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特許拒絶査定不服審判

2024-020195

モータ駆動装置、及びモータ駆動方法

審判番号
2024-020195
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-149777外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年12月17日
審決日
2025年07月04日
公報発行日
2025年07月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H02P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-149777「モータ駆動装置、及びモータ駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月17日出願公開、特開2022- 44244、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1.手続きの経緯 本願は、令和2年9月7日の出願であって、その手続きの経緯は、概略、以下のとおりである。 令和6年 6月26日付け :拒絶理由通知 令和6年 7月19日 :意見書の提出 令和6年10月30日付け :拒絶査定 令和6年12月17日 :審判請求書の提出 第2.原査定の概要 原査定(令和6年10月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1ないし10に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2、3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開平4-365770号公報 2.特開2016-10193号公報 3.特開2013-110680号公報 第3.本願発明 本願請求項1ないし10に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、以下のとおり、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明である。 「【請求項1】 モータを駆動するための駆動電流を出力するスイッチング回路と、 前記駆動電流を平滑化するインダクタと、 前記インダクタと前記モータとの間で前記駆動電流を検出する電流検出部と、 前記電流検出部により検出された前記駆動電流と外部から入力される電流指令値との差分に基づいて前記スイッチング回路をPWM制御する制御装置と、を備え、 前記制御装置は、前記スイッチング回路を最大デューティで制御した場合に前記駆動電流が所定の定格電流から前記インダクタの飽和電流へ達するまでの時間を制限時間として設定し、前記最大デューティの継続時間が前記制限時間に達する前に前記PWM制御を停止する、モータ駆動装置。 【請求項2】 前記制限時間は、前記インダクタと前記モータとの合計インダクタンス値をL、前記定格電流のリプル電流の下限値と前記飽和電流との差分電流値をIm、前記スイッチング回路に入力される入力電圧をVinとした場合に、Tm=L×Im/Vinとして算出される、請求項1に記載のモータ駆動装置。 【請求項3】 前記制御装置は、前記PWM制御の実行中において前記スイッチング回路に入力される前記入力電圧を監視し、前記入力電圧に応じて前記制限時間を更新する、請求項2に記載のモータ駆動装置。 【請求項4】 前記制限時間は、前記定格電流のリプル電流の下限値と前記飽和電流との差分電流値をIm、前記電流検出部により検出された前記駆動電流のリプル電流の傾きをΔILとした場合に、Tm=Im/ΔILとして算出される、請求項1に記載のモータ駆動装置。 【請求項5】 前記制御装置は、前記制限時間に基づいて前記PWM制御を停止した後、前記駆動電流が前記定格電流まで低下したことを条件として、前記PWM制御を再開する、請求項1乃至4のいずれかに記載のモータ駆動装置。 【請求項6】 スイッチング回路の出力電流をインダクタで平滑化した駆動電流でモータを駆動するモータ駆動方法であって、 前記インダクタと前記モータとの間で検出した前記駆動電流と、外部から入力される電流指令値との差分に基づいて前記スイッチング回路をPWM制御し、 前記スイッチング回路を最大デューティで制御した場合に前記駆動電流が所定の定格電流から前記インダクタの飽和電流へ達するまでの時間を制限時間として設定し、前記最大デューティの継続時間が前記制限時間に達する前に前記PWM制御を停止する、モータ駆動方法。 【請求項7】 前記制限時間は、前記インダクタと前記モータとの合計インダクタンス値をL、前記定格電流のリプル電流の下限値と前記飽和電流との差分電流値をIm、前記スイッチング回路に入力される入力電圧をVinとした場合に、Tm=L×Im/Vinとして算出される、請求項6に記載のモータ駆動方法。 【請求項8】 前記PWM制御の実行中において前記スイッチング回路に入力される前記入力電圧を監視し、前記入力電圧に応じて前記制限時間を更新する、請求項7に記載のモータ駆動方法。 【請求項9】 前記制限時間は、前記定格電流のリプル電流の下限値と前記飽和電流との差分電流値をIm、検出した前記駆動電流のリプル電流の傾きをΔILとした場合に、Tm=Im/ΔILとして算出される、請求項6に記載のモータ駆動方法。 【請求項10】 前記制限時間に基づいて前記PWM制御を停止した後、前記駆動電流が前記定格電流まで低下したことを条件として、前記PWM制御を再開する、請求項6乃至9のいずれかに記載のモータ駆動方法。」 第4.当審の判断 1.引用文献 (1)引用文献1 ア.引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の事項が記載されている。 「【0011】主回路構成システムは、図1に示すように3相の商用電源1と、電源側の交流リアクトル2と電力変換部3a,3bと、電力変換部3a,3bの異常を検出する異常検出部4と、電動機側の交流リアクトル5と、電動機側の電流検出器6と、誘導電動機7と、誘導電動機7の速度と回転角を検出するレゾルバ8と、メインシーブ9と、メインシロープ10と、そらせシーブ11と、エレベータかご12と、エレベータかご下に設けられた荷重検出器13と、つり合い鍾14と、インバータ制御部15とから構成されている。 …中略… 【0013】そして、インバータ制御部15は、エレベータの速度基準を発生する速度基準発生回路27と、速度基準発生回路27からの速度指令信号をレゾルバ8からの速度信号との偏差に基づいて比較演算し、第1の電流指令信号を出力する速度制御演算回路28と、速度制御演算回路28からの第1の電流指令信号に荷重検出器13からの荷重信号を加算演算し、第2の電流指令信号を出力する荷重信号加算回路29と、荷重信号加算回路29からの第2の電流指令信号をレゾルバ8からの回転子位置信号に基づいてベルトル制御し、第3の電流指令信号を出力するベクトル制動回路30と、ベクトル制御回路30からの第3の電流指令信号と電流検出器6からの電流信号との偏差に基づいて比較演算し、第4の電流指令信号を出力する電流制御演算回路31と、電流制御演算回路31からの第4の電流指令信号に基づいてPWM(パルス幅変調)制御を行う正弦波PWM制御回路32とから構成されている。図2は、コンバータ制御部24aの構成を示すブロック図である。 …中略… 【0017】3相の商用電源1より電源が交流リアクトル2を介して電力変換部3a,3bに入力されると、主回路コンタクタ17a,17bがまず投入されて平滑コンデンサ21a,21bが充電される。平滑コンデンサ21a,21bが充電完了すると主回路コンタクタ18a,18bが投入され、コンバータ部20a,20bはコンバータ制御部24a,24bにより昇圧制御される。次に主回路コンタクタ25a,25bが投入され、インバータ部23a,23bがインバータ制御部15によりPWM制御される。インバータ制御部15の制御信号に基づいてインバータ部23a,23bが誘導電導機7を速度制御する。ここで、誘導電導機7は、インバータ部23aとインバータ部23bより交流リアクトル5を介して、電力を供給される。つまり、誘導電動機7を駆動するための電力は、それぞれインバータ部23a,23bより半分づつ供給される。 【0018】インバータ制御部24aの動作について説明すると、まず電圧基準発生回路34aより電圧指令信号を電圧制御演算回路35aへの出力する。電圧制御演算回路35aは、電圧指令信号を入力すると、電圧検出器22aからの電圧信号とを偏差に基づいて比較演算し、電流指令信号を電流制御演算回路36aへ出力する。 電流制御演算回路36aは、電流指令信号を入力すると、電流検出器19aより得られかつ異常電流検出器によりチェックされた電流信号とを偏差に基づいて比較演算し、第2の電流指令信号を正弦波PWM制御回路37aへ出力する。正弦波PWM制御回路37aは第2の電流指令信号に基づいてPWM制御を行い、制御信号をコンバータ部20aへ出力する。 【0019】ここでは、コンバータ制御部24aの動作について説明したが、コンバータ制御部24bの動作は、コンバータ制御部24aと異なるところがないので説明を省略する。次にインバータ制御部15の動作について説明する。 【0020】まず、速度基準発生回路27より速度指令信号を速度制御演算回路28へ出力する。速度制御演算回路28は、速度指令信号を入力すると、レゾルバ8からの速度信号とを偏差に基づいて比較演算し、電流指令信号を荷重信号加算回路29へ出力する。荷重検出器13からの荷重信号を電流指令信号に加算し、第2の電流指令信号をベクトル制御回路30へ出力する。ベクトル制御回路30は、第2の電流指令信号を入力すると、レゾルバ8からの回転子位置信号に基づいてベクトル制御し、第3の電流指令信号を電流制御演算回路31へ出力する。電流制御演算回路31は、第3の電流指令信号を入力すると、電流検出器6からの電流信号とを偏差に基づいて比較演算し、第4の電流指令信号を正弦波PWM制御回路32へ出力する。正弦波PWM制御回路32は、入力した第4の電流指令信号に基づいてPWM制御を行い、制御信号をインバータ部23a,23bへ出力する。以上述べた動作は、エレベータが正常な運転をした場合である。次に、電力変換部3bに異常が発生し、エレベータが非常運転モードでの運転に切換えるときの動作について説明する。 …中略… 【0026】このように、電力変換部3a,3bを並列に設けることによって、各電力変換部3a,3bに流れる電流及び電力が半分となるため、大電力を要するエレベータの運転制御を可る場合には、素子への負担を転減できる。又、どちらか一方の電力変換部が故障した場合にま、正常な電力変換部のみを駆動させて非常運転を行うことができるので、非常時における乗客の救出運転が可能となり信頼性が向上する。」 「 [図:0001424506000001.jpg] 」 イ.引用発明 上記アによると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「誘導電動機7を駆動するための電力を出力するインバータ部23を有する電力変換部3と(段落0011、0017、図1)、 交流リアクトル5と、交流リアクトル5と誘導電動機7との間に設けられた電流検出器6と(段落0017、図1)、 レゾルバ8からの速度信号及び速度基準発生回路27からの速度指令信号に基づいて算出された第3の電流指令信号と、電流検出器6からの電流信号とを比較演算して第4の電流指令信号を出力する電流制御演算回路31と(段落0013、0020、図1)、 第4の電流指令信号に基づいて、電力変換部3のインバータ部23をPWM制御する正弦波PWM制御回路32と(段落0013、0020、図1)、 を備えた主回路構成システム。」 (2)引用文献2 ア.引用文献2の記載事項 引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【0019】 まず、昇降圧チョッパ回路2の構成について説明する。昇降圧チョッパ回路2は、2つのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)6,7と、2つのダイオード8,9と、コイル10と、制御回路11とを含む。 【0020】 MOSFETは、スイッチング素子の一種であり、等価的には、MOSFET6,7の各々は、スイッチング素子本体部と、スイッチング素子本体部のドレイン-ソースに対して逆並列に接続された内蔵ダイオードとを含む。 【0021】 MOSFET6とダイオード8とは、昇降圧チョッパ回路2の入力ノードN1,N3の間に直列接続される。また、ダイオード9とMOSFET7とは、昇降圧チョッパ回路2の出力ノードN2,N4の間に直列接続される。MOSFET6とダイオード8の接続ノードとダイオード9とMOSFET7の接続ノードとの間にコイル10が接続される。なお、入力ノードN3と出力ノードN4とは、昇降圧チョッパ回路2の内部で電気的に接続されている。 【0022】 MOSFET6のドレインは直流電圧源1の正極と接続され、ダイオード8のアノードは直流電圧源1の負極に接続されている。一方、ダイオード9のカソードは、昇降圧チョッパの後段に接続される平滑コンデンサ5の正極側に接続され、MOSFET7のソースは、平滑コンデンサ5の負極に接続されるとともに、ダイオード8のアノード、つまり直流電圧源1の負極に接続される。 【0023】 また、昇降圧チョッパ回路2は、MOSFET6,7のオン・オフ制御を行う制御回路11をさらに含む。制御回路11は、MOSFET6,7のゲート端子に制御信号としてのオン・オフ信号を与え、MOSFET6,7を制御している。 【0024】 なお、図1等の構成では、励磁エネルギー蓄積要素として、コイル10を用いているが、その他の励磁エネルギー蓄積要素、例えばスイッチングトランスの1次側などを用いて昇降圧チョッパ回路2を構成することも可能である。 …中略… 【0054】 鉄道車両用電源回路を「降圧モード」あるいは「昇圧モード」によって起動させる際、昇降圧チョッパ回路2のスイッチング素子であるMOSFET6及び7のオンデューティ(オン時間)によっては、コイル10が磁気飽和を起こし、過大電流が流れる可能性がある。そこで実施の形態2では、コイル10の電流を検出する電流検出手段14を備え、予め設定した電流値(=過電流設定値)に達すると、MOSFET6及び7のスイッチングを停止することで、コイル10の磁気飽和を抑制することが可能である。また、コイル電流のピーク値を低減できるため、平滑コンデンサへの突入電流ピーク値も抑制される。」 イ.引用文献2に記載された技術 上記アによると、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「2つのスイッチング素子と、2つのダイオードと、コイルと、制御回路とを含む昇降圧チョッパ回路において、スイッチング素子のオンデューティによっては、コイルが磁気飽和を起こし、過大電流が流れる可能性があるため、コイルの電流を検出する電流検出手段を備え、予め設定した電流値に達すると、スイッチング素子のスイッチングを停止すること。」 (3)引用文献3 ア.引用文献3の記載事項 引用文献3には、次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、分布増幅器では、複数のスイッチング素子が出力する電力を合成するための分布定数線路において、出力端とは反対側に伝播する電力を抵抗で消費させて終端しなければならず、終端抵抗での損失が大きいという問題がある。また、増幅されたPWM信号から変調信号としての包絡線信号を取り出すのにローパスフィルタが必要であり、このフィルタの挿入損失も無視できないものとなる。 【0008】 本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のスイッチング素子にて増幅したPWM信号を低損失で合成し、変調信号を復調することが可能なスイッチング回路、及び該スイッチング回路を備える包絡線信号増幅器を提供することにある。 【0009】 本発明に係るスイッチング回路は、N個(Nは2以上の整数)のスイッチング素子のスイッチングを制御するための各制御端子をN-1個の第1インダクタンス素子を介して縦続接続する接続回路と、一端が直流電源に電気的に接続される第2インダクタンス素子の他端及び前記スイッチング素子の各一端の間に各別に接続された第3インダクタンス素子とを備えるスイッチング回路であって、前記接続回路の入力端子に入力されるPWM信号にて、前記N個のスイッチング素子を順次スイッチングさせるようにしてあり、前記第2インダクタンス素子の一端側又は他端側に縦続接続されるように挿入された補助スイッチング素子を更に備えることを特徴とする。 …中略… 【0014】 ところで、例えば、携帯電話の変調信号の周波数は変動するものである。携帯電話の変調信号の周波数が低い場合、すなわち、この変調信号を包絡線検波した包絡線信号の周波数が低い場合、この包絡線信号をパルス幅変調したPWM信号においてデューティーが一定となる状態が長時間継続することとなる。このように、PWM信号におけるデューティーが一定となる状態が長時間継続すると、スイッチング回路では、第2インダクタンス素子が磁気飽和してしまい、出力電圧が電源電圧に漸近してしまうこととなる。 【0015】 そこで、このスイッチング回路によれば、第2インダクタンス素子が磁束飽和する前に補助スイッチングをオフ状態とすることにより、第2インダクタンス素子に流れる電流を制限し、第2インダクタンス素子の磁束飽和を抑制することができる。その結果、例えば、携帯電話の変調信号の周波数が低下し、PWM信号におけるデューティーが一定となる状態が長時間継続しても、出力電圧が電源電圧に漸近することを抑制することができる。 【0016】 本発明に係るスイッチング回路では、前記補助スイッチング素子は、前記第2インダクタンス素子が磁気飽和する時定数の逆数よりも高い周波数で駆動されてもよい。 …中略… 【0072】 ここで、図6に、携帯電話の変調信号の周波数が更に低下した場合の包絡線信号の波形(C)、及び、スイッチング回路33の出力端子332における出力電圧の波形(F)を示す。図6Cに示すように、携帯電話の変調信号の周波数、すなわち、包絡線信号の周波数が更に低下し、PWM信号におけるデューティーが一定となる状態が長時間継続すると、コイルL2が磁気飽和してしまう。すると、図6Fに示すように、スイッチング回路33の出力端子332における出力電圧が電源電圧Vddに漸近してしまうこととなる。なお、図6Fでは、コイルL2が磁気飽和するまでの時間を時定数τで示している。 【0073】 そこで、本実施形態のスイッチング回路33では、コイルL2に縦続接続するトランジスタM0を備え、コイルL2が磁束飽和する前にトランジスタM0をオフ状態とする。図7は、包絡線信号の波形(C)、スイッチング回路33の出力端子332における出力電圧の波形(F)、及び、トランジスタM0の駆動信号の波形(H)を示す。図7Hに示すように、例えばコイルL2が磁気飽和する時定数τの逆数よりも高い周波数でトランジスタM0を駆動することにより、すなわち、コイルL2が磁束飽和する前にトランジスタM0をオフ状態とすることにより、コイルL2に流れる電流を制限し、コイルL2の磁束飽和を抑制することができる。その結果、携帯電話の変調信号の周波数が低下し、PWM信号におけるデューティーが一定となる状態が長時間継続しても、スイッチング回路33の出力端子332における出力電圧が電源電圧Vddに漸近することを抑制することができる。」 イ.引用文献3に記載された技術 上記アによると、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。 「包絡線信号増幅器に用いられるスイッチング回路であって、 N個のスイッチング素子のスイッチングを制御するための各制御端子をN-1個の第1インダクタンス素子を介して縦続接続する接続回路と、一端が直流電源に電気的に接続される第2インダクタンス素子の他端及び前記スイッチング素子の各一端の間に各別に接続された第3インダクタンス素子とを備えるスイッチング回路であって、前記接続回路の入力端子に入力されるPWM信号にて、前記N個のスイッチング素子を順次スイッチングさせるようにしてあり、前記第2インダクタンス素子の一端側又は他端側に縦続接続されるように挿入された補助スイッチング素子を更に備えたスイッチング回路において、 前記補助スイッチング素子を、前記第2インダクタンス素子が磁気飽和する時定数の逆数よりも高い周波数で駆動することによって、第2インダクタンス素子の磁束飽和を抑制すること。」 2.本願発明1について (1)対比 ア.引用発明1の「誘導電動機7」は、本願発明1の「モータ」に相当する。また、引用発明1の「インバータ部23」は、誘導電動機7を駆動するための駆動電流を出力するスイッチング回路であるから、本願発明1の「モータを駆動するための駆動電流を出力するスイッチング回路」に相当する。 イ.交流リアクトルは、電流を平滑化するためのものであることが、本願出願時の技術常識であるところ、引用発明1の「交流リアクトル5」は、本願発明1の「前記駆動電流を平滑化するインダクタ」に相当する。 ウ.引用発明1の「交流リアクトル5と、交流リアクトル5と誘導電動機7との間に設けられた電流検出器6」は、本願発明1の「前記インダクタと前記モータとの間で前記駆動電流を検出する電流検出部」に相当する。 エ.引用発明1の「第4の電流指令信号」は、「電流検出器6からの電流信号」と第3の電流指令信号との比較に基づいて算出されるものであって、「比較に基づいて算出する」ことは、「差分に基づいて算出する」ことであるといえるから、「電流検出器6からの電流信号」と所定の電流指令値との差分に基づいて算出されるものと解するのが相当である。 オ.上記エを踏まえると、引用発明1の「第4の電流指令信号に基づいて、電力変換部3のインバータ部23をPWM制御する正弦波PWM制御回路32」と、本願発明1の「前記電流検出部により検出された前記駆動電流と外部から入力される電流指令値との差分に基づいて前記スイッチング回路をPWM制御する制御装置」とは、「前記電流検出部により検出された前記駆動電流と所定の電流指令値との差分に基づいて前記スイッチング回路をPWM制御する制御装置」の点で共通する。 カ.引用発明1の「主回路構成システム」は、誘導電動機7を駆動するための駆動装置といえるから、本願発明1の「モータ駆動装置」に相当する。 キ.以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、また、相違する。 【一致点】 「モータを駆動するための駆動電流を出力するスイッチング回路と、 前記駆動電流を平滑化するインダクタと、 前記インダクタと前記モータとの間で前記駆動電流を検出する電流検出部と、 前記電流検出部により検出された前記駆動電流と所定の電流指令値との差分に基づいて前記スイッチング回路をPWM制御する制御装置と、を備える、 モータ駆動装置。」 【相違点】 ・相違点1 本願発明1の「電流指令値」は、「外部から入力される」のに対して、引用発明1の「電流指令値」は、「レゾルバ8からの速度信号及び速度基準発生回路27からの速度指令信号に基づいて算出」されたものである点。 ・相違点2 本願発明1は、「前記制御装置は、前記スイッチング回路を最大デューティで制御した場合に前記駆動電流が所定の定格電流から前記インダクタの飽和電流へ達するまでの時間を制限時間として設定し、前記最大デューティの継続時間が前記制限時間に達する前に前記PWM制御を停止する」ものであるのに対して、引用発明1では、当該事項が特定されていない点。 (2)判断 事案に鑑みて、まず相違点2について検討する。 引用文献2に記載された技術は、コイル、すなわちインダクタが磁気飽和を起こし、過大電流が流れることを防ぐために、「コイル(インダクタ)の電流を検出する電流検出手段を備え、予め設定した電流値に達すると、スイッチング素子のスイッチングを停止すること」との構成によって解決するものであるところ、引用文献2には、本願発明1の相違点2に係る構成について、記載ないし示唆されているとはいえない。 また、引用文献3に記載された技術は、携帯電話基地局などに用いられる包絡線信号増幅器に係るものであり、モータを駆動するための「モータ駆動装置」とは異なる技術分野に属するものであって、「モータを駆動するための駆動電流を出力するスイッチング回路」を「最大デューティで制御」するものではないから、引用文献3には、本願発明1の相違点2に係る構成について、記載ないし示唆されているとはいえない。 よって、本願発明1の相違点2に係る構成は、引用文献2及び3に記載されているとはいえず、また、周知技術であるともいえない。 さらに加えると、本願明細書の段落0002ないし0004の記載によると、本願発明1の解決しようとする課題は、「出力インダクタの飽和に伴う過電流を事前に防止すること」であって、当該課題を解決する手段として、本願発明1の相違点2に係る構成を備えるものであると認められるところ、出力インダクタの飽和に伴う過電流が発生するか否かは、インダクタやモータの種類、電力制御の手法に依存することが本願出願時の技術常識であることからすると、引用発明1において「出力インダクタの飽和に伴う過電流を事前に防止すること」との課題が、技術常識的に存在するものとはいえない。そうすると、仮に本願発明1の相違点2に係る構成が公知技術であったとしても、引用発明1に、当該公知技術を採用すべき動機付けがあるとはいえない。 したがって、本願発明1の相違点2に係る構成は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 以上のとおりであるから、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.本願発明6ないし10について 本願発明6ないし10は、本願発明1ないし5のモータ駆動装置を方法として記載したものであるところ、上記1ないし3のとおり、本願発明1ないし5は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本願発明6ないし10は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5.まとめ 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-020195

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