2021-001753
親環境車両用コンバータ制御装置及びその方法
- 審判番号
- 2021-001753
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-113817外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月08日
- 審決日
- 2021年09月30日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .57 -Z (H02M) / P18 .55 -Z (H02M) / P18 .536-Z (H02M) / P18 .537-Z (H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第164条、特許法第159条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は,平成28年6月7日(パリ条約による優先権主張2015年12月1日,韓国)の出願であって,令和2年2月28日付けで拒絶理由が通知され,同年4月30日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年5月25日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年7月15日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年11月16日付けで拒絶査定(謄本送達日同年11月20日)がなされ,これに対して令和3年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年3月17日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2 令和3年2月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年2月8日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,令和2年4月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】基準電流の入力を受ける基準電流入力器;コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳して前記ランプ信号を生成するランプ信号生成器;及び前記基準電流入力器を介して入力された前記基準電流と、前記ランプ信号生成器によって生成された前記ランプ信号とを用いてPWM信号を生成する比較器続きを表示(全33行)を含み、前記ランプ信号生成器は、前記ランプ信号生成器における前記入力電流の入力部と、前記比較器における前記ランプ信号の入力部との間の配線上で、前記入力電流に対して前記DCオフセットと前記鋸歯状波とを重畳させることで、前記ランプ信号を生成し、前記配線上に配置されるかまたは前記配線に電気的に接続された抵抗及びキャパシタにより、前記ランプ信号の勾配を調節し、前記ランプ信号生成器は、前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し、前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成し、前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項2】前記第1値は、前記第2値より大きい値であることを特徴とする請求項1に記載の親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項3】前記比較器は、ピーク電流比較器であることを特徴とする請求項1に記載の親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項4】基準電流入力器が、基準電流の入力を受ける段階;ランプ信号生成器が、コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳して前記ランプ信号を生成する段階;及び比較器が、前記基準電流入力器を介して入力された前記基準電流と、前記ランプ信号生成器によって生成された前記ランプ信号とを用いてPWM信号を生成する段階を含み、前記ランプ信号を生成する段階は、前記ランプ信号生成器における前記入力電流の入力部と、前記比較器における前記ランプ信号の入力部との間の配線上で、前記入力電流に対して前記DCオフセットと前記鋸歯状波とを重畳させることで、前記ランプ信号を生成する段階;及び、前記配線上に配置されるかまたは前記配線に電気的に接続された抵抗及びキャパシタにより、前記ランプ信号の勾配を調節する段階を含み、前記ランプ信号を生成する段階は、前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断する段階;前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する段階;及び、前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する段階を含む親環境車両用コンバータ制御方法。【請求項5】前記第1値は、前記第2値より大きい値であることを特徴とする請求項4に記載の親環境車両用コンバータ制御方法。」(以下,上記引用の請求項各項を「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】基準電流の入力を受ける基準電流入力器;コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳して前記ランプ信号を生成するランプ信号生成器;及び前記基準電流入力器を介して入力された前記基準電流と、前記ランプ信号生成器によって生成された前記ランプ信号とを用いてPWM信号を生成する比較器続きを表示(全33行)を含み、前記ランプ信号生成器は、前記ランプ信号生成器における前記入力電流の入力部と、前記比較器における前記ランプ信号の入力部との間の配線上で、前記入力電流に対して前記DCオフセットと前記鋸歯状波とを重畳させることで、前記ランプ信号を生成し、前記配線上に配置されるかまたは前記配線に電気的に接続された抵抗及びキャパシタにより、前記ランプ信号の勾配を調節し、前記ランプ信号生成器は、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し、前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成し、前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項2】前記第1値は、前記第2値より大きい値であることを特徴とする請求項1に記載の親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項3】前記比較器は、ピーク電流比較器であることを特徴とする請求項1に記載の親環境車両用コンバータ制御装置。【請求項4】基準電流入力器が、基準電流の入力を受ける段階;ランプ信号生成器が、コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳して前記ランプ信号を生成する段階;及び比較器が、前記基準電流入力器を介して入力された前記基準電流と、前記ランプ信号生成器によって生成された前記ランプ信号とを用いてPWM信号を生成する段階を含み、前記ランプ信号を生成する段階は、前記ランプ信号生成器における前記入力電流の入力部と、前記比較器における前記ランプ信号の入力部との間の配線上で、前記入力電流に対して前記DCオフセットと前記鋸歯状波とを重畳させることで、前記ランプ信号を生成する段階;及び、前記配線上に配置されるかまたは前記配線に電気的に接続された抵抗及びキャパシタにより、前記ランプ信号の勾配を調節する段階を含み、前記ランプ信号を生成する段階は、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断する段階;前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する段階;及び、前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する段階を含む親環境車両用コンバータ制御方法。【請求項5】前記第1値は、前記第2値より大きい値であることを特徴とする請求項4に記載の親環境車両用コンバータ制御方法。」(下線は審判請求人が付したものである。以下,上記引用の請求項各項を「補正後の請求項」という。)に補正された。
2 補正事項
本件補正は,本件補正前の請求項1及び4において,「前記基準電流に基づいて、」との事項を削除する補正事項を含むものである。
3 目的要件
本件補正が,特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件補正が,特許法17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。
上記補正事項は,請求項の削除,誤記の訂正のいずれにも該当しない。
また,補正前の請求項1及び4において,本件補正前に「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し」とあったものから,「前記基準電流に基づいて、」との事項を削除することは,特許請求の範囲の減縮にあたらず,また,本件補正前の,「前記基準電流に基づいて、」との事項を含む記載自体に,何ら不明りょうなところはなく,本件補正前の当該記載が,拒絶の理由において,明りょうでない旨示されているものでもないから,明りょうでない記載の釈明にもあたらないことも明らかである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものとは認められない。
4 補正却下むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に違反するものであり,特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年4月30日にされた手続補正(以下,「本件第1補正」という。)により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1の本件補正前の請求項1に記載のとおりのものである。再掲すれば,次のとおり。(なお,下線は,本件第1補正により補正された箇所を示す。)
「基準電流の入力を受ける基準電流入力器;コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳して前記ランプ信号を生成するランプ信号生成器;及び前記基準電流入力器を介して入力された前記基準電流と、前記ランプ信号生成器によって生成された前記ランプ信号とを用いてPWM信号を生成する比較器を含み、続きを表示(全12行)前記ランプ信号生成器は、前記ランプ信号生成器における前記入力電流の入力部と、前記比較器における前記ランプ信号の入力部との間の配線上で、前記入力電流に対して前記DCオフセットと前記鋸歯状波とを重畳させることで、前記ランプ信号を生成し、前記配線上に配置されるかまたは前記配線に電気的に接続された抵抗及びキャパシタにより、前記ランプ信号の勾配を調節し、前記ランプ信号生成器は、前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し、前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成し、前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する親環境車両用コンバータ制御装置。」
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1.(新規事項)令和2年4月30日付け手続補正書でした補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2.(実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
●理由1(特許法第17条の2第3項)について
・請求項 1-5
…(中略)…
しかしながら,本願の請求項1-5においては,ランプ信号生成器において,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断することが特定されている。そして,ランプ信号生成器において,基準電流又は基準電流に関係する値に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断するためには,基準電流又は基準電流に関係する値が,ランプ信号生成器に入力される構成が少なくとも必要であると思料されるところ,そのような構成は,本願の当初明細書等に開示されていない。また,上記段落[0015],[0029]の記載からでは,ランプ信号生成器において基準電流に基づいた判断を行う構成が,本願の当初明細書等に開示されているものとは認められない。
よって,ランプ信号生成器が,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか基準値を超過するかを判断する,という構成は,本願の当初明細書等に何ら開示されていない。
よって,本願の請求項1-5について,令和2年5月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は,依然として解消していない。
●理由2(特許法第36条第4項第1号)について
・請求項 1-5
…(中略)…
本願の請求項1-5において,ランプ信号生成器が,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断することが特定されている以上,本願の請求項1-5に係る発明を実施するためには,図4に例示されている動作を,ランプ信号生成器において実施することが必要となる。そして,当該動作の実施のためには,ランプ信号生成器に,基準電流又は基準電流に関係する値を入力し,当該値に基づいてキャパシタの設定を変更することが必要になると思料される。
しかしながら,上記理由1でも記載したように,基準電流又は基準電流に関係する値が,ランプ信号生成器に入力される構成は,本願の明細書等には記載されていない。したがって,図4に例示されている動作をランプ信号生成器において実施するためには,ランプ信号生成器において,基準電流又は基準電流に関係する値に基づいて,キャパシタの設定等を調整する必要があるものの,具体的にどのようにしたらいいのかが,依然として不明である。
したがって,ランプ信号生成器において,PWM信号のデューティが基準値を超過するのか否かをどのように判断し,その結果に基づいて,ランプ信号生成器の勾配を,どのように変化させて,PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し,PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成しているのかを,依然として当業者が理解できず,出願人の上記主張を採用することはできない。
よって,本願の請求項1-5について,令和2年5月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由2は,依然として解消していない。
●理由3(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 1-5
…(中略)…
本願の請求項1-5に係る発明では,ただ単に抵抗及びキャパシタによりランプ信号の勾配を変化させるだけでなく,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し,前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成し,前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成するようにすることが必要である。しかしながら,キャパシタが種々の信号の勾配を調節するのに様々な態様で使用可能であることは当業者に知られてはいるものの,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し,前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成し,前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成するようにするためには,抵抗及びキャパシタによってランプ信号の勾配を変化させる際に,基準電流に基づいて,PWM信号のデューティが基準値以上か以下かのいずれかを判断して,その判断結果に基づき,適切に勾配を調整することが必要であり,当該判断結果に基づき勾配を調整することまで,当業者に知られているものとは認められない。したがって,抵抗及びキャパシタによるランプ信号の勾配変化と上記判断を関連させる発明特定事項が必要であるものの,本願の請求項1-5には対応する記載がない。
また,本願の当初明細書等には,上記理由1でも記載したように,基準電流又は基準電流に関係する値がランプ信号生成器20に入力される構成が開示されていない以上,どのようにキャパシタを用いて勾配を調整したらいいのかが,依然として不明である。
よって,本願の請求項1-5について,令和2年5月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由3は,依然として解消していない。
第5 原査定の拒絶の理由の判断
1 理由1(特許法17条の2第3項(新規事項))について
本件第1補正によって追加された,「前記ランプ信号生成器」が,「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断」するとの事項(以下,「追加事項」という。)について,以下検討する。
本件第1補正と同日に提出された意見書によると,同記載の根拠は,「旧請求項2、6や図2、図4や段落0015~0017、0023、0032~0034、0037の記載」であるとのことなので,本願明細書及び図面の当該箇所には,次の記載が認められる。(なお,下線は説明のために当審で付加したものである。以下同様。)
A 「【請求項2】前記ランプ信号生成器は、PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し、PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の親環境車両用コンバータ制御装置。」
B 「【請求項6】前記ランプ信号生成段階は、PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し、PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の親環境車両用コンバータ制御方法。」
C 「 【0015】前記各構成要素等に対して検討してみれば、先ず、基準電流入力器10は、基準電流として電流指令(Current Reference)の入力を受ける。【0016】次に、ランプ信号生成器20は、入力電流と、DCオフセットと、鋸歯状波(鋸歯信号)とを重畳してランプ信号(Ramp Signal)を生成する。【0017】ここで、入力電流は、LDCに入力される電流であって、具体的にLDC 内変圧器の1次側に流れる電流を意味する。また、DCオフセットは、PWM信号のデューティが基準値以下になる区間、すなわち、LDCが電流不連続モードで動作する区間でランプ信号の勾配値を増加させる作用をする。また、鋸歯状波の勾配はLDCの発散を防止するために、LDC内部の出力インダクタ(図3でILo)に流れる電流の勾配の0.5倍以上になるように設定する。 このとき、基準値は、LDCの入力電圧と出力電圧及びトランス巻線比(降圧比)によって決定される。」
D 「 【0023】図2に示すように、本発明に係るランプ信号生成器20は、入力電流21と、鋸歯状波22と、DCオフセット23とを重畳してランプ信号を生成する。このとき、抵抗R4、R5、R6及びキャパシタC2は、ランプ信号勾配のゲインを調節する役割を行う。」
E 「 【0032】図4において、「410」は基準電流Icを示し、「420」はランプ信号の電流最大値を示し、「430」はPWM信号のデューティが基準値以下になる区間を示し、「440」はPWM信号のデューティが基準値を超過する区間を示す。【0033】これを介して、「440」区間でのランプ信号の勾配に比べて、「430」区間でのランプ信号の勾配がさらに急であることが分かる。【0034】これにより、電流指令Icが微細に変動する際に、「430」区間でのデューティ変動幅が「440」区間でのデューティ変動幅より小さい。したがって、最終的に出力電圧の変動量が小さくなり、制御が安定的である。」
F 「 【0037】また、ランプ信号生成器10が、コンバータの入力電流と、ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと、鋸歯状波とを重畳してランプ信号を生成する(502)。このとき、ランプ信号生成器10は、PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し、PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成する。」
G 「[図:0001382179000001.jpg]図2」
H 「[図:0001382179000002.jpg]図4」
上記記載事項Aからは,ランプ信号生成器が,PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し,PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成することが読み取れる。
上記記載事項Bからは,ランプ信号生成段階で,PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し,PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成することが読み取れる。
上記記載事項Cからは,ランプ信号生成器20が,入力電流と,DCオフセットと,鋸歯状波(鋸歯信号)とを重畳してランプ信号(Ramp Signal)を生成することが読み取れる。
上記記載事項Dからは,ランプ信号生成器20が,入力電流21と,鋸歯状波22と,DCオフセット23とを重畳してランプ信号を生成することを読取ることができる。
上記記載事項E及びHからは,図4において,「410」が基準電流Icを示し,「420」はランプ信号の電流最大値を示し,「430」はPWM信号のデューティが基準値以下になる区間を示し,「440」はPWM信号のデューティが基準値を超過する区間であること,及び,「440」区間でのランプ信号の勾配に比べて,「430」区間でのランプ信号の勾配がさらに急であることが読み取れる。
上記記載事項Fからは,ランプ信号生成器10が,コンバータの入力電流と,ランプ信号の勾配調節用DCオフセットと,鋸歯状波とを重畳してランプ信号を生成すること,及び,PWM信号のデューティが基準値以下になる区間では第1値の勾配を有するランプ信号を生成し,PWM信号のデューティが基準値を超過する区間では第2値の勾配を有するランプ信号を生成することが読み取れる。
しかしながら,上記記載事項は,いずれも,「ランプ生成器」が,ランプ信号を生成することをいうものであって,追加事項に関すること,すなわち,何らかの機構によって,「PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断」することについては,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に一切の開示が認められない。
その他,上記記載事項Gに示す,本願図面の図2には,R4~R6及びC2からなる,いわゆるCR回路が形成されている態様を読み取ることができるものの,当該回路は単なる受動回路であって,単なる受動回路が何らかの判断を行うものではないことは技術常識である。
当該図2には,その他,「R4」の上に「V」を丸囲みした記号や「A」を右横倒しにして丸囲みした記号や,「-+」を丸囲みした記号などが図示されているが,これらがそれぞれ何を示すものかは,当初明細書等には一切の開示が無い。
また,これらの記載に接した当業者にとって,上記追加事項が当初明細書等に明示はなくとも記載されているも同然であって,自明な事項であるともいえないことは明らかである。
したがって,当初明細書等に,上記追加事項,すなわち,「ランプ信号生成器」が「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断」するとの事項を追加することは,当初明細書等に新たな技術的事項を追加するものといえる。
したがって,本件第1補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2 理由2(特許法36条4項1号(実施可能要件))について
特許法36条4項1号は,「発明の詳細な説明」の記載については,「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」(特許法施行規則24条の2)により「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」ことを,その要件として定めている。同規定の趣旨は,特許制度は,発明を公開した者に対して,技術を公開した代償として一定の期間の独占権を付与する制度であるが,仮に,特許を受けようとする者が,第三者に対して,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を開示することなく,また,発明を実施するための明確でかつ十分な事項を開示することなく,独占権の付与を受けることになるのであれば,有用な技術的思想の創作である発明を公開した代償として独占権が与えられるという特許制度の目的を失わせることになりかねず,そのような趣旨から,特許明細書の「発明の詳細な説明」に,上記事項を記載するよう求めたものである。(平成21年(行ケ)第10033号)
そこで,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明において,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるかについて,以下に検討を行う。
上記1に示したように,「ランプ信号生成器」が,「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断」することに関しては,当初明細書等には一切の開示は認められない。
してみれば,本願発明の,特に,「ランプ信号生成器」が,「前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成」するとともに,「前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する」に際し,「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し」て当該「ランプ信号を生成」することに関しては,本願明細書の発明の詳細な説明には記載が無いというべきであって,当然に,当業者が容易にその実施ができる程度の明確かつ十分な記載が無いことは明白である。
本願明細書の,上記記載事項A~H以外の箇所にも,「ランプ信号生成器」が,「前記PWM信号のデューティが前記基準値以下になる区間では第1値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成」するとともに,「前記PWM信号のデューティが前記基準値を超過する区間では第2値の前記勾配を有する前記ランプ信号を生成する」に際し,「前記基準電流に基づいて、前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断し」て当該「ランプ信号を生成」することを,当業者が容易にその実施ができる程度の明確かつ十分な記載は認められない。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
3 付記
本件補正において,「前記基準電流に基づいて、」との事項を削除したことにより,本件補正による特許請求の範囲の補正が,特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項をも目的としないものであることは,上記第2に示したとおりであるが,本件補正後の特許請求の範囲に記載した構成,すなわち,「ランプ信号生成器」が,「前記PWM信号のデューティが基準値以下になるか前記基準値を超過するかを判断」するとの構成についても,当初明細書等にその開示が無く,発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施ができる程度の明確かつ十分な記載がないことには何ら変わりはないから,本件補正によっても,原査定の拒絶の理由1及び2は解消されないことを付記する。
第6 むすび
以上のとおり,令和2年4月30日付け手続補正書でした補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから,特許法17条の2第3項の規定により特許を受けることができない。
また,本件出願は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしているとはいえない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-001753