特許拒絶査定不服審判
2021-008169
光学レンズ、撮像モジュール及びその組み立て方法
- 審判番号
- 2021-008169
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-539409
- 請求日
- 2021年06月22日
- 審決日
- 2022年03月25日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】▲寧▼波舜宇光▲電▼信息有限公司
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 清水 督史
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-539409「光学レンズ、撮像モジュール及びその組み立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日国際公開、WO2017/129006、平成31年 2月 7日国内公表、特表2019-503513〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年1月28日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月27日 :手続補正書の提出
令和 元年 9月27日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月29日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月16日付け:拒絶査定
令和 3年 6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
なお、請求人は、令和3年9月9日提出の上申書において、同年8月26日付け前置報告書に対する上申書を同年12月6日までに提出することを予定している旨、その日までに提出がないときは審判請求時の主張に基づいての審理を希望する旨を主張しているところ、その日までに上申書の提出はなかった。
第2 令和3年6月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年6月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
光学レンズ系であって、
複数の光学レンズであって、各前記光学レンズは、各前記光学レンズそれぞれの非感光領域に設けられた接続部を含み、前記複数の光学レンズは、前記接続部によって互いに連結されており、各前記光学レンズは、前記接続部の接続によって順次に嵌めて重ね合わせるように組立されて、レンズアセンブリを形成する、複数の光学レンズと、
前記レンズアセンブリを支持するためのレンズホルダーと、
を備え、
前記光学レンズ系において、少なくとも一つの前記光学レンズは予め組み立てられ、予め組み立てられた前記光学レンズの組立位置は、少なくとも一つの方向へ調整することができ、
前記レンズアセンブリ内の最も撮像側の光学レンズは、前記最も撮像側の光学レンズに設けられた接続部を介して前記レンズホルダーの上に直接接続され、
前記光学レンズ系の縁に外部の光を遮断するように遮光部が設けられ、前記接続部及び前記遮光部の両方が不透明であることを特徴とする光学レンズ系。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年10月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
光学レンズ系であって、
複数の光学レンズであって、各前記光学レンズは、各前記光学レンズそれぞれの非感光領域に設けられた接続部を含み、前記複数の光学レンズは、前記接続部によって互いに連結されており、各前記光学レンズは、前記接続部の接続によって順次に嵌めて重ね合わせるように組立されて、レンズアセンブリを形成する、複数の光学レンズと、
前記レンズアセンブリを支持するためのレンズホルダーと、
を備え、
前記光学レンズ系において、少なくとも一つの前記光学レンズは予め組み立てられ、予め組み立てられた前記光学レンズの組立位置は、少なくとも一つの方向へ調整することができ、
前記レンズアセンブリ内の最も撮像側の光学レンズは、前記最も撮像側の光学レンズに設けられた接続部を介して前記レンズホルダーの上に直接接続されることを特徴とする光学レンズ系。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光学レンズ系」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/156954号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同じ。)
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、レンズユニット、撮像モジュール、及び電子機器に関する。
背景技術
[0002] デジタルカメラ、携帯電話等の小型の電子機器に搭載される撮像モジュールは、複数のレンズを有するレンズユニットと、結像された光学像を電気信号へ変換する撮像素子とが、小型のパッケージ内に収容された電子部品として供給されている。近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い、この撮像モジュールにも更なる小型化、高機能化が求められている。
[0003] しかしながら、撮像モジュールの画像品質を向上するには、記録画素数の更なる増加による撮像素子サイズの増大が避けられず、また、ズーム機構、オートフォーカス機構、手振れ補正機構等を備える高機能化された撮像モジュールは、レンズ駆動機構が嵩張ることも相俟って、小型化が一層難しくなっている。この問題に鑑み、撮像モジュールをよりコンパクトにした構成が提案されている(特許文献1~3参照)。」
(イ)「発明が解決しようとする課題
[0006] 上記特許文献1~3の技術によれば、撮像モジュールを更にコンパクトにできるが、電子機器の小型化、高機能化の要求は年々厳さが増す一方で、これに対応するために、撮像モジュールには更なる改良が求められている。
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、更なる小型化、低背化ができるレンズユニット、撮像モジュール、及び電子機器を提供することにある。」
(ウ)「発明を実施するための形態
[0010] 以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、撮像モジュールの概略的な断面構成図である。撮像モジュール100は、レンズユニット110と、撮像素子11とを有し、図示しない基板や基枠等の支持部材に支持された状態で電子機器の筐体内に配置される。レンズユニット110は、撮像素子11の受光面に光学像を結像させる。
[0011] レンズユニット110は、複数の光学レンズ15(図示例では一例として4枚の光学レンズ15A,15B,15C,15D)が相互に接合されて一体となったレンズ積層体17を有する。このレンズ積層体17の側面には、レンズ側方遮光膜57が形成されている。各光学レンズ15A,15B,15C,15Dは、レンズ光軸Axを中心とする両レンズ面が異なるレンズ形状を有するメニスカスレンズである。一例として図2に、光学レンズ15Bの断面図を示す。
[0012] 光学レンズ15B(他の光学レンズも同様)は、撮像に有効な光線を透過するレンズ部19と、レンズ部19の外側に延設されるレンズ周辺部21とを有する。レンズ周辺部21とレンズ部19の一部には、レンズ部19に近接する遮光部13が配置されている。遮光部13は、レンズ側方遮光膜57に接続されるレンズ間遮光膜(詳細は後述する)を有する。レンズ間遮光膜は、開口又は迷光絞りの機能を有する遮光膜として説明するが、遮光膜に限らず、他の遮光部材であってもよい。レンズ間遮光膜は、レンズ部19の有効光学範囲を規定し、レンズ部19のレンズ間遮光膜が配置されない領域が有効光学範囲となる。
[0013] 最も被写体側に配置される光学レンズ15Dには、被写体側の面に前面遮光部24が設けられている。前面遮光部24は、開口絞りの機能を有している。
[0014] 各光学レンズ15の材料としては、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)等の高い光透過率、形状安定性、優れた加工性を有する透明樹脂材料が好適に用いられる。
[0015] <レンズ積層体の積層構造>
まず、レンズ積層体17の積層構造について説明する。レンズ周辺部21は、レンズ光軸に沿って隣接して配置される他の部材と接合する接合部12を有する。接合部12は、隣接する他の光学レンズ等の部材と接着する接着部22、及び他の光学レンズ等の部材に対してレンズ光軸Axを位置決めする係合部23を有する。
[0016] 図3にレンズ積層体17の概略的な分解図を示す。レンズ積層体17は、複数の光学レンズ15(15A,15B,15C,15D)が、それぞれの係合部23によって各レンズ光軸Axが同軸上に配置されるように位置決めされ、それぞれの接着部22でその位置決めされた位置で相互に接着されることで一体とされている。
[0017] 光学レンズ15Aと15Bとは、係合部23としての、光学レンズ15Aに形成される突起部23Aと、光学レンズ15Bに形成される受け部23Bとが組となって係合する。これら突起部23Aと受け部23Bは、相互に係合する位置が各レンズ光軸Axを一致させる位置となっている。同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、突起部23Aと受け部23Bとが組となって位置決めされる。
[0018] また、接着部22としての、光学レンズ15Aに形成される接着部22Aと、光学レンズ15Bに形成される接着部22Bとが、相互に接着される。光学レンズ15A,15Bは、接着部22A,22Bが接着されることで、レンズ光軸Axを一致させた状態で接合される。同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、接着部22A,22Bで接着されて全光学レンズ15A,15B,15C,15Dが一体となる。」
(エ)「[0019] ここで、接合部12の構造を更に詳細に説明する。以下、光学レンズ15Aと光学レンズ15Bの接合部を一例として説明するが、他の光学レンズの接合部は、これと同様であるのでここではその説明を省略する。
[0020] 図4に光学レンズ15A,15Bの接着部22と係合部23の断面をそれぞれ拡大して示した。光学レンズ15Aのレンズ側面25は、レンズ側面25の一方の周縁である外縁部27で外周部端面29と接続される。外周部端面29は、レンズ光軸Ax(図2参照)に対して垂直な面である。外周部端面29の内縁部31には、光学レンズ15Aの厚み方向外側に向けて突起部23Aが突設されている。
[0021] 突設された突起部23Aは頂面33を有し、外周部端面29の内縁部31から頂面33までの外周面は、厚み方向外側に向けて徐々に縮径するテーパ面35となっている。
[0022] 光学レンズ15Bのレンズ側面41は、レンズ側面41の外縁部43で外周部端面45と接続される。外周部端面45は、レンズ光軸Ax(図2参照)に対して垂直な面である。外周部端面45の内縁部47には、光学レンズ15Bの厚み方向内側に向けて窪む受け部23Bの受け部底面49が形成されている。
[0023] 光学レンズ15Bの外周部端面45の内縁部47から受け部底面49までの内周面は、突起部23Aのテーパ面35と等しい傾斜を有するテーパ面51となっている。
[0024] 次に、接合後の光学レンズの接合部における具体的な層構成について説明する。
図5に光学レンズ14Aと光学レンズ15Bとが接合されたレンズ周辺部における拡大断面図を示した。光学レンズ15A,15Bは、突起部23Aのテーパ面35と、受け部23Bのテーパ面51とが係合することで、レンズ光軸を合わせた位置で双方が重ね合わされる。
[0025] 光学レンズ15A,15Bは、光学レンズ15Aの外周部端面29に形成された接着剤層53によって接合されている。接着剤層53の材料としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤やアクリル樹脂系接着剤を用いることができる。また、用いる接着剤としては、生産性の観点からは、熱により硬化する樹脂組成物、或いは活性エネルギー線の照射(例えば紫外線、電子線)により硬化する樹脂組成物であることが好ましい。光学レンズとの接着性の観点からは、接着剤を構成する組成物は、光学レンズを構成する組成物に含まれる化合物と同等又は類似の構造を有する化合物を含有することが好ましい。
[0026] 光学レンズ15Bは、光学レンズ15Bの外周部端面45、テーパ面51、受け部底面49、及び受け部底面49からレンズ部19の外縁91までの範囲に、レンズ間遮光膜55がレンズ面に沿って形成されている。レンズ間遮光膜55は、光学レンズ15Bの光出射側で、レンズ周辺部21の外縁部43からレンズ部19の外縁91までの領域を覆っている遮光膜である。
[0027] 光学レンズ15Aと光学レンズ15Bとを接合する接着剤層53は、遮光性を有することが好ましい。接着剤層53が遮光性を有することで、レンズ内の内部反射光が他の光学レンズに及ぶことを防止できる。
[0028] 光学レンズ15Aのレンズ側面25、光学レンズ15Bのレンズ側面41、及び図1に示す他の光学レンズ15C,15Dのレンズ側面を含むレンズ積層体17の側面には、レンズ積層体17の側方からの外光を遮断するレンズ側方遮光膜57が形成されている。レンズ側方遮光膜57は、レンズ積層体17と一体に設けられ、レンズ積層体17自体も、全体が連続して成膜された一体構造体となっている。
[0029] レンズ間遮光膜55、レンズ側方遮光膜57のそれぞれに用いる遮光材料としては、遮光膜形成後の膜表面の反射に伴うフレアやゴースト等の光学性能の低下を防止するため、硬化状態で光沢度が低い材料が望ましい。具体的には、60度光沢度(JIS K-7105)が10%以下の遮光材料が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が最も好ましい。更に、遮光材料としては、できるだけ薄い膜で十分な光学濃度が得られるよう、遮光性のある顔料もしくは染料の含量が高いものが望ましい。
[0030] 遮光材料の顔料としては、特に、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化マンガン、グラファイトが少量で高い光学濃度を実現できるため好ましい。また、赤色色材、緑色色材、青色色材の混合による黒色色材を用いてもよい。
[0031] レンズ間遮光膜55の膜厚は、1~40μm、好ましくは20~30μmであり、レンズ側方遮光膜57の膜厚は、0.1~40μm、好ましくは2~30μmである。また、各遮光膜の硬度は3H以上、より好ましくは5H以上である(ISO/DIS15184(JIS K5600-5-4))。
[0032] レンズ間遮光膜55は、黒色顔料や黒色染料等の黒色色材を含むインクを印刷、塗布、スタンプ等により形成できる。特に、高い寸法精度が得られるインクジェット方式が好適であり、曲面上に非接触で遮光膜を形成できる。
[0033] インクジェット方式では、高精度に遮光膜の厚みを変更できる。そのため、レンズ周辺部21の遮光部13に他のレンズの一部を当接させて積層し、遮光部13を介して光学レンズ同士を固定する場合、遮光膜の厚みを変更することで、光学レンズの支持姿勢の調整やレンズ同士の間隔の増減調整を高精度に行える。
・・・略・・・
[0035] 本構成の光学レンズ15は、レンズ間遮光膜55をインクジェット方式で形成している。そのため、光学レンズ毎に異なる形状、範囲を有するレンズ間遮光膜55であっても、インク塗布領域の変更が容易に行え、光学レンズの多品種生産に低コストで対応できる。また、紫外線硬化型のUVインクを使用すれば、熱処理を伴うことなく、インク着弾後、紫外線照射により即時に硬化させることができる。このため、熱に弱いプラスチックレンズに対して、インク着弾位置の精度を高められる。
[0036] レンズ間遮光膜55をインクジェット方式で形成する際、インク1回あたりの吐出量を0.1fl以上、10pl以下にすることが好ましい。その場合、インク着弾後のインク流れやインク跳ねの発生が少なくなり、着弾位置(エッジ位置)の精度をより高められる。特に、遮光膜の被形成面に凹凸が多い場合であっても、高い着弾位置精度が得られる。また、個々のインク液滴の着弾面積が小さいため、遮光部13の寸法の微調整が容易に行える。そして、吐出1回あたりのインク液滴の体積が小さく、着弾後の厚みが薄いため、インク堆積量をきめ細かに調整できる。
[0037] レンズ積層体17の側面全体は、各光学レンズ15を覆うレンズ側方遮光膜57が形成される。光学レンズ15のレンズ側面25,l41,・・・にレンズ側方遮光膜57を形成すると、レンズ側方からの外光を遮断できることに加えて、レンズ内に生じる内部反射光も低減できる。つまり、内部反射光はレンズ側面25,41,・・・に必ず1回は当たるので、レンズ側方遮光膜57が存在することで確実に反射光強度を低減できる。レンズ側方遮光膜57は、膜状に限らず、シート状の遮光板をレンズ積層体17の側方を覆って設けた構成としてもよい。ただし、遮光板の端面反射はゴースト発生の可能性があるため、レンズ側面25,l41,・・・に遮光膜を形成した方がより好ましい。
[0038] 本レンズユニット110の構成によれば、各光学レンズを保持して位置決めを行うレンズホルダが不要となる。また、レンズホルダが担っていた遮光機構を、光学レンズのレンズ側面を含むレンズ積層体17の側方に形成したレンズ側方遮光膜57が担うことで、レンズユニット110の外径が小さく抑えられ、レンズユニット110を小型化できる。
[0039] また、光学レンズ同士を直接組み合わせるため、各光学レンズを高精度で位置決めできる。そして、光学レンズ15に直接的にレンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57が形成されることで、レンズ内面での反射率を下げ、フレアやゴーストの発生を低減できる。また、接着部22に対しても遮光膜を形成することで、遮光膜の硬化に伴う接着力によってレンズの接合強度が増大する。
・・・略・・・
[0042] なお、図5に示す接着剤層53は、レンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57と同じ材料を、接着剤の代わりに用いてもよい。
[0043] 上記構成のレンズユニット110によれば、各光学レンズ15のレンズ周辺部21に形成される接合部同士を接着することで、各光学レンズ15を一体化されたレンズ積層体17として扱うことができる。レンズ積層体17は、その外側に各光学レンズ15を支持するレンズホルダを有しない構成であるため、小径化に有利な構成となる。この小径なレンズユニットを素子ユニットと組み合わせることで、小型の撮像モジュールを構築できる。
[0044] 一般に、光学レンズの枚数が増えるほど内部反射の機会が増えるが、本構成のように例えば4枚以上の多数枚の光学レンズ15を備えたレンズ積層体17であっても、レンズ間遮光膜55によって、レンズ内に生じる内部反射光が他のレンズに及ぶことを防止できる。
[0045] 本レンズユニット110の光学レンズは、レンズ光軸Axに沿って隣接する光学レンズ同士の間にレンズ間遮光膜55を形成するため、光学レンズ間に遮光板を介装する構成と比較して、よりレンズユニット110の低背化が図れる。また、特に広角撮影時にはレンズ部の外縁まで光線が進入しやすくなり、内部反射によって迷光が増加する傾向が高まる。しかし、その場合でも、レンズ間遮光膜55は遮光板よりも内部反射が少ないため、迷光を低減してフレアやゴーストの発生を防止できる。」
(オ)図1~5は次のとおりである。
[図1]
[図:0001387962000001.jpg]
[図2]
[図:0001387962000002.jpg]
[図3]
[図:0001387962000003.jpg]
[図4]
[図:0001387962000004.jpg]
[図5]
[図:0001387962000005.jpg]
(カ)上記(エ)の[0019]には、接合部12の構造について、「光学レンズ15Aと光学レンズ15Bの接合部を一例として説明するが、他の光学レンズの接合部は、これと同様である」との記載があることから、同[0025]~[0027]に記載された光学レンズ15Aと光学レンズ15Bの接合部の構造は、光学レンズ15Bと光学レンズ15Cの接合部、光学レンズ15Cと光学レンズ15Dの接合部についても同様であると解される。
イ 以上から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、引用発明の各構成の根拠箇所を参考として当審で付した。)
引用発明
「レンズユニット110は、
撮像素子11の受光面に光学像を結像させるものであり([0010])、
複数の光学レンズ15(4枚の光学レンズ15A,15B,15C,15D)が相互に接合されて一体となったレンズ積層体17を有し、各光学レンズ15A,15B,15C,15Dは、レンズ光軸Axを中心とする両レンズ面が異なるレンズ形状を有するメニスカスレンズであり([0011])、
光学レンズ15B(他の光学レンズも同様)は、撮像に有効な光線を透過するレンズ部19と、レンズ部19の外側に延設されるレンズ周辺部21とを有し、レンズ周辺部21とレンズ部19の一部には、レンズ部19に近接する遮光部13が配置されており、遮光部13は、レンズ側方遮光膜57に接続されるレンズ間遮光膜を有し、レンズ間遮光膜は、レンズ部19の有効光学範囲を規定し、レンズ部19のレンズ間遮光膜が配置されない領域が有効光学範囲となり([0012])、
レンズ周辺部21は、レンズ光軸に沿って隣接して配置される他の部材と接合する接合部12を有し、接合部12は、隣接する他の光学レンズ等の部材と接着する接着部22、及び他の光学レンズ等の部材に対してレンズ光軸Axを位置決めする係合部23を有し([0015])、
レンズ積層体17は、複数の光学レンズ15(15A,15B,15C,15D)が、それぞれの係合部23によって各レンズ光軸Axが同軸上に配置されるように位置決めされ、それぞれの接着部22でその位置決めされた位置で相互に接着されることで一体とされており([0016])、
光学レンズ15Aと15Bとは、係合部23としての、光学レンズ15Aに形成される突起部23Aと、光学レンズ15Bに形成される受け部23Bとが組となって係合し、これら突起部23Aと受け部23Bは、相互に係合する位置が各レンズ光軸Axを一致させる位置となっており、同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、突起部23Aと受け部23Bとが組となって位置決めされ([0017])、
接着部22としての、光学レンズ15Aに形成される接着部22Aと、光学レンズ15Bに形成される接着部22Bとが、相互に接着され、光学レンズ15A,15Bは、接着部22A,22Bが接着されることで、レンズ光軸Axを一致させた状態で接合され、同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、接着部22A,22Bで接着されて全光学レンズ15A,15B,15C,15Dが一体となり([0018])、
光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dは、それぞれ、光学レンズ15A、光学レンズ15B、光学レンズ15Cの外周部端面29に形成された接着剤層53によって接合されており([0025]、上記ア(カ))、
光学レンズ15B,15C,15Dは、それぞれの外周部端面45、テーパ面51、受け部底面49、及び受け部底面49からレンズ部19の外縁91までの範囲に、レンズ間遮光膜55がレンズ面に沿って形成されており、レンズ間遮光膜55は、各光学レンズ15B,15C,15Dの光出射側で、レンズ周辺部21の外縁部43からレンズ部19の外縁91までの領域を覆っている遮光膜であり([0026]、上記ア(カ))、
光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dをそれぞれ接合する接着剤層53は、遮光性を有し([0027]、上記ア(カ))、
光学レンズ15Aのレンズ側面25、光学レンズ15Bのレンズ側面41、及び他の光学レンズ15C,15Dのレンズ側面を含むレンズ積層体17の側面には、レンズ積層体17の側方からの外光を遮断するレンズ側方遮光膜57が形成されており([0028])、
レンズ間遮光膜55、レンズ側方遮光膜57の遮光材料としては、できるだけ薄い膜で十分な光学濃度が得られるよう、遮光性のある顔料もしくは染料の含量が高いものが望ましく([0029])、
レンズ間遮光膜55は、黒色顔料や黒色染料等の黒色色材を含むインクを印刷、塗布、スタンプ等により形成でき、高い寸法精度が得られるインクジェット方式が好適であり、曲面上に非接触で遮光膜を形成でき([0032])、
接着剤層53は、レンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57と同じ材料を、接着剤の代わりに用いてもよい([0042])、
レンズユニット110。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「レンズユニット110」は、本件補正発明の「光学レンズ系」と、「光学レンズ装置」である点で共通する。
(イ)引用発明において、「光学レンズ15B(他の光学レンズも同様)は、撮像に有効な光線を透過するレンズ部19と、レンズ部19の外側に延設されるレンズ周辺部21とを有し」、「レンズ周辺部21は、レンズ光軸に沿って隣接して配置される他の部材と接合する接合部12を有し、接合部12は、隣接する他の光学レンズ等の部材と接着する接着部22、及び他の光学レンズ等の部材に対してレンズ光軸Axを位置決めする係合部23を有し」、「レンズ積層体17は、複数の光学レンズ15(15A,15B,15C,15D)が、それぞれの係合部23によって各レンズ光軸Axが同軸上に配置されるように位置決めされ、それぞれの接着部22でその位置決めされた位置で相互に接着されることで一体とされ」、「接着部22としての、光学レンズ15Aに形成される接着部22Aと、光学レンズ15Bに形成される接着部22Bとが、相互に接着され、光学レンズ15A,15Bは、接着部22A,22Bが接着されることで、レンズ光軸Axを一致させた状態で接合され、同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、接着部22A,22Bで接着されて全光学レンズ15A,15B,15C,15Dが一体とされており」、「接着剤層53」は、「光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dをそれぞれ接合する」ことから、各光学レンズ15A,15B,15C,15Dは、それぞれのレンズ周辺部21に設けられた接着部22(接着部22A,22B)を有し、光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dは、接着部22に設けられた接着剤層53によりそれぞれ接合して互いに連結し、レンズ積層体17を形成するものといえる。
ここで、引用発明の「光学レンズ15Aと15Bとは、係合部23としての、光学レンズ15Aに形成される突起部23Aと、光学レンズ15Bに形成される受け部23Bとが組となって係合し、これら突起部23Aと受け部23Bは、相互に係合する位置が各レンズ光軸Axを一致させる位置となっており、同様に、光学レンズ15Bと15Cの間、及び光学レンズ15Cと15Dの間も、突起部23Aと受け部23Bとが組となって位置決めされ」るから、複数の光学レンズ15は、光学レンズ15Aと15Bの間、光学レンズ15Bと15Cの間、光学レンズ15Cと15Dの間でそれぞれ組となって係合するところ、そうである以上、これらの各光学レンズは、順次に嵌めて重ね合わせるように組み立てられるものと解される。
また、引用発明において、「レンズ間遮光膜55は、各光学レンズ15B,15C,15Dの光出射側で、レンズ周辺部21の外縁部43からレンズ部19の外縁91までの領域を覆っている遮光膜」であり、「レンズ間遮光膜は、レンズ部19の有効光学範囲を規定し、レンズ部19のレンズ間遮光膜が配置されない領域が有効光学範囲とな」るものであり、「接着剤層53」は、「光学レンズ15A、光学レンズ15B、光学レンズ15Cの外周部端面29に形成され」るところ、「接着剤層53」として「レンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57と同じ材料を、接着剤の代わりに用い」たものは、「レンズ間遮光膜55」が「接着剤層53」の機能を兼ね備えて、両者が一つの膜(以下「接着剤層53を兼ねたレンズ間遮光膜55」という。)として設けられたものと解されることを踏まえると、当該「接着剤層53を兼ねたレンズ間遮光膜55」は、レンズ積層体17において、光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dを連結するものであって、光学レンズ15A,15B,15C,15Dのそれぞれの有効光学範囲外の領域に設けられたものといえるから、本件補正発明にいう「各前記光学レンズそれぞれの非感光領域に設けられた」「接続部」に当たる。
そうすると、引用発明の「複数の光学レンズ15(4枚の光学レンズ15A,15B,15C,15D)」、「接着剤層53を兼ねたレンズ間遮光膜55」、「レンズ積層体17」は、それぞれ、本件補正発明の「複数の光学レンズ」、「接続部」、「レンズアセンブリ」に相当し、引用発明は、本件補正発明の「複数の光学レンズであって、各前記光学レンズは、各前記光学レンズそれぞれの非感光領域に設けられた接続部を含み、前記複数の光学レンズは、前記接続部によって互いに連結されており、各前記光学レンズは、前記接続部の接続によって順次に嵌めて重ね合わせるように組立されて、レンズアセンブリを形成する、複数の光学レンズ」との構成を有する。
(ウ)本件補正発明の「光学レンズ系の縁に外部の光を遮断するように遮光部が設けられ」るとの特定事項に関し、本件補正後の明細書の【0093】には、「レンズアセンブリ11の縁に遮光部1115を設置し、即ち、上記光学レンズ111のぞれぞれの端に黒塗り処理及び消光処理を行って遮光層を形成する。」と記載されており、同図1Aないし図2から、レンズアセンブリ11の側面に遮光部1115が設けられている点が看て取れることを踏まえると、本件補正発明の上記特定事項には、「レンズアセンブリ」の側面に外部の光を遮断するように遮光部が設けられるとの態様が含まれているものと解される。
他方、引用発明において、「光学レンズ15Aのレンズ側面25、光学レンズ15Bのレンズ側面41、及び他の光学レンズ15C,15Dのレンズ側面を含むレンズ積層体17の側面には、レンズ積層体17の側方からの外光を遮断するレンズ側方遮光膜57が形成されて」おり、「レンズ側方遮光膜57」が「レンズ積層体17」(本件補正発明の「レンズアセンブリ」に相当。)の側面に形成されているといえるから、引用発明の「レンズ側方遮光膜57」は、本件補正発明の「遮光部」に相当し、引用発明は、本件補正発明の「前記光学レンズ系の縁に外部の光を遮断するように遮光部が設けられ」との構成を有する。
また、引用発明において、「光学レンズ15A,15B、光学レンズ15B,15C、光学レンズ15C,15Dをそれぞれ接合する接着剤層53は、遮光性を有し」、「レンズ間遮光膜55、レンズ側方遮光膜57の遮光材料としては、できるだけ薄い膜で十分な光学濃度が得られるよう、遮光性のある顔料もしくは染料の含量が高いものが望ましく」、「接着剤層53は、レンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57と同じ材料を、接着剤の代わりに用いてもよい」のであるから、引用発明の「接着剤層53を兼ねたレンズ間遮光膜55」(本件補正発明の「接続部」に相当。)及び「レンズ側方遮光膜57」(本件補正発明の「遮光部」に相当。)は、いずれも本件補正発明にいう「不透明」なものであることは明らかであり、よって、引用発明は、本件補正発明の「前記接続部及び前記遮光部の両方が不透明」との構成を有する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「光学レンズ装置であって、
複数の光学レンズであって、各前記光学レンズは、各前記光学レンズそれぞれの非感光領域に設けられた接続部を含み、前記複数の光学レンズは、前記接続部によって互いに連結されており、各前記光学レンズは、前記接続部の接続によって順次に嵌めて重ね合わせるように組立されて、レンズアセンブリを形成する、複数の光学レンズを備え、
前記光学レンズ系の縁に外部の光を遮断するように遮光部が設けられ、前記接続部及び前記遮光部の両方が不透明である光学レンズ装置。」
【相違点1】
「複数の光学レンズ」を備えた「光学レンズ装置」が、本件補正発明は、「レンズアセンブリを支持するためのレンズホルダー」を備えた「光学レンズ系」であって、「前記レンズアセンブリ内の最も撮像側の光学レンズは、前記最も撮像側の光学レンズに設けられた接続部を介して前記レンズホルダーの上に直接接続され」るのに対し、引用発明は、「レンズホルダー」について特定しておらず、「光学レンズ系」といえるか不明である点。
【相違点2】
本件補正発明は、「少なくとも一つの前記光学レンズは予め組み立てられ、予め組み立てられた前記光学レンズの組立位置は、少なくとも一つの方向へ調整することができ」るのに対し、引用発明は、そうではない点。
(4)判断
ア 相違点1について
引用発明の「レンズユニット110」は、「撮像素子11の受光面に光学像を結像させるもの」であるから、引用発明においては、レンズユニット110を透過する光が撮像素子11に適正な光学像を結ぶようにするために、撮像素子11とレンズユニット110の最も撮像側の光学レンズ15Aとの間を所定の位置関係で固定するための構造を備える必要があることは明らかである。
この点、引用文献1の[0043]の「各光学レンズ15のレンズ周辺部21に形成される接合部同士を接着することで、各光学レンズ15を一体化されたレンズ積層体17として扱うことができる。レンズ積層体17は、その外側に各光学レンズ15を支持するレンズホルダを有しない構成であるため、小径化に有利な構成となる。この小径なレンズユニットを素子ユニットと組み合わせることで、小型の撮像モジュールを構築できる。」との記載に照らせば、引用発明においては、レンズ積層体17の側方に支持部材を設けずに各光学レンズ15を一体化しているため、レンズユニットの小径化が図られており、これを素子ユニットと組み合わせて小型の撮像モジュールを構築できることが把握されるから、撮像素子11と光学レンズ15Aとを所定の位置関係で固定するための構造を具体化するにあたっては、光学レンズ15Aの側面ではなく、光学レンズ15Aの撮像素子11側(光学レンズ15B側とは反対側)の面に固定構造を設けることが自然である。
そして、撮像光学系において、撮像素子とレンズアセンブリ内の最も撮像側の光学レンズとの位置関係を規定するための支持部材を、当該光学レンズの撮像素子側の面に接する位置に介在させることは、例えば、原査定が提示した特開2010-197816号公報(特に、【0017】、【0024】、図1、5を参照。)、国際公開第2013/015406号(特に、[0078]~[0083]、図11を参照。)のほか、登録実用新案第3154544号公報(特に、【0033】~【0036】、図6を参照。)にみられるように周知である。
そうすると、引用発明において、撮像素子11とレンズユニット110の最も撮像側の光学レンズ15Aとの間を所定の位置関係で固定するための構造を備えるために、光学レンズ15Aにおける撮像素子11側の面に、撮像素子との位置関係を規定するための支持部材を備えるようにすることは、当業者が自然になし得たことである。その際、上記支持部材が光学レンズ15Aの有効光学範囲と重なると、当該支持部材が、撮像に有効な光線の妨げとなってしまうことは明らかであり、また、一般に部材同士の位置関係を固定するために両者を接着することは常套手段であるから、光学レンズ15Aの有効光学範囲外の部分と上記支持部材とを接着するようにすること、すなわち、本件補正発明にいう「前記最も撮像側の光学レンズに設けられた接続部を介して前記レンズホルダーの上に直接接続され」たものとすることは、技術の具体的適用に伴う設計事項にすぎない。
イ 相違点2について
レンズユニットの解像性能をできるだけ高くすることは、当業者にとって自明の課題であるところ、当該課題を解決するために、各光学レンズの光軸を一致させるための調整(調芯)をすることが広く知られており、例えば、複数の光学レンズからなるレンズユニットの組立てにおいて、少なくとも一つの光学レンズを他の光学レンズ上に配置し、前記少なくとも一つの光学レンズを前記他の光学レンズに対して移動させて解像性能が高くなるように調芯し、調芯後、前記少なくとも一つの光学レンズを他の光学レンズ上に固定することは、例えば、原査定が提示した特開2009-282264号公報(特に、【0005】、【0095】~【0099】、図8Aを参照。)のほか、特開2005-18024号公報(特に、請求項2、【0006】~【0008】、【0057】~【0066】、図5を参照。)にみられるように周知技術である。
そうすると、引用発明においてより解像性能の高いレンズユニットとするために、当該周知技術を採用し、相違点2に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、本件補正発明の「前記光学レンズ系の縁に外部の光を遮断するように遮光部が設けられ、前記接続部及び前記遮光部の両方が不透明である」点に関し、「引用文献1の遮光フィルムは、レンズの表面に遮光材をコーティングするという一般的な方法で形成されている。しかしながら、本願請求項1発明において、黒塗り処理及び消光処理は、遮光効果を達成するために、各光学レンズの前面、背面、及び側面の縁で実行される。引用文献1で使用される遮光部を形成するための技術的解決策が、本出願のそれとは完全に異なることは明らかである。引用文献1には、レンズ自体を不透明に設定するための開示も示唆もない。言い換えれば、引用文献1からは、当業者がレンズ自体を不透明な遮光部及び接続部を設定する動機は得られない。」と主張している(なお、下線は、請求人が付したものである。)。
請求人の主張は、判然としないところがあるが、(i)遮光部に関して、本件補正発明では、黒塗り処理及び消光処理を施すものであるのに対し、引用発明では、遮光材をコーティングしているものであること、(ii)黒塗り処理及び消光処理を行う場所に関して、本件補正発明では、各レンズの前面、背面及び側面の縁であるのに対し、引用発明では、レンズの表面であること、(iii)引用文献1には、レンズ自体を不透明に設定するための開示も示唆もないこと、をいうものと解される。
そこで上記主張について検討すると、まず、(i)について、請求人のいう「黒塗り処理及び消光処理」は、そもそも本件補正発明が特定する事項ではないし、それを措くとしても、本件補正後の明細書に「本好適な実施例において、黒塗り及び消光方式は、塗装、インクコーティング、スクリーン印刷及びフォトリソグラフィなどの方法のうち1つまたは複数を選択することができる」(【0095】)、「光学レンズ111の非感光領域の黒塗り処理及び消光処理に用いられる材料は、黒色接着剤を選択することができる。これにより、上記光学レンズ111のそれぞれに対して黒塗り及び消光を行って上記接続部1113及び上記遮光部1115を形成して、従来の絞りと鏡筒構造体を省略することができる」(【0101】)と記載されていることからすると、「黒塗り処理及び消光処理」により得られる本件補正発明の「遮光部」は、光学レンズの表面をコーティングした黒色接着剤からなる態様を含んでいると解される。他方、引用発明の「遮光部」も、「レンズ間遮光膜55、レンズ側方遮光膜57の遮光材料としては、できるだけ薄い膜で十分な光学濃度が得られるよう、遮光性のある顔料もしくは染料の含量が高いものが望ましく」、「レンズ間遮光膜55は、黒色顔料や黒色染料等の黒色色材を含むインクを印刷、塗布、スタンプ等により形成でき、高い寸法精度が得られるインクジェット方式が好適であり、曲面上に非接触で遮光膜を形成でき」、「接着剤層53は、レンズ間遮光膜55やレンズ側方遮光膜57と同じ材料を、接着剤の代わりに用いてもよい」ものであり、光学レンズ表面をコーティングした黒色接着剤であるといえるから、上記「黒塗り処理及び消光処理」を行っているものといえる。請求人は、(iii)のとおり、引用発明は、レンズ自体を不透明に設定するものではない旨主張するが、引用発明も、「黒塗り処理及び消光処理」を行っているものといえることは、上記のとおりである。
次に、(ii)について、上記のとおり、本件補正発明には、黒塗り処理及び消光処理を行うことについて特定されていないし、「接続部」及び「遮光部」に関して引用発明との間に相違点がないことは、上記(3)において説示したとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年6月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成2年10月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本件補正前の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「光学レンズ系」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-008169