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特許拒絶査定不服審判

2021-003155

着用使い捨て吸収性物品

審判番号
2021-003155
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-559894外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年03月09日
審決日
2022年10月25日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-559894「着用使い捨て吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日国際公開、WO2017/194093、令和元年6月6日国内公表、特表2019-514621〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2016年(平成28年)5月10日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年1月8日 特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書の提出

令和2年1月31日付け 拒絶理由通知書

令和2年5月11日 意見書、手続補正書の提出

令和2年10月22日付け 拒絶査定

令和3年3月9日 審判請求書の提出

令和4年4月27日付け 拒絶理由通知書

令和4年8月5日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和4年8月5日に提出された手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。

「【請求項1】
着用使い捨て吸収性物品(10)であって、
フロントパネル(12)と、
バックパネル(14)と、
続きを表示(全20行)
前記フロントパネル(12)および前記バックパネル(14)をつなぎ、前記フロントパネル(12)および前記バックパネル(14)に少なくとも部分的に重なる股下パネル(16)と
を含み、
前記股下パネル(16)が、
トップシート(18)と、
バックシート(20)と、
前記トップシート(18)と前記バックシート(20)との間に設けられた吸収性コア(22)とを含み、
前記バックシート(20)が、重なり合って配置された液体バリアシート(24)と、不織布層(26)とを含む積層構造を有し、
前記不織布層(26)が、前記股下パネル(16)の外側に配置され、着用されるとき、前記着用使い捨て吸収性物品(10)の着用者から外方に向き、
前記液体バリアシート(24)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、前記フロントパネル(12)と前記バックパネル(14)との間に配置された前記股下パネル(16)の部分の全長に広がり、前記液体バリアシート(24)が、前記フロントパネル(12)の少なくとも一部分に、および前記バックパネル(14)の少なくとも一部分にさらに広がり、
前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、前記フロントパネル(12)と前記バックパネル(14)との間に配置された前記股下パネル(16)の部分の全長に少なくとも広がり、
前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記フロントパネル(12)に広がらず、
前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記バックパネル(14)に広がらず、
前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記不織布層(26)の幅が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記液体バリアシート(24)の幅よりも小さく、前記着用使い捨て吸収性物品(10)に与えられる相対的寸法は、前記着用使い捨て吸収性物品(10)の完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係しており、
前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記不織布層(26)の長さが、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記液体バリアシート(24)の長さの40%~70%の範囲内であり、
前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、
前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない、着用使い捨て吸収性物品(10)。」

なお、本件補正により請求項1に加入された

「前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、
前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない」

との構成は、本件補正前の請求項11に記載されていた事項である。

第3 令和4年4月27日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶理由について

補正前の請求項1~16に係る発明に対し、当審が令和4年4月27日付けで通知した拒絶理由のうち、進歩性に係る理由2の概要は、次のとおりである。

【理由2】(進歩性)この出願の請求項1~16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1~16に係る発明は、引用文献1に記載された発明により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、請求項1~16に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>

1.特開2008-161572号公報

2.国際公開第2013/161700号

第4 当審の判断

1.引用文献

(1)引用文献1

引用文献1には以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとからなり、腹側外装シートの幅方向両側縁の接合部と背側外装シートの幅方向両側縁の接合部とが接合されて形成された筒状の胴回り部と、
前端部が前記腹側外装シートの幅方向中央部内面に連結されるとともに、後端部が前記背側外装シートの幅方向中央部内面に連結され、且つ背側から股間部を通り腹側までを覆う吸収性本体とを備え、
前記腹側外装シートと背側外装シートとが股間側で連続しておらず、離間されているパンツ型紙おむつにおいて、
前記吸収性本体は、表面に配された液透過性トップシートと、裏面側に配された液不透過性シートと、これらの間に設けられた液を吸収し保持する吸収要素とを有しており、
前記吸収性本体の裏面を覆うように、製品外面に露出する股間部外装シートが設けられており、
前記股間部外装シートは、前記吸収性本体の裏面における前後方向範囲のうち、前端から所定距離後端側までの前側部分、及び後端から所定距離前端側までの後側部分には設けられておらず、前記前側部分と後側部分との間の中間部分にのみ設けられている、
ことを特徴とするパンツ型紙おむつ。」
「【請求項4】
前記股間部外装シートが前記吸収性本体よりも幅狭に形成されている、請求項1記載のパンツ型紙おむつ。」
「【請求項6】
少なくとも、前記吸収性本体における前記股間部外装シートを有しない部分に、液の吸収を表示するインジケータが設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつ。
【請求項7】
前記股間部外装シートの前端部と前記腹側外装シートの下端部との前後方向の重なり代、及び前記股間部外装シートの後端部と前記背側外装シートの下端部との前後方向の重なり代がそれぞれ0~100mmとなるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のパンツ型紙おむつ。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、外装シートが腹側及び背側の2つに分割されているパンツ型紙おむつに関するものである。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施の形態によってさらに詳説する。
<第1の実施形態>
図1~図6は、本発明に係るパンツ型紙おむつの一例を示している。図1の符号において、「前後方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向を意味し、「上下方向」とは胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
このパンツ型紙おむつ10は、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁の接合部12Aと背側外装シート12Bの幅方向両側縁の接合部12Aとが、ヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の胴回り部が形成されるように構成されている。・・・
また、胴回り部における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に吸収性本体20の前端部が連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に吸収性本体20の後端部が連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離Yは150~250mm程度とすることができる。
・・・」
「【0025】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの本体部13と基本的に同様のものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような延出部14を有していないものである。よって、同じ符号を用い、説明は省略する。腹側外装シート12Fについても、背側外装シート12Bと同様の本体部と延出部とからなる構成にすることも可能である。
・・・」
「【0028】
(吸収性本体)
吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。吸収性本体20は、図3に示されるように、使用面側から順に、液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、吸収要素50とを備えている。通常の場合、吸収要素50の裏面側にはプラスチックシートなどからなる液不透過性シート70が設けられる。この液不透過性シート70の裏面側には股間部外装シート12Mが設けられている。また、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、吸収部20の両側に起立するバリヤーカフス60、60を設けることができる。なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより相互に固定することができる。
・・・
【0029】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。・・・」
「【0031】
(液不透過性シート)
液不透過性シート70は、単に吸収体56の裏面側に配されるシートを意味し、本実施の形態においては、トップシート30との間に吸収体56を介在させるシートとなっている。したがって、本液不透過性シートは、その素材が、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート70として用いることができる。
・・・
また、液不透過性シートの内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シートの外側に、股間部外装シートとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シートの内側に、排尿を視覚的変化により表示するインジケータを備えても良い。」
「【0033】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。さらに、図示形態では、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられているが、この保持シート80は省略することもできる。
【0034】
(吸収体)
吸収体56は、綿状パルプ等の短繊維を積繊したものの他、フィラメント52,52…の集合体からなるもの等も使用できる。
・・・」
「【0038】
(股間部外装シート)
吸収性本体20の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアースルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
・・・
続きを表示(全15行)
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
・・・
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと吸収性本体20とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは吸収性本体20と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。後者の形態は、後述する図7に示す形態において好適であり、さらに股間部外装シート12Mの両側に弾性部材を配置する際に特に好適である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により吸収性本体20の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0039】
特徴的には、吸収性本体20の裏面(この場合、液不透過性シート70)における前後方向範囲が、前端から所定距離後端側までの前側部分20F、後端から所定距離前端側までの後側部分20B及びこれらの間の中間部分20Mに三分割され、股間部外装シート12Mは、前側部分20F及び後側部分20Bには設けられておらず、これらの間の中間部分20Mにのみ設けられている。・・・
このように構成することによって、胴回り部と吸収性本体20との重なり部分に占める股間部外装シート12Mの割合が低減し、その分だけ胴回り部における通気性が向上するようになる。また、胴回り部の通気性を低下させずに、股間部外装シート12Mに消臭剤を含有させて消臭機能を発揮させる、あるいは股間部外装シート12Mにおける素材を適宜変更することにより強度向上等を図ることができる。
前側部分20F、中間部分20M、後側部分20Bの前後方向長さは適宜定めることができる。特に、股間部外装シート12Mの前端部と腹側外装シート12Fの下端部との前後方向の重なり代X、及び股間部外装シート12Mの後端部と背側外装シート12Bの下端部との前後方向の重なり代は、例えばそれぞれ0~100mmとすることができ、0~50mmであるとより好ましく、0~30mmであると特に好ましい。これらの重なり代が過度に大きくなると、胴回り部の通気性の低下を防止し難くなる。しかし本発明では、股間部外装シート12Mの前端と腹側外装シート12Fの下端との間、及び股間部外装シート12Mの後端と背側外装シート12Bの下端との間が離間していても良い。
【0040】
図1~図6に示す例では、股間部外装シート12Mが吸収性本体20と同幅に形成されている、換言すれば股間部外装シート12Mの両側縁(幅方向両端)が吸収性本体20の両側縁(幅方向両端)に合わされている。このように構成されていると、吸収性本体20裏面の中間部分20Mが幅方向全体にわたり股間部外装シート12Mにより覆われ、股間部外装シート12Mが吸収性本体20から食み出ないため、股間部における見栄えがすっきりしたものとなる。ただし、本発明の股間部外装シート12Mの幅はこれに限定されるものではない。
・・・
反対に、図8及び図9に示すように、股間部外装シート12Mにおける前後方向の全部(一部でも良い)を、吸収性本体20よりも幅狭に形成することができる。股間部外装シート12Mの幅を吸収性本体20に対してどの程度狭くするかは適宜定めることができるが、例えば10~60mm程度狭くすることができる。この場合、素材コストを低く抑えることができるとともに、股間部における通気性も向上する。」
エ 「【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】 実施形態の内面を示す展開状態での平面図である。
【図2】 実施形態の外面を示す展開状態での平面図である。
続きを表示(全14行)
【図3】 図1の3-3線断面図である。
【図4】 図1の4-4線断面図である。
【図5】 製品状態の正面図である。
【図6】 製品状態の背面図である。
【図7】 他の実施形態の外面を示す展開状態での平面図である。
【図8】 他の実施形態の外面を示す展開状態での平面図である。
【図9】 図8の9-9線断面図である。
【図10】 他の実施形態の外面を示す展開状態での平面図である。
【図11】 溶着による弾性伸縮部材の固定方法を示す概略図である。
【図12】 溶着による弾性伸縮部材の固定方法を示す概略図である。」
「【図1】 【図2】
[図:0001395590000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001395590000002.jpg]
」
「【図8】 【図9】
[図:0001395590000003.jpg]
」

図2には、吸収性本体と腹側外装シートとが重なる部分を有すること、吸収性本体と背側外装シートとが重なる部分を有することが図示されている。

また、段落【0028】、【0031】に記載されているように液不透過性シートはトップシートとの間に吸収体を介在させるシートである。さらに、段落【0039】に「吸収性本体20の裏面(この場合、液不透過性シート70)における前後方向範囲」と記載され、「前後方向範囲」に関する記載において「吸収性本体20」が、カッコで囲まれた「液不透過性シート70」によって言い換えられている。

これらを鑑みると、液不透過性シートの前後方向長さは、吸収性本体の前後方向長さと同じであり、液不透過性シートは、腹側外装シートと前後方向で重なる部分を有し、背側外装シートと重なる部分を有し、腹側外装シートと背側外装シートとの間に配置された部分の全長に広がるといえる。

また、段落【0039】の記載より、液不透過性シートにおける前後方向範囲が前側部分、後側部分、中間部分に三分割され、股間部外装シートは前側部分及び後ろ側部分には設けられておらず、これらの間の中間部分にのみ設けられているとともに中間部分の全体を被覆しているといえる。

段落【0039】の記載及び図2、4から、股間部外装シートは、腹側外装シートと背側外装シートの間に配置された吸収性本体の部分の全長に広がり、股間部外装シートの前端部と腹側外装シートの下端部とが前後方向の重なり代を有し、股間部外装シートの後端部と背側外装シートの上端部とが前後方向の重なり代を有しているといえる。

段落【0044】には、図1、2、8が「展開状態での平面図」であることが記載されている。そして、パンツ型紙おむつに関して段落【0039】における「前後方向範囲」、段落【0040】における「幅方向」の寸法は、当該展開状態での平面図における符号と対応しているから、これらの寸法は展開状態で平面にされた状態に関係しているといえる。

以上より、特に図1-6等に示される第1の実施形態に注目すると、引用文献1には以下の引用発明1が記載されていると認められる。

<引用発明1>

「パンツ型紙おむつであって、
装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シートと背側を覆う背側外装シートとを有しており、
腹側と背側とを結ぶ方向を前後方向として、
胴回り部における腹側外装シートの幅方向中央部内面に吸収性本体の前端部が連結されるとともに、背側外装シートの幅方向中央部内面に吸収性本体の後端部が連結されており、
続きを表示(全14行)
吸収性本体は、使用面側から順に、液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシートと、吸収要素とを備え、吸収要素の裏面側には液不透過性シートが設けられ、この液不透過性シートの裏面側にはスパンボンド不織布等の各種不織布からなる股間部外装シートが設けられ、
股間部外装シートは製品外面に露出し、
液不透過性シートの前後方向長さは、吸収性本体の前後方向長さと同じであり、
液不透過性シートが、前後方向に腹側外装シートと前後方向で重なる部分を有し、背側外装シートと重なる部分を有し、腹側外装シートと背側外装シートとの間に配置された部分の全長に広がり、
液不透過性シートにおける前後方向範囲が前側部分、後側部分、中間部分に三分割され、股間部外装シートは前側部分及び後ろ側部分には設けられておらず、これらの間の中間部分にのみ設けられているとともに中間部分の全体を被覆し、
股間部外装シートは、腹側外装シートと背側外装シートの間に配置された吸収性本体の部分の全長に広がり、
股間部外装シートの前端部と腹側外装シートの下端部とが前後方向の重なり代を有し、
股間部外装シートの後端部と背側外装シートの上端部とが前後方向の重なり代を有し、
パンツ型紙おむつの前後方向長さ及び幅方向の寸法は展開状態で平面にされた状態に関係している、
パンツ型紙おむつ。」

また、引用文献1には、特に段落【0040】に着目すると、以下の引用文献1に記載された事項が記載されていると認められる。

<引用文献1に記載された事項>

「吸収性本体の裏面を覆う股間部外装シートを、吸収性本体よりも幅狭とすることにより、素材コストを低く抑えることができるとともに、股間部における通気性を向上させることができること。」

(2)引用文献2

引用文献2には以下の記載がある。

ア 「技術分野
[0001] 本発明は使い捨て着用物品およびその製造方法に関する。」
イ 「発明の概要
・・・
[0005]本発明の使い捨て着用物品は、ある局面において、使い捨て着用物品1であって、
前記着用物品1は着用者の胴を覆い胴回り方向Xに延びる少なくとも1つの胴回り部材3F,3Bと、前記胴回り部材3F,3Bの肌面に重なり部23で重なり、前記胴回り方向Xに直交する縦方向Yに延び前記着用者の股間を覆う吸収性本体2とを備え、
続きを表示(全17行)
前記胴回り部材3F,3Bは、その非肌面が胴回り不織布で形成され、かつ、少なくとも1つの前記胴回り部材3F,3Bは前記吸収性本体2の前記胴回り方向Xの端よりも前記胴回り方向Xに突出しており、
前記吸収性本体2は、着用者の体液を吸収する吸収性コア24と、前記吸収性コア24の非肌面を覆う液不透過性の樹脂シート27と、前記樹脂シート27の非肌面を覆う外装
不織布4とが積層されており、
前記外装不織布4は前記樹脂シート27よりも前記胴回り方向Xに直交する縦方向Yの長さが短く、前記重なり部23の一部又は全部において前記樹脂シート27を前記外装不織布4が覆っていない非覆い部40が設けられ、
前記吸収性本体2の肌面において着用者の股間に接触して体液が漏れるのを防止するための一対の立体カフ25が設けられ、
前記立体カフ25が前記樹脂シート27の前記胴回り方向Xの中央を覆わずに、かつ、前記一対の立体カフ25を形成する各シートが前記吸収性本体2の前記胴回り方向Xの端部を包んでいる。
一方、本発明方法は、ある局面において、前記一対の立体カフ25となる一対の連続シートW25,W25を互いに平行に搬送する工程と、
前記連続シートW25,W25に股がるように前記連続シートW25,W25間に前記外装不織布4を前記連続シートW25の連続方向に間欠配置する工程と、
前記連続シートW25,W25間に前記吸収性本体2を配置する工程と、
前記吸収性本体2の配置後に、前記連続シートW25の前記胴回り方向Xの端部を折り返して前記立体カフ25を形成する工程とを備える。
[0006] 本発明によれば、外装不織布4の縦方向Yの長さが樹脂シート27の前記縦方向Yの長さよりも短く、したがって、材料コストのダウンを図り得ると共に、胴回り域のゴワツキを防止し得る。
また、前記樹脂シート27の非肌面側に図柄を有する場合、前記外装不織布4が前記樹脂シート27を覆っていない前記非覆い部40におけるシートの枚数が少なくなる。したがって、着用物品の着用時に外部から見て前記図柄を視認し易い。
また、一対の立体カフ25によって、吸収性本体2の胴回り方向Xの両端が包まれている。したがって、吸収性本体2の両端が着用者の肌面に触れず、着用物品の着用感が向上するだろう。」
ウ 「図面の簡単な説明
[0007][図1]図1は本発明の実施例1にかかる使い捨て着用物品を分解して示す概略分解斜視図である。
[図2]図2Aは同着用物品を展開して示す正面図、図2BはIIB-IIB線断面図、図2CはIIC-IIC線断面図である。
[図3]図3は同着用物品を展開して示す概略背面図である。
[図4]図4は同実施例1にかかる外装用の連続積層体の製造方法を示す概略平面図である。
[図5]図5は同連続積層体の製造方法を示す概略平面図である。
[図6]図6は着用物品の製造方法を示す概略平面図である。
[図7]図7は実施例2にかかる着用物品の概略背面図である。
[図8]図8Aは実施例3にかかる着用物品を展開して示す正面図、図8BはIIB-IIB線断面図、図8CはIIC-IIC線断面図である。
[図9]図9は同実施例1にかかる外装用の連続積層体の製造装置を示す概略レイアウト図である。」
エ 「発明を実施するための形態
[0008]本着用物品において、好ましくは、前記外装不織布4の前記縦方向Yに延びる一対の側縁4Eに前記一対の立体カフ25が接合されている。
この場合、互いに分離された一対の立体カフ25,25が外装不織布4によって前記胴回り方向Xに連接される。
更に好ましくは、前記樹脂シート27は前記吸収性コア24の前記胴回り方向Xの縁部を覆っている。
この場合、前記樹脂シート27で覆われた前記吸収性コア24の縁部から体液が漏れるのを抑制し得る。」
オ 「[0010] 実施例1
以下、本発明の一実施例にかかる着用物品1の構造が図面にしたがって説明される。
図1~図6は実施例1を示す。
[0011] 図1および図2Aに示すように、本実施例の着用物品1は、吸収性本体2、前胴回り部材3Fおよび後胴回り部材3Bを備えている。前記吸収性本体2は、着用者の前胴を覆い胴回り方向Xに延びるフロント部(前胴回り部)20、着用者の後胴を覆い胴回り方向Xに延びるバック部(後胴回り部)21、ならびに、前記フロント部20とバック部21との間の着用者の股間を覆う股部22を有している。
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[0012] 前記股部22はフロント部20およびバック部21に連なり前記胴回り方向Xに直交する縦方向Yに延びる。前記吸収性本体2は股部22の一部又は全部を構成する。
[0013] 図2Aにおいて、着用時、前記股部22は前記胴回り方向Xに平行なラインにおいて2つに折られる。これにより、前記前胴回り部材3Fと前記後胴回り部材3Bの胴回り方向Xの端部同士が互いに重なる。
[0014] 図1に示すように、前記吸収性本体2には破線で示す吸収性コア24が設けられており、この吸収性コア24は体液を吸収する。
前記吸収性コア24は、トップシート26とバックシート(樹脂シート)27との間で挟まれていると共に、各シート26,27および吸収性コア24は互いに積層されてなる。
[0015] 図2Cにおいて、前記トップシート26は透液性の不織布からなり、吸収性コア24の肌面を覆う。このトップシート26の上には、一対の立体カフ25が設けられている。前記一対の立体カフ25はカフ25が着用者の肌に密着するための弾性部材F1(図1)を有し、これにより、前記吸収性本体2の肌面において着用者の股間に前記カフ25が接触して体液が着用物品から漏れるのを防止する。
[0016] 前記バックシート27は吸収性コア24の非肌面を覆い、液不透過性の樹脂シートからなる。この樹脂シートからなるバックシート27の非肌面には、図3または図7に示すような図柄、図形および/または文字がプリント(印刷)されていてもよい。又、図柄、図形および/または文字がプリントされたシート部材がバックシート27の非肌面に貼付けられてもよい。
[0017] 前記バックシート27の非肌面には図1に示す外装不織布4が接着されて積層されている。外装不織布4はバックシート27の一部を覆うものであるが、これについては後に詳述する。なお、着用物品1の構造を分かり易くするために、図1、図3および図7において外装不織布4の部位については網点のような模様を付している。
図2Cに示すように、前記立体カフ25は、前記外装不織布4の非肌面において前記外装不織布4の側縁4Eに接合されると共に、前記トップシート26の肌面における側縁26Eにおいて前記トップシート26に接合されていてもよい。
また、前記バックシート27の非肌面の少なくとも一部と前記立体カフ25の肌面の少なくとも一部とが互いに接合されていてもよい。
[0018] 図3において、前記吸収性本体2は前胴回り部材3Fと後胴回り部材3Bとの間に架設されている。前記吸収性本体2のフロント部20の前記縦方向Yの端部には、前記前胴回り部材3Fが貼り付けられ、重なり部23において吸収性本体2が前胴回り部材3Fの肌面に重なっている。一方、吸収性本体2のバック部21の前記縦方向Yの端部には、前記後胴回り部材3Bが貼り付けられ、重なり部23において吸収性本体2が後胴回り部材3Bの肌面に重なっている。」
「[0026] つぎに、本発明の要部について説明する。
図1に示すように、前記外装不織布4は前記バックシート27(樹脂シート)よりも前記胴回り方向Xに直交する縦方向Yの長さが短く、前記重なり部23の一部又は全部において前記バックシート27を前記外装不織布4が覆っていない非覆い部40が設けられている。すなわち、図2Aに示すように、前記バックシート27の縦方向Yの両縁において前記非覆い部40,40が設けられており、前記縦方向Yにおいて前記外装不織布4は前記非覆い部40,40の間に挟まれて配置されている。
・・・」

「[0043] 本発明は使い捨てのオムツおよびパンツに適用し得る。」

カ 「[図1]
[図:0001395590000004.jpg]
[図2]
[図:0001395590000005.jpg]
[図3]
[図:0001395590000006.jpg]
」

段落[0016]には「前記バックシート27は吸収性コア24の非肌面を覆い、液不透過性の樹脂シートからなる。」と記載され、段落[0017]には「前記バックシート27の非肌面には図1に示す外装不織布4が接着されて積層されている。」と記載されているから、液不透過性の樹脂シートからなるバックシート27と外装不織布4とは積層されているといえる。

図1から、液不透過性の樹脂シートからなるバックシート27が、吸収性本体2の全長に広がっていることが看取できる。そして、段落[0018]には、吸収性本体2と前胴回り部材3Fとは重なり部において重なっていることが記載されており、吸収性本体2と後胴回り部材3Bとは重なり部において重なっていることが記載されている。すると、液不透過性の樹脂シートからなるバックシート27と前胴回り部材3Fとは重なり部において重なっているといえ、液不透過性の樹脂シートからなるバックシート27と後胴回り部材3Bとは重なり部において重なっているといえる。また、液不透過性の樹脂シートからなるバックシート27は、前胴回り部材3Fと後胴回り部材3Bの間に配置された吸収性本体2の全長に広がっているといえる。

段落[0006]、[0026]には、重なり部23の一部または全部において、外装不織布4がバックシート27を覆っていない非覆い部が設けられていること、外装不織布は非覆い部の間に挟まれていることが記載されている。当該記載を踏まえて図3を参照すると、図3から、バックシート27と前胴回り部材3Fとの重なり部の一部において外装不織布4がバックシート27を覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布4の一部は前胴回り部材3Fと重なっており、バックシート27と後胴回り部材3Bとの重なり部の一部において外装不織布4がバックシート27を覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布4の一部が後胴回り部材3Bと重なっており、外装不織布4が、縦方向において、前胴回り部材と後胴回り部材との間に配置された吸収性本体2の部分の全長に広がっていることが看取できる。

図1~3に示される使い捨て着用物品は、完全に開かれ、平らに広げられた状態であることは明らかである。そして、段落[0005]には「胴回り方向X」、「胴回り方向Xに直交する縦方向Y」との記載があり、図1~3の図中にはX、Yの方向を示す符号が記載されており、ともに図示される使い捨て着用物品と平行となっている。そうすると、胴回り方向または縦方向の長さは、使い捨て着用物品が、完全に開かれ、平らに広げられた状態におけるものである。

段落[0016]には、「この樹脂シートからなるバックシート27の非肌面には、図3または図7に示すような図柄、図形および/または文字がプリント(印刷)されていてもよい」と記載されている。また段落[0010]には図1~図6は実施例1を示すことが記載されている。当該記載を踏まえて図3を参照すると、図3は、実施例1について、バックシートの非肌面に、図柄がプリント(印刷)されたものであるといえる。

また、段落[0006]に「前記樹脂シート27の非肌面側に図柄を有する場合、前記外装不織布4が前記樹脂シート27を覆っていない前記非覆い部40におけるシートの枚数が少なくなる。したがって、着用物品の着用時に外部から見て前記図柄を視認し易い。」との記載を踏まえると、図3に示される図柄は、外装不織布4が、前記バックシート27を覆っていない前記非覆い部40に位置することを示すものであるといえる。

また、図3には、当該図柄が、バックシートと前胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部と、バックシートと後胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部とに位置していることが示されているといえる。

よって、図1~6に示される実施例1に注目すると、引用文献2には、以下の引用発明2が記載されていると認められる。

<引用発明2>

使い捨て着用物品であって、

前胴回り部材と、後胴回り部材と、

前胴回り部材と後胴回り部材との間に架設され、重なり部において前胴回り部材の肌面に重なり、重なり部において後胴回り部材の肌面に重なり、着用者の股間を覆う吸収性本体と、

吸収性本体が、

トップシートと、

液不透過性の樹脂シートからなるバックシートと、

トップシートとバックシートとの間で挟まれている吸収性コアと、

を備え、

バックシートの非肌面には図柄が印刷されており、

バックシートと、バックシートの非肌面を覆う外装不織布とが接着されて積層されており、

バックシートが、胴回り方向に直交する縦方向において、前胴回り部材と後胴回り部材の間に配置された吸収性本体の全長に広がり、バックシートが、前胴回り部材と重なり部において重なり、後胴回り部材と重なり部において重なり、バックシートが縦方向に吸収性本体の全長に広がり、

外装不織布は、縦方向に、前胴回り部材と後胴回り部材との間に配置された吸収性本体の全長に広がり、

バックシートと前胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布の一部は前胴回り部材と重なっており、バックシートと後胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布の一部が後胴回り部材と重なっており、

胴回り方向または縦方向の長さは、使い捨て着用物品が、完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係するものであり、

バックシートの非肌面に印刷された図柄は、バックシートと前胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部と、バックシートと後胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部に位置している、

使い捨て着用物品。

2.引用発明1を主引用発明とする進歩性の理由について

(1) 本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「パンツ型紙おむつ」は、パンツ型紙おむつは着用されるものであるし通常使い捨てされるものであるから、本願発明1の「着用使い捨て吸収性物品」に相当する。

引用発明1の「腹側外装シート」は、本願発明1の「フロントパネル」に相当する。

引用発明1の「背側外装シート」は、本願発明1の「バックパネル」に相当する。

引用発明1の「吸収性本体」は、本願発明1の「股下パネル」に相当する。

引用発明1の「腹側と背側とを結ぶ方向」である「前後方向」は、本願発明1の「フロントパネルからバックパネルに向かう方向」に相当する。

引用発明1の「吸収要素」は、本願発明1の「吸収性コア」に相当する。

引用発明1の「液不透過性シート」は、本願発明1の「液体バリアシート」に相当する。

引用発明1の「スパンボンド不織布等の各種不織布からなる股間部外装シート」は、本願発明1の「不織布層(26)」に相当する。

引用発明1の「パンツ型紙おむつの前後方向長さ及び幅方向の寸法は展開状態で平面にされた状態に関係しており」は、本件発明1の「前記着用使い捨て吸収性物品(10)に与えられる相対的寸法は、前記着用使い捨て吸収性物品(10)の完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係しており、」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1-1~1-4で相違する。

<一致点1>

着用使い捨て吸収性物品であって、

フロントパネルと、

バックパネルと、

前記フロントパネルおよび前記バックパネルをつなぎ、前記フロントパネルおよび前記バックパネルに少なくとも部分的に重なる股下パネルと

を含み、

前記股下パネルが、

トップシートと、

液体バリアシートと、不織布層と、

吸収性コアとを含み、

前記不織布層が、前記股下パネルの外側に配置され、着用されるとき、前記着用使い捨て吸収性物品の着用者から外方に向き、

前記液体バリアシートが、前記フロントパネルから前記バックパネルに向かう方向に、前記フロントパネルと前記バックパネルとの間に配置された前記股下パネルの部分の全長に広がり、前記液体バリアシートが、前記フロントパネルの少なくとも一部分に、および前記バックパネルの少なくとも一部分にさらに広がり、

前記不織布層が、前記フロントパネルから前記バックパネルに向かう方向に、前記フロントパネルと前記バックパネルとの間に配置された前記股下パネルの部分の全長に少なくとも広がり、

前記着用使い捨て吸収性物品に与えられる相対的寸法は、前記着用使い捨て吸収性物品の完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係している、

着用使い捨て吸収性物品。

<相違点1-1>

本願発明1が「前記トップシート(18)と前記バックシート(20)との間に設けられた吸収性コア(22)とを含み、前記バックシート(20)が、重なり合って配置された液体バリアシート(24)と、不織布層(26)とを含む積層構造を有」するのに対し、

引用発明1は、「吸収要素の裏面側には液不透過性シートが設けられ、この液不透過性シートの裏面側にはスパンボンド不織布等の各種不織布からなる股間部外装シートが設けられ」たものである点。

<相違点1-2>

本願発明1が「前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記フロントパネル(12)に広がらず、

前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記バックパネル(14)に広がらず」、

「前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記不織布層(26)の長さが、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記液体バリアシート(24)の長さの40%~70%の範囲内であ」るのに対し、

引用発明1においては、「股間部外装シートの前端部と腹側外装シートの下端部とが前後方向の重なり代を有し、

股間部外装シートの後端部と背側外装シートの上端部とが前後方向の重なり代を有し、」であり、股間部外装シートと腹側外装シート及び背側外装シートの重なる部分が40mmを超えないか特定されておらず、前後方向における股間部外装シートの長さが、前後方向における液不透過性シートの40%~70%であるかも不明である点。

<相違点1-3>

本願発明1が「前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記不織布層(26)の幅が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記液体バリアシート(24)の幅よりも小さ」いのに対し、

引用発明1においては、前後方向と直交する方向である幅方向において、股間部外装シートの幅が液不透過性シートの幅より小さいとは特定されていない点。

<相違点1-4>

本願発明1が「前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない」のに対し、 引用発明1においては、液不透過性シートが印刷エリアを有するか特定されていない点。

(2) 各相違点について検討する。

ア 相違点1-1について検討する。

(ア) まず、「重なり合って配置された液体バリアシート(24)と、不織布層(26)とを含む積層構造」の「積層構造」の本願発明1における意味について検討する。

本願発明1の「重なり合って配置された液体バリアシート(24)と、不織布層(26)とを含む積層構造」との記載では、当該積層構造について液体バリアシートと不織布層とが「重なり合って配置された」ものであるとの発明特定がされているのみである。

そして、発明の詳細な説明を参酌すると、「積層構造」について、段落【0069】には「バックシート20は、重なり合って配置された、液体バリアシート24と、不織布層26とを含む積層構造を有する」と記載されている。

(イ) そうすると、引用発明1において、液不透過性シートの裏面側に股間部外装シートが設けられており、液不透過性シートと股間部外装シートとは重なり合って配置された構造をなしているから、液不透過性シートと股間部外装シートとは積層構造であるといえる。

また、引用発明1の吸収性本体は、使用面側から順に、液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシートと、吸収要素とを備え、吸収要素の裏面側にはプラスチックシートなどからなる液不透過性シートが設けられ、この液不透過性シートの裏面側には股間部外装シートが設けられるものである。すなわち、液不透過性シートと股間部外装シートとは共に、吸収要素を挟んでトップシートと対向して吸収性本体の裏面側にあるシートである。してみると、トップシートと対向し裏面側にある液不透過性シートと股間部外装シートをもって、バックシートとすることは当業者にとって容易である。

イ 相違点1-2について検討する。

引用文献1の段落【0039】には「特に、股間部外装シート12Mの前端部と腹側外装シート12Fの下端部との前後方向の重なり代X、及び股間部外装シート12Mの後端部と背側外装シート12Bの下端部との前後方向の重なり代は、例えばそれぞれ0~100mmとすることができ、0~50mmであるとより好ましく、0~30mmであると特に好ましい。これらの重なり代が過度に大きくなると、胴回り部の通気性の低下を防止し難くなる。」と記載されている。

ここに開示される重なり代の値を考慮すれば、引用発明1において、股間部外装シートの前端部と腹側外装シートの下端部との前後方向の重なり代として、40mmを超える長さにならない値を採用すること、股間部外装シートの後端部と背側外装シートの上端部との前後方向の重なり代として、40mmを超える長さにならない値を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、この際に、前後方向における股間部外装シートの長さを、前後方向における液不透過性シートの40%~70%とすることも、次に述べるように当業者が適宜なし得た事項である。

本願発明1の「40%~70%」の下限の「40%」、上限の「70%」について本願明細書には特に記載はなく、それぞれ、人の体の大きさやシートとシートの重なり代の大きさ等により決まるものといえる。この点、本願発明1のフロントパネル、バックパネル、股下パネルの相対的寸法、引用発明1の腹側外装シート、背側外装シート、吸収性本体の相対的寸法は着用に適するようにそれぞれ決定されるものと解され、両者はおおよそ同様のものとなると解される。特に、本願発明1の股下パネルの長さと、引用発明1の吸収性本体の長さは、着用に適した長さを考慮すれば、同等のものになると解される。

そのような事情を考慮すれば、引用発明1においても、股間部外装シートの前端部と腹側外装シートの下端部との前後方向の重なり代、股間部外装シートの後端部と背側外装シートの上端部との前後方向の重なり代とを40mmを超えないようなものとした際には、前後方向における股間部外装シートの長さは、前後方向における液不透過性シートに対し、本願発明1の「40%~70%」と大きく異ならないものといえる。

さらに、これらの数値を採用することにより、当該数値範囲において臨界的といえるような効果があるものとはいえないし、異質な効果が生じるものともいえない。

よって、本願発明1の上記相違点1-2に係る構成は、引用発明1から容易に想到し得るものである。

ウ 相違点1-3について検討する。

引用文献1の段落【0040】には、「図8及び図9に示すように、股間部外装シート12Mにおける前後方向の全部(一部でも良い)を、吸収性本体20よりも幅狭に形成することができる。股間部外装シート12Mの幅を吸収性本体20に対してどの程度狭くするかは適宜定めることができるが、例えば10~60mm程度狭くすることができる。この場合、素材コストを低く抑えることができるとともに、股間部における通気性も向上する。」と記載されている。

段落【0040】には、股間部外装シートを吸収性本体に対して幅狭にすることが記載されているのみで、股間部外装シートと液不透過性シートとの幅の関係を明示的に示すものではない。しかし、液不透過性シートはトップシートとの間に吸収体を介在させるシートであって、吸収性本体から液が漏れないようにするものであり、図9にも示されるように、液不透過性シートの幅は吸収性本体の幅と同等と解されることから、股間部外装シートを吸収性本体よりも幅狭とした際には、股間部外装シートは、液不透過性シートよりも幅狭になるものといえる。

すると、当該段落【0040】、図8~9の記載に接した当業者が、引用発明1において、股間部外装シートを液不透過性シートよりも幅狭とすること、すなわち、股間部外装シートの幅を液不透過性シートの幅より小さいものとすることは、容易になし得たことである。

エ 相違点1-4について検討する。

(ア) 引用文献1の段落【0031】には、「液不透過性シートの内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。」と記載されている。

当該記載をよると、引用発明1において、液不透過性シートの外面に印刷エリアを設けることの動機付けがあり、この際、印刷エリアの位置として、着用時等に見えやすい位置である、液不透過性シートのうち腹側外装シート又は背側外装シートと重なり、股間部外装シートが広がらない箇所を選択することは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ) 請求人は、令和4年8月5日に提出された意見書において、

「引用文献1の段落0038には、(審判官殿が本願請求項1発明に係る不織布層に相当すると認定した)股間部外装シート12Mは、デザイン要素を施すために印刷または着色され得ることが教示されています。さらに、引用文献1の段落0031、0038を参酌すると、引用文献1には、印刷または着色を施したデザインシートの使用の可能性に言及があります。しかしながら、引用文献1には、補正後の本願請求項1に係る発明の「前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない」という構成要件に当業者を導くヒントや示唆は存在しません。」(第3ページ第11行~第19行)

と主張している。

しかし、引用文献1の段落【0031】には、「液不透過性シートの内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シートの外側に、股間部外装シートとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。」と記載され、同じく段落【0038】には「股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。」と記載されており、液不透過性シートに設けられるデザインシートは股間部外装シートのデザインと重ならないように配置されるのだから、股間部外装シートのない腹側外装シート又は背側外装シートと重なる液不透過性シートの部分にデザインを設けることが示唆されている。

よって請求人の主張は採用できない。

(3)以上より、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.引用発明2を主引用発明とする進歩性に係る理由について

(1)本願発明1と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「使い捨て着用物品」は、使い捨て着用物品であるとともに吸収性本体を含むものであるから、本願発明1の「着用使い捨て吸収物品」に相当する。

引用発明2の「前胴回り部材」は、本願発明1の「フロントパネル」に、引用発明2の「後胴回り部材」は、本願発明1の「バックパネル」に、それぞれ相当する。

引用発明2の「吸収性本体」と、本願発明1の「股下パネル」とは、「前胴回り部材」及び「後胴回り部材」をつなぐものであるから、引用発明2の「吸収性本体」は、本願発明1の「股下パネル」に相当する。

引用発明2の「トップシート」は、本願発明1の「トップシート」に相当する。

引用発明2の「吸収性コア」は、本願発明1の「吸収性コア」に相当する。

引用発明2の「液不透過性の樹脂シートからなるバックシート」は、本願発明1の「液体バリアシート」に相当する。

引用発明2の「外装不織布」は、本願発明1の「不織布層」に相当する。

引用発明2の「液不透過性の樹脂シートからなるバックシート」と「外装不織布」は、「接着されて積層されて」いるから、これらが積層されたものは、本願発明1の「重なり合って配置された液体バリアシート(24)と不織布層(26)とを含む積層構造を有」する「バックシート(20)」に相当する。

引用発明2の「胴回り方向に直交する縦方向」は、本願発明1の「前記フロントパネルからバックパネルに向かう方向」に相当する。

引用発明2の「胴回り方向」は、本願発明1の「前記フロントパネルから前記バックパネルに向かう方向に対して垂直な方向」に相当する。

引用発明2の「バックシートの非肌面に印刷された図柄」は、液不透過性の樹脂シートからなるバックシートと前胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部と、バックシートと後胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部に位置するものであるから、本願発明1の液体バリアシートが「前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に」有する「1つまたは複数の印刷エリア」に相当する。

引用発明2の「胴回り方向または縦方向の長さは、使い捨て着用物品が、完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係するものであり」は、本願発明1の「前記着用使い捨て吸収性物品(10)に与えられる相対的寸法は、前記着用使い捨て吸収性物品(10)の完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係しており」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明2とは、以下に示す一致点2で一致し、相違点2-1~2-4で相違する。

<一致点2>

着用使い捨て吸収性物品であって、

フロントパネルと、

バックパネルと、

前記フロントパネルおよび前記バックパネルをつなぎ、前記フロントパネルおよび前記バックパネルに少なくとも部分的に重なる股下パネルと、

を含み、

前記股下パネルが、

トップシートと、

バックシートと、

前記トップシート(18)と前記バックシート(20)との間に設けられた吸収性コア(22)とを含み、

前記バックシート(20)が、重なり合って配置された液体バリアシート(24)と、不織布層(26)とを含む積層構造を有し、

前記不織布層が、前記股下パネルの外側に配置され、着用されるとき、前記着用使い捨て吸収性物品の着用者から外方に向き、

前記液体バリアシートが、前記フロントパネルから前記バックパネルに向かう方向に、前記フロントパネルと前記バックパネルとの間に配置された前記股下パネルの部分の全長に広がり、前記液体バリアシートが、前記フロントパネルの少なくとも一部分に、および前記バックパネルの少なくとも一部分にさらに広がり、

前記不織布層が、前記フロントパネルから前記バックパネルに向かう方向に、前記フロントパネルと前記バックパネルとの間に配置された前記股下パネルの部分の全長に少なくとも広がり、

前記着用使い捨て吸収性物品に与えられる相対的寸法は、前記着用使い捨て吸収性物品の完全に開かれ、平らに広げられた状態に関係している、

着用使い捨て吸収性物品。

<相違点2-1>

本願発明1が「前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記フロントパネル(12)に広がらず、

前記不織布層(26)が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に、40mmを超える長さにわたって前記バックパネル(14)に広がらず」、

「前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記不織布層(26)の長さが、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向における、前記液体バリアシート(24)の長さの40%~70%の範囲内であ」るのに対し、

引用発明2においては、「バックシートと前胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布の一部は前胴回り部材と重なっており、バックシートと後胴回り部材との重なり部の一部において外装不織布がバックシートを覆っていない非覆い部が設けられるとともに外装不織布の一部が後胴回り部材と重なっており」であり、外装不織布が縦方向に40mmを超える長さにわたって前胴回り部材及び後胴回り部材に広がらないかは不明であり、外装不織布の長さが液不透過性の樹脂シートの長さの40%~70%の範囲内であるかも不明である点。

<相違点2-2>

本願発明1が「前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記不織布層(26)の幅が、前記フロントパネル(12)から前記バックパネル(14)に向かう方向に対して垂直な方向における、前記液体バリアシート(24)の幅よりも小さ」いのに対し、引用発明2においては、胴回り方向における、外装不織布の幅が、胴回り方向における液不透過性の樹脂シートの幅よりも小さいか不明である点。

<相違点2-3>

本願発明1は「前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない」のに対し、引用発明2は、外装不織布が液不透過性の樹脂シートを覆っていない非覆い部に「バックシートの非肌面に印刷された図柄」を有するものの、外装不織布が図柄まで広がらないといえるか不明である点。

(2)上記各相違点について検討する。

ア 相違点2-1について検討する。

本願発明1の「40mmを超える長さにわたって・・・広がらず」との発明特定事項に関し、本願の発明の詳細な説明の段落【0015】には「フロントおよびバックパネルには大きい印刷可能エリアがあり、優れた視認性のある、明瞭で鮮明な印刷を可能にする。さらに、これらの印刷可能エリアを設けるために不織布材料の部分を裁断する必要はなく、材料ロスを最小限にとどめることができる。このようにして、製造コストは最小限に抑えられる。」と記載されている。また、本願発明1の「40%~70%」の下限の「40%」、上限の「70%」について本願明細書には特に記載はなく、それぞれ、人の体の大きさやシートとシートの重なり代の大きさ等により決まるものといえる。

一方、引用文献2の段落[0006]には、

「本発明によれば、外装不織布4の縦方向Yの長さが樹脂シート27の前記縦方向Yの長さよりも短く、したがって、材料コストのダウンを図り得ると共に、胴回り域のゴワツキを防止し得る。
また、前記樹脂シート27の非肌面側に図柄を有する場合、前記外装不織布4が前記樹脂シート27を覆っていない前記非覆い部40におけるシートの枚数が少なくなる。したがって、着用物品の着用時に外部から見て前記図柄を視認し易い。」

と記載されている。

すなわち、引用発明2において縦方向の外装不織布の長さを縦方向の液不透過性の樹脂シートの長さよりも短くし、非覆い部を設けることは、材料を節約することによるコストダウン、胴回り域のゴワツキの防止、図柄を視認しやすくするといった課題、効果を得るためのものである。

また、本願発明1のフロントパネル、バックパネル、股下パネルの相対的寸法、引用発明2の前胴回り部材、後胴回り部材、吸収性本体の相対的寸法は着用に適するようにそれぞれ決定されるものと解され、両者はおおよそ同様のものとなると解される。特に、本願発明1の股下パネルの長さと、引用発明2の吸収性本体の長さも、着用に適した長さを考慮すれば、同等のものになると解される。

すると、以上の課題、効果を考慮して外装不織布を短くし、非覆い部を設ける際には、外装不織布が縦方向に40mmを超える長さにわたって前胴回り部材に広がらないようにすること、外装不織布が縦方向に40mmを超える長さにわたって後胴回り部材に広がらないようにすること、外装不織布の長さが液不透過性の樹脂シートの長さの40%~70%の範囲内とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2-2について検討する。

(ア) 引用発明2の外装不織布と、上記引用文献1に記載された事項の股間部外装シートは吸収性本体を覆う外装のためのシートであるという点で共通する。そして、引用文献2には、段落[0006]などに外装不織布を縦方向において短くすることでコストダウンを図るという技術思想も既に開示されている。すると、引用文献1に記載された事項を参酌し、引用発明2において、さらに材料を節約し、コストダウンをはかること、股間部における通気性を向上させることを考慮し、胴回り方向において外装不織布の幅を短くし、胴回り方向における液不透過性の樹脂シートの幅よりも小さいものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ) 相違点2-2に関連して、請求人は令和4年8月5日に提出された意見書において、

「審判官殿は本願請求項に係る発明について、引例文献1に引例文献2を組み合わせることによって容易に想到し得ると主張されるが、引用文献2は「不織布層の幅が、液体バリアシートの幅より小さい」という本願請求項1に係る発明の特徴を開示していません。審判官殿は「不織布層の幅が、液体バリアシートの幅より小さい」という本願請求項1に係る発明の特徴について、引用文献1から当業者が適宜になし得た事項であると判断されたが、これは後知恵の判断によるものです。引用文献1、2のいずれにも、当業者が「不織布層の幅が、液体バリアシートの幅より小さい」という本願請求項1に係る発明の特徴を構成するように引用文献1、2の開示を組み合わせるよう促すようなヒントや示唆が存在しません。」(第4ページ第4行~第12行)と主張している。

しかし、上記(ア)に示したように、引用発明2と引用文献1に記載された事項とは、ともに吸収性本体を覆う外装のためのシートに関するものであり、引用文献1に記載された事項は、当該外装のためのシートの幅を小さくすることにより「素材コストを低く抑えることができるとともに、股間部における通気性を向上させることができる」という効果を奏することも開示しており、当該効果は組み合わせのための動機となることができる。

すると、両者を組み合わせることは容易になし得たことといえる。

ウ 相違点2-3について検討する。

(ア)引用発明2は、外装不織布が液不透過性の樹脂シートを覆っていない非覆い部に「バックシートの非肌面に印刷された図柄」を有しており、当該非覆い部までは外装不織布は広がっていないから、外装不織布は図柄まで広がらないといえる。

すると、相違点2-3は実質的な相違点ではない。

(イ)請求人は、令和4年8月5日に提出された意見書において「この単に概略的な引用文献2の図3が、補正後の本願請求項1に係る発明の「前記液体バリアシートは、前記フロントパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分、および/または前記バックパネルと重なる前記液体バリアシートの一部分に、1つまたは複数の印刷エリアを有し、前記不織布層は、前記1つまたは複数の印刷エリアまで広がらない」という構成要件を開示しているとは考えられません。特に、(審判官殿が本願請求項1発明に係る不織布層に相当すると認定した)不織布4の下には、不織布4によって覆われたさらなるテディベア(および/または他の印刷パターン)が存在可能です。」(第4ページ第1行~第3行)といった点を相違する点として主張している。

しかし、引用文献2の段落[0006]には「前記樹脂シート27の非肌面側に図柄を有する場合、前記外装不織布4が前記樹脂シート27を覆っていない前記非覆い部40におけるシートの枚数が少なくなる。したがって、着用物品の着用時に外部から見て前記図柄を視認し易い。」と記載されており、引用文献2においては、樹脂シートの外装不織布に覆われた領域は仮に図柄を設けても外装不織布があることによって図柄が視認しにくい領域であると解されているといえる。

また、段落[0005]の記載、図3に示される形状から把握されるように、引用文献2に開示される吸収性本体の外装不織布は、使い捨て着用物品が着用者に着用された際には着用者の股間に配置されるものである。すると、外装不織布に覆われた領域は、着用時には脚部に挟まれて下方を向くものであるから、図柄が仮にあったとしても視認するのに有利な領域とはいえない。

これらの事情を考慮すれば、引用発明2において、視認するのに有利な位置に図柄の位置を限定して、外装不織布に覆われている液不透過性の樹脂シートには図柄を設けないものとし、外装不織布が図柄まで広がらないものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)以上より、本願発明1は、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用発明1、または、引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-003155

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