特許拒絶査定不服審判
2024-009378
流体混合装置の制御システムおよび方法
- 審判番号
- 2024-009378
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-517557
- 請求日
- 2024年06月05日
- 審決日
- 2025年11月25日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 【請求人】ライフ テクノロジーズ ホールディングス プライベート リミテッド
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 萩田 裕介
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .113-Z (C12M) / P18 .121-Z (C12M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-517557「流体混合装置の制御システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月5日国際公開、WO2019/231949、令和3年10月7日国内公表、特表2021-526388〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年(平成30年)5月30日[US]米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月19日に手続補正がされ、その後、令和5年5月29日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和6年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2 本件発明
本願の請求項1~66に係る発明は、令和5年12月5日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~66に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項15に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 細胞培養培地混合プロセスを構成する方法であって、
ディスプレイと、一連のポートと、を含む、統合制御ユニットを提供することと、
前記ディスプレイ上に生物生産ワークスペースの画面を表示することであって、該生物生産ワークスペースの画面は、前記細胞培養培地混合プロセスをグラフィカルに表す、ことと、
デバイスを含む混合システムを提供することと、
前記一連のポート内のポートに前記デバイスを接続することと、
前記ポートに前記デバイスを接続すると、前記デバイスを自動的にアクティブ化して、前記ディスプレイ上の前記生物生産ワークスペースの画面内に生物プロセスモジュールを表示することであって、該生物プロセスモジュールは前記デバイスに関連するプロセスをグラフィカルに表す、ことと、を含む、方法。」
3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~15、28~32、36、38~42、49、53、54、59、61~66に係る発明について、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特表2018-508234号公報
4 引用文献
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日前の平成30年3月29日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表2018-508234号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定に用いた箇所に下線を付した。
ア 特許請求の範囲
「【請求項19】
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムであって、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、
少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、
を含むシステム。
【請求項20】
試料の生存能を改善するためにインタラクティブ制御に適合した生物学的試料培養システムであって、
少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッドを、包括基礎培地に浸漬するための試料取扱い装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、
混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、
所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを適合させるための環境制御装置、
を含むシステム。
【請求項21】
培地成分が、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
培地成分が、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含む、請求項21に記載のシステム。」
イ 技術分野
「【0002】
[0002]本発明は、生物学的試料の試験、評価および培養の分野に関する。本明細書において以下では、培養スペース中に位置する生物学的試料、特に接合子、胚、卵母細胞、幹細胞および精子の評価および培養との関連で本発明を説明することが簡便であると考えられるが、しかしながら、本発明がその使用のみに限定されないことが認められるべきである。本発明はまた、胚発生中のインキュベーションのための最適で安全な培養条件を同時に提供するのに有用である。」
ウ 発明が解決しようとする課題
「【0017】
[0024]本明細書に記載の実施形態の一目的は、関連技術分野のシステムの上述の欠点のうちの少なくとも1つを克服もしくは緩和することか、または、関連技術分野のシステムの有用な代替案を少なくとも提供することである。」
エ 課題を解決するための手段
「【0018】
[0025]一態様では、本発明は、生物学的試料の生存能を改善するために生物学的試料培養システムにおいてフィードバックを提供する方法を提供し、フィードバックは、生物学的試料培養システムと連動した(operatively associated with)環境パラメータを測定および操作するステップ、ならびに、生物学的試料培養システムと連動した培養培地パラメータを測定および操作するステップ、のうちの1つまたはそれらの組合せを含む。
・・・
【0024】
[0033]好ましくは、少なくとも1つの生物学的試料は、胚、幹細胞、卵母細胞、または精子を含む。
[0034]また別の一態様では、本発明は、試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供し、システムは、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、を含む。
【0025】
[0035]本発明のさらに別の一態様では、試料の生存能を改善するためにインタラクティブ制御に適合した生物学的試料培養システムが提供され、システムは、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッドを、包括基礎培地(generic base media)に浸漬するための試料取扱い装置、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを適合させるための環境制御装置、を含む。
【0026】
[0036]上述のシステムでは、培地成分は、液体または粉末形態のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。さらに、培地成分は、
バッファー、
水、
アミノ酸、
塩、
糖、
タンパク質、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。
【0027】
[0037]上述のシステムでは、環境パラメータは、
温度、
湿度、
ガス組成、
pHレベル、
のうちの1つまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。」
オ 発明を実施するための形態
「【0045】
[0061]図1を参照すると、本発明の実施形態は、生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムである装置10を含む。この装置は、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の培養および画像化に特に好適である。
【0046】
[0062]好ましい装置は、図1に示す蓋13および開口用ラッチ12を有し、独立に操作および制御できる複数のインキュベーターモジュール20を含み、それぞれ、温度監視および制御、ガス監視および制御、顕微鏡観察および画像キャプチャ、微速度撮影画像処理ならびに外部データ解析デバイスへの接続が可能である。
【0047】
[0063]図3に示す好ましい一形態のさらなる詳細では、各モジュール20は、蓋ラッチ32により操作され、図示するとおりインキュベーションチャンバー36を外部環境から密封し、前記チャンバー36への独立したアクセスを可能にする蓋33を有する。事実上、これは、隣接するモジュール20を妨害することなしに、好適な培養試料の除去を提供する。これは、培養物を回収するために扉/蓋33を開くときにすべての細胞培養物を環気および温度条件の変化にさらす従来のバルクインキュベーターに対し、重要な利点を提供する。図1は、10と符号が付されたかかる装置の一例の全体を示す。実際には、各装置10に組み込めるモジュール20の数に制限はない。図3の詳細に示すとおり、各モジュールは、微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31を収容するための個別の培養チャンバー36、環境を制御するための加熱されたPCB37および46を含む。モジュール20と連動するのは、たとえば図3に示すとおり、カメラ43、運動機構42(好ましくはZスタックおよび焦点Y軸移動制御である)、レンズ定位モーター44、光源34と組み合わせて作動する回転レンズ41を含む光学検査手段である。
【0048】
[0064]図2を参照すると、それぞれ個別のインキュベーターモジュール20は、たとえば修理または保守のため、他のモジュール20と独立に装置10から取り外せる。モジュール20の取外しは、装置10の他のモジュール20の機能に影響を及ぼさない。図3は、装置10内での使用を意図し、前記装置10に固定可能な、インキュベーターモジュール20の一実施形態を示す。各インキュベーションチャンバー36の内部環境温度は、ヒーター37、46および温度センサーを使用して所定値に制御される。好ましい一実施形態では、2つのヒーターは、前記チャンバーを加熱するために使用され、一方の37は蓋上に、もう一方の46はステージ上に配置される。好ましい実施形態では、温度は37℃に設定される。各モジュール20は、ガス供給のための入口38および所定のガス流量を維持するためのバルブを備える。好ましい実施形態では、酸素、二酸化炭素および窒素、のうちの1つまたはそれらの組合せから通常はなる事前に混合されたガスを、インキュベーションチャンバー36内に、前記入口およびバルブを介して供給する。」
合議体注:図1~図3は、以下のものである。
[図:0001434664000001.jpg]
「【0053】
[0069]各モジュールは、培養試料、細胞または組織を監視するためのカメラシステムまたは顕微鏡のうちの1つまたはそれらの組合せを含みうる光学検査手段を備える。顕微鏡またはカメラシステムは、当該技術分野において知られている任意の好適なデザインであってよい。好ましい実施形態では、顕微鏡は、単純チューブ顕微鏡である。代替的実施形態では、顕微鏡デザインは、単純チューブ顕微鏡、ホフマン・モジュレーション・コントラスト顕微鏡、微分干渉コントラスト顕微鏡、暗視野顕微鏡、位相差顕微鏡、のうちの任意のものから選択できる。
・・・
【0081】
[0096]ユーザーインターフェースは、エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう、ディッシュの物理的配列に合致するよう配列される。チャンバーの物理的レイアウトが、大型ディスプレイスクリーン上にミラーリングされる。ディッシュの円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示される。
・・・
【0084】
[0099]各チャンバー内の環境、たとえば温度、ガス、湿度、運動、音またはそれらの組合せは、自動で制御でき、培養中のプロファイルに応じて変更できる。この自動的プロセスは、培養期間を通じて、胚のための条件を最適化する機会を提供する。システムは、以下のとおり実施できる。
【0085】
[00100]機器の所定のセットのための汎用環境プロファイルがユーザーにより予め定義され、これが次に、この機器のセットにおいて培養されるすべての胚に適用される。このプロファイルは、概日リズム周期に基づいていてもよい。
・・・
【0089】
[00105]以下を含む複数の他の機能を提供できる。すなわち、
・チャンバーごとの独立湿度制御
・チャンバーごとの独立ガス供給
・ガスが流れており、それゆえ障害がないことを決定するための気泡検出
・制御されたディッシュ定位
・扉ラッチロック
・CO2感知好ましくは、各チャンバーは、少なくとも1つの専用CO2センサーを有する。
【0090】
・全マイクロウェルにわたって増強されたコントラストおよび均等照明を増強するための集光レンズシステム
・照明光源の正確な位置を保証する蓋配置ピン(lid locating pin)が提供され、チャンバーのステージの蓋配置ピンは、蓋および照明光源の正確な位置を保証するために使用される。
【0091】
・胚インキュベーターのPCBを使用する加熱
・6つまでのチャンバーを単一のシステムに統合するための機構として、USBハブを機器内に提供し、6つのカメラが単一の接続を介してPCに接続することを可能にしうると想定される。結果として、カメラを単一のシステムで同時に管理できる。
【0092】
・zスタック間の最短時間および画像キャプチャを可能にするため、6つのモジュールにわたる画像のパラレルキャプチャが提供され、zスタック間の最短時間および画像キャプチャを可能にする。したがって、これは、zスタック内の画像間の時間差を低減する。これは、たとえば配偶子合体を探すために、zスタックをするときに重要である。
【0093】
・先行技術では、胚は、画像キャプチャに必要とされるよりもはるかに長い時間照明される。これに対処するため、スケジューリングソフトウェアが、LEDがオンになっている時間を最小化でき、帯域幅利用を最小化できる。これを達成する1つの方法は、照明をオフにして視野を調整することによる。
【0094】
・ユーザー定義の事象および/または自動認識された事象に基づいてハイライトパッケージを生成すること
・プレイバック中のユーザー定義可能な焦点面、すなわち、焦点面はプレイバック全体について単一の位置にあってもよい。現在のシステムでは、Zスタックが断続的にしか利用可能でない、すなわち、zスタックが4画像ごとにしか収集されないことがありうる。解決策として、以前にキャプチャされたzスタックからの画像を、微速度撮影プレイバック中に複数の焦点面の視野を可能にするために使用することが好ましい。有利にはこれは、たとえ胚が移動するとしても、または、それが大きく成長するときでも、プレイバック中に常に胚に焦点が合っていることを保証しうる。それはまた、ユーザーが胚発生の全体を通じて胚の様々な部分を解析することを可能にする。「オン・ザ・フライ」で焦点を合わせる手段として、ユーザーは、プレイバック中に焦点面(focal play)をマニュアルで調整できる。
【0095】
・プレイバック中の自動焦点面選択-プレイバック中の自動焦点面選択を、微速度撮影解析に基づいて達成できる。この点に関して、システムは、胚に焦点があったままであることを保証するよう、焦点面を自動的に選択する。
【0096】
・卵割を決定する方法が、事象を決定する補助となりうるか、または絶対検出
・zスタック画像キャプチャの統合による3D画像化を提供すること・したがって、Zスタック画像は照合および変換され、胚の3D画像を提供する。
【0097】
[00106]各チャンバーの環境条件の独立制御、たとえば、各チャンバーにおいて、温度、湿度および/またはガス供給のうちの1つまたはそれらの組合せを独立に制御することは、各患者について条件をカスタマイズする可能性を可能にする。また、1つのチャンバーが何らかの理由で失敗した場合でも、すべての他の患者の胚には影響が及ばない。
・・・
【0103】
[00112]機器はまた、評価されているディッシュに関する情報、たとえば患者名、個別の環境条件および/またはチャンバーもしくはアラーム条件の監視と関連する他のパラメータを表示するよう組み合わされた小さなディスプレイスクリーンを備える。かかる特徴の提供は、機器の現状を理解するためにユーザーが機器と相互作用する必要がなく、情報をホワイトボード等の外部に記す必要がないことを意味する。
・・・
【0121】
[00134]先行技術のシステムでは、どの物理的項目がディスプレイ上のどの項目により表されるのかが不明確でありうる。好ましい実施形態における解決策は、GUIと合致する物理的配列であり、これはエラーを最小化する。これは、大型ディスプレイ上にミラーリングされるチャンバーレイアウト順序により達成される。ディッシュの円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示され、これは、誤った項目を選択する可能性を低減する。
【0122】
[00135]本発明の代替的実施形態を含む生物学的試料培養のための代替的システムを、図14から図18に示し、同様の符号は図1から図11の実施形態の同様の特徴を参照する。」
合議体注:図14~図16は、以下のものである。
[図:0001434664000002.jpg]
「【0123】
[00136]図14を参照すると、本発明の代替的一実施形態は、図1の実施形態と同様に、生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムであり、接合子、胚、卵母細胞、および多能性細胞の培養および画像化に特に好適な、生物学的試料用装置10を含む。
【0124】
[00137]好ましい装置は、図14に示す蓋13および開口用ラッチ12を有し、独立に操作および制御できる複数のインキュベーターモジュール20を含み、それぞれ、温度監視および制御、ガス監視および制御、顕微鏡観察および画像キャプチャ、微速度撮影画像処理ならびに外部データ解析デバイスへの接続が可能である。
【0125】
[00138]図16に示す好ましい一形態のさらなる詳細では、各モジュール20は、蓋ラッチ32により操作され、図示するとおりインキュベーションチャンバー36を外部環境から密封し、前記チャンバー36への独立したアクセスを可能にする蓋33を有する。図3の運動機構42(好ましくはZスタックおよび焦点Y軸移動制御である)は示されていない。
・・・
【0130】
[00143]図20は、生物学的試料培養システムのシステム構成図であり、ある位置での培地成分の基本的な培地操作を示し、培地成分は次に、ステージングおよび混合領域に個別に移されて組み合わされ、次に培養ディッシュ内に分注される。図20はまた、NIRS(すなわち、近赤外線分光-光学分光)について、隣接するウェル内かまたは同じウェル内で感知可能であるかのいずれかの2つの位置の選択肢を示す。
【0131】
[00144]図21は、やはり、生物学的試料培養システムのシステムレベルの図である。図21では、環境操作の好ましい形態を示し、これは、様々なセンサーに補助されて制御下で使用されるチャンバーおよび要素、たとえばヒーター要素、水チャンバー、およびガス容器に接続された、様々な環境パラメータセンサーを示す。
【0132】
[00145]図22は、新しい培地成分の混合および培養ディッシュ内への分注を示す。液体成分は、回転バルブを通じて選択され、次に、ステージングおよび混合位置内にマイクロドーズするためにシリンジポンプが使用される。粉末成分は、閉じられた回転バルブを通じて選択され、これは、所定の量の選択された成分を混合領域内に堆積させる。次に、液体および粉末培地成分を混合し、次に、シリンジポンプを用いて所定の制御により培養ディッシュ内に分注する。」
合議体注:図20~図22は、以下のものである。
[図:0001434664000003.jpg]
「【0155】
[00171]光学分光は、培地中のメタボロミクスを評価する非侵襲的方法を用いた培地の検出を可能にする。成分を決定する光学分光機器、たとえばNIRSの能力は、胚発生を増進するためにメタボロミクス培地成分が適用および利用可能な要件を決定する能力を可能にすると考えられる。成功した胚に対する、良好な着床および良好な妊娠と考えられる、既知の培地成分と比較される。光学分光は、メタボロミクスプロファイリングを伴う形態画像化の実時間フィードバックとともに利用可能である。分光法の機器は、培地のメタボロミクスを検出する他の方法と比較して使用が容易であり、比較的安価である。機器は、経時的にきわめて安定しており、操作が単純で保守が容易である。他の分光検出法とは異なり、試験期間のための検出時間は、1秒未満から数分以内の範囲である。これは、組成を決定するための胚培地のサンプリングを可能にし、必要な補充物の分注により胚発生を増進することを可能にする。感知源、検出器および他の必要な成分の配置は、胚とともにインサイチューであるか、または、胚の周囲の吸引を通じて培地の一部が除去される二次感知領域上であるかのいずれかである。図20は、これをよく示す。
【0156】
[00172]制御された成分容量の構成を伴う所定のプロファイルは、ユーザーにより選択可能であり、培地組成を補完するよう適用される。機器/システムの対話型ユーザーインターフェースから培地組成を個別に管理および制御する適切なユーザーの能力により、ユーザーは、培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御する能力を有する。
【0157】
[00173]ユーザーは、患者の胚のプロファイルを改変するよう培地成分を完全に操作できる。この点に関して追加の一例は、グルコース欠乏症患者であり、これは、患者のプロファイルの改変を必要とすると考えられ、所望の培地成分および濃度へと培地の実時間改変および操作を可能にする。これは、胚発生を制御するためにユーザーの十分な柔軟性を可能にする。
・・・
【0159】
[00175]個別の溶液/成分のシステム内で培地を混合する。成分を別々に制御することは、それらに対するさらなる個別の制御を提供する。たとえば、冷蔵、有効期間および慎重な輸送方法に関して特別な要件を有する複数の成分がありえ、これらのそれぞれが成分にコストを加える。したがって、個別の容器の提供は、すべての成分の有効期間を延長しうる能力を創出し、成分全体をより低コストにする。
【0160】
[00176]システムの載置されている容器および分注能力を本明細書で説明する。成分の混合は、バルブ、ポンプおよび多岐管システムにより制御され、ユーザーによるプロファイルまたは個別の成分の所定の選択が、個別の成分のバルブを開くトリガーとなり、特定の量/容量を隔離された容器から成分がステージングされる混合ステーションへと注入/吸入することを可能にする。次に、他の成分を必要に応じてステージング/混合領域内に分注する。比容積および/または量は、分注機構により制御される。次に成分を必要に応じて混合領域内で水和する。撹拌運動で混合し、成分を適切に組み合わせる。次に、組み合わされた混合成分/溶液をチャンバーおよび選択された培養ディッシュ内に分注する。
【0161】
[00177]利用可能な混合成分を、別々の容器内に、粉末または液体形態のいずれかで貯蔵する。液体形態成分は、保管してマイクロドーズポンプを使用してそれらの容器から吸入可能である。粉末成分は、水和を要し、変数は、バッファー、水、アミノ酸、塩、糖、およびタンパク質を含んでいてもよい。
【0162】
[00178]培地の分注が完了すると、形態および光学分光を、培地の変更が胚に影響を及ぼすかどうかを決定するよう再評価するために使用する。フィードバックループは、ユーザーがコマンドを通じて培地混合領域を操作可能なよう、実時間で継続可能である。主目的は、胚がさらに発生することを可能にするよう培地を改良することである。」
(2)引用発明
引用文献1の記載事項エに基づけば、引用文献1には、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供」することが記載されており、当該システムが「所定のユーザー選択または所定のユーザープロファイルのうちの1つに応じて個別の培養培地成分を混合するための混合装置、混合された培地成分を、少なくとも1つの生物学的試料を含有する事前に選択された培養ポッド内に分注するための分注装置、少なくとも1つの生物学的試料の環境パラメータおよび培養培地パラメータのうちの1つまたはそれらの組合せを測定することにより、混合ステップについてのフィードバックを提供するためのフィードバック装置、を含む」ことが記載されているといえる。
そして、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システム」の具体例が、引用文献1の記載事項オに開示されている。
以上より、引用文献1の記載事項エ及び記載事項オに基づけば、引用文献1には、試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適した生物学的試料培養システムを提供する方法に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定にあたり、用語の統一を行っている。
「生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムである装置10と、
独立に操作および制御できる複数のインキュベーターモジュール20を含み、
各インキュベーターモジュール20は、微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31を収容するための個別の培養チャンバー36を含み、
それぞれ個別のインキュベーターモジュール20は、他のインキュベーターモジュール20と独立に装置10から取り外せるように構成されており、インキュベーターモジュール20の取外しは、装置10の他のインキュベーターモジュール20の機能に影響を及ぼさず、
各培養チャンバー36の内部環境温度は、ヒーター37、46および温度センサーを使用して所定値に制御され、
各インキュベーターモジュール20は、光学検査手段を備え、
ユーザーインターフェースを有し、エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう、ディッシュの物理的配列に合致するよう配列された培養チャンバー36の物理的レイアウトが、大型ディスプレイスクリーン上にミラーリングされることにより、微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31の円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示され、
各培養チャンバー36内の環境は、自動で制御でき、培養中のプロファイルに応じて変更できるものであり、機器の所定のセットのための汎用環境プロファイルがユーザーにより予め定義され、これが次に、この機器のセットにおいて培養されるすべての胚に適用され、このプロファイルは、概日リズム周期に基づいていてもよいものであり、
6つまでの培養チャンバー36を単一のシステムに統合するための機構として、USBハブを機器内に提供し、6つのカメラが単一の接続を介してPCに接続することを可能にし、カメラを単一のシステムで同時に管理でき、
評価されている微速度撮影培養ディッシュ39に関する情報を表示するよう組み合わされた小さなディスプレイスクリーンを備え、
制御された成分容量の構成を伴う所定のプロファイルは、ユーザーにより選択可能であり、機器/システムの対話型ユーザーインターフェースから、培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御することができ、
成分の混合は、バルブ、ポンプおよび多岐管システムにより制御され、ユーザーによるプロファイルまたは個別の成分の所定の選択が、個別の成分のバルブを開くトリガーとなり、特定の量/容量を隔離された容器から成分がステージングされる混合ステーションへと注入/吸入することを可能にするように構成された、
試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法。」
5 対比(一致点、相違点の認定)
本件発明と引用発明とを対比する。
(1)統合制御ユニットを提供すること
引用発明の「装置10」は、「生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステム」であって、培養チャンバー36を単一のシステムに統合するための機構として「USBハブ」を有している。ここで、「培養チャンバー36」は、各インキュベーターモジュール20に含まれるものであり、各培養チャンバー36内の環境は、ユーザーにより選択及び定義されたプロファイルに応じて自動で制御されるものである。そうすると、引用発明の「装置10」は、培養チャンバー36を単一のシステムに「統合」し、培養チャンバー36内の環境を「制御」するものであるから、本件発明の「統合制御ユニット」に相当する。
また、引用発明の「装置10」が有する「USBハブ」は、「微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31を収容するための個別の培養チャンバー36」を単一のシステムに統合するための機構である。そうすると、引用発明の「USBハブ」は、本件発明の「一連のポート」に相当する。また、引用発明の「装置10」は、本件発明の「一連のポートと、を含む」とする要件を満たしている。
そして、引用発明は、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法」であるから、「生物学的試料培養システム」を構成する「装置10」を提供するものといえる。したがって、引用発明は、本件発明の「統合制御ユニットを提供すること」を含む方法である。
(2)デバイスを含む混合システムを提供すること
本願の発明の詳細な説明の段落【0009】における「いくつかの実施形態において、デバイスは、センサであり得る。いくつかの実施形態において、デバイスは、ポンプであり得る。いくつかの実施形態において、デバイスは、モータであり得、モータが、区画内の混合要素を駆動する。」との記載に基づけば、本件発明の「デバイス」は、センサやポンプ、混合要素を駆動するモータなどを包含するものである。そうすると、引用発明の「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、及び、成分の混合のための「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」は、いずれも、本件発明の「デバイス」に相当する。
また、引用発明の「成分の混合」が培養培地成分の混合を意味するのは自明であり、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」は、「インキュベーターモジュール20」の中のディッシュの培養試料の混合のために、ディッシュと混合ステーションの間で液体を移動させるものであるから、「インキュベーターモジュール20」が「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」を備えることは明らかである。そうすると、引用発明の「インキュベーターモジュール20」は、「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」と共に、成分の混合のための「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」を備えているといえるものであるから、引用発明の「インキュベーターモジュール20」は、本件発明の「混合システム」に相当し、「デバイスを含む」とする要件を満たしている。
そして、引用発明は、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法」であるから、「生物学的試料培養システム」を構成する「インキュベーターモジュール20」を提供するものといえる。したがって、引用発明は、本件発明の「デバイスを含む混合システムを提供すること」を含む方法である。
(3)生物生産ワークスペースの画面を表示すること
引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」は、「所定のプロファイル」を表示すると共に、ユーザーによる選択を入力できるものといえる。そうすると、引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」は、本件発明の「ディスプレイ」に相当する。
そして、引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」は、「エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう、ディッシュの物理的配列に合致するよう配列されたチャンバーの物理的レイアウトが、大型ディスプレイスクリーン上にミラーリングされることにより、微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31の円形の胚レイアウトが、大型ディスプレイ上に円形配列で表示」されるものである。また、引用発明は、「成分の混合」が、「バルブ、ポンプおよび多岐管システムにより制御」され、「ユーザーによるプロファイルまたは個別の成分の所定の選択が、個別の成分のバルブを開くトリガーとなり、特定の量/容量を隔離された容器から成分がステージングされる混合ステーションへと注入/吸入することを可能にする」ものである。
ここで、引用発明における、「間違った項目を選択する可能性を低減するよう」に「微速度撮影培養ディッシュ39」等のレイアウトを表示することは、本件発明の「生物生産ワークスペースの画面を表示すること」であって、「細胞培養培地混合プロセス」を表すことに相当する。また、引用発明における「個別の成分のバルブを開くトリガー」となる「選択」を表示することは、本件発明の「デバイスに関連するプロセス」を表示することに相当する。
そうすると、本件発明の「ディスプレイ」の表示と引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」の表示とは、「生物生産ワークスペースの画面を表示することであって、該生物生産ワークスペースの画面は、前記細胞培養培地混合プロセスを」「表す」ことである点、及び、「前記ディスプレイ上の前記生物生産ワークスペースの画面内に生物プロセスモジュールを表示することであって、該生物プロセスモジュールは前記デバイスに関連するプロセスを」「表す」ことである点で共通する。
(4)ポートにデバイスを接続すること
引用発明の「USBハブ」は、「培養チャンバー36を単一のシステムに統合するための機構」である。そして、引用発明において、「それぞれ個別のインキュベーターモジュール20は、他のインキュベーターモジュール20と独立に装置10から取り外せるように構成されて」おり「装置10」と着脱するのは「インキュベーターモジュール20」であるから、「培養チャンバー36を単一のシステムに統合するため」の「USBハブ」が、「培養チャンバー36」を備える「インキュベーターモジュール20」をUSB接続するためのものであることは明らかである。そうすると、「培養チャンバー36」は、空間そのものを意味するところ、「培養チャンバー36」を統合することは、「培養チャンバー36」を含む「インキュベーターモジュール20」を統合しているといえる。
「インキュベーターモジュール20」は、内部環境を制御するための「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、及び、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」、つまり本件発明における「デバイス」を備えている。そうすると、引用発明の「USBハブ」は、「装置10」と、「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、又は、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」、つまり本件発明における「デバイス」を接続するものであるといえる。
そして、引用発明は、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法」であるから、「生物学的試料培養システム」を構成する「USBハブ」を含む「装置10」と、「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、又は、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」とを接続する工程を含むものといえる。したがって、引用発明は、本件発明の「前記一連のポート内のポートに前記デバイスを接続すること」含む方法である。
また、引用発明における「個別の成分のバルブを開くトリガー」となる「選択」の表示は、「生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステムである装置10」と「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」とが接続された状態において表示されるものといえる。そうすると、引用発明は、本件発明の「前記ポートに前記デバイスを接続すると」生物プロセスモジュールを表示するという要件を満たしている。
(5)細胞培養培地混合プロセスを構成すること
引用発明は、「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法」である。そして、引用発明の「生物学的試料培養システム」は、「培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御」し、「成分の混合」を行うものであるから、本件発明の「細胞培養培地混合プロセス」を構成するものといえる。
したがって、引用発明の「試料の生存能を改善するためにフィードバック制御で作動するのに適合した生物学的試料培養システムを提供する方法」は、本件発明の「細胞培養培地混合プロセスを構成する方法」に相当する。
(6)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「 細胞培養培地混合プロセスを構成する方法であって、
一連のポートと、を含む、統合制御ユニットを提供することと、
ディスプレイ上に生物生産ワークスペースの画面を表示することであって、該生物生産ワークスペースの画面は、前記細胞培養培地混合プロセスを表す、ことと、
デバイスを含む混合システムを提供することと、
前記一連のポート内のポートに前記デバイスを接続することと、
前記ポートに前記デバイスを接続すると、前記ディスプレイ上の前記生物生産ワークスペースの画面内に生物プロセスモジュールを表示することであって、該生物プロセスモジュールは前記デバイスに関連するプロセスを表す、ことと、を含む、方法。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
[相違点1]
本件発明は、統合制御ユニットが「ディスプレイ」を含むのに対し、引用発明は、「装置10」が「対話型ユーザーインターフェース」を含むのかが明らかでない点。
[相違点2]
本件発明は、細胞培養培地混合プロセス及びデバイスに関連するプロセスを「グラフィカルに」表すのに対し、引用発明は、対話型ユーザーインターフェースにおいて、培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御する際の表示が、グラフィカルに表されるものであるかが明らかでない点。
[相違点3]
本件発明は、ポートにデバイスを接続すると、デバイスを「自動的にアクティブ化」するのに対し、引用発明は、USBハブに培養チャンバー36を接続することにより、培養チャンバー36の「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、及び、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」がアクティブ化されるものであるかが明らかでない点。
6 判断(相違点についての検討)
(1)[相違点1]について
引用発明の「装置10」は、「生物学的または培養試料の培養および連続監視のためのモジュラーシステム」であって「6つのカメラ」を「単一のシステムで同時に管理」するものである。そうすると、複数のデバイスを「単一のシステムで同時に管理」するための構成である「装置10」が、当該管理のための「プロファイル」を選択するための「対話型ユーザーインターフェース」を備えるように構成されることは明らかである。したがって、上記[相違点1]は実質的な相違点であるとはいえない。
仮に、上記[相違点1]が、実質的な相違点であったとしても、引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」は、「微速度撮影培養ディッシュ39および平衡化ディッシュ31の円形の胚レイアウト」を「大型ディスプレイ上に円形配列で表示」するものである。そうすると、各「インキュベーターモジュール20」よりも大型ディスプレイを配置するスペースを確保し易い「装置10」に「対話型ユーザーインターフェース」を設けることは、当業者が適宜設計し得ることである。
(2)[相違点2]について
引用発明の「対話型ユーザーインターフェース」は、「エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう」に、「ディッシュの物理的配列に合致するよう配列された培養チャンバー36の物理的レイアウト」を「大型ディスプレイスクリーン上にミラーリングされる」ことにより、「円形配列で表示」するものである。そうすると、各「培養チャンバー36」に対して設定されることとなる「所定のプロファイル」の選択肢は、「培養チャンバー36の物理的レイアウト」に対応するよう表示されていると理解できる。そうすると、引用発明における「培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御する際の表示」は、グラフィカルに表されるものといえるから、上記[相違点2]も、実質的な相違点とはいえない。
審判請求人は、審判請求書において、「本願明細書には『グラフィカルに表す』ことについての態様は具体的に記載されており、引用文献1、2に記載の構成は『細胞培養培地混合プロセス』を『グラフィカルに表す』ものでないことは明らかであると思料します。」と主張している。また、審判請求人は、意見書において、「引用文献1には、システムの『チャンバーの物理的なレイアウト』をミラーリングすることのみが記載されているだけで、『前記細胞培養培地混合プロセスをグラフィカルに表す』『生物生産ワークスペースの画面』を表示することは何ら開示も示唆もされていません。」と主張している。
しかし、既に検討したとおり、引用文献1における「培地、培地成分の容量および送達時間の選択を制御する際の表示」は、グラフィカルに表されるものである。したがって、審判請求人のこれらの主張を採用することができない。
また、仮に、上記[相違点2]が実質的な相違点であったとしても、グラフィカルに表示することにより、注意を喚起することは、文献を挙げるまでもない周知技術であるといえる。「エラーを最小化し、間違った項目を選択する可能性を低減するよう」に表示する引用発明において、ユーザーの注意を喚起するために、その表示をグラフィカルに表すものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(3)[相違点3]について
技術的にみて、USBハブに機器を接続した場合、接続された機器に対してUSBを介して電力が供給されると共にデータ通信が行われることとなる。そうすると、引用発明において、「装置10」の「USBハブ」に「培養チャンバー36」を接続することにより、「培養チャンバー36」の「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、及び、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」がアクティブ化されることになるといえる。したがって、上記[相違点3]も、実質的な相違点とはいえない。
仮に、上記[相違点3]が実質的な相違点であったとしても、USBを介して接続される「培養チャンバー36」の「ヒーター37、46」、「温度センサー」、「光学検査手段」、及び、「バルブ、ポンプおよび多岐管システム」について、接続されることにより、自動的にアクティブ化されるように設計することは、当業者が適宜なし得ることである。
(4)効果について
仮に、いずれかの相違点が実質的な相違点であったとしても、それらの相違点による効果は、当業者が予測できる範囲のものであるから、本件発明が奏する効果を格別なものということはできない。
7 むすび(結論)
上記のとおり、[相違点1]~[相違点3]は、いずれも、実質的な相違点ではないから、本件発明は、引用文献1に記載された発明であるといえる。また、仮に、[相違点1]~[相違点3]が実質的な相違点であったとしても、いずれの相違点も当業者が適宜なし得るものであるから、本件発明は、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。このため、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-009378