心に孔37を有し、シャフト14と同軸上に配置されている。コア36は、軸方向に独立した2つの部分から構成され、各コア36は、図1に示すように、それぞれ対応する磁極部材20、22と一体に形成されている。
・・・(中略)・・・
【0075】
以下の説明では、「コイル」は、別途明記してある場合を除き、固定子コイル18ではなく、励磁コイル34を指す。
【0076】
すなわち、コイル34は、磁極部材20、22のツメ26と中心コア36の間に、半径方向に形成される空間に配置されている。
・・・(中略)・・・
【0081】
励磁コイル34が活性化されると、すなわち、電気が供給されると、強磁性の材料からなる磁極部材20、22およびコア36は帯磁し、磁極部材20、22の歯30を備えるツメ26に磁極が形成され、ロータ12は誘導ロータとして機能する。」
エ「【0098】
図2に示す本発明の第1の実施の形態においては、ロータ12は、図1に示すロータ12と類似している。すなわち、ロータ12は、中心シャフト14と、コア36の軸方向の両側に設けられた2つの磁極部材20、22と、コア36の周りに半径方向に配置された励磁コイル34とから構成されている。
・・・(中略)・・・
【0100】
駆動部57は、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有している。
・・・(中略)・・・
【0107】
図1と同様に、後ろ側の駆動部57の後端部は、シャフト14上に設けられた環114の肩の辺りまで延びている。なお、この環114は、スリップリング42に隣接している。すなわち、シャフト14の後端部に隣接して設けられている。
・・・(中略)・・・
【0111】
この例示的な実施の形態において、シャフト14の前端部は、以下に説明する方法で、スリーブ58に嵌合される。環114は、シャフトが、スリーブ58に対して相対的に、軸方向にずれてしまうことを制限するものであり、ここでは、その外径は、図2および図3に示す、管状のスリーブ58の外径よりも小さくしてある。」
オ「【0191】
図6に示す第3の実施の形態では、中心シャフト14の2つの駆動部157、257の軸方向の長さは、上記の変形例および図2ならびに図3よりも短くなっており、ツメ型のロータ12のコアは、2つの部分36a、36bから構成される。
【0192】
各コア部36a、36bにそれぞれ対応して、スリーブ258、358が設けられる。
【0193】
スリーブ258、358の外側は平らで、中心シャフト14と一体化されている。したがって、スリーブ258、358は、シャフト14から突出した形になっており、駆動部157、257と同様に、それぞれ直径が異なっている。
【0194】
各駆動部157、257は、それぞれスリーブ258、358の、軸方向の延長線上にある。
【0195】
駆動部157は、環114に隣接して設けられている。
【0196】
駆動部257の外側の直径は、スリーブ258の外側の直径とほぼ等しい。
【0197】
スリーブ258の外側の直径は、駆動部157の外側の直径よりも小さい。
【0198】
スリーブ358の外側の直径は、駆動部257の外側の直径よりも小さく、したがって、スリーブ258と駆動部157の直径よりも小さい。
【0199】
したがって、シャフト14の直径は、階段状になっている。
【0200】
コア部36a、36bの内側の孔も、直径が階段状になっている。
【0201】
各コア部の内部には、それぞれ、シャフト14の駆動部157、257および対応する258、358と嵌合するよう、直径が異なる2つの部分を備えている。
【0202】
図6に示すように、コア部36bの第1の部分は、第2の部分よりも、内径が小さい。この第1の部分の中心は、スリーブ358の外周の平らな部分と緊密に当接するよう設計されている、中心合わせ用の円筒状の孔とされている。スリーブ358は、これによって、コア部36bと磁極部材20の中心合わせをする。コア部36bの第2の部分の軸方向の長さは、第1の部分よりも短く、コア部36bよりも硬い駆動部257と嵌合するよう設計されている。これにより、力を加えてシャフト14を駆動部36bに挿入することで、駆動部257により、第2の部分に溝が形成され、シャフト14は、回転可能に磁極部材20に固定される。したがって、第2の部分の中心は、固定用の孔により定義される。
【0203】
同様に、駆動部36aにも、それぞれ内径が異なる2つの部分が内側に存在する。これらの部分は、それぞれ第3の部分、第4の部分と呼ぶものとする。第3の部分は、第4の部分よりも、内径が小さい。第3の部分の中心は、スリーブ258の平らな外周面に緊密に当接するよう設計されている、中心合わせ用の円筒形の孔により定義される。なお、これによって、スリーブ258は、コア部36aと、磁極部材22の中心合わせをする。コア部36aの第4の部分の軸方向の長さは、第3の部分よりも短く、コア部36aよりも硬い駆動部157と嵌合するよう設計されている。これにより、力を加えてシャフト14を駆動部36aに挿入することで、駆動部157により、第4の部分に溝が形成され、シャフト14は、回転可能に磁極部材22に固定される。したがって、第4の部分の内部は、固定用の孔により定義される。
【0204】
したがって、第1の部分の内径は、第2の部分より小さく、第3の部分にほぼ等しくなっている。また、第3の部分の内径は、第4の部分よりも小さい。
【0205】
上記ならびに図6により、各中間スリーブ258、358の外周の表面は、中心シャフト14と同軸上に配置された円筒形をしており、それぞれ磁極部材20、22に対応し、対応する磁極部材20、22に設けられた、補完する円筒形の中心孔に嵌合する。これによって、各中間スリーブ258、358に対応する磁極部材20、22が、シャフト14と同軸上に配置される。
【0206】
各中間スリーブ258、358は、半径方向にコア部36a、36bとシャフト14との間に配置されている。
【0207】
図6において、第2の部分は、コア部36bの内側の端面62からはみ出しており、第4の部分は、コア部36aの外側の端面からはみ出している。
【0208】
なお、シャフト14の前側の端部には、溝300が設けられている。
【0209】
この溝300は、ある態様によると、連続的である。
【0210】
磁極部材20の外側の面を圧接する作業において、磁極部材20を構成する材料が、この溝300に入り込み、磁極部材20、22は、最終的に、環114と、磁極部材20の材料301により固定されている。
・・・(中略)・・・
【0221】
したがって、従来技術によるロータ12では、コイル34の軸方向のそれぞれの端と、各磁極部材20、22のフランジ24の間に、大きな空間を設けておく必要があった。本発明に係るロータ12においては、磁極部材20、22の互いの軸方向の位置を、より正確に調整することができる。したがって、2つの磁極部材20、22の間に、より長いコイル34を設けることができるため、オルタネータの能力を高めることができる。」
カ 図6には、次の事項が図示されている。
[図:0001397560000001.jpg]
キ 前記ウの段落【0073】には、従来技術についての記載ではあるが、各コア36が、それぞれ対応する磁極部材20、22と一体に形成されることが記載されており、この記載を踏まえると、前記オに記載された第3の実施の形態においても、磁極部材20及び前記磁極部材20と一体に形成されたコア部36bが設けられ、磁極部材22及び前記磁極部材22と一体に形成されたコア部36aが設けられているといえる。
ク 前記エの段落【0107】には、第1の実施の形態において、環114が、シャフト14上に設けられることが記載されており、この記載を踏まえると、前記オに記載された第3の実施の形態においても、環114は、シャフト14上に設けられているといえる。
そして、前記オの段落【0192】~【0199】の記載及び前記カの図6の図示内容によると、第3の実施の形態のシャフト14は、スリーブ358、駆動部257、スリーブ258、駆動部157、環114を、軸方向の延長線上にこの順で互いに隣接して有しているといえる。また、その直径は、階段状になっており、スリーブ358の直径は、駆動部257の直径よりも小さく、駆動部257の直径は、スリーブ258の直径とほぼ等しく、スリーブ258の直径は、駆動部157の直径よりも小さいといえ、また、前記カの図6の図示内容から、駆動部157の直径は、環114の直径よりも小さいことが把握できる。
これらの事項を踏まえて、階段状のシャフト14を、直径が等しい領域、あるいはほぼ等しい領域に分けると、シャフト14は、スリーブ358の領域、駆動部257及びスリーブ258の領域、駆動部157の領域並びに環114の領域を有しているといえる。
すると、シャフト14は、直径が階段状になっており、軸方向の延長線上に直径がそれぞれ異なるスリーブ358の領域、駆動部257及びスリーブ258の領域、駆動部157の領域並びに環114の領域を有しており、前記スリーブ358の領域、前記駆動部257及びスリーブ258の領域、前記駆動部157の領域並びに前記環114の領域は、軸方向の延長線上にこの順で互いに隣接しているといえる。
また、前記スリーブ358の領域の直径、前記駆動部257及びスリーブ258の領域の直径、前記駆動部157の領域の直径、前記環114の領域の直径は、スリーブ358の領域の直径<駆動部257及びスリーブ258の領域の直径<駆動部157の領域の直径<環114の領域の直径の関係にあるといえる。
ケ 前記オの段落【0202】の記載によると、スリーブ358は、コア部36bの第1の部分の円筒状の孔と中心合わせをするものといえるから、前記クで示したスリーブ358の領域は、コア部36bの第1の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ358を有しているといえる。同様に、前記オの段落【0203】の記載によると、前記クで示した駆動部257及びスリーブ258の領域は、コア部36aの第3の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ258を有しているといえる。
コ 前記エの段落【0100】には、第1の実施の形態において、駆動部57が、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有していることが記載されており、この記載を踏まえると、前記オに記載された第3の実施の形態においても、駆動部157及び駆動部257は、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有しているといえる。
そして、前記オの段落【0202】の記載によると、駆動部257は、コア部36bの第2の部分に溝を形成し、シャフト14を回転可能に磁極部材20に固定するものといえるから、前記クで示した駆動部257及びスリーブ258の領域は、コア部36bの第2の部分に溝を形成し、シャフト14を回転可能に磁極部材20に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部257を有しているといえる。同様に、前記オの段落【0203】の記載によると、前記クで示した駆動部157の領域は、コア部36aの第4の部分に溝を形成し、シャフト14を回転可能に磁極部材22に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部157を有しているといえる。
サ 前記エの段落【0111】には、第1の実施の形態において、環114は、シャフト14がスリーブ58に対して軸方向にずれてしまうことを制限するものであることが記載されており、この記載を踏まえると、前記オに記載された第3の実施の形態において、環114は、シャフト14がコア部36aに対して軸方向にずれてしまうことを制限するものであるといえる。すると、前記クで示した環114の領域は、シャフト14がコア部36aに対して軸方向にずれてしまうことを制限する環114を有しているといえる。
シ 前記オの段落【0201】の記載によると、各コア部(コア部36a及びコア部36b)の内部には、それぞれ、シャフト14の駆動部157及び駆動部257並びにスリーブ258及びスリーブ358と嵌合するよう、直径が異なる2つの部分を備えているといえ、前記オの段落【0202】、【0203】の記載及び前記カの図6の図示内容を踏まえると、コア部36bは、前記クで示したスリーブ358の領域のスリーブ358に嵌合する第1の部分と、前記クで示した駆動部257及びスリーブ258の領域の駆動部257に嵌合する第2の部分と、を有するといえ、コア部36aは、前記クで示した駆動部257及びスリーブ258の領域のスリーブ258に嵌合する第3の部分と、前記クで示した駆動部157の領域の駆動部157に嵌合する第4の部分と、を有するといえる。
ス 前記オの段落【0200】~【0203】の記載及び前記カの図6の図示内容を踏まえると、コア部36bの第2の部分が駆動部257に嵌合し、コア部36aの第3の部分がスリーブ258に嵌合するから、前記クで示した駆動部257及びスリーブ258の領域の軸方向の長さは、コア部36bの第2の部分の軸方向の長さとコア部36aの第3の部分の軸方向の長さとの和に等しいといえる。
(2)引用発明
前記(1)ア~スの記載及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、第3の実施の形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「磁極部材20と、前記磁極部材20と一体に形成されたコア部36bと、磁極部材22と、前記磁極部材22と一体に形成されたコア部36aと、2つの前記磁極部材20、22の間に設けたコイル34と、シャフト14と、を備えた自動車用のオルタネータであって、前記シャフト14は、直径が階段状になっており、軸方向の延長線上に直径がそれぞれ異なるスリーブ358の領域、駆動部257及びスリーブ258の領域、駆動部157の領域並びに環114の領域を有している自動車用のオルタネータにおいて、
- 前記スリーブ358の領域、前記駆動部257及びスリーブ258の領域、前記駆動部157の領域並びに前記環114の領域は、軸方向の延長線上にこの順で互いに隣接しており、
- 前記スリーブ358の領域は、前記コア部36bの第1の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ358を有し、
- 前記駆動部257及びスリーブ258の領域は、前記コア部36bの第2の部分に溝を形成し、前記シャフト14を回転可能に前記磁極部材20に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部257と、前記コア部36aの第3の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ258とを有し、
- 前記駆動部157の領域は、前記コア部36aの第4の部分に溝を形成し、前記シャフト14を回転可能に前記磁極部材22に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部157を有し、
- 前記環114の領域は、前記シャフト14が前記コア部36aに対して軸方向にずれてしまうことを制限する環114を有し、且つ
前記スリーブ358の領域の直径、前記駆動部257及びスリーブ258の領域の直径、前記駆動部157の領域の直径、前記環114の領域の直径は、スリーブ358の領域の直径<駆動部257及びスリーブ258の領域の直径<駆動部157の領域の直径<環114の領域の直径の関係にあり、
前記コア部36bは、
- 前記スリーブ358の領域の前記スリーブ358に嵌合する第1の部分と、
- 前記駆動部257及びスリーブ258の領域の前記駆動部257に嵌合する第2の部分と、を有し、
前記コア部36aは、
- 前記駆動部257及びスリーブ258の領域の前記スリーブ258に嵌合する第3の部分と、
- 前記駆動部157の領域の前記駆動部157に嵌合する第4の部分と、を有し、
前記駆動部257及びスリーブ258の領域の軸方向の長さは、前記コア部36bの前記第2の部分の軸方向の長さと前記コア部36aの前記第3の部分の軸方向の長さとの和に等しい、
自動車用のオルタネータ。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,歯車装置および歯車に関し,たとえば,プリンタのキャリッジ駆動用モータのモータ出力軸にモータ・ピニオンが取り付けられたモータ・ピニオン装置および該モータ・ピニオンにそれぞれ適用される。また,本発明は,この歯車装置を備えた記録装置に関する。」
イ「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし,このような従来の樹脂製ピニオンは,ローレットが形成されたモータ出力軸先端側では,ローレットによって大きな締結力が確保されるものの,ローレットが形成されていないモータ出力軸基端側(基軸部分)では,圧入による小さな締結力しか確保されない構成となっていた。したがって,大きなトルクがモータ出力軸に加えられると,モータ出力軸先端側は相対回転しなくても,モータ出力軸基端側は相対回転し,その結果,ピニオンがねじれ変形する場合があった。また,モータ出力軸の先端部にのみローレットが形成されているので,締結力も十分でなかった。
【0008】本発明は,このような背景に鑑みなされたもので,偏心を生じることなく回転軸を取り付けることができ,かつ,回転軸との間の締結力に優れるとともに,ねじれ変形を防止できる樹脂製の歯車を用いた歯車装置および該歯車装置の歯車,ならびに該歯車装置を備えた記録装置を提供することを目的とする。」
ウ「【0046】[モータ・ピニオンとモータ出力軸との取り付け構造]次に,キャリッジ・モータ52および紙送りモータ59に取り付けられる「歯車」としてのモータ・ピニオンと,「回転軸」としてのモータ出力軸との取り付け構造について説明する。図2は,モータ・ピニオン1がキャリッジ・モータ52または紙送りモータ59のモータ出力軸3に挿入する直前の様子を示す側面図(一部断面図)である。図3は,モータ出力軸3の先端部分を示す斜視図である。図4は,モータ出力軸3にモータ・ピニオン1を取り付ける過程を示す流れ図である。
【0047】モータ出力軸3は,その先端部に第1の係合部2と,第1の係合部2の基端側に基軸部4と,基軸部4の基端側に第2の係合部6とを備えている。基軸部4は,回転軸線(以下,単に「軸線」という。)から一定の半径寸法で形成された円柱形を有する。第1の係合部2は,基軸部4の先端部分を段引き加工等により基軸部4の軸線と同軸的に,かつ,基軸部4より一段細くなるように小径加工(たとえば切削加工)した後,そこにローレット加工を施すことにより形成されている。このローレット加工により,第1の係合部2の外周面には,「第1の係合手段」としての,軸線方向に延設された山部17と谷部19とが周方向に交互に形成されている。
【0048】基軸部4は,モータ出力軸3を加工することなくそのまま用いることもできるし,モータ出力軸3を,同軸的に小径加工して形成することもできる。また,基軸部4の軸線方向長さ(以下,単に「長さ」という。)は,第1の係合部2の長さおよび第2の係合部6の長さより十分長く設定されている。
【0049】第2の係合部6(図3では図示を省略)は,基軸部4の表面を小径加工することなくローレット加工を施すことにより形成されている。このローレット加工により,第2の係合部6の外周面には,「第2の係合手段」としての,軸線方向に延設された山部と谷部とが周方向に交互に形成されている。ローレット加工によって,第2の係合部6の山部は基軸部4の外周面より突出し,その結果,その外径寸法(軸線から山部の頂点までに距離)は基軸部4の外径寸法よりも大きくなっている。なお,第2の係合部6の基端側には,図示しないキャリッジ・モータ52(図1参照)または紙送りモータ・モータ59(図1参照)の本体部が存在する。」
エ「【0051】モータ・ピニオン1は,内部に挿入孔7が形成された本体部5を備えている。この本体部5の周囲には,歯9が一体形成されている。挿入孔7は,モータ・ピニオン1の先端側から順に歯9の軸線と同軸的に形成されたそれぞれ内径寸法が異なる4つの領域から構成されている。すなわち,挿入孔7の最も先端側には,モータ出力軸3の第1の係合部2が圧入される第1の係合受入部11が,第1の係合受入部11の基端側には,モータ出力軸3の基軸部4が圧入される基軸受入部13が,基軸受入部13のさらに基端側には,モータ出力軸3の第2の係合部6が圧入される第2の係合受入部14が,第2の係合受入部14の基端側に位置するモータ・ピニオン1の基端側端部には,入口部15が,それぞれ形成されている。
【0052】第1の係合受入部11の内径寸法は,第1の係合部2の外形寸法(すなわち回転軸線から山部17の頂点までの寸法)より僅かに小さくなるように設定されている。また,第1の係合受入部11の長さ寸法は,第1の係合部2の長さ寸法とほぼ同一であり,モータ出力軸3がモータ・ピニオン1に挿入されたときに,第1の係合部2が第1の係合受入部11にぴったりと嵌まり込むことができるようになっている。
【0053】基軸受入部13の内径寸法は,第1の係合部2の外径寸法および第1の係合受入部11の内径寸法より大きく,かつ,基軸部4の外径寸法より僅かに小さくなるように設定されている。また,基軸受入部13は,基軸部4とほぼ同じ長さ寸法を有し,モータ出力軸3がモータ・ピニオン1に挿入されたときに,基軸部4が基軸受入部13にぴったりと嵌まり込むことができるようになっている。したがって,基軸受入部13は,第1の係合部2および第2の係合部6の各長さ寸法よりも十分に長い寸法を有する。
【0054】第2の係合受入部14の内径寸法は,第1の係合部2および基軸部4の各外形寸法より大きく,かつ,第2の係合部6の外径寸法より僅かに小さくなるように設定されるとともに,第1の係合受入部11および基軸受入部13の各内径寸法より大きくなるように設定されている。また,第2の係合受入部14は,第2の係合部6とほぼ同じ長さ寸法を有し,モータ出力軸3がモータ・ピニオン1に挿入されたときに,第2の係合部6が第2の係合受入部14にぴったりと嵌まり込むことができるようになっている。」
オ「【0057】次に,モータ・ピニオン1をモータ出力軸3に圧入して取り付けるときの作用について説明する。まず,図4(a)に示すように,モータ・ピニオン1の基端側をキャリッジ・モータ52または紙送りモータ59(ともに図1参照)から延びるモータ出力軸3の先端に臨ませる。次に,図4(b)に示すように,モータ出力軸3の先端をモータ・ピニオン1の挿入孔7内へ圧入していく。この時,第1の係合部2の外径寸法は基軸受入部13および第2の係合受入部14の各内径寸法より小さく,また,基軸部4の外径寸法は第2の係合受入部14の内径寸法より小さいので,第1の係合部2および基軸部4をスムースに挿入でき,基軸部4が基軸受入部13の位置まで来た時に実質的な圧入が始まる。
【0058】基軸部4は,外面が滑らかであるため,モータ・ピニオン1に圧入力を加えることにより,偏心することなく基軸受入部13内に圧入されていく。そして,基軸受入部13の長さ寸法が第1の係合部2の長さ寸法より長いことから,図4(b)に示すように,基軸部4が基軸受入部13内に受け入れられた後に,第1の係合受入部11への第1の係合部2の圧入が開始されるようになっている。第1の係合部2の先端が基軸受入部13の先端まで圧入されることによって,モータ出力軸3の軸線とモータ・ピニオン1の軸線とは一致しており,この状態で図4(c)に示す最終的な圧入段階に入る。
【0059】最終的な圧入段階では,第1の係合部2が第1の係合受入部11内に圧入されていく。また,これに前後(第2の係合部6の長さ寸法が第1の係合部2の長さ寸法より長い場合には前,短い場合には後)して,第2の係合部6が第2の係合受入部14内に圧入されていく。この圧入操作は,基軸部4が基軸受入部13内にすでに圧入されていることから,基軸受入部13に案内された状態で行われるので,圧入操作が容易となる。なお,基軸受入部13への基軸部4の圧入は,第1の係合部2を第1の係合受入部11に圧入するときの力および第2の係合部6を第2の係合受入部14に圧入するときの力よりも,小さな圧入力で達成できるようになっている。
【0060】この時,第1の係合部2および第2の係合部6の双方またはいずれか一方が,加工精度が悪いために基軸部4に対して偏心しており,その結果,圧入の際に偏心するような力を受けたとしても,基軸部4がすでに基軸受入部13内で偏心することなく強固に圧入されているため,第1の係合部2および第2の係合部6は,第1の係合受入部11および第2の係合受入部14内にほとんど偏心することなくそれぞれ圧入されていく。さらに,この時点で第1の係合部2と第1の係合受入部11との間および第2の係合部6と第2の係合受入部14との間の双方またはいずれか一方に偏心が生じても,歯9が形成されている基軸受入部13内で基軸4が偏心してしまうことはない。基軸部4は第1の係合部2および第2の係合部6よりも十分長い長さ寸法を有するので,軸線を一致させる整合力が,第1の係合部2および第2の係合部6の双方またはいずれか一方の偏心力よりも大きいからである。
【0061】なお,第1の係合部2および第2の係合部6が偏心することなく形成されている場合には,この圧入段階においても,モータ・ピニオン1は,モータ出力軸3に対して偏心することなく取り付けられることは言うまでもない。
【0062】このようにして第1の係合部2が第1の係合受入部11内に,第2の係合部6が第2の係合受入部14内に,それぞれ最後まで圧入されることにより,圧入作業は完了する。そして,圧入後,モータ出力軸3の軸線と歯9の軸線とは,偏心することなく一致することとなる。これにより,モータ出力軸3が取り付けられた歯車1(すなわち歯9)は,モータ出力軸3の軸線を中心に回転することとなる。
【0063】第1の係合受入部11および第2の係合受入部14は,そこに第1の係合部2および第2の係合部6がそれぞれ圧入された時に,径方向に等方的に僅かに膨張するとともに,第1の係合部2および第2の係合部6の山部が本体部5内に入り込み,また,第1の係合部2および第2の係合部6の谷部には,本体部5が入り込むこととなる。これにより,第1の係合部2および第2の係合部6は,第1の係合受入部11および第2の係合受入部14とモータ出力軸3の回転方向においてそれぞれ係合(掛合)し(引っ掛かり),締結力が確保される。その結果,モータ出力軸3とモータ・ピニオン1との相対回転が防止され,両者の一体回転が可能となる。
【0064】また,基軸部4の先端側および後端側の双方で係合による締結力が得られるので,モータ出力軸3に大きなトルクが加わっても,モータ・ピニオン1のねじれ変形が防止される。たとえば,先端側の第1の係合部2および第1の係合受入部11のみが共回りする一方,後端側の基軸部4および基軸受入部13ならびに第2の係合部6および第2の係合受入部14が相対回転することによるねじれ変形が防止される。」
カ 図4には、次の事項が図示されている。
[図:0001397560000002.jpg]
(2)引用文献2に記載された事項
前記(1)ア~カの記載及び図面の図示内容によると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。
ア 解決しようとする課題について
モータ出力軸の先端部にのみローレットが形成されているので、ローレットが形成されていない基端側では、圧入による小さな締結力しか確保されず、相対回転が生じ、締結力が十分でなかったことなどを背景に、偏心を生じることなく回転軸を取り付けることができ、かつ、回転軸との間の締結力に優れるとともに、ねじれ変形を防止できる樹脂製の歯車を用いた歯車装置を提供することを目的とすること。
イ 歯車(モータ・ピニオン1)と回転軸(モータ出力軸3)との取り付け構造について
(ア)モータ出力軸3は、その先端部に第1の係合部2と、第1の係合部2の基端側に基軸部4と、基軸部4の基端側に第2の係合部6とを備え、第1の係合部2は、基軸部4より一段細くなるように小径加工されるとともに、軸線方向に延設された山部17と谷部19とが周方向に交互に形成され、基軸部4は、その軸線方向長さが、第1の係合部2の長さ及び第2の係合部6の長さより十分長く設定されるとともに、外面が滑らかであり、第2の係合部6は、その外径寸法が基軸部4の外径寸法より大きくなっているとともに、軸線方向に延設された山部と谷部とが周方向に交互に形成されていること。
(イ)モータ・ピニオン1は、挿入孔7の最も先端側に第1の係合部2が圧入される第1の係合受入部11と、第1の係合受入部11の基端側に基軸部4が圧入される基軸受入部13と、基軸受入部13の基端側に第2の係合部6が圧入される第2の係合受入部14を備え、第1の係合受入部11は、長さ寸法が第1の係合部2の長さ寸法とほぼ同一であり、基軸受入部13は、長さ寸法が基軸部4の長さ寸法とほぼ同一であり、内径寸法が第1の係合受入部11の内径寸法より大きく、第2の係合受入部14は、長さ寸法が第2の係合部6の長さ寸法とほぼ同一であり、内径寸法が基軸受入部13の内径寸法より大きいこと。
ウ 歯車(モータ・ピニオン1)を回転軸(モータ出力軸3)に取り付けるときの作用について
モータ出力軸3の先端をモータ・ピニオン1の挿入孔7内へ圧入していくと、基軸部4が基軸受入部13の位置まで来た時に実質的な圧入が始まり、基軸部4は、外面が滑らかであるため、モータ・ピニオン1に圧入力を加えることにより、偏心することなく基軸受入部13内に圧入されていき、最終的な圧入段階では、基軸部4が基軸受入部13内にすでに圧入され、基軸受入部13に案内された状態で、第1の係合部2が第1の係合受入部11内に圧入され、また、これに前後して、第2の係合部6が第2の係合受入部14内に圧入されることにより、モータ出力軸3の軸線と歯9の軸線とは、偏心することなく一致するとともに、第1の係合部2及び第2の係合部6は、第1の係合受入部11及び第2の係合受入部14とモータ出力軸3の回転方向においてそれぞれ係合し、締結力が確保されること。
第5 対比・判断
1 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「シャフト14」及び「環114」は、それぞれ本願発明の「シャフト(100)」及び「カラー(140)」に相当する。そして、引用発明の「軸方向」において、「シャフト14」の「環114」が設けられる側及びその逆側は、本願発明の「軸方向」において、それぞれ「後方」及び「前方」に相当する。
(2)引用発明は、「2つの磁極部材20、22の間に設けたコイル34」を備えており、引用文献1の段落【0081】(前記第4 1(1)ウ参照。)には、従来技術についての記載ではあるが、励磁コイル34が活性化されると、強磁性の材料からなる磁極部材20、22及びコア36が帯磁することが記載されている。このことからみて、引用発明においても、コイル34が活性化されることにより、「磁極部材20」及び「前記磁極部材20と一体に形成されたコア部36b」並びに「磁極部材22」及び「前記磁極部材22と一体に形成されたコア部36a」が帯磁するといえる。すると、引用発明の「磁極部材20」及び「前記磁極部材20と一体に形成されたコア部36b」を合わせたもの、あるいは「磁極部材20」、あるいは「コア部36b」は、本願発明の「前方マグネットホイール(230)」に相当し、引用発明の「磁極部材22」及び「前記磁極部材22と一体に形成されたコア部36a」を合わせたもの、あるいは「磁極部材22」、あるいは「コア部36a」は、本願発明の「後方マグネットホイール(205)」に相当する。
(3)引用発明の「自動車用のオルタネータ」は、本願発明の「自動車用のオルタネータ(10)」あるいは「オルタネータ(10)」に相当する。
(4)引用発明の「スリーブ358の領域」、「駆動部257及びスリーブ258の領域」、「駆動部157の領域」及び「環114の領域」は、直径がそれぞれ異なり、「前記スリーブ358の領域の直径、前記駆動部257及びスリーブ258の領域の直径、前記駆動部157の領域の直径、前記環114の領域の直径は、スリーブ358の領域の直径<駆動部257及びスリーブ258の領域の直径<駆動部157の領域の直径<環114の領域の直径の関係にあ」るものであるから、それぞれ本願発明の「第1セクション(110)」、「第2セクション(115)」、「第3セクション(120)」及び「第4セクション(125)」に相当する。
すると、引用発明の「前記シャフト14は、直径が階段状になっており、軸方向の延長線上に直径がそれぞれ異なるスリーブ358の領域、駆動部257及びスリーブ258の領域、駆動部157の領域並びに環114の領域を有している」という事項は、本願発明の「前記シャフト(100)は、軸方向に割り振られた第1セクション(110)、第2セクション(115)、第3セクション(120)及び第4セクション(125)を有している」という事項に相当する。
また、引用発明の「前記スリーブ358の領域、前記駆動部257及びスリーブ258の領域、前記駆動部157の領域並びに前記環114の領域は、軸方向の延長線上にこの順で互いに隣接して」いるという事項は、本願発明の「前記第1セクション(110)、前記第2セクション(115)、前記第3セクション(120)及び前記第4セクション(125)は、軸方向にこの順で互いに隣接して」いるという事項に相当する。
さらに、引用発明の「前記スリーブ358の領域の直径、前記駆動部257及びスリーブ258の領域の直径、前記駆動部157の領域の直径、前記環114の領域の直径は、スリーブ358の領域の直径<駆動部257及びスリーブ258の領域の直径<駆動部157の領域の直径<環114の領域の直径の関係にあ」るという事項は、本願発明の「前記第1セクションの直径(D1)、前記第2セクションの直径(D2)、前記第3セクションの直径(D3)及び前記第4セクションの直径(D4)は、D1<D2<D3<D4の式に従」うという事項に相当する。
(5)引用発明の「前記スリーブ358の領域は、前記コア部36bの第1の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ358を有」するという事項と、本願発明の「前記第1セクション(110)は、前記シャフト(100)と前記前方マグネットホイール(230)との間の回転方向における保持を確保するように構成された刻み(130)を有」するという事項とは、第1セクションは、前方マグネットホイールの前方側の部分と対応する部分を有する点において共通する。
(6)引用発明の「コア部36aの第3の部分の円筒状の孔と中心合わせをする」という事項は、本願発明の「後方マグネットホイール」「のセンタリングを可能とする」という事項に相当し、引用発明の「前記駆動部257及びスリーブ258の領域は、前記コア部36bの第2の部分に溝を形成し、前記シャフト14を回転可能に前記磁極部材20に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部257と、前記コア部36aの第3の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ258とを有」するという事項と、本願発明の「前記第2セクション(115)は、前記前方及び後方マグネットホイール(230、205)のセンタリングを可能とするように構成され」るという事項とは、第2セクションは、前方マグネットホイールの後方側の部分と対応する部分を有するともに、後方マグネットホイールのセンタリングを可能とするように構成される点において共通する。
(7)引用発明の「刻み付けしたセレーション状の凹凸部」は、本願発明の「刻み(130)」に相当し、引用発明の「前記駆動部157の領域は、前記コア部36aの第4の部分に溝を形成し、前記シャフト14を回転可能に前記磁極部材22に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部157を有」するという事項は、駆動部157が、コア部36aの第4の部分に溝を形成することにより、シャフト14とコア部36a及び磁極部材22との間に回転方向の保持力を生じさせているといえるから、本願発明の「前記第3セクション(120)は、前記シャフト(100)と前記後方マグネットホイール(205)との間の回転方向における保持を確保するように構成された刻み(135)を有」するという事項に相当する。
(8)引用発明の「前記環114の領域は、前記シャフト14が前記コア部36aに対して軸方向にずれてしまうことを制限する環114を有」するという事項は、環114が、シャフト14とコア部36aとの間に軸方向の保持力を生じさせているといえるから、本願発明の「前記第4セクション(125)は、前記シャフト(100)と前記後方マグネットホイール(205)との間の軸方向保持を確保するように構成されたカラー(140)を有」するという事項に相当する。
(9)引用発明の「前記コア部36bは、- 前記スリーブ358の領域の前記スリーブ358に嵌合する第1の部分と、- 前記駆動部257及びスリーブ258の領域の前記駆動部257に嵌合する第2の部分と、を有」するという事項と、本願発明の「前記前方マグネットホイール(230)は、- 前記第1セクション(110)の少なくとも一部と相補的なクランプ領域(210)と、- 前記第2セクション(115)の少なくとも一部と相補的なセンタリング領域(215)と、を有」するという事項とは、前方マグネットホイールは、第1セクションの少なくとも一部と相補的な領域と、第2セクションの少なくとも一部と相補的な領域と、を有する点において共通する。
(10)引用発明の「第3の部分」は、スリーブ258が嵌合されることにより、第3の部分の円筒状の孔とスリーブ258との中心合わせをするものであるから、本願発明の「センタリング領域(220)」に相当する。また、引用発明の「第4の部分」は、駆動部157が嵌合されることにより、溝が形成され、シャフト14を磁極部材22に固定するものであるから、本願発明の「クランプ領域(225)」に相当する。すると、引用発明の「前記コア部36aは、- 前記駆動部257及びスリーブ258の領域の前記スリーブ258に嵌合する第3の部分と、- 前記駆動部157の領域の前記駆動部157に嵌合する第4の部分と、を有」するという事項は、本願発明の「前記後方マグネットホイール(205)は、- 前記第2セクション(115)の少なくとも一部と相補的なセンタリング領域(220)と、- 前記第3セクション(120)の少なくとも一部と相補的なクランプ領域(225)と、を有」するという事項に相当する。
(11)引用発明の「前記駆動部257及びスリーブ258の領域の軸方向の長さは、前記コア部36bの前記第2の部分の軸方向の長さと前記コア部36aの前記第3の部分の軸方向の長さとの和に等しい」という事項と、本願発明の「前記第2セクションの軸方向に沿った長さは、前記前方マグネットホイールの前記センタリング領域の軸方向に沿った長さ(L3)と前記後方マグネットホイールの前記センタリング領域の軸方向に沿った長さ(L2)との和に等しい」という事項とは、第2セクションの軸方向に沿った長さは、前方マグネットホイールの第2セクションと相補的な領域の軸方向に沿った長さと後方マグネットホイールのセンタリング領域の軸方向に沿った長さとの和に等しいという点において共通する。
(12)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「前方マグネットホイールと、後方マグネットホイールと、シャフトと、を備えた自動車用のオルタネータであって、前記シャフトは、軸方向に割り振られた第1セクション、第2セクション、第3セクション及び第4セクションを有しているオルタネータにおいて、
- 前記第1セクション、前記第2セクション、前記第3セクション及び前記第4セクションは、軸方向にこの順で互いに隣接しており、
- 前記第1セクションは、前記前方マグネットホイールの前方側の部分と対応する部分を有し、
- 前記第2セクションは、前記前方マグネットホイールの後方側の部分と対応する部分を有するともに、前記後方マグネットホイールのセンタリングを可能とするように構成され、
- 前記第3セクションは、前記シャフトと前記後方マグネットホイールとの間の回転方向における保持を確保するように構成された刻みを有し、
- 前記第4セクションは、前記シャフトと前記後方マグネットホイールとの間の軸方向保持を確保するように構成されたカラーを有し、且つ
前記第1セクションの直径(D1)、前記第2セクションの直径(D2)、前記第3セクションの直径(D3)及び前記第4セクションの直径(D4)は、D1<D2<D3<D4の式に従い、
前記前方マグネットホイールは、
- 前記第1セクションの少なくとも一部と相補的な領域と、
- 前記第2セクションの少なくとも一部と相補的な領域と、を有し、
前記後方マグネットホイールは、
- 前記第2セクションの少なくとも一部と相補的なセンタリング領域と、
- 前記第3セクションの少なくとも一部と相補的なクランプ領域と、を有し、
前記第2セクションの軸方向に沿った長さは、前記前方マグネットホイールの前記第2セクションと相補的な領域の軸方向に沿った長さと前記後方マグネットホイールの前記センタリング領域の軸方向に沿った長さとの和に等しい、
オルタネータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明は、第1セクション(110)が「前記シャフト(100)と前記前方マグネットホイール(230)との間の回転方向における保持を確保するように構成された刻み(130)」を有し、第2セクション(115)が「前記前方及び後方マグネットホイール(230、205)」のセンタリングを可能とするように構成され、前方マグネットホイール(230)は、第1セクション(110)の少なくとも一部と相補的な「クランプ領域(210)」と、第2セクション(115)の少なくとも一部と相補的な「センタリング領域(215)」とを有し、第2セクションの軸方向に沿った長さは、前方マグネットホイールの「センタリング領域」の軸方向に沿った長さ(L3)と後方マグネットホイールのセンタリング領域の軸方向に沿った長さ(L2)との和に等しいのに対し、引用発明は、スリーブ358の領域(第1セクション)が、前記のような刻みを有さず、駆動部257及びスリーブ258の領域(第2セクション)が、スリーブ258によりコア部36a(後方マグネットホイール)と中心合わせ(センタリング)をしているものの、コア部36b(前方マグネットホイール)と中心合わせ(センタリング)を可能とはしておらず、そのためコア部36b(前方マグネットホイール)の第1の部分がクランプ領域、第2の部分がセンタリング領域となっておらず、同様に「前記駆動部257及びスリーブ258の領域の軸方向の長さは、前記コア部36bの前記第2の部分の軸方向の長さと前記コア部36aの前記第3の部分の軸方向の長さとの和に等しい」ものの、第2の部分がセンタリング領域となっていない点。
2 判断
(1)相違点について
引用文献1の段落【0011】(前記第4 1(1)イ参照。)の記載及び引用文献2に記載された事項の解決しようとする課題(前記第4 2(2)ア参照。)を踏まえると、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、回転軸を偏心することなく取り付けることを課題としている点で共通しており、その課題を解決するための手段をみても、階段状の外径を備えた回転軸に刻みのある部分と刻みのない平滑な部分とを設け、平滑な部分を嵌合することにより、刻みのある部分の嵌合についても偏心が生じないようにしている点で作用機能が共通しているから、引用発明のシャフト14を偏心することなくコア部36b及びコア部36aに嵌合するための構成として、引用文献2に記載された事項の歯車と回転軸との取り付け構造(前記第4 2(2)イ参照。)と同様の構造を採用することは可能といえる。
さらに、引用発明は、シャフト14をコア部36b及びコア部36aに嵌合するものであるから、その嵌合による締結力をシャフト14の全体にわたりバランスよく向上させるという課題も当然に内在しているところ、引用文献2に記載された事項(前記第4 2(2)参照。)に触れた当業者であれば、引用文献2に記載された事項は、モータ出力軸3の基端側での相対回転を抑制し、締結力を高めるために、モータ出力軸3が、その先端部に第1の係合部2と、第1の係合部2の基端側に基軸部4と、基軸部4の基端側に第2の係合部6とを備えるようになっており、モータ・ピニオン1の先端側及び基端側の両端で、モータ出力軸3の第1の係合部2及び第2の係合部6と係合させることにより、モータ出力軸3を偏心することなく取り付けつつ、その締結力をモータ出力軸3の全体にわたってバランスよく高めていることを把握できるから、引用発明において、シャフト14とコア部36b及びコア部36aとの嵌合による締結力をシャフト14の全体にわたりバランスよく向上させることを動機付けとして、引用文献2に記載された事項の歯車と回転軸との取り付け構造と同様の構造の採用を試み得るものである。
そうすると、引用発明のシャフト14を偏心することなくコア部36b及びコア部36aに嵌合するための構成である、シャフト14のスリーブ358の領域、駆動部257及びスリーブ258の領域、駆動部157の領域の構成、並びにこれらが嵌合するコア部36b及びコア部36aの第1の部分、第2の部分、第3の部分、第4の部分の構成として、引用文献2に記載された事項の第1の係合部2、基軸部4、第2の係合部6の構成、及びこれらが圧入される第1の係合受入部11、基軸受入部13、第2の係合受入部14の構成と同様の構造を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであり、その際、引用文献2に記載された事項の歯車を回転軸に取り付けるときの作用(前記第4 2(2)ウ参照。)を踏まえて、前記採用を行うことにより、引用発明のシャフト14の先端側にあるスリーブ358の領域、及びこれに隣接する駆動部257及びスリーブ258の領域に、先端側から順に駆動部、及びこれより外径の大きいスリーブを設け、コア部36bの前方側の部分を前記駆動部に対応するクランプ領域とし、コア部36bの後方側の部分を、コア部36aの第3の部分と連続する、前記スリーブに対応するセンタリング領域とし、それにより、前記スリーブの軸方向に沿った長さを、コア部36bの後方側の部分(センタリング領域)の軸方向に沿った長さとコア部36aの第3の部分(センタリング領域)の軸方向に沿った長さとの和に等しくすることに格別の困難性はない。
したがって、引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用し、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、令和4年8月30日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)の「(3-2)特許法第29条に関する拒絶理由について」において、本願発明は、特徴(a)「前記第2セクション(115)は、前記前方及び後方マグネットホイール(230、205)のセンタリングを可能とするように構成されていること」を有しているため、前方及び後方マグネットホイールの各センタリング領域の長さが変更されても、前方及び後方マグネットホイールのセンタリング領域の和が変更されなければ、シャフトの設計を変更する必要がなく、引用文献1及び引用文献2には、この点が開示されていない旨を主張している。
しかしながら、この出願の明細書には、そのような作用効果の記載はないところ、前方及び後方マグネットホイールのセンタリング領域の軸方向の長さの和を変更せずに、前方及び後方マグネットホイールの各センタリング領域の長さを変更するという設計変更が、どのよう場面で必要になるのかが、そもそも明らかでなく、請求人の主張するシャフトの設計を変更せずに前方及び後方マグネットホイールの各センタリング領域の長さを変更できるという事項は顕著な作用効果であるとはいえない。
また、引用発明の「前記駆動部257及びスリーブ258の領域は、前記コア部36bの第2の部分に溝を形成し、前記シャフト14を回転可能に前記磁極部材20に固定する、刻み付けしたセレーション状の凹凸部を有する駆動部257と、前記コア部36aの第3の部分の円筒状の孔と中心合わせをするスリーブ258とを有」するという事項においても、駆動部257やスリーブ258の機能を阻害しない範囲で、コア部36bの第2の部分の軸方向の長さと駆動部257の軸方向の長さとを厳密に一致させる必要はなく、同様に、コア部36aの第3の部分の軸方向の長さとスリーブ258の軸方向の長さとを厳密に一致させる必要はないと解され、コア部36bの第2の部分の軸方向の長さと、コア部36aの第3の部分の軸方向の長さとの和が変更されなければ、シャフト14の設計を変更せずに、コア部36bの第2の部分の軸方向の長さや、コア部36aの第3の部分の軸方向の長さを調整することは可能といえる。すると、前記(1)に示したように、引用発明のシャフト14を偏心することなくコア部36b及びコア部36aに嵌合するための構成として、引用文献2に記載された事項と同様の構造を採用すれば、請求人の主張するシャフトの設計を変更せずに前方及び後方マグネットホイールの各センタリング領域の長さを変更できるという事項と同様の作用効果が得られることは明らかであるから、請求人の主張する前記の事項は、本願発明特有の作用効果であるとはいえない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
イ 請求人は、意見書の「(3-2)特許法第29条に関する拒絶理由について」において、引用文献2は、樹脂製の歯車を用いた、例えば、プリンタのキャリッジ駆動用の歯車装置に関するものであり、自動車用のオルタネータとは全く異なる技術分野に属していること、引用文献2の歯車装置は、モータ出力軸3に単一のピニオン1が取り付けられているだけであり、1つの出力軸に2つのピニオンが取り付けられた歯車装置は、開示も示唆もされていないことを主張している。
しかしながら、引用文献2に記載された事項は、例として、プリンタのキャリッジ駆動用の歯車装置が示されているものの、プリンタのキャリッジ駆動用に限定されない、歯車と回転軸との取り付け構造についてのものであり、オルタネータ等の回転電機の技術分野における当業者であれば、回転電機の回転軸を偏心することなく取り付けるために、当然に考慮する技術分野のものである。
そして、引用文献2に記載された事項は、樹脂製の歯車を用いた歯車装置についてのものであり、かつ、モータ出力軸に単一のピニオンを取り付けるものであるが、歯車を回転軸に取り付けるときの作用(前記第4 2(2)ウ参照。)を踏まえれば、樹脂製の歯車への取り付けにとどまらず、また、回転軸を単一の対象に取り付けるか、2つの対象を貫通して取り付けるかによらず、回転軸を偏心することなく取り付けるための技術として、広く応用可能なものであることが把握できる。
すると、引用文献2に記載された事項が、樹脂製の歯車を用いた、例えば、プリンタのキャリッジ駆動用の歯車装置に関するものであり、モータ出力軸3に単一のピニオン1を取り付けるものであるとしても、そのことをもって、引用発明のシャフト14を偏心することなくコア部36b及びコア部36aに嵌合するための構成として、引用文献2に記載された事項と同様の構造を採用することが妨げられるものではない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014720