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特許拒絶査定不服審判

2021-004401

中敷き及び靴

審判番号
2021-004401
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-090145外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月05日
審決日
2022年07月20日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A43B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020- 90145「中敷き及び靴」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 9日出願公開、特開2021-184778〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、令和2年5月23日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和2年 7月 6日付け 拒絶理由通知書 令和2年 8月26日 意見書、手続補正書 令和2年 8月29日 意見書、手続補正書 令和2年 9月14日付け 拒絶理由通知書 令和2年11月17日 意見書、手続補正書 令和2年12月25日付け 拒絶査定 令和3年 4月 5日 審判請求書、手続補正書 令和4年 1月28日付け 拒絶理由通知書 令和4年 3月31日 意見書、手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和4年3月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「足の裏面が位置するシート状の足裏マットと、前記足裏マットに取り付けられる前坪とを備えた中敷きであって、 前記足裏マットは、少なくとも足の5趾間の各趾股が位置する領域から当該足裏マットにおける足指側先端までの範囲内の領域である先端領域に、前記前坪を取り付けるための貫通孔である前坪取付孔を複数有し、 前記前坪取付孔は、少なくともいずれかの趾股が位置する周囲の領域において、足の長さ方向及び足の幅方向にそれぞれ複数設けられており、 前記前坪には、雄雌構造の雄部及び雌部の一方が設けられ、前記前坪を着脱自在に取り付けるための取付部材には、前記雄雌構造の前記雄部及び雌部の他方が設けられ、前記前坪と前記取付部材とは、前記いずれかの前記趾股が位置する周囲の領域における複数の前記前坪取付孔のうちの一つを通して前記雄雌構造の前記雄部及び雌部により雄雌結合されることを特徴とする中敷き。」 第3 拒絶の理由 令和4年1月28日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、理由2(進歩性)は、次の理由を含むものである。 本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特許第6617308号公報 引用文献2:実願昭63-155106号(実開平2-74903号)のマイクロフィルム 第4 引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献1の記載及び引用発明 (1)当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。 ア 「【0001】 本発明は、足指先の力を靴底に安定して伝達させることができる中敷き及びこれを備えた靴に関する。」 イ 「【0008】 本発明は、上記問題点を解決して、足指先の力を靴底に安定して伝達させることができるとともに、足指の筋力アップを図ることができ、靴に収容した状態で履きやすい中敷き及びこれを備えた靴を提供することを課題とする。」 ウ 「【0012】 また、前記甲側支え部材は、前記前坪と接する部分の中心から足指側先端部までの長さをSLとし、前記前坪と接する部分の中心から踵側端部までの長さをKLとしたときに、SL≦KLの関係となる構成としたことにより、前坪と接する部分から踵側端部までの領域を大きくとることになり、確実に靴の甲被部内面に接触して摩擦により移動することを防ぐことができる。さらに、前坪が中敷き本体に着脱自在に取付けられた構造であるため、個人の足の長さによって前坪の位置調整が可能であるとともに、甲側支え部材の交換が容易である。また、前坪と甲側支え部材とを着脱自在に取付けることがより好ましい。これにより、前坪を起点とした足指側又は踵側への長さを調整することができるとともに、甲側支え部材や前坪及び中敷き本体を容易に交換可能とすることができる。 また、甲側支え部材の足指側先端部は中敷き本体の足指側先端部に当接しないようにしたことで、足指先と靴内面との間に隙間を設けて、足指先が甲側支え部材の内面に当接することを防止して足指の損傷や疲労を避けることができる。」 エ 「【0018】 前記中敷き本体の足指側前部には前坪位置調整部が設けられ、前記前坪は当該前坪位置調整部を通して前記中敷き本体に着脱自在に取付けられることにより前記前坪の取付け位置が調整可能とされた構成としてもよい。 【0019】 この構成により、前坪を前坪位置調整部により位置調整自在に取り付けることができ、踵から第1趾及び第2趾のつけ根までの長さに応じて前坪の位置を調整して中敷き本体に取り付けることができる。要するに、足の踵から足指の第1趾と第2趾のつけ根までの長さを個人の足に合わせて調整しておけば、足指の第1趾と第2趾のつけ根から靴の先端までの長さは多少長くてもしっかりと足を保持することができるため、前後方向に多少長めの靴でも形状重視で靴を選択することができる。また、足指と靴の先端までの間に余裕ができることにより、足指を動かすことが可能となり血行障害を防止することができる。前坪位置調整部は、挿通スリット又は挿通開口(孔)で構成することができる。 【0020】 前記前坪位置調整部によって前記前坪の取付け位置は、前記中敷き本体の足指側前部における前記前坪の後端部から踵側端部までの長さMLが、足の踵後端部から足指の第1趾と第2趾とのつけ根までの長さALと略同一になるように各人の右足の長さ及び左足の長さに基づいて右足用の位置及び左足用の位置がそれぞれ調整可能である構成としてもよい。 【0021】 この構成により、個人の足にあった寸法の中敷きとすることができ、靴に収納して履いて下り坂を歩いても中敷きの前坪に趾股が固定されて、足指先が靴の先端内面に当接して痛くなることもなく足に優しい中敷きとすることができる。」 オ 「【0043】 図1~図5において、図示の中敷き2は、靴102の底部104の内面(即ち、内底106)(図7参照)の形状に対応した中敷き本体4を備え、この中敷き本体4の足指側前部6は平らに形成され、その踵側後部8における幅方向中央部10が平らに形成され、その幅方向両側部12が上側に湾曲して延び、かかる両側部12の内側面が外方に向けて上方に傾斜して延びている。従って、この中敷き本体4においては、足108の裏面が中敷き本体4の平らな部分(即ち、足指側前部6及び踵側後部8の幅方向中央部10)に位置し、中敷き本体4の幅方向両側部12が足108の踵側を両側から包むようになることで靴102に収容可能であるとともに足に対応した形状とされている。 【0044】 なお、実施例1においては、踵側後部8を備えた構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、足指側前部6のみを有した足指側先端からの長さを短くした中敷き本体4としてもよい。 【0045】 中敷き本体4は、例えば柔軟性を有する合成樹脂材料などから形成することができ、その表面を織布などで被うようにしてもよい。また、中敷き本体4として、全体が略平らなものを用いるようにしてもよい。 【0046】 この中敷き2においては、中敷き本体4の足指側前部6に前坪14が取付けられ、この前坪14の上端部に甲側支え部材16が取付けられている。前坪14の長さは任意であるが、当該中敷きを靴に収容して履いたときに足指を圧迫せず、靴の甲被部112の内面に当接可能な高さとすることが望ましい。図6をも参照して、前坪14は、柔軟性を有する中空スリーブとしての円筒状中空スリーブ18と、この円筒状中空スリーブ18を挿通して配設された一対の芯索20,22とを備え、円筒状中空スリーブ18は、例えば合成樹脂材料から形成することができ、一対の芯索20,22は、例えば布を紐状にしたものなどを用いることができる。尚、一対の芯索20,22を一つにまとめたものを用いるようにしてもよく、またこの円筒状中空スリーブ18を省略するようにしてもよい。」 カ 「【0048】 実施例1では、円筒状中空スリーブ18の一端(下端、すなわち中敷き本体4側の端部)は、中敷き本体4の足指側前部6の表面に当接するように配設され、その他端(上端、すなわち甲側支え部材16側の端部)は、甲側支え部材16の内面に当接するように配設され、一対の芯索20,22の一端側を円筒状中空スリーブ18の一端側を通して中敷き本体4に取付けるとともに、それらの他端側を円筒状中空スリーブ18の他端側を通して甲側支え部材16に取付けることにより、中敷き本体4と甲側支え部材16との間に支持される。 【0049】 実施例1では、一対の芯索20,22の一端側は、例えば、中敷き本体4に形成された前坪位置調整部としての挿通スリット24を通してその裏側に突出させ、図4に破線で示すように、それらの一端部を拡げて中敷き本体4の外面に接着剤などで固着することにより、この中敷き本体4に取付けられる。また、一対の芯索20,22の他端側は、図示していないが、例えば、それらの他端部を拡げて甲側支え部材16の内面に接着剤などで固定することにより、この甲側支え部材16に取付けられる。この挿通スリット24は、中敷き本体4の足指側と踵側とを結ぶ方向に延びており、従って、前坪14はかかる方向に位置調整することができる。」 キ 「【0050】 実施例1では、中敷き本体4に設けた前坪位置調整部としての挿通スリット24を通して一対の芯索20,22が取り付けられているので、一対の芯索20,22を固定する前の状態では、これら芯索20,22を挿通スリット24に沿って中敷き本体4の前後方向(図7の左右方向)に移動させることができ、このように移動させることにより、中敷き本体4に対する前坪14の取付位置を調整することができる。 【0051】 例えば、階段を降りるときや山道を下るときには、通常、足指先が靴の足指側先端部内面に圧迫されてストレスを受けることがある。これにより、足指先が損傷したり体全体の疲労感につながることがある。そのため、当該靴を履いたときに、足指先が靴の足指側先端部内面に当接しない位置に挿通スリット24を利用して前坪14の位置を設定することができる。 【0052】 前坪14の位置を設定する具体的な方法を説明する。人は左右の足でその長さが異なっている。したがって、各人の左右の長さを測定して前坪14の位置を設定する。図11(a)は右足の足の裏を示し、(b)は左足の足の裏を示している。踵の後端部から足指の第1祉と第2祉とのつけ根までの長さALを測定する。この長さALは右足の場合はRALとし、左足の場合はLALとする。 【0053】 そして、図3に示す中敷き本体4の踵側端部から中敷き本体4の足指側前部6における前坪14の後端部までの長さMLをML=RALとなるように、挿通スリット24を利用して右足用の前坪14の位置を設定し、また、ML=LALとなるように、挿通スリット24を利用して左足用の前坪14の位置を設定する。 【0054】 なお、右足での長さRAL又は左足での長さLALのいずれかの値、又は平均値などを用いて共通の長さALとして、右足用も左足用もML=ALとなるように、前坪14の位置を設定してもよい。この場合、中敷き本体4の足指側前部6における前坪14の後端部から踵側端部までの長さMLは、足の踵後端部から足指の第1趾と第2趾とのつけ根までの長さALと略同一となる。 【0055】 なお、実施例1においては、前坪位置調整部としての挿通スリット24を利用して前坪14の位置を設定するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、挿通スリット24を中敷き本体4に設けず、上述の長さRAL、LAL,又はALの位置に、前坪位置調整部として挿通開口を設けて前坪14を取付けてもよい。 【0056】 つまり、実施例1では、前坪14の円筒状中空スリーブ18の一端(下端)を中敷き本体4の表面に当接させているが、このような構成に代えて、中敷き本体4の足指側前部6に挿通開口を設け(この場合、スリット24は省略される)、この挿通開口内に円筒状中空スリーブ18の一端部を位置付けて接着剤などにより取付けるとともに、この挿通開口内の円筒状中空スリーブ18の一端側を通して一対の芯索20,22の一端側を中敷き本体4の裏面側に突出させて上述したように取付けるようにしてもよい。」 ク 「【0058】 また、前坪位置調整部として複数の挿通開口を中敷き本体4に設けて、前坪14の取付け位置を調整可能にしてもよい。 【0059】 さらに、挿通スリット24、又は複数の挿通開口により、前坪14以外に前坪と同様の構造有した別の部材を取付けてもよい。これにより、足指の第1祉と第2祉とで複数の前坪14を掴む力が増し、踏ん張り力が向上する。また、前記別の部材は複数であってもよい。」 ケ 「【0078】 この中敷き4を収容した靴102では、足108の第1趾と第2趾の間の趾股内に前坪14が位置するように靴102を履くようになる。この靴102を履いて歩行(走行)すると、前坪14が第1趾及び第2趾の間の趾股に作用し、これにより、歩くときの体重移動が踵から第1趾に向けて直線状に移動するようになり、その結果、足指先の力を靴底に伝えて安定的に歩行(走行)することができる。また、この歩行(走行)状態においては、前坪14が第1趾と第2趾との間の趾股に作用するために、地面を蹴る際に踏ん張りがきいて足の指先に力が入り、これによっても歩行(走行)を安定させることができ、また蹴る際の踏ん張りがきくために足指や足裏の筋力増強を図ることができる。その結果、歩行姿勢の改善につながり腰痛や膝痛等を防止することができる。また、前坪14の外形が円筒状(又は三角柱等の多角柱)であるので、第1趾及び第2趾によりつかみやすく、これにより、足の指先に力が入って蹴る際により踏ん張りやすく、足指や足裏の筋力アップを図ることができる。」 コ 「【0079】 以上、本発明に従う中敷き及びこれを備えた靴の実施例1について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。 【0080】 例えば、前坪として図8に示すように構成するようにしてもよい。図8において、変形形態の前坪14Aは、柱状部材52と、この柱状部材52を被う弾性スリーブとしての例えば円筒状弾性スリーブ54とから構成され、この柱状部材52及び円筒状弾性スリーブ54が中敷き本体4Aと甲側支え部材16Aとの間に配設されている。 【0081】 この変形形態では、柱状部材52の一端側に下雌ねじ孔56が設けられ、取付ねじ58の雄ねじ部60をこの下雌ねじ孔56に螺着することにより、柱状部材52の下端部が中敷き本体4Aに着脱自在に取付けられる。また、この柱状部材52の他端側の上雌ねじ孔62が設けられ、取付ねじ64の雄ねじ部66をこの上雌ねじ孔62に螺着することにより、柱状部材52の上端部が甲側支え部材16Aに着脱自在に取付けられる。 【0082】 このような前坪14Aにおいては、柱状部材52が鉄、ステンレス鋼などの金属材料、硬質の剛性樹脂材料などから形成することができ、このような材料から形成することにより、柱状部材52に剛性及び強度を持たせることができる。また、円筒状弾性スリーブ54としては、柔らかい合成樹脂材料、発泡樹脂材料などから形成することができ、このように構成することによって、足に優しいが第1と第2趾との間の趾股には刺激が強い中敷きを提供することができる。」 サ 前記カ及びキには、前坪位置調整部である挿通スリットが中敷き本体の前後方向に設けられていることが示されており、また、前記ク及びケの記載から、前坪位置調整部である挿通開口は、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪の取付け位置に複数設けられることが明らかであることから、挿通開口は、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪の取付け位置において、中敷き本体の前後方向に複数設けられているといえる。 シ 引用文献1には、以下の図面が示されている。 「【図1】 [図:0001397411000001.jpg] 【図2】 [図:0001397411000002.jpg] 【図3】 [図:0001397411000003.jpg] 【図7】 [図:0001397411000004.jpg] 【図8】 [図:0001397411000005.jpg] 」 (2)引用文献1の前記ア~サの記載及び前記シで示した図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「足の裏面が位置する中敷き本体4Aと、前記中敷き本体4Aに取り付けられる前坪14Aとを備えた中敷き2であって、 前記中敷き本体4Aは、足指側前部6に、前坪14Aを取り付けるための挿通開口を複数有し、 前記挿通開口は、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置において、中敷き本体4Aの前後方向に複数設けられており、 前記前坪14Aを構成する柱状部材52には、一端側に下雌ねじ孔56が設けられ、前記前坪14Aを着脱自在に取り付けるための取付ねじ58には、雄ねじ部60が設けられ、前記前坪14Aと前記取付ねじ58とは、前記第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置における複数の前記挿通開口のうちの一つを通して、雄ねじ部60を下雌ねじ孔56に螺着する中敷き2。」 2.引用文献2の記載 当審拒絶理由で引用された前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。 (1)「2.実用新案登録請求の範囲 足の指間等で支える突起具を、靴中底に設置する足先靴づれ疲れ防止具」(1頁4~6行) (2)「[産業上の利用分野] 本考案は、靴履きの時に足先靴づれ疲れ防止のため靴中底に設置して使用するものである。」(1頁8~10行) (3)「[考案が解決しようとする課題] 靴と足先との摩擦によって起きる足先靴づれや足疲れを防止しようとするものである。」(1頁15~17行) (4)「[課題を解決するための手段] 靴中底に、足の指間等で支える突起具を設定する。」(1頁18~20行) (5)「[作用] 突起具が、足の指間等に止まり込む状態になり、足先が前方に行き過ぎる事を防ぎ、靴と足先との摩擦を減少させ、足先靴づれ疲れ防止となる。」(2頁1~5行) (6)「[実施例] …第1図~第2図において、靴底板1に靴製造工程で数箇所の差し込み穴2を設け、靴及び足に合わせて選んだ箇所に、突起具3を取り付け、更にその上に、個人差等により選択して補助カバー4を付ける。」(2頁6~12行) (7)「[考案の効果] …指間等で支える突起具を付けたため、足先靴づれ疲れを防止することができる。 差し込み穴を数箇所設けたため、突起具の位置を自由に移動させることができ、靴及び足の寸法や形に合わせて使用できる。 突起の位置を指間等にしたため、使用する際寸法的に差し支えることはない。」(2頁19行~3頁8行) (8)引用文献2には以下の図が示されている。 「第1図 [図:0001397411000006.jpg] 第2図 [図:0001397411000007.jpg] 」 (9)前記(1)~(7)の記載及び前記(8)で示される図面第1図及び第2図の記載の内容から、靴中底に、突起具3を取り付けるための差し込み穴2が前後左右に平面的に広がって複数設けられていることが理解できる。 第5 対比・判断 1.対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「中敷き本体4A」は、その作用、機能からみて、本願発明の「足裏マット」に相当し、同様に、「前坪14A」は「前坪」に、「中敷き2」は「中敷き」に、「挿通開口」は「(貫通孔である)前坪取付孔」に、「取付ねじ58」は「取付部材」に、それぞれ相当する。 (2)引用文献1の発明の詳細な説明の段落0018~0019、0043~0044、0049~0050及び0058並びに図1~3(前記第4の1(1)エ~クを参照。)の記載によれば、引用発明の「足指側前部6」は、中敷き本体の先端を含む前方に位置し、また、前坪位置調整部である複数の挿通開口が設けられた位置を含む領域である。また、挿通開口が第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪の取付け位置に設けられることから、引用発明の「足指側前部6」は、第1趾と第2趾の間の趾股が位置する領域を含む領域といえるところ、「足指側前部6」に第1趾と第2趾の趾股が位置するように足裏が配置された際には、「足指側前部6」の構造から、自ずと、第1趾と第2趾以外の5趾間の趾股も「足指側前部6」に位置すると理解できる。すなわち、引用発明の「足指側前部6」は、足の5趾間の各趾股が位置する領域を含む領域であるといえる。したがって、引用発明の「足指側前部6」は、本願発明の「少なくとも足の5趾間の各趾股が位置する領域から当該足裏マットにおける足指側先端までの範囲内の領域である先端領域」に相当する。 (3)本願発明の「少なくともいずれかの趾股が位置する周囲の領域」と引用発明の「第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置」とは、「少なくともいずれかの趾股が位置し得る範囲」で共通する。 また、引用発明の「中敷き本体4Aの前後方向」は、本願発明の「足の長さ方向」に相当する。 そして、本願発明の「前記前坪取付孔は、少なくともいずれかの趾股が位置する周囲の領域において、足の長さ方向及び足の幅方向にそれぞれ複数設けられており、」と引用発明の「前記挿通開口は、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置において、中敷き本体4の前後方向に複数設けられており、」は、「前記前坪取付孔は、少なくともいずれかの趾股が位置し得る範囲において、足の長さ方向に複数設けられており、」の点で共通する。 (4)引用発明の「下雌ねじ孔56」及び「雄ねじ部60」は、それぞれ、雄雌結合する雄雌構造の「雌部」及び「雄部」といえるから、本願発明の「雄雌構造の雄部及び雌部の一方」及び「雄雌構造の前記雄部及び雌部の他方」に相当する。 また、引用発明の「雄ねじ部60を下雌ねじ孔56に螺着する」は、本願発明の「前記雄雌構造の前記雄部及び雌部により雄雌結合される」に相当する。 (5)そうすると、本願発明と引用発明とは、 「足の裏面が位置する足裏マットと、前記足裏マットに取り付けられる前坪とを備えた中敷きであって、 前記足裏マットは、少なくとも足の5趾間の各趾股が位置する領域から当該足裏マットにおける足指側先端までの範囲内の領域である先端領域に、前記前坪を取り付けるための貫通孔である前坪取付孔を複数有し、 前記前坪取付孔は、少なくともいずれかの趾股が位置し得る範囲において、足の長さ方向に複数設けられており、 前記前坪には、雄雌構造の雄部及び雌部の一方が設けられ、前記前坪を着脱自在に取り付けるための取付部材には、前記雄雌構造の前記雄部及び雌部の他方が設けられ、前記前坪と前記取付部材とは、前記いずれかの前記趾股が位置し得る範囲における複数の前記前坪取付孔のうちの一つを通して前記雄雌構造の前記雄部及び雌部により雄雌結合される中敷き。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、足裏マットが「シート状」であるのに対し、引用発明は、中敷き本体4Aがシート状であるか否か不明である点。 [相違点2] 前坪取付孔に関し、本願発明は、「少なくともいずれかの趾股が位置する周囲の領域において、足の長さ方向及び足の幅方向にそれぞれ複数有する」のに対し、引用発明は、第1趾と第2趾の間の趾股内に位置する前坪14Aの取付け位置おいて、中敷き本体4Aの前後方向に複数設けられているものの、足の幅方向に複数有したものとはいえない点。 2.判断 (1)相違点について 以下、相違点1及び相違点2について検討する。 ア 相違点1について 引用文献1の段落0045の「中敷き本体4は、例えば柔軟性を有する合成樹脂材料などから形成することができ」との記載によれば、中敷き本体は、柔軟性を有する合成樹脂材料などから形成されるものであるといえ、また、段落0043及び図7の記載内容から、靴102の底部104の内面形状に対応するものでもあると解されることから、中敷き本体は、柔軟に形状を変化させることができる程度の厚みであることが明らかであるといえる。 以上によれば、引用発明の中敷き本体4Aは、靴の底に収容可能な「シート状」であるということができ、相違点1は実質的な相違点ではない。 イ 相違点2について 引用文献2には、靴中底に、足の指間等で支える突起具を取り付けるための差し込み穴を前後左右に平面的に広がって複数設けることにより、靴及び足の寸法や形に合わせて使用できる足先靴づれ疲れ防止具が記載されている。 また、引用文献1における、段落0012の「前坪が中敷き本体に着脱自在に取付けられた構造であるため、個人の足の長さによって前坪の位置調整が可能である」との記載、また、段落0019の「足の踵から足指の第1趾と第2趾のつけ根までの長さを個人の足に合わせて調整しておけば、足指の第1趾と第2趾のつけ根から靴の先端までの長さは多少長くてもしっかりと足を保持することができる」との記載、段落0052の「人は左右の足でその長さが異なっている。したがって、各人の左右の長さを測定して前坪14の位置を設定する」との記載によれば、前坪の位置調整は、前後方向(足の長さ方向)における趾股の位置の個人差の調整も意識されたものであると理解されることから、引用発明には、趾股の位置の個人差に応じて前坪の位置調整を行うという課題もあることは明らかであるといえる。 そうすると、引用発明と引用文献2に記載の事項とは、共に、靴等の履物において使用される足の趾股間に設けた突起具に関する技術であり、また、個人差に応じて突起具の位置調整を行うという共通の課題を有するものである。そして、足指等の形状、長さ、幅などに個人差があることは明らかであるところ、趾股の位置においても、前後方向(足の長さ方向)だけでなく左右方向(足の幅方向)にも個人差があることは、当業者にとって技術常識(例えば、特開2004-305405号公報の段落0009-0010、また、登録実用新案第3111466号公報の段落0023及び図1を参照。)である。 以上によれば、引用発明において、前坪の取り付け位置を趾股の位置の個人差に応じて調整可能とするに際し、前後方向に設けた複数の挿通開口について、前記技術常識に鑑み、前後左右に平面的に広がって複数の穴を設けた引用文献2に記載の事項を適用し、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (2)請求人の主張について ア 請求人は、令和4年3月31日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)において、「引用文献1記載の発明において複数の挿通開口を設ける目的は、『足の踵から足指の第1趾と第2趾のつけ根までの長さを個人の足に合わせて調整しておけば、足指の第1趾と第2趾のつけ根から靴の先端までの長さは多少長くてもしっかりと足を保持することができるため、前後方向に多少長めの靴でも形状重視で靴を選択することができる。また、足指と靴の先端までの間に余裕ができることにより、足指を動かすことが可能となり血行障害を防止することができる。前坪位置調整部は、挿通スリット又は挿通開口(孔)で構成することができる。』(段落【0019】参照))旨の記載、及び『また、前坪位置調整部として複数の挿通開口を中敷き本体4に設けて、前坪14の取付け位置を調整可能にしてもよい。』(段落【0058】参照)旨の記載、図1、図10の記載から各人の足のサイズに応じてオーダーメード的に予め前坪14の位置を直線状前後のみ調整可能とすることであり、直線状の位置以外に無用な貫通孔を必要としないものです。一方、引用文献2記載の発明において差し込み穴2を数箇所設ける目的は、オーダーメード的に予め靴の寸法やサイズに合わせて突起具3の位置を直線状に調整可能とするものではなく、むしろ、靴底板1に製造工程で数箇所の差し込み穴2を設けることで、オーダーメードに頼ること無く、靴の寸法やサイズに合わせて突起具3の位置を前後左右に調整可能とするものです(第2頁第6行目乃至第12行目、第3頁第4行目乃至第6行目)。したがって、各人の足のサイズに応じて予め前坪14の位置を直線状前後のみ調整可能とする引用文献1記載の発明に、靴の寸法やサイズに合わせて突起具3の位置を前後左右に調整可能とする引用文献2記載の発明を適用することは、引用文献1記載の発明の目的に反し、阻害要因を有している。」(意見書7頁42行~8頁16行)と主張する。 しかしながら、請求人が示す、引用文献1の段落0019及び0058の記載に接しても、各人の足のサイズに応じて、第1趾と第2趾の趾股に配置される前坪の位置調整が行われることで、靴の中で足指を動かすことが可能となり血行障害が防止できることが理解されるのみで、引用文献1に記載のものを、「各人の足のサイズに応じてオーダーメード的に予め前坪14の位置を直線状前後のみ調整可能とすることであり、直線状の位置以外に無用な貫通孔を必要としないもの」と、すなわち、オーダーメード的なものと限定して解することはできない。仮に引用発明がオーダーメード的なものであるとしても、引用発明の複数の挿通開口は、前坪の取り付け位置を趾股の位置の個人差に応じて調整可能とするために設けられるものであって、技術常識に照らして、左右方向の調整を否定・排除したものでないことは明らかである。そうすると、引用文献1に記載されたものに引用文献2に記載されたものを適用することに阻害要因を有しているとはいえない。 よって、請求人の前記主張は採用できない。 イ 請求人は意見書において、「引用文献1段落【0005】には『趾股ブリッジが中敷き本体のスリット部に着脱自在に挿嵌される構成である故に、下り坂やでこぼこ道を歩行する場合などで趾股ブリッジに大きな力が加わると、中敷き本体に対して趾股ブリッジが相対的に移動しやすく、足指先の力を趾股ブリッジ及び中敷き本体を介して靴の爪先底部に確実に伝達することができない。特に、中敷きを靴の内底に収容した状態においては、この趾股ブリッジの足裏ベース部が靴の内底に接触保持され、その甲被カバー部が靴の甲被部内面に接触保持されるので、趾股による趾股ブリッジの保持を充分確実に行うことが難しいという問題がある。』点が記載され、引用文献1段落【0006】には『また、この趾股ブリッジでは、第1趾と第2趾との間の趾股に趾股ブリッジ部が位置するが、この趾股ブリッジ部が壁状に設けられているので、第1趾及び第2趾により趾股ブリッジ部をつかむことが難く、従って、第1趾を含む足の指先に力が入り難いという問題がある。』点が記載され、引用文献1段落【0007】には、『さらに、従来の中敷きを靴に収容した状態で履くときに、趾股ブリッジの位置が不安定となるために履きにくく、歩行中も趾股ブリッジを趾股に確実に保持することが困難であるという問題がある。』点が記載されています。したがって、引用文献1記載の発明は、引用文献2記載(図1、2参照)の発明の突起具3のような単に差し込み穴2に差し込む(挿嵌する)構成を排除しています。また、引用文献1記載の発明は、引用文献2記載の発明の補助カバー4のような壁状に設けられる構成を排除しています。さらに、引用文献1記載の発明は、引用文献2記載の発明の突起具3のような差し込み穴2に差し込む不安定な保持となる構成を排除しています。したがって、引用文献2記載の発明は、靴底板1に設けられた複数箇所の差し込み穴2に、突起具3を単に挿嵌するものであり、突起具3と一体の補助カバー4は壁状に設けられていることから不安定な保持となるため、引用文献1と引用文献2には適用に関して阻害要因が存在します。」(意見書8頁17~40行)と主張する。 しかしながら、引用文献2には、差し込み穴2や補助カバー4が記載されているものの、引用文献2の「靴と足先との摩擦によって起きる足先靴づれや足疲れを防止」という課題や「突起具が、足の指間等に止まり込む状態になり、足先が前方に行き過ぎる事を防ぎ、靴と足先との摩擦を減少させ、足先靴づれ疲れ防止となる」という作用、「指間等で支える突起具を付けたため、足先靴づれ疲れを防止することができる。差し込み穴を数箇所設けたため、突起具の位置を自由に移動させることができ、靴及び足の寸法に合わせて使用できる」という効果(前記第4の2(3)、(5)、(7)を参照。)を勘案すると、引用文献2から把握される技術思想は、靴中底に、足の指間等で支える突起具を取り付けるための差し込み穴を前後左右に平面的に広がって複数設けることにより、靴及び足の寸法や形に合わせて使用できることであって、貫通孔でない差し込み穴2を利用して固定されるものや、補助カバー4を設けるものに限定されるものでない。したがって、貫通孔を介して前坪をねじで固定し、また、補助カバーを使用しない引用発明において、引用文献2に記載の技術思想を適用することに何ら技術的な問題はなく、引用発明の目的に反することもない。 以上によれば、引用文献1と引用文献2には適用に関して阻害要因が存在するとはいえず、請求人の前記主張は採用できない。 ウ 請求人は意見書において、「引用文献1記載の発明の貫通孔である複数の挿通開口に、引用文献2記載の発明の貫通孔でない複数の差し込み穴2を適用した場合、当該穴2には、前坪を挿通することができなくなり挿通機能を果たしえなくなるので、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用することには、阻害要因が存在します。」(意見書8頁41~45行)と主張する。 しかしながら、前記イで示したように、引用文献2に記載のものは、貫通孔でない差し込み穴2を使用することは必須でないから、請求人の前記主張は、前提において失当であり、採用できない。 エ 請求人は意見書において、「差し込み穴2のピッチ間隔についても、引用文献2記載の発明では、突起具3に補助カバー4を付けて足の指間に合うように調整をしています。このことから、差し込み穴2のピッチ間隔が粗大であることが伺えます(第2ページ第8行目-12行目)」(意見書12頁41~43行)と主張する。 請求人が主張する「差し込み穴2のピッチ間隔が粗大」の基準が不明であり、その主張の趣旨が明確でないところ、仮に、引用文献2に記載の複数の差し込み穴2について、左右方向に設けられた差し込み穴2は、個人差を調整するためのものではないという主張であると解しても、請求人の主張は採用できない。 まず、引用文献2の2頁6行(前記第4の2(6)を参照。)には、「靴底板1に靴製造工程で数箇所の差し込み穴2を設け、靴及び足に合わせて選んだ箇所に、突起具3を取り付け」と記載されており、引用文献2に示される複数の差し込み穴2は、足の個人差に対応するためのものと解される。そして、引用文献2に示される複数の差し込み穴2について、補助カバー4があることを勘案しても、少なくとも前後方向に設けられる穴は個人差に対応するものであると解されるところ、一方、左右方向に設けられる穴は個人差に対応するものでないと解しなければならない理由はない。 また、引用文献2に示される複数の差し込み穴2は断続的に形成される穴であるところ、そのような穴であれば、穴間のピッチサイズの大小にかかわらず、すべての個人差に対応し得ない。そこで、引用文献2に示される補助カバー4が、断続的な穴では調整しきれない分を微調整するべく設けられたものであると解することが合理的である。したがって、引用文献2の「個人差等により選択して補助カバー4を付ける。」という記載に基づいて、差し込み穴2は個人差を調整するものではないとする理由はない。 したがって、請求人の前記主張は採用できない。 (3)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の事項から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものではない。 3.まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-004401

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