特許拒絶査定不服審判
2023-006344
キャピラリを収めるアダプタ及びアダプタの使用
- 審判番号
- 2023-006344
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-505867外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2025年09月01日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザルトリウス オートメーテッド ラボ ソリューションズ ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】新保 斉
- 分類
- P18 .113-WZ (C12M) / P18 .121-WZ (C12M) / P18 .537-WZ (C12M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-505867「キャピラリを収めるアダプタ及びアダプタの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月 7日国際公開、WO2019/025626、令和 2年10月 8日国内公表、特表2020-529211〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月4日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、令和4年6月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年4月18日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、令和7年3月11日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月18日に意見書の提出とともに手続補正がなされた。
2 本件発明
本願の請求項1~8に係る発明は、令和7年6月18日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 アダプタ構成物を含むデバイス(13)であって、
前記アダプタ構成物は、キャピラリ(3)を収めるアダプタ(1)と、前記アダプタ(1)に連結するように設計される対応物(6)と、を備え、
前記アダプタ(1)は、
前記キャピラリ(3)を収めるか、または収めることができる管(2)と、
対応して形成された対応コーン(7)中または対応コーン(7)上に収められるように設計されたアダプタコーン(4)と、を含み、
前記アダプタコーン(4)が、外側コーンとして設計され、
前記アダプタコーン(4)が、少なくとも上記アダプタコーンを前記対応コーン(7)と接触させるために提供される部分(4.2)に、前記対応コーン(7)の材料よりも弾力性がある弾力材(10)を有し、
前記部分(4.2)が、前記アダプタコーン(4)の自由端部の領域に形成され、
前記対応物(6)は、
前記対応物(6)を前記デバイス(13)に取り外し可能に連結する連結領域(8)を有し、
また、
前記対応物(6)の前記対応コーン(7)に、前記アダプタ(1)の前記アダプタコーン(4)が接続されることで、前記アダプタ(1)が前記対応物(6)に接続され、また、前記アダプタコーン(4)の中に前記管(2)が備わり、
また、前記アダプタ(1)は、
前記対応コーン(7)から前記アダプタ(1)を取り外すためのストリッパ(11)にかみ合わせられる溝または接合部または段または凸部の形態である断面変化部(5)を、前記アダプタコーン(4)と離隔した前記アダプタ(1)の外面に有し、
また、前記デバイス(13)の操作、及び、前記キャピラリ(3)における負圧または過圧の生成、並びに、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)に連結する動作、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)から外して廃棄する動作、前記アダプタ(1)の位置調整の動作を司る制御装置(14)を備える
ことを特徴とするアダプタ構成物を含むデバイス(13)。」
3 令和7年3月11日付けで通知した拒絶の理由
令和7年3月11日付けで通知した拒絶の理由は、この出願の請求項1~11に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献A:特表2010-504086号公報
引用文献B:米国特許出願公開第2008/0095665号明細書
4 引用文献
(1)引用文献Aの記載事項及び引用文献Aに記載された発明
ア 引用文献Aの記載事項
令和7年3月11日付けの拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特表2010-504086号公報(平成22年2月12日出願公開。以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、細胞及び/又は細胞コロニーの自動化した除去のための方法及び装置に関するものである。」
(イ)発明が解決しようとする課題
「【0018】
従って、特別な特性を有する細胞及び/又は細胞コロニーを、検出される細胞及び/又は細胞コロニーから選択することが目的である。」
(ウ)課題を解決するための手段
「【0019】
上記目的は、請求項1の特徴を有する細胞培養から細胞及び/又は細胞コロニーを自動的に除去する方法と、請求項27の特徴を有する細胞及び/又は細胞コロニーの除去のための装置により達成される。従属クレームは、上記方法又は装置の好都合であるか有利な実施例及び特徴を含む。
・・・
【0054】
細胞培養から細胞及び/又は細胞コロニーを取り除く装置は、細胞培養の顕微鏡的な走査のための顕微鏡装置と、細胞培養内の細胞及び/又は細胞コロニーの位置を検出するための画像取得ユニット及び画像評価ユニットと、細胞及び/又は細胞コロニーの検出位置を格納するための制御・記憶装置と、その細胞及び/又は細胞コロニーの検出位置で細胞及び/又は細胞コロニーを取り除く除去ツールを有する採取モジュールとの組み合わせてによって特徴付けられる。
【0055】
本発明による装置の供給は、複数の完全に異なる細胞タイプが単一装置で処理され得る方法を示さなければならない。このために、モジュールの装置に異なるツール及びソフトウェア・シーケンスを備えることが可能である。
【0056】
これらの装置は、特許文献2のドライブ装置と、特許文献3のツールヘッドにおいて使用される特有細胞除去ヘッドとを備え、広範囲にわたる個々の細胞及び細胞コロニーを切り離すための自動化した細胞採取のために使用するさまざまな方法を実装できる。
【0057】
これらの方法では、異サイズ、形状及び材料を有する細管が、通常、クローン又は粒子を解放し及び/又は取り出すために用いられる。
【0058】
主に、これらの異なる形のためのカニューレで標準アダプタを実装することによって、広範囲にわたる適用のために同じツールを使用し、主に高い費用効果性、現像支出及び現像時間の急激な減少をもたらすことが可能である。
【0059】
装置の1つの実施形態において、除去ツールは、溶解又は酵素の液体が充填され得る先端部と、この先端部に結合されることができ、選択された細胞及び/又は細胞コロニーを覆い、先端部内に含まれる液体で充填され得るクローニング・ドームと、先端部及びクローニング・ドームの吸引装置とからなる。
【0060】
さらなる態様において、除去ツールは、内部に取り付けられる異径のカニューレの配置を有するマガジン、そして、そのマガジンからのカニューレの自動除去と、交換可能なヘッドとの統合のための結合装置との形で設けられる。」
(エ)発明を実施するための形態
「【0067】
図1は、細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置の例示的実施形態を示す。装置は、多くの光学部品(特に、光線誘導及び顕微鏡的な画像化のための偏向プリズム1a及びレンズシステム1bの組合せ)を有する顕微鏡装置1を備える。この顕微鏡装置1は、画像記録ユニット2(通常CCDカメラ又はCCD配列)と結合される。画像評価ユニット3aは、画像記録ユニット2から読み出される画像情報を処理するために設けられる。画像処理ユニット3aは、パーソナル・コンピュータ3からなり、このパーソナル・コンピュータ3では、画像処理ソフトウェアが動作している。制御・記憶装置4をさらに備え、それはパーソナル・コンピュータ3において統合されると共に、その機能はさらなるソフトウェア構成要素により実行される。制御・記憶装置4には、モニタ又は表示4aが設けられている。」
合議体注:図1は次のものである。
[図:0001431433000001.jpg]
「【0068】
装置は、さらに、変位機構に載置される採取モジュール5を含む。この変位機構は、昇降支柱5aと、変位ドライブ5bとを含む。昇降支柱5a及び変位ドライブ5bが、より大きな変位距離のために設計され、採取モジュール5をサンプル容器に位置する細胞培養8の方へ持ってくることと、採取モジュール5の荒調整と、除去された細胞及び/又は細胞コロニーの対応する分離位置の方へ除去ツール10aを移動させることのために使われる。
【0069】
上述した顕微鏡装置1は、トランスミッション顕微鏡として構成される。このために、一連のスイッチで切り替え可能な照明フィルタ7を有する照明6が設けられている。この照明6は、サンプル容器に位置する細胞培養8を透照する。この細胞培養8は、xyテーブル9の形の支持物に固定される。このxyテーブル9によって、細胞培養8が、照明6と、その下に位置付けられた偏向プリズム1aとからなる光学装置の下の、x方向とyの方向の両方で数マイクロメータの顕微鏡的な調整精度で移動可能となる。この場合、xyテーブル9の調節座標は、制御・記憶装置4に発信されるか又は制御・記憶装置4により調整される。
【0070】
顕微鏡装置1は、モーターを有するxyテーブル9を備える市販の顕微鏡架台からなる。任意選択として、この顕微鏡装置1は、市販の蛍光装置を備え得る。蛍光装置は、最高3つのフィルタ立方体(励起フィルタ、二色性ミラー及び発光フィルタからなる)を調節することができて、市販のガスバーナによって、又は、ガラス繊維により中で結合される外部照明6によって、照らされ得る。対応する蛍光装置の3つ又は4つのバンドのフィルタ立方体で同時に蛍光性を走査するために、照明6の前のモーターを備えられたフィルタホイールに発光フィルタを置くことができる。加えて、CCD先端部を有する画像記録ユニット2は、サンプルの走査が可能な手段としての顕微鏡装置1の上に置かれる。市販の位相対比スライダを用いて、物理的に最適な位相コントラスト照明が可能である。
【0071】
市販のPCは、ネットワーク接続を介して基本的な装置に接続されている。市販の標準画像処理ソフトウェアがPCで実行され、これは、この画像処理ソフトウェアのために特別にプログラムされたロボット・コントローラ及び特別に開発されたモジュールと共に、装置の駆動と画像データの分析とを引き受ける。
【0072】
その後詳細に後述するように、xyテーブル9の動きに関連して、細胞培養の全ての領域が探査される。それによって、細胞培養の多くの顕微鏡的な個々の画像が、画像検出装置により記録される。
【0073】
xyテーブルの動きも、確認された細胞又は細胞コロニーの除去のための細胞培養の位置に位置決めするのに役立つ。このために、xyテーブルは確認された細胞及び細胞コロニーの前もって決定された位置に合わせられ、採取モジュール5が細胞又は細胞コロニーを取り除くことを可能にする間、採取モジュール5は細胞培養8の上方の変位機構によって位置決めされる。
【0074】
サンプル容器に位置する細胞培養8からの細胞又は細胞コロニーの除去は、除去ツール10aの細胞培養8への降下と、細胞又は細胞コロニーの選択と、それらの分離とを必要とする。このために、除去モジュール5は、降下又は吸入メカニズムを有するツールヘッド10を備える。除去ツール10aは、ツールヘッド10の端にある。取り出された細胞又は細胞コロニーは、分離バッテリ11に置かれる。これは、試験管の列又は昇降支柱及び変位ドライブによって個々に駆動され得る管からなり、その中に除去された細胞及び細胞コロニーがツールヘッドによって堆積され得る。
【0075】
加えて、分離バッテリは、その後詳細に後述するように、所望の様にツールヘッド10上へ結合され得る除去ツール10aを準備するために、マガジンとしての部品で構成され得る。
【0076】
原則として、ここで記載されている機能は、だいたい制御・記憶装置4により制御され、実質的に完全に自動的に動く。しかしながら、モニタ又は表示上の機能のモニタリングのため、ユーザには、周知の入力手段(例えば、キーパッド、マウス、制御・記憶装置内部で動作しているソフトウェア構成要素の対応するユーザ・インタフェース)によって、大きく機能が影響され得る。
【0077】
このように、特に、重要要因の調整及び画像記録装置の解像能の変化は、顕微鏡装置の制御へのアクセスによって可能である。
【0078】
さらに、照明及び照明フィルタを制御することによって、スペクトル範囲を修正でき、又は、顕微鏡装置を蛍光又は暗い視野運転に切り替え得る。さらにまた、採取モジュール5に注力すること可能であり、それによって、顕微鏡装置で測定される個々の細胞又は細胞コロニーが、メニュー制御の方法で選択され得、分離バッテリ11の指定された場所に割り当てられ得る。加えて、採取モジュールの操作モードを選択でき、その操作モードでは、特定の方法で選択された細胞を取り除くために、選択された細胞又は細胞コロニーに応じて上記除去ツール10aは、ツールヘッド10の円錐レセプタクル32から取り外され得る。
【0079】
この時点から、各ケースにおいて選択された分離方法により、異なる除去ツール10aが動きだし、異なるカニューレ15,18及び/又は細管と異なるシーケンスとを用いて、粒子を分離することができ、それらを対応する目標容器に移動させることができる。これらの方法は、以下に詳述する。
【0080】
除去ツール10aは、ドライブ装置の上端部に位置付けられ、アプリケーションに従って自由に交換され得る。5つの異なる除去ツール10aが、「酵素による付着細胞コロニーの採取」「酵素なしでこすることによる付着細胞コロニーの採取」「寒天からの採取」「メチルセルロースからの採取」及び「位置的に一定の個々の細胞からの採取」というアプリケーションのために使うことができる。これらの全ての除去ツール10aは、除去ツール10aが定位置に置かれたときに、PCソフトウェアが自動的に正しいアプリケーションを実行して供給レセプタクルに正しい消耗品を持ってくるように、特定アプリケーション向けソフトウェア部品が除去ツール10aに直接取り付けられるという共通点がある。ツールヘッドとしてのいくつかの除去ツール10aに使用する構造については、特許文献3が参照される。上述した個々のアプリケーションについては、以下に記載されている。
【0081】
全てのアプリケーションは、走査及び分析方法が同様に起こるという点で共通している。プロセスは、アプリケーションに従って、ゆえに粒子の採取又は選択の間に使用される除去ツール10aに従って異なるだけである。
・・・
【0138】
図11は、ツールヘッド10に取り付けられるレセプタクル32を示す。レセプタクル32に段28で評価付けされる外側コーン26が設けられている。この外側コーン26は、ここの先端である除去ツール10aを受け容れ、レセプタクル32の外側コーン26の相当品を形成する内側コーン27を有する。レセプタクル32の外側コーン26及び除去ツール10aの内側コーン27をかみ合わせるために、完全でない着脱可能な接続が、レセプタクル32と除去ツール10aとの間に形成される。
【0139】
図12は、レセプタクル32の別の実施例を示す。ここでのレセプタクル32には、内側コーン31が設けられている。この内側コーン31は、ここの細管であって、以下(レセプタクル32の内側コーン31の対称物を形成する外側コーン30)を含む除去ツール10aを受け容れる。レセプタクル32の内側コーン31と、除去ツール10aの外側コーン30とをかみ合わせるため、完全でない着脱可能な接続が、レセプタクル32と除去ツール10aとの間に形成される。」
合議体注:図11及び図12は、以下のものである。
[図:0001431433000002.jpg]
「【0140】
異なる円錐レセプタクル32を用いて、それらのサイズ及び設計において調合され、非常に多様でしばしば新しく開発された使用される消耗品のために、交換可能なカニューレの形で、主に同一のツール結合構造を保持できる。
【0141】
ツールによって受け容れられるときに、円錐レセプタクル32は、結果として高い精度によって、部分的に位置決めされる消耗品(カニューレ)の中で自動中心にある。円錐レセプタクル32及び同一の力分布の高安定性のため、例えばレセプタクル32内の交換可能なカニューレの位置決め精度の損失又はゆるみなしにこすることの間、交換可能な細管に対する比較的高い横向きの力の加圧が可能である。ツールヘッド上の円錐レセプタクル32の下で厚くすることを用いて、交換可能なカニューレは、次の交換可能なカニューレを受け取ることを許容するために、単純な除去装置(図示せず)によって、再びツールから取り除かれ得る。
・・・
【0143】
個々の細胞又は細胞コロニーの自動化した調査及び分離のための同じタイプのツール上の非常に多様なサイズ、形状及び材料の自動的に交換可能な細管及びカニューレの広範囲にわたり適応させるためのさまざまな円錐レセプタクル32を使用することが可能である。」
イ 引用文献Aに記載された発明
引用文献Aの記載事項(エ)の段落【0057】、【0068】、【0074】、【0076】~【0080】、【0138】、【0139】、【0141】の記載及び【図12】に基づけば、引用文献Aには、細胞又は細胞コロニーに応じて選択される除去ツール10a及びツールヘッド10に取り付けられるレセプタクル32として、図12に示される除去ツール10a及びレセプタクル32を用いた、細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置に係る発明として、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「採取モジュール5を含む、細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置であって、
除去モジュール5は、降下又は吸入メカニズムを有するツールヘッド10を備え、除去ツール10aが、ツールヘッド10の端にあり、
細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置の機能は、制御・記憶装置4により制御され、実質的に完全に自動的に動くものであり、除去ツール10aは、ドライブ装置の上端部に位置付けられ、アプリケーションに従って自由に交換され、これらの全ての除去ツール10aは、除去ツール10aが定位置に置かれたときに、PCソフトウェアが自動的に正しいアプリケーションを実行して供給レセプタクルに正しい消耗品を持ってくるように、特定アプリケーション向けソフトウェア部品が除去ツール10aに直接取り付けられ、
除去ツール10aを受け容れる内側コーン31が設けられているレセプタクル32がツールヘッド10に取り付けられ、
除去ツール10aは、内側コーン31の対称物を形成する外側コーン30を含み、細胞又は細胞コロニーに応じて円錐レセプタクル32から取り外され得るよう構成され、異なる除去ツール10aを動かすことで、異なるカニューレ15、18及び/又は細管を用いることができ、交換可能なカニューレは、次の交換可能なカニューレを受け取ることを許容するために、単純な除去装置によって取り除かれ得る、装置。」
(2)周知技術・慣用技術
ア 引用文献B
令和7年3月11日付けの拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、米国特許出願公開第2008/0095665号明細書(2008年(平成20年)4月24日出願公開。以下「引用文献B」という。)には、図面と共に、以下の記載事項がある。なお、周知技術及び慣用技術の認定に用いた箇所に下線を付した。
(ア)発明の概要
「[0015] The ergonomic pipette tip as shown in FIGS. 1 and 1A shows the upper portion of the pipette tip being constructed from a flexible and elastic material for matting with the pipetter barrel providing a annular surface that is resilient and is easily installed and ejected from said pipetter barrel with minimal axial force. The lower fluid contact portion of the ergonomic pipette tip is constructed from a more rigid and chemical resistant material. ・・・」
(図1及び1Aは、ピペットチップの上部が、ピペッターバレルに適合するように柔軟で弾力性のある材料で構成されることにより、環状表面は弾力性を有し、最小限の軸方向力で容易にピペッターバレルの取り付け、及び、排出がなされる人間工学的ピペットチップを示す。人間工学に基づいたピペットチップの下部の液体接触部分は、より硬く、耐薬品性のある素材で作られる。・・・)
合議体注:図1及び1Aは以下のものである。
[図:0001431433000003.jpg]
(イ)発明の詳細な説明
「[0064] FIG. 1A illustrates the ejector sleeve 45 of the pipetter (not shown) being activated in a downward movement usually by a thumb operated push button of the ejection mechanism of the pipetter exerting a axial downward force to release the sealingly attached pipette tip 55 from the pipetter barrel 48. As shown the ejector sleeve 45 contacts the top surface 43 of the upper portion 42 of the pipette tip 55. In doing so the inner frustoconical sealing surface 44 being constructed from a elastic material easily expands and is released from the pipetter barrel sealing surface 49. When the downward force transferred by the ejector sleeve 45 exceeds the friction between the elastic upper portion 42 and the pipetter barrel 48, the pipettetip 55 is propelled from the pipette barrel 48.」
図1Aは、ピペッターの排出スリーブ45は、(図示しないが)通常、ピペッターの排出機構の親指で操作する押しボタンによって下向きに作動され、軸方向の下向きの力が加えられて、密封するように結合されたピペットチップ55がピペッターバレル48から排出されることを示す。図示のように、エジェクタスリーブ45は、ピペットチップ55の上側部分42の上面43に接触する。そうすることで、弾性材料から構成される内側の円錐台形シール面44が容易に拡張し、ピペッターバレルシール面49から解放される。エジェクタスリーブ45によって伝達される下向きの力が弾性上部42とピペットバレル48との間の摩擦を超えると、ピペットチップ55はピペットバレル48から押し出される。)
「[0072] FIG. 5, 5B illustrates a variation of FIG.1 whereby the pipetter barrel 48 is guided into the uppermost entry region 124 of the upper portion 42 of the pipette tip 55 by means of a flared or angled surface 53. As the pipetter barrel 48 is inserted further into theupper portion 42, it engages one or more inwardly extending alignment rings 36. As the pipetter barrel 48 penetrates further into the upper portion 42, the sealing surface 49 of the pipetter barrel contact and seals with one or more annular sealing base rings 54 sized to sealably engage the pipetter barrel 48. FIG. 5,5A and 5B also shows a mechanical stop or stops 52 for providing a predetermined insertion depth of the distal end 30 of pipetter barrel 48 into the flexible upper portion 42. In normal operation, a pipetter barrel 48 inserted into the receiving cavity 90 would come into contact with the upper face 126 of the mechanical stop or stops 52, thereby limiting further insertion of the barrel. These mechanical stops 52 provide close tolerance control over the insertion depth of the pipetter barrel 48 to assure reproducibility of the designed ergonomic axial insertion and ejection forces between these newly engineered pipette tips. FIG. 5A shows a top view of the pipette tip 55 shownin FIG. 5. In this embodiment the stop 52 is constructed from one or more partial ribs. It is understood an annular ring or one or more full ribs constructed across the optional membrane filter 50 would also work, however would be less desirable since the ribs would decrease the filter surface area and thus reduce maximum filtration and air flow.」
(図5、5Bは、図1の変形例を示しており、ここでは、ピペッタバレル48が、広がった、又は、角度の付いた表面53によって、ピペットチップ55の上側部分42の最上部の入口領域124に誘導される。ピペッターバレル48は上側部分42にさらに挿入され、1つ又は複数の内側に延びる位置合わせリング36と係合する。ピペッターバレル48は上側部分42にさらに進入し、ピペッターバレルのシール面49が、ピペッターバレル48にシール可能に係合するサイズに設定された1つ又は複数の環状シールベースリング54に接触してシールする。図5、5A及び5Bは、ピペッターバレル48の遠位端30を所定の挿入深さで挿入させるための、可撓性の上側部分42の機械的停止部52も示されている。通常の動作では、受容キャビティ90に挿入されたピペッターバレル48は、機械的停止部52の上面126に接触し、それによってバレルのさらなる挿入が制限される。これらの機械的停止部52は、ピペッターバレル48の挿入深さを厳密に制御し、新しく設計されたピペットチップ間の人間工学的軸方向の挿入力と排出力の再現性を保証する。図5Aは、図5に示したピペットチップ55の上面図を示す。この実施形態では、停止部52は、1つまたは複数の部分リブから構成される。任意の、膜フィルタ50を横切って構築された環状リングや、1つ又は複数のの完全なリブも機能すると理解されるが、リブによってフィルタの表面積が減少し、最大濾過および空気の流れが減少するため、あまり望ましくない。)
合議体注:図5、5A、5Bは、以下のものである。
[図:0001431433000004.jpg]
イ 特開2004-337852号公報
令和7年3月11日付けの拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2004-337852号公報(平成16年12月2日出願公開)には、図面とともに以下の記載事項がある。
「【0021】
複数の図を通じて同様な数字が同様もしくは対応する部材を示している各図を参照すると、図1~3は、液体の正確なピペット操作を容易とするピペット制御装置10の代表的実施形態を示す。ピペット制御装置10は、好ましくはプラスチック材料により成形され、好ましくは拳銃状の握りを備えたほぼ逆L字形の形状を有して形成されているハウジングアセンブリ20を含む。本発明の組立およびその要素の置換を容易とするために、ハウジングアセンブリ20は一般に、2つの部分すなわち半分21および23でできている。ハウジングアセンブリ20は、首部22および握り部24を含む。ピペット制御装置10はさらに、ピペット32をハウジングアセンブリ20と脱離可能に連結するためのピペットコネクタアセンブリ30および、液体の容積測定吸引および分注を制御するポンプユニットまたはアセンブリ40を含む。
・・・
【0023】
好ましい実施形態において、コネクタアセンブリ30は、好ましくはゴムまたはシリコーンといった弾性材料で作られているフレキシブルなピペットコネクタ42とともに形成される。フレキシブルなピペットコネクタ42は一般に、ハウジングアセンブリ20の首部22の延出開口48内に挿入される第1の端部44および、ピペット32を受入れるため第2の端部46を有している。首部22へのコネクタアセンブリ30の取付を容易とするために、外ねじの形態とすることができる取付構造が開口48に設けられている。長手方向流路55がコネクタ42の内部に設けられ、第1の端部44と第2の端部46とを相互連結している。内ねじが切られた第1の端部52を有するノーズコーン50が、フレキシブルなピペットコネクタ42をハウジングアセンブリ20に脱離可能に固定する。作用開口53がコネクタ42の壁を貫通している。この特徴については本書において後述する。
【0024】
ノーズコーン50が首部22に取付けられた状態で、ピペット32の口端60が、使用されるピペット32の外径より若干小さくてよい拡張可能な開口または流路54を備えるフレキシブルなピペットコネクタ42の第2の端部46に挿入される。ピペット32の口端60がフレキシブルなピペットコネクタ42の流路54に挿入されると、流路54は外方に拡張し、材料の弾性によってピペット32が定位置にしっかりと保持される。加えて、フレキシブルなピペットコネクタ42とピペット32との間にシールが形成され、それがピペット制御システム10内への外部空気の漏れおよび、それに伴うピペット先端34からの液体の漏れを防ぐ。」
合議体注:図1~3は以下のものである。
[図:0001431433000005.jpg]
ウ 周知技術
上記ア(ア)及びイに示した記載事項に基づけば、本願の優先日前において、次の周知技術が存在したと認められる。
「接合部分の一方を、弾力性のある材料で構成することにより、接合を容易で確実なものとすること」
エ 慣用技術
上記ア(イ)に示した記載事項に基づけば、本願の優先日前において、次の慣用技術が存在したと認められる。
「部材の断面形状が変化している部分を利用して除去装置と嵌合させること」
5 対比(一致点、相違点の認定)
本件発明と引用発明Aとを対比する。
(1)アダプタ
引用発明Aの「除去ツール10a」は、対象とする細胞又は細胞コロニーに応じて、カニューレ15,18及び/又は細管を交換可能とするものである。そうすると、引用発明Aの「除去ツール10a」は、本件発明の「アダプタ(1)」に相当する。
また、引用発明Aの「除去ツール10a」は、図12の記載からみて、「細管」を収める管路を有している。したがって、引用発明Aの「除去ツール10a」は、本件発明の「キャピラリ(3)を収める」という要件、「前記キャピラリ(3)を収めるか、または収めることができる管(2)」を含むという要件、及び、「前記アダプタコーン(4)の中に前記管(2)が備わり」とする要件を満たしている。
さらに、引用発明Aの「除去ツール10a」は、「内側コーン31の対称物を形成する外側コーン30」を含んでいる。ここで、引用発明Aの「外側コーン30」は、「内側コーン31」に対応する形状を有し、「内側コーン31」中に収められるものである。そうすると、引用発明Aの「外側コーン30」は、本件発明の「アダプタコーン(4)」に相当する。そして、引用発明Aの「除去ツール10a」は、本件発明の「対応して形成された対応コーン(7)中または対応コーン(7)上に収められるように設計された」とする要件を満たしている。
そして、本件発明における「外側コーン」は、本願明細書の段落【0036】の「図1の本発明に係るアダプタ1の第1実施形態の概略図において、キャピラリ3はアダプタ1の管2(図4~7を参照のこと)に挿入され、堅く連結される。アダプタ1は外側コーン状のアダプタコーン4を含む。」との記載及び以下の図1、図4、図5からみて、対応物6の対応コーン7の内側に配置される、端部が小径となるように形成された形状をいうものといえる。
[図:0001431433000006.jpg]
引用発明Aの「外側コーン30」は、図12に描かれるとおり、「レセプタクル32」の内側に配置され、端部が小径となるように形成されている。そうすると、引用発明Aの「外側コーン30」は、本件発明の「前記アダプタコーン(4)が、外側コーンとして設計」されるとする要件を満たしている。なお、令和7年3月11日付けで通知した拒絶理由の理由2の2(3)において、「引用発明Aの『外側コーン30』は、その形状からみて、本願の請求項3に係る発明の『内側コーン』として設計されているといえる。」と認定しているが、正しくは「『外側コーン』として設計されている」である。
また、引用発明Aの「除去ツール10a」は、図12の記載からみて、「外側コーン30」と隔離した位置の外面に、凸状に断面が変化した領域を有しているといえる。そうすると、引用発明Aの「除去ツール10a」が有する凸状に断面が変化した領域は、本件発明の「断面変化部(5)」に相当し、「溝または接合部または段または凸部の形態である」という要件、及び、「前記アダプタコーン(4)と離隔した前記アダプタ(1)の外面に有」するという要件を満たしている。
(2)対応物
引用発明Aの「円錐レセプタクル32」は、「除去ツール10aを受け容れる内側コーン31」が設けられている。そして、引用発明Aの「内側コーン31」の形状は、「除去ツール10a」の「外側コーン30」の形状と対応するものであり、引用発明Aの「円錐レセプタクル32」は、「内側コーン31」を介して、「除去ツール10a」と連結されている。そうすると、引用発明Aの「円錐レセプタクル32」及び「外側コーン30」は、本件発明の「対応物(6)」及び「対応コーン(7)」に相当し、「前記アダプタ(1)に連結するように設計される」とする要件、及び、「前記対応物(6)の前記対応コーン(7)に、前記アダプタ(1)の前記アダプタコーン(4)が接続されることで、前記アダプタ(1)が前記対応物(6)に接続され」るとする要件を満たしている。
また、引用発明Aの「円錐レセプタクル32」は、装置の「除去モジュール5」が備える「ツールヘッド10」に取り付けられている。そうすると、引用発明Aの「円錐レセプタクル32」は、本件発明の「前記対応物(6)を前記デバイス(13)に取り外し可能に連結する連結領域」を有しているといえる。
(3)アダプタ構成物
引用発明Aは、前記(1)及び(2)に記載したとおり、「除去ツール10a」及び「円錐レセプタクル32」が取り付けられている。そうすると、引用発明Aは、本件発明の「アダプタ構成物」を含んでおり、「前記アダプタ構成物は、キャピラリ(3)を収めるアダプタ(1)と、前記アダプタ(1)に連結するように設計される対応物(6)と、を備え」るという要件を満たしている。
(4)デバイス
引用発明Aの「細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置」は、本件発明の「デバイス」に相当する。
また、引用発明Aの「細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置」は、前記(3)に記載したとおり、本件発明の「アダプタ構成物」を含んでいる。そうすると、引用発明Aの「細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置」は、本件発明の「アダプタ構成物を含むデバイス(13)」であるとする要件を満たしている。
(5)制御装置
引用発明Aの「制御・記憶装置4」は、「細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置の機能」を「実質的に完全に自動的に動く」ように「制御」するものである。そして、引用発明Aは、「細胞及び/又は細胞培養を取り除く装置」であって、「降下又は吸入メカニズムを有するツールヘッド10」を備え、「除去ツール10a」を定位置に置き、取り付け、取り除くという機能を有している。そうすると、引用発明Aの「制御・記憶装置4」は、本件発明の「制御装置(14)」に相当し、「前記デバイス(13)の操作、及び、前記キャピラリ(3)における負圧または過圧の生成、並びに、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)に連結する動作、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)から外して廃棄する動作、前記アダプタ(1)の位置調整の動作」を司るものといえる。
(6)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明Aとは、
「 アダプタ構成物を含むデバイス(13)であって、
前記アダプタ構成物は、キャピラリ(3)を収めるアダプタ(1)と、前記アダプタ(1)に連結するように設計される対応物(6)と、を備え、
前記アダプタ(1)は、
前記キャピラリ(3)を収めるか、または収めることができる管(2)と、
対応して形成された対応コーン(7)中または対応コーン(7)上に収められるように設計されたアダプタコーン(4)と、を含み、
前記アダプタコーン(4)が、外側コーンとして設計され、
前記対応物(6)は、
前記対応物(6)を前記デバイス(13)に取り外し可能に連結する連結領域(8)を有し、
また、
前記対応物(6)の前記対応コーン(7)に、前記アダプタ(1)の前記アダプタコーン(4)が接続されることで、前記アダプタ(1)が前記対応物(6)に接続され、また、前記アダプタコーン(4)の中に前記管(2)が備わり、
また、前記アダプタ(1)は、
溝または接合部または段または凸部の形態である断面変化部(5)を、前記アダプタコーン(4)と離隔した前記アダプタ(1)の外面に有し、
また、前記デバイス(13)の操作、及び、前記キャピラリ(3)における負圧または過圧の生成、並びに、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)に連結する動作、前記アダプタ(1)を前記対応物(6)から外して廃棄する動作、前記アダプタ(1)の位置調整の動作を司る制御装置(14)を備える
ことを特徴とするアダプタ構成物を含むデバイス(13)。」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1]
本件発明は、「アダプタコーン(4)が、少なくともアダプタコーンを前記対応コーン(7)と接触させるために提供される部分(4.2)」であって、「前記アダプタコーン(4)の自由端部の領域に形成され」る「部分(4.2)に、対応コーン(7)の材料よりも弾力性がある弾力材(10)を有」するのに対し、引用発明Aは、上記弾力材を有していない点。
[相違点2]
断面変化部(5)が、本件発明では、「前記対応コーン(7)からアダプタ(1)を取り外すためのストリッパ(11)にかみ合わせられる」ように構成されているのに対し、引用発明Aでは、そのように構成されたものであるか明らかでない点。
6 判断(相違点についての検討)
(1)[相違点1]について
前記4(2)ウに記載したとおり、「接合部分の一方を、弾力性のある材料で構成することにより、接合を容易で確実なものとすること」は、本願の優先日前における周知技術であるといえる。
細胞又は細胞コロニーに応じて選択された除去ツール10aを取り付けて用いる引用発明Aにおいても、除去ツール10aの円錐レセプタクル32への接合を容易で確実なものとすることは当然求められる課題である。そうすると、引用発明Aにおいて、上記周知技術を採用し、内側コーン31の対称物を形成する外側コーン30を、円錐レセプタクル32の内側コーン31よりも弾力性のある材料で構成することは、当業者が容易になし得ることである。そして、除去ツール10aの外側コーン30を円錐レセプタクル32の内側コーン31よりも弾力性のある材料で構成することにより、外側コーン30の自由端部も弾力性のある材料で構成されることになる。
したがって、引用発明Aにおいて、上記周知技術を採用することで、本件発明における「アダプタコーン(4)が、少なくともアダプタコーンを前記対応コーン(7)と接触させるために提供される部分(4.2)」であって、「前記アダプタコーン(4)の自由端部の領域に形成され」る「部分(4.2)に、対応コーン(7)の材料よりも弾力性がある弾力材(10)を有」するという構成を具備したものとすることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
(2)[相違点2]について
引用発明Aの「除去ツール10a」を構成するカニューレ及び/又は細管は、「単純な除去装置によって取り除かれ得る」ものである。そして、前記4(2)エに記載したとおり、「部材の断面形状が変化している部分を利用して除去装置と嵌合させること」は、慣用技術である。そうすると、引用発明Aの「除去ツール10a」における、凸状に断面が変化した領域は、その形状からみて、ストリッパ(11)にかみ合わせられるように構成されているといえる。したがって、上記[相違点2]は実質的な相違点ではない。
また、仮に上記[相違点2]が実質的な相違点であったとしても、引用発明Aの「除去ツール10a」を構成するカニューレ及び/又は細管は、「単純な除去装置によって取り除かれ得る」ものである。そうすると、引用発明Aの「除去ツール10a」における、凸状に断面が変化した領域を利用し、ストリッパ(11)にかみ合わせられるように構成することは、当業者が適宜設計し得ることである。
(3)効果について
引用文献Aの記載事項(ウ)の「除去ツールは、内部に取り付けられる異径のカニューレの配置を有するマガジン、そして、そのマガジンからのカニューレの自動除去と、交換可能なヘッドとの統合のための結合装置との形で設けられる」(段落【0060】)との記載に基づけば、引用発明Aは、カニューレの除去及び交換を自動で行うことができるものである。また、引用文献Aの記載事項(エ)の「ツールによって受け容れられるときに、円錐レセプタクル32は、結果として高い精度によって、部分的に位置決めされる消耗品(カニューレ)の中で自動中心にある。円錐レセプタクル32及び同一の力分布の高安定性のため、例えばレセプタクル32内の交換可能なカニューレの位置決め精度の損失又はゆるみなしにこすることの間、交換可能な細管に対する比較的高い横向きの力の加圧が可能である。」(段落【0141】)との記載に基づけば、引用発明Aは、高い気密性及び高い位置精度を達成するものといえる。
したがって、本件発明の効果は、引用発明Aが奏する効果と同等の効果であって、引用文献Aの記載に接した当業者が予測できる範囲のものである。
(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年6月18日に提出した意見書において、制御装置(14)を追加したことにより、「ピペットユニットやマイクロマニピュレータなどのデバイスにおいて、アダプタ(1)の円滑な操作を自動化できる利点がある。・・・アダプタ(1)の対応コーン(7)からの取り外しなどに、アダプタコーン(4)と離隔した前記アダプタ(1)の外面に位置し、図8のように環状に突出した断面変化部(5)を利用することで、正確な操作に寄与している。・・・このような制御装置構成については、引用文献A、Bには言及や示唆がないため容易には想到しないものと思料する。」(第2頁)と主張している。
しかし、前記5(5)に記載したとおり、引用発明Aの「制御・記憶装置4」は、本件発明の「制御装置(14)」に相当する。そうすると、本件発明が制御装置(14)を備える点は、引用発明Aとの相違点ではないため、審判請求人の上記主張は採用することができない。また、制御装置を備えたことによる効果も自明のものである。
また、審判請求人は、令和7年6月18日に提出した意見書において、「前記アダプタコーン(4)が、外側コーンとして設計され、」を、請求項1に追加し、「前記部分(4.2)が、前記アダプタコーン(4)の自由端部の領域に形成され、」を追加したことにより、「外側コーンとしてのアダプタコーン(4)の自由端部に位置する部分(4.2)に、対応コーン(7)よりも弾力性がある弾力材(10)を備えることを明示的に特定し、この弾力材(10)は、図7のように、アダプタ(1)の先端部、または、図6のように、アダプタ(1)の先端部の外周部のみでもよいことを図示している。」(第2頁)とし、引用文献Aで、「除去ツール10aの外側コーン30を円錐レセプタクル32よりも弾力性のある材料で構成することを当業者が想到するとしても、本出願発明のように自由端部のみに弾力材(10)を配することについては容易には想到しない」(第3頁)と主張している。
しかし、本件発明は、前記2に記載したとおりに特定されるものであり、「部分(4.2)」について、「前記アダプタコーン(4)が、少なくとも上記アダプタコーンを前記対応コーン(7)と接触させるために提供される部分(4.2)に、前記対応コーン(7)の材料よりも弾力性がある弾力材(10)を有し」、「前記部分(4.2)が、前記アダプタコーン(4)の自由端部の領域に形成され」ると特定されている。「弾力剤(10)」は、「少なくとも上記アダプタコーンを前記対応コーン(7)と接触させるために提供される」部分であって、「自由端部の領域に形成」される「部分(4.2)」に有するものであれば、その要件を充足するものであり、「アダプタコーン(4)」の自由端部以外の領域に「弾力剤(10)」が形成された態様を排除するように限定されていると理解することはできない。
そうすると、審判請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、採用することができない。
(5)[外側コーン]の認定について
仮に、本件発明における「外側コーン」が、対応コーンの外側に配置されるものであるとした場合であっても、令和7年3月11日付けで通知した拒絶理由の理由2の2(3)に記載したとおり、当業者が適宜設計し得ることである。
つまり、本願の優先日前において、ピペッターのピペットチップとの接合部分として様々な形状のものが知られている。例えば、引用文献Aの図11は、レセプタクル32について、引用発明Aとは別の実施例を示すものであるところ、着脱可能な接続のために「除去ツール10a」に「内側コーン27」が設けられている。また、引用文献Aの図2や図3や、引用文献Bの図1にも同様の構成が図示されている。
ピペッターとピペットチップの接合形状は、ピペッターの接合部分の形状に合わせて適宜設計されるべきものであるから、引用発明Aの「外側コーン30」を上記「外側コーン」とすることは、当業者が適宜設計し得ることである。
(6)まとめ
以上のとおり、上記[相違点1]は、当業者が容易に想到し得るものであり、上記[相違点2]は実質的な相違点ではない、又は、実質的な相違点であったとしても当業者が容易に想到し得るものであるから、本件発明は、引用発明A及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
7 むすび(結論)
上記のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-006344