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特許拒絶査定不服審判

2024-013455

化学カイロ用の被酸化性金属粉末、及び化学カイロ

審判番号
2024-013455
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-217417
請求日
2024年08月21日
審決日
2026年05月27日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】小林製薬株式会社
  • 【請求人代理人】田中 順也
審判長/審判官
  • 審判長 安井 寿儀
  • 審判官 太田 良隆
  • 審判官 北川 大地
分類
P18 .121-WZ (A61F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-217417「化学カイロ用の被酸化性金属粉末、及び化学カイロ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 7日出願公開、特開2022-102592〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和 2年12月25日の出願であって、その後の手続の概略は、以下のとおりである。 令和 5年12月26日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 3月13日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 5月20日付け:拒絶査定 令和 6年 8月21日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 5月22日付け:拒絶理由通知書 令和 7年 7月25日 :意見書、手続補正書の提出 令和 7年12月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 8年 2月12日 :意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~2に係る発明は、令和 7年 7月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 厚さが5~15μmであり、短径が50~150μm及び長径が50~200μmである扁平面を有する扁平状の鉄粉であり、 前記扁平状の鉄粉の見掛密度が1.2~1.6g/cm3である、化学カイロ用の被酸化性金属粉末。」 第3 拒絶の理由の概要 令和 7年12月 9日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次の理由を含むものである。 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開昭63-157802号公報 2.特開2019-111313号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載及び引用発明 引用文献1には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。 (1) 第1ページ左欄第4行~第6行 「2.特許請求の範囲 (1)アトマイズ鉄粉の形状を偏平形状としたことを特徴とする懐炉用鉄粉。」 (2) 第1ページ右欄第15行~第19行 「本発明に使用するアトマイズ鉄粉は、酸化反応性から成分的には純鉄粉がよい。又、鉄粉の大きさは、通常、粉末冶金用として使用される60メッシュ以下のものに限らず、いわゆるオーバー粉と称される規定外のものでも使用することができる。」 (3) 第2ページ左上欄第4行~第5行 「アトマイズ鉄粉の形状は、反応性を向上させるために偏平形状にする。」 (4) 第2ページ左上欄第6行~第11行 「偏平加工する手段としては、振動ボールミルを挙げることができる。振動ボールミルは、振動容器に粉砕物と加工用ボールとを収容し、振動容器を振動させることにより、粉砕物を相互に衝突する加工用ボールの間で圧壊して粉砕する装置である。」 (5) 第2ページ左上欄第14行~第17行 「アトマイズ鉄粉は、製造時には球状ないし擬球状をしているが、第1図に示したように、振動ボールミルによって偏平状となり、表面積が増加し、酸化反応性が向上する。」 (6) 第2ページ右上欄第2行~第7行 「次に具体的実施例について説明する。 アトマイズ鉄粉750kgと加工用ボール750kgとを振動容器に入れて、振動ボールミルを6時間運転した。アトマイズ鉄粉としては、60メッシュより粒径の大きいオーバー粉を用いた。その結果、見掛密度は2.9g/cm3から2.6g/cm3に低下した。」 (7) 第2ページ右上欄第13行~第16行 「その結果を第2図に示す。第2図より、偏平加工粉は、無加工粉に比べて10℃程度発熱温度が向上し、懐炉用鉄粉として使用可能な60℃以上の温度に発熱することが確認された。」 (8) 第1図「 [図:0001436685000001.jpg] 」 (9) 第2図「 [図:0001436685000002.jpg] 」 (10) 引用発明 前記(1)及び(6)の特に下線部の記載及び前記(8)~(9)の図面の記載からすれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「アトマイズ鉄粉の形状を偏平形状とし、見掛密度が2.6g/cm3である懐炉用鉄粉。」 2 引用文献2の記載 引用文献2には、次の記載がある。なお、下線は当審が付した。 (1) 「【0037】 本発明によって製造された発熱体1は、これをそのままの状態で、又は発熱体1の全体を、通気性を有する多孔性シートなどの包材で被覆又は封入された状態で、使い捨てカイロなどの発熱具として使用することができる。本発明が適用可能な発熱具は、人体に直接適用されるか、又は衣類に適用されて、人体の加温に好適に用いられる。人体における適用部位としては例えば肩、首、顔、目、腰、肘、膝、太腿、下腿、腹、下腹部、手、足裏等が挙げられる。また、本発明が適用可能な発熱具は、人体の他に、各種の物品に適用されてその加温や保温等にも好適に用いられる。また、発熱具を適用部位に固定するために、包材の外面に公知の粘着剤が塗工されていてもよい。」 (2) 「【0041】 発熱組成物に含まれる被酸化性金属は、そのかさ密度が0.3g/cm3以上であることが好ましく、0.4g/cm3以上であることがより好ましく、またその上限は、1.5g/cm3以下であることが好ましく、1.4g/cm3以下であることがより好ましい。具体的には、被酸化性金属のかさ密度は、0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下であることが好ましく、0.4g/cm3以上1.4g/cm3以下であることがより好ましい。このようなかさ密度を有する被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、被酸化性金属の酸化反応の反応率を向上することができ、これに起因して発熱体の発熱特性を向上させることができる。被酸化性金属のかさ密度は、例えば、JIS Z 2504:2012に従って、かさ密度測定器(JISカサ比重測定器、筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定することができる。かさ密度の値が低いほど、嵩高い粒子であるといえる。 【0042】 発熱組成物に含まれる被酸化性金属として粒状又は粉状のものを用いたときに、その平均粒子径は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、またその上限は、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。具体的には、被酸化性金属の平均粒子径は10μm以上150μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。このような平均粒子径を有する被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、発熱体の発熱特性を向上させるとともに、発熱体の薄型化を図ることができる。」 (3) 【表1】「 [図:0001436685000003.jpg] 」 (4) 引用文献2に記載の事項 前記(1)~(2)の特に下線部の記載からすれば、引用文献2には、次の事項が記載されている。 「カイロなどの発熱具として使用することができる発熱体1において、 かさ密度が0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下である被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、被酸化性金属の酸化反応の反応率を向上することができ、これに起因して発熱体1の発熱特性を向上させることができ、 平均粒子径が10μm以上150μm以下である被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、発熱体1の発熱特性を向上させるとともに、発熱体1の薄型化を図ることができること。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 1 引用発明の「偏平形状」の「アトマイズ鉄粉」は、本願発明の「扁平面を有する扁平状の鉄粉」に相当する。 2 引用発明の「アトマイズ鉄粉」である「懐炉用鉄粉」は、本願発明の「鉄粉であ」る「化学カイロ用の被酸化性金属粉末」に相当する。 3 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「扁平面を有する扁平状の鉄粉である、化学カイロ用の被酸化性金属粉末。」 [相違点] 扁平状の鉄粉において、本願発明は、「厚さが5~15μmであり、短径が50~150μm及び長径が50~200μmであ」り、「見掛密度が1.2~1.6g/cm3である」のに対し、引用発明は、アトマイズ鉄粉の厚さ、短径及び長径が不明であり、「見掛密度が2.6g/cm3である」点。 第6 判断 1 上記相違点について、検討する。 引用発明は、アトマイズ鉄粉の形状を、反応性を向上するために偏平形状にするものであるから(前記第4の1(3)を参照。)、反応性のさらなる向上のために、より偏平な形状とすることは、当業者が容易に想到し得る。 そして、偏平加工により偏平な形状とすると、表面積が増加し(前記第4の1(5)を参照。)、見掛密度は低下するから(前記第4の1(6)を参照。)、より偏平な形状とすると見掛密度は一層低下する。ここで、引用文献2に記載の事項のかさ密度はJIS Z 2504:2012に従って測定できるものであり(前記第4の2(2)を参照。)、当該JIS Z 2504:2012は「金属粉-見掛密度測定方法」に係る規格であるから、引用文献2でいうかさ密度は見掛密度のことである。そのため、引用発明において、より偏平形状とする際に、引用文献2に記載の「かさ密度が0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下である被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、被酸化性金属の酸化反応の反応率を向上することができ、これに起因して発熱体1の発熱特性を向上させることができ」るという見掛密度と発熱特性に係る事項やかさ密度1.5g/cm3である実施例5を参考に、見掛密度を1.5g/cm3程度とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 また、引用発明は、「アトマイズ鉄粉としては、60メッシュより粒径の大きいオーバー粉を用いた。その結果、見掛密度は2.9g/cm3から2.6g/cm3に低下した。」(前記第4の1(6)を参照。)ものではあるが、「鉄粉の大きさは、通常、粉末冶金用として使用される60メッシュ以下のもの・・・でも使用することができる」(前記第4の1(2)を参照。なお、60メッシュは開口径が250μmである。)とされている。また、偏平加工する手段である振動ボールミルは、「粉砕物を相互に衝突する加工用ボールの間で圧壊して粉砕する装置である」(前記第4の1(4)を参照。)から、偏平加工によりにより偏平な形状とすると、鉄粉は厚さのみならず径が小さくなる。そのため、引用発明において、鉄粉の大きさとして60メッシュ以下のものを使用し、偏平加工により見掛密度を1.5g/cm3程度の偏平な形状とすると、短径及び長径が数十μm~200μm程度となる蓋然性が高い。そして、この数十μm~200μm程度という短径及び長径の数値範囲は、引用文献2に記載の「平均粒子径が10μm以上150μm以下である被酸化性金属を発熱組成物に用いることによって、発熱体1の発熱特性を向上させるとともに、発熱体1の薄型化を図ることができる」という事項、特開2017-89005号公報の段落【0018】の「・・・鉄粉粒子の平均粒子径(D50径)は・・・より好ましくは50μm~125μmである。粒子径が小さい場合は、鉄粉の活性が高いので保管中に発熱して性能が損なわれる危険性や、場合によっては発火の恐れがあるため好ましくない。また、工業的に生産する場合においては、生産された鉄粉を保管する際に危険物となり得るので、50質量%以上の鉄粉が53μm以上であることが好ましい。一方、粒子が大きすぎる場合には、粒子の活性が低いので、酸化反応が進みにくく、本発明の効果を享受することが難しいので好ましくない。」という記載事項及び特開2017-225721号公報の【0028】の「従来のカイロに使用される鉄粉の粒径は、250μm以下を用いているが、本発明では、鉄粉の粒径は、75μm以下を使用する。これにより、発熱原料混合時の団塊化の抑制と、発熱反応性を高めている。」という記載事項のような、一般的な懐炉用鉄粉の粒子径を踏まえると、通常の範囲のものである。さらに、数十μm~200μm程度という短径及び長径を踏まえると、本願発明の「厚さが5~15μm」とすることは、引用発明において偏平加工により見掛密度を1.5g/cm3程度の偏平な形状とする際に、通常採り得る範囲のものである。 したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 2 本願発明の効果である化学カイロの発熱時間の持続性を向上させることができること(本願の発明の詳細な説明の段落【0011】を参照。)について、検討する。 まず、引用文献1の第2図(前記第4の1(9)を参照。)の30分~40分の時間における温度変化を参照すると、無加工粉は温度の下降が見られるのに対し、偏平加工粉はわずかな温度の上昇傾向が読み取れるから、引用発明は発熱時間の持続性を向上させることが示唆されている。 次に、「本発明者は、更に鋭意検討を行ったところ、意外にも、扁平加工した鉄粉を発熱性組成物に配合することによって、化学カイロの発熱時間の持続性が飛躍的に向上することを見出した。」(本願の発明の詳細な説明の段落【0009】を参照。)と本願明細書に記載されているように、本願発明において、扁平状の鉄粉を用いること、特に厚さ、短径及び長径について本願発明の数値範囲内とすることにより、化学カイロの発熱時間の持続性を向上させることができる作用機序が、どのようなものであるのか、不明である。そして、本願発明の具体的な実施例としては、扁平状の成分が不明である鉄粉の2つの実施例と偏平加工していない鉄粉の3つの比較例が示されているにすぎない(本願の発明の詳細な説明の段落【0051】~【0067】、図2~図3を参照。)。そうすると、通常、鉄粉の成分によって発熱状況は異なるから、厚さ、短径及び長径の本願発明の数値範囲内の全てにおいて、化学カイロの発熱時間の持続性を向上させることができるという顕著な効果があるのか、不明である。 したがって、本願発明の効果は、引用発明及び引用文献2に記載の事項から、格別顕著なものということはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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