2021-006507
低培地量を用いた血液培養システム
- 審判番号
- 2021-006507
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-559540外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年05月21日
- 審決日
- 2022年10月12日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】齋藤 正巳
- 【請求人代理人】臼井 伸一
- 【請求人代理人】本田 亜希
- 分類
- P18 .121-WZ (C12M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年5月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年1月19日に拒絶査定がなされ、同年5月21日に拒絶査定不服審判が請求され(同年6月25日に請求の理由が補正された。)、令和4年3月9日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年9月5日付けで意見書および手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和4年9月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】血液サンプルを培養する方法であって、40ml以下の容量を有し、かつ可変量の培養培地を有する血液培養ボトルを備え、該血液培養ボトルは、その中に配置されるあらかじめ定められた体積の該培養培地を有し、該あらかじめ定められた体積は、血液体積と培養培地体積の比が1:1となるように選択され、該血液培養ボトルは、その中の微生物の増殖の結果で生じる該血液培養ボトル内での変化を検出することが可能であるセンサーを有し、血液体積が1mlから10mlであって、該血液体積を血液培養ボトルに接種する工程と、該あらかじめ定められた体積に接種された血液培養ボトルを培養する工程と、該センサーからシグナルを検出する工程を有し、更に検出されたシグナルに基づいて、該接種された血液培養ボトル内における微生物の増殖を判定する工程を有し、該微生物が、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ネイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia)、及びストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)の群から選択されることを特徴とする血液サンプルを培養する方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和4年3月9日付けで当審より通知した拒絶理由は、この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献等一覧
1.国際公開第2014/039498号
第4 当審の判断
1.引用文献1の記載事項
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本願の優先日(2015年(平成27年)5月14日)より前に公知になった国際公開第2014/039498号(以下、「引用文献1」という)には、次のとおりの記載がある。
なお、引用文献1は、英文であるから、当審による翻訳文を記載する。
引1a
「関連技術の説明[0002] 敗血症は、重大な医療問題であり、全身性炎症反応症候群またはSIRSと識別され、全身の炎症状態、および既知のまたは疑わしい感染症の存在を特徴とする。患者は、血液、尿、肺、皮膚または他の組織中の微生物に応答してこの免疫系の炎症反応を生じることがある。敗血症の主要な原因の1つは、血流感染(BSI)である。BSIは、細菌の成長を促進する制御された雰囲気中で血液サンプルをインキュベートされた血液培養により最も一般的に診断される。[0003] ・・・現在の自動化血液培養システムは、典型的には、血液サンプル中の感染性微生物の存在の検出に12-24時間かかり、感染性微生物の存在を完全に排除するのに5日かかる。現在のシステムでは、陽性血液培養を継代培養、同定試験、抗菌剤感受性試験を行ない感染性微生物の同定を行うには更に12-48時間かかる。検出処理における遅延は、患者の治療過程に有害であり、あまりに遅いと、治療経過を変化させ、生命が失われる結果にもなり得る。[0004] したがって、血液サンプル中の感染性微生物の存在を検出するために必要な時間を短縮し、24時間未満にすることが有用である。」
引1b
「図1[図:0001394402000001.jpg]」
引1c
「[0057] 収集容器82は、以下の代表的な材料の1つ以上から形成されてもよい:ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、またはそれらの組み合わせ。収集容器82は、単一の壁または複数の壁の構成を含むことができる。さらに、収集容器82は、適切な生物学的サンプルを得るための実用的なサイズで構築されてもよい。例えば、収集容器82は、当技術分野で知られている、従来の大容量試験管、小容量試験管、または微量試験管と同様のサイズであってよい。1つの特定の実施形態において、収集容器82は、当技術分野で知られている、標準の13ml真空採血管であってもよい。」
引1d
「[0065] 図1-1Aで示されるように、装置80はまた、微生物の存在を検出することができる検出素子91を含んでもよい。1つの構成では、検出素子91は、内部94内に配置され、試料収集容器82の閉じた底端部88に近接している。検出素子91は、光学、電子、熱、電気化学、電気抵抗、静電容量、酸化還元指示薬、粒子数および/または濁度による機構を含むことができる。1つの構成では、検出素子91は、微生物の増殖中に生産される微生物、代謝エネルギー及び/または代謝産物、例えば、二酸化炭素、pH、又は揮発性有機化合物微生物を検出するように構成されてもよい。」
引1e
「例[0089] 例1:図1-11を参照して説明されるように、機械的セパレータを備える試験管を用いて、Staph aureus(黄色ブドウ球菌)を用いる血液培養検査を実施した。試験管の底に固体状態の酸素センサーを有していた。4mlの好気的溶菌増殖培地、4mlの血液、10-100cfuの微生物から構成される混合物を各試験管に接種した。好気的溶菌成長培地は溶解試薬としてのサポニンおよび微生物の成長を支援する成長栄養素を含有する。次いで、試験管を10分間2200xgで遠心分離し、機械的セパレータを試験管の底に沈め、生物の成長のための約500μ1の空間を形成する。Staph aureusの2株の増殖曲線は図21に示される。これらの2株の検出時間(TTD)は9時間であり、BACTECTM blood cultures Standard Aerobic mediaのTTDである通常12時間よりも25%速い。[0090] 例2:図1-11を参照して説明されるように、機械的セパレータを備える試験管を用いて、Candida glabrata(カンジダ・グラブラタ)を用いる血液培養検査を実施した。試験管の底に固体状態の酸素センサーを有していた。4mlの好気的溶菌増殖培地、4mlの血液、10-100cfuの生物体から構成される混合物を各試験管に接種した。好気的溶菌成長培地は溶解試薬としてのサポニンおよび微生物の成長を支援する成長栄養素を含有する。次いで、試験管を10分間2200xgで遠心分離し、機械的セパレータを試験管の底に沈め、生物の成長のための約500μ1の空間を形成する。Candida glabrataの2株の増殖曲線は図22に示される。これらの2株の検出時間(TTD)は14時間と18時間であり、BACTECTM blood cultures Standard Aerobic mediaのTTDよりも25%速い。」
引1f
「請求の範囲1.微生物の存在を検出するための装置であって、開口頂端部、底端部、およびそれらの間に伸びる内部を区画する側壁を備える検体収集容器;開口頂端部をシールするために検体収集容器と係合可能なクロージャ;続きを表示(全13行)検体採取容器の内部に配置され、検体収集容器内の第1および第2の相に流体試料を分離するために適合された機械的セパレータであって、少なくとも2の異なる密度領域か密度勾配より選択される少なくとも1つの特徴を備える機械的セパレータ;および、検体収集容器の内部に配置された微生物の存在を検出することができる検出素子を含む、装置。・・・34.流体サンプル中の微生物の存在を検出するための方法であって、流体試料を、内部を画定する側壁を有し、その内部に、流体試料を検体収集容器内で第1および第2の相に分離する機械的セパレータと、内部に配置された微生物の存在を検出することができる検出素子を含む、検体収集容器内に供給し、濃縮微生物を単離するために検体収集容器に回転力を加え、濃縮微生物の領域内で、微生物の存在または非存在を検出素子により検出することを含む、方法」
2.引用発明
引用文献1の[0089]には、機械的セパレータ及び酸素センサーを備える試験管(請求の範囲1、34(引1f)では「検体収集容器」と称している。)に、4mlの好気的溶菌増殖培地、4mlの血液、10-100cfuの微生物から構成される混合物を接種して、増殖曲線を作成したことが記載され(引1e)、同[0004]には、血液サンプル中の感染性微生物の存在を検出するために必要な時間を短縮し、24時間未満にすることが有用であること(引1a)、同[0065]には、検出素子は、微生物の増殖中に生産される微生物、代謝エネルギー及び/または代謝産物、例えば、二酸化炭素、pH、又は揮発性有機化合物を検出すること(引1d)、同[0089]には、Staph aureus(黄色ブドウ球菌)又はCandida glabrata(カンジダ・グラブラタ)が、BACTECTM blood cultures Standard Aerobic mediaより短い検出時間(TTD)で検出されたこと(引1e)がそれぞれ記載されている。
以上の記載事項からすると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「検体収集容器、微生物の存在を検出することができる検出素子を備える装置を用いて、血液サンプルにおける感染性微生物の存在を検出する方法であって、該方法は、好気的溶菌増殖培地4ml、血液4ml、10-100cfuの微生物を含む混合物を検体収集容器に接種して、微生物の増殖曲線を作成することを含み、感染性微生物がStaph aureus(黄色ブドウ球菌)である、方法。」
3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「検体収集容器」は、本願発明の「血液培養ボトル」に相当する。
引用発明の「Staph aureus(黄色ブドウ球菌)」は、本願発明の「スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)」に相当する。
引用発明の「微生物の存在を検出することができる検出素子」は、本願発明の「微生物の増殖の結果で生じる該血液培養ボトル内での変化を検出することが可能であるセンサー」に相当する。
引用発明の「好気的溶菌増殖培地」の「4ml」は、本願発明の「40ml以下の容量を有し、かつ可変量の培養培地」、引用発明の「血液4ml」は、本願発明の「血液体積が1mlから10ml」に、それぞれ含まれるものであり、引用発明の「好気的溶菌増殖培地4ml、血液4ml」は、体積比が1:1であるので、本願発明の「血液体積と培養培地体積の比が1:1となるように選択され」たものと一致する。
引用発明の「微生物の増殖曲線」は、検出素子より得られる、微生物の増殖、すなわち、血液サンプルの培養において、生産される微生物、代謝エネルギー及び/または代謝産物、例えば、二酸化炭素、pH、又は揮発性有機化合物の検出値に基づき作成されるので、引用発明の「微生物の増殖曲線を作成することを含」む「方法」は、本願発明の「センサーからシグナルを検出する工程を有し、更に検出されたシグナルに基づいて、該接種された血液培養ボトル内における微生物の増殖を判定する工程を有」する「血液サンプルを培養する方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「血液サンプルを培養する方法であって、血液培養ボトルを備え、血液体積と培養培地体積の比が1:1であり、該血液培養ボトルは、その中の微生物の増殖の結果で生じる該血液培養ボトル内での変化を検出することが可能であるセンサーを有し、血液体積が1mlから10mlであって、該センサーからシグナルを検出する工程を有し、更に検出されたシグナルに基づいて、該接種された血液培養ボトル内における微生物の増殖を判定する工程を有し、該微生物が、該微生物が、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ネイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia)、及びストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)の群から選択される、血液サンプルを培養する方法。」で一致し、以下の点で相違している。
相違点1
本願発明では、40ml以下の容量を有する血液培養ボトルを用いているのに対し、
引用発明では、検体収集容器の容量が特定されていない点。
相違点2
本願発明では、可変量の培養培地を有する血液培養ボトルを用い、その中に配置されるあらかじめ定められた体積の該培養培地を有し、1mlから10mlの血液体積を血液培養ボトルに接種する工程を有しているのに対し、
引用発明では、好気的溶菌増殖培地、血液が混合物の形態で検体収集容器に接種されている点。
4.相違点1、2の検討
まず、相違点1について検討する。
引用文献1の[0057]には、収集容器(検体収集容器)は、当技術分野で知られている、従来の大容量試験管、小容量試験管、または微量試験管と同様のサイズであってよいこと、及び、特定の実施形態においては、当技術分野で知られている、標準の13ml真空採血管であってもよいことが記載されているので(引1c)、引用発明の「好気的溶菌増殖培地4ml、血液4ml、10-100cfuの微生物を含む混合物」を収納する収集容器として、13ml真空採血管等のような40ml以下の容量を有する容器、を採用することは当業者が適宜なし得ることである。
次に、相違点2について検討する。
引用発明は、「好気的溶菌増殖培地4ml、血液4ml」を培養に使用するものであり、本願発明と同様に「1mlから10mlの血液体積」を使用するものである。
そして、培地と微生物を含むサンプルを混合する技術手段として、培地に、微生物を含むサンプルを接種する手法は、本願の優先日(2015年(平成27年)5月14日)における常套手段であるから、引用発明において、検体収集容器に、あらかじめ好気的溶菌増殖培地4mlを配置し、その後4mlの血液サンプルを接種して、培地と血液サンプルの混合を行うことは当業者が容易になし得ることである。
また、本願明細書を参照しても、上記の相違点1、2に基づき、引用文献1の記載からは当業者が予測できない効果を奏したとは評価できない。
したがって、本願発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.審判請求人の主張について
審判請求人は、令和4年9月5日付け意見書において、次の点を主張している。
本願明細書によると、アルカリゲネス・フェカリスは24%、カンジダ・アルビカンスは10.8%、エンテロコッカス・フェカリスは8.1%、エシェリヒア・コリは27.5%、ネイセリア・メニンギチデスは33.5%、シュードモナス・エルギノーサは26.0%、スタフィロコッカス・アウレウス(2種平均)は29.5%、スタフィロコッカス・エピデルミディスは25.1%、ストレプトコッカス・ニューモニアは12.9%、ストレプトコッカス・ピオジェネスは19.5%、それぞれ従来の方法より改善されており、スタフィロコッカス・アウレウスに関しては、TTDが、引用文献1に記載の方法よりも更に4~5%程度短縮することが可能となっているので(【0028】表2)、本発明の方法によれば、従来の見解から予期できないTTD(微生物増殖の検出時間)の短縮を達成できる(【0037】)。
しかるところ、審判請求人が指摘する「TTD(微生物増殖の検出時間)の短縮」効果は、「StdAer(対照)」として示される市販のBACTEC(商標) Standard Aerobicボトル(血液体積と培養培地体積の比が標準比1:4である。)との比較に基づき血液体積と培養培地体積の比が1:1であることの効果を示すものであって、引用発明の方法と比較した効果ではないから、本願発明の方法が、引用発明の方法よりも、更に4~5%程度TTDが短縮することが可能となっていることが本願明細書で明示されているとはいえない。
そして、引用発明の方法は、本願発明と同様に、1:1の血液:培地を備え、血液を1mlから10mlの範囲で用いるものであり、引用文献1の[0089]、[0090]によると、一定程度の検出時間(TTD)の短縮が見込めるものであるから、「TTD(微生物増殖の検出時間)の短縮」効果が当業者の期待、予測を超えるものとは評価できない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-006507