特許拒絶査定不服審判
2024-010988
疾患の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法
- 審判番号
- 2024-010988
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-530225
- 請求日
- 2024年07月03日
- 審決日
- 2026年03月03日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】董福田
- 【請求人代理人】弁理士法人ITOH
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 佳代子
- 審判官 山村 祥子
- 審判官 福山 則明
- 分類
- P18 .536-Z (A61K) / P18 .537-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-530225「疾患の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日国際公開、WO2020/108444、令和 4年 1月31日国内公表、特表2022-511445〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年11月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年11月28日、2019年8月25日 いずれも(CN)中国)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、次のとおりである。
令和3年 7月28日 手続補正書の提出
令和5年 8月25日付け 拒絶理由通知書
同年12月 1日 意見書、手続補正書の提出
令和6年 2月28日付け 拒絶査定
同年 7月 3日 審判請求書の提出
第2 特許請求の範囲の記載
本願の請求項1~6に係る発明は、令和5年12月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたものであって、このうち独立請求項である請求項1、5及び6の記載は、次のとおりのものである。(以下、請求項1、5及び6に記載された発明を、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明5」及び「本願発明6」という。)
1「【請求項1】
物質に対応する安定構造を、前記物質に関連する疾患、又は前記物質に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とし、
前記物質に対応する安定構造は、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造であり、
前記疾患は、乳糖不耐症、強直性脊椎炎、頻尿、アレルギー性鼻炎を含み、
前記疾患が乳糖不耐症である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、乳糖及び乳糖含有物質の一種又は複数種を含み、
前記疾患が強直性脊椎炎である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の結合組織、牛の結合組織、羊の結合組織、及び霊長類生体の結合組織の一種又は複数種を含み、
前記疾患が頻尿である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の膀胱、牛の膀胱、羊の膀胱、及び霊長類生体の膀胱の一種又は複数種を含み、
前記疾患がアレルギー性鼻炎である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の肺臓、牛の肺臓、羊の肺臓、及び霊長類生体の肺臓の一種又は複数種を含む、ことを特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための物質を設計する方法。」
2「【請求項5】
治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、
生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと、及び
前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用することを含み、
前記生体は、豚、牛、羊、霊長類生体を含み、
前記疾患は、乳糖不耐症、強直性脊椎炎、頻尿、アレルギー性鼻炎を含み、
前記疾患が乳糖不耐症である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、乳糖及び乳糖含有物質の一種又は複数種を含み、
前記疾患が強直性脊椎炎である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の結合組織、牛の結合組織、羊の結合組織、及び霊長類生体の結合組織の一種又は複数種を含み、
前記疾患が頻尿である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の膀胱、牛の膀胱、羊の膀胱、及び霊長類生体の膀胱の一種又は複数種を含み、
前記疾患がアレルギー性鼻炎である場合、前記疾患に関する物質又は疾患を引き起こす物質は、豚の肺臓、牛の肺臓、羊の肺臓、及び霊長類生体の肺臓の一種又は複数種を含む、ことを特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法。」
3「【請求項6】
治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、
生体が前記疾患を発生することがなくなるまで、前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖すること、及び
前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用することを含み、
前記生体は、豚、牛、羊、霊長類生体を含み、
前記物質に対応する安定構造は、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造であり、
前記疾患は、乳糖不耐症、強直性脊椎炎、頻尿、アレルギー性鼻炎を含み、
前記疾患が乳糖不耐症である場合、前記疾患に関する物質は、乳糖及び乳糖含有物質の一種又は複数種を含み、
前記疾患が強直性脊椎炎である場合、前記疾患に関する物質は、豚の結合組織、牛の結合組織、羊の結合組織、及び霊長類生体の結合組織の一種又は複数種を含み、
前記疾患が頻尿である場合、前記疾患に関する物質は、豚の膀胱、牛の膀胱、羊の膀胱、及び霊長類生体の膀胱の一種又は複数種を含み、
前記疾患がアレルギー性鼻炎である場合、前記疾患に関する物質は、豚の肺臓、牛の肺臓、羊の肺臓、及び霊長類生体の肺臓の一種又は複数種を含む、ことを特徴とする疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
令和6年2月28日付けの拒絶査定における本願発明1、5及び6に対する拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由1(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。
「【背景技術】
【0002】
本発明は、新しい医学モードである構造情報医学に基づいて、構造システムの観点から生命を了解し、具体的な構造の情報を生体に認識させて、生体構造システムの自己適応、自己組織化などの機能を利用することで、構造システムの動的バランスを回復して、疾患の治療及び/又は予防という目的を達成する。
・・・
【0006】
2.構造情報医学
(1)構造システムによる西洋医学と中医学の基礎理論の融合
宇宙大爆発後に正負の電荷が出現し、両者は相互作用して構造が単純な物質である水素を形成し、その後構造間の相互作用によってより複雑な構造を形成し、最終的には生体界全体を含む巨視的な物質を形成するため、宇宙万物はすべて構造に統一される。宇宙万物を構成する物質、エネルギー、情報も構造に統一される。まず、異なる構造は異なる物質を構成し、物質は具体的な構造であり、機能を実現する基礎である。生命システムの構造と機能とは互いに対応し、特定の具体的な構造があれば、特定の具体的な機能を有することになる。具体的な構造が変化すると、当然、対応するシステムの具体的な機能にも影響を及ぼす。次に、構造間で相互作用する結合エネルギーは、相対的に抽象的な構造であり、構造の安定性を示す。エネルギーは、構造同士の繋がりを作る内的な動力である。最後に、構造間の関係と秩序は情報である。情報は三者のうちの最も抽象的な構造であり、物質とエネルギーに対して結合及び制御作用を果たし、構造の内的規則と本質を反映する。例えば、生体の本質はその抽象的な構造である遺伝子により決定される。従って、構造は物質、エネルギー、及び情報の統合であり、即ち具体的な構造と抽象的な構造との統合である。
【0007】
生体は、一つの有機システムであり、本質的には抽象的な構造が支配的な有機構造システムである。構造システムは、いくつかの要素間の相対的に安定なつながりと、組織秩序と、その時空間的関係とで構成された、何らかの機能を有する有機構造全体である。いずれの要素そのものも同様に一つの構造システムであり、元のシステムを構成するサブシステムである。サブシステムは必ずそのサブシステムで構成される。生体の構造システムは、免疫システム、胃腸システムなどの異なる階層の構造サブシステムで構成される。一方、生体自身は、より大きな構造システムのサブシステムである。例えば、生体は、自然界というようなより大きな構造システムのサブシステムであり、自然界と絶え間なく物質、エネルギーや情報の交換を行うとともに、自らの存在や繁殖を保持する。
・・・
【0010】
構造システムは、システムとして、システムの全体性、開放性、安定性、自己組織化等の基本的特徴を有する。環境に対して、システムは、閉鎖性と開放性との統一であり、構造システム内の構造間の相互作用は、構造と環境との相互作用を前提とし、構造の外部環境を条件とする。同様に、構造システムの進化は、外部構造に依存する。外部構造の変化に伴う遺伝子発現の適切な改変や調整は、生体の環境適応、生存維持、自身健康維持のための基本的機能であり、このような機能を欠けると、一般的に淘汰される。人体自身の構造システムは、このような強力な自己健康機能を有する。構造情報医学は、具体的な構造に関する構造情報により、構造システムにおける遺伝子、分子、細胞、組織器官などの異なる階層を含むサブシステムからなる比較的に複雑で高度秩序のある、自己制御が可能な作用機構を動員や調整することで、生体の構造バランスを回復させ、疾患の予防又は治療を達成するものであり、具体的な構造と機能を研究対象とする西洋医学の理論だけでなく、生体自身を調節してバランスを回復させる中医学の理論をも融合したものである。
【0011】
(2)構造情報医学の解決する問題
生体は環境から離れて独立して存在することが不可能である。外的構造環境は、物質(即ち、構造)、エネルギー及び情報を介して生体の構造システムと相互作用する。各個体は、遺伝子と環境との共同作用によって得られる独特な構造システムである。構造情報医学は、生体内構造システム及びその外的構造環境との動的バランスを強調し、生命の過程は、このような動的バランスによって演繹される。構造情報医学は、生体自身の構造システムの動的バランスの回復、生体抵抗力の増加に加えて、共生や共進を重点とする。共生とは、生体が外的構造に対して一途に抵抗や防御することなく、外的構造情報を絶えず内部化し、生体自身の自己適応性、自己組織化などの機能によって、生体の構造システムと外的構造とのバランスを実現し、敵を友とし、ひいては自分のために使用することをいう。共進とは、生体の構造システムが、構造情報を通じて、生体における生体健康、生存及び繁殖に有利な他の構造特性を取得することをいう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術の上記欠点に対して、疾患の治療及び/又は予防のための物質を設計する方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、該方法に従って設計された物質を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、該物質の製造方法及び使用を提供することである。
・・・
【0024】
(2)本発明の特徴
本発明は、構築された構造情報医学の理論体系に基づいて、物質に対応する安定構造を生体の構造システムに作用させ、生体自身の構造システムの自己適応、自己組織化等の能力により、その遺伝子や遺伝子発現を制御することで、前記物質に関連する疾患を治療する。
【0025】
そこで、本発明は、疾患の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法を提供する。具体的には、以下の通りである。
【0026】
本発明は、物質に対応する安定構造を、該物質に関連する疾患の治療及び/又は予防のための物質とし、前記物質に対応する安定構造とは、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造である、疾患の治療及び/又は予防のための物質を設計する方法である。
【0027】
好ましくは、前記物質に関連する疾患は、前記物質中のある物質に起因する疾患及び/又はある物質の変化に起因する疾患を含む。
【0028】
本発明は、前記の方法に従って設計された疾患の治療及び/又は予防のための物質である。
【0029】
本発明は、前記物質又は前記物質を含む物質に対応する安定構造が高温炭化法により製造された、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質の製造方法である。」
【0030】
本発明は、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質の医薬品、健康食品、食品、食品添加剤の製造における使用である。
【0031】
健康の本質は構造システムの動的バランスであり、構造システムのバランス失調は疾患の根元である。生体構造システム内部のバランス失調及び生体構造システムと外部構造との間の構造バランス失調を含む生体構造システムのバランス失調を治療又は予防するために、本願は、物質に対応する安定構造の構造情報を生体構造システムに認識させ、生体構造システムの自己適応、自己組織化などの機能を利用して、遺伝子発現のような抽象的な構造を制御して、前記物質と相互作用する構造の合成又は分泌を生成又は調節して、当該物質に関連する疾患の治療又は予防を達成することを開示する。
・・・
【0033】
上記の技術案から分かるように、本発明に開示の、物質で疾患を治療又は防御するメカニズム、即ち当該物質に対応する安定構造で疾患を治療するメカニズムは、主に、外部から安定構造システムの構造情報を導入することである。物質は高温炭化によりそれに対応の安定構造が得られ、活性を有する有機物が既に失活され、生体に対して無害となり、アレルギーや不耐等の不良反応が生じず、そうすると、量的変化から質的変化となる閾値を達成するように生体に対して十分な外部構造情報のストレスをかけることができる。そこで、本発明に開示されるのは、生体の物質に対する吸収及び代謝ではなく、物質によって生体構造システムのバランス失調に直接介入することではなく、主に以下のメカニズムによって前記物質に関連する疾患の治療という目的を達成することである。即ち、生体は、前記物質に対応する安定構造を認識してから生体の自己適応、自己組織化の機能を利用して、自身の能力により生体構造システムのバランスを回復したり、前記物質構造とのバランスを構築したりするとともに、生体の排泄により、前記治療用物質(つまり、前記物質に対応する安定構造)を体外に排出する。
・・・
【0038】
本発明は、乳糖又は乳糖含有物質に対応する安定構造を、乳糖不耐症の治療及び/又は予防のための物質とし、前記物質に対応する安定構造とは、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造である、乳糖不耐の治療及び/又は予防ための物質を設計する方法である。
【0039】
本発明は、前記の前記方法に従って設計された乳糖不耐症の治療及び/又は予防のための物質である。
【0040】
本発明は、前記乳糖又は乳糖含有物質に対応する安定構造が高温炭化法により製造された、前記の乳糖不耐症の治療及び/又は予防のための物質の製造方法である。
【0041】
前記乳糖含有物質は、乳糖を含有する粉乳、牛乳等を含む。
【0042】
本発明は、前記の乳糖不耐症の治療及び/又は予防のための物質の医薬品、健康食品、食品、食品添加剤の製造における使用である。
【0043】
生体構造システムのバランス失調は、生体構造システムとそれ自体以外の構造とのバランス失調を含む。本発明では、生体構造システム自体を「正」といい、生体構造システムのバランス失調を引き起こす外的構造を「外邪」という。「外邪」とは、生体に対していうものであり、疾患を引き起こす細菌、ウイルスなどの健康な生体に有害な物質を含み、さらに、健康な生体に無害であるが、ある生体に対して接触しないと疾患を発症させず接触すると発症させる物質をも含む。例えば、ある物質は、健康な生体に無害ひいては有益であり、つまり、当該物質の構造と生体の構造との間でバランスが取れている。しかし、生体の構造バランスが崩れると、前述のようなある物質と生体の構造とのバランスも崩れることになる。また、様々なバランス失調が原因で、上記のある物質に対するアレルギー、不耐(具体的に牛乳アレルギーや牛乳不耐)などの様々な疾患を引き起こすことになる。生体構造システムが有する自己適応、自己組織化による構造安定の保持機能により、外部構造の作用下で、前述外部構造に対する抑制性、促進性などの相互作用を示す構造を生成し、それにより前記生体構造システムと前記外部構造とのバランスを構築する。即ち、「外邪」によって「正」を扶助する。
【0044】
本発明は、病変物質に対応する安定構造を、前記病変物質と同一又は類似の病変物質に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とし、前記物質に対応する安定構造とは、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造である、疾患の治療及び/又は予防のための物質を設計する方法である。
・・・
【0052】
生体構造システムにおける、内部がバランス失調した構造に対応するバランス失調していないバランス構造について、各構造はそれと相互作用する構造が存在するので、本発明では、前記バランス構造を「正」とも称する。前記バランス失調した構造に対応する同一又は類似のバランス失調していないバランス構造に対応する安定構造を外部構造として生体構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、前記外部構造における各構造の構造情報に基づいて、それと相互作用する構造の遺伝子発現を正常レベルとなるように制御するため、前記バランス失調した構造は自然にバランスを回復する。例えば、豚の膀胱に対応する安定構造でヒトの膀胱の病変(例えば頻尿)を治療する。本発明には、無病変物質に対応する安定構造を、前記無病変物質と同一又は類似の物質の病変に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とすることが開示されている。即ち、「正」によって「正」を扶助する。
・・・
【0061】
(1)生体に鼻炎を生じさせる物質に対応する安定構造
生体構造システムのバランス失調は、生体構造システムとそれ自体以外の構造とのバランス失調を含む。本発明では、生体構造システム自体を「正」といい、生体構造システムのバランス失調を引き起こす外的構造を「外邪」という。生体に鼻炎を引き起こす物質は、「外邪」であり、生体構造システムに作用すると、アレルギー性鼻炎症状のような構造バランス失調を生体に生成させてしまう。その本質は、アレルギー性鼻炎を発生する生体の構造システムと「外邪」の構造との間に動的バランスが形成されていないことである。本発明に開示されるように、「外邪」に対応する安定構造を、外部構造として生体の構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化及び自己安定などの機能によって、外部構造における構造情報に応じてそれと相互作用する構造の遺伝子の発現を制御することで、外部構造とのバランスを達成し、前記生体構造システムと前記「外邪」構造との間のバランスを構築する。すなわち、「外邪」によって「正」を扶助する。
【0062】
(2)生体自身の鼻炎に関連する物質に対応する安定構造
生体構造システムのバランス失調は、生体構造システム内部構造のバランス失調、即ち内部構造の病変(大抵の場合、構造相互作用のバランス失調である。)を含む。例えば、生体構造システムのある構造については、それに対して制約作用を果たす構造の遺伝子の発現不足によっても、それに対して促進作用を果たす構造の遺伝子の発現過剰によっても、構造間のバランスを崩壊させる。本発明では、生体構造システムにおけるバランス失調した構造を「内邪」と称する。鼻炎は肺の構造のバランス失調に関連する。即ち、肺において鼻炎を引き起こすバランス失調した構造は「内邪」であり、生体自身の鼻炎に関連する物質である。「内邪」に対応する安定構造を、外部構造として生体の構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、外部構造における構造情報に応じてそれと相互作用する構造の遺伝子の発現を制御し、外部構造とのバランスを達成することにより、生体構造システムにおける内部がバランス失調した構造をバランス回復させ、疾患を治療する。即ち、「内邪」によって「正」を扶助する。
【0063】
生体構造システムにおける、内部がバランス失調した構造に対応するバランス失調していないバランス構造について、各構造はそれと相互作用する構造が存在するので、本発明では、前記バランス構造を「正」とも称する。鼻炎は肺の構造のバランス失調に関連し、肺においてバランス失調した構造は「内邪」である。鼻炎を生じていない生体の健康の肺は「正」であり、それに対応する安定構造を外部構造として生体構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、前記外部構造における各構造の構造情報に基づいて、それと相互作用する構造の遺伝子発現を正常レベルとなるように制御するため、前記生体構造システムのバランス失調した構造は自然にバランスを回復する。即ち、「正」によって「正」を扶助する。
【0064】
(3)鼻炎の発生を抑制する構造を含む物質に対応する安定構造
疾患を引き起こしうる物質がある生体に疾患を引き起こさせない場合、前記ある生体の構造システムと前記疾患を引き起こしうる物質の構造とが相互作用したときにバランスを達成していると言える。即ち、前記ある生体の前記疾患に関連する構造の中に、前記疾患を引き起こしうる物質構造と相互作用して前記生体に前記疾患を発生させない構造が存在している。そして、これらの構造は、前記生体構造システムにおいて孤立するものではなく、それと相互作用する構造も存在するので、バランスが形成される。ある物質は、ヒトに普遍的なアレルギー性鼻炎を生じさせるが、豚、牛、羊等の生体にアレルギー性鼻炎を生じさせない。それでは、鼻炎を発生しない生体の肺に対応する安定構造を外部構造として、前記疾患を治療する必要がある生体の構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、前記外部構造における各構造の構造情報に基づいて、それと相互作用する構造の遺伝子や遺伝子発現を制御することで、前記生体構造システムと前記疾患を引き起こしうる物質の構造との間にバランスを達成することができる。それも、「正」によって「正」を扶助すると言える。
【0065】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの物質を含む物質に対応する安定構造
また、鼻炎に関連する物質が生体の肺に由来するものであることが好ましい。
【0066】
本発明は、前記方法に従って設計された鼻炎の治療及び/又は予防のための物質である。
【0067】
本発明は、前記物質に対応する安定構造が高温炭化法により製造された、前記の鼻炎の治療及び/又は予防のための物質の製造方法である。
【0068】
鼻炎に関連する物質を含む物質を用いて、高温炭化法で鼻炎の治療及び/又は予防のための物質を製造する。これは、このような物質がより取得されやすく、問題を簡単化させるからである。外因によるアレルギー性鼻炎のアレルゲンについて、アレルゲンを含む物質を直接使用すればよく、特定のアレルゲンを分離する必要がなく、生体に過敏を引き起こす具体的なメカニズムを検討する必要がない。例えば、花粉によるアレルギー性鼻炎について、花粉中のアレルギーを引き起こす物質を具体的に検討や分離する必要がなく、花粉を直接的に高温炭化して脱感物質を製造し、アレルギー性鼻炎の治療及び/又は予防に用いる。即ち、「外邪」によって「正」を扶助する。同様の原理から、生体自身の鼻炎に関連する物質である肺について、生体の肺を直接使用し、好ましくは豚の肺、牛の肺、羊の肺及び霊長類生物の肺を使用し、高温炭化により鼻炎を治療及び/又は予防する物質を製造することができる。即ち、「正」によって「正」を扶助する。
【0069】
本発明は、前記の鼻炎の治療及び/又は予防のための物質の医薬品、健康食品、食品、食品添加剤の製造における使用である。
・・・
【0071】
本発明は、治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養することを含む、疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法である。
【0072】
好ましくは、前記治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養することは、
前記生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で生体の耐性を培養すること、及び
前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用すること、を含む。
【0073】
前記生体は、豚、牛、羊、霊長類生体等が好ましい。
【0074】
好ましくは、前記治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養することは、
前記生体が疾患を発生することがなくなるまで、該疾患に関連する物質に対応する安定構造で生体を培養すること、及び
前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用すること、を含む。
【0075】
前記生体は、豚、牛、羊、霊長類生体等が好ましい。
【0076】
前記物質に対応する安定構造とは、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造である。
【0077】
本発明において、前記生体は、同一又は類似の種のものを用いることができ、豚、牛、羊、霊長類動物が好ましい。
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0086】
実施例1:乳糖不耐の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法
生体の乳糖不耐は、生体の構造システムと乳糖の構造とのバランス失調である。乳糖に対応する安定構造を外部構造として乳糖不耐の生体に作用すると、生体の構造システムは外部構造の作用下で、前記生体構造システムと乳糖構造との間のバランスを構築することができる。したがって、乳糖に対応する安定構造を乳糖不耐の治療及び/又は予防のための物質として使用することは、外物によって直接的に引き起こされる生体の疾患を治療及び/又は予防するための物質の設計方法及び製造方法の代表例である。
【0087】
前記物質に対応する安定構造は、前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造を特徴とする。したがって、乳糖不耐の治療又は予防のための物質の製造方法では、乳糖又は乳糖含有物質に対応する安定構造を高温炭化法により製造することができる。さらに、牛乳は単純な乳糖よりも入手しやすいため、乳糖含有乳粉に対応する安定構造を高温炭化法により製造した。
【0088】
実施例2:実施例1で製造した物質による乳糖不耐患者に対する臨床研究
本発明は、上記実施例1で製造した物質を用いて治療効果の検証を行った。具体的には、以下の通りである。
【0089】
1.臨床資料:乳糖不耐患者は、外来患者や入院患者の合計で38例(但し、男18例、女20例、年齢2~13歳)である。症状は、主に胃腸管の不快感(異なる程度の腹痛、便秘や下痢、腹部膨満、口臭等を含む)として表現される。
【0090】
2.診断基準:患者の病歴に基づき、食物不耐症をテストするための診断基準として二重盲検プラセボ対照による食物誘発試験を行って、乳糖不耐と診断した。
【0091】
3.治療方法:患者に対して、実施例1で製造した物質を3g/回、1回/日経口投与して、3日間連続的に治療した。
【0092】
4.治療効果の判定基準:臨床症状が解消され、便が成形し、鏡検が正常となる場合、治癒と見なされる。臨床症状がほぼ解消され、便が成分変化とともに回数が減少し、便の鏡検による赤血球又は白血球の発見が少量である場合、有効と見なされる。臨床症状が明らかに改善されずひいては悪化し、便が成分変化なし、水様便になる場合、無効と見なされる。
【0093】
合計有効率=治癒率+有効率
5.治療効果の結果:治療後、治癒者35例、有効者2例、無効者1例という結果が得られ、合計有効率が97.37%となった。そして、これらの患者は治療後に牛乳などの異なる乳製品を複数回摂入しても何ら症状が発生せず、同時に、治療効果の観察に、副作用及び薬物依存性が現れなかった。
【0094】
実施例3:強直性脊椎炎の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法
強直性脊椎炎は、仙腸関節及び脊柱付着点の炎症を主症状とする疾患であり、主に四肢の大関節並びに椎間板線維輪及びその近傍の結合組織の線維化と骨化、並びに関節の強直を病変の特徴とする慢性炎症性疾患である。よって、構造の観点から、結合組織に対応する安定構造を外部構造として強直性脊椎炎に罹患した生体に作用して、構造システムのバランスを回復する必要がある。したがって、強直性脊椎炎の治療及び/又は予防のための物質として結合組織に対応する安定構造を使用することは、無病変物質に対応する安定構造を、前記無病変物質と同一又は類似する物質の病変に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とする設計方法及び製造方法の代表例であり、即ち「正」によって「正」を扶助する。牛の結合組織は入手しやすいため、本実施例において牛の健康な結合組織を選択して高温炭化により強直性脊椎炎の治療又は予防のための物質を得た。
【0095】
実施例4:実施例3で製造した物質による強直性脊椎炎患者に対する臨床研究
1.臨床資料:本発明では、強直性脊椎炎患者は合計で54例であり、受診の順で治療群(28例)とコントロール群(26例)にランダムに分けられた。治療群は、男23例で女5例であり、年齢が31~52歳であり、平均発症歴が10.3年である。コントロール群は、男22例で女4例であり、年齢が33~51歳であり、平均発症歴が10.1年である。2つの群の患者の性別、年齢、病状等の臨床資料には、統計学的に差異が無く(P>0.05)、比較可能である。
【0096】
2.診断基準:(1)40歳の前に発生した原因不明の腰や脚の痛み/不快感。(2)潜行性発症。(3)発症歴>1週間。(4)朝のこわばり、安静時又は夜の痛みが感じられ、運動後に緩和される。(5)Patrickテスト(Fabereテストともいう)陽性であり、仙腸関節及び仙骨部に打診痛が陽性である。(6)仙腸関節は放射線写真に炎症性変化が現れる。(5)を基に(1)-(4)1つの臨床基準に合致すれば強直性脊髄炎と考えられる。(6)を基に1つの臨床基準に合致すれば強直性脊椎炎と診断される。
【0097】
3.治療方法:全ての患者を向けて食事や機能トレーニング指導を行った。治療群の患者に対して、実施例3で製造した物質を3g/回、1回/日経口投与して、7日間治療した。コントロール群の患者に対して、サラゾスルファピリジン腸溶錠を3錠/回、2回/日経口投与して、1ヶ月間治療した。
【0098】
4.治療効果の判定基準:合計有効率=奏効率+有効率。治療後に患者の臨床症状及び徴候が治療前より明らかに軽減された場合、奏効と見なされる。治療後に患者の臨床症状及び徴候がともに改善されているが、奏効という基準に達していない場合、有効と見なされる。治療後に患者の臨床症状も徴候も改善されずひいては悪化する場合、無効と見なされる。
【0099】
5.治療結果:2つの群に対して、治療してから1ヶ月後に治療効果の観察を行った。治療群の28例には、奏効が24例で、有効が3例で、無効が1例で、合計有効率が96.42%であった。コントロール群の26例には、奏効が4で、有効が10例で、無効が12例で、合計有効率が53.85%であった。治療群とコントロール群の合計有効率を比較すると、統計学的に差異があった(P<0.001)。即ち、表1に示すように、治療群の治療効果はコントロール群よりも顕著に優れている。治療群の患者は、治療過程において、薬物の不良反応及び薬物依存性を示さなかった。
【0100】
【表1】
[図:0001437769000001.jpg]
実施例5:頻尿の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法
膀胱に炎症、損傷又は病変が発生した場合、弾性が悪くなり、貯留尿量が減少し、神経感覚閾値が低下し、尿意中枢が興奮状態となって、頻尿が発生してしまう。膀胱の構造のバランス失調により、機能のバランス失調(頻尿)を引き起こす。本発明では、構造がバランスしている膀胱を「正」と言い、各構造に対して、それと相互作用する構造が存在する。外部構造として「正」を使用して生体構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、前記外部構造における各構造の構造情報に基づいて、それと相互作用する構造の遺伝子発現を正常レベルとなるように制御するため、前記バランス失調した構造は自然にバランスを回復する。そこで、豚、牛、羊等の動物の膀胱に対応する安定構造でヒトの頻尿を治療することは、無病変物質に対応する安定構造を、前記無病変物質と同一又は類似する物質の病変に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とする設計方法及び製造方法の代表例であり、即ち「正」によって「正」を扶助する。本実施例では、豚の健康の膀胱を選択して、高温炭化法により頻尿の治療又は予防のための物質を得た。
【0101】
実施例6:実施例5で調製した物質による頻尿患者に対する臨床研究
1.臨床資料:頻尿患者は、外来患者や入院患者の合計で33例である。自身の治療前後の対照によって研究した。
【0102】
2.診断基準:一般的に、昼間で4~6回排尿し、夜間で0~2回排尿するが、回数がそれより明らかに多い場合に頻尿と称される。但し、非膀胱病変による頻尿患者が排除される。
【0103】
3.治療方法:患者に対して、実施例5で製造した頻尿治療物質を3g/回、1回/日経口投与し、14日間連続的に治療した。
【0104】
4.治療効果の判定基準:排尿回数が正常に回復する場合、治癒と見なされる。排尿回数が著しく減少する場合、有効と見なされる。排尿回数が著しく減少せずひいては増加する場合、無効と見なされる。
【0105】
5.治療結果:治療後に治療効果の観察を行った。合計33例では、奏効が15例で、有効が16例で、無効が2例であり、合計有効率が93.94%であった。
【0106】
実施例7:アレルギー性鼻炎の治療及び/又は予防のための物質、並びにその設計方法及び製造方法
鼻炎は、鼻腔炎症性疾患であり、ウイルス、細菌、アレルゲン、様々な物理化学的因子及び何らかの全身性疾患に引き起こされる鼻腔粘膜の炎症である。アレルゲンに起因する鼻炎は、アレルギー性鼻炎とも呼ばれ、疾患の進展に伴い、鼻腔粘膜の充血、腫脹、滲み、増殖、萎縮又は壊死が進行して、慢性鼻炎に発展する可能性がある。したがって、西洋医学の視点から、鼻炎を引き起こすアレルゲンが疾患に関連する物質であるが、構造の観点から、生体の構造システムとアレルゲンの構造とが相互作用によってバランス失調してしまうことが根本的な原因である。中医学の視点から、「肺が鼻に開竅し」、肺は、口、鼻や皮毛を通じて自然界に連通して、外部からの冷風や特異気体の侵害を感じやすい。一方、春の時に外的風が多いので、頭、顔や肌を侵害しやすい。このときに肺の精気が衰えれば、肺の防御機能が故障し、(そうり)が疎になっている。風邪は主に口、鼻又は皮毛から侵入して、これによって脈絡不通となって、気血が阻害され、鼻づまりとなって潤されないことにより、発症してしまう。肺気が弱いと、風寒という外邪が侵入して、鼻詰まり、くしゃみや清澄な鼻水が出ることを引き起こしてしまう。風熱という邪は、口、鼻から侵入すると、鼻詰まりや黏稠な鼻水が出ることを引き起こしてしまう。従って、中医学の理論によれば、鼻炎の病因は肺にあり、構造の観点から、その根本的な原因は、生体の肺の構造システムの何らかの構造がバランス失調して、生体の構造システムとアレルゲンの構造との間に構造のバランス失調を招いてしまうことである。生体の構造システムのバランスは動的であり、外部の構造環境に関連する。例えば、ヒトにとって、ヨモギなどの物質はヒトに普遍的なアレルギー性鼻炎を引き起こさせやすい。つまり、肺の構造のバランス失調は相対的である。例えば、豚、牛、羊等の生体はヨモギに過敏性を示せず、アレルギー性鼻炎を生じない。つまり、豚、牛、羊の肺の構造には、ヨモギの構造と相互作用して生体にアレルギー性鼻炎を発生させない構造(即ち、鼻炎発生抑制構造)を含む。
【0107】
生体の肺部は、アレルギー性鼻炎に関連する物質を含み、且つ入手が容易であるため、本実施例では、豚の肺臓を選択して、取得した豚の肺臓を高温炭化してアレルギー性鼻炎の治療又は予防のための物質を製造した。
【0108】
実施例8:実施例7で製造した物質によるアレルギー性鼻炎に対する臨床適用試験
本発明は、前記実施例7で製造した物質を用いて治療効果の検証を行った。具体的には、以下の通りである。
【0109】
1.臨床資料:アレルギー性鼻炎患者は、外来患者や入院患者の合計で60例である。両群間の臨床資料に有意差がないように治療群30例とコントロール群30例にランダムに分けた。両群の年齢、性別、発症歴、合併症等について統計学的に処理したところ、有意差がなく(P>0.05)、比較可能である。
【0110】
2.診断基準:臨床症状として、くしゃみ、水のような鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ等の症状が2項以上(2項を含む)現れ、且つ一日当たり1時間以上継続的又は断続的に現れる。目のかゆみや結膜充血等の目の症状を伴うことがある。徴候として、淡い鼻粘膜、浮腫や水様の鼻腔分泌物がよく見られる。アレルゲン皮膚プリックテストに陽性を示す。
【0111】
3.治療方法:治療群の患者に対して、実施例7で製造したアレルギー性鼻炎治療用物質を3g/回、1回/日経口投与し、3日間連続的に治療した。コントロール群の患者に、ロラチジンを10mg/回、1回/日、30日間経口投与した。
【0112】
4.治療効果の判定基準:症状の徴候が60日間消失し再発しない場合、治癒と見なされる。症状の徴候が軽減され発症回数が減少する場合、有効と見なされる。有効基準に達していない場合、無効と見なされる。
【0113】
合計有効率=治癒率+有効率。
【0114】
5.治療効果の結果:表2には、治療群は、治療後に、治癒及び有効患者が合計で28例であり、合計有効率が93.33%である。コントロール群は、治療後に、合計有効率が66.67%である。治療群の合計有効率は、コントロール群よりも明らかに高い(P<0.05)。治療群の患者は、治療過程において薬物の不良反応及び薬物依存性を示せず、6ヶ月間のフォローアップ中に再発が現れなかったが、コントロール群の中に、不良反応が5例あって、且つ、休薬後にアレルゲンと接触した際に再びアレルギー症状が現れた。
【0115】
【表2】
[図:0001437769000002.jpg]
」
第5 本願出願時の技術常識
1 本願出願時の技術常識を示す文献
本願出願日前に発行された参考文献1(炭素 1970年 1970巻61号 p.60-68(以下「参考文献1」という。)は、本願出願時の有機物の炭化の分野における技術常識を示す文献であって、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。)。
(1)表題
「炭素の生成(炭化)」
(2)60頁右欄32行~61頁左欄3行
「炭素化の内容は,このように,水素その他の異種原子の離脱をともなう加熱重縮合反応の過程であるとみることができる。
有機物の種類が,前述したような理由で、まことに多種類にわたる。したがって,これらの化合物を出発物質として,最終的に黒鉛結晶といわれる構造に集約される途中の過程も,決して単一のものではなく,さまざまな筋道とさまざまな中間段階を経ることになる。温度別にみた変化の概観は図1のようになる。」
(3)61頁図1
「
[図:0001437769000003.jpg]
」
(4)61頁左欄12~25行
「4.炭素化を進める反応
有機物を加熱してゆくと,芳香環を生じ,次第にその環数が増加して,巨大な芳香族平面分子の集積である黒鉛結晶に成長してゆく。・・・
出発物質である有機物の種類が多いし,選択性の乏しい高温での変化であるから,具体的にどのような過程でこの変化が進行するかはきわめて複雑である。」
2 本願出願時の技術常識
前記1のとおり、参考文献1に、「有機物を加熱してゆくと,芳香環を生じ,次第にその環数が増加して,巨大な芳香族平面分子の集積である黒鉛結晶に成長してゆく」こと、「出発物質である有機物の種類が多いし,選択性の乏しい高温での変化であるから,具体的にどのような過程でこの変化が進行するかはきわめて複雑である」こと、及び、図1に、「温度領域からみた加熱変化の概観」として、出発物質である「有機物」は、200~300℃以上の温度領域において「環化及び芳香族化」が起こり、500~600℃以上の温度領域において「固相での重縮合,芳香族平面の成長」が起こり、1800~2000℃以上の温度領域において「三次元規則性の増加と結晶成長」が起こり、最終的に「黒鉛」になることが記載されていることを踏まえると、出発物質の種類の多い有機物が炭化する過程での変化はきわめて複雑であり、処理する温度領域によって、生成される炭化物の構造が変化し、500℃以上の温度領域においても炭化物の構造は変化することが、本願出願時の技術常識であった。
第6 当審の判断
1 特許法第36条第4項1号(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
本願発明1は、「疾患の治療及び/又は予防のための物質を設計する方法」であるところ、方法の発明における発明の実施とは、その方法の使用をする行為をいうから、本願発明1について実施可能要件を充足するといえるためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができることが必要である。
そこで、この点について以下に検討する。
(2)判断
ア 本願発明1を実施することができるといえるためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、本願発明1において特定される「物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造」である「物質に対応する安定構造」を用いて、「疾患の治療及び/又は予防のための物質」として設計できることが必要である。
イ 一方、前記第4の記載事項に基づけば、発明の詳細な説明には本願発明1に関する理論的な説明として、以下の記載がある。
(ア)本願発明1の技術思想である「構造情報医学」について、「宇宙万物を構成する物質、エネルギー、情報」、すなわち、「具体的な構造であり、機能を実現する基礎であ」る「物質」、「相対的に抽象的な構造であり、」「構造間で相互作用する結合エネルギー」及び、「最も抽象的な構造であり、」「構造間の関係と秩序」である「情報」は、「すべて構造に統一される」ところ、「生命システムの構造と機能とは互いに対応し、特定の具体的な構造があれば、特定の具体的な機能を有することにな」り、「具体的な構造が変化すると、当然、対応するシステムの具体的な機能にも影響を及ぼ」すこと(【0006】)、「生体は、一つの有機システムであり、本質的には抽象的な構造が支配的な有機構造システムであ」り(【0007】)、「構造システムの進化は、外部構造に依存」し、「外部構造の変化に伴う遺伝子発現の適切な改変や調整は、生体の環境適応、生存維持、自身健康維持のための基本的機能であり」、「人体自身の構造システムは、このような強力な自己健康機能を有する」ところ、「構造情報医学は、具体的な構造に関する構造情報により、構造システムにおける遺伝子、分子、細胞、組織器官などの異なる階層を含むサブシステムからなる比較的に複雑で高度秩序のある、自己制御が可能な作用機構を動員や調整することで、生体の構造バランスを回復させ、疾患の予防又は治療を達成するものであ」る(【0010】)こと、が説明されている。
(イ)このような技術思想のもと、本願発明1は、「構造情報医学の理論体系に基づいて、物質に対応する安定構造を生体の構造システムに作用させ、生体自身の構造システムの自己適応、自己組織化等の能力により、その遺伝子や遺伝子発現を制御することで、前記物質に関連する疾患を治療する」(【0024】)ものであって、本願発明1における「疾患の治療及び/又は予防のための物質」とされる「安定構造」は、「前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造であ」り(【0026】)、「高温炭化法により製造された」(【0029】)ものであることが記載されている。
(ウ)そして、本願発明1で特定された疾患に関し、発明の詳細な説明には、「乳糖不耐症の治療及び/又は予防」(【0039】)について、「ある物質は、健康な生体に無害ひいては有益であり、つまり、当該物質の構造と生体の構造との間でバランスが取れている」が、「生体の構造バランスが崩れると、前述のようなある物質と生体の構造とのバランスも崩れることにな」り、「様々なバランス失調が原因で、上記のある物質に対するアレルギー、不耐(具体的に牛乳アレルギーや牛乳不耐)などの様々な疾患を引き起こすことにな」るところ、「生体構造システムが有する自己適応、自己組織化による構造安定の保持機能により、外部構造の作用下で、前述外部構造に対する抑制性、促進性などの相互作用を示す構造を生成し、それにより前記生体構造システムと前記外部構造とのバランスを構築」(【0043】)することから、「病変物質に対応する安定構造を、前記病変物質と同一又は類似の病変物質に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質と」すること(【0044】)が記載されている。
また、頻尿及び鼻炎については、「生体構造システムにおける、内部がバランス失調した構造に対応するバランス失調していないバランス構造について、各構造はそれと相互作用する構造が存在」し、「前記バランス失調した構造に対応する同一又は類似のバランス失調していないバランス構造に対応する安定構造を外部構造として生体構造システムに作用させると、前記生体構造システムは、前記生体構造システムに有する自己適応、自己組織化、自己安定などの機能によって、前記外部構造における各構造の構造情報に基づいて、それと相互作用する構造の遺伝子発現を正常レベルとなるように制御するため、前記バランス失調した構造は自然にバランスを回復」することから、「無病変物質に対応する安定構造を、前記無病変物質と同一又は類似の物質の病変に起因する疾患の治療及び/又は予防のための物質とすること」(【0052】)、「例えば、豚の膀胱に対応する安定構造でヒトの膀胱の病変(例えば頻尿)を治療する」(【0052】)ことや、「鼻炎を発生しない生体の肺に対応する安定構造を外部構造として、前記疾患を治療する必要がある生体の構造システムに作用させる」(【0064】)こと、が記載されている。
ウ さらに、本願発明1の技術思想を具現化した実施例として、以下の記載がある。
実施例1、2では「乳糖含有乳粉に対応する安定構造を高温炭化法により製造し」、「乳糖不耐と診断した」「患者に対して」「経口投与した」ところ、「合計有効率が97.37%となった」(【0086】~【0093】)。
実施例3、4では、「牛の健康な結合組織を選択して高温炭化」した「物質を得」て、「強直性脊椎炎」の「患者に対して」、「経口投与した」ところ、「合計有効率が96.42%であった」(【0094】~【0100】)。
実施例5、6では、「豚の健康の膀胱を選択して、高温炭化法により」得た「物質」を「頻尿」の「患者に対して」、「経口投与し」たところ、「合計有効率が93.94%であった」(【0100】~【0105】)。
実施例7、8では、「豚の肺臓を選択して、取得した豚の肺臓を高温炭化して」「製造した」「物質」を「アレルギー性鼻炎患者」に「経口投与し」たところ、「合計有効率が93.33%である」(【0106】~【0115】)。
そして、上記各実施例で経口投与された「高温炭化」で得られた「物質」が、前記イで指摘した本願発明1における「500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造」である「安定構造」であることは理解できるものの、「高温炭化」について、具体的な温度などの反応条件について、各実施例には記載がない。
エ ここで、上記イ(ア)及び(イ)で説示した「構造情報医学」における、「生命システムの構造と機能とは互いに対応し、特定の具体的な構造があれば、特定の具体的な機能を有することにな」り、「具体的な構造が変化すると、当然、対応するシステムの具体的な機能にも影響を及ぼす」(【0006】)、及び「安定構造を生体の構造システムに作用させ、生体自身の構造システムの自己適応、自己組織化等の能力により、その遺伝子や遺伝子発現を制御することで、前記物質に関連する疾患を治療する」(【0024】)との理論に従えば、実施例において使用された「物質」は、その「特定の具体的な構造」により治療効果という「特定の具体的な機能」を発揮したものと理解されるところ、同じ原料から高温炭化した物質を製造した場合であっても、その製造条件により、物質の「具体的な構造」が「変化」すれば、疾患の治療効果に影響が生じるものといえる。
オ 他方、有機物の炭化について、前記第5の2のとおり、出発物質の種類の多い有機物が炭化する過程での変化はきわめて複雑であり、処理する温度領域によって生成される炭化物の構造が変化し、500℃以上の温度領域においても炭化物の構造は変化するという本願出願時の技術常識を踏まえると、前記ウの実施例で使用された同じ原料を用いて「500℃以上の高温条件下」の「高温炭化」した場合であっても、炭化温度などの反応条件の違いで、構造の異なる様々な物質が生じるものといえる。
カ しかしながら、前記ウで説示したように、発明の詳細な説明において、各実施例において治療効果を示した「物質」の具体的な「高温炭化」の反応条件は記載されておらず、このような治療効果を有する「物質に対応する安定構造」を得るための反応条件が本願出願時の技術常識として知られていたという事情も見当たらない。
そうすると、上記イで説示した「病変物質」に対応する「乳糖含有乳粉」や、「無病変物質」に対応する「牛の健康な結合組織」、「豚の健康の膀胱」又は「豚の肺臓」に対し、どのような条件で「高温炭化」を行えば、上記エで説示した「特定の具体的な構造」を有する「病変物質に対応する安定構造」や、「無病変物質に対応する安定構造」が得られるのか、当業者は、発明の詳細な説明の記載から理解することができず、実施例で治療効果を発揮した「特定の具体的な構造」を有する「物質に対応する安定構造」を設計するためには、当業者に、500℃以上の様々な高温条件下で高温炭化を行うことで様々な「物質」を得て、当該「物質」が疾患の治療及び/又は予防のために使用することができるか否かを逐一確認するという、過度の試行錯誤を求めるものである。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年7月3日付けの審判請求書において、概ね次のように主張する。
実施例1には、乳糖不耐の治療又は予防のための物質の製造方法が記載されており、すなわち、500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質が、乳糖又は乳糖含有物質に対応する安定構造を高温炭化法により製造され、同様に、実施例3、5、7においても同じ記載がある。
具体的な炭化条件について、明細書の実施例及び請求項では、「前記物質が500℃以上の高温条件下で固体として存在する物質の構造である」がいずれも限定されており、すなわち、このような物質を含む限り、疾病の治療を実現でき、当業者は炭化条件を合理的に選択することができる。
しかし、前記(2)オで説示したように「500℃以上の高温条件下」の「高温炭化」においては、炭化温度などの反応条件の違いで、構造の異なる様々な物質が生じ得るものであって、前記(2)カで説示したとおり、実際に治療効果を発揮する「物質に対応する安定構造」を設計するためには、当業者に過度の試行錯誤を求めるものである。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
(4)結論
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明は、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願発明1を実施できる程度に、明確かつ十分に記載されているとはいえない。
2 特許法第36条第6項2号(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号に定める要件を充足するか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この判断手法に従って検討する。
(2)判断
ア 請求項5について
(ア)請求項5には、「生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと」が記載されている(前記第2の2)。
当該「生体の耐性を培養」という記載について、請求項のみからではその意味するところが明らかではなく、発明の詳細な説明を参照しても、上記「前記生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で生体の耐性を培養すること」(【0072】)といった記載しかなく、当該記載を明確に定義する記載は見当たらない。
そこで、本願出願時における技術常識を参照すると、「耐性」とは、「一般に、環境条件や化学物質などに対する抵抗性」(広辞苑第五版1606頁)を意味するものである一方で、「培養」とは、「微生物・動植物組織などを、栄養・温度などの外部条件を制御しながら、人工的に発育・増殖させること」(広辞苑第五版2117頁)を意味するものであることから、「生体の耐性を培養」という記載は、発育・増殖することが不可能な「抵抗性」という生体が有する性質を、人工的に発育・増殖させることを特定するという、技術的に意味が不明な記載となっている。
そうすると、請求項5の「生体の耐性を培養」という記載で特定される事項が明らかではない。
(イ)請求項5には、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと」を「含む」、「疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法」が記載されている(前記第2の2)。
ここで、請求項5の「生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと」の記載について、前記(ア)で説示したように、「生体の耐性を培養」という記載は明らかではないが、仮に、これが「生体を培養」するの誤記であると解した場合、請求項5には、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」であって、生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、「該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体」を「培養すること」を含む方法が記載されていることになる。
しかし、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質」と「該疾患を直接に引き起こす物質」は異なるものであり、また、「前記疾患の治療及び/又は予防のための物質」と「生体」も異なるものであるから、請求項5の記載の、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」と「該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体」を「培養」することは、互いに相矛盾する記載となっている。
この点について、発明の詳細な説明を参照しても、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」と、「生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと」との関係を説明する記載はない。
そうすると、請求項5の「該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと」という記載により、本願発明5の「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」がどのように特定されるのか、明らかではない。
(ウ)前記(ア)及び(イ)で説示したとおり、請求項5の記載で特定された本願発明5の方法が具体的に如何なるものであるかについて、当業者は理解し、特定することができず、請求項5の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確というべきである。
イ 請求項6について
(ア)請求項6には「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、生体が前記疾患を発生することがなくなるまで、前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖すること」が記載されている(前記第2の3)。
ここで、「培養」は「微生物・動植物組織などを、栄養・温度などの外部条件を制御しながら、人工的に発育・増殖させること」(広辞苑第五版2117頁)を意味し、一方、「養殖」は「魚介・海藻などを生簀や籠・縄などを使って人工的に飼養して繁殖させること」(広辞苑第五版2740頁)を意味するものであって、「物質を培養」することと「生体を養殖」することとは技術的に異なるものであるところ、請求項6の記載は、「物質を培養する方法」として「生体を養殖する」ことを特定するという、技術的に意味が不明な記載となっている。
(イ)さらに、請求項6には、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、生体が前記疾患を発生することがなくなるまで、前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖すること」にくわえて、「前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用することを含」むことが記載されている(前記第2の3)。
しかし、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質」と「前記疾患に関連する物質に対応する安定構造」とは異なるものであり、また、「生体又は前記生体の子孫の物質を培養する」ことと「生体を養殖すること」も異なることであるから、請求項6の、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質」と「生体又は前記生体の子孫の物質」「を培養する方法」は、互いに相矛盾する記載となっている。
この点について、発明の詳細な説明を参照しても、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」と「前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖すること」との関係を説明する記載は全くない。
そうすると、請求項6の「生体が前記疾患を発生することがなくなるまで、前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖する」という記載で、本願発明6の「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法」がどのように特定されるのか、明らかではない。
(ウ)前記(ア)及び(イ)で説示したとおり、請求項6の記載で特定された本願発明6の方法が具体的に如何なるものであるかについて、当業者は理解し、特定することができないので、請求項6の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというべきである。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「<2>理由3について」の「(10)」及び「(11)」において、「培養において、「疾患の治療及び/又は予防のための物質」は動物を飼育するために使用され」、「該飼育過程により「疾患の治療及び/又は予防のための物質」が培養され」ることを主張する。
しかし、本願明細書に動物の飼育に関する記載はなく、審判請求人の主張は本願明細書の記載に基づかない主張であって、採用できない。
(4)結論
以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の請求項5及び請求項6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)本願発明5について
請求項5には、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、該疾患を直接に引き起こす物質で前記生体の耐性を培養こと、及び 前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用することを含」む、「疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法。」(前記第2の2)が記載されている。
そして、本願発明5に関し、発明の詳細な説明には、前記第4の【0071】~【0077】のとおりの事項が記載されているが、当該記載は、本願発明5と同じ文章が記載されるに留まるものであって、請求項5に記載されている「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して」、「生体又は前記生体の子孫の物質」を「培養」し、「生体又は前記生体の子孫の物質を製造する」こと、及び「生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで」、「疾患を直接に引き起こす物質」で「生体の耐性を培養」することについて、発明の詳細な説明中に実質的な説明がなされていない。
さらに、前記2(2)アで説示したとおり、請求項5は記載自体が不明確であって、発明の詳細な説明における本願発明5と同じ文章の記載のみから、当業者が当該発明の意味内容を理解できるものとも認められない。
そうすると、本願発明5は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(2)本願発明6について
請求項6には、「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して、前記疾患の治療及び/又は予防のための物質を培養する方法であって、生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで、前記疾患に関連する物質に対応する安定構造で前記生体を養殖すること、及び 前記疾患の治療及び/又は予防のための物質として、前記生体又は前記生体の子孫の物質を使用することを含」む、「疾患の治療及び/又は予防のための物質を製造するための培養方法。」(前記第2の3)が記載されている。
そして、本願発明6に関し、発明の詳細な説明には、前記第4の【0071】~【0077】のとおりの事項が記載されているが、当該記載は、本願発明5と同じ文章が記載されるに留まるものであって、「請求項6に記載されている「治療及び/又は予防される疾患に関連する物質を使用して」、「生体又は前記生体の子孫の物質」を「培養」し、「生体又は前記生体の子孫の物質を製造する」こと、及び、「生体が前記疾患を引き起こす物質によって疾患を発生することがなくなるまで」、「疾患に関連する物質に対応する安定構造」で「生体を養殖」することについては、発明の詳細な説明中に全く記載されていない。
そうすると、本願発明6は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(3)審判請求人の主張
本願発明5及び本願発明6に対するサポート要件違反に対し、審判請求人は、審判請求書において実質的な反論を行っていない。
(4)結論
したがって、本願発明5及び本願発明6は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められず、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第7 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同条第6項第2号及び第1号の規定を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010988