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特許拒絶査定不服審判

2024-004205

眼科用合成グラフトパッチ

審判番号
2024-004205
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-567568外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年03月11日
審決日
2026年03月17日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (A61F) / P18 .121-WZ (A61F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-567568「眼科用合成グラフトパッチ」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年12月12日国際公開、WO2019/234741、令和 3年10月11日国内公表、特表2021-526871〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和 元年) 6月 5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年 6月 5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。 令和 5年 5月29日付け:拒絶理由通知 令和 5年11月 6日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 6年 1月12日付け:拒絶査定 令和 6年 3月11日 :審判請求書及び手続補正書の提出 令和 7年 5月21日付け:拒絶理由通知 令和 7年11月14日 :意見書及び手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~10に係る発明は、令和 7年11月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 眼組織の組織再建及び/又は組織再生のために移植される、生分解性人工組織代替物である眼科用合成グラフトパッチであって、 前記眼科用合成グラフトパッチの全体が、生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され、生分解性でない材料及び多孔性でない材料を含まない、5μm未満の細孔を有する多孔性重合構造を有することを特徴とする眼科用合成グラフトパッチ。」 第3 当審の拒絶理由 令和 7年 5月21日付けで当審が通知した拒絶理由通知は、以下の拒絶の理由を含むものである。 理由2:本願発明は、その優先日前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された周知技術に基いて、その優先日より前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特表2013-530792号公報 2.国際公開第2016/199139号 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献2の記載事項及び引用発明 (1)引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。なお、訳は、引用文献2の日本語ファミリーである特表2018-521734号公報を参考に当審で作成した。 ア「The term "peripheral skirt" should be understood to encompass the part of the keratoprosthesis of the invention that surrounds substantially all the perimeter of the central optical core of the assembly. Said skirt comprises at least one porous biocompatible layer as defined herein above and below. In some embodiments, said peripheral skirt is extended towards the conjunctiva of the eye. In further embodiments, said peripheral skirt is formed in a manner that enables placing it under the conjunctiva of the eye. Placing of the skirt beneath the conjunctiva is performed after dissecting the conjunctiva from its limbal anchorage (this procedure is termed peritomy) and elevating it so to create a space to accommodate the said skirt.」(第5頁第1行~第9行) (訳:「周辺スカート」という用語は、アセンブリの中心光学コアの実質的に全ての周囲を取り囲む、本発明の人工角膜の一部を包含すると理解されたい。前記スカートは、本明細書の上記及び下記で定義される少なくとも1つの多孔質生体適合性層を含む。 いくつかの実施形態では、前記周辺スカートは、目の結膜に向かって延在する。更なる実施形態では、前記周辺スカートは、目の結膜の下に配置することを可能にするように形成される。スカートを結膜の下に配置することは、結膜をその角膜縁の固定から切開すること(この方法は、ペリトミーと呼ばれる)、及び、前記周辺スカートを収容する空間を作り出すべく切開した角膜を持ち上げることの後に行われる。) イ「The term "porous biocompatible layer" should be understood to encompass any type of layer (or film) formed from material that has the ability to perform its desired function with respect to a medical therapy (i.e. keratoprosthesis), without eliciting any undesirable local or systemic effects in the recipient or beneficiary of that therapy, but generating the most appropriate beneficial cellular or tissue response in that specific situation, and optimizing the clinically relevant performance of that therapy. The biocompatible layer of the skirt of the assembly of the invention allows the implanted artificial cornea to exist in harmony with tissue it is in contact with without causing deleterious changes. The layer is porous, having pore size of at least at least about 2 μm (when referring to pore size it should be understood to relate to the average pore sizes). In some embodiments, said porous biocompatible layer is a fibrous porous biocompatible layer (i.e. the layer or film is formed of fibers), having pore size of at least about 2 μm. In some embodiments, at least one porous biocompatible layer has pores of between about 2 μm. to about 100 μm in width. In other embodiments, said at least one porous biocompatible layer is a polymeric layer. Thus, under this embodiment, the layer or film of the skirt is made of at least one polymer material.」(第5頁第21行~第6頁第10行) (訳:「多孔質生体適合性層」という用語は、医学療法(すなわち、人工角膜移植)に関して所望の機能を果たす能力を有する材料から形成され、その治療のレシピエントすなわち受益者に、望ましくない局所的または全身的な影響を誘発することなく、その特定の状況において最も適切で有益な細胞応答すなわち組織応答を生成し、その治療の臨床的に関連する性能を最適化する、任意のタイプの層(またはフィルム)を包含すると理解されたい。本発明のアセンブリのスカートの生体適合性層により移植された人工角膜は、有害な変化を引き起こすことなく、接触している組織と調和して存在することができる。層は多孔性であり、少なくとも約2μmの孔径を少なくとも有する(孔径については、平均孔径に関すると理解されたい)。 いくつかの実施形態では、前記多孔質生体適合性層は、少なくとも約2μmの孔径を有する繊維状の多孔質生体適合性層(すなわち、層またはフィルムは繊維で形成される)である。 いくつかの実施形態では、少なくとも1つの多孔質生体適合性層は、幅が約2μm~約100μmの間である孔を有する。 他の実施形態では、前記多孔質生体適合性層は、ポリマー層である。したがって、この実施形態の下では、スカートの層またはフィルムは、少なくとも1つのポリマー材料で製造される。) ウ「In further embodiments, said at least one porous biocompatible layer comprises poly(DTE carbonate) polycaprolactone (PCL), polylactic acid (PLA), poly-L-lactic acid (PLLA), Poly(DL-lactide-co-caprolactonc, Poly(ethylcne-co-vinyl acetate) vinyl acetate, Poly(methyl methacrylate), Poly(propylene carbonate), Poly(vinylidene fluoride), Polyacrylonitrile, Polycaprolactone, Polycarbomethylsilane, Polylactic acid, Polystyrene, Polyvinylpyrrolidone, poly vinyl alcohol (PVA), polyethylene oxide (PEO), polyurethane, polyvinyl chloride (PVC), hyaluronic acid (HA), chitosan, alginate, polyhydroxybuyrate and its copolymers, Nylon 11, Cellulose acetate, hydroxyappetite, poly(3-hydroxybutyric acid-co-3-hydroxyvaleric acid), poly(DL-lactide), polycaprolactone, and poly(L-lactide) or any combination thereof. In some further embodiments, said porous biocompatible layer comprises electrospun nanofibers. In another embodiment, said at least one porous biocompatible layer is formed by electrospinning process.」(第6頁第21行~第7頁第6行) (訳:更なる実施形態では、前記少なくとも1つの多孔質生体適合性層は、ポリ(DTEカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ(DL-ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)ビニルアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクトン、ポリカルボメチルシラン、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ヒアルロン酸(HA)、キトサン、アルギン酸塩、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマー、ナイロン11、酢酸セルロース、ヒドロキシアパタイト、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(DL-ラクチド)、ポリカプロラクトン、及びポリ(L-ラクチド)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。 いくつかの更なる実施形態では、前記多孔質生体適合性層は、電界紡糸ナノファイバを含む。別の実施形態では、前記少なくとも1つの多孔質生体適合性層は、電界紡糸プロセスによって形成される。) エ「Biocompatible polymers which may be applied in an electrospinning process include but are not limited to poly(DTE carbonate) polycaprolactone (PCL), polylactic acid (PLA), poly-L-lactic acid (PLLA), Poly(DL-lactide-co-caprolactone, Poly(ethylene- co-vinyl acetate) vinyl acetate, Poly(methyl methacrylate), Poly(propylene carbonate), Poly(vinylidene fluoride), Polyacrylonittile, Polycaprolactone, Polycarbomethylsilane, Polylactic acid, Polystyrene, Polyvinylpyrrolidone, poly vinyl alcohol (PVA), polyethylene oxide (PEO), polyvinyl chloride (PVC), hyaluronic acid (HA), chitosan, alginate, polyhydroxybuyrate and its copolymers, Nylon 11, Cellulose acetate, hydroxyappetite, or any combination thereof. Biodegradable and biocompatible polymers include but are not limited to poly(3-hydroxybutyric acid-co-3-hydroxyvaleric acid), poly(DL-lactide), poly urethane, polycaprolactone, and poly(L-lactide) or any combination thereof.」(第7頁第28行~第8頁第10行) (訳:電界紡糸プロセスが適用され得る生体適合性ポリマーは、以下に限定されないが、ポリ(DTEカーボネート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ(DL-ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)ビニルアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクトン、ポリカルボメチルシラン、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ヒアルロン酸(HA)、キトサン、アルギン酸塩、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマー、ナイロン11、酢酸セルロース、ヒドロキシアパタイト、またはそれらの任意の組み合わせを含む。生分解性かつ生体適合性のポリマーは、以下に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(DL-ラクチド)、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、およびポリ(L-ラクチド)またはそれらの任意の組み合わせを含む。) オ「Electrospun nanofibers could also be directly deposited on various objects to obtain nanofiber-based constructs with well-defined and controllable shapes. In addition, one can manually process membranes of aligned or randomly oriented nanofibers into various types of constructs after electrospinning: for example, fabrication of a tube by rolling up a fibrous membrane or the preparation of discs with controllable diameters by punching a fibrous membrane.」(第9頁第6行~第11行) (訳:電界紡糸ナノファイバは、種々の物体上に直接堆積されることにより、明確かつ制御可能な形状を有するナノファイバベースの構造を得ることもできる。加えて、電界紡糸後、整列した、またはランダムに配向したナノファイバの膜を手作業で様々なタイプの構造に処理することもできる。例えば、繊維状の膜を巻き上げることによるチューブの製造、または繊維状の膜を打ち抜くことによって調節可能な直径を有するディスクの調整が可能である。 カ「Fig.4B shows an exemplary central optical core (400) with the peripheral skirt (404). The skirt is positioned subconjunctively and integrates with the conjunctiva, including through at least one hole and arcs 403 cut into the optical element. The skirt is made from electrospun polymer which is biocompatible and stimulates cell growth. The biocompatible porous fibrous material of the Scaffold for cellular proliferation enabling biointegration.」(第12頁第24行~第29行) (訳:図4Bは、周辺スカート404を有する例示的な中心光学コア400を示す。周辺スカートは結膜下に配置され、少なくとも1つの孔403、及び光学要素に切り込まれた中空アーチによって結膜と一体化する。周辺スカートは、電界紡糸ポリマーから製造され、生体適合性で細胞増殖を刺激する。細胞増殖のための足場となる生体適合性多孔質繊維材料によって、バイオインテグレーションを可能にする。) キ 図4B「 [図:0001437699000001.jpg] 」 ク 上記イの記載を踏まえると、「多孔質生体適合性層」は、生体適合性を備えた「ポリマー層」である。また、上記ウ、エの記載を踏まえると、「多孔質生体適合性層」は、「電界紡糸プロセスによって形成され」、「電界紡糸プロセスが適用され得る生体適合性ポリマー」として「ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(DL-ラクチド)、ポリカプロラクトン、及びポリ(L-ラクチド)、またはそれらの任意の組み合わせを含む」「生分解性かつ生体適合性のポリマー」が記載されているから、「多孔質生体適合性層」には、生体適合性だけでなく生分解性も備えた「生分解性かつ生体適合性のポリマー」が含まれる。 (2)引用発明 上記(1)ア~クから、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「人工角膜の一部を包含し、中心光学コアの周囲を取り囲み、目の結膜の下に配置することを可能にするように形成される周辺スカートであって、 ポリマー層である多孔質生体適合性層を含み、 多孔質生体適合性層は、少なくとも約2μmの孔径を有し、生分解性かつ生体適合性のポリマーを含む 周辺スカート。」 2 周知技術を示す文献の記載事項 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、「・・・」は省略を示す(以下同様)。 ア「【0051】 細胞療法、疾患を治療するために新規細胞を組織中に導入することは、病変した組織を修復する、または健常な組織と交換するための可能性ある方法に相当する。多数のアプローチは、標的組織への細胞(例えば、幹細胞)の投与を含み、これは、移植された(または埋め込まれた)細胞の低い定着率および長期持続の発生率の減少をもたらすことが多い。これは、細胞ウォッシュアウトおよび/または送達媒体中での低い細胞生存率を含めて、さまざまな因子によるものであり得る。しかし、一部の疾患は、細胞自体の送達または生着を必要とせず、むしろ、増殖因子、化学的シグナルまたは送達された細胞との他の相互作用を必要とすることがある。本明細書に開示されたいくつかの実施形態は、このような疾患を治療することを対象とし、そのようなものとして、細胞を基材内に保持しながら、細胞の有益な効果(物理的、化学的、または他の相互作用を含む)を送達するように構成された基材を含む。 【0052】 特に、いくつかの実施形態は、細胞療法対象への基材の投与の前に、基材中または基材上に幹細胞が沈着している基材に関し、これは、投与後に、基材内または基材上に細胞を保持するように機能し、一方で、同時に基材内または基材上の幹細胞と標的組織の一部の間の物理的相互作用を促進する。いくつかの実施形態では、特に、基材内または基材上に沈着している幹細胞は、それだけには限らないが、物理的細胞間相互作用、標的組織への栄養分または増殖因子の放出、他の細胞種の誘引などを含めて、標的組織の損傷を受けた細胞または病変した細胞のための支持効果を提供する。いくつかの実施形態では、有益な効果は、脈絡毛細管(choriocappilaris)内皮および光受容体(例えば、PEDFおよびVEGF)の構造的完全性を維持する増殖因子の分泌、眼の免疫特権を有する状態に役立つ(眼への免疫細胞浸潤を抑制するよう援助する)免疫抑制因子の抑制、神経栄養因子の分泌、代謝的利益(例えば、グルコースおよび脂肪酸の交換)、機能的利益(例えば、レチノールの送達、離脱した外節円盤の食作用、ならびに/または光退色後の視色素の再異性化および回復)、または神経活動の支持のうち1つまたは複数を含む。 ・・・ 【0054】 いくつかの実施形態では、改善された細胞療法のための多孔性基材が提供される。いくつかの実施形態では、提供される基材は、非多孔性である(例えば、開口部またはビアを有さない)が、透過性である。いくつかのこのような実施形態は、基材の厚みの変化に基づいて基材の透過性を制御する。一部の実施形態では、基材は、透過性であり、多孔性でもあり、埋め込まれた細胞と天然の細胞の相互接続を促進する透過性および多孔度を有する。いくつかの実施形態では、基材は、細胞を受け取り、受け取った細胞を、損傷を受けた標的組織または病変した標的組織の再生を促進するのに最適な方法で配置するように構成される。一部の実施形態では、基材は、細胞を基材内に保持するが、同時に、細胞と標的組織の物理的、化学的または他の相互作用を促す特定の特徴(例えば、大きさ、形状、多孔度)を有する。本明細書において、「促す」という用語は、その通常の意味を与えられるものとし、また、許可する、増強する、可能にする、促進する、育てる、助長する、誘導する、およびそれらの同義語を意味すると読み取られるものとする。一部の実施形態では、基材は、生分解性であり、一方、他のものでは、非生分解性基材が提供される。一部の実施形態では、基材は、部分的に生分解性であり、部分的に非生分解性である。いくつかの実施形態では、完全非生分解性基材は、埋め込まれた細胞に対するその配置が、移植部位への免疫細胞の接近を妨げ、感染のリスクを低下させるので特に有利である。さらに、いくつかの実施形態では、非生分解性基材によって、同定が可能となり、移植された細胞の外植片は、細胞(例えば、細胞の追加の「用量」)の除去または置換が必要であるはずである。いくつかの実施形態では、本明細書において基材は、微小電気機械システム(MEMS)として組み立てられる。いくつかの実施形態では、送達され、基材内に保持される細胞は、幹細胞である。いくつかの実施形態では、基材およびその中に保持される細胞は、眼の変性、心疾患、血管疾患などの疾患と関連している損傷などを治療するために使用される。 【0055】 基材 上記で論じられるように、特定の細胞種の損傷または機能喪失につながる疾患の多様性は、膨大であり、通常の外科的または薬理学的アプローチを越える治療アプローチを必要とする医学の領域に相当する。この必要性に対処するために、細胞療法は、置換または再生によって病変した組織または損傷を受けた組織を治療するために、細胞、一部の場合には、胎児の臍帯細胞、胎盤由来細胞、成体細胞、誘導細胞またはヒト胚性幹細胞および/またはそれらの部分的もしくは完全に分化した細胞誘導体の使用を含む。いくつかの実施形態では、細胞療法の有効性を改善する基材が提供される。本明細書において、「基材」という用語は、その通常の意味を与えられるものとし、本明細書に記載される一部の実施形態は、移植自体を必要としないことは理解されようが、「移植片」および/または「装置」という用語(例えば、「標的組織表面上のパッチ」として機能するもの)と同義的に使用されるものとする。前後関係の根拠から、特定の実施形態が標的組織内に埋め込まれるべきかどうかは当業者には明らかとなろう。さらに、本明細書において、「送達する」という用語は、その通常の意味を与えられるものとし、また、基材内に収容された細胞が、基材からの細胞の放出を伴わずに標的組織へ提供する物理的、化学的または他の種類の相互作用および/または標的組織中への細胞の生着を指すものとする。」 イ「【0086】 さらに他の実施形態では、両側のうち一方、例えば、上部または底部にのみビアが存在する。一部の実施形態では、図には明確には示されていないが、組み立てプロセスの際に、頂端表面および/または基底表面が、頂端表面または基底表面とアニーリングしている別個の基材材料をさらに含む。いくつかの実施形態では、ビアは、直径が、約0.5~約10μmの範囲である。孔直径は、基材ケージ内に収容されるべき細胞種、埋め込み部位または標的組織に応じて変わり得る。いくつかの実施形態では、孔直径は、約1~3μm、3~5μm、5~7μm、7~10μmまたはそれらの重複する範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、孔直径は、約0.5~約1.5μm、例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3および1.4μmに及ぶ。いくつかの実施形態では、孔直径は、基材ケージから標的組織へ到達する細胞プロセスを可能にするよう十分に大きいが、孔直径は、細胞自体が基材ケージを脱出するほど十分には大きくない。したがって、ビア直径は、基材ケージ内に細胞を保持するが、細胞の治療効果が、これが物理的相互作用(例えば、細胞プロセスと標的組織の間の)であろうと、化学的相互作用であろうと、または他の種類の相互作用であろうと、標的組織に到達するのを可能にするよう働く。しかし、一部の実施形態では、基材ケージは、基材ケージ内の細胞の少なくとも一部を脱出させるよう設計される。」 ウ「【0093】 材料 本明細書に開示された基材を組み立てるために、さまざまな材料を使用できる。一部の実施形態では、基材は、生分解性であるのに対し、他の実施形態では、基材は、非生分解性である。なお他の実施形態では、基材の一部は生分解性であるのに対し、別の部分はそうではない。いくつかの実施形態では、基材の生分解性部分は、既知速度で分解するよう組み立てることができる。このような生分解性材料として、ヒトまたは動物の身体中に入れられると経時的に分解するまたは浸食される任意の適した材料が挙げられる。したがって、生分解性材料は、この用語が本明細書において使用されるように、生体受食性材料を含む。 【0094】 いくつかの生分解性実施形態では、特定の生分解速度を成し遂げるように、選択した材料を最適化する。例えば、ポリマーを使用するいくつかの実施形態では、ポリマーの組成を制御して、特定の生分解速度、ひいては、in vivoでの基材の滞留時間を達成する。例として、基材がPLGAコポリマーを含む一実施形態では、コポリマー中の乳酸対グリコール酸単位の比を変更することによって、PLGAコポリマーの生分解速度を制御する。一部の実施形態では、埋め込み後およそ4週間の滞留を達成するよう生分解の速度を制御する。一部の実施形態では、基材は、約1~3週間、2~4週間またはそれより長く、例えば、約4~6週間または数ヶ月で分解する。」 (2)引用文献4の記載 民部裕洋,田中孝明,“生分解性ポリエステル多孔質膜に支持された培養細胞シート”,膜,日本膜学会,2015年,第40巻,第3号,p.124-129(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア「1.はじめに 再生医療に培養細胞シートを用いる試みは多数検討されており,その一部は実用化されている1~3). ・・・ 我々は培養細胞シートの操作性を高めるために支持体として生分解性ポリエステル多孔質膜を用いることを検討している.生分解性ポリエステルとはポリ-L-乳酸(PLLA),ポリグリコール酸(PGA),ポリカプロラクトン(PCL)などのヒドロキシ脂肪酸の重合体やその共重合体などであり(Fig.1),水分を含む環境においては徐々に加水分解されるため,生体吸収性材料としても用いられている10,11).」 イ「2.生分解性ポリエステル多孔質膜の作製 ・・・ 100μm以下の孔を有する多孔質膜の作製には相分離法が有利である.Fig.2(b)に1,4-dioxane-水-混合溶媒を用い,熱誘起相分離法にて作製したポリ乳酸多孔質膜の断面の例を示す.数十μmの孔を有する多孔質膜となっている.熱誘起相分離法では,溶媒の組成,高分子濃度,冷却速度を検討することにより,多孔質構造を制御することが可能である.」 ウ「3.ポリ乳酸多孔質膜を用いた培養骨膜 Fig.3にFig.2(b)のポリ乳酸多孔質膜(厚さ:300μm;空隙率:84%)を骨膜培養の支持体として用いた例を示す.骨膜は骨の表面を覆っている組織であり,通常は骨の保護や骨への栄養補給の機能を担っているが,骨誘導をかけると骨組織へ変化する.歯槽骨の骨膜は歯科医療においては比較的に入手しやすいため,患者自身の歯槽骨の再生に用いられている3).上述のように培養骨膜シートの操作性を高めるため,ポリ乳酸多孔質膜を支持体とすることを検討した.骨膜の培養においては骨膜組織片の材料への付着が鍵となるが,ポリ乳酸多孔質膜の場合,表面の多孔質構造がアンカーとして機能して組織片を付着させることが可能であった.・・・ ポリ乳酸多孔質膜とともに培養した骨膜シートをヌードマウス(免疫不全マウス)の皮下に移植したところ,12週間にわたり,炎症反応や線維性被膜による被包化は観察されなかった.ポリ乳酸多孔質膜はマウスの線維芽細胞や血管系の侵入により,徐々に分解されることも示された14).開発した材料は現在のところは歯槽骨の再生には用いられていないものの,骨再生のための培養骨膜シートの作製に有用と考えている.」 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「周辺スカート」は、「目の結膜の下に配置」されるから、本願発明の「眼科用合成グラフトパッチ」に相当する。また、本願明細書の段落【0032】の「眼組織置換療法、眼組織再建療法、及び/又は眼組織再生療法は・・・前眼部の再建・・・から選択される。」との記載を踏まえれば、本願発明の「眼組織再建」は、前眼部の再建を含むと解されるところ、引用発明の「人工角膜」は、前眼部の角膜を置換し、再建するから、引用発明の「周辺スカート」を「人工角膜の一部」として「目の結膜の下に配置する」ことは、本願発明の「眼科用グラフトパッチ」を「眼組織の組織再建及び/又は組織再生のために移植」することに相当する。さらに、「周辺スカート」は、「生分解性かつ生体適合性のポリマーを含む」「多孔質生体適合性層を含」み、角膜を代替する「人工角膜の一部」であるから、生分解性人工組織代替物と表現できる。 したがって、引用発明の「人工角膜の一部」として「目の結膜の下に配置」され、「生分解性かつ生体適合性のポリマーを含む」「多孔質生体適合性層を含」む「周辺スカート」は、本願発明の「眼組織の組織再建及び/又は組織再生のために移植される、生分解性人工組織代替物である眼科用合成グラフトパッチ」に相当する。 (2)本願発明の「重合構造」は、ポリマー(重合体)からなる構造を意味すると解されるから、引用発明の「ポリマー層である多孔質生体適合性層」は、本願発明の「多孔性重合構造」に相当する。そして、「生分解性かつ生体適合性のポリマー」を含む「ポリマー層である多孔質生体適合性層」は、本願発明の「生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され」る「多孔性重合構造」に相当する。また、引用発明の「多孔質生体適合性層」が有する「少なくとも約2μmの孔径」は、本願発明の「多孔性重合構造」が「有する」「5μm未満の細孔」に相当する。 したがって、引用発明の「周辺スカート」が「生分解性かつ生体適合性のポリマーを含み」、「少なくとも約2μmの孔径を有」する「ポリマー層である多孔質生体適合性層を含」むことと、本願発明の「前記眼科用合成グラフトパッチの全体が、生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され、生分解性でない材料及び多孔性でない材料を含まない、5μm未満の細孔を有する多孔性重合構造を有すること」は、前記眼科用合成グラフトパッチが、生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され、5μm未満の細孔を有する多孔性重合構造を有することの限りで一致する。 2 そうすると、本願発明と引用発明は、 「眼組織の組織再建及び/又は組織再生のために移植される、生分解性人工組織代替物である眼科用合成グラフトパッチであって、 前記眼科用合成グラフトパッチが、生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され、5μm未満の細孔を有する多孔性重合構造を有する眼科用合成グラフトパッチ。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本願発明では、眼科用合成グラフトパッチの「全体」が、生分解性の多孔性ポリマー材料から形成され、「生分解性でない材料及び多孔性でない材料を含まない」のに対し、引用発明では、「周辺スカート」が、「生分解性かつ生体適合性のポリマーを含む」「ポリマー層である多孔質生体適合性層を含」む点。 第6 判断 1 以下、上記相違点について検討する。 引用文献2の上記第4の1(1)イの「スカートの層またはフィルムは、少なくとも1つのポリマー材料で製造される(下線は当審で付与。)」との記載を踏まえると、引用文献2には、引用発明の「周辺スカート」を1つのポリマー材料から製造することが示唆されている。 また、多孔質かつ生分解性のポリマーからなる基材を治療の対象となる細胞組織に移植することは、引用文献1(上記2(1)ア~ウを参照)、引用文献4(上記2(2)ア~ウを参照)に記載されるように、眼組織に限らず細胞組織の再生のために広く採用されている周知技術である。 してみると、引用発明の周辺スカートは「1つ」の生分解性かつ生体適合性のポリマーから製造されているのであるから、これを周知技術に係る移植される基材として採用し、「全体」が、生分解性かつ生体適合性のポリマーからなるポリマー層である多孔質生体適合性層から構成され、「生分解性でない材料及び多孔性でない材料を含まない」細胞組織に移植される基材として使用し、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 2 請求人の主張 なお、請求人は、令和 7年11月14日提出の意見書において、引用文献2について、以下のように主張している。 「引用例2及び3に開示のものは、中心光学コアと、角膜組織の穿孔部分を越えて固定するために使用される周辺スカート部分とを含む人工角膜であり、周辺スカート部は、組織と一体化させる固定用の部分で、「生体適合性(biocompatible)」ではあるものの「生分解性」ではないので、引用例1(当審注:引用例2の誤記であると思料される。)の人口(当審注:「工」の誤記である。)角膜は本発明のような「全体が、1つの生分解性の材料から形成された」人工組織代替物とは異なります。」 上記主張について検討すると、上記第5の1(1)のとおり、引用発明の「周辺スカート」は、「目の結膜の下に配置」されるから、機能上、人工組織代替物であるといえる。また、上記第4の1(1)クのとおり、引用発明の「周辺スカート」が含む「多孔質生体適合性層」には、生体適合性だけでなく生分解性も備えた「生分解性かつ生体適合性のポリマー」が含まれる。 そして、上記1のとおり、引用発明と周知技術に基いて、全体が1つの生分解性の材料から形成された人工組織代替物とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 よって、請求人の上記主張を採用することはできない。 また、本願発明の効果も、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献1、4に記載される周知技術から当業者が予測し得る以上のものではない。 3 小括 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献1、4に記載される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004205

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