特許異議申立
2020-700870
AEI型ゼオライト、その製造方法、及びそれを用いた低級オレフィンの製造方法
- 審判番号
- 2020-700870
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-227674
- 登録番号
- 特許第6693095号(P6693095)
- 請求日
- 2020年11月13日
- 審決日
- 2021年07月20日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【異議申立人】岩部 英臣
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6693095号発明「AEI型ゼオライト、その製造方法、及びそれを用いた低級オレフィンの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6693095号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、10、11〕、〔4~9〕について」)訂正することを認める。
特許第6693095号の請求項1、3~11に係る特許を維持する。
特許第6693095号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6693095号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成27年11月20日(優先権主張 平成26年11月21日)に特許出願され、令和2年4月20日にその特許権の設定登録がされ、同年5月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~11に係る特許に対して、令和2年11月13日に特許異議申立人岩部英臣(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年1月26日付けで取消理由が通知され、同年4月5日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、この訂正の請求に対して、同年5月20日に申立人により意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「ケイ素と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素を含むゼオライト」とあるのを、「ケイ素と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素を含むゼオライト」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、10、11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記平均粒子径が300nm未満であること」とあるのを、「前記平均粒子径が200nm未満であること」に訂正するとともに、「請求項1又は2に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ金属元素源と」とあるのを、「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と」と訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、「AEI型ゼオライトの製造方法。」とあるのを、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に、「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ金属元素源と」とあるのを、「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と」と訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6、8、9も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に、「AEI型ゼオライトの製造方法。」とあるのを、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6、8、9も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に、「AEI型ゼオライトの製造方法。」とあるのを、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1~3のいずれか1項に記載のAEI型ゼオライト」とあるのを、「請求項1又は3に記載のAEI型ゼオライト」に訂正する。
ここで、訂正前の請求項2、3、10、11が訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているため、請求項1~3、10、11は一群の請求項であって、訂正事項1~3、9の特許請求の範囲の訂正は、この一群の請求項〔1~3、10、11〕に対して請求されたものである。
また、訂正前の請求項6が訂正前の請求項4、5を引用し、訂正前の請求項8が訂正前の請求項5、7を引用し、訂正前の請求項9が訂正前の請求項5を引用しているため、請求項4~9は一群の請求項であって、訂正事項4~8の特許請求の範囲の訂正は、この一群の請求項〔4~9〕に対して請求されたものである。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された「ゼオライト」に含まれる「ヘテロ金属元素」について、アルミニウムが必須のものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、願書に添付された明細書の段落【0019】の記載に基づき、訂正前の請求項3の「平均粒子径」を限定するとともに、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4及び6について
訂正事項4及び6は、願書に添付された明細書の段落【0029】の記載に基づき、訂正前の請求項4及び5に記載された「ヘテロ金属元素源」に含まれる「ヘテロ金属元素」について、アルミニウムが必須のものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5、7及び8について
訂正事項5、7及び8は、願書に添付された明細書の段落【0019】の記載に基づき、訂正前の請求項4、5及び7に記載された「AEI型ゼオライトの製造方法」の目的生成物である「AEI型ゼオライト」の平均粒子径を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項10における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、10、11〕、〔4~9〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1、3~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
ケイ素と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素を含むゼオライトであって、その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIであり、かつ平均粒子径が400nm未満であることを特徴とするAEI型ゼオライト(但し、リンを含むAEI型ゼオライトを除く。)。
【請求項3】
前記平均粒子径が200nm未満であることを特徴とする請求項1に記載のAEI型ゼオライト。
【請求項4】
シリカ源と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源及び水を含む混合物を加熱する前処理工程、及び前記前処理工程により得られた混合物に四級アンモニウム塩を添加して水熱合成反応をさせる水熱合成工程を有することを特徴とする、平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
シリカ源と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、四級アンモニウム塩及び水を含む混合物に、有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶を当該混合物中のシリカの重量に対して0.1質量%以上添加して水熱合成反応をさせる工程を有することを特徴とする、平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記ヘテロ金属元素源が、アルミニウムを含むFAU型ゼオライトを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
シリカ源、水酸化アルミニウム、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、四級アンモニウム塩、有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径が500nm未満のゼオライトからなる種結晶、及び水を含む混合物を水熱合成反応させる工程を有することを特徴とする、平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記種結晶がSecondary Building Unitとして6員環及び/または8員環を有するゼオライトであることを特徴とする請求項5又は7に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記ヘテロ金属元素源が、アルミニウムを含むFAU型ゼオライトを含み、且つ前記種結晶がSecondary Building Unitとして6員環及び/または8員環を有するゼオライトであることを特徴とする請求項5に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
有機化合物原料を、請求項1又は3に記載のAEI型ゼオライトに接触させて、低級オレフィンを製造する方法。
【請求項11】
前記有機化合物原料がエチレンであり、前記低級オレフィンがプロピレン及び直鎖ブテンであることを特徴とする請求項10に記載の低級オレフィンを製造する方法。」
2 取消理由の概要
令和3年1月26日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(1)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(2)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)取消理由3(新規性)
設定登録時の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された、又は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(4)取消理由4(進歩性)
設定登録時の請求項10及び11に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1号証に記載された発明及び周知技術(下記甲第4号証、甲第7号証参照)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(証拠方法)
甲第1号証 Manuel Moliner et al., Cu-SSZ-39, an active and hydrothermally stable catalyst for the selective catalytic reduction of NOx, Chemical Communications, 2012, vol.48, pp.8264-8266(以下、「甲第1号証の1」という。)、及び、Manuel Moliner et al., Cu-SSZ-39, an active and hydrothermally stable catalyst for the selective catalytic reduction of NOx, Electronic Supplementary Material (ESI) for Chemical Communications, [online], 2012, インターネット <URL:http://www.rsc.org/suppdata/cc/c2/c2cc33992g/c2cc33992g.pdf>(以下、「甲第1号証の2」という。)
甲第2号証 平均粒子径の測定(甲第1号証のSSZ-39ゼオライト)
甲第4号証 国際公開第2005/063624号
甲第7号証 特開2014-65674号公報
3 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証(甲第1号証の1及び2)の記載事項
甲第1号証の2は、甲第1号証の1の電子的補足資料(ESI)であり、それぞれには、「Cu-SSZ-39, an active and hydrothermally stable catalyst for the selective catalytic reduction of NOx」(文献タイトル)(当審仮訳:NOx選択的接触還元のための活性で水熱安定性を有する触媒である、Cu-SSZ-39)に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。
ア 「SSZ-39 zeolite (AEI) is a silicoaluminate with a three-directional small pore system (8-R) containing large cavities with D6R in its structure.」(甲第1号証の1第8264頁右欄第11~13行)
(当審仮訳:SSZ-39ゼオライト(AEI)は、構造内にD6Rを備えた大きな空洞を含む三次元方向の微細空孔構造(8-R)を備えるアルミナケイ酸塩である。)
イ 「Thus we have studied the effect of other silicon (sodium silicate or LUDOX) and aluminium (USY CBV500, aluminium hydroxide, or alumina) sources in the SSZ-39 preparation using high-throughput (HT) synthesis techniques. The experimental design is shown in Table S1 (ESI).
As can be seen in the phase diagram (see Fig. S1 in ESI), a crystalline SSZ-39 zeolite was achieved within the two explored Si/Al ratio (15 and 30) only when Si and Al sources are Na2SiO3 and USY respectively (see X-ray diffraction [XRD] patterns in Fig 2a and b).」(甲第1号証の1第8264頁右欄第25行~第8265頁左欄第2行)
(当審仮訳:したがって、我々は、高スループット(HT)合成技術を用いたSSZ-39の製造において、他のシリコン源(ケイ酸ナトリウム又はLUDOX)及びアルミニウム源(USY CBV500、水酸化アルミニウム又はアルミナ)の影響を研究した。実験計画は、表S1(ESI)に示す。
状態図(ESIの図S1を参照)に見られるように、結晶性SSZ-39ゼオライトは、Si及びAl源がそれぞれNa2SiO3及びUSYである場合にのみ、調査された2つのSi/Al比(15及び30)で達成された(図2a及びbのX線回折[XRD]パターンを参照)。
ウ 「It is noticeable that SSZ-39 has been obtained here for the first time with a Si/Al ratio of 15 in the gel. However, as it can be seen in Table S2 (ESI), chemical analyses reveal lower Si/Al values in the final solids than the Si/Al ratios in the gel. A higher Si/Al ratio in the solid was obtained for sample "SSZ-39 (Si/Al=30)", with value of almost 10. The crystal size has also been studied by scanning electron microscopy (SEM) and as shown in the Fig. S2 (ESI), both SSZ-39 zeolites show similar crystal size (0.5-1 μm). Then, since the two SSZ-39 materials present the same crystal size, sample "SSZ-39 (Si/Al=30)" was selected for further treatment and catalytic studies because of its higher Si/Al ratio.」(甲第1号証の1第8265頁左欄第10~21行)
(当審仮訳:ゲル中でSi/Al比が15のSSZ-39がここで初めて得られたことは注目に値する。但し、表S2(ESI)に示されているように、化学分析では、最終的な固体のSi/Al値は、ゲルのSi/Al比よりも低いことが明らかになっている。サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」では、固体のSi/Al比が高く、ほぼ10であった。結晶サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって調べられ、図S2(ESI)では、両方のSSZ-39ゼオライトが同様の結晶サイズ(0.5~1μm)を示している。次に、2つのSSZ-39材料が同じ結晶サイズを示すため、Si/Al比が高い、サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」が、さらなる処理と触媒研究のために選択された。)
エ 「1.1.2.- SSZ-39 study
1.1.2.1.- SSZ-39-OSDA synthesis
The procedure for the OSDA manufacture is described next:
29.5 g of 3,5-dimethylpiperidine was mixed with 250 ml of methanol and 37.5 g of potassium carbonate. Then, 107.5 g of methyl iodide was added dropwise, keeping the reaction mixture under stirring for 7 days at room temperature. After reaction, the mixture was concentrated under vacuum and precipitated by addition of diethyl ether. The resultant solid was further extracted and washed with CHCl3 to remove completely possible inorganic salts. The iodide salt was converted to the hydroxide salt by treatment with a hydroxide anion exchange resin.
1.1.2.2.- SSZ-39 experimental study
The procedure to perform the preparation of the samples described in the experimental design of Table S1 was:
The required amount of the OSDA salt in its hydroxide form and sodium hydroxide were mixture with water. Then, the Si source was introduced [LUDOX or sodium silicate, which has the composition: 25.63 wt% SiO2, 6.05 wt % Na2O], together with the Al source [USY_CBV500, Al2O3, Al(OH)3]. The theoretical synthesis conditions for each sample are summarized in Table S1. Once each gel was prepared, it was introduced in an autoclave and heated at 135 ℃ for 7 days under static conditions.」(甲第1号証の2第2頁)
(当審仮訳:1.1.2- SSZ-39の研究
1.1.2.1- SSZ-39-OSDAの合成
OSDAの製造プロセスについて、以下に述べる。
29.5gの3,5-ジメチルピペリジンを250mlのメタノール及び37.5gの炭酸カリウムと混合した。そして、107.5gのヨウ化メチルを滴下して加え、攪拌しながら反応混合物を室温で7日間放置した。反応後、混合物を真空下で濃縮し、ジエチルエーテルの添加により沈殿させた。得られた固体はCHCl3を用いて抽出及び洗浄して、無機塩を完全に除去した。ヨウ化物塩は、水酸基アニオン交換樹脂を用いた処理によって水酸化物塩に変換した。
1.1.2.2- SSZ-39実験研究
表S1の実験計画で説明するサンプルの準備を方法:
所望の水酸基型のOSDA塩及び水酸化ナトリウムを水と混合した。そして、Si源[LUDOX、又は、25.63重量%のSiO2、6.05重量%のNa2Oの組成のケイ酸ナトリウム]を、Al源[USY CBV500、Al2O3、Al(OH)3]とともに添加した。各サンプルに対する理論合成条件を表S1にまとめた。各ゲルを準備してオートクレーブに入れ、135℃で7日間、静止状態で加熱した。)
オ 「
」
(甲第1号証の2第4頁)
(Table S1のタイトルの当審仮訳:表1S シリコンとアルミニウムの様々な供給源を用いたSSZ-39合成の実験計画(OSDA/Si=0.17、NaOH/Si=0.02、T=135℃の静止状態、t=7日))
カ 「
」
(甲第1号証の2第4頁)
(Table S2のタイトルの当審仮訳:表2S 製造された状態のサンプルの化学分析)
キ 「
」
(甲第1号証の2第8頁)
(Figure S2のタイトルの当審仮訳:図2S (A)SSZ-39(Si/Al=15)、(B)SSZ-39(Si/Al=30)、及び、(c)CHAのSEM画像)
4 取消理由に対する判断
(1)取消理由1(明確性要件)について
ア 具体的な指摘事項
当該取消理由1は、要するに、設定登録時の請求項1に係る発明の「平均粒子径」に関して、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、AEI型ゼオライトが長方形状の面を有さない粒子(例えば、球形状の粒子や不定形状の粒子等)を含む場合の平均粒子径の算出方法が明らかでないから、設定登録時の請求項1に係る発明及びこれを引用する請求項2、3、10及び11に係る発明は不明確である、というものである。
イ 取消理由1についての検討
当該取消理由1について改めて検討をすると、発明の詳細な説明には、「本発明のAEI型ゼオライトの平均粒子径は、400nm未満・・・である。・・・なお、本発明における平均粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に10個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子が長方形の場合、粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計測せず)、その和の平均(つまり(長辺+短辺)÷2)を算出して、その粒子の粒子径とする。」(段落【0019】~【0020】)と記載されている。
ここで、AEI型ゼオライトの一次粒子は、直方体として生成することが技術常識であることを踏まえると、発明の詳細な説明の上記記載は、本件発明1のAEI型ゼオライトの平均粒子径は、直方体の一次粒子径を対象とし、球形状や不定形状の二次粒子(凝集体粒子)を対象としないものであって、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡による粒子の観察において、直方体の一次粒子を任意に10個以上測定し、その粒子径を平均して求められたものであること、及び、直方体の一次粒子それぞれの粒子径は、奥行きを測定せずに、観察される面が長方形であれば、長辺及び短辺の平均値を粒子径とし、観察される面が長方形以外の形状である正方形であれば、単に一辺の値を粒子径とすることを示していると当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明1のAEI型ゼオライトの「平均粒子径」は、その測定対象も算出手段も明らかであるといえるから、本件発明1及びこれを引用する本件発明3、10及び11は明確であるといえる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和3年5月20日提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)において、特許権者の主張は、本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づくものでないし、特許権者の主張する平均粒子径の算出方法では、実施例3の平均粒子径を算出できない旨を主張している。
しかしながら、上記イで検討したとおり、平均粒子径の算出方法は、発明の詳細な説明の上記記載及び技術常識から認識できるものであるし、また、実施例3における走査型電子顕微鏡の写真(図6)から、一次粒子の長方形の面が観察できるから、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。
(2)取消理由2(サポート要件)について
ア 具体的な指摘事項
当該取消理由2は、要するに、(i)設定登録時の請求項4~9に係る発明は、微結晶のAEI型ゼオライトを製造することを特定していないため、及び、(ii)設定登録時の請求項10及び11に係る発明は、使用するAEI型ゼオライトがヘテロ金属元素としてアルミニウムを含むことを特定していないため、発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らしても、当業者がそれぞれの課題を解決できると認識できる範囲のものといえないから、設定登録時の請求項4~11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない、というものである。
イ 本件発明4~9に対する取消理由2についての検討
本件発明4~9の課題は、発明の詳細な説明の段落【0002】~【0008】の記載からみて、微結晶のAEI型ゼオライトの製造方法を提供することといえる。
そして、発明の詳細な説明の実施例1には、Y型ゼオライトCBV720、水酸化ナトリウム及び水の混合物を、160℃で20時間の加熱前処理をして、得られた前処理混合物に、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液、水酸化ナトリウム、さらに、AEI型ゼオライト(平均粒子径が1.5μm、構造規定剤を含む)を種結晶として加えて、160℃で7日間の水熱合成反応をして、平均粒子径が125nmのAEI型ゼオライトを得たこと、同実施例2、4及び5には、Y型ゼオライトCBV720、水酸化ナトリウム、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液及び水の混合物に、CHA型ゼオライト(平均粒子径が200nm、構造規定剤を含まない)を種結晶として加えて、160℃で7日間の水熱合成反応をして、平均粒子径が110nm~270nmの範囲のAEI型ゼオライトを得たこと、さらに、同実施例3には、水酸化アルミニウム、シリカゾルSI-30、水酸化ナトリウム、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液及び水の混合物に、AEI型ゼオライト(平均粒子径が110nm、構造規定剤を含む)を種結晶として加えて、160℃で7日間の水熱合成反応をして、平均粒子径が90nmのAEI型ゼオライトを得たことが、それぞれ具体的に記載されているから、実施例1~5に記載された製造方法は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
また、発明の詳細な説明には、「構造規定剤として作用する四級アンモニウム塩を添加する前に、混合物を加熱前処理することで、ゼオライトの単位ユニットの成形を促進し、四級アンモニウム塩添加後の水熱合成反応において、結晶核の発生が有利となり、微粒子結晶のAEI型ゼオライトを製造することができる。」(段落【0051】)こと、「有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径500nm未満のゼオライトからなる種結晶を用いることで、混合物中の種結晶の溶解及び結晶核の発生を促進することができるため、微粒子結晶のAEI型ゼオライトを製造することができる。」(段落【0057】)こと、及び、「Al源として比較的溶解性の低い水酸化アルミニウムを用いて、かつ結晶核を生じ易い有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径500nm未満のゼオライトを種結晶として用いることで、反応開始初期において結晶成長よりも結晶核の発生が有利となるため、微粒子結晶のAEI型ゼオライトを製造することができる。」(段落【0063】)ことも記載されている。
他方、本件発明4~9は、上記1のとおりの発明であって、本件発明4では、「前処理工程」を有し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することが特定され、本件発明5では、「有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶」を使用し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することが特定され、本件発明7では、「水酸化アルミニウム」及び「有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径が500nm未満のゼオライトからなる種結晶」を使用し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することが特定されているから、発明の詳細な説明の上記記載を併せ考えれば、本件発明4、5及び7は、上記実施例1~5と同様に、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件発明4、5及び7は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明4及び5を引用する本件発明6、本件発明5及び7を引用する本件発明8、並びに、本件発明5を引用する本件発明9についても、事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
ウ 本件発明10及び11に対する取消理由2についての検討
本件発明10及び11の課題は、発明の詳細な説明の段落【0002】~【0008】の記載からみて、結晶粒子径が大きい従来のAEI型ゼオライトを用いた低級オレフィンの製造方法では、コーキングが進行しやすく、十分な低級オレフィン収率が得られにくいというものである。
そして、発明の詳細な説明の実施例6には、SiO2/Al2O3比が22であり、平均粒子径が110nmであるAEI型ゼオライトを焼成及び水蒸気処理して、これを触媒として、エチレン(原料)からプロピレン及び直鎖ブテン(低級オレフィン)を合成することが記載され、SiO2/Al2O3比が18であり、平均粒子径が800nmであるAEI型ゼオライトを用いた比較例4よりも、パラフィン生成及び、それに伴うコーク蓄積が抑制され、直鎖ブテン選択率が向上することが記載されているから、実施例6に記載された低級オレフィンの製造方法は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
また、発明の詳細な説明には、段落【0019】に「本発明のAEI型ゼオライトの平均粒子径は、400nm未満であり、好ましくは300nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、通常10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。上記上限値未満であることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高く、上記下限以上であることで、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。」と記載され、AEI型ゼオライトの平均粒子径を小さくすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が向上することも記載されている。
さらに、低級オレフィンの製造方法において、ケイ素とアルミニウムを含むAEI型ゼオライトに、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素を含有することによって、低級オレフィンの収率が低下し、コーキングが進行しやすくなるとの技術常識を示す証拠はない。
したがって、これらの記載及び技術常識を併せ考えれば、当業者において、低級オレフィンの製造方法に、ケイ素とアルミニウムを含むAEI型ゼオライトを使用するに際して、AEI型ゼオライトの平均粒子径が400nm未満のものを用いることで、上記実施例6と同様に、上記課題を解決できると認識できる。
他方、本件発明10は、上記1のとおりの発明であって、本件発明1の「ケイ素」と「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素」とを含み、「平均粒子径が400nm未満である」「AEI型ゼオライト(但し、リンを含むAEI型ゼオライトを除く。)」を用いるものであるから、発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らして、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
したがって、本件発明10は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明10を引用する本件発明11についても事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
エ 申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、本件発明10及び11は、アルミニウム以外のヘテロ金属元素を含むAEI型ゼオライトを用いる形態を含むため、依然として、サポート要件を満たしていない旨を主張している。
しかしながら、上記ウで検討したとおり、低級オレフィンの製造方法において、ケイ素とアルミニウムを含むAEI型ゼオライトに、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素を含有することによって、低級オレフィンの収率が低下し、コーキングが進行しやすくなるとの技術常識を示す証拠はないから、申立人の上記主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。
(3)取消理由3、4(新規性、進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明(甲1発明1)
甲第1号証の上記3(1)ア~カの記載事項を、サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」に注目して整理すると、甲第1号証には、
「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して、水酸基型のOSDAを製造し、当該水酸基型のOSDA塩、水酸化ナトリウム、水、Si源としてのケイ酸ナトリウム、及び、Al源としてのUSY CBV500を、OSDA/Si=0.17、NaOH/Si=0.02、Si/Al=30となるように混合し、得られたゲルをオートクレーブにて135℃で7日間加熱して製造した、SSZ-39ゼオライト(AEI)であって、Si/Al比が9.1であり、結晶サイズが0.5~1μmである、SSZ-39ゼオライト(AEI)。」
の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
なお、甲第1号証のサンプル「SSZ-39(Si/Al=15)」に注目して、甲第1号証に記載された発明を認定した場合にも、上記サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」に注目して認定した発明(甲1発明1)に対する判断と同じ判断が成立するので、以下、「SSZ-39(Si/Al=30)」に注目して認定した発明について検討する(以下、同様。)。
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明1の対比
甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」は、本件発明1の「International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEI」である「AEI型ゼオライト」に相当する。
また、甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」は、「Si源としてのケイ酸ナトリウム」及び「Al源としてのUSY CBV500」を用いて製造された「Si/Al比が9.1」の「ゼオライト」であり、ケイ素及びアルミニウムを含むから、本件発明1の「ケイ素と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素を含むゼオライト」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、
「ケイ素と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素を含むゼオライトであって、その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIであるAEI型ゼオライト。」
の点で一致し、以下の相違点1及び2で相違している。
・相違点1
本件発明1では、「AEI型ゼオライト」の「平均粒子径が400nm未満である」のに対して、甲1発明1では、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の「結晶サイズが0.5~1μmである」が、「平均粒子径」は明らかでない点。
・相違点2
本件発明1では、「リンを含むAEI型ゼオライトを除く」AEI型ゼオライトであるのに対して、甲1発明1では、その点が明らかでない点。
(イ)相違点の検討
まず、相違点1について検討する。
本件発明1の「平均粒子径が400nm未満である」ことは、上記(1)イで検討したとおりの方法で算出された平均粒子径であって、どの一次粒子を任意に10個選択して算出しても、いずれの平均粒子径も400nm未満であることを特定するものといえる。
これに対して、甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」は、上記3(1)ウによれば、上記3(1)キの図S2(B)のSEM画像で示される粒子からなるものといえ、当該SEM画像(甲第2号証の「(2)SEM画像(B)について」も参考にした。)をみると、一辺が400nm未満の長方形の面を有する直方体の一次粒子が存在することを確認できるものの、一辺が400nm超の長方形の面を有する直方体の一次粒子も存在しており、どの一次粒子を任意に10個選択して算出しても、いずれの平均粒子径も400nm未満となっているとはいえないため、相違点1は実質的なものである。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。
ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用するものであって、「平均粒子径が200nm未満である」ことに限定するものであるから、上記イに示した理由と同様の理由により、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。
エ 本件発明10及び11について
本件発明10及び11は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明10及び11と甲1発明1とは、少なくとも上記相違点1で相違している。
そこで、甲1発明1において、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることの容易想到性について検討すると、甲第1号証には、「NOx選択的接触還元のための活性で水熱安定性を有する触媒である、Cu-SSZ-39」(文献タイトル)に関連して、SSZ-39ゼオライトを製造する際のシリコン源及びアルミニウム源の影響を研究すること(上記3(1)イ)が記載されているにすぎず、SSZ-39ゼオライトの平均粒子径を変更する動機付けとなるような記載は認められないから、甲第4号証及び甲第7号証に記載された技術的事項載を参酌しても、甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるといえない。
したがって、本件発明10及び11は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第4号証、甲第7号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、取消理由3、4に理由はない。
5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、上記2の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ア 申立理由1(進歩性)
設定登録時の請求項1~3に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、設定登録時の請求項4~9に係る発明は、同甲第1号証に記載された発明及び周知技術(下記甲第3号証~甲第6号証参照)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
イ 申立理由2(実施可能要件)
本件特許は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が後記(3)アの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
ウ 申立理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記(4)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
エ 申立理由4(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記(5)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(証拠方法)
甲第1号証 Manuel Moliner et al., Cu-SSZ-39, an active and hydrothermally stable catalyst for the selective catalytic reduction of NOx, Chemical Communications, 2012, vol.48, pp.8264-8266(甲第1号証の1)、及び、Manuel Moliner et al., Cu-SSZ-39, an active and hydrothermally stable catalyst for the selective catalytic reduction of NOx, Electronic Supplementary Material (ESI) for Chemical Communications, [online], 2012, インターネット< URL:http://www.rsc.org/suppdata/cc/c2/c2cc33992g/c2cc33992g.pdf>(甲第1号証の2)
甲第3号証 Qinghua Li et al., Aging effects on the nucleation and crystallization kinetics of colloidal TPA-silicalite-1, Microporous and Mesoporous Materials, March 2001, Vol.43, p.51-59
甲第4号証 国際公開第2005/063624号
甲第5号証 特開2013-173624号公報
甲第6号証 窪田好浩他,ゼオライト開発の現状,Journal of the Vacuum Society of Japan(真空),2006,Vol.49,No.4,p.205-212
(2)申立理由1(進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明(甲1発明1、甲1発明2)
甲第1号証の上記3(1)ア~カの記載事項を、サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」に注目して整理すると、甲第1号証には、上記4(3)アにおいて認定したとおり、甲1発明1が記載されているといえる。
また、上記3(1)ア~カの記載事項を、サンプル「SSZ-39(Si/Al=30)」の製造方法に注目して整理すると、甲第1号証には、
「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して、水酸基型のOSDAを製造し、当該水酸基型のOSDA塩、水酸化ナトリウム、水、Si源としてのケイ酸ナトリウム、及び、Al源としてのUSY CBV500を、OSDA/Si=0.17、NaOH/Si=0.02、Si/Al=30となるように混合し、得られたゲルをオートクレーブにて135℃で7日間加熱して、Si/Al比が9.1であり、結晶サイズが0.5~1μmである、SSZ-39ゼオライト(AEI)を製造する方法。」
の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明1の対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、上記4(3)イ(ア)のとおり、両者は、以下の相違点1及び2で相違している。
・相違点1
本件発明1では、「AEI型ゼオライト」の「平均粒子径が400nm未満である」のに対して、甲1発明1では、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の「結晶サイズが0.5~1μmである」が、「平均粒子径」は明らかでない点。
・相違点2
本件発明1では、「リンを含むAEI型ゼオライトを除く」AEI型ゼオライトであるのに対して、甲1発明1では、その点が明らかでない点。
(イ)相違点の検討
まず、相違点1について検討すると、上記4(3)エで検討したとおり、甲第1号証には、SSZ-39ゼオライトの平均粒子径を変更することを動機付ける記載は存在しないから、申立人が提出する甲第3号証~甲第6号証に記載された技術的事項を参酌しても、甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、当業者にとって容易想到な事項であるといえない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、申立人意見書において、甲第9号証(Takushi Sonoda et al., Synthesis of high-silica AEI zeolites with enhanced thermal stability by hydrothermal conversion of FAU zeolites, and their activity in the selective catalytic reduction of NOx with NH3, Journal of Materials Chemistry A, 2015, vol.3 p.857-865)、甲第10号証(甲第9号証の初版日を示すウエブページ、[online]、[2021年5月13日検索],インターネット <https://pubs.rsc.org/ko/content/articlelanding/2015/ta/c4ta05621c/unauth#!divAbstract>)、及び、甲第11号証(Joongjai Panpranot et al., Effect of Particle Size on the Hydrothermal Stability and Catalytic Activity of Polycrystalline Beta Zeolite, Journal of Porous Materials, 2005, vol.12, p.293-299)を提出し、本件発明1で特定している平均粒子径の範囲に臨界的意義があるとはいえないため、甲1発明1のSSZ-39(AEI型ゼオライト)の平均粒子径を400nm未満とすることは、甲第9号証及び甲第11号証に記載された技術常識から容易に想到できる旨を主張している。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、甲第1号証には、SSZ-39ゼオライトの平均粒子径を変更することを動機付ける記載は存在しないから、甲第9号証及び甲第11号証の記載を参酌しても、甲1発明1の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、容易想到な事項であるといえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用するものであって、「平均粒子径が200nm未満である」ことに限定するものであるから、上記イに示した理由と同様の理由により、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
エ 本件発明4について
(ア)本件発明4と甲1発明2の対比
甲1発明2の「水酸化ナトリウム」、「Si源としてのケイ酸ナトリウム」、「Al源としてのUSY CBV500」、「得られたゲル」、「オートクレーブにて135℃で7日間加熱」すること、及び、「SSZ-39ゼオライト(AEI)を製造する方法」は、それぞれ、本件発明4の「アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源」、「シリカ源」、「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源」、「混合物」、「水熱合成反応をさせる水熱合成工程」、及び、「AEI型ゼオライトの製造方法」に相当する。
また、甲1発明2の「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して」製造した「水酸基型のOSDA」と、本件発明4の「四級アンモニウム塩」とは、構造規定剤であるの点で共通している。
したがって、本件発明4と甲1発明2とは、
「シリカ源と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、構造規定剤及び水を含む混合物の水熱合成反応をさせる水熱合成工程を有する、AEI型ゼオライトの製造方法」
の点で一致し、以下の相違点3~5で相違している。
・相違点3
本件発明4では、構造規定剤として、「四級アンモニウム塩」を使用しているのに対して、甲1発明2では、「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して」製造した「水酸基型のOSDA」を使用している点。
・相違点4
本件発明4では、四級アンモニウム塩(構造規定剤)を添加する前に、混合物を加熱する前処理工程を行っているのに対して、甲1発明2では、そのような前処理工程がない点。
・相違点5
本件発明4では、「AEI型ゼオライト」の「平均粒子径が400nm未満である」のに対して、甲1発明2では、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の「結晶サイズが0.5~1μmである」が、「平均粒子径」は明らかでない点。
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点5について検討すると、上記イ(イ)で検討した理由と同様の理由により、申立人が提出する甲第3~6号証に記載された技術的事項を参酌しても、甲1発明2の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、容易想到な事項であるといえない。
したがって、相違点3及び4について検討するまでもなく、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
オ 本件発明5について
(ア)本件発明5と甲1発明2の対比
甲1発明2と本件発明5の相当関係は、上記エ(ア)で検討した相当関係のとおりであるから、本件発明5と甲1発明2とは、
「シリカ源と、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、構造規定剤及び水を含む混合物の水熱合成反応をさせる水熱合成工程を有する、AEI型ゼオライトの製造方法」
の点で一致し、以下の相違点6~8で相違している。
・相違点6
本件発明5では、構造規定剤として、「四級アンモニウム塩」を使用しているのに対して、甲1発明2では、「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して」製造した「水酸基型のOSDA」を使用している点。
・相違点7
本件発明5では、混合物に「有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶を当該混合物中のシリカの重量に対して0.1質量%以上添加して」いるのに対して、甲1発明2では、その点が明らかでない点。
・相違点8
本件発明5では、「AEI型ゼオライト」の「平均粒子径が400nm未満である」のに対して、甲1発明2では、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の「結晶サイズが0.5~1μmである」が、「平均粒子径」は明らかでない点。
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点8について検討すると、上記イ(イ)で検討した理由と同様の理由により、申立人が提出する甲第3~6号証に記載された技術的事項を参酌しても、甲1発明2の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、容易想到な事項であるといえない。
したがって、相違点6及び7について検討するまでもなく、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
カ 本件発明7について
(ア)本件発明7と甲1発明2の対比
甲1発明2の「Al源としてのUSY CBV500」と、本件発明7の「水酸化アルミニウム」とは、Al源の点で共通している。
甲1発明2と本件発明7のその余の相当関係は、上記エ(ア)で検討した相当関係のとおりである。
したがって、本件発明7と甲1発明2とは、
「シリカ源と、Al源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、構造規定剤及び水を含む混合物の水熱合成反応をさせる水熱合成工程を有する、AEI型ゼオライトの製造方法」
の点で一致し、以下の相違点9~12で相違している。
・相違点9
本件発明7では、Al源として、「水酸化アルミニウム」を使用しているのに対して、甲1発明2では、「USY CBV500」を使用している点。
・相違点10
本件発明7では、構造規定剤として、「四級アンモニウム塩」を使用しているのに対して、甲1発明2では、「3,5-ジメチルピペリジン、メタノール及び炭酸カリウムの混合物にヨウ化メチルを滴下した反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して沈殿させ、得られた固体をCHCl3で抽出及び洗浄し、水酸基アニオン交換樹脂で水酸化物塩に変換して」製造した「水酸基型のOSDA」を使用している点。
・相違点11
本件発明7では、混合物が「有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径が500nm未満のゼオライトからなる種結晶」を含んでいるのに対して、甲1発明2では、その点が明らかでない点。
・相違点12
本件発明7では、「AEI型ゼオライト」の「平均粒子径が400nm未満である」のに対して、甲1発明2では、「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の「結晶サイズが0.5~1μmである」が、「平均粒子径」は明らかでない点。
(イ)相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点12について検討すると、上記イ(イ)で検討した理由と同様の理由により、申立人が提出する甲第3~6号証に記載された技術的事項を参酌しても、甲1発明2の「SSZ-39ゼオライト(AEI)」の平均粒子径を400nm未満とすることは、容易想到な事項であるといえない。
したがって、相違点9~11について検討するまでもなく、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
キ 本件発明6、8及び9について
本件発明6は、本件発明4又は5を引用し、本件発明8は、本件発明5又は7を引用し、本件発明9は、本件発明5を引用するものであって、それぞれの発明特定事項の一部をさらに限定するものであるから、上記エ、オ又はカに示した理由と同様の理由により、本件発明6、8及び9は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証~甲第6号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
(3)申立理由2(実施可能要件)について
ア 具体的な指摘事項
当該申立理由2は、要するに、発明の詳細な説明の段落【0020】に記載された平均粒子径の測定方法では、長方形以外の形状の粒子の粒子径の求め方が理解できず、選択する粒子に依存してバラツキが発生するため、設定登録時の請求項1~3に記載された「平均粒子径」を一義的に特定することができないから、発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項1~3に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない、というものである。
イ 申立理由2についての検討
発明の詳細な説明に記載された平均粒子径の測定方法は、上記4(1)イで検討したとおり、その測定対象も算出方法も明確である。
また、本件発明1の「平均粒子径が400nm未満である」との特定事項は、上記4(3)イ(イ)で検討したとおり、当該測定方法による測定毎でバラツキがあっても、いずれの平均粒子径も400nm未満であることを特定するものである。
そして、発明の詳細な説明には、上記4(2)イで検討したとおり、実施例1~5として、具体例も記載されているから、発明の詳細な説明には、本件発明1及び3を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。
(4)申立理由3(サポート要件)について
ア 具体的な指摘事項
当該申立理由3は、要するに、(i)設定登録時の請求項1~3に係る発明は、AEI型ゼオライトの平均粒子径の数値範囲が広く、当該ゼオライトの組成において、アルミニウム以外のヘテロ金属元素(ガリウム、ホウ素、鉄)を含み、SiO2/Al2O3比が特定されていないため、(ii)設定登録時の請求項4及びこれを引用する請求項6に係る発明は、原料、これらの使用割合、前処理工程の温度、水熱合成工程の反応条件等の製造条件が特定されていないため、(iii)設定登録時の請求項5及びこれを引用する請求項6、8、9に係る発明は、原料、これらの使用割合、水熱合成工程の反応条件等の製造条件が特定されていないため、及び、(iv)設定登録時の請求項7及びこれを引用する請求項8に係る発明は、原料、これらの使用割合、水熱合成工程の反応条件等の製造条件が特定されておらず、また、「水酸化アルミニウム」及び「有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶」を用いた実施例がないため、発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らしても、当業者がそれぞれの課題を解決できると認識できる範囲のものといえないから、設定登録時の請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえない、というものである。
イ 本件発明1及び3に対する申立理由3についての検討
本件発明1及び3の課題は、発明の詳細な説明の段落【0002】~【0008】の記載からみて、結晶粒子径が大きい従来のAEI型ゼオライトでは、低級オレフィンの製造方法において、コーキングが進行しやすく、十分な低級オレフィン収率が得られにくいというものである。
これに対して、本件発明1は、上記1のとおりの発明であって、「ケイ素」と「アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ金属元素として少なくともアルミニウムを含むヘテロ金属元素」とを含み、「平均粒子径が400nm未満である」「AEI型ゼオライト(但し、リンを含むAEI型ゼオライトを除く。)」であることが特定されているから、上記4(2)ウで検討した理由と同様の理由により、発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らして、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
また、本件発明1を引用する本件発明3についても事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
ウ 本件発明4及びこれを引用する本件発明6に対する申立理由3についての検討
本件発明4は、上記1のとおりの発明であって、原料、これらの使用割合、水熱合成工程の反応条件等の製造条件を明示していないものの、「AEI型ゼオライトの製造方法」であることを特定しており、本件発明4が、AEI型ゼオライトを製造できない製造条件を包含していないことは明らかである。
加えて、本件発明4は、上記4(2)イで検討したとおり、「前処理工程」を有し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することを特定しているから、前処理工程の温度条件の特定がなくとも、実施例1や段落【0051】の記載に照らして、当業者が本件発明4の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、本件発明4は、当業者が発明の詳細な説明の記載に照らして、本件発明4の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明4を引用する本件発明6についても事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
エ 本件発明5及びこれを引用する本件発明6、8、9に対する申立理由3についての検討
本件発明5は、上記1のとおりの発明であって、原料、これらの使用割合、水熱合成工程の反応条件等の製造条件が明示されていないものの、「AEI型ゼオライトの製造方法」であることを特定しており、本件発明5が、AEI型ゼオライトを製造できない製造条件を包含していないことは明らかである。
加えて、本件発明5は、上記4(2)イで検討したとおり、「有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶」を使用し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することを特定しているから、実施例2、4及び5や段落【0057】の記載に照らして、当業者が本件発明5の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、本件発明5は、当業者が発明の詳細な説明の記載に照らして、本件発明5の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明5を引用する本件発明6、8及び9についても事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
オ 本件発明7及びこれを引用する本件発明8に対する申立理由3についての検討
本件発明7は、上記1のとおりの発明であって、原料、これらの使用割合、水熱合成工程の反応条件等の製造条件が明示されていないものの、「AEI型ゼオライトの製造方法」であることを特定しており、本件発明7が、AEI型ゼオライトを製造できない製造条件を包含していないことは明らかである。
加えて、本件発明7は、上記4(2)イで検討したとおり、「水酸化アルミニウム」及び「有機構造規定剤を含まない又は/及び平均粒子径が500nm未満のゼオライトからなる種結晶」を使用し、「平均粒子径が400nm未満であるAEI型ゼオライト」を製造することを特定しているところ、「水酸化アルミニウム」及び「有機構造規定剤を含まないゼオライトからなる種結晶」を用いた実施例はないものの、実施例2~5や段落【0063】の記載を併せ考えれば、当業者が本件発明7の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、本件発明7は、当業者が発明の詳細な説明の記載に照らして、本件発明7の課題を解決できると認識できる範囲のものであって、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
また、本件発明7を引用する本件発明8についても事情は同じであるから、上記理由と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
オ 小括
以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。
(5)申立理由4(明確性要件)について
ア 具体的な指摘事項
当該申立理由3は、要するに、(i)設定登録時の請求項4に係る発明は、前処理工程における「混合物」に四級アンモニウム塩が含まれるか否かが不明確であるため、及び(ii)設定登録時の請求項5及び7に係る発明は、「有機構造規定剤を含まないゼオライト」が、どの程度の有機構造規定剤を含むゼオライトが包含されるか否かが不明確であるため、設定登録時の請求項4、5、7に係る発明は不明確である、というものである。
イ 本件発明4に対する申立理由4についての検討
本件発明4では、「前記前処理工程により得られた混合物に四級アンモニウム塩を添加」することが特定されていること、及び、本件特許明細書の段落【0051】に「構造規定剤として作用する四級アンモニウム塩を添加する前に、混合物を加熱前処理すること」と記載されていることからして、本件発明4の「前処理工程」における「混合物」には、「四級アンモニウム塩」が添加されていないことは明らかである。
よって、本件発明4は不明確であるといえない。
ウ 本件発明5及び7に対する申立理由4についての検討
本件特許明細書の段落【0057】に「有機構造規定剤を含まないゼオライトとは、構造規定剤として用いられた有機化合物を除去する処理(例えば、焼成処理や溶媒抽出など)を施されたもの、あるいは、構造規定剤として有機化合物を使用せずに合成されたもののいずれかである。ここで、「有機構造規定剤を含まない」とは、含有する構造規定剤由来の有機物含有量が1質量%未満であることを意味する。」と記載されていることからして、本件発明5及び7の「有機構造規定剤を含まないゼオライト」は、「含有する構造規定剤由来の有機物含有量が1質量%未満である」ゼオライトであることは明らかである。
よって、本件発明5及び7は不明確であるといえない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立理由4に理由はない。
第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3~11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1及び3~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700870