特許拒絶査定不服審判
2021-011868
全固体電池の製造方法
- 審判番号
- 2021-011868
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-080681外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月07日
- 審決日
- 2022年05月23日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】FDK株式会社
- 【請求人代理人】一色国際特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WYF(H01M) / P18 .537-WYF(H01M) / P18 .561-WYF(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法53条1項特許法159条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 80681「全固体電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-181638、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年 4月14日の出願であって、令和 2年12月22日付けで拒絶理由通知がなされ、令和 3年 3月 2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年 7月 1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年 9月 7日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和 3年 9月 7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1に記載されていた「全固体電池の製造方法」の「電極層材料作製ステップ」について、補正後の請求項1では、「前記電極層材料作製ステップでは、前記正極層材料と前記負極層材料のそれぞれに前記導電助剤を2.3%以上3.0%以下で含ませ、」との特定事項を付加する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)を含むものであり、本件補正前後の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は、補正された箇所を示すものである。また、本願の願書に添付した明細書の【0015】も同様に補正されている。)。
ア 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
一体的な焼結体で、正極用の電極活物質と固体電解質を含む正極層、固体電解質を含む固体電解質層、および負極用の電極活物質と固体電解質を含む負極層がこの順に積層されてなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方法であって、
粉体状の前記正極用の電極活物質および前記負極用の電極活物質のそれぞれに、非晶質の前記固体電解質、導電助剤、及びバインダーと可塑剤とからなるバインダー成分を混合してスラリー状の正極層材料、およびスラリー状の負極層材料を作製する電極層材料作製ステップと、
粉体状の前記固体電解質と、前記バインダー成分とを混合してスラリー状の電解質層材料を作製する電解質層材料作製ステップと、
前記正極層材料、前記負極層材料、および前記電解質層材料を、それぞれシート状のグリーンシートに作製するグリーンシート作製ステップと、
前記正極層材料からなるグリーンシート、前記電解質層材料からなるグリーンシート、および前記負極層材料からなるグリーンシートをこの順に積層して得た積層体を大気雰囲気で熱処理し、前記グリーンシート中の前記バインダー成分を除去する脱脂ステップと、
前記脱脂ステップを経た前記積層体を、非酸素雰囲気で焼成して前記積層電極体を作製する焼成ステップと、
を含み、
前記脱脂ステップでは、前記正極層材料からなるグリーンシート、および前記負極層材料からなるグリーンシートについて、当該脱脂ステップ前の質量に対し0.1%以下の量の前記バインダー成分の残渣が含まれるように熱処理し、
前記焼成ステップでは、前記残渣を炭素化する、
ことを特徴とする全固体電池の製造方法。」
イ 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
一体的な焼結体で、正極用の電極活物質と固体電解質を含む正極層、固体電解質を含む固体電解質層、および負極用の電極活物質と固体電解質を含む負極層がこの順に積層されてなる積層電極体を備えた全固体電池の製造方法であって、
粉体状の前記正極用の電極活物質および前記負極用の電極活物質のそれぞれに、非晶質の前記固体電解質、導電助剤、及びバインダーと可塑剤とからなるバインダー成分を混合してスラリー状の正極層材料、およびスラリー状の負極層材料を作製する電極層材料作製ステップと、
粉体状の前記固体電解質と、前記バインダー成分とを混合してスラリー状の電解質層材料を作製する電解質層材料作製ステップと、
前記正極層材料、前記負極層材料、および前記電解質層材料を、それぞれシート状のグリーンシートに作製するグリーンシート作製ステップと、
前記正極層材料からなるグリーンシート、前記電解質層材料からなるグリーンシート、および前記負極層材料からなるグリーンシートをこの順に積層して得た積層体を大気雰囲気で熱処理し、前記グリーンシート中の前記バインダー成分を除去する脱脂ステップと、
前記脱脂ステップを経た前記積層体を、非酸素雰囲気で焼成して前記積層電極体を作製する焼成ステップと、
を含み、
前記電極層材料作製ステップでは、前記正極層材料と前記負極層材料のそれぞれに前記導電助剤を2.3%以上3.0%以下で含ませ、
前記脱脂ステップでは、前記正極層材料からなるグリーンシート、および前記負極層材料からなるグリーンシートについて、当該脱脂ステップ前の質量に対し0.1%以下の量の前記バインダー成分の残渣が含まれるように熱処理し、
前記焼成ステップでは、前記残渣を炭素化する、
ことを特徴とする全固体電池の製造方法。」
(2)本件補正の適否の検討
本件補正の適否について、以下検討する。
ア 本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、電極層シート中の導電助剤の割合について、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)
(ア)「【0020】
===バインダーの炭素化===
<TG特性>
まず、電極層のグリーンシート(以下、電極層シートとも言う)の熱重量(TG)特性について、熱重量分析装置を用いて調べた。具体的には、電極活物質としてアナターゼ型TiO2、固体電解質としてLAGP、導電助剤としてカーボンナノチューブ(例えば、VGCF(登録商標))、バインダーとしてアクリル系バインダー、および可塑剤としてフタル酸ジブチル(以下、DBPとも言う)を混合してグリーンシートの起源となるスラリー状の電極層材料を作製するとともに、その電極層材料をシート状に成形して電極層シートを作製した。そして、その電極層シートの大気雰囲気でのTG特性を調べた。なお、電極層シート中の電極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、および可塑剤の割合は、それぞれ36.9wt%、36.9wt%、2.3wt%、16.3wt%、および7.6wt%とした。したがって、電極層シート中のバインダー成分の当初の割合は、23.9wt%である。」
(イ)「【0026】
【表1】
[図:0001385042000001.jpg]
」
(ウ)「【0027】
表1において、サンプル1~6は、それぞれ、電極層シートに対する脱脂工程の熱処理温度が異なっており、表中のサンプル1~6については、その脱脂工程における熱処理の温度と残渣の割合を示した。なお、各サンプルにおける残渣の割合については、事前に、各サンプルの脱脂工程と同じ温度で一定時間保持した状態でTG特性を測定することで求めた。
【0028】
サンプル7は、バインダー成分を含まず、酸化チタンとLAGPと導電助剤からなる粉体材料であり、熱処理を一切行っていないサンプルである。サンプル8は単体の導電助剤である。そして、サンプル7における酸化チタン、LAGP、および導電助剤の割合は、それぞれ48.5wt%、48.5wt%、および3wt%であり、サンプル1~6よりも導電助剤の割合が大きい。なお、表1の「状態」の欄に、脱脂工程前の当初の質量に対する残渣の質量の割合、サンプル7や8の内容を付記した。」
イ 上記(1)のとおり、本件補正事項は、請求項1において、「粉体状の前記正極用の電極活物質および前記負極用の電極活物質のそれぞれに、非晶質の前記固体電解質、導電助剤、及びバインダーと可塑剤とからなるバインダー成分を混合してスラリー状の正極層材料、およびスラリー状の負極層材料を作製する」として特定される「電極層材料作製ステップ」に対し、「前記電極層材料作製ステップでは、前記正極層材料と前記負極層材料のそれぞれに前記導電助剤を2.3%以上3.0%以下で含ませ、」との特定事項を付加するものであるが、当初明細書等には上記補正事項について、直接的な記載は見当たらない。
ウ 一方、上記ア(ア)~(ウ)のとおり、当初明細書等には上記「導電助剤」の数値範囲を示す「2.3%」及び「3.0%」という値に関して、
(ア)「電極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、および可塑剤」を混合して作製した「電極層材料」において、「導電助剤の割合」を「2.3wt%」としたもの
(イ)「バインダー成分を含まず、酸化チタンとLAGPと導電助剤からなる粉体材料」において、「導電助剤の割合」を「3wt%」としたもの
の2つが記載されている。
しかしながら、(イ)の「粉体材料」は「バインダー成分を含ま」ないものであって、請求項1に規定される「正極層材料」と「負極層材料」に該当しないことは明らかであるので、この記載があるからといって、当初明細書等に上記「3.0%」について記載されているということはできない。
エ そうすると、上記「前記電極層材料作製ステップでは、前記正極層材料と前記負極層材料のそれぞれに前記導電助剤を2.3%以上3.0%以下で含ませ、」との本件補正事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等の記載から自明でもなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえる。
オ したがって、本件補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである。
3 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、令和 3年 3月 2日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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