特許拒絶査定不服審判
2021-003672
半導体装置用基板およびその製造方法
- 審判番号
- 2021-003672
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-111674
- 請求日
- 2021年03月22日
- 審決日
- 2021年09月28日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マクセルホールディングス株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 酒井 朋広
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-111674「半導体装置用基板およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019-161238〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月20日に出願した特願2014-59216号の一部を平成29年12月27日に新たな特許出願とした特願2017-250422号について、さらにその一部を令和1年6月17日に新たな特許出願としたものであって、令和2年4月28日付け拒絶理由通知に対して同年7月10日に手続補正がなされたが、同年12月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、令和3年3月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 令和3年3月22日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年3月22日の手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
令和3年3月22日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、実質的に補正があった請求項1については、
本件補正前に、
「【請求項1】
母型基板上に、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部を備える半導体装置用基板であって、
前記金属部の表面に、凹部が設けられ、前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられており、
前記金属部の上端に張出し部が形成され、前記張出し部には前記金属部の表面と平行な下面を有し、
前記金属部の厚み方向において、前記張出し部の下面が前記凹部の底面より高い位置に設けられていることを特徴とする半導体装置用基板。」
とあったところを、
本件補正により、
「【請求項1】
母型基板上に、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部を備える半導体装置用基板であって、
前記金属部の表面に、凹部が設けられ、前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられており、
前記金属部の上端に張出し部が形成され、前記張出し部には前記金属部の表面と平行な下面を有し、
前記金属部の厚み方向において、前記張出し部の下面が前記凹部の底面より高い位置且つ前記張出し部の下面と前記凹部の底面とは重ならない位置に設けられていることを特徴とする半導体装置用基板。」
とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。
請求項1に係る上記補正は、金属部の上端に形成された張出し部の下面の位置が、凹部の底面より高く、且つ「前記張出し部の下面と前記凹部の底面とは重ならない位置」であることを限定したものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下検討する。
2 引用文献、引用発明
(1)特開2009-55055号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-55055号公報(以下「引用文献1」という。)には、「半導体装置の製造方法」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア 「【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、小型・薄型化を図れ、かつ信頼性の高い樹脂封止型の半導体装置に関する。」
イ 「【0015】
(第1実施例)図1乃至図3に本発明に係る半導体装置の構成および製造方法の第1実施例を示す。図1は、本発明に係るリードレス表面実装型の半導体装置を示しており、同図(a)は断面図、同図(b)は底面図である。同図において、Sは半導体素子Sであって、アイランド部2a上に接着されて搭載されている。Lは半導体素子S上に形成された電極であり、上記アイランド部2aと独立して並設された対応する電極部2b2bと金等の導電性のワイヤ3により結線され、電気的に接続されている。上記半導体素子Sの搭載部分は熱硬化性エポキシ樹脂等の樹脂層4にて封止されており、上記アイランド部2aと電極部2bの各裏面が樹脂層4と同一平面で露出した樹脂封止体が構成されている。
【0016】
ここで、図1(a)において、上記アイランド部2aおよび電極部2bは、上端部周縁をそれぞれ庇状に張り出し形成して構成されており、樹脂封止体としての樹脂層4に対する喰い付き効果によって、アイランド部2a,電極部2bと樹脂層4との結着力が向上し、樹脂剥れやズレを効果的に防止できる構成となっている。また、アイランド部2aおよび電極部2bは、それぞれ裏面側が金,スズ,ハンダ,パラジウム等の導電性に優れた実装用金属薄膜11が0.05~1μm程度の厚さで形成され、その上面にニッケル等の電鋳金属から成るリード層12が一体に積層された二層構造からあらかじめ形成されており、さらには、本実施例の場合、リード層12の上面に、金,銀等から成るワイヤ3との結線力向上のためのボンディング用金属膜13が0.3~0.4μm厚程度形成されている。このボンディング用金属膜13については必須の構成ではない。」
図1
[図:0001380805000001.jpg]
ウ 「【0017】
図2及び図3は上記半導体装置の製造方法を工程ごとに示しており、図2(a)はステンレスやアルミ,銅等の導電性の金属板、例えば本実施例の場合SUS430により形成された基板1の両面に約50μm厚のアルカリタイプの感光性フィルムレジストを熱圧着等の方法でラミネートする等して、感光性レジスト層5,5を密着させる工程であり、次いで図2(b)のごとく基板1の一面側の感光性レジスト層5上に所定パターンのフィルムFを配した状態で紫外線照射による両面露光を行った後現像処理を行い図2(c)に示すような、基板1の一面側に所定のパターンニングを施したレジストパターン層6とのその裏面に硬化したレジスト層5を得る。
【0018】
次いで、基板1の一面側のレジストパターン層6で覆われていない露出面に対し、必要に応じて化学エッチングによる表面酸化被膜除去や薬品による周知の化学処理等の表面活性化処理を行った後、図2(d)に示すごとく基板1のレジストパターン層66により規定された露出面に0.05~1μm厚で金を成長させて、実装用金属薄膜11を形成する。本実施例の場合、微細パターン部の金メッキ処理において、金メッキの成長不良や付着不良の発生を事前に防止する目的で、上記化学エッチング等の化学処理を行い、基板1上の不活性膜を除去する工程を付加しているが、基板1の材質、メッキする金属の選択によっては、この工程は省略可能である。
【0019】
次いで、図2(e)のごとく、ニッケルや銅,ニッケル-コバルト等の合金等から選択される電鋳金属、本実施例の場合はニッケルを上記金属薄膜11上面に、一体に積層して電着することでリード層12を形成し、上記金属薄膜11とリード層12の二層構造から成る、半導体搭載用のアイランド部2aと、該アイランド部2aに対して1以上の独立した電極部2bを、各々対として複数組を並列形成する。なお、本実施例においては、本工程で電着形成されるリード層12をレジストパターン層6の厚みを越えて(例えば60~80μm厚で)形成することで、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁に庇状の張り出しを形成するようにしている。」
図2
[図:0001380805000002.jpg]
」
図3
[図:0001380805000003.jpg]
」
エ 「【0024】
次いで、図3(d)のごとく、樹脂封止体から基板1を除去することにより、樹脂封止体の底面には複数組のアイランド部2aと電極部2bの各裏面が露出するとともに、アイランド部2a、電極部2bの各裏面と樹脂層4の底面は略同一平面となっている。・・・(以下略)」
上記アないしウによれば、以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、引用文献1は、小型・薄型化を図れ、かつ信頼性の高い樹脂封止型の半導体装置に関するものである。
・上記ウによれば、導電性の金属板により形成された基板1上に、実装用金属薄膜11とリード層12の二層構造からなるアイランド部2a、電極部2bを複数組並列形成するものである。
・上記イによれば、アイランド部2aおよび電極部2bは、それぞれ導電性に優れた実装用金属薄膜11と電鋳金属から成るリード層12が一体に積層された二層構造からなるものである。つまり、アイランド部2aおよび電極部2bは、金属からなるものといえる。
・上記イによれば、アイランド部2a上に半導体素子Sが搭載されているものである。
・上記イ及びウによれば、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁に庇状の張り出しを形成しているものである。
・上記ウの段落【0019】の「本工程で電着形成されるリード層12をレジストパターン層6の厚みを越えて(例えば60~80m厚で)形成することで、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁に庇状の張り出しを形成するようにしている」との記載、図1ないし図3を参酌すると、上記張り出しは、アイランド部2aおよび電極部2bの表面と平行な下面を有しているものと認められる。
上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「導電性の金属板により形成された基板1上に、半導体を搭載する金属からなるアイランド部2a、金属からなる電極部2bを複数並列に形成された半導体装置であって、
アイランド部2aおよび電極部2bは、上端部周縁に庇状の張り出しを形成しており、
上記張り出しは、アイランド部2aおよび電極部2bの表面と平行な下面を有している、
半導体装置。」
(2)特開2011-146524号公報
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-146524公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、リードフレームのうち半導体素子を載置する部分のみを選択的に薄くすることにより、リードフレームのハンドリング性を損なうことなく半導体装置の厚みを薄くすることが可能なリードフレームおよびその製造方法、ならびに半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。」
「【0020】
リードフレームの構成
まず、図1および図2により、本実施の形態によるリードフレームの概略について説明する。図1(a)は、本実施の形態によるリードフレームを示す平面図、図1(b)は図1(a)中のAA’線に沿った断面図であり、図2は、ダイパッドの載置凹部を示す部分拡大断面図である。図3は、本実施の形態によるリードフレームの変形例を示す断面図である。
【0021】
図1(a)(b)に示すように、リードフレーム10は、半導体素子21(後述)を搭載するために用いられるものである。このようなリードフレーム10は、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に空間13を介して設けられたリード部12とを備えている。
【0022】
ダイパッド11およびリード部12は、1枚の金属基板をエッチング加工することにより形成されたものである。ダイパッド11およびリード部12の材料としては、例えば銅、銅合金、42合金(Ni41%のFe合金)等を挙げることができる。このダイパッド11およびリード部12の厚みは、半導体装置の構成にもよるが、0.05mm~0.5mmとすることが好ましい。」
「【0023】
ダイパッド11の表面(図1(b)の上面)には、後述する半導体素子21を載置する載置面11aが形成されている。他方、ダイパッド11の裏面(図1(b)の下面)には、図示しない外部の電極に接続される第1アウターリード部27が形成されている。」
「【0025】
本実施の形態において、ダイパッド11の載置面11aには、半導体素子21を収容する載置凹部14が形成されている。この載置凹部14は、深さが相対的に浅い第1凹部15と、第1凹部15中央に位置するとともに、深さが相対的に深い第2凹部16とからなっている。このうち第1凹部15は、後述するようにエッチングにより形成されたものであり、第2凹部16は、プレスにより形成されたものである。」
図1
「
[図:0001380805000004.jpg]
」
図2
「
[図:0001380805000005.jpg]
」
上記段落の記載、図1及び図2によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「半導体装置の厚みを薄くするために、金属からなるダイパッド11の半導体素子21を載置する載置面11aに半導体素子21を収容する載置凹部14を形成する」こと。
3 本願補正発明と引用発明との対比
(1)本願補正発明の「母型基板」は、本願明細書の段落【0033】及び【0034】によれば、導電性の金属板で形成され、製造工程で分離除去されるものである。そうすると、引用発明の「導電性の金属板により形成された基板1」も、分離除去されるものであるから(上記「2(1)エ」を参照。)、本願補正発明の「母型基板」に相当する。
そして、引用発明の「半導体を搭載する金属からなるアイランド部2a」及び「金属からなる電極部2b」は、本願補正発明の「半導体素子搭載部」及び「電極部」に相当する。
よって、引用発明の「導電性の金属板により形成された基板1上に、半導体を搭載するアイランド部2a、電極部2bを複数並列に形成された」ことは、本願補正発明の「母型基板上に、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部を備える」ことに相当する。
(2)引用発明の「半導体装置」は、上記(1)のとおり母型基板、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部に相当する構成を備えているから、本願補正発明の「半導体装置用基板」に相当する構成を含んでいるといえる。
(3)本願補正発明は「前記金属部の表面に、凹部が設けられ、前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられて」いるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。
(4)引用発明の「アイランド部2aおよび電極部2bは、上端部周縁に庇状の張り出しを形成」することは、本願補正発明の「前記金属部の上端に張出し部が形成され」ることに相当する。
(5)引用発明の「上記張り出しは、アイランド部2aおよび電極部2bの表面と平行な下面を有している」ことは、本願補正発明の「張出し部には前記金属部の表面と平行な下面を有し」に相当する。
(6)本願補正発明は「金属部の厚み方向において、前記張出し部の下面が前記凹部の底面より高い位置且つ前記張出し部の下面と前記凹部の底面とは重ならない位置に設けられている」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。
上記(1)ないし(6)によれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「母型基板上に、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部を備える半導体装置用基板であって、
前記金属部の上端に張出し部が形成され、前記張出し部には前記金属部の表面と平行な下面を有している半導体装置用基板。」
<相違点1>
本願補正発明は「金属部の表面に、凹部が設けられ、前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられて」いるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。
<相違点2>
本願補正発明は「前記金属部の厚み方向において、前記張出し部の下面が前記凹部の底面より高い位置且つ前記張出し部の下面と前記凹部の底面とは重ならない位置に設けられている」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。
4 判断
(1)相違点1について
半導体装置の厚みを薄くするために、半導体素子を載置する金属からなる部分の載置面に凹部を設けることは、引用文献2に記載されているように周知の技術事項である。
そして、引用発明も小型・薄型化を図る半導体装置に関するところ(上記「2(1)ア」を参照)、引用発明の半導体を搭載するアイランド部2aの載置面に凹部を設けることを制限する特段の理由も見当たらないから、引用発明のアイランド部2aの載置面、即ち、表面に引用文献2に記載された周知の技術事項を採用することは当業者が容易になし得たことである。
ここで、引用文献1(アイランド部の裏面について、上記「2(1)エ」を参照)も引用文献2(ダイパッドの裏面について、段落【0023】を参照)も、半導体を搭載する部分の裏面を電気接続に使用しているものと認められる。そして、半導体を搭載する部分の強度を実用に耐え得る程度に確保するために、半導体を搭載した面から裏面まである程度の距離(厚み)を確保するよう設計することは当然のことである。そうすると、引用発明のアイランド部2aの表面に引用文献2に記載された周知の技術事項を採用したものは、本願補正発明の「前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられて」いる構成を備えているものである。
よって、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、相違点1に係る構成をなすことは当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
上記(1)で説示したとおり、引用発明において、アイランド部2aの表面に半導体素子を載置するための凹部を設けるように構成することは当業者が容易になし得たことである。そして、アイランド部2aの表面に凹部を設ける際、厚み方向において、庇状の張り出しが有する下面と、凹部の底面の高さの相対関係を具体的にどのようにするかは、半導体装置に要求される高さ、半導体素子自体の厚み、アイランド部2aの機械的強度、加工のし易さ等の所定の条件に応じて当業者が適宜設定し得る事項に過ぎず、庇状の張り出しが有する下面の位置を、凹部の底面より高い位置且つ凹部の底面と重ならない位置とすることに格別の困難性は認められない。
この点について、審判請求人は、審判請求書にて以下のように主張している(下線は当審で付与した)。
「本願発明の半導体装置用基板は、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部の表面に凹部が設けられており、該凹部の下側には所定厚さまで形成された金属部が設けられ、金属部の上端には張出し部が形成されているものです。そして、本願発明の半導体装置用基板では、金属部の厚み方向において、張出し部の下面が凹部の底面より高く且つ張出し部の下面と凹部の底面とは重ならない位置関係となっており、凹部と張出し部下方の空間とは重ならない構成であるのに対して、引用文献3のリードフレームは、リードフレームの厚み方向において、ダイパッド表面に形成された載置凹部とリード部表面に形成されたアンカー溝のともに、それぞれの下方に形成された空間(腐蝕部分)と重なる構成となっているため、本願発明と引用文献3に記載の発明とでは、凹部の下側における強度が異なります。このように、本願発明の半導体装置用基板によれば、凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられていることにより、凹部の下側に金属部(半導体素子搭載部)が必要な強度を維持する厚さを確保することができます(段落0037)。加えて、凹部による金属部表面と封止材との接触面積の拡大と、張出し部による封止材との食い付き効果により、金属部と封止材との結着力を向上でき、信頼性に優れた半導体装置を得ることができます(0066、0086参照)。したがって、本願発明は、引用文献2および3に記載の発明から当業者が容易に想到できるものではなく、進歩性の特許要件を満たすものであると思料いたします。」
なお、主張の中で指摘されている引用文献2、引用文献3は、それぞれ当審決における引用文献1、引用文献2である。
そこで、上記主張について検討する。
まず、本願補正発明において凹部の下側の金属部の厚さについて、張り出し部の下面との相対関係において凹部の底面よりも高いことは規定されてはいるものの、所定厚さとだけ記載され、具体的な厚さがどの程度のものであるかについては規定されていないことから、凹部の下側に金属部が必要な強度を維持するという効果は、本願補正発明の記載に基づく効果の主張とはいえない。そして十分な強度が特定できる程度の厚さを有するものであったとしても、そもそも凹部を形成するに際して、強度を考慮して厚みを決定することは当業者が当然に考慮する程度の事項に過ぎないことから、当該効果が引用文献2に記載された技術を採用した引用発明に対して格別のものとは認められない。
次に、引用文献1の段落【0016】には、アイランド部2aおよび電極部2bの上端部周縁を庇状に張り出し形成して構成することによって、樹脂封止体としての樹脂層4に対する喰い付き効果が得られることが記載されている。また、半導体素子を搭載する部分に凹部を形成すれば、凹部の側面の面積分接触面積が増えることは当然のことであって、接触面積が増えることでアイランド部2aと封止樹脂との密着性も向上することは容易に予測し得ることであり、例えば、特開2001-135767号公報の段落【0027】の記載からも明らかである。よって、凹部による金属部表面と封止材との接触面積の拡大や、張出し部による封止材との食い付き効果についても、引用文献2に記載された技術を採用した引用発明に対して格別のものとも認められない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1、2から当業者が予測できる範囲のものである。
5 むすび
以上のとおり、本件補正の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年3月22日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、令和2年7月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
母型基板上に、半導体素子搭載部及び/又は電極部となる金属部を備える半導体装置用基板であって、
前記金属部の表面に、凹部が設けられ、前記凹部の下側に所定厚さまで形成された金属部が設けられており、
前記金属部の上端に張出し部が形成され、前記張出し部には前記金属部の表面と平行な下面を有し、
前記金属部の厚み方向において、前記張出し部の下面が前記凹部の底面より高い位置に設けられていることを特徴とする半導体装置用基板。」
2 原査定の概要
令和2年12月22日付け拒絶査定のうち、請求項1に係る発明についての理由は、以下のとおりある。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前(本願の公開基準日前)に日本国内において頒布された下記の引用文献2、引用文献3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・引用文献2 特開2009-55055号公報
・引用文献3 特開2011-146524号公報
なお、上記引用文献2は、本審決における引用文献1と同一のものであるから、以下「引用文献1」という。同様に、上記引用文献3は、本審決における引用文献2と同一のものであるから、以下「引用文献2」という。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項、引用発明、引用文献2の記載事項は、上記「第2[理由]2」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、張出し部の下面の位置について、「且つ前記張出し部の下面と前記凹部の底面とは重ならない位置」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3及び4」に記載したとおり、引用文献1に記載された発明および引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易になし得たものであるところ、上記事項を省いた本願発明も同様の理由により、引用文献1に記載された発明および引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-003672