特許拒絶査定不服審判
2025-003173
静止誘導電器用鉄心
- 審判番号
- 2025-003173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-180071
- 請求日
- 2025年02月28日
- 審決日
- 2025年12月24日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社日立製作所
- 【請求人代理人】ポレール弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 涌井 智則
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 木村 貴俊
- 分類
- P18 .537-WY (H01F) / P18 .561-WY (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法53条1項特許法159条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-180071「静止誘導電器用鉄心」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月16日出願公開、特開2022- 71238、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月28日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和6年 3月27日付け:拒絶理由通知書
令和6年 5月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 7月29日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由通知)
令和6年10月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年11月25日付け:拒絶査定
令和7年 2月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和7年2月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、令和6年5月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
水平方向に隣接して配置された複数のアモルファス巻鉄心と、複数の前記アモルファス巻鉄心を上面から見た場合の複数の前記アモルファス巻鉄心の隣接方向と直交する方向の片側で、かつ、隣接する複数の前記アモルファス巻鉄心の全体にわたって設置された珪素鋼板積鉄心と、を備え、
前記珪素鋼板積鉄心のヨーク幅と前記アモルファス巻鉄心のヨーク幅が等しいと共に、前記アモルファス巻鉄心および前記珪素鋼板積鉄心の上面をみたときに、静止誘導電器用鉄心の断面積における前記珪素鋼板積鉄心の断面積の割合が0.2以下であることを特徴とする静止誘導電器用鉄心。」
から
「【請求項1】
水平方向に隣接して配置された複数のアモルファス巻鉄心と、複数の前記アモルファス巻鉄心を上面から見た場合の複数の前記アモルファス巻鉄心の隣接方向と直交する方向の片側で、かつ、隣接する複数の前記アモルファス巻鉄心の全体にわたって設置された珪素鋼板積鉄心と、を備えた静止誘導電器用鉄心であって、
複数の前記アモルファス巻鉄心の隣接方向と直交する方向から、前記静止誘導電器用鉄心をみたときに、水平方向に隣接して配置された複数の前記アモルファス巻鉄心の上端、下端、右端、左端は、前記珪素鋼板積鉄心の上端、下端、右端、左端とそれぞれ一致しており、
前記珪素鋼板積鉄心のヨーク幅および主脚幅と前記アモルファス巻鉄心のヨーク幅および主脚幅がそれぞれ等しいと共に、
前記アモルファス巻鉄心および前記珪素鋼板積鉄心の上面をみたときに、前記静止誘導電器用鉄心の上面の面積における前記珪素鋼板積鉄心の上面の面積の割合が0.2以下であることを特徴とする静止誘導電器用鉄心。」
と補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)
(2)本件補正の適否
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1の「静止誘導電器用鉄心の断面積における前記珪素鋼板積鉄心の断面積の割合が0.2以下であること」を、「前記静止誘導電器用鉄心の上面の面積における前記珪素鋼板積鉄心の上面の面積の割合が0.2以下であること」に変更する補正事項を含むものである。
イ 上記補正事項について判断する。
(ア)出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「アモルファス巻鉄心」と「珪素鋼板積鉄心」に関して、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与した。
「【0021】
本発明では、珪素鋼板積鉄心2のヨーク幅とアモルファス巻鉄心1のヨーク幅を等しくする。言い換えると、鉄心3の主脚の幅4は、ヨーク部の幅5に対して2倍となる。すなわち、ヨーク部の幅5=1/2aとすると、主脚の幅4=aで表現される。また、ハイブリッド鉄心3の材料比率を1とした場合、珪素鋼板積鉄心2の材料費率は0.2以下とする。
【0022】
一般に、三相五脚鉄心の理想的な形状は、U、V、W相の主脚の幅1に対してヨーク部の幅(ヨーク幅)を1/√3とした形状である。しかし、巻鉄心では、原理的にヨーク部の幅を1/2としか製作できない。本実施例では、珪素鋼板積鉄心のヨーク部の幅を、アモルファス巻鉄心1のヨーク幅と同じく、主脚の1/2とする。
【0023】
ここで、材料比率と両者の磁気抵抗の違いを利用することで,ハイブリッド鉄心の磁束密度を制御し、ハイブリッド化することのメリットを阻害することなく、鉄心を成立させることが可能である。
【0024】
ハイブリッド鉄心とした場合のメリットは、高強度化と高磁束密度化と磁気損失の低減である。高強度な珪素鋼板積鉄心2を用いることで、強度の弱いアモルファス巻鉄心1の強度不足を補う。また、珪素鋼板積鉄心2は、飽和磁束密度が約2.0Tとアモルファス巻鉄心1の約1.6Tに対して2割程大きい。従って、両者を組み合わせた場合、鉄心の設計磁束密度を高く設定できるため、鉄心、巻線の大型化を抑制できることから、小型化できるという利点がある。さらに、低損失のアモルファス巻鉄心1を採用することで、磁気損失を大幅に低減できる。
【0025】
図3は鉄心の各部位(珪素鋼板主脚および珪素鋼板ヨーク部)の磁束密度を示すグラフであり、図4は鉄心の磁気損失を示すグラフである。上記の利点を阻害せずに、珪素鋼板積鉄心のヨーク部の幅を1/2とするためには、2つの条件を満たす必要がある。1つ目は、図3に示したように、珪素鋼板積鉄心のヨーク部の磁束密度7が主脚の磁束密度6以下であることである。2つ目は、図4に示したように、ヨーク部の幅を1/2としたことにより増加するヨーク部の磁気抵抗による磁気損失8の増加が、鉄心全体の磁気損失に影響を与えないことである。
【0026】
以上のことを満たす条件は、ハイブリッド鉄心3の材料比率を1とした場合、珪素鋼板積鉄心2の材料費率を0.2以下とすることである。ここで、珪素鋼板積鉄心2の材料比率とは、ハイブリッド鉄心3の断面積における珪素鋼板積鉄心2の面積の割合のことである。
・・・中略・・・。
【0032】
以上に記載したように、材料の磁気抵抗と比率を制御することで、磁束密度の分担を制御し、ハイブリッド鉄心の利点を阻害することなく、強度を保持した鉄心構成が可能となる。」
(当審注:「材料費率」は「材料比率」の誤記と認める。)
(イ)ここで、上記段落【0023】に「ここで、材料比率・・・を利用することで,ハイブリッド鉄心の磁束密度を制御」と記載され、上記段落【0032】に「材料の・・・比率を制御することで、磁束密度の分担を制御し」と記載されているところ、鉄心の磁束密度は鉄心の断面積に反比例することは技術常識であり、また該断面積を変更することにより磁束密度を制御することも普通に行われている(例えば、特開2015-506100号公報の段落【0040】、特開2008-41876号公報の段落【0021】、特公昭58-166号公報の3頁6欄19~35行を参照)。
そうすると、これらの点を総合的に勘案すれば、上記段落【0026】の「ハイブリッド鉄心3の材料比率を1とした場合、珪素鋼板積鉄心2の材料費率を0.2以下とすることである。ここで、珪素鋼板積鉄心2の材料比率とは、ハイブリッド鉄心3の断面積における珪素鋼板積鉄心2の面積の割合のことである。」とは、「ハイブリッド鉄心3の材料比率を1とした場合、珪素鋼板積鉄心2の材料費率を0.2以下とすることである。ここで、珪素鋼板積鉄心2の材料比率とは、ハイブリッド鉄心3の断面積における珪素鋼板積鉄心2の断面積の割合のことである。」の誤りであると解される。
(ウ)そして、上記(ア)、(イ)によれば、上記当初明細書等には、ハイブリッド鉄心とした場合における高強度化、高磁束密度化及び磁気損失の低減というメリットを阻害せずに、珪素鋼板積鉄心2のヨーク部の幅を、アモルファス巻鉄芯1のヨーク幅と同じく、主脚の幅の1/2とするために、ハイブリッド鉄心3の材料比率を1とした場合、珪素鋼板積鉄心2の材料比率を0.2以下とし、ここで、珪素鋼板積鉄心2の材料比率とは、ハイブリッド鉄心3の断面積における珪素鋼板積鉄心2の断面積の割合のことであることが記載されているといえる。
してみると、上記当初明細書等には、本件補正における「静止誘導電器用鉄心の上面の面積における前記珪素鋼板積鉄心の上面の面積の割合が0.2以下である」ことは記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明な事項でもなく、出願時の技術常識でもない。
よって、「前記静止誘導電器用鉄心の上面の面積における前記珪素鋼板積鉄心の上面の面積の割合が0.2以下であること」を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(エ)したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
ウ まとめ
以上のとおり、上記補正事項を含む本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和6年5月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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