特許拒絶査定不服審判
2021-010272
セリア粒子を表面から除去するための組成物及び方法
- 審判番号
- 2021-010272
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-538379外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年08月02日
- 審決日
- 2022年03月16日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インテグリス・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第159条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-538379「セリア粒子を表面から除去するための組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日国際公開、WO2018/136511、令和 2年 2月 6日国内公表、特表2020-504460〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2018年(平成30年)1月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年1月18日:米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年9月25日 :手続補正書の提出
令和2年7月7日付け :拒絶理由通知書
令和2年10月9日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年3月31日付け :拒絶査定
令和3年8月2日 :審判請求書,手続補正書の提出
第2 令和3年8月2日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年8月2日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正の内容
ア 本件補正は,本件補正前の請求項1~10を本件補正後の請求項1~10とする補正を含むものであって,本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(ア)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
少なくとも1つのpH調整剤と,少なくとも1つの還元剤と,少なくとも1つの有機添加剤と,水とを含む水性除去組成物であって,セリア粒子と化学機械研磨(CMP)汚染物質とを,前記粒子とCMP汚染物質とをその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに適している水性除去組成物であって,
少なくとも1つの有機添加剤及び少なくとも1つの還元剤が,約0.001:1から約10:1の範囲の重量パーセント比で存在し,
少なくとも1つの有機添加剤が,2-ピロリジノン,1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン(HEP),グリセロール,1,4-ブタンジオール,テトラメチレンスルホン,ジメチルスルホン,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,テトラグライム,ジグリム,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン,アセトン,イソプロパノール,オクタノール,エタノール,ブタノール,メタノール,イソホロン,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE),トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE),エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE),ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGHE),エチレングリコールフェニルエーテル,ジエチレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME),トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME),ジプロピレングリコールジメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,プロピレングリコールn-プロピルエーテル,ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE),トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル,プロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,4-メチル-2-ペンタノン,2,4-ジメチル-3-ペンタノン,シクロヘキサノン,5-メチル-3-ヘプタノン,3-ペンタノン,5-ヒドロキシ-2-ペンタノン,2,5-ヘキサンジオン,4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン,アセトン,ブタノン,2-メチル-2-ブタノン,3,3-ジメチル-2-ブタノン,4-ヒドロキシ-2-ブタノン,シクロペンタノン,2-ペンタノン,3-ペンタノン,1-フェニルエタノン,アセトフェノン,ベンゾフェノン,2-ヘキサノン,3-ヘキサノン,2-ヘプタノン,3-ヘプタノン,4-ヘプタノン,2,6-ジメチル-4-ヘプタノン,2-オクタノン,3-オクタノン,4-オクタノン,ジシクロヘキシルケトン,2,6-ジメチルシクロヘキサノン,2-アセチルシクロヘキサノン,2,4-ペンタンジオン,メントン及びそれらの組合せからなる群から選択される種を含む,水性除去組成物。」
(イ)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
少なくとも1つのpH調整剤と,少なくとも1つの還元剤と,少なくとも1つの有機添加剤と,水とを含む水性除去組成物であって,水性除去組成物が0.001重量%未満の界面活性剤を含み,セリア粒子と化学機械研磨(CMP)汚染物質とを,前記粒子とCMP汚染物質とをその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに適している水性除去組成物であって,
少なくとも1つの有機添加剤及び少なくとも1つの還元剤が,約0.001:1から約10:1の範囲の重量パーセント比で存在し,
少なくとも1つの有機添加剤が,2-ピロリジノン,1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン(HEP),グリセロール,1,4-ブタンジオール,テトラメチレンスルホン,ジメチルスルホン,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,テトラグライム,ジグリム,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン,アセトン,イソプロパノール,オクタノール,エタノール,ブタノール,メタノール,イソホロン,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE),トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE),エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE),ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGHE),エチレングリコールフェニルエーテル,ジエチレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME),トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME),ジプロピレングリコールジメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,プロピレングリコールn-プロピルエーテル,ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE),トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル,プロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,4-メチル-2-ペンタノン,2,4-ジメチル-3-ペンタノン,シクロヘキサノン,5-メチル-3-ヘプタノン,3-ペンタノン,5-ヒドロキシ-2-ペンタノン,2,5-ヘキサンジオン,4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン,アセトン,ブタノン,2-メチル-2-ブタノン,3,3-ジメチル-2-ブタノン,4-ヒドロキシ-2-ブタノン,シクロペンタノン,2-ペンタノン,3-ペンタノン,1-フェニルエタノン,アセトフェノン,ベンゾフェノン,2-ヘキサノン,3-ヘキサノン,2-ヘプタノン,3-ヘプタノン,4-ヘプタノン,2,6-ジメチル-4-ヘプタノン,2-オクタノン,3-オクタノン,4-オクタノン,ジシクロヘキシルケトン,2,6-ジメチルシクロヘキサノン,2-アセチルシクロヘキサノン,2,4-ペンタンジオン,メントン及びそれらの組合せからなる群から選択される種を含む,水性除去組成物。」
イ そして,請求項1に対する本件補正は以下の補正事項をその内容とするものである。
(補正事項1)本件補正前の請求項1の「水性除去組成物であって,」を,本件補正後の請求項1の「水性除去組成物であって,水性除去組成物が0.001重量%未満の界面活性剤を含み,」に補正すること。
2.新規事項追加について
上記補正事項1は,補正前の請求項1に「水性除去組成物が0.001重量%未満の界面活性剤を含み」との事項を付加する補正であるといえる。そこで,上記補正事項1が新規事項の追加に該当するか否かについて検討する。
ア 本願明細書の段落0033には,次の記載がある。(下線は当審により付加。)
「【0033】
各実施態様において,除去組成物は,マイクロ電子デバイスから残渣材料を除去する前に,酸化剤;フッ化物含有源;界面活性剤;水酸化テトラメチルアンモニウム;化学機械研磨研削材(例えば,シリカ,アルミナなど);シアヌル酸,バルビツル酸及びその誘導体,グルクロン酸,スクエア酸,アルファ-ケト酸,アデノシン及びその誘導体,リボシルプリン及びその誘導体,プリン化合物及びその誘導体,アデノシンの分解生成物及びアデノシン誘導体,トリアミノピリミジン及び他の置換ピリミジン,プリン-サッカライド複合体,ホスホン酸及びその誘導体,フェナントロリン,グリシン,ニコチンアミド及びその誘導体,フラボノイド,例えば,フラボノール及びアントシアニンとその誘導体,クェルセチン及びその誘導体並びにそれらの組合せからなる群から選択される腐食抑制剤のうちの少なくとも1つが実質的にないものにすることができる。さらに,除去組成物は,固化して,例えば,フォトレジストを含むポリマー固体を生成すべきでない。」
上記によれば,本願明細書の段落0033には,本願の除去組成物において「界面活性剤」を「実質的にないものにすることができる」との事項が記載されていると理解できる。
ここで,本願明細書における「実質的にない」の定義について,本願明細書の段落0022には次のように記載されている。
「【0022】
「実質的にない」は,本明細書において,2wt.%未満,好ましくは1wt.%未満,より好ましくは0.5wt.%未満,最も好ましくは0.1wt.%未満と定義される。「ない」は,環境汚染を償う0.001wt%未満に対応することが意図される。」
上記の定義をふまえると,上記段落0033に記載された「界面活性剤」を「実質的にないものにすることができる」との事項は,「界面活性剤」を「2重量%未満,好ましくは1重量%未満,より好ましくは0.5重量%未満,最も好ましくは0.1重量%未満」のものにするとの事項に等しいものと理解できる。また,上記の定義によれば,ある成分の含有量を「0.001重量%未満」と特定することは,当該成分を「ない」ものと特定することに対応し,「環境汚染を償う」という技術的意義を有するものと理解できる。
イ そうすると,補正事項1による付加される「水性除去組成物が0.001重量%未満の界面活性剤を含み」との事項は,本願明細書段落0033に記載されているに等しい事項とは,数値範囲が異なる事項であるといえる。すなわち,補正事項1は本願明細書段落0022及び段落0033に記載された事項とはいえない。また,上記段落0022及び段落0033以外の本願明細書及び図面においても,補正事項1に対応する記載は見当たらない。
そして,「水性除去組成物が0.001重量%未満の界面活性剤を含み」との事項を付加する補正は,「水性除去組成物」において「界面活性剤」を「ない」ものと特定する補正であり,そのことにより「環境汚染を償う」という新たな技術的意義を導入する補正であるといえる。
なお,「実質的にない」の(例えば)「0.1重量%未満」と「ない」の「0.001重量%未満」とは,数値範囲としては一部重畳するが,上述のとおり,本願明細書において「実質的にない」と「ない」は区別して定義されており,「ない」は「環境汚染を償う」という「実質的にない」とは異なる技術的意義を有するものであるから,たとえ数値範囲が一部重畳するとしても,本願明細書段落0033の「界面活性剤」が「実質的にない」との事項から,「界面活性剤」が「ない」との事項が自明であるということはできない。
ウ したがって,補正事項1は,本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえないから,特許法17条の2第3項の規定に適合しない。
3.独立特許要件について
上記2.検討したとおり,請求項1に係る補正事項1は,特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるが,仮にそうではなく,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的するものであるとしても,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明は,以下の3.1~3.5に示すとおり,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
3.1 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(上記1.ア,(イ))に記載されたとおりのものである。
3.2 引用例の記載
(1)引用例3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である,特開2002-69495号公報(以下「引用例3」という。)には,次の記載がある。(下線は当審で付加。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,シリコンウェハ等の半導体用基板上に半導体素子を形成する工程,特にCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)工程後の半導体用基板又は半導体素子の洗浄に用いられる洗浄剤組成物,並びにそれを用いる半導体用基板又は半導体素子の洗浄方法に関する。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って,本発明の目的は,配線材料に対する腐食が少なく,且つ微小粒子や金属不純物が付着した半導体用基板又は半導体素子の洗浄性に優れる洗浄剤組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち,本発明の要旨は,〔1〕還元剤を含有してなり,酸化還元電位(25℃)が+0.2V以下であり,pH(25℃)が3~12である洗浄剤組成物,及び〔2〕前記〔1〕記載の洗浄剤組成物を用いる半導体用基板又は半導体素子の洗浄方法に関する。」
「【0012】還元剤としては,亜硫酸塩類,チオ硫酸塩類,アルデヒド類,糖類,糖アルコール類,ギ酸,シュウ酸等の酸化階程の低い化合物があげられる。具体的には,亜硫酸ナトリウム,亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩類,チオ硫酸ナトリウム,チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩類,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド等のアルデヒド類,アラビノース,キシロース,リボース,キシルロース,リブロース等のペントース,グルコース,マンノース,ガラクトース,フルクトース,ソルボース,タガトース等のヘキソース,セドヘプツロース等のヘプトース,トレハロース,サッカロース,マルトース,セロビオース,ゲンチオビオース,ラクトース等の二糖類,ラフィノース,マルトトリオース等の三糖類,及び各単糖類からなる多糖類等の糖類,アラビット,アドニット,キシリット等のペンチット類,ソルビット,マンニット,ズルシット等のヘキシット類等の糖アルコール類,ギ酸,シュウ酸,コハク酸,乳酸,リンゴ酸,酪酸,ピルビン酸,クエン酸,1,4-ナフトキノン-2-スルホン酸,アスコルビン酸,イソアスコルビン酸等,及びそれらの誘導体等があげられる。」
「【0014】酸化還元電位の適正化及び経済的な観点から,洗浄剤組成物中における還元剤の含有量は,0.1重量%以上が好ましく,1.0重量%以上がより好ましい。また,被洗浄物への有機物残留性及び経済的な観点から,洗浄剤組成物中における還元剤の含有量は,30重量%以下が好ましく,20重量%以下がより好ましく,特に好ましくは10重量%以下である。」
「【0017】洗浄剤組成物のpH調整のために用いる化合物として,無機あるいは有機の塩基化合物を配合して行うことができる。
【0018】塩基化合物は,CMP工程後の電気的特性に及ぼす影響を考慮して,アンモニアおよび有機塩基化合物が好ましい。」
「【0022】微小粒子の除去性をより向上させる観点から,本発明の洗浄剤組成物に分散剤を含有させることが好ましい。
【0023】分散剤としては,カチオン界面活性剤,アニオン界面活性剤,ノニオン界面活性剤,両性界面活性剤等があげられるが,微粒子の除去性を高める観点から,アニオン界面活性剤が好ましい。」
「【0037】本発明の洗浄剤組成物への研磨スラリーに起因する各種研磨促進剤,研磨速度調整剤,分散剤,表面保護剤等の有機物の溶解を促進するために,有機溶媒を添加することが出来る。
【0038】有機溶媒としてはアミルベンゼン,オクタン等の炭化水素,アリルクロリド,2-エチルヘキシルクロリド等のハロゲン化炭化水素,アミルアルコール,アリルアルコール等のアルコール,メチルエチルケトン,アセチルアセトン等のケトン,アジピン酸ジエチル,アセト酢酸エチル等のエステル,エチレングリコール,プロピレングリコール等の多価アルコール,ブチルジグリコール,エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル,イソ吉草酸,2-エチルヘキサン酸等のカルボン酸及びその無水物,エチルフェノール,オクチルフェノール等のフェノール類,アセトアミド,アニリン等の含窒素化合物,ジエチル硫酸,チオフェン等の含硫黄化合物,ジクロロジフルオロメタン,トリフルオロ酢酸等のフッ素化合物があげられる。そのなかでも,市場入手性,危険性等を考慮すると多価アルコールが好ましい。
【0039】洗浄剤組成物中における有機溶媒の含有量は,0.5~50.0重量%が好ましく,1.0~20.0重量%がより好ましい。
【0040】還元剤,分散剤,キレート剤,有機酸等を均一に溶解させる溶媒としては,水が好ましく用いられる。
【0041】水は,本発明の洗浄剤組成物の目的を阻害しない物であれば特に限定されるものではない。水としては,超純水,純水,イオン交換水,蒸留水等があげられる。」
「【0048】
【実施例】実施例1~17及び比較例1~4
〔洗浄剤組成物の調製〕評価試験に先立ち,表1に示す組成を有する洗浄剤組成物を調製した。組成はそれぞれ重量%で示している。洗浄剤組成物のpHは,表1記載のpH調整剤にて調整した。また,洗浄剤組成物の調製に使用した化合物A~Uを表2に示す。
【0049】
【表1】
[図:0001388033000001.jpg]
【0050】
【表2】
[図:0001388033000002.jpg]
」
(2)記載事項の整理と引用発明3
上記(1)の摘記を整理すると,引用例3には以下の事項が記載されているものと理解できる。
・還元剤を含有してなり,酸化還元電位(25℃)が+0.2V以下であり,pH(25℃)が3~12である洗浄剤組成物。(段落0010)
・CMP工程後の半導体用基板又は半導体素子の洗浄に用いられる洗浄剤組成物であり,微小粒子や金属不純物が付着した半導体用基板又は半導体素子の洗浄性に優れる洗浄剤組成物であること。(段落0001,0009)
・洗浄剤組成物が,pH調整剤を含むこと。(段落0017,表1)
・洗浄剤組成物が,分散剤を含むこと。(段落0022,表1)
・洗浄剤組成物が,有機溶媒を含むこと。(段落0037)
・有機溶媒として,メチルエチルケトン,エチレングリコール,プロピレングリコール,エチレングリコールモノブチルエーテルが用いられること。(段落0038)
・溶媒として水が好ましく用いられること。(段落0040)
・洗浄剤組成物中における還元剤の含有量は,1.0重量%以上が好ましく,10重量%以下が特に好ましいこと(段落0014)
・洗浄剤組成物中における有機溶媒の含有量は,1.0~20.0重量%がより好ましいこと。(段落0039)
そうすると,引用例3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「還元剤を含有してなり,酸化還元電位(25℃)が+0.2V以下であり,pH(25℃)が3~12である洗浄剤組成物であって,
洗浄剤組成物が,pH調整剤と,分散剤と,有機溶媒と,水を含んでおり,
有機溶媒が,メチルエチルケトン,エチレングリコール,プロピレングリコール,エチレングリコールモノブチルエーテルのいずれかであり,
洗浄剤組成物中における還元剤の含有量は,1.0重量%以上,10重量%以下であり,有機溶媒の含有量は,1.0~20.0重量%である,
CMP工程後の半導体用基板又は半導体素子の洗浄に用いられ,微小粒子や金属不純物が付着した半導体用基板又は半導体素子の洗浄性に優れる洗浄剤組成物。」
3.3 補正発明1と引用発明3の対比
補正発明1と引用発明3とを対比すると,次のようになる。
ア 引用発明3の「還元剤」,「pH調整剤」「有機溶媒」及び「水」は,補正発明1の「還元剤」,「pH調整剤」,「有機添加剤」及び「水」に相当する。
イ 引用発明3の「分散剤」として,引用例3の段落0023には「カチオン界面活性剤,アニオン界面活性剤,ノニオン界面活性剤,良性界面活性剤等」があげられていることから,引用発明3の「分散剤」は補正発明1の「界面活性剤」に相当する。
ウ 引用発明3の「洗浄剤組成物」は水を含んでおり,引用例3の段落0040には水を溶媒として用いることが記載されているから,引用発明3の「洗浄剤組成物」は補正発明1と同じ「水性」の組成物であるといえる。
エ 引用発明3の「洗浄剤組成物」は,「CMP工程後の半導体用基板又は半導体素子の洗浄に用いられ,微小粒子や金属不純物が付着した半導体用基板又は半導体素子の洗浄性に優れる」ものであるところ,「セリア粒子」がCMP工程に使用される微小粒子であることは当業者の技術常識であるから,補正発明1と引用発明3は,「セリア粒子と化学機械研磨(CMP)汚染物質とを,前記粒子とCMP汚染物質とをその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに適している」組成物である点で一致する。
オ 引用発明3の「有機溶媒」は「メチルエチルケトン,エチレングリコール,プロピレングリコール,エチレングリコールモノブチルエーテルのいずれか」であるから,補正発明1と引用発明3は,「少なくとも1つの有機添加剤が,・・・エチレングリコール,プロピレングリコール,・・・メチルエチルケトン,・・・エチレングリコールモノブチルエーテル,・・・及びそれらの組合せからなる群から選択される種を含む」ものである点で一致する。
以上のア~オによれば,補正発明1と引用発明3の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
<一致点>
「少なくとも1つのpH調整剤と,少なくとも1つの還元剤と,少なくとも1つの有機添加剤と,水とを含む水性除去組成物であって,水性除去組成物が界面活性剤を含み,セリア粒子と化学機械研磨(CMP)汚染物質とを,前記粒子とCMP汚染物質とをその上に有するマイクロ電子デバイスから除去するのに適している水性除去組成物であって,
少なくとも1つの有機添加剤が,2-ピロリジノン,1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン(HEP),グリセロール,1,4-ブタンジオール,テトラメチレンスルホン,ジメチルスルホン,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,テトラグライム,ジグリム,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン,アセトン,イソプロパノール,オクタノール,エタノール,ブタノール,メタノール,イソホロン,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE),トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGBE),エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE),ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGHE),エチレングリコールフェニルエーテル,ジエチレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME),トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME),ジプロピレングリコールジメチルエーテル,ジプロピレングリコールエチルエーテル,プロピレングリコールn-プロピルエーテル,ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE),トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル,プロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル,ジプロピレングリコールフェニルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,4-メチル-2-ペンタノン,2,4-ジメチル-3-ペンタノン,シクロヘキサノン,5-メチル-3-ヘプタノン,3-ペンタノン,5-ヒドロキシ-2-ペンタノン,2,5-ヘキサンジオン,4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン,アセトン,ブタノン,2-メチル-2-ブタノン,3,3-ジメチル-2-ブタノン,4-ヒドロキシ-2-ブタノン,シクロペンタノン,2-ペンタノン,3-ペンタノン,1-フェニルエタノン,アセトフェノン,ベンゾフェノン,2-ヘキサノン,3-ヘキサノン,2-ヘプタノン,3-ヘプタノン,4-ヘプタノン,2,6-ジメチル-4-ヘプタノン,2-オクタノン,3-オクタノン,4-オクタノン,ジシクロヘキシルケトン,2,6-ジメチルシクロヘキサノン,2-アセチルシクロヘキサノン,2,4-ペンタンジオン,メントン及びそれらの組合せからなる群から選択される種を含む,水性除去組成物。」
<相違点>
(相違点1)
補正発明1では,「水性除去組成物」が「0.001重量%未満の界面活性剤」を含むのに対し,引用発明3はそのような特定がされていない点。
(相違点2)
補正発明1では,少なくとも1つの有機添加剤及び少なくとも1つの還元剤が,約0.001:1から約10:1の範囲の重量パーセント比で存在」するのに対し,引用発明3では「有機溶媒」と「還元剤」の重量パーセント比について特定されていない点。
3.4 相違点についての判断
(1)相違点1について
本願明細書の段落0022の記載によれば,本願明細書においてある成分が「0.001重量%未満」であるとは,当該成分が「ない」ことを意味するといえる。そうすると,補正発明1において「0.001重量%未満の界面活性剤を含み」とは,「界面活性剤」が「ない」ことを規定しているものと理解できる。
一方,引用発明3の「分散剤」について,引用例3の段落0022には,「本発明の洗浄剤組成物に分散剤を含有させることが好ましい。」と記載され,表1の実施例6として,分散剤を含まない実施例も記載されている。これらの記載によれば,引用例3には,引用発明3における「分散剤」は任意成分であり,「洗浄剤組成物」に「分散剤」を含有させないことも示唆されていると理解できる。
そうすると,引用発明3において「分散剤」が「ない」態様とすること,すなわち,引用発明3において「分散剤」すなわち「界面活性剤」を「0.001重量%未満」含むようにすることは,引用例3の記載から当業者が適宜なし得たことである。
したがって,引用発明3において上記相違点1に係る補正発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
引用発明3では,「洗浄剤組成物中における還元剤の含有量は,1.0重量%以上,10重量%以下であり,有機溶媒の含有量は,1.0~20.0重量%である」から,有機溶媒と還元剤が,約0.1:1(有機溶媒1重量%と還元剤10重量%)から約20:1(有機溶媒20.0重量%と還元剤1.0重量%)の範囲のいずれかの重量パーセント比をとるものと理解できる。
そして,引用発明3において,還元剤及び有機溶媒の含有量は,必要とされる酸化還元電位やpHを勘案しつつ適宜設定する量であるから,有機溶媒と還元剤の重量パーセント比が約0.001:1から約10:1の範囲内の所定の重量パーセント比とすることも,適宜なし得たことであるといえる。
また,本願明細書を参酌しても,重量パーセント比を「約0.001:1から約10:1の範囲」とすることによる,顕著な効果ないし異質な効果を認めることはできない。
したがって,引用発明3において上記相違点2に係る補正発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
3.5 独立特許要件についてのまとめ
上記3.4のとおり,補正発明1は引用発明3及び引用例3の記載から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4.補正却下の決定についてのまとめ
上記2.で検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に適合せず,仮にそうでないとしても,上記3.で検討したとおり,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しないものであるから,本件補正は,特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
令和3年8月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1~10に係る発明は,令和2年10月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであり,その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,上記第2,1.アの(ア)に本件補正前の請求項1として摘記したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1~2,4~5,7~8,10に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例3に記載された発明に基いて,また,請求項1~10に係る発明は,下記の引用例2~5に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例2.特表2016-526070号公報
引用例3.特開2002-69495号公報
引用例4.特開2010-163608号公報
引用例5.特表2016-519423号公報
3.引用例の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例3の記載は,上記第2の3.2に記載したとおりである。
4.対比・判断
上記第2の2.で検討したように,補正発明1は,本件補正前の請求項1について,上記第2の1.イに示した補正事項1の点を限定したものである。
そうすると,本願発明1の構成要件をすべて含み,これをさらに限定したものである補正発明1が,上記第2の3.で示した理由のとおり,引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明1も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.本願発明1についての結論
上述のとおり,本願発明1は,引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 結言
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-010272