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特許拒絶査定不服審判

2021-000039

膣用薬物送達デバイス

審判番号
2021-000039
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-539587外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年01月04日
審決日
2023年04月18日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2017-539587「膣用薬物送達デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日国際公開、WO2016/120402、平成30年 4月 5日国内公表、特表2018-509389〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)1月28日(パリ条約による優先権主張 2015年1月30日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和1年 9月27日付け 拒絶理由通知書 令和2年 4月 8日 手続補正書及び意見書の提出 令和2年 8月26日付け 拒絶査定 令和3年 1月 4日 手続補正書及び審判請求書の提出 令和4年 7月27日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和5年 2月 2日 手続補正書及び意見書の提出 2 本願発明 本願の請求項1~15に係る発明は、令和5年2月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 ハウジングと、膣を通して投与されない生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバーと、リザーバーから化合物を膣内に制御放出する手段とを含む、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイスであって、 自身の膣に前記デバイスを有する人の生理学データを収集する手段をさらに含み、 前記制御放出は、(1)予めプログラムされた薬剤放出スケジュール、および(2)患者の希望に基づいて、または前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、前記患者、医師、もしくは看護師によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによるものである、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイス。」 3 拒絶の理由 令和4年7月27日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、進歩性についての理由の要旨は、本願発明は、本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明及び引用文献5~12、14、15に記載された事項に基づいて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献一覧> 1. 国際公開第2014/135521号 5. 特表2003-527404号公報 6. 特表2014-520111号公報 7. 特表2007-525461号公報 8. 米国特許出願公開第2013/0220337号明細書 9. 特表2008-505977号公報 10. 特表2012-500283号公報 11. 特表2012-525861号公報 12. International Journal of Psychiatry in Clinical Practice,2003,Vol.7,No.4,p.259-268 14.国際公開第2011/039680号 15.特開2014-168703号公報 なお、引用文献5~12は、本願発明の「生物活性化合物」として用い得る化合物の具体例が記載されている文献である。 4 引用文献1、14、15の記載事項等 (1)引用文献1について ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている(原文は英文であるため、当審による訳文で記載する。当審による下線を付した箇所がある。)。 (摘記1i) 「1.膣内配置のために構成された位置決め部材に接続された電子カプセルを備える、膣内薬剤送達及び/又は診断装置。 … 2.前記電子カプセルは、薬剤リザーバと、診断手段と、リザーバから薬剤を膣内に分配するための手段とから選択される一つ以上の構成要素を含む、請求項1に記載の膣内薬剤送達及び/又は診断装置。 … 20.前記装置は、薬剤又はホルモンの血中値を測定するためのセンサと、薬剤又はホルモンを分配するための手段と、測定された薬剤又はホルモンの血中値及び所望の薬剤又はホルモンの血中値に基づき、分配される薬剤又はホルモンの量を決定するための手段とを備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の膣内薬剤送達及び/又は診断装置。」(請求項1、2、20) (摘記1ii) 「膣内配置用の薬剤送達装置は、従来技術において周知である。」(1頁4行) 「上述の一つ以上の活性物質を長期間にわたって実質的に一定の放出率で放出する放出装置は、避妊、ホルモン補充療法又は局所療法の分野における特定の用途に有用であると証明されたが、放出パターンが予めプログラムされたため、治療期間中に変更することができないという欠点を有する。」(1頁20~24行) 「さらに、個別医療の場合、患者の特定のニーズに適合したインタラクティブな投薬又は患者の特定の体重又は性別に調整したインタラクティブな投薬をする必要がある。最後には、かなりの数の化合物は、現在では(吸収不良、短い半減期及び他の消化管に関連する理由によって)経口投与に適しておらず、侵襲性非経口投与(例えば、毎日の注射による避妊など)を介しても非常に不便である。」(1頁30~35行) (摘記1iii) 「本発明の目的は、薬剤の全身送達に特に有用であり、上述の欠点を回避し、診断に適しており、インタラクティブ投薬及び個別投薬を与えることができる膣内薬剤送達装置を提供することである。本発明の更なる目的は、今までにヒト薬剤及び動物薬剤に、特にヒト薬剤に適していないかなりの数の化合物を使用可能にすることである。」(2頁1~5行) 「したがって、本発明は、電子カプセルを含む膣薬剤送達及び/又は診断装置に関する。… 電子カプセルは、薬剤リザーバと、診断手段と、リザーバから薬剤を膣内に分配するための手段とから選択される1つ以上の構成要素を備える。電子カプセルは、これらの構成要素に加えて、他の機能を実行する他の構成要素を備えてもよい。」(2頁6~13行) 「好ましくは、膣粘膜による吸収を確実に最適化するために、少なくとも位置決め部材のカプセルに最も近い部分が、薬剤をプログラムしたとおりに位置決め部材のより大きな表面にわたって連続的又は間欠的に分配することができるように、本発明の膣内薬剤送達装置を構成する。」(4頁18~21行) 「本発明の位置決め部材とともに好適に使用される電子カプセルは、WO2011/039680(当審注:引用文献14)に記載されている。このカプセルは、投与すべき物質を貯蔵するためのリザーバを備える。リザーバは、分配穴を介して、カプセルを取り囲む環境と連通する。リザーバの区画室は、ポンプを収容するモータ区画室から分離されている。好適には、カプセルは、更に電子機器の区画室を有する。 カプセルは、子宮頚管粘液の品質、ホルモンレベル、グルコースレベル、温度、pHなどに限定されないがそれらを含む患者の様々なパラメータを監視するための1つ以上のセンサ又はいわゆる「ラボオンチップ」を更に備えてもよい。これらのセンサ/チップは、健康診断テストの実行、生化学的パラメータの監視、腫瘍細胞(例えば、卵巣癌、子宮内膜癌又は子宮頸癌など)又は膣炎などの感染症又は神経学的機能に限定されないこれを含む他の生理的機能の検査を行うことができる。このような検査は、一度だけで又は繰り返して連続的又は断続的に行うことができる。 センサは、位置決め部材に設けられてもよい。カプセルは、好適には無線接続を介して体外の受信装置と通信することができる。受信装置は、例えば、センサによって測定されたデータを記録し、リザーバ内に含まれた物質の放出パターンを調整することができる。このように、装置の全体は、インタラクティブになる。センサにより測定された各種パラメータの値に従って薬剤の放出を調整することによって、薬剤の投与を完全に個別化することができる。 代替的には、センサは、分配手段と通信することができ、センサによって行われた測定結果に基づき、分配手段からの活性物質の放出を直接に制御することができる。センサは、好適には特定のパラメータを測定し、必要に応じて実測値を所望のパラメータ値と比較し、活性物質の放出を調整することができる。一実施形態において、例えば、患者の血液中の血糖値を測定する血糖センサを使用可能である。測定された血糖値に基づいて、同一カプセル又は別のカプセルのリザーバからのインスリンの放出を制御する。更なる実施態様において、インスリン及びグルカゴンの両方を分配することによって、患者の血糖値を減少又は増加することができる。 更なる実施態様において、膣内装置は、生殖補助治療において受精率パラメータを測定するために使用することができる。FSH、LH及び17β-エストラジオールを測定することによって、治療中に特定段階の正確な時機を決定することができる。このような段階は、例えばホルモン及び関連薬剤の投与、受精時機及び卵胞採取時機を含む。好適には、測定されたパラメータは、次の治療段階のタイミングを決定する医師に伝達される。この実施形態において、装置は、外部と通信し、情報を医師に送信する。 本発明の膣内装置の更なる用途は、血液中特定の薬剤の濃度を測定することに関する。測定された濃度に基づき、所望の濃度と比較して、薬剤の放出を制御又は調整することができる。このことは、装置によって、外部からの干渉を受けずに、カプセル内に又はカプセルの間に行うことができる。この用途は、ドーパによるパーキンソン病の治療に特に適している。 上記及び他の用途は、個人の特定のニーズに完全に適した高度な個別化医療をもたらす。 この特許出願において、薬剤貯蔵手段並びに薬剤送達手段及び/又は診断手段を備える電子素子は、「カプセル」と呼ばれている。カプセルという用語は、素子が突出部又は隆起部のない平坦外観を有することを意味する。このような形状は、WO2011/039680の好ましい実施形態に開示されている。」(5頁12行~6頁21行) 「膣内装置の診断機能は、温度の監視、LH及びFSHの監視、さまざまなステロイドホルモンの監視、pHの測定、粘度の測定、タンパク質の分析、核酸特にDNA化合物の分析、シグナル伝達分子(例えば、サイトカイン)又は他の生理学的機能例えば神経的機能の検出に特に関連している。 膣内装置は、薬剤送達のために設計される場合に、薬剤貯蔵空間を備える。貯蔵空間が放出部位から離れて配置される場合に、膣内装置は、貯蔵空間から薬剤放出部位までの輸送システムを含んでもよい。放出部位は、好適には、薬剤送達部位に設けられた膜又は微孔面である。薬剤の送達は、可変的送達、連続的送達、断続的送達、単一薬剤の送達又は他の任意種類の送達であってもよい。 薬剤は、好適には、流体溶液、ゲル組成物、必要に応じて粘着性のあるゲル組成物、又は泡状組成物として送達される。送達媒体(溶液、ゲル、発泡体又は他の流体)の組成は、好適には、膣内の環境(例えば、pH)を復元又は保護するように選択される。 電子カプセルは、診断センサを備えた場合、好適には、電子系を診断センサ及び薬剤放出部(貯蔵、輸送、接触面)に連結する内部接続を含む。また、カプセルは、診断データを分析するための手段を更に含む。好適には、診断データは、カプセル内の記憶手段に記憶され、及び/又は外部データ装置に送信される。データは、無線で送信することができる。 外部の機能制御用の受信機を介して、電子カプセルの機能を制御することが可能である。」(6頁34行~7頁18行) 「好ましい実施形態において、装置は、遠隔に制御することができる。 本発明の薬剤送達及び/又は診断装置は、生殖疾患の周期分析、慢性感染症及び自己免疫疾患の診断ならびにその治療に使用することができる。さらに、薬剤治療は、膣萎縮、子宮内膜症の場合だけではなく、関連性のない他の身体障害の場合にも、適用することができる。 … 一日に24時間の連続投与を可能にすることは、投与された化合物の全身血清レベルを安定に維持し、頻繁な経口投与によって病気を最適に治療できない場合に(例えばドーパ投薬によるパーキンソン病を治療する場合に)、治療結果に有益である。さらに、薬剤を「オンデマンド」送達可能な装置は、例えば、インスリン依存性糖尿病、パーキンソン病(いわゆるオン/オフエピソード)に利点を有するが、これらに限定されていない。 膣内装置(特に、2つのカプセルを有する実施形態)の診断可能性を薬剤送達用途と組み合わせると、膣内装置の診断によって測定されたパラメータ(例えば、糖尿病患者のインスリン値及びグルコース値)に基づき、投与される化合物の連続的又は断続的投与及び連続的な調整をもたらすことができる。」(8頁3~21行) イ 引用文献1の記載、特に、請求項1、2、20の記載(摘記1i)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「膣内配置のために構成された位置決め部材に接続された電子カプセルを備える、膣内薬剤送達装置であって、 前記電子カプセルは、薬剤又はホルモンを含むリザーバと、診断手段と、前記リザーバから薬剤又はホルモンを膣内に分配するための手段とから選択される一つ以上の構成要素を含み、 前記装置は、薬剤又はホルモンの血中値を測定するためのセンサと、測定された薬剤又はホルモンの血中値及び所望の薬剤又はホルモンの血中値に基づき、分配される薬剤又はホルモンの量を決定するための手段とを備える、膣内薬剤送達装置。」 (2)引用文献14について ア 引用文献14は、引用文献1の5頁12~16行(摘記1iii)、及び、本願明細書【0065】において引用された文献である。 引用文献14には、以下の事項が記載されている(原文は英文であるため、当審による訳文で記載する。当審による下線を付した箇所がある。)。 「1.リザーバ(204)を備える電子カプセル(200)であって、前記カプセルは、生殖器内に配置され、前記臓器内に配置された状態で、前記リザーバから、前記器官内に効果的に投与される物質を分注すること(S425)を含む、電子カプセル。」(請求項1) 「本発明は、身体器官内に配置するための電子カプセルに関し、詳細には、生殖器官内に配置し器官内から物質を分配するための電子カプセルに関する。」(1頁4~6行) 「本発明の一態様では、電子カプセルは、リザーバを特徴とし、生殖器官内に配置されるように構成される。カプセルは、その中に配置されている間に、上記器官内から効果的に投与される物質をリザーバから分配する。 別の態様では、カプセルは、ホルモンのレベルを測定するためのバイオセンサを有し、測定されたレベルに基づいて分配するように更に構成される。」(2頁28行~3頁2行) 「更なる一態様では、リザーバを有し、生殖器官内に位置する電子カプセルを動作させるためのコンピュータソフトウエア製品は、コンピュータプログラムを具現化するコンピュータ可読記憶媒体を含む。プログラムは、カプセルが前記器官内に位置している間に、上記器官内に効果的に投与される物質をリザーバから分注するように、プロセッサによって実行可能な命令を含む。」(4頁12~16行) 「本提案によれば、測定、監視、及び分析は、患者112の生殖周期における時間を決定するために使用される。薬物送達は、受胎の成功のための周期及び条件を増強するために使用される。薬物送達のタイミングは、デバイスと外部機器との間で通信されるデータ及び分析とともに、埋め込まれたデバイス200の内部のプログラムによって制御される。 カプセル200は、無線周波数(RF)リンクによって、本体112の外側の受信機システムと無線接触している。受信機システムは、センサ238、244からの測定値など、カプセル200によって報告されるデータを記録することができる。温度センサなどの他のセンサがカプセル200に搭載されていてもよい。…コンピュータプログラム又はオブザーバによるデータの分析は、同じカプセル200からの薬物158の送達などの措置を講じるためのインテリジェント入力として使用することができる。」(8頁16~28行) 「カプセル200から薬物を放出することによって、注射による投与の必要性が排除される。さらに、この薬物は局所的に活性であるので、全身循環に到達する薬物の量は、薬物の副作用とともにかなり減少する。…薬物送達のタイミング及び量は、オンボードデータ並びに外部データ及び分析からの入力を使用してアクションを取るデバイス電子機器232の制御下にある。タイミングトリガを含む外部データは、外部ユニットからカプセル200に無線で通信される。薬物送達の用量及び持続時間もまた、個人112の詳細に適合させることができる。…実際の身体レベルからのデータは、所望の送達用量及び持続時間を決定するために使用され得る。」(10頁15~28行) 「このシステムはまた、生殖能力以外の領域、すなわち、他の婦人科学的用途、特に、測定、モニタリング、及び薬物送達の組合せが利益をもたらす場合に有用性を見いだし得る。」(11頁18~20行) 「カプセルは、オンボードセンサと制御回路とを有し、その制御回路は、物質を投与する際の決定及びタイミングのために、自動的に、又は、臨床医又はユーザによって誘導されて機能する外部プロセッサと無線通信するものである。」(13頁15~18行) イ 上記アの記載によれば、引用文献14には、次の電子カプセルが記載されている。 「リザーバ、バイオセンサ、自動的にあるいは臨床医又はユーザによって誘導されて機能する外部プロセッサ(外部ユニット)と無線通信する制御回路とを有する、生殖器内配置された状態でリザーバから薬物を送達する、電子カプセルであって、 バイオセンサにより測定される測定値は、外部ユニットにある受信機に送られ記録され、分析され、更にタイミングトリガを含む分析データが、外部ユニットから電子カプセルに無線で通信され、 薬物送達の用量及び持続時間が、埋め込まれた内部のプログラムとともに、前記通信されたデータ及び分析によって制御される、 電子カプセル。」 (3)引用文献15について 引用文献15には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 薬物送達デバイスであって、 第1の治療薬を含む、又は本質的に第1の治療薬からなる第1の液体を収容するための第1のリザーバと、 前記第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を含む、又は本質的に前記第2の治療薬からなる第2の液体を収容するための第2のリザーバと、 薬物送達の投薬計画を格納するためのメモリと、 前記格納された薬物送達の投薬計画の実行に基づいて、少なくとも1つのカニューレを介して前記第1及び第2の液体を患者に送達することを制御するためのマイクロプロセッサとを含む、薬物送達デバイス。 【請求項2】 前記患者からのフィードバックを受け取るためのセンサを更に含み、前記マイクロプロセッサが、前記フィードバックに基づいて前記薬物送達の投薬計画を変更するように構成されている、請求項1に記載の薬物送達デバイス。 … 【請求項8】 前記薬物送達の投薬計画を再プログラミングする命令をワイヤレスで受信するためのトランシーバを更に含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。」(請求項1、2、8) 「【0024】 説明 一般に、本発明の実施形態は、例えば患者の目のような、患者の体の一部に治療薬を送達するための装置と方法に関する。特定の実施形態において、目に対する埋め込み型薬物送達デバイスは、小さいサイズ及び詰め替え可能なリザーバを兼ね備える。小さいサイズは、デバイスから患者の目への不快感を最小限にすると同時に、詰め替え可能なリザーバにより、デバイスは、交換される代わりにそのままで詰め替えられる(補充される)ことが可能になる。そのようなものだから、単一薬剤の溶液のような流体は、長期間にわたって患者の目に供給され得る。」(【0024】) 「【0054】 一実施形態において、センサ134は、患者からのフィードバックを収集する。次いで、マイクロプロセッサ130は、メモリ132に格納された薬物送達の投薬計画を変更するためにフィードバックを使用することができる。例えば、センサ134は、患者の眼圧を測定することができ、その後、マイクロプロセッサ130は、組み合わせて使用されている複数の薬の1つ又は複数が放出される量および/または頻度を増減することができる。別の例として、センサ134は、患者の組織に残された第1の薬の残留量を求めることができ、第1の薬の残留物が消滅した際に、マイクロプロセッサ130は、第2の薬が患者に送達され得ることを生じさせるための命令を発行することができる。一実施形態において、センサ134は、患者における第1の薬の生理学的効果を監視することにより、患者の組織における第1の薬の残りの存在を判定する。例えば、センサ134は、患者の血液をサンプリングして分析することにより、第1の薬に対する患者の反応を測定することができる。」(【0054】) 「【0056】 上述した機能は、薬物送達デバイス90内で完全に実現され得るか、又は代案として、マイクロエレクトロニクスは、局所的に実現されている特定の機能に加えて、機能が遠隔的にも実現され得るように、トランシーバ136も含むことができる。一実施形態において、トランシーバ136は、局所的部分と遠隔的部分との間でワイヤレス通信を可能にする。更に、トランシーバ136は、医者が薬物送達の投薬計画をワイヤレス(無線)で再プログラミングすることを可能にするために使用され得る。」(【0056】) 5 本願発明と引用発明との対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「薬物又はホルモン」と本願発明の「膣を通して投与されない生物活性化合物」とは、「生物活性化合物」である限りにおいて一致する。 引用発明の「膣内配置のために構成された位置決め部材」、「薬物又はホルモンを含むリザーバ」、「膣内薬剤送達装置」は、本願発明の「ハウジング」、「生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバー」、「膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイス」に相当する。 また、引用発明の「膣内薬剤送達装置」が「備え」ている「薬剤又はホルモンの血中値を測定するためのセンサ」は、本願発明の「膣用薬物送達デバイス」が「含む」「自身の膣に前記デバイスを有する人の生理学データを収集する手段」に相当する。 さらに、引用発明の「測定された薬剤又はホルモンの血中値及び所望の薬剤又はホルモンの血中値に基づき、分配される薬剤又はホルモンの量を決定するための手段」及び「前記リザーバから薬剤又はホルモンを膣内に分配するための手段」は、「薬剤又はホルモンの量」を「決定」して「分配」する手段であって、何らかの「制御」を行い「放出」する手段といえるから、本願発明の「リザーバーから化合物を膣内に制御放出する手段」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「ハウジングと、生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバーと、リザーバーから化合物を膣内に制御放出する手段とを含む、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイスであって、 自身の膣に前記デバイスを有する人の生理学データを収集する手段をさらに含み、 膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイス。」 <相違点1> 「生物活性化合物」が、本願発明においては、「膣を通して投与されない生物活性化合物」であるのに対し、引用発明においては、「薬物又はホルモン」である点。 <相違点2> 「制御放出」が、本願発明においては、「(1)予めプログラムされた薬剤放出スケジュール、および(2)患者の希望に基づいて、または前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、前記患者、医師、もしくは看護師によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによるものである」のに対し、引用発明においては、「測定された薬剤又はホルモンの血中値及び所望の薬剤又はホルモンの血中値に基づき、分配される薬剤又はホルモンの量を決定する」ものである点。 (2)判断 ア 相違点1について 本願明細書には、本願発明の膣用薬物送達デバイスを通して投与される化合物として、各種の「精神科および神経科の薬物」や「ホルモン」等が記載されている(【0010】~【0011】)。また、本願発明の「膣を通して投与されない生物活性化合物」として、本願の請求項1を引用する請求項15には、「インスリン」や「エストロゲン」などの「ホルモン」や、「精神科および神経科の薬物」が記載されている。 他方、引用文献1には、引用発明の「膣内薬剤送達装置」により「膣内に分配」される「薬物又はホルモン」の具体例として、インスリン(5頁30行~6頁3行)、FSH、LH、17β-エストラジオール(当審注:「エストロゲン」の一種。「岩波 生物学辞典 第4版」、2000年第4版第5刷、128頁「エストロゲン」の項)などのホルモン(6頁4~10行)が記載され、頻繁な経口投与によって病気を最適に治療できない場合に(例えば、ドーパ投薬によるパーキンソン病を治療する場合に)有益である旨(8頁12~17行)も記載されている。 そうすると、引用発明の「薬物又はホルモン」と、本願発明の「膣を通して投与されない生物活性化合物」とは、重複しており、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。 仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用文献1には、「本発明の目的は、薬剤の全身送達に特に有用であり、上述の欠点を回避し、診断に適しており、インタラクティブ投薬及び個別投薬を与えることができる膣内薬剤送達装置を提供することである。」(2頁1~5行)と記載されており、特段、薬剤の種類が限定されているわけではないから、引用発明の「薬剤又はホルモン」として、引用文献1に例示された、本願発明の「膣を通して投与されない生物活性化合物」に相当するインスリンやドーパなどを採用し、本願発明の「膣を通して投与されない生物活性化合物」を備えたものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点2について (ア)引用文献1に記載された電子カプセルについて 引用文献1には、好適に使用される電子カプセルは、WO2011/039683(引用文献14)に記載されたものであることが記載され(5頁12~16行)、これは、上記4(2)イに説示した、次のとおりのものである。 「リザーバ、バイオセンサ、自動的にあるいは臨床医又はユーザによって誘導されて機能する外部プロセッサ(外部ユニット)と無線通信する制御回路とを有する、生殖器内配置された状態でリザーバから薬物を送達する、電子カプセルであって、 バイオセンサにより測定される測定値は、外部ユニットにある受信機に送られ記録され、分析され、更にタイミングトリガを含む分析データが、外部ユニットから電子カプセルに無線で通信され、 薬物送達の用量及び持続時間が、埋め込まれた内部のプログラムとともに、前記通信されたデータ及び分析によって制御される、 電子カプセル。」 上記引用文献14に記載された電子カプセルは、「薬物送達の用量及び持続時間」が「埋め込まれた内部のプログラム」によって制御されるものであるから、相違点2に係る本願発明の「(1)予めプログラムされた薬物放出スケジュール」による「制御放出」ができるものである。 また、上記引用文献14に記載された電子カプセルは、「臨床医又はユーザによって誘導されて機能する外部プロセッサ(外部ユニット)と無線通信する制御回路とを有」し、「薬物送達の用量及び持続時間が、」「前記通信されたデータ及び分析によって制御される」ものであるから、相違点2に係る本願発明の「(2)」「前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、」「医師もしくは看護師によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによる」「制御放出」ができるものである。 したがって、上記引用文献14に記載された電子カプセルは、相違点2に係る本願発明の制御放出を実行できる電子カプセルであると解される。 このことは、WO2011/039683(引用文献14)は、本願明細書【0065】に示された、本願発明において使用可能な電子機器が記載された文献であることからも明らかである。 (イ)相違点2の「(1)」について 引用文献1には、薬剤をプログラムしたとおりに連続的又は間欠的に分配することができるように、膣内薬剤送達装置を構成することが記載されている(4頁18~21行)。 これは、相違点2に係る本願発明の「(1)予めプログラムされた薬物放出スケジュール」による「制御放出」に相当する。 (ウ)相違点2の「(2)」について a 引用文献1には、「装置は、遠隔に制御することができる。」(8頁3行)と記載されている。 また、引用文献1には、オンデマンド送達が可能であり、インスリン依存性糖尿病やパーキンソン病(いわゆるオン/オフエピソード)に利点を有することが記載されており(8頁12~17行)、この「オンデマンド送達」は患者の希望による送達であると解される。 そうすると、引用文献1の記載に接した当業者であれば、患者の希望によって、引用発明の膣内薬剤送達装置を患者自身が遠隔に操作し、相違点2に係る本願発明の「(2)患者の希望に基づいて、」「前記患者」「によって遠隔により調節される薬剤放出スルジュールによるもの」とすることは、当業者が容易に想到することができたものといえる。 b 引用文献1には、「装置は、遠隔に制御することができる。」(8頁3行)及び「カプセルは、好適には無線接続を介して体外の受信装置と通信することができる。受信装置は、例えば、センサによって測定されたデータを記録し、リザーバ内に含まれた物質の放出パターンを調整することができる。このように、装置の全体は、インタラクティブになる。センサにより測定された各種パラメータの値に従って薬剤の放出を調整することによって、薬剤の投与を完全に個別化することができる。」(5頁24~29行)と記載されている。 上記記載は、引用発明の「測定された薬剤又はホルモンの血中値及び所望の薬剤又はホルモンの血中値に基づき、分配される薬剤又はホルモンの量を決定する」ことが、センサによって測定されたデータを、体外の受信装置へ送信し、そのデータに基づいて、リザーバ内の薬剤又はホルモンの放出パターンを遠隔に調整し、インタラクティブ投薬(双方向の投薬)を行うことを意味すると解される。 これは、相違点2に係る本願発明の「前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、」「遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによる」「制御放出」に相当する。 そこで、この場合に、誰が遠隔により薬剤放出スケジュールを調節するかを検討する。 c 引用文献1には、「装置は、外部と通信し、情報を医師に送信する。」(6頁9~10行)と記載されている。 また、本願優先日当時、「体内に留置された機器による薬物送達システムにおいて、当該機器に予め搭載されたプログラムによる薬物放出スケジュールに従って薬物が放出されることに加え、患者のデータをセンサで測定して外部機器に送信し、当該データを参照した医療従事者等により変更されたプログラムが当該機器に送信されて、そのプログラムにより修正された薬物放出スケジュールに従って薬物が放出される手法」は、周知となっていた(引用文献15:請求項1、請求項2、請求項8、【0054】、【0056】等参照)。 そうすると、引用発明に係る膣内薬剤送達装置から、医師に送信された情報(データ)に基づいて、「医師」が、薬剤又はホルモンの薬剤放出スケジュールを調節するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。 d 上記b及びcによれば、引用発明において、相違点2に係る本願発明の「(2)」「前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、」「医師」「によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによる」「制御放出」との構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 (エ)上記(ア)~(ウ)によれば、引用発明において、引用文献1にされた電子カプセル(引用文献14)を使用して、相違点2に係る本願発明の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたものといえる。 ウ 効果について 本願発明1の効果は、引用文献1、14、15に記載された事項から、当業者が予測可能な程度のものにすぎない。 (3)小括 以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1、14、15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 請求人の主張について 請求人は、本願発明と引用発明とは、本願発明が「A3.前記制御放出は、(1)予めプログラムされた薬剤放出スケジュール、および(2)患者の希望に基づいて、または前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、前記患者、医師、もしくは看護師によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュールによるものである」という構成要件A3を有する点で相違し、引用文献1、及び、引用文献2~15には、構成要件A3の(1)及び(2)の薬剤放出スケジュールによって制御放出が行われることについては記載も示唆もされていない旨を主張する(令和5年2月2日提出の意見書3~4頁)。 しかしながら、上記5(2)イ(イ)に説示したように、「(1)予めプログラムされた薬剤放出スケジュール」とすることは、引用文献1に記載されている。 また、上記5(2)イ(ウ)aに説示したように、「(2)」の「患者の希望に基づいて」「患者」「によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュール」とすること、また、上記5(2)イ(ウ)b~dに説示したように、「(2)」の「前記デバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて、」「医師」「によって遠隔により調節される薬剤放出スケジュール」とすることは、当業者が容易に想到することができたものといえる。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献1、14、15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-000039

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