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特許異議申立

2020-700897

多結晶シリコンの収容治具および多結晶シリコンの製造方法

審判番号
2020-700897
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-216178
登録番号
6700370
請求日
2020年11月24日
審決日
2022年05月31日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】信越化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】大野 聖二
  • 【権利者代理人】大野 浩之
  • 【異議申立人】丸林 敬子
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 関根 崇
分類
P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6700370号発明「多結晶シリコンの収容治具および多結晶シリコンの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6700370号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。 特許第6700370号の請求項2、3に係る特許を維持する。 特許第6700370号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6700370号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成27年9月17日を出願日とする特願2015-184065号の一部を、平成30年11月19日に特願2018-216178号として新たな特許出願としたものであって、令和2年5月7日に特許権の設定登録がされ、同年5月27日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 2年11月24日 :特許異議申立人 丸林 敬子(以下、「特許 異議申立人」という。)による請求項1~3 に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 3年 3月 9日付け:取消理由通知 同年 5月17日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年 6月 7日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 7月23日 :意見書の提出(特許異議申立人) 同年 9月28日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年11月12日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年12月22日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年11月12日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項(1)~(3)からなる(下線部は、訂正箇所を示す)。 なお、同年5月17日にされた訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)は、本件訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記揮発有機成分の総濃度は、直鎖状テトラデカン(n-C14H30)を標準物質として定量された値である、請求項1に記載の多結晶シリコンの収容治具。」 と記載されているのを、 「多結晶シリコン塊を収容するプラスチック製(PVDFを除く)の治具であって、 前記収容治具は、 Heガス雰囲気下において、250℃以上の温度で加熱した際に揮発する有機成分の濃度をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で定量した際の揮発有機成分の総濃度が200ppmw以下であるプラスチックから成り、 前記揮発有機成分の総濃度は、直鎖状テトラデカン(n-C14H30)を標準物質として定量された値である、多結晶シリコンの収容治具。」に訂正する。 当該請求項2を引用する請求項3についても同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「請求項1または2に記載の収容治具に多結晶シリコン塊を収容し、該多結晶シリコン塊を清浄化する工程を備えている、多結晶シリコンの製造方法。」 と記載されているのを、 「請求項2に記載の収容治具に多結晶シリコン塊を収容し、該多結晶シリコン塊を清浄化する工程を備えている、多結晶シリコンの製造方法。」 (4) 一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を、請求項2、3が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~3は一群の請求項であるところ、本件の訂正事項1~3に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔1~3〕を訂正の単位として請求されたものである。 ただし、請求項2、3についての訂正が認められる場合に、訂正後の請求項2、3は、一群の請求項である請求項1とは別の訂正単位とすることが求められている。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、設定登録時の請求項2が請求項1を引用していたところ、引用関係を解消して請求項2を書き下した上で、「多結晶シリコン塊を収容するプラスチック製の治具であって、」の記載を「多結晶シリコン塊を収容するプラスチック製(PVDFを除く)の治具であって、」と訂正するものであって、「プラスチック製の治具」の特定事項において、治具の材質であるプラスチックがPVDFである場合を除くものである。 そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1による請求項の削除に伴い選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 独立特許要件について 特許異議の申立ては、本件訂正前の全ての請求項1~3についてされたものであるから、訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、特許権者から、上記1(4)のとおり、訂正後の請求項2、3については、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがあったことから、訂正後の請求項2、3についての訂正は、請求項1とは別の訂正単位として扱う。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項2、3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」、「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項2、3に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項2】 多結晶シリコン塊を収容するプラスチック製(PVDFを除く)の治具であって、 前記収容治具は、 Heガス雰囲気下において、250℃以上の温度で加熱した際に揮発する有機成分の濃度をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で定量した際の揮発有機成分の総濃度が200ppmw以下であるプラスチックから成り、 前記揮発有機成分の総濃度は、直鎖状テトラデカン(n-C14H30)を標準物質として定量された値である、多結晶シリコンの収容治具。 【請求項3】 請求項2に記載の収容治具に多結晶シリコン塊を収容し、該多結晶シリコン塊を清浄化する工程を備えている、多結晶シリコンの製造方法。」 第4 特許異議の申立ての理由及び証拠方法について 1 申立ての理由 特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第5号証(以下、「甲1」~「甲5」という。)を提出し、本件特許は、以下の申立理由1、2により取り消すべきものである旨主張している。 (1) 申立理由1(特許法第29条第1項第3号) 設定登録時の請求項1、3に係る発明は、甲3~5に記載された技術事項を踏まえると、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(特許法第29条第2項) 設定登録時の請求項1~3に係る発明は、甲2~5に記載された技術事項を踏まえると、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 甲1:特開平7-242494号公報 甲2:特表2010-528955号公報 甲3:特開2000―26687号公報 甲4:プラスチックス 2月号、“特集/ふっ素樹脂-PVDFの特性と用途 開発”,日本プラスチック工業連盟誌,昭和60年2月1日、第36巻、第 2号,p.49-62 甲5:“ソレフ(R)(当審注:原文は、丸囲みのRである。) PVDF デザインおよび加工ガイド”,ソルベイスペシャルティポリマーズジ ャパン株式会社,2016年 第5 取消理由について 令和3年9月28日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理 由の概要は、次のとおりである。 先の訂正請求により訂正された請求項1、3に係る発明は、甲4に記載された技術事項を踏まえると、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 第6 当審の判断 1 取消理由(決定の予告)についての判断 本件特許の請求項1は、上記第2に記載したとおり、本件訂正請求による訂正により削除された。また、本件特許の請求項3は、請求項1、2を引用するものであったところ、同訂正により、取消理由(決定の予告)を通知していない請求項2のみを引用するものとなった。 したがって、当該取消理由による理由はない。 2 取消理由に採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断 上記1のとおり、本件特許の請求項1は削除されたため、当該請求項1を引用する請求項3についての新規性欠如の申立理由1は解消したから、ここでは、本件発明2、3に対する進歩性欠如の申立理由2(特許法第29条第2項)について判断する。 (1) 各証拠の記載事項 ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 1a「【請求項1】 シリコン片が収容された容器底部の中心部から洗浄液を導入し、容器の中心部では供給された洗浄液によってシリコン片が上昇すると共に容器内壁側ではシリコン片が自重によって沈降する緩やかな対流を容器内に形成して洗浄することを特徴とするシリコン片の洗浄方法。」 1b「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、シリコン片を半導体用原料として再利用できる純度に洗浄することができるシリコン片の洗浄方法に関する。半導体用の多結晶シリコン棒は単結晶シリコンの原料として用いられ、多結晶シリコン棒を小塊に破砕し、これを溶融して単結晶シリコンを引上げる。この多結晶シリコン棒の破砕に伴って生じるシリコン片は、破砕の際に汚染されているため半導体原料としては使用されず、大部分はそのまま廃棄されており、太陽電池用原料などとして再利用されるものはごく僅かである。本発明はこのような従来、廃棄処分されていた破砕シリコン片を半導体原料として再利用できる純度に洗浄する方法を提供するものである。」 1c「【0003】 【発明の解決課題】通常、半導体原料として用いられるシリコンの表面汚染を除去するには、塩酸や硝酸などの水溶液を洗浄液として用い、酸洗浄を行う。多結晶シリコン棒の破砕によって生じたシリコン片についても、この酸洗浄によって表面汚染を一応除去することができるが、洗浄効果が不十分であり、半導体用原料としての純度が得られない。すなわち、この種の洗浄は、一般に、シリコン片を収容した洗浄容器に洗浄液を供給し、シリコン片を洗浄液に浸漬した状態で攪拌することによって行われるが、洗浄効果を高める目的で攪拌速度を上げ、あるいは攪拌時間を長くしても洗浄効果はそれほど向上せず、不純物を十分に除去することができない問題がある。また雰囲気からの不純物の混入を防止するために、クリーンブース内で操作を行っても同様である。本発明は、従来の洗浄方法における上記問題を解決するものであって、多結晶シリコンの破砕シリコン片を半導体原料として使用できる純度に洗浄する方法を提供するものである。」 1d「【0006】 【具体的な説明】多結晶シリコン棒は単結晶シリコン引上げ原料として使用する場合、20~120mmの小塊(ナゲット)に破砕する。この破砕の際に10mm以下の小片状のシリコンが生じる。本発明の洗浄方法は主に多結晶シリコン棒を破砕する際に生じるこのシリコン片を対象とするが、破砕シリコン片に限らず端部が鋭利なシリコン片の洗浄について効果がある。上記シリコン片は洗浄容器に収容され、洗浄液が供給される。洗浄容器はその内部で洗浄液の緩やかな対流を形成するために筒状であって底部が漏斗状のものが好ましい。さらに洗浄容器はその底部に洗浄液の給液口を有し、上部に排液口を有するものが用いられる。洗浄液は、半導体原料用シリコンの洗浄に通常用いるものであれば良く、例えば酸洗浄には、塩酸、硝酸、弗酸と硝酸の混酸などの水溶液が用いられる。洗浄液の酸濃度は適宜定められる。また水洗浄には純水が用いられる。」 1e「【0011】シリコン片20は洗浄容器1に収容され、給液口3を通じて洗浄液が供給される。洗浄液は所定の酸濃度になるように各タンク7、9、11から塩酸または混酸が供給される。洗浄容器内部で、洗浄液は図示するように緩やかな対流を形成し、シリコン片20はこの流れに従って容器中央部では上昇し、容器内壁側では自重によって沈降する。洗浄液の量が増加するのに伴い、洗浄液は容器頭部の排液口2から溢流し、管路8を通じて外部に排出され、あるいは塩酸タンクや混酸タンクに戻される。また洗浄後のシリコン片20は洗浄水によってストッカー4に送り出され、脱水後、ストッカー4に収容した状態で乾燥設備に送られる。因みに、上記洗浄装置の材質は2フッ化テフロン(PVDF)などが好ましい。装置材料として常用される塩化ビニルは好ましくない。塩化ビニルは含有されている安定化剤の金属化合物が硝酸によって溶出し汚染源となる。」 イ 甲2の記載事項 2a「【請求項1】 充填装置を用いて多結晶シリコンを、懸吊された成形済みのバッグに充填し、前記充填されたバッグを引き続き密閉する、多結晶シリコンを包装する方法において、前記バッグは10~1000μmの壁厚を有する高純度プラスチックからなることを特徴とする、多結晶シリコンを包装する方法。」 2b「【0020】 低汚染の材料とは、本発明の範囲内で、ポリシリコンとの接触後に前記ポリシリコンの表面を高くても次の程度に汚染する材料であると解釈される:金属は表2に記載された数値よりも10倍、有利に5倍、特に有利に1倍以下;ドーパント値のホウ素、リン、ヒ素、アンチモンは10pptaよりも低く、有利に2pptaよりも低く;炭素は300pptwよりも低い。 【0021】 この汚染は、「材料との接触後のSi破砕物の汚染」引く「材料との接触前のSi破砕物の汚染」の差により算出される。高純度プラスチックとは、有利にポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)又はポリプロピレン(PP)である。 【0022】 高純度とは、有利に、プラスチックがバルク内で及び表面上に、帯電防止剤、例えばSiO2、又は離型剤、例えば長鎖有機化合物(例えばエルカミド)の添加物を含有しないことであると解釈される。」 ウ 甲3の記載事項 3a「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、熱安定性(特に初期着色性)に対して安定性良好なポリ塩化ビニル樹脂系組成物に関するものであり、詳しくは配合組成中にZn,Cd,Ba,Sn等の重金属を含有しないポリ塩化ビニル樹脂用安定化剤及びポリ塩化ビニル樹脂系組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】ポリ塩化ビニル樹脂は、熱・光に対して不安定な樹脂であり、特に成形加工の際に主として脱塩化水素に起因した熱分解等によって着色劣化を起こしやすい。この成形加工時の熱等による劣化要因の除去または低減化のために安定剤の添加が必用とされている。 【0003】従来、鉛系,Ba,Zn,Ca等の複合金属石けん系,有機錫系等の安定剤が用いられてきており、さらに、エポキシ化合物、有機亜リン酸エステル化合物、β-ジケトン化合物、多価アルコール化合物、含窒素化合物等が併用して用いられてきた。」 3b「【0005】例えば半導体製造設備(洗浄設備、エッチング装置等)関係では、その工程中で種々の処理をしなければならず、Pb、Sn、Znなどの重金属化合物を安定剤として含むポリ塩化ビニル樹脂は、工程中でこれら金属が溶出して電子部品等に悪影響を及ぼすことになる。このため、半導体製造設備用の樹脂組成物中には重金属が含まれていないことが望まれている。」 エ 甲4の記載事項 甲4は、フッ素樹脂の中でも特に成形性に優れたフッ化ビニリデン樹脂製品である「カイナー“KYNAR・PVDF=ポリビニリデンフルオライト」や「Solef(ソーレフ)」などについて解説されたものであり、超純水による抽出試験によって金属及び非金属イオンはほとんど検出されないことや、後者については、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤を含んでいないため、過酸化水素などの薬液に耐性があり、薬液や超純水を汚染しないことなどが記載されている。 オ 甲5の記載事項 甲5は、本件特許の出願後に公知となった文献ではあるが、甲4に記載のフッ化ビニリデン製品である「Solef」の物性について明らかにするために提出されたものであり、同文献には、高純度のグレードのものは、純度100%のポリマーからなり、また、ソレフPVDFの溶出試験では、溶出した物質の濃度が検出限界未満であったことなどが記載されている。 (2) 甲1に記載された発明 記載事項1a~1eから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「シリコン片を洗浄する容器であって、前記洗浄容器の材質は2フッ化テフロン(PVDF)からなる、シリコン片の洗浄容器。」 (3) 対比・判断 ア 本件発明2について (ア)本件発明2と甲1発明との対比 甲1発明の「シリコン片」は、本件発明2の「多結晶シリコン塊」に相当する。 甲1発明の「2フッ化テフロン(PVDF)」は、プラスチックの一種である。 そして、甲1発明の「容器」及び「洗浄容器」は、それぞれ本件発明1の 「治具」及び「収容治具」に相当する。 以上のことから、本件発明2と甲1発明とは、 「多結晶シリコン塊を収容するプラスチック製の治具。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 (イ)相違点 本件発明2に係るプラスチック製の収容治具は、「PVDFを除く」ものであって、さらに「Heガス雰囲気下において、250℃以上の温度で加熱した際に揮発する有機成分の濃度をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で定量した際の揮発有機成分の総濃度が200ppmw以下であるプラスチックから成り、前記揮発有機成分の総濃度は、直鎖状テトラデカン(n-C14H30)を標準物質として定量された値である」ことが特定されているのに対して、 甲1発明は、収容容器が2フッ化テフロン(PVDF)であり、揮発有機成分の総濃度は明らかでない点。 (ウ)相違点についての判断 上記のとおり、本件発明2に係るプラスチック製の収容治具は、その材質として「PVDFを除く」ものであるから、本件発明2は、収容容器が2フッ化テフロン(PVDF)であることを規定する甲1発明を含まない。また、甲1の記載事項1eによれば、安定化剤の金属化合物が硝酸によって溶出し汚染源となることから、洗浄容器の材質として、2フッ化テフロン(PVDF)などが好ましいとされているところ、この安定化剤の金属化合物の溶出に関する記載のみをもって、2フッ化テフロン(PVDF)と同等の洗浄容器として好適なプラスチックとして、上記相違点に係る本件発明2の、加熱した際の揮発有機成分の総濃度による規定を充足する「プラスチック」が想定されているとまでは言い難い。 そうすると、上記相違点は、本件発明2と甲1発明との実質的な相違点であるし、また、当該相違点に係る、本件発明2の上記「プラスチック」を用いることが、甲1において示唆されているともいえない。 次に、記載事項2a、2bによると、甲2は、多結晶シリコンを包装するための高純度プラスチックからなるバッグについて記載するものであるが、当該高純度プラスチックについて、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンが例示されているにすぎず、上記相違点に係る本件発明2の特定事項を示唆するものではない。 記載事項3a、3bによると、甲3は、半導体製造設備などに用いるポリ塩化ビニル樹脂は、Znなどの重金属化合物を含有すると金属が溶出すると電子部品等に悪影響を及ぼすことが記載され、さらに、甲4、甲5は、PVDF製品についてその物性などが記載されているものであるが、いずれも、上記相違点に係る本件発明2の特定事項を何ら示唆するものではない。 したがって、本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明3について 本件発明3は、本件発明2を引用するものであって、本件発明2に係る多結晶シリコンの収容治具を用いる多結晶シリコンの製造方法の発明であるから、本件発明2の発明特定事項をすべて備えたものである。 そうすると、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから、申立理由2は、理由がない。 3 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、令和3年7月23日付けの意見書において、本件発明2について、以下のように主張する。 甲1には、洗浄装置の材質は2フッ化テフロン(PVDF)などが好ましいと記載されているだけであり、他の材料の使用を阻害するものではなく、不純物の含有量が2フッ化テフロン(PVDF)と同程度であれば、洗浄装置の材質として使用することを容易に理解できる。そして、例えば、上記意見書に添付した参考資料1(三井化学株式会社、「AURUM」カタログ、2012年8月10日)には、半導体製造装置用途の高純度ポリイミド樹脂(AURUM)や非熱可塑性PI(ポリイミド樹脂)は、アウトガス量が少ないことが示されているから、甲1発明の2フッ化テフロン(PVDF)から高純度ポリイミド樹脂(AURUM)や、同様にアウトガス量の少ない樹脂に変更することは、当業者にとって容易である。 そこで、上記主張について検討すると、上記2(3) ア(ウ)で検討したとおり、甲1発明の洗浄容器の材料として、単に汚染源とならない程度の記載のみをもって、本件発明で特定した「プラスチック」を想定しているとはいえず、また、上記参考資料1に記載の樹脂は、単に半導体製造用途と記載されているのみであり、本件発明のような多結晶シリコンの収容治具の用途を示唆しているとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2、3に係る特許を取消すことはできない。 また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項1は本件訂正により削除されたので、請求項1に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700897

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  • 2025-700642異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容炭素材料およびそれを用いてなる導電性組成物、導電膜
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B

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