特許拒絶査定不服審判
2021-004081
レンズモジュール
- 審判番号
- 2021-004081
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-130770外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月30日
- 審決日
- 2021年12月02日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエーシー オプティックス ソリューションズ ピーティーイー リミテッド
- 【請求人代理人】西内 盛二
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-130770号「レンズモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月6日出願公開、特開2020-21060号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)7月15日(パリ条約による優先権主張 2018年8月3日 中国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
令和2年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年12月 2日付け:拒絶査定(謄本発送日 同年同月9日 以下「原査定」という。)
令和3年 3月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 原査定の概要
原査定(令和2年12月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし5に係る発明は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2009-157279号公報
2.特開2011-39446号公報
3 本願発明
本願請求項1ないし5に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和3年3月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
収容空間を有する鏡筒と、前記収容空間に収容されるレンズ群と、全体が前記鏡筒内に位置する押え環とを備えるレンズモジュールにおいて、前記押え環が前記レンズ群の像側において前記レンズ群を前記鏡筒内に固定し、前記レンズ群が前記押え環に隣接する第1レンズを備えるレンズモジュールであって、
前記第1レンズは、結像のための第1光学部と、前記第1光学部の周囲を取り囲む第1固定部とを備え、前記レンズモジュールは、前記第1レンズを前記押え環に固定する位置決め構造を更に備え、前記位置決め構造は、前記第1固定部と前記押え環とのうちの一方に設けられる位置決め部材と、前記第1固定部と前記押え環とのうちの他方に設けられる固定保持部材とを備え、前記固定保持部材は、前記位置決め部材を固定保持し、
前記位置決め部材は、突起であり、前記固定保持部材は、前記突起に固定係合する凹溝であり、
前記突起は、前記第1固定部に設けられ、前記突起は、前記第1固定部に接続される接続部と、前記接続部の前記第1固定部から離間する端に位置する係止保持部と、前記接続部と前記係止保持部とを接続する中間部とを備え、
前記レンズモジュールの光軸に垂直な方向に、前記接続部の幅と前記係止保持部の幅は、何れも前記中間部の幅より大きいことを特徴とするレンズモジュール。」
4 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1及び引用発明
ア 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009-157279号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニット、撮像装置、電子機器、及びレンズユニットの組立方法に関する。」
(イ)「【0062】
図1に示されるように、カメラモジュール100は、レンズユニット10と、レンズユニット10を駆動する駆動機構11と、センサー12とを備えている。センサー12は、固体撮像素子(撮像素子)12aを有している。そして、レンズユニット10は、固体撮像素子12aに入射光線を結像する。カメラモジュール100では、駆動機構11が、固体撮像素子12aに対するレンズユニット10の位置を微調整することで、固体撮像素子12aの結像を制御するようになっている。・・・
【0070】
〔レンズユニット10を構成するレンズ〕・・・
【0072】
さらに、カメラモジュールの小型化によって、レンズユニット10の組立調整が困難になってきている。レンズユニット10の組立調整を容易にするために、レンズユニット10を構成する個々のレンズの、光学特性を有する光学面部(レンズの有効径領域)の周囲にコバ(外縁部)が設けられる。そして、個々のレンズのコバ同士が嵌合可能になるように、コバ形状を設定することによって、レンズユニット10の組立ての際にレンズの調整が不要になる。すなわち、個々のレンズ同士のコバ嵌合を介してレンズを組立てることにより、個々のレンズの組立調整が高精度になる。このようにレンズに嵌合部を設け、コバ嵌合を利用して、隣接するレンズ同士を固定することによって、レンズのシフトやチルトを抑制したレンズユニットを得ることができる。
【0073】
なお、ここでいうコバとは、レンズの有効径領域の周辺に設けられ、光軸に対して垂直な面からなる領域のことである。例えば、このコバは、レンズホルダ10にレンズを固定する際やレンズ同士の嵌合に際し、基準面として利用される。また、レンズ同士を接着剤で固定するに際し、この接着剤の塗布面として利用される。また、このコバは、必要に応じ、レンズ同士が嵌合する嵌合部分が設けられた構成であってもよい。・・・
【0078】
〔レンズユニット10のバレル〕
レンズユニット10は、複数枚のレンズを有する光学系が、バレル内に挿入され組立調整された構成になっている。そして、複数枚のレンズを有する光学系は、接着剤等により、バレルに、適宜固定されている。以下、バレルについて、説明する。・・・
【0089】
〔レンズユニット10の構成〕
図2は、本発明のレンズユニット10の概略構成を示す断面図である。
【0090】
図2に示されるように、レンズユニット10は、複数のレンズとしての第1のレンズ1と、第2のレンズ2と、第3のレンズ3と、筒状のバレル4と、第3のレンズ3の光軸方向の一端を固定する固定部材5と、遮光部材6・7とを備えている。
【0091】
上記第1のレンズ1と第2のレンズ2とは、互いの光軸が最適な位置(偏芯、チルトが小さくなる位置)になるように固定されていると共に、第2のレンズ2と第3のレンズ3とについても、互いの光軸が最適な位置(偏芯、チルトが小さくなる位置)になるように固定されている。
【0092】
第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3は、それぞれを組み合わせることにより特定の作用を有する光学素子となるレンズ群である。なお、本実施形態では、光線が第1のレンズ1から入射し、第2のレンズ2を経て第3のレンズ3から出射されるレンズユニット10について説明する。すなわち、レンズユニット10を撮像機器に取り付けた場合には、被写体となる物体側に配置される順に第1のレンズ1、第2のレンズ2そして第3のレンズ3となる。以下の説明では、物体側と反対側を像面側としている。
【0093】
第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3はそれぞれ、光学特性を有する光学面部1c、2c及び3cと、光学面部1c、2c及び3cを取り囲むコバ(外縁部)1a、2a・2b及び3a・3bとからなる。・・・
【0097】
第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3は、筒状のバレル4に収容されている。上記バレル4には、第1の開口部4aを有する絞り部4cと、第2の開口部4bとが形成されている。この第1の開口部4aは、第2の開口部4bよりも小さい。また、第1の開口部4aは、絞りを兼ねていてもよい。ここで、第2の開口部4bは、第1のレンズ1、第2のレンズ2及び第3のレンズ3が挿入される側(入り口側)を示している。
・・・
【0103】
また、図2に示されるように、固定部材5の外周は、バレル4の外周と略同一の大きさ、あるいは固定部材を押圧する面を十分に確保することができれば、バレルの外周よりも小さくなっていることが好ましい。つまり、外周部5bは、バレル4の側壁4dにおける外周方向の一端4eと他端4fとを跨ぐように配設されている。これにより、レンズユニット10をネジ嵌合によって光軸方向に調整する際に、固定部材5の外周部5bと駆動機構との接触を防止することができる。・・・
【0114】
〔固定部材5の構成〕
レンズユニット10は、上記のように、第3のレンズ3のコバ3bと当接する当接部5aが形成されている。そして、当接部5aから外周方向に延びる外周部5bは、バレル4の側壁4dにおける外周方向の一端4eと他端4fとを跨ぐように配設されている。この固定部材5は、金属や樹脂等によって構成される。固定部材5は、第3のレンズ3のコバ3bとの対向面(当接部5aの第3のレンズ3との対向面)が粗面化されていることが好ましい。これにより、固定部材5に遮光機能を付与することができる。そして、レンズユニット10で発生する迷光を防止することができる。なお、固定部材5に遮光機能を付与するために、第3のレンズ3との対向面に黒色の塗料が塗布されていてもよい。さらには、固定部材5の材料として、黒色の樹脂を用いてもよい。・・・
【0117】
以下、固定部材5の変形例について説明する。
【0118】
〔変形例1〕
固定部材5は、第3のレンズ3の光軸方向一端と反対側の他端に向けて幅広になるように傾斜した傾斜部が形成されている構成であってもよい。これにより、レンズユニット内を通過する光線が固定部材に干渉することを防止することができる。以下、変形例1としての固定部材5の構成について、図3(a)及び(b)を参照して説明する。
【0119】
図3(a)は、固定部材に傾斜部が設けられていないときの光線を説明するための要部の断面図であり、図3(b)は、固定部材に傾斜部が設けられているときの光線を説明するための要部の断面図である。ここで、図3(b)では、固定部材が、光学面部から離れた構成としているが、光線と固定部材に設けた傾斜部の関係を説明するためのものであり、光学面部と固定部材が近接した配置であってもよい。
【0120】
本撮像装置は、レンズユニット10が組み込まれたとき、第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3、固定部材5、及び固体撮像素子が、物体側から像面側へ順に配された構成になる。すなわち、第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3からなるレンズ群と固体撮像素子との間に固定部材5が配された構成になる。この場合、図3(a)に示されるように、レンズユニット10内のレンズ群を通過してきた入射光線の一部が、固定部材5の内周(当接部5a)により遮光されてしまうおそれがある。特に、先に示したようにカメラモジュールの小型化・薄型化によって、固体撮像素子に入射する光線の入射角度が大きくなっており、厚みを有する固定部材の内周と干渉してしまうことがある。・・・
【0133】
変形例2のレンズユニットの具体的な実施例を以下に示す。
【0134】
〔実施例2〕
本実施例は、上記実施例1と同様に、光軸に対する光線の入射角度θが27度程度となる構成である。また、本実施例のレンズユニットにおける固定部材5は、実施例1と同様に、傾斜部5cを有しており、その傾斜角度が30度である。
【0135】
上記実施例1では、固定部材の厚みを0.5mmとした。一方、本実施例では、固定部材5の厚さを0.3mm(生産可能なサイズ)としている。この場合、実施例1と同様の計算(0.3×tan30)により、傾斜部領域Bは、0.2mm程度となり、実施例1よりも小さくなる。つまり、傾斜部領域Bが小さくなれば、コバを小さくすることが可能(この場合、0.3mm程度であればよい)である。あるいは、コバを大きくすることにより固定部材5との接触領域(押圧領域A)を確保して、生産時への影響(例えば、押圧時における固定部材のチルトや変形の防止)を低減することもできる。しかしながら、固定部材5の厚みを小さくすると、変形が容易に生じるおそれがあるため、図4や図5に示すような構成をとることが望ましい。固定部材5における最も厚い部分が、最も薄い部分の2倍程度の厚さとした構成とすれば、先に示したような問題が改善され得る。
【0136】
〔固定部材の配置〕
第3のレンズ3と固定部材5との位置関係は、第3のレンズ3の光学面部3aと固定部材5の内周(当接部5a)との干渉によって決定される。しかしながら、第3のレンズ3の光学面部3aの形状によっては、上記干渉によって位置関係を決定できない場合がある。例えば、第3のレンズ3の光学面部3aの曲率が大きいために、光学面部3aの有効径とコバ3a・3bとの境界がはっきりしない場合が挙げられる。この場合、第3のレンズ3と固定部材5との位置関係が定まらず、固定部材5が第3のレンズ3の光学面部3aにかかってしまう(固定部材5の当接部5aが第3のレンズ3の光学面部3aに当接してしまう)おそれがある。
【0137】
そこで、レンズユニット10では、例えば、第3のレンズ3のコバ3bの一部と固定部材5の当接部5aとに、互いが嵌合するような凹凸部が設けられていることが好ましい。すなわち、固定部材5は、第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有することが好ましい。これにより、固定部材5の位置決めに際し、粗調整を容易に行うことができる。この構成は、例えば、レンズユニット10の生産において、第3のレンズ3と固定部材5との位置決め工程の時間的な短縮を実現することができるので好適である。
【0138】
このように固定部材5が第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有する構成としては、例えば、図4(b)に示された構成が挙げられる。同図に示されるように、固定部材5は、光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっている。すなわち、固定部材5は、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になっている。そして、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合している。・・・
【0144】
実施の形態1のレンズユニットでは、固定部材5の外周は、バレル4の外周と同一の大きさになっている構成であった。本実施形態のレンズユニットは、固定部材5の外周(外周部5b)の一部が、バレル4の側壁まで跨って延びた構成である。図6は、本実施形態のレンズユニット10の概略構成を示す平面図である。図7は、図6におけるAB線断面図である。
【0145】
図6に示されるように、固定部材5の外周部は、一部が外周方向に突出した突出部5dになっている。そして、バレル4の側壁には、光軸方向に凹んだ数個の凹部4gが形成されている。凹部4gは、図7に示されるように、突出部5dを囲うように形成されている。凹部4gは、バレル4側壁の切り欠き部として形成されている。これにより、完成したレンズユニットにおける撮像側の第3のレンズ3の表面の防汚を防止するという効果を奏する。この効果について、以下に詳述する。」
(ウ)図4ないし7は次のものである。
[図:0001383786000001.jpg]
[図:0001383786000002.jpg]
(エ)上記(イ)の「実施の形態1のレンズユニットでは、固定部材5の外周は、バレル4の外周と同一の大きさになっている」(【0144】)との記載を踏まえて、上記(ウ)の図6を見ると、固定部材5は、外周が、バレル4の外周と同一の大きさになっている環状の固定部材5であるといえる。
イ 以上アによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レンズユニット10は、複数のレンズとしての第1のレンズ1と、第2のレンズ2と、第3のレンズ3と、筒状のバレル4と、第3のレンズ3の光軸方向の一端を固定する固定部材5と、遮光部材6・7とを備え(【0090】)、
前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3は、前記筒状のバレル4に収容され(【0097】)、
前記レンズユニット10が組み込まれたとき、前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3、前記固定部材5、及び固体撮像素子が、物体側から像面側へ順に配された構成になり(【0120】)、
前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3はそれぞれ、光学特性を有する光学面部1c、2c及び3cと、光学面部1c、2c及び3cを取り囲むコバ(外縁部)1a、2a・2b及び3a・3bとからなり(【0093】)、
前記レンズユニット10では、前記第3のレンズ3のコバ3bの一部と前記固定部材5の当接部5aとに、互いが嵌合するような凹凸部が設けられて、前記固定部材5は、前記第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有し(【0137】)、
前記固定部材5が第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有する構成としては、前記固定部材5が、光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっていて、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になり、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合している(【0138】)、
前記固定部材5は、外周がバレル4の外周と同一の大きさになっている環状の固定部材5である(上記ア(エ))、
レンズユニット10。」
(2)引用文献2
ア 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2011-39446号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや携帯電話のカメラモジュール等に用いられるレンズユニット及びレンズユニットの製造方法に関する。特には、樹脂製の光学素子、及び樹脂製の保持枠よりなるレンズユニット及びその製造方法に関する。」
(イ)「【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るレンズユニットの第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のレンズユニットの一部を破断した斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のレンズユニット1は、レーザー吸収性を有する熱可塑性樹脂により筒状に形成された保持枠2と、レーザー透過性を有する熱可塑性樹脂により形成され所定の光軸を有するレンズ(光学素子)3と、を備えている。これら、保持枠2の中心軸、及びレンズ3の光軸は、ともに軸線C1上に配置されるように構成されている。
また、後述するように、このレンズユニット1が製造されるときには、図1の保持枠2が下方に、レンズ3が上方にそれぞれ配置されるので、以下では、軸線C1に沿う方向D1を上方、方向D2を下方と称して説明を行う。
言い換えれば、方向D1と方向D2を合わせた方向が、鉛直方向となる。
【0020】
保持枠2は、レーザー吸収性を有する樹脂、すなわちレーザー光を吸収し発熱する樹脂により形成されている。
保持枠2は、下方に配置された円筒状の第1の筒部4と、この第1の筒部4の上方の端面4aの外縁部から上方に突出する円筒状の第2の筒部5とを有する。これら、第1の筒部4及び第2の筒部5の内腔により、レンズ3を収容して固定するレンズ室が形成され、端面4aがレンズ3を支持するレンズ受け面となる。
そして、第1の筒部4の端面4aには、上方に突出する円柱状の凸部8、9が軸線C1回りに等角度毎に形成されている。つまり、互いに間隔を隔てた凸部8、9が2つ形成されている。
【0021】
レンズ3は、レーザー透過性を有する樹脂、すなわちレーザー光を透過し、それ自体はレーザー光により発熱することの少ない樹脂により形成されている。
レンズ3は、軸線C1方向に偏平とされた球面を有するレンズ本体10と、レンズ本体10の外周面から水平方向に突出する鍔部11とを有する。
そして、鍔部11の下面11aには、凸部8、9と対応する位置に、上方に延びる円柱状の穴が形成された凹部(受入れ部)12、13がそれぞれ形成されている。
凸部8と凸部9、及び凹部12と凹部13、はそれぞれ同形状に形成されている。保持枠2とレンズ3は、保持枠2の端面4aにレンズ3の下面11aを当接させるとともに、凸部8と凹部12、凸部9と凹部13をそれぞれ嵌合させることで、互いに位置決めされている。
【0022】
次に、保持枠2の凸部8、及びレンズ3の凹部12の形状について、図1に示された一部拡大図を用いて説明する。なお、凸部9は凸部8と、凹部13は凹部12とそれぞれ同形状に形成されているので、説明を省略する。
凹部12の内径は、凸部8の外径(後述する抜出防止部15を除いた部分の外径)の例えば1.02倍程度となるように設定されている。すなわち、凹部12の内径は、凸部8の外径より僅かに大きい程度に設定されている。このため、凸部8に対して凹部12を鉛直下方に移動させて、凹部12内に凸部8を嵌合させるときには、凹部12内に凸部8を圧入することなく、保持枠2とレンズ3とを互いに水平方向に位置決め可能となるように設定されている。
以上、説明したように、保持枠2にレンズ3を嵌合させる嵌合方向は、鉛直方向となっている。
【0023】
保持枠2の凸部8、9の外周面8a、9aには、全周にわたり水平方向外側に突出して凹部12、13の内周面に食い込んで噛み合うようにそれぞれ形成された膨張部(抜出防止部)14、15が設けられている(外周面9a及び膨張部15は不図示)。そして、凹部12、13の内周面には、膨張部14、15に噛み合う食い込まれた部分である食い込み部16、17が形成されている(食い込み部17は不図示)。
このように、膨張部14、15及び食い込み部16、17は、凹部12、13が凸部8、9に対して前述の嵌合方向に移動するのを防止する。すなわち、膨張部14、15及び食い込み部16、17は、保持枠2からレンズ3が抜けるのを防止する抜け止めとなっている。
また、保持枠2の膨張部14、15は、凸部8と凹部12との嵌合部(凸部8と凹部12とが互いに嵌合している部分)内、及び凸部9と凹部13との嵌合部内にてそれぞれ形成されている。
【0024】
次に、以上のように構成されたレンズユニット1を製造する工程について説明する。
まず、図2(a)及び図2(b)に示すように、既に凸部8、9が設けられた保持枠2と、凹部12、13が設けられたレンズ3を用意する。なお、このときには、保持枠2には膨張部14、15は形成されていなく円柱状の凸部8、9が形成されているのみであり、レンズ3には食い込み部16、17は形成されていなく凹部12、13が形成されているのみである。
次に、図3に示すように、保持枠2の端面4aにレンズ3の下面11aを当接させるとともに、凸部8と凹部12、凸部9と凹部13をそれぞれ嵌合させることで、保持枠2にレンズ3を取り付ける。凸部8と凹部12、凸部9と凹部13をそれぞれ嵌合させることで、保持枠2に対してレンズ3は水平方向に位置決めされ、端面4aに下面11aを当接させることで、保持枠2に対してレンズ3は鉛直方向に位置決めされる。
次に、図4に示すように、レンズ3側から不図示のレーザー供給手段により軸線C1と平行にレーザー光Lを発して、レーザー透過性を有するレンズ3を通して凸部8の外周面8aの全体にわたりレーザー光Lを照射する。さらに、レーザー供給手段を軸線C1回りに180°回転させて、同様に、軸線C1と平行にレーザー光Lを発して、凸部9の外周面9aの全体にわたりレーザー光Lを照射する。
【0025】
すると、図5に示すように、レーザー吸収性を有する熱可塑性樹脂で形成された凸部8の外周面8aは加熱されて溶融し軟化する。そして、凸部8の外周面8aは、全周にわたり膨張して膨張部14を形成し、水平方向に突出してレンズ3を加熱しながら食い込んでいく。同様に、凸部9は加熱されて軟化し、凸部9の外周面9aは全周にわたり膨張して膨張部15を形成し、水平方向に突出してレンズ3を加熱しながら食い込んでいく。このとき、レンズ3には、保持枠2の膨張部14、15に対応する食い込み部16、17が形成される。
そして、図6に示すように、加熱された樹脂が冷えると、保持枠2の膨張部14、15をレンズ3の食い込み部16、17に噛み合わせた状態で、保持枠2にレンズ3が固定される。
【0026】
なお、レーザー光Lを照射する際、凸部8、9の膨張によりレンズ3が上方に浮き上がる可能性がある。このため、組付け状態のレンズ3を上方から押圧しながらレーザー光を照射すると、凸部8、9の膨張によるレンズ3の浮き上がりを抑制でき、より高精度かつ安定した固定状態を得ることができる。よって、レーザー照射の際、レンズ3を下方に押圧しながら行うのが好ましい。具体的には、レーザー透過性の素材、例えばガラス板等で、レンズ3を押圧しながらレーザー照射を行う。好ましくは、鍔部11の上面のみを押圧しレンズ本体10は押圧しない形状の、中央部に丸穴の空いたようなリング状のガラス板が良い。
【0027】
こうして、本発明の第1実施形態のレンズユニット1によれば、保持枠2とレンズ3とを、凸部8、9及び凹部12、13で嵌合方向である鉛直方向に嵌合させるとともに、保持枠2の端面4aにレンズ3の下面11aを当接させて鉛直方向に位置決めする。さらに、凸部8、9の外周面8a、9aに水平方向外側に突出した膨張部14、15、凹部12、13の内周面に膨張部14、15と噛み合う食い込み部16、17を設けることで、凹部12、13が凸部8、9に対して鉛直方向に移動するのが防止される。
従って、例えば、レンズ3と保持枠2とが互いに溶着により固定できない材質で形成されていても、機械的で簡単な結合により、レンズ3と保持枠2とを互いに固定することができる。
【0028】
また、凸部8、9と凹部12、13との嵌合部内に膨張部14、15及び食い込み部16、17をそれぞれ形成することで、保持枠2とレンズ3とを水平方向に位置決めする凸部8、9及び凹部12、13の部分と、保持枠2とレンズ3とを鉛直方向に固定する膨張部14、15及び食い込み部16、17の部分とをコンパクトに構成することが可能となる。
また、互いに間隔を隔てて形成された凸部8と凹部12、凸部9と凹部13という2つの組により、保持枠2とレンズ3とをより確実に固定することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、保持枠2に2つの凸部8、9が、レンズ3に2つの凹部12、13がそれぞれ形成されていた。しかし、保持枠2に形成される凸部の数及びレンズ3に形成される凹部の数に制限は無く、図7に示すように、保持枠2に軸線C1回りに等角度(120°)毎に3つの凸部21、22、23が形成され、レンズ3にこれらの凸部21、22、23に対応する凹部が3つ形成されていても良い。
また、保持枠2に形成される凸部の数及びレンズ3に形成される凹部の数は、それぞれ4つ以上でも良い。
また、本実施形態では、レーザー光Lを保持枠2の凸部8、9に一つずつ順番に照射した。しかし、レンズ3の保持枠2への固定精度を考慮すると、2つのレーザー光Lを凸部8、9に同時に照射することが望ましい。
【0030】
また、本実施形態では、図8に示すように、レンズ3に形成されていた2つの凹部12、13に代えて、鉛直方向に貫通する円筒形の2つの孔部26、27を形成しても良い。
これらの孔部26、27の内径は、前記の凹部12、13と同様に、凸部8、9の外径より僅かに大きい程度に設定される。」
(ウ)「【0047】
図20に示すように、本変形例のレンズ(光学素子)93は、前記第1実施形態のレンズ3の凹部12、13に代えて、鍔部11の下面11aに、下方に突出する円筒状の凸部94、95が軸線C5回りに等角度毎に2つ形成されている。
そして、本実施形態の保持枠92は、前記実施形態の保持枠2の凸部8、9に代えて、第1の筒部4の端面4aにおける凸部94、95と対応する位置に、下方に延びる円柱状の穴が形成された凹部(受入れ部)96、97がそれぞれ形成されている。
凸部94と凸部95、及び凹部96と凹部97、はそれぞれ同形状に形成されている。保持枠92とレンズ93は、保持枠92の端面4aにレンズ93の下面11aを当接させるとともに、凸部94と凹部96、凸部95と凹部97をそれぞれ嵌合させることで、互いに位置決めされている。
【0048】
さらに、保持枠92の凹部96、97の内周面には、全周にわたり水平方向内側に突出して凸部94、95の外周面に食い込んで噛み合うようにそれぞれ形成された膨張部(抜出防止部)98、99が設けられている(膨張部99は不図示)。そして、凸部94、95の外周面には、膨張部98、99に噛み合う食い込まれた部分である食い込み部100、101が形成されている(食い込み部101は不図示)。
【0049】
以上のように構成されたレンズユニット91を製造する工程は、前記第1実施形態におけるレンズユニット1を製造する工程と、レーザー光Lが照射される保持枠92の面のみが異なる。
すなわち、本変形例では、まず、図22に示す膨張部98、99が形成されていない保持枠92に、図21に示す食い込み部100、101が形成されていないレンズ93を、図23に示すように位置決めする。
次に、図24に示すように、不図示のレーザー供給手段により、レーザー光Lを、レンズ93を通して保持枠92の凹部96の内周面に照射し、さらに、レーザー供給手段を軸線C5回りに180°回転させて、同様に、凹部97の内周面に照射する。
こうして、凹部96、97の内周面が加熱され膨張することにより、図20に示すように、膨張部98、99及び食い込み部100、101が凹部96、97の内周面全周にわたり形成され、保持枠92にレンズ93が固定される。
このように、本変形例のレンズユニット91によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。」
(エ)図1ないし8は次のものである。
[図:0001383786000003.jpg]
[図:0001383786000004.jpg]
[図:0001383786000005.jpg]
[図:0001383786000006.jpg]
イ 以上アによれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「下方に配置された円筒状の第1の筒部と、この第1の筒部の上方の端面の外縁部から上方に突出する円筒状の第2の筒部とを有し、第1の筒部及び第2の筒部の内腔により、レンズを収容して固定するレンズ室が形成され、端面がレンズを支持するレンズ受け面となる保持枠と(【0020】)、
軸線方向に偏平とされた球面を有するレンズ本体と、レンズ本体の外周面から水平方向に突出する鍔部とを有し、鍔部の下面には、凸部と対応する位置に、上方に延びる円柱状の穴が形成された凹部がそれぞれ形成され、凸部及び凹部はそれぞれ同形状に形成されたレンズであって、前記保持枠と前記レンズは、前記保持枠の端面に前記レンズの下面を当接させるとともに、凸部と凹部をそれぞれ嵌合させることで、互いに位置決めされるレンズを備え(【0021】)、
前記保持枠の円筒状の第1の筒部に設けられた凸部の外周面には、全周にわたり水平方向外側に突出して凹部の内周面に食い込んで噛み合うようにそれぞれ形成された膨張部が設けられ、前記凹部の内周面には、前記膨張部に噛み合う食い込まれた部分である食い込み部が形成され、膨張部及び食い込み部は、前記保持枠から前記レンズが抜けるのを防止する抜け止めとなっている(【0023】)、
レンズユニット(【0001】)。」
5 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)a 引用発明の「第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3」を収容する「筒状のバレル4」は、本願発明1の「収容空間を有する鏡筒」に相当する。
b 引用発明の「筒状のバレル4に収容され」る「第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3」は、本願発明1の「前記収容空間に収容されるレンズ群」に相当する。
c 引用発明の「第3のレンズ3の光軸方向の一端を固定する固定部材5」は、「外周がバレル4の外周と同一の大きさになっている環状の固定部材5である」から、本願発明1の「押え環」に相当する。
d 引用発明の「第3のレンズ3」は、本願発明1の「第1レンズ」に相当するから、引用発明の「レンズユニット10が組み込まれたとき、前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3、前記固定部材5、及び固体撮像素子が、物体側から像面側へ順に配された構成にな」る「レンズユニット10」は、本願発明1の「鏡筒」と、「レンズ群」と、「押え環とを備えるレンズモジュールにおいて、前記押え環が前記レンズ群の像側において前記レンズ群を前記鏡筒内に固定し、前記レンズ群が前記押え環に隣接する第1レンズを備えるレンズモジュール」に相当する。
e 上記aないしdによれば、引用発明の「前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3は、前記筒状のバレル4に収容され、前記レンズユニット10が組み込まれたとき、前記第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3、前記固定部材5、及び固体撮像素子が、物体側から像面側へ順に配された構成になり」、「前記固定部材5は、外周がバレル4の外周と同一の大きさになっている環状の固定部材5である」「レンズユニット10」は、本願発明1の「収容空間を有する鏡筒と、前記収容空間に収容されるレンズ群と、全体が前記鏡筒内に位置する押え環とを備えるレンズモジュールにおいて、前記押え環が前記レンズ群の像側において前記レンズ群を前記鏡筒内に固定し、前記レンズ群が前記押え環に隣接する第1レンズを備えるレンズモジュール」に相当する。
(イ)引用発明の「第1のレンズ1、第2のレンズ2、及び第3のレンズ3はそれぞれ、光学特性を有する光学面部1c、2c及び3cと、光学面部1c、2c及び3cを取り囲むコバ(外縁部)1a、2a・2b及び3a・3bとからな」る「第3のレンズ3」は、本願発明1の「結像のための第1光学部と、前記第1光学部の周囲を取り囲む第1固定部とを備え」「第1レンズ」に相当する。
(ウ)引用発明の「レンズユニット10」は、「前記第3のレンズ3のコバ3bの一部と前記固定部材5の当接部5aとに、互いが嵌合するような凹凸部が設けられて、前記固定部材5は、前記第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有し、前記固定部材5が第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有する構成としては、前記固定部材5が、光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっていて、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になり、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合している」から、第3のレンズ3を固定部材5に嵌合する構造を更に備え、前記嵌合する構造は固定部材5に設けられる当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成であって、当該当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成に第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合している」ものであるといえる。
したがって、引用発明の「レンズユニット10」に係る上記構成は、本願発明1の「レンズモジュールは、前記第1レンズを前記押え環に固定する位置決め構造を更に備え、前記位置決め構造は、前記第1固定部と前記押え環とのうちの一方に設けられる位置決め部材と、前記第1固定部と前記押え環とのうちの他方に設けられる固定保持部材とを備え、前記固定保持部材は、前記位置決め部材を固定保持」する構成と、「レンズモジュールは、前記第1レンズを前記押え環に嵌合する嵌合構造を更に備え、前記嵌合構造は、前記押え環に設けられる段差を備え、前記押え環に設けられる段差は、前記第1レンズを嵌合」する点で一致する。
(エ)以上(ア)ないし(ウ)によれば、本願発明と引用発明とは、
「収容空間を有する鏡筒と、前記収容空間に収容されるレンズ群と、押え環とを備えるレンズモジュールにおいて、前記押え環が前記レンズ群の像側において前記レンズ群を前記鏡筒内に固定し、前記レンズ群が前記押え環に隣接する第1レンズを備えるレンズモジュールであって、
前記第1レンズは、結像のための第1光学部と、前記第1光学部の周囲を取り囲む第1固定部とを備え、前記レンズモジュールは、前記第1レンズを前記押え環に嵌合する嵌合構造を更に備え、前記嵌合構造は、前記押え環に設けられる段差を備え、前記押え環に設けられる段差は、前記第1レンズを嵌合する
レンズモジュール。」
である点で一致し、下記各点で相違する。
(相違点1)
押え環が、本願発明1は「全体が前記鏡筒内に位置する」のに対して、引用発明はこのように位置しない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記位置決め構造は、前記第1固定部と前記押え環とのうちの一方に設けられる位置決め部材と、前記第1固定部と前記押え環とのうちの他方に設けられる固定保持部材とを備え、前記固定保持部材は、前記位置決め部材を固定保持し、前記位置決め部材は、突起であり、前記固定保持部材は、前記突起に固定係合する凹溝であり、前記突起は、前記第1固定部に設けられ、前記突起は、前記第1固定部に接続される接続部と、前記接続部の前記第1固定部から離間する端に位置する係止保持部と、前記接続部と前記係止保持部とを接続する中間部とを備え、前記レンズモジュールの光軸に垂直な方向に、前記接続部の幅と前記係止保持部の幅は、何れも前記中間部の幅より大きい」「前記第1レンズを前記押え環に固定する位置決め構造を更に備え」るのに対して、引用発明は、「前記固定部材5は、前記第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有し、前記固定部材5が第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する嵌合領域を有する構成としては、前記固定部材5が、光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっていて、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になり、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合している」「前記第3のレンズ3のコバ3bの一部と前記固定部材5の当接部5aとに、互いが嵌合するような凹凸部が設けら」るものである点。
イ 上記相違点について検討する。
(ア)事案に鑑みて、相違点2から検討する。
引用発明の「固定部材5」が「第3のレンズ3のコバ3bと嵌合する」構成は、当該「固定部材5が、光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっていて、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になり、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合」する構造であるため、当該構成となすことにより、引用発明の第3のレンズ3と固定部材5とは、光軸に垂直な方向の相対移動が規制されていると認められる。
また、同じく「レンズのコバと嵌合する」構成として、引用文献2には、「下方に配置された円筒状の第1の筒部と、この第1の筒部の上方の固定部材5の端面の外縁部から上方に突出する円筒状の第2の筒部とを有し、第1の筒部及び第2の筒部の内腔により、レンズを収容して固定するレンズ室が形成され、端面がレンズを支持するレンズ受け面となる保持枠と、軸線方向に偏平とされた球面を有するレンズ本体と、レンズ本体の外周面から水平方向に突出する鍔部とを有し、鍔部の下面には、凸部と対応する位置に、上方に延びる円柱状の穴が形成された凹部がそれぞれ形成され、凸部及び凹部はそれぞれ同形状に形成されたレンズであって、前記保持枠と前記レンズは、前記保持枠の端面に前記レンズの下面を当接させるとともに、凸部と凹部をそれぞれ嵌合させることで、互いに位置決めされるレンズを備え、前記保持枠の円筒状の第1の筒部に設けられた凸部の外周面には、全周にわたり水平方向外側に突出して凹部の内周面に食い込んで噛み合うようにそれぞれ形成された膨張部が設けられ、前記凹部の内周面には、前記膨張部に噛み合う食い込まれた部分である食い込み部が形成され、膨張部及び食い込み部は、前記保持枠から前記レンズが抜けるのを防止する抜け止めとなっている、レンズユニット。」(引用文献2に記載された事項)が記載されている。
したがって、引用発明の「段差が形成された構成」よりも、よりしっかり固定する位置決め構造である引用文献2に記載された、膨張部が形成された凸部が設けられた保持枠の円筒状の第1の筒部と、前記膨張部に噛み合う食い込まれた部分である食い込み部が形成された凹部を備えたレンズからなる抜け止めの構成を、引用発明の「光軸方向における当接部5aの厚さが、外周部5bの厚さよりも小さくなっていて、当接部5aと外周部5bにより段差が形成された構成になり、この段差部分に、第3のレンズ3のコバ3a・3bが嵌合」する構造に代えて採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、上記凸部及び凹部は、「それぞれ嵌合させることで、互いに位置決めされる」ものであるから、相対的に関係付けられた構成と理解できるので、引用発明の「第3のレンズ3のコバ3b」側に凸部を設けて構成することは、引用発明に引用文献2に記載された構成を適用するに際し、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。
よって、引用発明に引用文献2に記載された構成を適用して上記相違点2に係る本願発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点1について検討する。
上記(ア)で検討したように、引用発明に引用文献2の技術を適用すれば、嵌合部分(5bの部分)が必要なくなるから、当該不要となった嵌合部分(5bの部分)のない固定部材5を用いることは当業者が当然になし得ることである。そして、嵌合部分(5bの部分)のない固定部材5を用いれば、自然とレンズ系と同じサイズなり、筒状バレル4に収納される形状になるといえる。
したがって、引用発明に引用文献2の技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。
(2)請求人の主張
ア 審判請求人は審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由」「(2)補正の説明」において、概略、
(ア)引用文献1では、固定部材5は、全体としてバレル4と光軸方向で離間しており、その一部がバレル4の側壁4dへ跨って延びるものであり、明らかに本願のような全体が前記鏡筒内に位置する押え環の構造ではありません。
(イ)引用文献1の固定部材5は、本願発明の押え環に相当できないとともに、引用文献1で示される応用場面は、本願発明の応用場面と実質的に相違しています。
(ウ)引用文献1の段落[0136]及び[0137]の記載から明確化できるように、「第3のレンズ3のコバ3bの一部と固定部材5の当接部5aとに、互いが嵌合するような凹凸部が設けられていることが好ましい」が開示されていますが、その目的は、第3のレンズ3の光学面部3aの形状の相違(例えば、曲率が異なる)によっては位置決めが不便である課題を解決することであり、当該凹凸部は、粗調整を容易に行うことができて位置決め工程の時間的な短縮を実現する役割を果たすものです。これにより、解決しようとする課題から見ても、引用文献1が本願発明と相違しているため、引用文献1から動機付けに関する示唆が存在しないと考えます。
(エ)引用文献2では、凸部8、9が保持枠に形成され、凹部12、13が光学素子3に形成されるため、実質的に鏡筒とレンズとの間の固定結合を反映しており、あえて本願のような押え環とレンズとの結合を反映しておらず、明らかに押え環自身による迷光回避の役割を果たすことができません。
イ しかしながら、上記ア(ア)、(イ)及び(エ)の点は上記(1)イで検討したとおりであって、請求人の上記主張は採用できない。
また、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用する動機については、上記(1)イ(ア)で検討したとおりであって、引用文献1の嵌合が粗調整を容易に行うことが出来るようにするためのものであるとしても、嵌合させることによって光軸と垂直方向でレンズと固定部材との相対移動が防止されることは明らかであり、解決しようとする課題は同じであるといえるから、請求人の上記ア(ウ)の主張も採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-004081